(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組み合わせることも可能である。
【0013】
(第1実施形態)
本発明の一実施形態としての第1実施形態に係る燃料蒸発ガスパージシステム1について、
図1〜
図7を参照しながら説明する。燃料蒸発ガスパージシステム1は、キャニスタ13に吸着した燃料中のHCガス等を内燃機関の吸気通路210に供給するものであり、燃料タンク10からの燃料蒸発ガス(以下、蒸発燃料ともいう)が大気に放出されることを防止するシステムである。燃料蒸発ガスパージシステム1は、
図1に示すように、内燃機関の吸気通路210を構成する内燃機関2の吸気系と、蒸発燃料を内燃機関2の吸気系に供給する蒸発燃料パージ系と、を備えて構成される。
【0014】
内燃機関2の吸気通路210に導入された蒸発燃料は、インジェクタ等から内燃機関2に供給される燃焼用燃料と混合されて、内燃機関2のシリンダ内で燃焼される。内燃機関2の吸気系は、内燃機関の吸気通路210の一部をなす吸気マニホールド20にスロットルバルブ23を介して吸気管21が接続され、さらに吸気管21の途中にエアフィルタ24等が設けられて、構成されている。
【0015】
蒸発燃料パージ系は、燃料タンク10とキャニスタ13がベーパ通路17で接続され、キャニスタ13と内燃機関の吸気通路210がパージ通路18で接続されている。パージ通路18には、内燃機関の吸気通路210とパージ制御弁15とを連絡する第1のパージ通路18aと、パージポンプ14とパージ制御弁15とを連絡する第2のパージ通路18bと、が含まれる。
【0016】
エアフィルタ24は、吸気管21の上流部に設けられ、吸気中の塵や埃等を捕捉する。スロットルバルブ23は、アクセルペダルと連動して吸気マニホールド20の入口部における開度を調節して、吸気マニホールド20内に流入される吸気量を調節する吸気量調節弁である。吸気は、エアフィルタ24、スロットルバルブ23を順に通過して吸気マニホールド20内に流入し、インジェクタ等から噴射される燃焼用燃料と所定の空燃比となるように混合されてシリンダ内で燃焼される。
【0017】
燃料タンク10は、ガソリン等の燃料を貯留する容器である。燃料タンク10は、ベーパ通路17を形成する配管によってキャニスタ13の流入部に接続されている。キャニスタ13は、内部に活性炭等の吸着材が封入された容器であり、燃料タンク10内で発生する蒸発燃料を、ベーパ通路17を介して取り入れ、吸着材に一時的に吸着する。キャニスタ13には、外部の新鮮な空気を吸入するための吸入部を開閉するキャニスタクローズバルブ12(以下、CCV12とも称する)が設けられている。キャニスタ13がCCV12を備えることにより、キャニスタ13内に大気圧を作用させることができる。キャニスタ13は、吸入された新鮮な空気によって吸着材に吸着した蒸発燃料を容易に離脱(パージ)することができる。
【0018】
キャニスタ13には、吸着材から離脱された蒸発燃料が流出される流出部に第3のパージ通路18cを形成する配管の一端が接続されている。第3のパージ通路18cを形成する配管の他端はパージポンプ14の流入部に接続されている。さらに、パージポンプ14とパージ制御弁15は、第2のパージ通路18bによって接続されている。パージ制御弁15は、第1のパージ通路18aを形成するダクト18aaによって内燃機関の吸気通路210に対して連通可能に接続されている。このようにパージ通路18は、キャニスタ13から内燃機関の吸気通路210に向かって、第3のパージ通路18c、第2のパージ通路18b、第1のパージ通路18aの順となるように構成される。
【0019】
パージポンプ14は、モータによって回転するタービンを備える流体駆動手段であり、キャニスタ13からの蒸発燃料を内燃機関の吸気通路210に向けて送る。パージ制御弁15は、第2のパージ通路18bと第1のパージ通路18a、すなわち、蒸発燃料供給用通路を開閉する開閉手段であり、キャニスタ13からの蒸発燃料を内燃機関2へ供給することを許可及び阻止できる。パージ制御弁15は、例えば、弁体、電磁コイル及びスプリングを備えた電磁弁装置によって構成される。パージ制御弁15は、制御装置3によって開度が制御される。パージ制御弁15は、電磁コイルに通電されたときに発生する電磁力とスプリングの付勢力とのバランスに応じて、蒸発燃料供給用通路を開閉する。
【0020】
パージ制御弁15は、通常は蒸発燃料供給用通路を閉じた状態を維持し、制御装置3によって電磁コイルに通電が行われると、電磁力がスプリングの弾性力に打ち勝って、蒸発燃料供給用通路を開いた状態にする。また、制御装置3は、通電のオン時間とオフ時間とによって形成される1周期の時間に対するオン時間の比率、すなわちデューティ比を制御して電磁コイルに通電を行う。パージ制御弁15は、デューティコントロールバルブともいう。この通電制御により、蒸発燃料供給用通路を流通する蒸発燃料の流量が調節される。
【0021】
さらに、電磁弁16は、第1のパージ通路18aと内燃機関の吸気通路210とが接続される接続部に設置されている弁装置の一例である。したがって、電磁弁16は、パージ通路18のうち、当該接続部とパージ制御弁15とを連絡する第1のパージ通路18aを少なくとも含む対象通路から、蒸発燃料が吸気通路210へ流入することを許可及び阻止可能とする弁装置である。
【0022】
ここで対象通路とは、燃料蒸発ガスパージシステム1の異常検出装置がダクト、ホース等の脱落、孔を検出する対象部位として設定している通路である。したがって、対象通路は、電磁弁16とパージ制御弁15との間の第1のパージ通路18aには少なくとも設定される。さらに対象通路は、パージ制御弁15を閉じて蒸発燃料を堰き止め、内燃機関の吸気通路210側への流通を遮断することにより、パージポンプ14とパージ制御弁15との間の第2のパージ通路18bにも設定することができる。
【0023】
また、電磁弁16は、電圧が印加されていないときに通路を開く開状態であり、電圧が印加されたときに通路を閉じる閉状態に制御される弁装置である。したがって、電磁弁16は、電圧無印加である通常時には通路を開放する弁装置である。
【0024】
電磁弁16は、内燃機関の吸気通路210を形成するダクト部材としての吸気管21に設置されている。電磁弁16は、
図2に示すように、吸気管21において、吸気通路210の軸線と交差する方向に筒状に延びるように設けられる筒状接続部21aの内部に搭載されて、筒状接続部21a内の通路を全閉することができる。このように電磁弁16は、第1のパージ通路18aを形成するダクト18aaではなく、内燃機関の吸気通路210を形成する吸気管21に設置されるため、電磁弁16を閉状態に制御すると、ダクト18aa内の通路全体に蒸発燃料を充満させることができる。したがって、電磁弁16が筒状接続部21a内の通路を全閉した状態で、ダクト18aaの任意の場所に孔が存在していると、必ず、充満した蒸発燃料が漏れ出ることになる。燃料蒸発ガスパージシステム1は、この状態における蒸発燃料の漏れを検出して、パージシステムに異常が発生していることを判定する異常検出機能を備える。
【0025】
制御装置3は、燃料蒸発ガスパージシステム1の電子制御ユニットである。制御装置3は、演算処理や制御処理を行うCPU(中央演算装置)、ROMやRAM等の記憶手段、及びI/Oポート(入力/出力回路)等の機能を含んで構成されるマイクロコンピュータを備えている。制御装置3は、燃料蒸発ガスパージシステム1における燃料パージ等の基本制御を行う他、異常判定手段をなす異常判定回路30によって、後述するパージシステムの異常有無の判定を実施する。このため、制御装置3は、パージ制御弁15、CCV12、電磁弁16のそれぞれのアクチュエータに接続され、これらの弁の作動を制御する。
【0026】
燃料蒸発ガスパージシステム1は、第1のパージ通路18aにおける圧力を検出する圧力センサ5を備える。したがって、燃料蒸発ガスパージシステム1は、圧力センサ5の検出値を用いて、パージ制御弁15から電磁弁16に至る範囲の第1のパージ通路18aを形成する配管内圧力を検出することができる。
【0027】
制御装置3は、パージポンプ14のモータに接続され、内燃機関2の運転、停止に関係なく、モータを駆動してパージポンプ14の運転、停止を制御する。また、制御装置3の入力ポートには、内燃機関2の回転数、吸入空気量、冷却水温度、圧力センサ11による燃料タンク10の内部圧力に対応する信号等が入力される。さらに、制御装置3の入力ポートには、圧力センサ5によって検出される第1のパージ通路18aの圧力に対応する信号等が入力される。
【0028】
キャニスタ13から、吸気マニホールド20内に吸引された蒸発燃料は、インジェクタ等から内燃機関2に供給される本来の燃焼用燃料と混合されて、内燃機関2のシリンダ内で燃焼される。また、内燃機関2のシリンダ内においては、燃焼用燃料と吸気との混合割合である空燃比が予め定めた所定の空燃比となるように制御される。制御装置3は、パージ制御弁15の開閉時間をデューティ制御することで、蒸発燃料をパージしても、所定の空燃比が維持されるように蒸発燃料のパージ量を調節する。
【0029】
燃料蒸発ガスパージシステム1は、燃料タンク10で発生した蒸発燃料の大気への放出を防止するシステムであるが、蒸発燃料パージ系に漏れ、孔等が生じると漏れ箇所から燃料蒸気が大気に放出されるという懸念がある。また、このような漏れ、孔等の異常が生じても内燃機関2の運転には大きな影響がでないため、車両の運転者はこの異常に気づかないで放置する可能性がある。そこで、第1実施形態では以下に説明するパージシステムの異常有無の判定を行い、早期にパージ系の漏れ、孔等の異常の発生を検出することができる。
【0030】
燃料蒸発ガスパージシステム1は、対象通路の圧力変化に関連する物理量の変化を検出し、正常であるか異常発生かを判定する。
図4に図示するグラフは、パージポンプ14で蒸発燃料を圧送した状態における、第1のパージ通路18aの圧力、第2のパージ通路18bの圧力について、正常時と異常時の圧力変化を示した一例である。圧力変化に関連する物理量とは、正常時と異常時のそれぞれにおいて、特定の変化が見られる物理量である。例えば、当該物理量は、第1のパージ通路18aにおいて計測された圧力、第2のパージ通路18bにおいて計測された圧力、パージポンプ14の消費電力、消費電流、消費電圧等である。
【0031】
燃料蒸発ガスパージシステム1は、対象通路の圧力変化に関連する物理量の変化を検出し、正常であるか異常発生かを判定する。
図5に図示するグラフは、閉じられた第1のパージ通路18aの圧力について、正常時の圧力変化を示した一例である。
図6に図示するグラフは、閉じられた第1のパージ通路18aの圧力について、異常時の圧力変化を示した一例である。この場合の圧力変化に関連する物理量とは、例えば、第1のパージ通路18aにおいて計測された圧力である。
【0032】
次に、第1実施形態に係る異常検出制御について
図3のフローチャートを参照して説明する。制御装置3は、
図3のフローチャートにしたがった処理を実行する。本フローチャートは、車両の内燃機関2が運転している走行時、停止している駐車時にかかわらず作動する。すなわち、燃料蒸発ガスパージシステム1の異常検出制御は、内燃機関2のオン、オフにかかわらず定期的に実行される。
【0033】
本フローチャートが開始されると、制御装置3は、ステップS10でパージ制御弁15を開状態に制御し、ステップS20で電磁弁16に閉状態に制御し、ステップS30でパージポンプ14を運転する。これにより、パージポンプ14によって圧送された蒸発燃料は、電磁弁16の位置で堰き止められるため、第1のパージ通路18a及び第2のパージ通路18bは正圧密閉状態となる。
【0034】
制御装置3は、この状態を一定時間継続して、対象通路の異常の有無を検出可能な判定可能状態にする。次のステップS40では、制御装置3は、圧力センサ5によって検出される第1のパージ通路18aの圧力信号を取得して、第1のパージ通路18aにおける圧力を検出する。
【0035】
制御装置3の異常判定回路30は、ステップS50で、第1の異常条件が成立するか否かを判定する。この第1の異常条件は、上記の判定可能状態において、対象通路(第1のパージ通路18a及び第2のパージ通路18b)に漏れ等の異常が発生しているかを判定するための条件である。
【0036】
この状態で第1のパージ通路18aと第2のパージ通路18bに漏れがないと、堰き止められた通路の圧力は
図4の正常時の圧力変化のように、パージポンプ14の運転によって急激に上昇した後、運転継続とともに少しずつ上昇するように変化する。逆に、これらの通路に漏れがある場合には、外部に蒸発燃料が漏れるため、堰き止められた通路の圧力は、
図4の異常時に相当する圧力変化のように、パージポンプ14の運転後、あまり上昇しないようになる。第1の異常条件は、例えば、単位時間あたりの圧力変化(圧力変化率)が予め定めた第1の所定値未満である場合に、成立するものとする。したがって、異常判定回路30は、圧力変化率が第1の所定値未満である場合には異常があると判定し、圧力変化率が第1の所定値以上である場合には異常がないと判定する。
【0037】
異常判定回路30がステップS50で第1の異常条件が成立していないと判定すると、今回の判定結果は正常であるため、今回の異常検出制御を終了すべく、制御装置3はステップS55で電磁弁16を開状態に制御し、ステップS260に進む。ステップS260では、ステップS50の判定処理を実行してから、予め定めた所定時間が経過した否かを判定する。すなわち、ステップS260の処理は、次の判定タイミングが到来するまで繰り返し行われる。ステップS260で所定時間が経過したと判定すると、ステップS10に戻り、再び以降の異常検出制御の処理を実行していく。このように、燃料蒸発ガスパージシステム1の異常検出制御は、内燃機関2が運転しているか否かにかかわらず、所定時間間隔で実行される。
【0038】
異常判定回路30がステップS50で第1の異常条件が成立していると判定すると、制御装置3は、異常のある箇所をさらに詳細に検出すべく、ステップS200でパージ制御弁15を閉状態に制御し、ステップS210でパージポンプ14を停止する。これにより、パージ制御弁15と電磁弁16との間の第1のパージ通路18aが密閉された通路になる。
【0039】
この状態は、第1のパージ通路18aにおける異常の有無を検出可能な判定可能状態である。次のステップS220で制御装置3は、圧力センサ5による検出信号を取得して、第1のパージ通路18aにおける圧力を検出する。制御装置3は、閉じられた通路となった第1のパージ通路18aにおける残圧を予め定めた一定時間検出し続ける。
【0040】
そして、異常判定回路30は、ステップS230で第2の異常条件が成立するか否かを判定する。この第2の異常条件は、上記の判定可能状態において、第1のパージ通路18aに漏れ等の異常が発生しているかを判定するための条件である。
【0041】
第1のパージ通路18aが閉じられた状態で、当該通路に漏れがないと、圧力センサ5による検出圧力は、
図5の正常時のように、一定圧力を継続する。逆に、第1のパージ通路18aに漏れがある場合には、外部に蒸発燃料が漏れるため、圧力センサ5による検出圧力は、
図6の異常時のように、時間の経過とともに徐々に低下し、大気圧に近づくようになる。第2の異常条件は、例えば、単位時間あたりの圧力低下値(圧力低下率)が予め定めた閾値以上である場合に、成立するものとする。したがって、異常判定回路30は、圧力低下率が所定の閾値以上である場合には異常があると判定し、圧力低下率が所定の閾値未満である場合には異常がないと判定する。
【0042】
異常判定回路30は、ステップS230で、第2の異常条件が成立していないと判定すると、第1のパージ通路18aは異常がないため、第2のパージ通路18bの方に異常があると判定する(ステップS231)。さらにステップS232で、対象通路である第2のパージ通路18bが異常状態であることを表示し、今回の異常検出制御を終了すべく、前述のステップS260に進む。この異常表示は、第2のパージ通路18bに異常があることを示すように、所定のランプを点灯または点滅することで実施したり、所定の画面に異常表示をしたりすることで実施する。また、この異常表示は、警報音を発生することにより代用することもできる。
【0043】
一方、異常判定回路30は、ステップS230で、第2の異常条件が成立していると判定すると、第1のパージ通路18aに異常があると判定する(ステップS240)。さらにステップS250で、第1のパージ通路18aが異常状態であることを表示し、今回の異常検出制御を終了すべく、前述のステップS260に進む。この異常表示は、少なくとも第1のパージ通路18aに異常があることを示すように、所定のランプを点灯または点滅することで実施したり、所定の画面に異常表示をしたりすることで実施する。また、この異常表示は、警報音を発生することにより代用することもできる。
【0044】
また、パージ制御弁15は、
図7に示すように、内燃機関2の運転によって流体通路1514が負圧になると、弁体1507が通路を閉める方向に動作する形式の弁装置であることが好ましい。この場合のパージ制御弁15の構成について、
図7を参照して以下に説明する。
【0045】
パージ制御弁15は、コイル1501、ヨーク1502、マグネチックプレート1503及び固定鉄心1504により構成される電磁ソレノイド1500を備える。固定鉄心1504には、可動体1505が軸方向で間隔を置いて対向している。可動体1505は、可動鉄心1509、板ばね1510及びゴム等の弾性体からなる弁体1507により構成されている。弁体1507は、周辺部をエンドフレーム1511とコイルボビン1512との間に挟持された板ばね1510の中央部に取り付けられている。したがって、可動体1505は板ばね1510により保持されている。板ばね1510は可動体1505の移動により軸方向に変位するように形成されている。可動鉄心1509は、その外周と、コイルボビン1512の内周、すなわち軸受部1513との間に間隙を設けることにより、軸方向に移動可能である。コイルスプリング1506は、可動体1505を固定鉄心1504から離間する方向に付勢している。
【0046】
電磁ソレノイド1500にはヨーク1502を介して、エンドフレーム1511が連結固定されている。エンドフレーム1511には、ポート1527とポート1528が一体に形成されている。ポート1527には流体通路1514が形成されるとともに、流体通路1514に直交する流体通路1515が形成されている。流体通路1515は、エンドフレーム1511に一体形成された円筒部1516の端部の開口1517に連通する。ポート1528には流体通路1518が形成されている。流体通路1518と開口1517間とを連通する流体通路1519が、エンドフレーム1511内に形成されている。円筒部1516の先端部には、弁体1507の台座1508が接離する弁座1520が形成されている。
【0047】
副弁体1521は、円筒部1516の先端部外周に緩やかに被さるとともに、弁座1520に当接するキャップ体1522の中心に開口を形成したものである。キャップ体1522の外側には、キャップ体1522の開口と同心の環状突部1523が形成されている。環状突部1523には、切欠きを設けた流体通路が形成されている。さらに、キャップ体1522の開口の口縁にはグロメット1524が嵌着される。グロメット1524は、合成ゴムまたは軟質の合成樹脂等の弾性体からなり、中心を軸方向に貫いた絞り開口1525が形成されている。弁座1520に当接する面に台座が形成され、反対側の環状突部1523の形成側の面に弁座が形成されている。このときの弁体1507は、ゴム等の弾性体または金属、合成樹脂等の非弾性体により形成される。
【0048】
副弁体1521は、エンドフレーム1511に一体形成された円筒部1516の外周に掛けられたコイルスプリング1526により、弁座1520から離間する方向に付勢されている。しかしながら、コイルスプリング1506の付勢力はコイルスプリング1526の付勢力に打ち勝つため、コイルスプリング1506に付勢される弁体1507は、その台座1508が環状突部1523内に嵌まって弁座に着座する。さらに弁体1507は、副弁体1521を押圧してグロメット1524に形成した台座を、弁座1520に着座させて開口1517を閉じている。
【0049】
パージ制御弁15の作動は以下の通りである。電磁ソレノイド1500に通電し、電磁ソレノイド1500の吸引力がコイルスプリング1506の付勢力に打ち勝つと、可動体1505は固定鉄心1504側に吸引される。可動体1505が吸引されることにより、流体通路1519を介して流体通路1515と流体通路1518が連通する。
【0050】
次に、第1実施形態の燃料蒸発ガスパージシステム1の異常検出装置がもたらす作用効果について説明する。燃料蒸発ガスパージシステム1は、内燃機関の吸気通路210に接続される接続部とパージ制御弁15とを連絡する第1のパージ通路18aを少なくとも含む対象通路から蒸発燃料が吸気通路210へ供給されることを許可及び阻止可能なパージ制御弁15を備える。さらに燃料蒸発ガスパージシステム1は、パージポンプ14によって蒸発燃料が吸気通路210へ向けて圧送されている所定の判定可能状態において、システムの異常の有無を判定する異常判定回路30を備える。
【0051】
異常判定回路30は、この所定の判定可能状態において、対象通路の圧力変化に関連する所定の物理量を検出し、当該検出された所定の物理量に応じてシステムの異常の有無を判定する。所定の判定可能状態は、パージポンプ14によって蒸発燃料が吸気通路210へ向けて圧送され、パージ制御弁15によって蒸発燃料が第1のパージ通路18aを流通可能であり、電磁弁16によって吸気通路210への蒸発燃料の供給が阻止される状態である。
【0052】
これによれば、吸気通路210に接続される接続部とパージ制御弁15との間に位置する第1のパージ通路18aにおける漏れ発生の有無を、当該通路の圧力変化に関連する所定の物理量の検出値に応じて判定できる。これにより、パージ通路18において吸気通路210との接続部までの広範囲にわたって、異常の有無を検出できるパージシステムが得られる。さらに、異常の検出は、パージポンプ14の運転時に行われるため、内燃機関2の運転、停止に関係なく、検出することが可能である。したがって、内燃機関2の運転中であっても、異常有無の判定を随時に実施できるため、漏れ等の異常発生を早期に検出することができる。例えば、長時間の走行による、蒸発燃料の広範囲への放出を回避することができる。さらに異常検出装置は、検出タイミングを選ばないため、異常検出処理を短い周期で行うことができる。
【0053】
また、燃料蒸発ガスパージシステム1の異常検出装置によれば、パージポンプ14による蒸発燃料の圧送出力を制御することにより、非常に短時間で異常判定処理を完了することができる。さらに異常検出装置は、車両走行中に発生した異常であっても、内燃機関2の運転に影響を及ぼすことなく異常検出を実施することができる。
【0054】
また、従来から知られているシステムの一つには、内燃機関の運転停止後、燃料タンク内の温度が低下すると蒸発燃料通路に負圧が発生する自然負圧発生型の漏れ検出装置がある。このとき、ポンプを運転しない状態でパージ制御弁を閉じて通路の圧力を監視し、正常時の負圧と漏れ発生時の負圧とを比較し、漏れを検出する。これに対して、第1実施形態の燃料蒸発ガスパージシステム1の異常検出装置によれば、ポンプを利用して圧力を制御するため、精度の高い異常有無の判定を実施できるという効果を奏する。
【0055】
また、電磁弁16は、対象通路を形成するダクトではなく、内燃機関の吸気通路210を形成する吸気管21に設置されている。この構成によれば、電磁弁16は第1のパージ通路18a側に直付けされていないため、電磁弁16を閉じることにより、第1のパージ通路18aの全体を電磁弁16によって閉空間にでき、蒸発燃料を第1のパージ通路18aの全体に充満させることができる。したがって、第1のパージ通路18aの全体について余すことなく漏れ等の有無を判定することができる。
【0056】
第1実施形態によれば、異常判定回路30は、ステップS50において異常であると判定した場合に、次にパージ制御弁15を閉じて第1のパージ通路18aに蒸発燃料を閉じ込めた状態において、第1のパージ通路18aの圧力変化を検出する。異常判定回路30は、当該検出された圧力変化に応じて第1のパージ通路18aにおける異常の有無を判定する。第1のパージ通路18aに異常がないと判定した場合には、第2のパージ通路18bに異常があると判定する。
【0057】
これによれば、まずパージポンプ14から電磁弁16に至る範囲の通路において、漏れ等の異常有無の判定を実施して、異常有りの判定がされた場合に、次に第1のパージ通路18aについて異常有無の判定を実施する。このとき、第1のパージ通路18aにおいて異常があると判定すると、パージポンプ14から電磁弁16に至る通路のうち、第1のパージ通路18aに異常があることを検出することができる。
【0058】
一方、第1のパージ通路18aにおいて異常がないと判定すると、残りの第2のパージ通路18bに異常があることを検出できる。これにより、異常が発生している通路の部位をより狭い範囲で特定できる異常検出制御を提供できる。したがって、第1実施形態の異常検出制御は、異常のある通路部位が狭い範囲で特定できることにより、部品交換等の対策を的確かつ迅速に実施できることに寄与する。
【0059】
また、パージ制御弁15は、内燃機関2が運転されることによって電磁弁16側の第1のパージ通路18aが負圧になると、弁体1507が通路を閉じる方向に動作するように構成されている。これによれば、パージポンプ14によって、電磁弁16に対して正圧が作用した場合に、蒸発燃料が内燃機関の吸気通路210側に漏れにくい電磁弁16を提供することができる。
【0060】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態に係る燃料蒸発ガスパージシステム101の異常検出装置について
図4、
図8、
図9を参照して説明する。各図において、第1実施形態と同様の構成であるものは同一の符号を付し、同様の作用、効果を奏するものである。第2実施形態で特に説明しない構成、作用、効果については、第1実施形態と同様であり、以下、前述の実施形態と異なる点についてのみ説明する。また、第2実施形態において前述の実施形態と同様の構成を有するものは、前述の実施形態で説明した同様の作用、効果を奏するものとする。
【0061】
図8に示すように、燃料蒸発ガスパージシステム101は、第1実施形態の燃料蒸発ガスパージシステム1に対して、圧力センサ4を備える点が相違する。圧力センサ4は、第2のパージ通路18bにおける圧力を検出する。燃料蒸発ガスパージシステム101は、圧力センサ4の検出値を用いて、パージポンプ14からパージ制御弁15に至る範囲の第2のパージ通路18bを形成する配管内圧力を検出することができる。
【0062】
制御装置3の入力ポートには、圧力センサ5によって検出される第1のパージ通路18aの圧力に対応する信号、圧力センサ4によって検出される第2のパージ通路18bの圧力に対応する信号等が入力される。したがって、燃料蒸発ガスパージシステム101は、圧力センサ4の検出値と、圧力センサ5の検出値を活用して、異常有無の判定処理を実施する。
【0063】
燃料蒸発ガスパージシステム101は、対象通路の圧力変化に関連する物理量の変化を検出し、正常であるか異常発生かを判定する。燃料蒸発ガスパージシステム101は、電磁弁16を閉じパージ制御弁15を開き、パージポンプ14で蒸発燃料を圧送している状態で、パージ通路18のうち、第1のパージ通路18aや第2のパージ通路18bの圧力変化に関連する所定の物理量を検出する。そして、燃料蒸発ガスパージシステム101は、当該検出された所定の物理量として採用される各通路の圧力に応じてシステムの異常の有無を判定する。燃料蒸発ガスパージシステム101は、パージポンプ14を用いて、対象通路に含まれる第1のパージ通路18aや第2のパージ通路18bの圧力を高め、異常と認められる圧力変化を検出した場合には、いずれかの通路に漏れが発生していると判定する。
【0064】
すなわち、異常有無の判定実施時には、パージ制御弁15を開状態に、電磁弁16を閉状態に制御して、パージポンプ14を運転する。これにより、第1のパージ通路18aと内燃機関の吸気通路210とは電磁弁16によって遮断されるため、第1のパージ通路18aは、電磁弁16の位置で堰き止められた通路となる。この堰き止められた通路が形成された状態で、パージポンプ14による圧送が行われるため、第1のパージ通路18a及び第2のパージ通路18bは正圧密閉状態となる。
【0065】
この状態で、第1のパージ通路18a及び第2のパージ通路18bに漏れがないと、堰き止められた通路の圧力は、
図4の正常時の圧力変化のように、パージポンプ14の運転によって急激に上昇した後、運転の継続とともに少しずつ上昇するように変化する。逆に、これらの通路に漏れがある場合には、外部に蒸発燃料が漏れるため、堰き止められたこれらの通路の圧力は、
図4の異常時に相当する圧力変化のように、パージポンプ14の運転後、あまり上昇しないようになる。これは、パージポンプ14で加圧しても蒸発燃料が外部に放出されるからである。
【0066】
燃料蒸発ガスパージシステム101では、圧力センサ5の検出値に異常有りとの判定結果を得ると、まず、第1のパージ通路18a、第2のパージ通路18bのいずれかに漏れがある認識する。次に、パージ制御弁15を閉じ、第2のパージ通路18bを堰き止めた状態で、圧力センサ4の検出値に異常が有か否かの判定を行う。圧力センサ4の検出値に異常有りとの判定結果を得ると、第2のパージ通路18bに漏れがあると認識し、圧力センサ4の検出値に異常なしとの判定結果を得ると、第1のパージ通路18aに漏れがあると認識する。
【0067】
次に、第2実施形態に係る異常検出制御について
図9のフローチャートを参照して説明する。制御装置3は、
図9のフローチャートにしたがった処理を実行する。
図9のフローチャートは、車両の内燃機関2が運転している走行時、停止している駐車時にかかわらず作動する。
【0068】
本フローチャートが開始されると、制御装置3は、第1実施形態と同様のステップS10、S20、S30、S40、S50の各処理を実行する。
【0069】
異常判定回路30がステップS50で第1の異常条件が成立していないと判定すると、今回の判定結果は正常であるため、今回の異常検出制御を終了すべく、制御装置3はステップS55で電磁弁16を開状態に制御し、ステップS150に進む。ステップS150では、ステップS50の判定処理を実行してから、予め定めた所定時間が経過した否かを判定する。すなわち、ステップS150の処理は、次の判定タイミングが到来するまで繰り返し行われる。ステップS150で所定時間が経過したと判定すると、ステップS10に戻り、再び以降の異常検出制御の処理を実行していく。このように、燃料蒸発ガスパージシステム101の異常検出制御は、内燃機関2が運転しているか否かにかかわらず、所定時間間隔で実行される。
【0070】
異常判定回路30がステップS50で第1の異常条件が成立していると判定すると、次に、異常のある箇所をさらに詳細に検出すべく、制御装置3はステップS100でパージ制御弁15を閉状態に制御する。これにより、パージポンプ14によって圧送された蒸発燃料は、パージ制御弁15の位置で堰き止められるため、第2のパージ通路18bは正圧密閉状態となる。
【0071】
制御装置3は、この状態を一定時間継続して、第2のパージ通路18bにおける異常の有無を検出可能な判定可能状態にする。次のステップS110では、制御装置3は、圧力センサ4による検出信号を取得して、第2のパージ通路18bにおける圧力を検出する。制御装置3の異常判定回路30は、ステップS120で第2の異常条件が成立するか否かを判定する。この第2の異常条件は、上記の判定可能状態において、第2のパージ通路18bに漏れ等の異常が発生しているかを判定するための条件である。
【0072】
この状態で、第2のパージ通路18bに漏れがないと、堰き止められた通路の圧力は、
図4の正常時に相当する圧力変化のように、パージポンプ14の運転によって急激に上昇した後、運転の継続とともに少しずつ上昇するように変化する。逆に、第2のパージ通路18bに漏れがある場合には、外部に蒸発燃料が漏れるため、堰き止められた通路の圧力は、
図4の異常時に相当する圧力変化のように、パージポンプ14の運転後、あまり上昇しないようになる。第2の異常条件は、例えば、単位時間あたりの圧力変化(圧力変化率)が予め定めた第2の所定値未満である場合に、成立するものとする。したがって、異常判定回路30は、圧力変化率が第2の所定値未満である場合には異常があると判定し、圧力変化率が第2の所定値以上である場合には異常がないと判定する。
【0073】
異常判定回路30は、ステップS120で、第2の異常条件が成立していないと判定すると、第2のパージ通路18bには異常がないため、第1のパージ通路18aの方に異常があると判定する(ステップS121)。さらにステップS122で、対象通路である第1のパージ通路18aが異常状態であることを表示し、今回の異常検出制御を終了すべく、前述のステップS150に進む。この異常表示は、第1のパージ通路18aに異常があることを示すように、所定のランプを点灯または点滅することで実施したり、所定の画面に異常表示をしたりすることで実施する。また、この異常表示は、警報音を発生することにより代用することもできる。
【0074】
また、異常判定回路30は、ステップS120で、第2の異常条件が成立していると判定すると、少なくとも第2のパージ通路18bに異常があると判定する(ステップS130)。さらにステップS140で、第2のパージ通路18bが異常状態であることを表示し、今回の異常検出制御を終了すべく、前述のステップS150に進む。この異常表示は、少なくとも第2のパージ通路18bに異常があることを示すように、所定のランプを点灯または点滅することで実施したり、所定の画面に異常表示をしたりすることで実施する。また、この異常表示は、警報音を発生することにより代用することもできる。
【0075】
第2実施形態の異常検出装置によれば、ステップS50において異常であると判定した場合に、次に、パージポンプ14によって蒸発燃料を圧送するとともにパージ制御弁15を閉じて蒸発燃料が第1のパージ通路18aに流れないように制御する。異常判定回路30は、この状態においてパージポンプ14とパージ制御弁15とを連絡する第2のパージ通路18bの圧力変化を検出し、当該検出された圧力変化に応じて、第2のパージ通路18bにおける異常の有無を判定する。異常判定回路30は、第2のパージ通路18bに異常がないと判定した場合には第1のパージ通路18aに異常があると判定する。
【0076】
これによれば、まずパージポンプ14から電磁弁16に至る範囲の通路において、漏れ等の異常有無の判定を実施して、異常有りの判定がされた場合に、次に第2のパージ通路18bについて異常有無の判定を実施する。このとき、第2のパージ通路18bにおいて異常があると判定すると、パージポンプ14から電磁弁16に至る通路のうち、少なくとも第2のパージ通路18bに異常があることを検出することができる。この場合、第1のパージ通路18aと第2のパージ通路18bの両方に異常が発生していることもある。
【0077】
一方、第2のパージ通路18bにおいて異常がないと判定すると、パージ制御弁15から電磁弁16に至る範囲の第1のパージ通路18aに異常があることを検出できる。このため、異常が発生している通路の部位をより狭い範囲で特定できる異常検出制御を提供できる。したがって、この異常検出制御は、異常のある通路部位が狭い範囲で特定できることにより、部品交換等の対策を的確かつ迅速に実施できることに寄与する。
【0078】
(第3実施形態)
以下、第3実施形態に係る燃料蒸発ガスパージシステム201の異常検出装置について
図10〜
図13を参照して説明する。各図において、第1実施形態と同様の構成であるものは同一の符号を付し、同様の作用、効果を奏するものである。第3実施形態で特に説明しない構成、作用、効果については、第1実施形態と同様であり、以下、第1実施形態と異なる点についてのみ説明する。また、第3実施形態において第1実施形態と同様の構成を有するものは、第1実施形態で説明した同様の作用、効果を奏するものとする。
【0079】
図10に示すように、燃料蒸発ガスパージシステム201は、第1実施形態の燃料蒸発ガスパージシステム1に対して、圧力センサ5を備えない点が相違する。したがって、燃料蒸発ガスパージシステム201は、異常有無の判定処理において、圧力センサ5の検出値を用いるのではなく、別の物理量を活用して該当する通路における圧力変化を検出する。
【0080】
制御装置3の入力ポートには、パージポンプ14の運転情報が入力される。制御装置3は、パージポンプ14から入力される運転情報の信号を解析してパージポンプ14の消費電流や消費電圧を求める。
【0081】
燃料蒸発ガスパージシステム201は、第1のパージ通路18aにおける圧力変化に関連する物理量の変化を検出し、正常であるか異常発生かを判定する。第3実施形態では、第1のパージ通路18aにおける圧力変化に関連する物理量として、パージポンプ14の消費電力、消費電流、消費電圧を採用する。
図12に示すように、パージポンプが受ける抵抗は正常時に高く、異常時に低くなるため、パージポンプ14の消費電力、消費電流、消費電圧は、正常時には大きくなり、異常時には小さくなる傾向がある。これにより、パージポンプ14の消費電力、消費電流、消費電圧は、正常時、異常時のそれぞれについて、例えば
図13に図示するグラフのような変化を示す。
【0082】
次に、第3実施形態に係る異常検出制御について
図11のフローチャートを参照して説明する。制御装置3は、
図11のフローチャートにしたがった処理を実行する。
図11のフローチャートは、車両の内燃機関2が運転している走行時、停止している駐車時にかかわらず作動する。
【0083】
本フローチャートが開始されると、制御装置3は、前述のステップS10、S20、S30の各処理を実行する。これにより、パージポンプ14によって圧送された蒸発燃料は、電磁弁16の位置で堰き止められるため、第1のパージ通路18a及び第2のパージ通路18bは正圧密閉状態となる。
【0084】
制御装置3は、この状態を一定時間継続し、次のステップS40Aでパージポンプ14から入力される運転情報の信号を解析してパージポンプ14の消費電流を検出する。この消費電流は、消費電圧や消費電力に置き換えることもできる。
【0085】
制御装置3の異常判定回路30は、ステップS50Aで、第1の異常条件が成立するか否かを判定する。この第1の異常条件は、上記の判定可能状態において、対象通路(第1のパージ通路18a及び第2のパージ通路18b)に漏れ、ダクトの孔等の異常が発生しているかを判定するための条件である。第1の異常条件は、例えば、単位時間あたりの電流変化(電流変化率)が第1の所定値未満である場合に、成立するものとする。したがって、異常判定回路30は、電流変化率が予め定めた第1の所定値未満である場合には異常があると判定し、電流変化率が第1の所定値以上である場合には異常がないと判定する。
【0086】
異常判定回路30がステップS50Aで、第1の異常条件が成立していないと判定すると、今回の判定結果は正常であるため、今回の異常検出制御を終了すべく、制御装置3はステップS55Aで電磁弁16を開状態に制御し、ステップS80に進む。ステップS80では、ステップS50Aの判定処理を実行してから、予め定めた所定時間が経過した否かを判定する。すなわち、ステップS80の処理は、次の判定タイミングが到来するまで繰り返し行われる。ステップS80で所定時間が経過したと判定すると、ステップS10に戻り、再び以降の異常検出制御の処理を実行していく。このように、燃料蒸発ガスパージシステム1の異常検出制御は、内燃機関2が運転しているか否かにかかわらず、所定時間間隔で実行される。
【0087】
異常判定回路30がステップS50Aで第1の異常条件が成立していると判定すると、ステップS60で異常有りの判定処理を行い、さらにステップS70で、対象通路が異常状態であることを表示し、前述のステップS80に進む。この異常表示は、所定のランプを点灯または点滅することで実施したり、所定の画面に異常表示をしたりすることによって実施する。また、異常表示は、警報音を発生することにより代用することもできる。
【0088】
第3実施形態によれば、異常判定回路30は、所定の判定可能状態において、対象通路の圧力変化に関連する、パージポンプ14における消費電流または消費電圧を検出し、当該検出された消費電流または消費電圧に応じてシステムの異常の有無を判定する。この場合の対象通路は、第1のパージ通路18a及び第2のパージ通路18bである。
【0089】
これによれば、異常判定回路30は、対象通路の圧力変化が抵抗としてパージポンプ14に作用することに着眼して、パージポンプ14にかかる負荷に関連する情報として消費電流または消費電圧を検出する。パージポンプ14における消費電流または消費電圧は、パージポンプ14の制御において、容易に取得しうるデータでする。したがって、異常判定回路30は、対象通路を構成するダクト内の圧力を直接計測することなく、対象通路の圧力変化に関連する重要な情報を検出できるので、ダクト内の圧力を検出のための専用のセンサを不要にでき、システムの部品点数を低減できる。
【0090】
(第4実施形態)
以下、第4実施形態に係る燃料蒸発ガスパージシステムの異常検出装置について
図14〜
図16を参照して説明する。各図において、前述の実施形態と同様の構成であるものは同一の符号を付し、同様の作用、効果を奏するものである。第4実施形態で特に説明しない構成、作用、効果については、前述の実施形態と同様であり、以下、前述の実施形態と異なる点についてのみ説明する。また、第4実施形態において前述の実施形態と同様の構成を有するものは、前述の実施形態で説明した同様の作用、効果を奏するものとする。
【0091】
第4実施形態で説明する異常検出制御は、
図9に示す第2実施形態の制御に対して、ステップS300以降の処理が相違する。また、第4実施形態に係る燃料蒸発ガスパージシステムは、
図1に示す第1実施形態に係る燃料蒸発ガスパージシステム1と同様の構成である。第4実施形態に係る燃料蒸発ガスパージシステムは、圧力センサ11によって検出される燃料タンク10内の圧力を用いて、パージ制御弁15から燃料タンク10に至る範囲の通路における異常有無の判定を実施する。
【0092】
第4実施形態に係る異常検出制御について
図14のフローチャートを参照して説明する。本フローチャートは、第1のパージ通路18aと、パージ制御弁15から燃料タンク10に至る範囲のタンク側通路との両方について異常検出を行える制御を示したものである。すなわち、本フローチャートでは、第1のパージ通路18a、タンク側通路のいずれが異常発生状態にあるのかを検出することができる。
【0093】
異常判定回路30は、ステップS50で第1の異常条件が成立すると判定し、さらに制御装置3は、ステップS300でパージ制御弁15を閉状態に制御し、この状態を一定時間継続して、タンク側通路における異常の有無を検出可能な判定可能状態にする。次のステップS310では、制御装置3は、圧力センサ11による検出信号を取得して、燃料タンク10内の圧力を求める。異常判定回路30は、ステップS320で第2の異常条件が成立するか否かを判定する。ステップS320における第2の異常条件は、上記の判定可能状態において、前述のタンク側通路に漏れ等の異常が発生しているかを判定するための条件である。
【0094】
この状態で、タンク側通路に漏れがないと、燃料タンク10の内部圧力は、
図15の正常時に相当する圧力変化のように、パージポンプ14の運転によって負圧となる。逆に、タンク側通路に漏れがある場合には、タンク内の圧力は、
図16の異常時に相当する圧力変化(2本のグラフのいずれか)のように、パージポンプ14の運転後、負圧のレベルが時間が経過するにつれて小さくなっていき、大気圧に近づくようになる。この第2の異常条件は、例えば、検出された燃料タンク10内の圧力が予め定めた圧力値以上である場合に、成立するものとする。したがって、異常判定回路30は、燃料タンク10内の圧力が所定の圧力値以上である場合には、負圧のレベルが正常時よりも大気圧に近づき異常があると判定し、逆に所定の圧力値未満である場合には異常がないと判定する。
【0095】
異常判定回路30は、ステップS320で、第2の異常条件が成立していないと判定すると、パージ制御弁15から燃料タンク10に至る範囲のタンク側通路には異常がないと判定し第1のパージ通路18aの方に異常があると判定する(ステップS321)。さらにステップS322で、第1のパージ通路18aが異常状態であることを表示し、前述のステップS350に進む。また、異常判定回路30は、ステップS320で、第2の異常条件が成立していると判定すると、ステップS330で少なくともタンク側通路に異常があると判定する。さらにステップS340で、タンク側通路が異常状態であることを表示し、前述のステップS350に進む。この異常表示は、燃料タンク10からパージ制御弁15の間の通路に異常があることを示すように、所定のランプを点灯または点滅することで実施したり、所定の画面に異常表示をしたりすることで実施する。また、異常表示は、警報音を発生することにより代用することもできる。
【0096】
第4実施形態によれば、まずパージポンプ14から電磁弁16に至る範囲の通路において異常有無の判定を実施して、異常有りの判定がされた場合に、次に燃料タンク10からパージ制御弁15に至る範囲のタンク側通路について異常有無の判定を実施する。このとき、タンク側通路において異常があると判定すると、燃料タンク10から電磁弁16に至る通路のうち、少なくともタンク側通路に異常があることを検出することができる。
【0097】
また、タンク側通路において異常がないと判定すると、第1のパージ通路18aに異常があることを検出することができる。このため、異常が発生している通路の部位をより具体的に特定できる異常検出制御を提供できる。したがって、この異常検出制御は、異常のある通路部位が特定できることにより、部品交換等の対策を的確かつ迅速に実施できることに寄与する。
【0098】
(他の実施形態)
上述の実施形態では、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0099】
上記実施形態の構造は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれらの記載の範囲に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものである。
【0100】
前述の第2実施形態においては、圧力センサ4や圧力センサ5によって検出された通路の圧力を用いて異常有無の判定を実施するが、パージポンプ14から入力される運転情報の信号を解析して検出されたパージポンプ14の消費電流や消費電圧を用いてもよい。
【0101】
前述の第2実施形態において、異常判定回路30がステップS50で第1の異常条件の成立か否かを判定する際に、圧力センサ5ではなく圧力センサ4によって検出した第2のパージ通路18bの圧力を用いるようにしてもよい。したがって、ステップS40では、圧力センサ4によって第2のパージ通路18bの圧力を検出する。この通路の圧力を用いて判定しても、第1のパージ通路18a及び第2のパージ通路18bにおける異常有無の判定が可能である。
【0102】
前述の第3実施形態において、異常判定回路30がステップS50Aで第1の異常条件の成立か否かを判定する際に、以下のような方法によって判定するようにしてもよい。制御装置3は、例えば
図12に示すような、消費電流等に関する、正常時の変化と異常時の変化とをマップとして記憶手段に予め記憶する。この場合、異常判定回路30は、ステップS40Aで検出したデータが正常時と異常時のどちらのマップに近似しているかを判定することにより、第1の異常条件が成立するか否かを判定する。したがって、異常判定回路30は、ステップS40Aで検出したデータが、異常時のマップの方に近似する場合には異常があると判定し、正常時のマップの方に近似する場合には異常がないと判定する。