(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6384203
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】車両用センターピラー
(51)【国際特許分類】
B62D 25/04 20060101AFI20180827BHJP
【FI】
B62D25/04 B
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-175249(P2014-175249)
(22)【出願日】2014年8月29日
(65)【公開番号】特開2016-49841(P2016-49841A)
(43)【公開日】2016年4月11日
【審査請求日】2017年7月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000349
【氏名又は名称】特許業務法人 アクア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大原 宏介
【審査官】
畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−136190(JP,A)
【文献】
特開2013−060044(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両側部の中央で上下方向に延び、外側のサイドボディアウタパネルと内側のセンターピラーインナパネルとで構成される車両用センターピラーにおいて、
当該車両用センターピラーのうち、ベルトラインより下方の領域はほぼ鉛直であり、該ベルトラインより上方の領域は上方に向かうにしたがって車内側に傾斜していて、
前記サイドボディアウタパネルおよび前記センターピラーインナパネルはそれぞれ、
上下方向に延びる中央部と、
前記中央部の前縁および後縁に形成される前側フランジおよび後側フランジとを有し、
前記前側フランジ同士および前記後側フランジ同士が接合されることによって前記サイドボディアウタパネルおよび前記センターピラーインナパネルによる閉断面が形成され、
前記センターピラーインナパネルの中央部のベルトラインより上方の領域は、側方視で上方に向かうにしたがって徐々に細くなっていて、
前記センターピラーインナパネルの中央部は、
前記前側フランジの後端および前記後側フランジの前端それぞれから車内側に向かって延びるインナ前方面およびインナ後方面と、
前記インナ前方面と前記インナ後方面との間に位置するインナ中央面と、
前記インナ中央面の前縁および後縁それぞれから車内側に階段状に突出する第1ビードと、
前記第1ビードから更に車内側に階段状に突出し前記インナ前方面および前記インナ後方面それぞれの車内側端部に連続する第2ビードとを備え、
前記第1ビードおよび前記第2ビードは、前記ベルトラインよりも下方まで延びていて、
前記サイドボディアウタパネルの中央部は、
前記前側フランジの後端および前記後側フランジの前端それぞれから車外側に向かって延びるアウタ前方面およびアウタ後方面と、
前記アウタ前方面と前記アウタ後方面との間で上下方向に延びるアウタ中央面とを備え、
前記アウタ前方面およびアウタ後方面は、車両前後方向で前記第1ビードまたは第2ビードの範囲内に位置することを特徴とする車両用センターピラー。
【請求項2】
前記第1ビードおよび前記第2ビードは、前記センターピラーインナパネルの上端近傍から前記ベルトラインの下方まで延びていることを特徴とする請求項1に記載の車両用センターピラー。
【請求項3】
前記第1ビードおよび第2ビードの車両前後方向の長さの和は、前記インナ中央面の車両前後方向の長さ以下であることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の車両用センターピラー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両側部の中央で上下方向に延び、外側のサイドボディアウタパネルと内側のセンターピラーインナパネルとで構成される車両用センターピラーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両には、車両側部の中央、すなわち前部ドアと後部ドアとの間に上下方向に延びるセンターピラーが配置される。特許文献1に開示されているように、一般にセンターピラーは、外側の面を構成するピラーアウタパネルと、内側の面を構成するピラーインナパネルとを接合することによって構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−069667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
センターピラーには、側面衝突(側突)などの衝突時の荷重による変形を防ぐべく高い剛性が要求される。このため、一般にセンターピラーは、ピラーアウタパネルを車外側に膨出したハット形状とし、ピラーインナパネルを車内側に膨出したハット形状としている。これにより、ピラーアウタパネルとピラーインナパネルを接合すると、それらによる閉断面が形成されるため、センターピラーの剛性が高まる。しかしながら、ピラーインナパネルを車内側に膨出させると、膨出した部分が車室内に張り出すこととなり、車室空間が狭くなってしまう。特にセンターピラーの上部が車内側に向かって傾斜している構成の場合、車室上部の空間が狭くなってしまい、乗員の快適性の低下が生じることが課題となっていた。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑み、高い剛性を確保することにより変形を好適に抑制しつつ、車室内の空間を確保することにより快適性を高めることが可能な車両用センターピラーを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明にかかる車両用センターピラーの代表的な構成は、車両側部の中央で上下方向に延び、外側のサイドボディアウタパネルと内側のセンターピラーインナパネルとで構成される車両用センターピラーにおいて、当該車両用センターピラーのうち、ベルトラインより下方の領域はほぼ鉛直であり、ベルトラインより上方の領域は上方に向かうにしたがって車内側に傾斜していて、サイドボディアウタパネルおよびセンターピラーインナパネルはそれぞれ、上下方向に延びる中央部と、中央部の前縁および後縁に形成される前側フランジおよび後側フランジとを有し、前側フランジ同士および後側フランジ同士が接合されることによってサイドボディアウタパネルおよびセンターピラーインナパネルによる閉断面が形成され、センターピラーインナパネルの中央部のベルトラインより上方の領域は、側方視で上方に向かうにしたがって徐々に細くなっていて、センターピラーインナパネルの中央部は、前側フランジの後端および後側フランジの前端それぞれから車内側に向かって延びるインナ前方面およびインナ後方面と、インナ前方面とインナ後方面との間に位置するインナ中央面と、インナ中央面の前縁および後縁それぞれから車内側に階段状に突出する第1ビードと、第1ビードから更に車内側に階段状に突出しインナ前方面およびインナ後方面それぞれの車内側端部に連続する第2ビードとを備え、第1ビードおよび第2ビードは、ベルトラインよりも下方まで延びていることを特徴とする。
【0007】
上記構成によれば、センターピラーインナパネルの中央部のベルトラインより上方の領域、すなわち車内側に傾斜している領域が、上方に向かうにしたがって徐々に細くなる。これにより、車室内の上方の空間をより広げることが可能となる。そして、センターピラーインナパネルの中央部には、階段状の第1ビードおよび第2ビードが形成されている。これらの第1ビードおよび第2ビードが車内側に階段状に突出しているということは、換言すれば、センターピラーインナパネルの中央部は、第1ビードおよび第2ビードの間の空間が階段状に車外側に奥まっているということである。これにより、中央部の車内側への張り出しが低減されるため、車室内の空間を更に拡大することが可能となる。
【0008】
このとき、中央部の、ベルトラインより上方の徐々に細くなる領域において、第1ビードおよび第2ビードという2段階に屈曲していることにより、かかる領域における剛性は飛躍的に向上する。このため、衝突時の荷重による変形を効果的に抑制することができる。したがって、上記構成によれば、高い剛性を確保することにより変形を好適に抑制しつつ、車室内の空間を確保することにより快適性を高めることが可能となる。
【0009】
上記第1ビードおよび第2ビードは、センターピラーインナパネルの上端近傍からベルトラインの下方まで延びているとよい。かかる構成によれば、第1ビードおよび第2ビードは、センターピラーインナパネルのベルトラインより上方の領域、すなわち車内側に傾斜する領域のほぼ全域に設けられる。したがって、車内側に傾斜している領域における剛性を高めることができ、その変形を好適に抑制することが可能となる。
【0010】
上記サイドボディアウタパネルの中央部は、前側フランジの後端および後側フランジの前端それぞれから車外側に向かって延びるアウタ前方面およびアウタ後方面と、アウタ前方面とアウタ後方面との間で上下方向に延びるアウタ中央面とを備え、アウタ前方面およびアウタ後方面は、車両前後方向で第1ビードまたは第2ビードの範囲内に位置するとよい。
【0011】
これにより、サイドボディアウタパネルに加わった荷重を、センターピラーインナパネルの第1ビードおよび第2ビードにおいて好適に受け止めることができる。したがって、サイドボディアウタパネル、ひいてはセンターピラーの変形を更に抑制することが可能となる。
【0012】
上記1ビードおよび第2ビードの車両前後方向の長さの和は、インナ中央面の車両前後方向の長さ以下であるとよい。これにより、車両前後方向において、第1ビードおよび第2ビードを合わせた長さよりもインナ中央面の長さのほうが大きくなる。したがって、インナ中央面の面積を十分に確保することができるため、かかるインナ中央面への部品等の取付を良好に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高い剛性を確保することにより変形を好適に抑制しつつ、車室内の空間を確保することにより快適性を高めることが可能な車両用センターピラーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態にかかる車両用センターピラーを備える車両の側面図である。
【
図2】
図1に示す車両をA方向から観察した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0016】
図1は、本実施形態にかかる車両用センターピラーを備える車両の側面図であり、車両
右側の側面を車内側から観察した状態を図示している。
図2は、
図1に示す車両をA方向から観察した図であり、車両側部を車外側の前方(A方向)から観察した状態を図示していて、理解を容易にするために前部ドアを不図示としている。
図1に示すように、本実施形態にかかる車両用センターピラー(以下、センターピラー100と称する)は、車両側部の中央で上下方向に延びる部材である。
【0017】
図1に示すように、センターピラー100は、外側のサイドボディアウタパネル(以下、アウタパネル110と称する)によって外面が構成され、内側のセンターピラーインナパネル(インナパネル120と称する)によって内面が構成される。
図2に示すように、
センターピラー100のうち、ベルトラインL(
図1参照)より下方の領域(以下、下方領域100bと称する)はほぼ鉛直であり、ベルトラインLより上方の領域(以下、上方領域100aと称する)は上方に向かうにしたがって車内側に傾斜している。
【0018】
図3は、
図1のセンターピラー近傍の拡大図である。
図4は、
図3のB−B断面図である。
図3および
図4に示すように、インナパネル120は、上下方向に延びる中央部140と、中央部140の前縁および後縁に形成される前側フランジ122および後側フランジ124とを有する。アウタパネル110においても、
図3および
図4に示すように、上下方向に延びる中央部130と、中央部130の前縁および後縁に形成される前側フランジ112および後側フランジ114とを有する。
【0019】
本実施形態のセンターピラー100において、アウタパネル110の断面は、中央部130が前側フランジ112および後側フランジ114よりも車外側に膨出していて、インナパネル120の断面は、中央部140が前側フランジ122および後側フランジ124よりも車内側に膨出している。そして、
図4に示すように、前側フランジ112・122同士および後側フランジ114・124同士が接合されることによって、アウタパネル110およびインナパネル120による閉断面が形成される。このようにセンターピラー100に閉断面を形成させることによって、センターピラー100の剛性を高めることができ、衝突時の荷重による変形を抑制することが可能となる。
【0020】
本実施形態のセンターピラー100によれば、インナパネル120の中央部140のベルトラインLより上方の領域を、側方視で上方に向かうにしたがって徐々に細くしている。これにより、車室内の上方の空間へのインナパネル120の中央部140の張り出し量が低減される。したがって、車室内の上方の空間をより拡張することができる。
【0021】
本実施形態のセンターピラー100の特徴として、インナパネル120の中央部140には、ベルトラインLよりも下方まで延びる階段状の第1ビード142a・142bおよび第2ビード144a・144bが設けられている。詳細には、インナパネル120の中央部140では、前側フランジ122の後端および後側フランジ124の前端それぞれから、車内側に向かってインナ前方面126およびインナ後方面128が延びていて、これらのインナ前方面126とインナ後方面128との間にインナ中央面146が位置している。
【0022】
そして、インナパネル120の中央部140では、第1ビード142a・142bが、インナ中央面146の前縁および後縁それぞれから車内側に階段状に突出していて、第2ビード144a・144bが、第1ビード142a・142bから更に車内側に階段状に突出し、インナ前方面126およびインナ後方面128それぞれの車内側端部に連続している。
図4に示すように第1ビード142a・142bおよび第2ビード144a・144bが車内側に階段状に突出していることにより、インナ中央面146は最も車外側に位置することとなる。すなわちインナパネル120の中央部140は、車両前後方向の外側では車内側に向かって膨出していて、車両前後方向の内側では、前側フランジ122および後側フランジ124以上に車外側に到ることはないものの、車外側に向かって膨出している。
【0023】
上記構成によれば、インナパネル120の中央部140の車内側への張り出し量が低減されるため、車室内の空間を更に拡大し、乗員の快適性を高めることができる。このとき、中央部140の上方領域100aが第1ビード142a・142bおよび第2ビード144a・144bという2段階に屈曲していることにより、上方領域100aにおける剛性が飛躍的に向上する。したがって、高い剛性を確保することにより変形を好適に抑制しつつ、車室内の空間を確保することにより快適性を高めることが可能となる。
【0024】
特に本実施形態では、第1ビード142a・142bおよび第2ビード144a・144bは、インナパネル120の上端近傍からベルトラインLの下方まで延びている。すなわち本実施形態のセンターピラー100では、第1ビード142a・142bおよび第2ビード144a・144bは、車内側に傾斜する上方領域100aのほぼ全域に設けられる。これにより、上方領域100aを車内側に更に傾斜させるようにかかる荷重や、上方領域100aを車外側に反らせる、すなわち上方領域100aを鉛直にさせるようにかかる荷重に対する剛性を高めることができ、それらの荷重による変形を好適に抑制することができる。
【0025】
更に本実施形態では、
図4に示すように、インナパネル120の中央部140の車両前後方向における第1ビード142a・142bおよび第2ビード144a・144bの車両前後方向の長さW1・W2の和は、インナ中央面146の車両前後方向の長さW3以下としている。すなわち、W1+W2≦W3である。これにより、インナパネル120の中央部140においてインナ中央面146の面積を十分に確保することができるため、インナ中央面146への部品等の取付を良好に行うことが可能となる。また本実施形態では、第1ビード142a・142bと第2ビード144a・144bとでは、前後方向の長さがほぼ等しい。すなわちW1≒W2である。これは必須の条件ではないものの、これにより、上述した効果をより高めることが可能である。
【0026】
ここで、
図4に示すように、本実施形態のアウタパネル110の中央部130は、前側フランジ112の後端および後側フランジ114の前端それぞれから車外側に向かって延びるアウタ前方面116およびアウタ後方面118と、それらの間で上下方向に延びるアウタ中央面132とを含んで構成される。本実施形態では、これらのアウタ前方面116およびアウタ後方面118を、車両前後方向で第1ビード142a・142bまたは第2ビード144a・144bの範囲内に位置させている。これにより、アウタパネル110に加わった荷重を、インナパネル120の第1ビード142a・142bおよび第2ビード144a・144bに効率的に伝達することができるため、アウタパネル110ひいてはセンターピラー100の変形をより効果的に抑制することが可能となる。
【0027】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、車両側部の中央で上下方向に延び、外側のサイドボディアウタパネルと内側のセンターピラーインナパネルとで構成される車両用センターピラーに利用することができる。
【符号の説明】
【0029】
100…センターピラー、100a…上方領域、100b…下方領域、110…アウタパネル、112…前側フランジ、114…後側フランジ、116…アウタ前方面、118…アウタ後方面、120…インナパネル、122…前側フランジ、124…後側フランジ、126…インナ前方面、128…インナ後方面、130…中央部、132…アウタ中央面、140…中央部、142a…第1ビード、142b…第1ビード、144a…第2ビード、144b…第2ビード、146…インナ中央面、L…ベルトライン