(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本願の開示するロボットシステムおよびロボット教示方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0013】
また、以下では、ロボットが、被搬送物としてウェハを搬送する基板搬送用ロボットである場合を例に挙げて説明を行う。ウェハには、符号「W」を付す。
【0014】
また、
図1〜
図8を用いた説明では、同軸まわりにそれぞれ独立に回転可能に設けられた第1ハンドおよび第2ハンドの上記同軸まわりにおける相対誤差に基づいて教示作業を行う場合を例に挙げた第1の実施形態について説明する。また、
図9を用いた説明では、ロボットシステムの実運用中等に上記相対誤差の変化を所定のタイミングで監視する場合を例に挙げた第2の実施形態について説明する。
【0015】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態に係るロボットシステム1の構成の一例について
図1を用いて説明する。
図1は、第1の実施形態に係るロボットシステム1の構成の一例を示す平面模式図である。
【0016】
なお、説明を分かりやすくするために、
図1には、鉛直上向きを正方向とし、鉛直下向きを負方向とするZ軸を含む3次元の直交座標系を図示している。したがって、XY平面に沿った方向は、「水平方向」を指す。かかる直交座標系は、以下の説明に用いる他の図面においても示す場合がある。
【0017】
図1に示すように、ロボットシステム1は、搬送室2と、基板供給部3と、基板処理部4と、制御装置5とを備える。搬送室2の内部には、ロボット10が配設される。
【0018】
搬送室2は、いわゆるEFEM(Equipment Front End Module)であり、フィルタユニット(図示略)を備え、かかるフィルタユニットを介してクリーンエアのダウンフローを形成する。かかるダウンフローにより、ロボットシステム1の実運用中、搬送室2の内部は高クリーン度状態に保たれる。
【0019】
ロボット10は、搬送対象物であるウェハWを保持可能なハンド17を有するロボットアーム14を備える。ロボットアーム14は、搬送室2の底壁部を形成する基台設置フレーム(図示略)上に設置される基台11に対して昇降自在、かつ水平方向に旋回自在に支持される。
【0020】
なお、
図1に示すように、ロボットアーム14には、軸a3の同軸まわりにそれぞれ独立に回転可能に2つのハンド17a,17bを設けることができる。これらハンド17a,17bにそれぞれウェハWを保持しつつ搬送することで、ウェハWの搬送効率を向上させることができる。
【0021】
なお、以下の説明では、ハンド17aが上側のハンドであり、ハンド17bが下側のハンドであるものとし、ハンド17aについては「第1ハンド17a」と、ハンド17bについては「第2ハンド17b」と、それぞれ記載する。ロボット10の詳細については
図2を用いて後述する。
【0022】
基板供給部3は、複数のウェハWをZ軸方向に多段に収納可能に設けられたフープ3a,3b,3cと、かかるフープ3a,3b,3cそれぞれの蓋体を開閉して、ウェハWを搬送室2内へ取り出せるようにするフープオープナ(図示略)とを備える。
【0023】
基板処理部4は、たとえば、洗浄処理や成膜処理、フォトリソグラフィ処理といった半導体製造プロセスにおける所定のプロセス処理をウェハWに対して施すプロセス処理部である。基板処理部4は、かかる所定のプロセス処理をそれぞれ行う処理装置4a,4bを備える。
【0024】
これら処理装置4a,4bは、たとえば搬送室2の一方の側面に、ロボット10を挟んで基板供給部3と対向するように配置される。なお、
図1には、この基板供給部3と基板処理部4とが対向するように配置された場合を示しているが、基板供給部3と基板処理部4との位置関係を限定するものではない。
【0025】
たとえば、基板供給部3と基板処理部4とは、搬送室2の1つの側面に並べて配置されたり、対向していない2つの側面にそれぞれ配置されたりしてもよい。
【0026】
また、
図1には、基板供給部3が3つのフープ3a,3b,3cを、基板処理部4が2つの処理装置4a,4bを、それぞれ備える場合を示しているが、これらの個数を限定するものではない。
【0027】
制御装置5は、ロボットシステム1を構成するロボット10等の各種装置と情報伝達可能に接続され、これら接続された各種装置の動作を制御するコントローラの一例である。
【0028】
たとえば、制御装置5は、ロボット10にロボットアーム14の昇降動作や旋回動作を行わせながら、ロボット10にフープ3a,3bまたは3c内のウェハWを搬送室2内へ取り出させ、処理装置4aまたは4b内へ搬入させる。
【0029】
また、制御装置5は、処理装置4aまたは4bにおいて所定のプロセス処理を施されたウェハWをふたたびロボット10に搬出および搬送させ、フープ3a,3bまたは3cへ再収納させる。
【0030】
なお、
図1では、搬送室2の外部に配置された1筐体の制御装置5を示しているが、制御装置5は搬送室2の内部に配置されてもよく、また、制御対象となる各種装置のそれぞれに対応付けられた複数個の筐体で構成されてもよい。
【0031】
ところで、制御装置5によるロボット10の各種動作の動作制御は、予めの教示作業によって生成され、制御装置5の内部メモリ等に記憶されている教示値に基づいて行なわれる。
【0032】
ここで、従来技術によれば、本実施形態の第1ハンド17aおよび第2ハンド17bのように2つのハンドが設けられている場合には、第1ハンド17aおよび第2ハンド17bそれぞれの動作につき、個別に教示作業を施す必要があった。
【0033】
これは、同軸まわりに配置されているとは言え、第1ハンド17aおよび第2ハンド17bには通常、機械誤差や組立誤差等に起因する個体差があるためである。このため、教示作業が煩雑なものとなっていた。
【0034】
そこで、本実施形態では、これら2つのハンドのうちの一方(たとえば、第1ハンド17a)を基準のハンドとし、かかる基準のハンドである第1ハンド17aに対してのみ教示作業を施して、第1ハンド17aの教示値をまずは生成することとした。
【0035】
そして、本実施形態では、その他のハンド(ここでは、第2ハンド17b)の教示値については、第1ハンド17aおよび第2ハンド17bの軸a3まわりにおける相対誤差を検出し、かかる相対誤差に基づいて第1ハンド17aの教示値から生成することとした。
【0036】
これにより、従来のように第1ハンド17aおよび第2ハンド17bそれぞれの動作につき、個別に教示作業を施す必要がなくなるので、効率よく教示作業を行うことができる。
【0037】
このような第1の実施形態に係るロボットシステム1について、以下、
図2〜
図8を用いてさらに具体的に説明してゆく。
図2は、ロボット10の斜視模式図である。
【0038】
図2に示すように、ロボット10は、基台11と、昇降部12と、第1関節部13と、ロボットアーム14と、第2関節部15と、第3関節部16と、ハンド17とを備える。ロボットアーム14は、第1アーム14aと、第2アーム14bとをさらに備える。ハンド17は、第1ハンド17aと、第2ハンド17bとをさらに備える。
【0039】
基台11は、ロボット10のベース部であり、上述の基台設置フレームに固定される場合のほか、搬送室2の側壁面に固定される場合や、その上面にて装置と固定される場合等がある。昇降部12は、かかる基台11から鉛直方向(Z軸方向)にスライド可能に設けられ(図中の矢印a0参照)、ロボットアーム14を鉛直方向に沿って昇降させる。
【0040】
第1関節部13は、軸a1まわりの回転関節である。第1アーム14aは、かかる第1関節部13を介し、昇降部12に対して回転可能に連結される(図中の軸a1まわりの矢印参照)。
【0041】
また、第2関節部15は、軸a2まわりの回転関節である。第2アーム14bは、かかる第2関節部15を介し、第1アーム14aに対して回転可能に連結される(図中の軸a2まわりの矢印参照)。
【0042】
また、第3関節部16は、軸a3まわりの回転関節である。第1ハンド17aおよび第2ハンド17bは、かかる第3関節部16を介し、ロボットアーム14の先端側である第2アーム14bの自由端側に対してそれぞれ独立に回転可能に連結される(図中の軸a3まわりの矢印参照)。
【0043】
なお、ロボット10には、サーボモータ等の駆動源(図示略)が搭載されており、第1関節部13、第2関節部15および第3関節部16のそれぞれは、かかる駆動源の駆動に基づいて回転する。
【0044】
ハンド17は、たとえば真空吸着することによってウェハWを保持可能に設けられたエンドエフェクタである。ハンド17の構成の詳細については、
図3等を用いて後述する。
【0045】
なお、
図2には、ロボット10が2つのハンド17、すなわち第1ハンド17aおよび第2ハンド17bを備える場合を示しているが、ハンド17の個数を限定するものではなく、たとえば3個以上設けられてもよい。
【0046】
そして、ロボット10は、上述の制御装置5による動作制御に基づき、昇降部12による昇降動作、第1アーム14a、第2アーム14bおよびハンド17の回転動作を組み合わせながら、ウェハWを搬送するための搬送動作を行う。なお、制御装置5による動作制御は、たとえば上述の駆動源を任意の角度だけ回転させる動作信号をロボット10に対し送出することによって行われる。
【0047】
次に、ハンド17の構成について
図3を用いて説明する。
図3は、ハンド17の平面模式図である。なお、
図3には、平面視においてそれぞれの外形ラインが一致するように第1ハンド17aおよび第2ハンド17bが重なっている状態のハンド17を示している。第1ハンド17aおよび第2ハンド17bは、取り付けの高さ位置が異なるのみで、それ以外は同一構成である。
【0048】
あわせて
図3には、ハンド17に保持されて規定位置にある仮想上のウェハWを二点鎖線で示している。符号「C」が示すのは、かかるウェハWの中心である。
【0049】
図3に示すように、ハンド17は、第2アーム14bの先端部において、第3関節部16を介し、軸a3まわりに回転可能に設けられる。ハンド17は、プレート支持部171と、プレート172とを備える。
【0050】
プレート支持部171は、第3関節部16に連結され、プレート172を支持する。プレート172は、ハンド17の基部にあたる部材であり、セラミックス等により形成される。なお、
図3には、先端側が二股に分かれた形状のプレート172を例示しているが、プレート172の形状を限定するものではない。
【0051】
なお、
図3には図示していないが、ハンド17はまた、ウェハWを保持する保持部材を備える場合がある。かかる保持部材には、たとえばウェハWのエッジをグリップするタイプのものや、ウェハWを真空吸着するタイプのもの、あるいは単に載置されたウェハWを摩擦力によって保持するタイプのもの等、様々な保持方式のものを用いることができる。
【0052】
ところで、本実施形態では、基準となる第1ハンド17aへの教示作業や、第1ハンド17aおよび第2ハンド17bの軸a3まわりの相対誤差の検出を行うにあたって、「ウェハ治具」および「センサ治具」と呼ぶ2種類の治具を用いる。「ウェハ治具」は、第1治具の一例である。また、「センサ治具」は、第2治具の一例である。
【0053】
次に、これら治具について
図4A〜
図4Cを用いて説明する。
図4Aは、ウェハ治具WJの平面模式図であり、
図4Bは、ウェハ治具WJの側面模式図である。また、
図4Cは、センサ治具SJの平面模式図である。
【0054】
まず、ウェハ治具WJについて説明する。ウェハ治具WJは、ウェハWを模した治具であり、被検出側に装着される。具体的に、ウェハ治具WJは、基準となる第1ハンド17aへの教示作業を行う場合には、教示のための所定の目標位置(教示位置)となる場所、たとえば前述のフープ3a,3bまたは3c内における所望の教示位置に収納される。
【0055】
また、ウェハ治具WJは、第1ハンド17aおよび第2ハンド17bの軸a3まわりの相対誤差を検出する場合には、第2ハンド17bのウェハWの規定位置に装着される。
【0056】
具体的に、ウェハ治具WJは、
図4Aおよび
図4Bに示すように、ウェハWと略同一形状に形成される。また、ウェハ治具WJは、センタピンCPをさらに備える。なお、センタピンCPは、指標部の一例である。
【0057】
センタピンCPは、軸心がウェハWの中心Cに重なるピン状の部材であり、教示位置におけるX軸位置を定めるための部材である。
【0058】
つづいて、センサ治具SJについて説明する。センサ治具SJは、検出側に装着される治具である。具体的に、センサ治具SJは、基準となる第1ハンド17aへの教示作業を行う場合、第1ハンド17aおよび第2ハンド17bの相対誤差を検出する場合のいずれにおいても、第1ハンド17aへ装着される。
【0059】
具体的に、センサ治具SJは、
図4Cに示すように、エッジセンサESおよびセンタセンサCSの2種類のセンサを備える。なお、ここで配置関係等を分かりやすくするため、
図4Cには
図3と同様に、センサ治具SJが装着された第1ハンド17aと第2ハンド17bとが重なった状態のハンド17を示した。また、第2ハンド17bには、ウェハ治具WJが装着されているものとする。
【0060】
エッジセンサESは、
図4Cに示す配置関係において、X軸に平行な光軸L1を形成するように設けられて、ウェハ治具WJのエッジの検出等に用いられる。
【0061】
センタセンサCSは、
図4Cに示す配置関係において、ウェハ治具WJのセンタピンCPに対応する位置に配置され、Y軸に平行な光軸L2を形成するように設けられて、センタピンCPの検出等に用いられる。
【0062】
なお、これらウェハ治具WJおよびセンサ治具SJを用いた第1ハンド17aへの教示作業時や第1ハンド17aおよび第2ハンド17bの相対誤差の検出時におけるロボットアーム14の具体的な動作については、
図6A〜
図7Gを用いて後述する。
【0063】
次に、第1の実施形態に係るロボットシステム1の構成について
図5を用いて説明する。
図5は、第1の実施形態に係るロボットシステム1のブロック図である。なお、
図5では、ロボットシステム1の説明に必要な構成要素のみを示しており、一般的な構成要素についての記載を省略している。
【0064】
また、
図5を用いた説明では主に、第1ハンド17aおよび第2ハンド17bの教示値を生成する場合に機能する制御装置5の各機能ブロックおよび各機能ブロック間の作用について説明することとする。このため、既に
図1等で示した各種装置については説明を簡略化するか省略する場合がある。また、
図5を用いた説明では、上述のエッジセンサESおよびセンタセンサCSを「センサES,CS」と総称する場合がある。
【0065】
図5に示すように、制御装置5は、制御部51と、記憶部52とを備える。制御部51は、動作制御部51aと、第1生成部51bと、誤差取得部51cと、第2生成部51dとをさらに備える。
【0066】
記憶部52は、ハードディスクドライブや不揮発性メモリといった記憶デバイスであり、事前教示情報52aと、第1ハンド教示情報52bと、相対誤差情報52cと、第2ハンド教示情報52dとを記憶する。なお、記憶部52は、揮発性メモリであってもよく、この場合、制御装置5以外の装置、たとえば上位装置等に設けられた不揮発性メモリとの間の通信での組み合わせによって、記憶デバイスとして構成されてもよい。
【0067】
事前教示情報52aは、教示作業において必要となる基本的な動作をロボットアーム14に行わせるための言わば教示値の初期値を含む情報であり、教示作業前にあらかじめ記憶部52に登録される。
【0068】
第1ハンド教示情報52bは、第1ハンド17aへの教示作業の結果生成される第1ハンド17aの教示値を含む情報である。相対誤差情報52cは、第1ハンド17aの教示値から第2ハンド17bの教示値を生成するために検出される、第1ハンド17aおよび第2ハンド17bの軸a3まわりの相対誤差を含む情報である。
【0069】
第2ハンド教示情報52dは、かかる相対誤差に基づいて第1ハンド17aの教示値から生成されることとなる第2ハンド17bの教示値を含む情報である。
【0070】
制御部51は、たとえばCPU(Central Processing Unit)であり、制御装置5の全体制御を行う。動作制御部51aは、ロボットアーム14の動作を制御する。
【0071】
具体的には、動作制御部51aは、第1ハンド17aへの教示作業を行う場合には、かかる教示作業のために必要となる動作を第1ハンド17aおよび第2ハンド17bを含むロボットアーム14が行うように、事前教示情報52aに基づいて制御する。
【0072】
また、動作制御部51aは、上記相対誤差を検出する場合には、かかる検出に必要となる動作をロボットアーム14が行うように、事前教示情報52aおよび第1ハンド教示情報52bに基づいて制御する。
【0073】
第1生成部51bは、第1ハンド17aへの教示作業におけるロボットアーム14の動作によって検出されるセンサES,CSの検出結果に基づいて第1ハンド17aの教示値を生成し、第1ハンド教示情報52bに含んで記憶させる。
【0074】
誤差取得部51cは、上記相対誤差の検出に必要となる動作をロボットアーム14が行った場合に検出されるセンタセンサCSの検出結果から上記相対誤差を取得し、相対誤差情報52cに含んで記憶させる。
【0075】
第2生成部51dは、相対誤差情報52cに含まれる相対誤差に基づき、第1ハンド教示情報52bの第1ハンド17aの教示値から第2ハンド17bの教示値を生成し、第2ハンド教示情報52dに含んで記憶させる。
【0076】
そして、ロボットシステム1は、このように生成された第1ハンド教示情報52bの第1ハンド17aの教示値、および、第2ハンド教示情報52dの第2ハンド17bの教示値に基づき、実運用中、第1ハンド17aおよび第2ハンド17bを動作させることとなる。
【0077】
次に、これまで説明した本実施形態の構成を前提に、第1ハンド17aへの教示作業時におけるロボットアーム14の具体的な動作について、
図6A〜
図6Cを用いて説明する。
図6A〜
図6Cは、第1ハンド17aへの教示作業時におけるロボットアーム14の動作を示す模式図(その1)〜(その3)である。
【0078】
まず、
図6Aには、
図1でも説明したフープ3a,3b,3cの斜視模式図を示した。なお、フープ3a,3b,3cは、それぞれ配置位置が異なるのみで同一構成であるものとする。
図6Aに示すように、フープ3a,3b,3cは、複数のウェハWをZ軸方向に多段に1枚ずつ収納可能となるように形成された複数の溝部31を有する。
【0079】
そして、第1ハンド17aへの教示作業においては、かかる溝部31のうちの1つが所望の教示位置として定められ、かかる溝部31へウェハ治具WJがウェハWと同様に収納される。
【0080】
そして、ロボットアーム14は、センサ治具SJの装着された第1ハンド17aを、ウェハ治具WJへアプローチさせるようにY軸方向に沿って進入させる(図中の進入方向参照)。なお、このとき、エッジセンサESが、光軸L1によってウェハ治具WJのエッジ位置を検出することで、第1ハンド17aを進入させる高さ位置を検出する。
【0081】
つづいて、
図6Bに示すように、ロボットアーム14は、センタセンサCSをセンタピンCPへアプローチさせる。このとき、略コの字状のセンタセンサCSをセンタピンCPへ干渉させないように、ロボットアーム14は、第1ハンド17aをX軸方向へ振った後、進入させる(図中の矢印601および602参照)。
【0082】
そして、第1ハンド17aを軸a3まわりに左右の順に振り(図中の矢印603および604参照)、光軸L2によってセンタピンCPのX軸位置を検出させる。これにより、センタピンCPのX軸位置が定まる。
【0083】
そして、このようにセンタセンサCSがセンタピンCPを検出した際のロボットアーム14の姿勢に基づき、前述の第1生成部51b(
図5参照)が第1ハンド17aの教示値を生成することとなる。
【0084】
図6Cに示すように、かかる教示値には、第2アーム14bの延在方向に対する第1ハンド17aの軸a3まわりの回転量θが含まれる。
【0085】
ところで、
図6Cに示すように、たとえばロボット10から視てX軸の正方向側に寄った位置にあるフープ3aへロボットアーム14がアクセスする場合、第1ハンド17aを含むハンド17は干渉回避等のために時計回りに回転させることが好ましい(図中の矢印605参照)。すなわち、本実施形態では、教示位置のそれぞれに対応するロボットアーム14の姿勢に応じて、ハンド17を時計回りあるいは反時計回りに回転させる。
【0086】
この点を分かりやすくするため、以下の説明では、
図6Cに示すように、時計回りに回転させる場合については回転量θに「+」記号を付すこととする。また、反対に、反時計回りに回転させる場合については回転量θに「−」記号を付すこととする。
【0087】
なお、かかる時計回り/反時計回りに関し、上記相対誤差は、第1ハンド17aおよび第2ハンド17bを同一方向かつ同一回転量(たとえば、+θ)で回転させたとしても、回転方向が時計回りであるか反時計回りであるかによって異なるのが通常である。
【0088】
この点に鑑みつつ、つづいて上記相対誤差の検出時におけるロボットアーム14の具体的な動作について、
図7A〜
図7Gを用いて説明する。
図7A〜
図7Gは、第1ハンド17aおよび第2ハンド17bの相対誤差の検出時におけるロボットアーム14の動作を示す模式図(その1)〜(その7)である。
【0089】
なお、
図7C〜
図7Eでは、予めの第1ハンド17aへの教示作業が、
図6Cに示したようにフープ3aにおける所望の教示位置を対象として行われたものとして説明を進める。すなわち、
図6Cに示したように、
図7C〜
図7Eでは、第1ハンド17aの教示値に含まれる第1ハンド17aの軸a3まわりの回転量は「+θ」である。
【0090】
まず、
図7Aに示すように、第1ハンド17aおよび第2ハンド17bの相対誤差の検出時においては、第1ハンド17aにはそのままセンサ治具SJが、第2ハンド17bにはウェハ治具WJが、それぞれ装着される。このときウェハ治具WJは、第2ハンド17bのウェハWの規定位置に位置決めされて装着される。
【0091】
なお、以降の
図7B〜
図7Gでは、図を分かりやすくするため、センサ治具SJおよびウェハ治具WJの図示をあえて省略している。
【0092】
また、上記相対誤差の検出時においては、ロボットアーム14は、第1ハンド17aが所望の教示位置へ到達した際の姿勢とは異なる姿勢をとったうえで、第1ハンド17aおよび第2ハンド17bを回転させる。
【0093】
すなわち、フープ3a,3b,3c内や狭い場所等において第1ハンド17aおよび第2ハンド17bを回転させないので、周囲への干渉を回避しながら相対誤差の検出作業を進めることができる。
【0094】
かかる異なる姿勢の一例として、ロボットアーム14は、
図7Bに示すように、第1アーム14aおよび第2アーム14bそれぞれの延在方向の軸線が重なるように折り畳まれた姿勢をとる。
【0095】
これにより、旋回しても比較的周囲へ干渉しにくい安全な姿勢で相対誤差の検出を行うことができる。また、重力作用にともなうロボットアーム14のたわみによる影響等を減らすことができるので、上記相対誤差を高精度に検出することが可能となる。
【0096】
なお、
図7Bでは、第1アーム14aおよび第2アーム14bがほぼ全体的に重なる場合を例に挙げたが、異なる姿勢の一例はこれに限らず、第1アーム14aおよび第2アーム14bの一部が重なる姿勢であってもよい。
【0097】
また、ロボットアーム14は、第1ハンド17aおよび第2ハンド17bについては、相対誤差検出のための初期姿勢として、平面視においてそれぞれの外形ラインが一致するように軸a3まわりに回転させ、重ねた状態とする。
【0098】
つづいて、
図7Cに示すように、ロボットアーム14は、第1ハンド17aおよび第2ハンド17bの双方を第2アーム14bに対し、軸a3まわりに「+θ」の回転量で回転させる(図中の矢印701参照)。すなわち、既に生成済みの第1ハンド17aの教示値で、第1ハンド17aおよび第2ハンド17bをともに回転させる。
【0099】
このとき、ロボットアーム14は、第1ハンド17aおよび第2ハンド17bを同時に回転させてもよいし、タイミングをずらせて回転させてもよい。なお、タイミングをずらす場合、センサ治具SJのセンタセンサCSと、ウェハ治具WJのセンタピンCPとを干渉させないように回転させることが好ましい。
【0100】
このように、第1ハンド17aの教示値に基づく同一方向かつ同一回転量で第1ハンド17aおよび第2ハンド17bを回転させることで、
図7Dに示すように、第1ハンド17aの教示値に応じた相対誤差「α」を現出させることができる。
【0101】
なお、
図7Dに示す例では、かかる相対誤差「α」は、第2ハンド17bを第1ハンド17aに対し、さらに時計回り方向に「α」分ずらすものであるので、以下、「+α」と表す場合がある。
【0102】
そして、
図7Eに示すように、ロボットアーム14は、現出した相対誤差「α」を図示略のセンサ治具SJにより検出させるため、第1ハンド17aを「探り動作」させる(ステップS1参照)。
【0103】
なお、ここで「探り動作」は、第1ハンド17aを時計回りあるいは反時計回りに微量ずつ振って(図中の矢印702参照)、図示略のウェハ治具WJの指標部(すなわち、センタピンCP)を探索させる動作である。既に示した例で言えば、
図6Bの矢印603および604が示す動きに対応する。
【0104】
そして、かかる探り動作により、センサ治具SJのセンタセンサCSが指標部を検出したならば(ステップS2)、かかる検出結果に基づいて前述の誤差取得部51c(
図5参照)が相対誤差「+α」を取得し(ステップS3)、相対誤差情報52cに含んで記憶させる。
【0105】
そして、前述の第2生成部51d(
図5参照)が、かかる相対誤差「+α」に基づき、第1ハンド17aの教示値からたとえば「−α」の演算を行うことによって、第2ハンド17bの教示値を生成することとなる。
【0106】
ところで、
図7C〜
図7Eでは、予めの第1ハンド17aへの教示作業が、フープ3aにおける所望の教示位置を対象として行われたものとして説明を進めた。ここで、既に述べたように、上記相対誤差は、たとえ回転量が同一であったとしても、第1ハンド17aおよび第2ハンド17bを時計回りに回転させるかあるいは反時計回りに回転させるかによって異なるのが通常である。
【0107】
そこで、
図7Fに示すように、予めの第1ハンド17aへの教示作業が、フープ3aとは反対側のフープ3cにおける所望の教示位置を対象として行われた場合についても説明しておく。なお、前提として、この場合の第1ハンド17aへの教示作業によって生成された第1ハンド17aの軸a3まわりの回転量は「−θ」であるものとする(図中の矢印703参照)。
【0108】
かかる場合、ロボットアーム14は、第1ハンド17aがフープ3cにおける所望の教示位置へ到達した際の姿勢とは異なる姿勢をとったうえで(
図7B参照)、
図7Gに示すように、第1ハンド17aおよび第2ハンド17bの双方を第2アーム14bに対し、軸a3まわりに「−θ」の回転量で回転させる(図中の矢印704参照)。
【0109】
そして、かかる「−θ」の回転量で現出する相対誤差について、ロボットアーム14は、
図7Eに示したのと同様の探り動作を行い、かかる「−θ」の回転量に応じた相対誤差を検出させ、誤差取得部51cに取得させることとなる。
【0110】
このように、本実施形態では、教示位置のそれぞれに第1ハンド17aが到達した場合の第1ハンド17aの回転方向および回転量に応じて、相対誤差を検出する場合にもこれと同一方向かつ同一回転量で第1ハンド17aおよび第2ハンド17bの双方を回転させる。
【0111】
これにより、ハンド17を時計回りにあるいは反時計回りに回転させた場合のそれぞれの相対誤差を個別に吸収することができるので、高精度な教示作業を行うのに資することができる。
【0112】
そして、本実施形態では、たとえば
図7Fに示したように、教示位置として複数のフープ3a,3b,3cがあった場合、その各々に対する第1ハンド17aの教示値を個別に生成し、生成された教示値それぞれに対応する相対誤差を個別に検出して取得し、取得した相対誤差のそれぞれに基づいて第2ハンド17bの教示値を個別に生成する。
【0113】
これにより、教示位置それぞれに応じてハンド17を時計回りにあるいは反時計回りに回転させた場合のそれぞれの相対誤差を個別に吸収することができるので、やはり高精度な教示作業を行うのに資することができる。
【0114】
また、教示位置が複数ある場合であっても、そのすべてについて第1ハンド17aおよび第2ハンド17bを個別に逐一教示する必要がないので、効率よく教示作業を行うことができる。
【0115】
次に、第1の実施形態に係るロボットシステム1が実行する処理手順について
図8を用いて説明する。
図8は、第1の実施形態に係るロボットシステム1が実行する処理手順を示すフローチャートである。
【0116】
図8に示すように、制御装置5(詳細には動作制御部51a)は、第1ハンド17aが所定の目標位置に到達するようにロボットアーム14の動作を制御する(ステップS101)。
【0117】
そして、第1生成部51bは、目標位置に到達したロボットアーム14により、基準となる第1ハンド17aの教示値を生成する(ステップS102)。
【0118】
つづいて、制御装置5(動作制御部51a)は、生成された第1ハンド17aの教示値に基づき、第1ハンド17aおよび第2ハンド17bを同一回転量で回転させる(ステップS103)。なお、このとき、回転方向もまた同一とする。
【0119】
そして、誤差取得部51cは、ステップS103の回転結果に基づく第1ハンド17aおよび第2ハンド17bの相対誤差を取得して記憶部52へ記憶させる(ステップS104)。
【0120】
そして、第2生成部51dは、記憶された相対誤差に基づいて第1ハンド17aの教示値から第2ハンド17bの教示値を生成し(ステップS105)、処理を終了する。
【0121】
上述してきたように、第1の実施形態に係るロボットシステムは、ロボットアームと、制御装置(コントローラ)とを備える。上記ロボットアームは、同軸まわりにそれぞれ独立に回転可能に設けられた第1ハンドおよび第2ハンド(その他のハンド)を有する。上記制御装置は、上記ロボットアームの動作を制御する。
【0122】
また、上記制御装置は、第1生成部と、誤差取得部と、第2生成部とを備える。上記第1生成部は、上記第1ハンドが所定の目標位置へ到達するように上記ロボットアームを動作させて、この目標位置に対する上記第1ハンドの教示値を生成する。
【0123】
上記誤差取得部は、上記第1ハンドに対する上記第2ハンドの上記同軸まわりにおける相対誤差を取得して記憶部に記憶させる。上記第2生成部は、上記相対誤差に基づいて上記第1ハンドの教示値から上記第2ハンドの教示値を生成する。
【0124】
したがって、第1の実施形態に係るロボットシステムによれば、効率よく教示作業を行うことができる。
【0125】
ところで、これまでは、教示作業が行われる場合を例に挙げて説明したが、かかる教示作業は、ロボットシステムの出荷前に行われてもよいし、出荷/現地導入後の実運用前に行われてもよい。
【0126】
出荷前に行われる場合、たとえば実運用における構成を実際に組んだうえで、実際の目標位置、たとえば第1の実施形態で言えば、フープ3a,3b,3c(
図1等参照)を教示位置にして、上述してきた手法で教示作業を行えばよい。
【0127】
また、出荷前に行われる場合、実運用における構成を仮に組むことなく、たとえば第1ハンド17aおよび第2ハンド17b(
図1等参照)の少なくとも360度分の相対誤差を予め検出して相対誤差情報52c(
図5参照)をデータベース化しておくこととしてもよい。
【0128】
具体的には、第1ハンド17aおよび第2ハンド17bの相対誤差を、時計回りあるいは反時計回りのそれぞれにつき、1度ずつ回転量を変化させて少なくとも360度分検出しておき、これを相対誤差情報52cとして出荷前に予めデータベース化しておけばよい。
【0129】
そして、この場合には、ロボットシステム1の出荷/現地導入後に教示作業を行って、たとえば第1ハンド17aの教示値が定まれば、第2ハンド17bの教示値については、予めの相対誤差情報52cに基づいて第1ハンド17aの教示値から生成すればよい。
【0130】
こうした出荷前/出荷後の教示作業の振り分けあるいは相対誤差情報52cの予めのデータベース化はオプション的に選択可能とすれば、エンドユーザの運用構成にも適宜応じたより効率的な教示作業の行えるロボットシステムを提供することが可能となる。
【0131】
さらに、実運用中等においても、上記相対誤差の変化を所定のタイミングで取得して、軸a3(
図1等参照)まわりの機械的要素、たとえばモータ等の駆動源やプーリ、ベルトといった回転伝達機構等の経年劣化を監視してもよい。かかる場合を、次に第2の実施形態として、
図9を用いて説明する。
【0132】
(第2の実施形態)
図9は、第2の実施形態に係るロボットシステム1’のブロック図である。
図9は、
図5に対応している。なお、第2の実施形態では、主に第1の実施形態と異なる構成要素についてのみ説明する。
【0133】
また、
図9に示すブロック図の各機能ブロックを結ぶブロック線は、実運用中における各機能ブロック間の作用を示している。このため、
図5の教示作業時における作用を示すブロック線についてはあえて省略している。
【0134】
図9に示すように、第2の実施形態に係るロボットシステム1’は、報知部6と、制御部51’が状態監視部51eとをさらに備える点で、第1の実施形態に係るロボットシステム1とは異なる。
【0135】
状態監視部51eは、たとえば実運用中に、誤差取得部51cに対し所定のタイミングで第1ハンド17aおよび第2ハンド17bの相対誤差を取得させる。また、状態監視部51eは、誤差取得部51cが取得し、相対誤差情報52cに記憶させた相対誤差の変化に基づいて軸a3まわりの機械的要素の経年劣化等を監視する。
【0136】
そして、状態監視部51eは、かかる機械的要素の経年劣化等を検知したならば、報知装置である報知部6に対しその旨を通知する。報知部6は、機械的要素の経年劣化等により、たとえばメンテナンスが必要である旨をオペレータ等に対し報知する。
【0137】
なお、所定のタイミングで第1ハンド17aおよび第2ハンド17bの相対誤差を取得させるにあたっては、たとえばセンサES,CSを、センサ治具SJ(
図4C等参照)ではなく予め第1ハンド17aが備えることとしてもよい。
【0138】
また、ウェハ治具WJ(
図4A等参照)については、フープ3a,3b,3cのいずれかの所定位置に常に収納されているものとし、これを相対誤差取得の際に第2ハンド17bへロボットアーム14の動作によって装着させてもよい。
【0139】
また、自動化に限らず、人手を介してセンサ治具SJおよびウェハ治具WJをそれぞれ装着させ、状態監視部51eへトリガーを与えて監視処理を実行させてもよい。
【0140】
このように所定のタイミングで第1ハンド17aおよび第2ハンド17bの相対誤差の変化を監視することで、教示作業の効率性の向上に加えて、さらに保全性を向上させることができる。
【0141】
上述してきたように、第2の実施形態に係るロボットシステムは、状態監視部をさらに備える。上記状態監視部は、所定のタイミングで上記誤差取得部に上記相対誤差を取得させる。
【0142】
したがって、第2の実施形態に係るロボットシステムによれば、教示作業の効率性の向上に加えて、さらに保全性を向上させることができる。
【0143】
なお、上述した各実施形態では、同軸まわりにそれぞれ独立に回転可能な第1ハンドおよび第2ハンドの2つのハンドを例に挙げ、ハンドの個数を限定するものではない旨を述べたが、この点について補足すれば、基準となるハンドは常に1つあればよい。したがって、その他のハンドの教示値については、常に基準となるハンドの教示値から、相対誤差に基づいて生成されることとなる。
【0144】
また、上述した各実施形態では、常に上側の第1ハンドが基準となるハンドである場合を例に挙げたが、たとえば下側の第2ハンドを基準としてもよい。この場合、第2ハンドに対してセンサ治具を装着し、第1ハンドに対してはウェハ治具をセンタピンが下方を向くように装着することで適用が可能である。
【0145】
また、上述した各実施形態では、単腕ロボットを例に挙げて説明したが、同軸まわりにそれぞれ独立に回転可能な複数のハンドを有していれば、双腕以上の多腕ロボットに適用されてもよい。
【0146】
また、上述した各実施形態では、被搬送物がウェハである場合を例に挙げたが、これに限定されるものではない。なお、この場合、ウェハ治具に相当する治具は、被搬送物となるワークの形状に応じた形状に形成されればよい。
【0147】
また、上述した各実施形態では、ロボットが、ウェハ等の基板を搬送する基板搬送用ロボットである場合を例に挙げたが、搬送作業以外の作業を行うロボットであってもよい。たとえば、同軸まわりにそれぞれ独立に回転可能な複数のハンドを用いて保持したワークの相対位置を保ちつつ所定の組立作業を行う組立ロボット等であってもよい。
【0148】
また、上述した各実施形態によって、ロボットの軸数が限定されるものではない。
【0149】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。