(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような再生処理時のポスト噴射は、圧縮上死点から120度ほど遅角したタイミングで行われる。しかしながら、圧縮上死点後の約120度付近では、排気バルブの開弁によって筒内圧が略ゼロとなり、ポスト噴射の供給燃料が筒内燃焼しない。このため、エンジン出口の排気温度を効果的に上昇させることは難しく、再生処理に酸化触媒が必須となる。
【0006】
一方、ポスト噴射による供給燃料を確実に筒内燃焼させるには、圧縮上死点後の早期にポスト噴射を行うことが考えられる。しかしながら、例えば、圧縮上死点後約15度の早期のタイミングでは、ポスト噴射による供給燃料の燃焼エネルギがトルクとなるため、排気ガスの昇温幅は小さくなる可能性がある。
【0007】
これらを解消するには、例えば、圧縮上死点から40〜50度ほど遅角したタイミングでポスト噴射を行うことが好ましい。しかしながら、圧縮上死点後の40〜50度付近では、筒内圧が圧縮上死点よりも約半分程度に低下しているため、ポスト噴射による供給燃料を確実に筒内燃焼させられない可能性がある。
【0008】
開示のシステムは、ポスト噴射による供給燃料を筒内燃焼させて排気温度を効果的に上昇させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
開示のシステムは、内燃機関の排気系に設けられた排気浄化装置の再生装置であって、前記内燃機関の筒内に燃料を噴射するインジェクタと、通電により発熱して前記筒内を昇温するグロープラグと、前記インジェクタの燃料噴射及び前記グロープラグの通電を制御して、前記排気浄化装置の浄化能力を回復させる再生処理を実行する再生制御手段と、を備え、前記再生制御手段は、前記再生処理に際し、前記インジェクタの燃料噴射を少なくともポスト噴射を含む多段噴射で制御すると共に、前記グロープラグを所定のデューティ比で通電して前記ポスト噴射による供給燃料を筒内燃焼させる。
【発明の効果】
【0010】
開示のシステムによれば、ポスト噴射による供給燃料を筒内燃焼させて排気温度を効果的に上昇させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面に基づいて、本発明の一実施形態に係る排気浄化装置の再生装置を説明する。同一の部品には同一の符号を付してあり、それらの名称及び機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0013】
図1は、本実施形態に係るディーゼルエンジン(以下、単にエンジンとう)10の吸排気系の一例を示す概略構成図である。
図1中において、符号11は筒内に燃料を直噴するインジェクタ、符号12は筒内に臨むグロープラグ、符号30は筒内圧センサ、符号31はエンジン回転数センサ、符号32はアクセル開度センサ、符号50は電子制御ユニット(以下、ECUという)をそれぞれ示している。
【0014】
吸気マニホールド10Aには、筒内に吸気を導入する吸気通路13が接続されている。この吸気通路13には、吸気上流側から順に、エアクリーナ14、過給機のコンプレッサ15A、インタークーラ16、吸気温度センサ17等が設けられている。また、吸気マニホールド10Aには、ブースト圧センサ18が設けられている。
【0015】
排気マニホールド10Bには、筒内から排気を導出する排気通路20が接続されている。この排気通路20には、排気上流側から順に、過給機のタービン15B、排気温度センサ21、排気浄化装置40、NOxセンサ22等が設けられている。
【0016】
排気浄化装置40は、ケース40A内に排気上流側から順にNOx吸蔵還元型触媒41、フィルタ42を配置して構成されている。また、フィルタ42の上流側及び下流側には、フィルタ42の前後差圧を検出する差圧センサ43が設けられている。
【0017】
NOx吸蔵還元型触媒41は、例えば、ハニカム構造体等のセラミック製担体表面にアルカリ金属等を担持して形成されている。このNOx吸蔵還元型触媒41は、排気がリーン雰囲気のときに排気中のNOxを吸蔵すると共に、排気がリッチ雰囲気のときに排気中に含まれる還元剤(HC等)で吸蔵したNOxを還元浄化する。
【0018】
フィルタ42は、例えば、多孔質性の隔壁で区画された多数のセルを排気の流れ方向に沿って配置し、これらセルの上流側と下流側とを交互に目封止して形成されている。フィルタ42は、排気中のPMを隔壁の細孔や表面に捕集すると共に、PM堆積推定量が所定量に達すると、これを燃焼除去するいわゆるフィルタ再生が実行される。
【0019】
ECU50は、エンジン10の各種制御を行うもので、公知のCPUやROM、RAM、入力ポート、出力ポート等を備え構成されている。また、ECU50は、NOx吸蔵還元型触媒41からNOxやSOxを離脱させる触媒再生制御及び、フィルタ42から堆積したPMを燃焼除去するフィルタ再生制御を実行する再生制御手段としても機能する。以下、これら再生制御の詳細について説明する。
【0020】
[再生制御の開始条件]
触媒再生制御は、エンジン10の運転状態やNOxセンサ22のセンサ値等に基づいて推定したNOx吸蔵量やSOx吸着量が所定の上限閾値に達すると、触媒再生フラグF
LNTをオン(F
LNT=1)にすることで開始される。
【0021】
フィルタ再生制御は、差圧センサ43で検出されるフィルタ42の前後差圧に基づいて推定したPM堆積量が所定の上限閾値に達した場合、あるいは、車両の走行距離が前回のフィルタ再生終了から所定の走行距離に達すると、フィルタ再生フラグF
DPFをオン(F
DPF=1)にすることで開始される。
【0022】
[再生制御時の燃料噴射]
再生制御中の燃料噴射は、
図2(c)に示すように、少なくともメイン噴射を含むマルチ噴射に、圧縮上死点から約40〜50度ほど遅角したタイミングで所定量の燃料を噴射するポスト噴射を実行することで制御される。このポスト噴射の燃料噴射量は、排気温度センサ21の検出値に基づいて、NOx吸蔵還元型触媒41やフィルタ42に流入する排気温度が触媒再生やフィルタ再生に必要な所定の目標温度(例えば、約550〜650℃)に維持されるようにフィードバック制御される。
【0023】
[グロープラグの通電制御]
再生制御中は、ポスト噴射による供給燃料を筒内燃焼させるグロープラグ12の通電制御が実行される。本実施形態において、通電制御は
図3に示すエンジン10の運転状態(負荷QN)に基づいて参照される通電量マップMで制御される。この通電量マップM上には、予め実験等により求めたグロープラグ12の昇温補助が必要となるエンジン10の負荷QNに対応する通電領域Aと、ポスト噴射による供給燃料が筒内燃焼する所定温度まで筒内ガス温度を上昇させるのに必要になるグロープラグ12の通電量(デューティ比D)との関係が規定されている。通電量マップM上のデューティ比Dは、エンジン10の負荷QNが低負荷側になるほど増加するように設定されている。
【0024】
ECU50は、再生制御が開始されると、エンジン回転数センサ31やアクセル開度センサ32から取得されるエンジン10の運転状態が、通電量マップM上の通電領域A内にあるか否かを判定する。そして、運転状態が通電領域Aにあれば、通電量マップMからその時の運転状態に対応するデューティ比Dを読み取ると共に、読み取ったデューティ比Dでグロープラグ12を通電する。これにより、ポスト噴射が確実に筒内燃焼されて、エンジン10の出口排気温度は触媒再生やフィルタ再生に必要な所定の目標温度まで急速に昇温される。
【0025】
なお、
図3には通電量マップMが1個のみ示されているが、NOxパージ用、SOxパージ用、フィルタ再生用の3種類の通電量マップを個別に備えてもよい。また、エンジン10の各気筒毎にそれぞれ通電量マップを備えてもよい。
【0026】
[デューティ比の増加補正]
低温環境下等、吸気温度が低下する状態や、過給機15の応答遅れ等が生じると、通電量マップMに基づいて設定したデューティ比Dでグロープラグ12を通電しても、ポスト噴射による供給燃料を確実に筒内燃焼させられない可能性がある。
【0027】
このような現象を解消すべく、ECU50は、吸気温度センサ17で検出される実吸気温度が所定の目標吸気温度よりも低い場合又は、ブースト圧センサ18で検出される実吸気圧が所定の目標吸気圧よりも低い場合に、グロープラグ12に通電するデューティ比Dを増加補正する。増加補正量αは、予め実験等により作成した実吸気温度と目標吸気温度との偏差又は、実吸気圧と目標吸気圧との偏差に基づいて参照される図示しない補正量マップや近似式等から求めればよい。
【0028】
[通電量マップの学習補正]
通電量マップMから設定したデューティ比Dでグロープラグ12を通電しても、グロープラグ12の経年劣化や特性変化等の影響を受けると、
図2(a)に示すように、ポスト噴射の筒内燃焼によって生じる実際の熱発生率が目標とする熱発熱率から乖離する可能性がある。
【0029】
このような現象を解消すべく、ECU50は、再生制御中に筒内圧センサ30のセンサ値から推定したポスト噴射の実熱発生率と目標熱発生率との偏差ΔQに基づいてデューティ比Dの学習補正値を演算すると共に、演算した学習補正値で通電量マップM上のデューティ比Dを更新する学習補正を実行する。
【0030】
[再生制御の終了条件]
触媒再生制御は、エンジン10の運転状態やNOxセンサ22のセンサ値等に基づいて推定したNOx吸蔵量やSOx吸着量が所定の下限閾値まで低下すると、触媒再生フラグF
LNTをオフ(F
LNT=0)にすることで終了される。
【0031】
フィルタ再生制御は、差圧センサ43で検出されるフィルタ42の前後差圧に基づいて推定したPM堆積量が所定の下限閾値まで低下した場合に、フィルタ再生フラグF
DPFをオフ(F
DPF=0)にすることで終了される。
【0032】
また、これら触媒再生制御やフィルタ再生制御は、再生制御開始から積算した累積時間が所定の上限時間に達した場合、あるいは、再生制御開始から積算したポスト噴射の累積噴射量が所定の上限噴射量に達した場合も終了される。
【0033】
次に、
図4に基づいて、本実施形態に係る再生制御のフローを説明する。
【0034】
ステップS100では、再生制御の開始条件が成立したか否かが判定される。NOx吸蔵量やSOx吸着量が所定の上限閾値に達した場合は、ステップS110に進んで触媒再生フラグF
LNTがオン(F
LNT=1)にされる。また、PM堆積量が所定の上限閾値に達した場合は、ステップS110に進んでフィルタ再生フラグF
DPFがオン(F
DPF=1)にされる。
【0035】
ステップS120では、エンジン回転数センサ31やアクセル開度センサ32から取得されるエンジン10の運転状態が、通電量マップM上の通電領域Aの範囲内にあるか否かが判定される。エンジン10の運転状態が通電領域Aにある場合(Yes)は、昇温補助を実行すべくステップS130に進む。一方、エンジン10の運転状態が通電領域Aにない場合(No)は、昇温補助を行うことなくステップS160に進む。
【0036】
ステップS130では、吸気温度センサ17で検出される実吸気温度が所定の目標吸気温度よりも低いか否かが判定される。実吸気温度が目標吸気温度よりも低くない場合(No)は、ステップS140に進み、通電量マップMから読み取ったデューティ比Dでグロープラグ12が通電される。
【0037】
一方、実吸気温度が目標吸気温度よりも低い場合(Yes)は、ステップS150に進み、通電量マップMから読み取ったデューティ比Dに実吸気温度と目標吸気温度との偏差に応じた増加補正量αを加算した値でグロープラグ12が通電される。
【0038】
ステップS160では、圧縮上死点から約40〜50度ほど遅角したタイミングで所定量の燃料を噴射するポスト噴射が開始される。
【0039】
ステップS170では、筒内圧センサ30のセンサ値から推定したポスト噴射の実熱発生率が目標熱発生率よりも低いか否かが判定される。実熱発生率が目標熱発生率よりも低い場合(Yes)は、ステップS180に進み、実熱発生率と目標熱発生率との偏差ΔQに基づいてデューティ比Dの学習補正値が演算されると共に、学習補正値で通電量マップM上のデューティ比Dを更新する学習補正が実行される。
【0040】
ステップS190では、再生制御の終了条件が成立したか否かが判定される。NOx吸蔵量やSOx吸着量が所定の下限閾値まで低下した場合、PM堆積量が所定の下限閾値まで低下した場合、再生制御の累積時間が所定の上限時間に達した場合、あるいは、ポスト噴射の累積噴射量が所定の上限噴射量に達した場合(Yes)は、ステップS200に進み、触媒再生フラグF
LNTあるいは、フィルタ再生フラグF
DPFをオフ(F
LNT=0,F
DPF=0)にして、グロープラグ12の通電及びポスト噴射が終了される。
【0041】
次に、本実施形態に係る再生装置の作用効果を説明する。
【0042】
本実施形態の再生装置は、NOx吸蔵還元型触媒41やフィルタ42の再生処理に際し、圧縮上死点から約40〜50度ほど遅角したタイミングでポスト噴射が実行されると共に、グロープラグ12の昇温補助によってポスト噴射の供給燃料が効果的に筒内燃焼されるように構成されている。したがって、可変バルブタイミング機構等の追加の装置や酸化触媒を用いることなく、排気温度を急速に上昇させることが可能となり、装置の大型化やコストの上昇を効果的に抑制することができる。
【0043】
また、低温環境下等、吸気温度が目標吸気温度よりも低い場合は、グロープラグ12に通電するデューティ比Dを実吸気温度と目標吸気温度との偏差に応じ増加補正するように構成されている。したがって、低温環境下においても、ポスト噴射による供給燃料を確実に筒内燃焼させることが可能となり、NOx吸蔵還元型触媒41やフィルタ42の再生処理を確実に行うことができる。
【0044】
また、再生制御中は、ポスト噴射による実熱発生率と目標熱発生率との偏差ΔQに基づいて通電量マップM上のデューティ比Dを学習補正するように構成されている。したがって、グロープラグ12の経年劣化や特性変化、個体差等の影響を効果的に排除することができる。
【0045】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形して実施することが可能である。
【0046】
例えば、NOx触媒はNOx吸蔵還元型触媒41に限定されず、尿素水から生成されるアンモニアを還元剤とするNOx選択還元型触媒であってよい。NOx選択還元型触媒の場合は、再生処理としてSOxパージを行うように構成すればよい。