特許第6384206号(P6384206)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6384206導電性組成物、並びにそれを用いた配線、電極、導電パターン及び導電膜
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  • 特許6384206-導電性組成物、並びにそれを用いた配線、電極、導電パターン及び導電膜 図000015
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6384206
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】導電性組成物、並びにそれを用いた配線、電極、導電パターン及び導電膜
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/22 20060101AFI20180827BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   H01B1/22 A
   H01B5/14 B
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-176789(P2014-176789)
(22)【出願日】2014年9月1日
(65)【公開番号】特開2016-51623(P2016-51623A)
(43)【公開日】2016年4月11日
【審査請求日】2017年8月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081514
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 一
(74)【代理人】
【識別番号】100082692
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵合 正博
(72)【発明者】
【氏名】西塔 正幸
(72)【発明者】
【氏名】中村 久
(72)【発明者】
【氏名】疋田 真也
【審査官】 松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−153634(JP,A)
【文献】 特開2014−037527(JP,A)
【文献】 特開2014−080580(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/013794(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0021704(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/00− 1/24
H05B 5/00− 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)平均粒径0.005〜100μmの導電性粒子、(B)アセトンジカルボン酸銀、及び(C)式(1)で表されるアミン化合物を含み、
導電性組成物全量基準で、(A)を30〜95質量%、(B)を0.1〜30質量%、及び(C)を0.4〜50質量%含有する、
導電性組成物。
【化1】
[式(1)中、R1は、水素、−(CX2a−CX3、又は−(CX2b−O−(CX2c−CX3のいずれかを表し、R2は、−(CX2d−CX3、−(CX2e−O−(CX2f−CX3、−(CH2g−NX2、−(CH2h−CH=CH2で表される化合物のいずれかを表す。Xは水素原子、−(CH2i−CY3又はフッ素原子のいずれかを表し、Yは水素原子又はフッ素原子を表す。aは0〜8の整数、bは1〜4の整数、cは0〜3の整数、dは0〜8の整数、eは1〜4の整数、fは0〜3の整数、gは0〜3の整数、hは0〜3の整数、iは0〜3の整数である。]
【請求項2】
請求項1に記載の導電性組成物を有する配線。
【請求項3】
請求項1に記載の導電性組成物を有する電子回路用電極。
【請求項4】
請求項1に記載の導電性組成物を有する導電パターン。
【請求項5】
請求項1に記載の導電性組成物を有する導電膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高い導電性を示す導電性組成物、及び該導電性組成物を用いて作製される配線、電極、導電パターン及び導電膜に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の配線作製技術の一つに、印刷工程を用いて導電性材料をパターニングする手法がある。この手法はフォトリソグラフィー手法と比較して、生産性が高い点、プロセスコストが安価である点が優れている。この手法で用いられる導電性材料は主に導電性粒子を樹脂に分散した導電性ペーストであるが、金属の導電性と比較して1〜2桁程度導電性が低い点が課題である。
高導電性の導電膜が得られる方法の一つとして、有機銀化合物の熱分解を利用して銀膜を生成する方法が知られている(特許文献1)。しかし、有機銀化合物の溶解性の面から材料中の銀濃度が低くなり、厚膜の作製や高粘度な導電性材料が必要となるスクリーン印刷等への適用が困難であった。
厚膜の作製と高導電性を両立する手法としては、粒径がμmオーダーである導電性粒子と有機銀化合物を組み合わせる手法が提案されている(特許文献2、3)。これらの技術は、有機銀化合物の熱分解時に金属銀が析出する現象を利用し、導電性粒子間を電気的に接続することで導通を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−153634
【特許文献2】特開2008−176951
【特許文献3】特開2011−249257
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2及び3に開示の有機銀化合物には、加熱による蒸発や分解が困難である脂肪酸が含まれている。そのため、低温加熱においては脂肪酸由来の有機成分が残存して導電性が低下する問題があり、一方、それを防止するためには高温での加熱が必要となるため、煩雑であると共にコスト的に不利という問題がある。
そこで、本発明の課題は、低温加熱における高導電性の達成と良好な厚膜形成性とを両立できる導電性組成物を提供することにある。さらには、その導電性組成物を用いて作製される配線、電極、導電パターン及び導電膜を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定の導電性粒子、アセトンジカルボン酸銀、及び特定のアミン化合物を含有する組成物が、低温加熱における高導電性の達成と良好な厚膜形成性とを両立できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によれば、(A)平均粒径0.005〜100μmの導電性粒子、(B)アセトンジカルボン酸銀、及び(C)式(1)で表されるアミン化合物を含み、導電性組成物全量基準で、(A)を30〜95質量%、(B)を0.1〜30質量%、及び(C)を0.4〜50質量%含有する、導電性組成物が提供される。
【化1】
[式(1)中、R1は、水素、−(CX2a−CX3、又は−(CX2b−O−(CX2c−CX3のいずれかを表し、R2は、−(CX2d−CX3、−(CX2e−O−(CX2f−CX3、−(CH2g−NX2、−(CH2h−CH=CH2で表される化合物のいずれかを表す。Xは水素原子、−(CH2i−CY3又はフッ素原子のいずれかを表し、Yは水素原子又はフッ素原子を表す。aは0〜8の整数、bは1〜4の整数、cは0〜3の整数、dは0〜8の整数、eは1〜4の整数、fは0〜3の整数、gは0〜3の整数、hは0〜3の整数、iは0〜3の整数である。]
以後、上記(A)〜(C)を、それぞれ(A)成分、(B)成分、(C)成分と称する場合がある。
【0006】
さらに、上記本発明に係る導電性組成物を有する配線、電極、導電パターン及び導電膜が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の導電性組成物は、(A)成分を高濃度で含有し、かつ、導電性組成物粘度を厚膜形成に至適な粘度とし得るので、高導電性の厚い導電膜を形成することができる。さらに、(B)成分及び(C)成分を含有しているで、低温加熱においても純度の高い金属銀が生成して前記導電性粒子間を電気的に接続できる。つまり、低温加熱においても不純物等の残存が無く高い導電性を発現することができる。
従って、当該本発明の導電性組成物を用いて配線、電極、導電パターン及び導電膜を作製する場合、これらの部品は高い導電性を示すことができる。また、これら部品を構成する該導電組成物以外の部材として、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等の耐熱性の低い汎用基材を選択することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】合成例1で合成したアセトンジカルボン酸銀の赤外吸収スペクトル図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明の導電性組成物(以下、単に組成物ということがある)は、(A)平均粒径0.005〜100μmの導電性粒子、(B)アセトンジカルボン酸銀、及び(C)上記式(1)で表されるアミン化合物を特定割合で含有する。この導電性組成物を塗布又は印刷後、得られる配線、電極、導電パターン及び導電膜は、(A)成分の導電性粒子間が(B)成分の熱分解生成物により金属的に接続されており、導電性を発現する。
(B)成分及び(C)成分は、低温加熱においてもこれら成分由来の残存物が分解・蒸発し、高純度の金属銀が生成する。また、(B)成分は金属銀の含有率が高いため、導電性組成物中の導電性成分比率が高まり、従来の有機銀化合物を用いた導電性組成物と比較して相対的に厚い配線、電極、導電パターン及び導電膜が作製可能である。
本発明の導電性組成物において、(A)成分の平均粒径は0.01〜100μm、含有量は30〜95質量%であり、(B)成分の含有量は0.1〜30質量%であり、(C)成分の含有量は0.4〜50質量%である。
【0010】
[(A)導電性粒子]
本発明の(A)成分である導電性粒子の素材としては特に制限はなく、金、銀、銅、白金、パラジウム、ニッケル、鉄、アルミニウム等の金属、上記金属を少なくとも一種含有する合金を用いることができる。また、粒子中に上記金属を含む領域が存在する粒子も用いることができ、粒子の最表層が上記金属で被覆された多層粒子や、粒子表面に上記金属を含む微粒子もしくは突起が多数形成された粒子等を用いることができる。
(A)成分の形状やアスペクト比(粒子の長径と短径の比)に特に制限は無く、球状、多面体状、扁平状、棒状、ファイバー状等の粒子を用いることができる。その平均粒径は0.005〜100μmが好ましく、目的に応じて適切な平均粒径を選択することが好ましい。具体的には、線幅100μm以下の微細印刷性を重視する場合、0.005〜1μmの平均粒径が好ましく、低コスト化を重視する場合1〜100μmの平均粒径が好ましい。また、(A)成分は、上記したいずれか一種の導電性粒子であっても、二種以上を併用したものであってもよい。
本発明において、平均粒径とは、メディアン径(D50)を意味し、例えば粒度分布測定装置LS 13 312(ベックマン・コールター社製)で測定することができる。
(A)成分は、導電性組成物全量基準で該組成物中に30〜95質量%含有され、好ましくは65〜85質量%含有される。
【0011】
[(B)アセトンジカルボン酸銀]
本発明の(B)成分であるアセトンジカルボン酸銀は、下記式(2)で表される化合物である。(B)成分の製造方法は何ら制限されない。具体的製造方法として、例えば、非特許文献「Jounal fur praktische Chemie.Band 312(1970)pp.240−244」に記載の方法が挙げられる。特に、塩基性物質を用いてアセトンジカルボン酸銀を製造する場合、金属イオンの混入を避けるために有機塩基を用いることが望ましい。
アセトンジカルボン酸銀の形態は通常粉体であり、溶剤に溶解した際に粘度が高くなり、印刷等のパターニングが難しい物質であることが知られている。しかし、(C)アミン化合物と組み合わせることで、銀含有量の高い組成物においても粘度を低く設定することができ、150℃以下の低温かつ短時間加熱にて金属銀を生成することが可能となることを見出した。
【化2】
(B)成分は、導電性組成物全量基準で該組成物中に0.1〜30質量%含有され、好ましくは5〜15質量%含有される。
【0012】
[(C)アミン化合物]
本発明の(C)成分であるアミン化合物は、式(1)で表される化合物である。式(1)で表されるアミン化合物はアセトンジカルボン酸銀(B)の溶解性に優れており、導電性組成物中の銀濃度を高めることができる。
具体例として以下のものを挙げることができる。炭化水素系一級アミンとしては、1−プロピルアミン、1−ブチルアミン、1−アミルアミン、1−ヘキシルアミン、1−ヘプチルアミン、2−ヘプチルアミン、1−オクチルアミン、ノニルアミン、2−エチルヘキシルアミン、イソプロピルアミン、イソブチルアミン、イソアミルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、tert−アミルアミン、アリルアミンが挙げられる。炭化水素系二級アミンとしては、エチルメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミンが挙げられる。アルコキシ基含有アミンとしては、2−メトキシエチルアミン、2−エトキシエチルアミン、3−メトキシプロピルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−イソプロポキシプロピルアミン、3−ブトキシプロピルアミンが挙げられる。フッ素含有アミンとしては、1H、1H−ヘプタフルオロブチルアミン、1H、1H−ノナフルオロペンチルアミン、1H、1H−ウンデカフルオロヘキシルアミンが挙げられる。その他のアミンとして、エチレンジアミン、ジメチルアミノプロピルアミンが挙げられる。式(1)で表されるアミン化合物は単独で用いることも可能であり、二種以上を併用することもできる。
【化3】
[式(1)中、R1は、水素、−(CX2a−CX3、又は−(CX2b−O−(CX2c−CX3のいずれかを表し、R2は、−(CX2d−CX3、−(CX2e−O−(CX2f−CX3、−(CH2g−NX2、−(CH2h−CH=CH2で表される化合物のいずれかを表す。Xは水素原子、−(CH2i−CY3又はフッ素原子のいずれかを表し、Yは水素原子又はフッ素原子を表す。aは0〜8の整数、bは1〜4の整数、cは0〜3の整数、dは0〜8の整数、eは1〜4の整数、fは0〜3の整数、gは0〜3の整数、hは0〜3の整数、iは0〜3の整数である。]
(C)成分は、導電性組成物全量基準で該組成物中に0.4〜50質量%含有され、好ましくは15〜35質量%含有される。
【0013】
[(D)樹脂]
本発明の導電性組成物は必要に応じて、(A)〜(C)成分に加えて、(D)成分として樹脂を適宜含有することが出来る。(A)〜(C)成分の導電性組成物100質量部に対して(D)成分を1〜100質量部添加すると、導電性に加えて、印刷性、基材への密着性が向上するため特に好ましい。
樹脂の種類に制限は無く、例えば、熱可塑性樹脂としては、芳香族ポリエステル、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、フッ素含有樹脂、ケイ素含有樹脂、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ウッドロジン、ポリメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリスルホン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニル系樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリヒドロキシポリエーテル、ポリアリーレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリアルキレンオキシド、ポリフェニレンオキシド、ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、液晶ポリマー、等を用いることができる。熱硬化性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、オキサジン樹脂、キシレン樹脂、グアナミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ビニルエステル樹脂、ビスマレイドトリアジン樹脂、フラン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、尿素樹脂、等を用いることができる。上記樹脂は重合後の重合体として添加することができ、また、重合前の単量体、低重合度の重合体の形で導電性ペーストに添加し、その後硬化剤、硬化触媒、熱、光等により重合を行い高分子量の重合体とすることもできる。また上記樹脂の構造を少なくとも一種類含む共重合体も同様に用いることができる。(D)成分は単独で用いることも可能であり、二種以上を併用することもできる。
【0014】
[(E)溶媒]
本発明の導電性組成物は必要に応じて、(A)〜(C)成分に加えて、(E)成分として溶媒を適宜含有することが出来る。(A)〜(C)成分の導電性組成物100質量部に対して(E)成分を1〜100質量部添加すると、導電性に加えて、印刷性やハンドリング性が向上するため特に好ましい。
使用できる溶媒(E)の種類に制限は無く、例えばアルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、3−メチル−1−ブタノール、2−メチル−1−ブタノール、2,2−ジメチル−1−プロパノール、3−メチル−2−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、3−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−1−ペンタノール、2−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−2−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−メチル−3−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、2,2−ジメチル−1−ブタノール、2,3−ジメチル−1−ブタノール、3,3−ジメチル−1−ブタノール、2,3−ジメチル−2−ブタノール、3,3−ジメチル−2−ブタノール、2−エチル−1−ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1H、1H−ナノフルオロ−1−ペンタノールが挙げられる。エーテル系溶媒としては、アセトキシメトキシプロパン、フェニルグリシジルエーテル、エチレングリコールグリシジルが挙げられる。ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンが挙げられる。エステル系溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸メトキシブチル及びメチルナノフルオロバレレートが挙げられる。ニトリル系溶媒としては、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリルが挙げられる。スルホキシド系溶媒としては、ジメチルスルホキシドが挙げられる。ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、1−ノナナール、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンが挙げられる。芳香族系溶媒としては、トルエン、キシレン、ベンゼン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、アルキルベンゼンが挙げられる。グリコールエーテル系溶媒としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn−プロピルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールn−ブチルエーテルが挙げられる。グリコールエーテルアセテート系溶媒としてはエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテートが挙げられる。テルペン系溶媒としては、テルピネオール、リモネン、ピネンが挙げられる。その他の溶媒として、水、1−メチル−2−ピロリドンが挙げられる。(E)成分は(D)成分と同時に添加することもできる。また、(E)成分は単独で用いることも可能であり、二種以上を併用することもできる。
【0015】
[(F)その他添加剤]
本発明の導電性組成物は必要に応じて、(A)〜(C)成分に加えて、(F)成分としてその他の添加剤を適宜含有することが出来る。(F)成分としては、無機塩化合物、有機塩化合物、ガラス、シリカ等の無機酸化物、表面調整剤、チクソトロピック性付与剤、湿潤剤、架橋剤、酸化防止剤、防錆剤、耐熱安定剤、界面活性剤、可塑剤、硬化剤、増粘剤、シランカップリング剤、アミン化合物等を例示できる。
(A)〜(C)成分の導電性組成物100質量部に対して(F)成分を1〜20質量部添加することで、導電性に加えて、基材への塗工性改善、粘度の調整、保存安定性の向上、物理的な耐久性、耐酸化性の付与等の効果が得られるため特に好ましい。また、(F)成分は(D)成分や(E)成分の少なくとも一種と同時に使用することもできる。また、(F)成分は単独で用いることも可能であり、二種以上を併用することもできる。
【0016】
次に、本発明の導電性組成物の製造方法について説明する。
導電性組成物製造のために各成分を配合するに当たり、(A)〜(C)成分の配合順は任意であり、特に制限はない。さらに、(D)〜(F)成分の少なくとも一成分を配合する場合も、(A)〜(C)成分を含めて任意であり、特に制限はない。
配合温度も特に制限はないが、製造の簡便さの点で0〜80℃程度の温度が好ましく、室温がより好ましい。配合時間も特に制限はなく、各成分が均一に混合されればよい。
【0017】
本発明の導電性組成物は、(A)〜(C)成分、又は、当該成分と任意成分としてさらに(D)〜(F)成分の少なくとも一成分とからなる混合物であるが、これらに加えて還元剤を配合し、(B)アセトンジカルボン酸銀を還元して、銀クラスター及び/又は銀ナノ粒子を該組成物中に生成させた銀コロイド含有導電性組成物としてもよい。
還元剤としては、例えば、ホウ素化水素化合物、三級アミン、チオール化合物、リン化合物、アスコルビン酸、キノン類、フェノール類が挙げられる。還元剤の使用量は、得られる透明導電膜の導電性が失われない範囲で適宜選択することができる。例えば、導電性組成物全量基準で0.1〜20質量%程度が好ましい。
【0018】
つづいて、本発明の導電性組成物の使用例、応用例について説明する。
本発明の導電性組成物を基材に塗付することにより、各種導電性部材を製造することができる。
基材としては、特に制限されず、例えば、無機素材としては、銅、鋼、アルミ、シリコン、ソーダガラス、無アルカリガラス、酸化インジウムスズ(ITO)等が挙げられ、樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、アラミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ乳酸、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系・メタクリル系樹脂、脂環式アクリル樹脂、シクロオレフィン樹脂、トリアセチルセルロース、ABS樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、ポリ塩化ビニルやポリ塩化ビニリデン等の塩素元素(Cl元素)を含有する樹脂、フッ素元素(F元素)を含有する樹脂、シリコーン系樹脂及びこれら樹脂の混合及び/又は共重合したもの等が挙げられる。また、これらの複数の基材を組み合わせて用いることもできる。例えば、ガラスエポキシ基板等の樹脂とガラスを組み合わせた基材、2種以上の成分を積層した基材などの複合基材であってもよい。基材の形態についても特に制限は無く、例えばフィルムのような膜厚の薄いものから厚い板状のものまで用いることができる。
【0019】
本発明における導電性組成物を基材上に形成する方法としては、導電性組成物を構成する材料の種類により最適な方法を選択すればよく、制限はない。基材上に形成する方法として、例えば、キャスト、スピンコート、ディップコート、バーコート、スプレー、ブレードコート、スリットダイコート、グラビアコート、リバースコート、スクリーン印刷、鋳型塗布、インクジェットなどのウェットコート法など一般的な方法が挙げられる。導電性組成物の導電化手法にも特に制限は無く、ホットプレート上での加熱、熱風による加熱、マイクロ波、遠赤外線、近赤外線、紫外線、パルス光等の電磁波による硬化等を用いることができ、設備の普及度より加熱を用いることが好ましい。処理の条件としては、基材の特性を損ねず、導電性等について所望の特性が得られる条件であれば制限は無く、例えば加熱を用いる場合には60℃以上300℃以下の温度で焼成することが好ましい。
【実施例】
【0020】
次に本発明について実施例及び比較例により、本発明及びその効果を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0021】
合成例1:アセトンジカルボン酸銀の合成
アセトンジカルボン酸43.8gを1000mLビーカーに秤量後、600gのイオン交換水を添加して溶解させた後、氷冷し、該水溶液にさらに102gの硝酸銀を溶解させた。そこへ、48gのヘキシルアミンを投入後、30分間撹拌した。得られた白色の固体をろ取しアセトンで洗浄後、減圧乾燥することで、88.2gの白色固体状のアセトンジカルボン酸銀を得た(収率:82%)。得られたアセトンジカルボン酸銀の赤外吸収スペクトルを図1に示す。IR:1372.10cm-1、1581.34cm-1
得られたアセトンジカルボン酸銀(Ac3Ag2)のTGA分析を、熱質量分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)社製)を用いて行った。分析条件は、昇温速度10℃/分、測定雰囲気を空気中とした。その結果、熱分解温度は175℃であった。また、熱質量分析後の残分は59.7%であり、理論残存率(59.4%)と一致していた。
【0022】
実施例1
(B)アセトンジカルボン酸銀 7gと(C)2−エチルヘキシルアミン(2EHA)16gを混合し、その後に(A)銀粒子[三井金属株式会社製 SPN20J(D50粒径:2.5μm)]77gを加え、3本ロールミルにて混合することで、導電性組成物を得た。
【0023】
[導電性評価:体積抵抗率の測定]
実施例1で作製した導電性組成物を、スクリーン印刷機(製品名「MT−320」、マイクロ・テック株式会社製)にてポリエチレンテレフタラートフィルム上にwet膜厚50μmのパターンを作製した後、100℃に保持した循環式恒温槽中で30分間加熱し、焼付け硬化を行なった。得られた膜の膜厚を測定すると共に導電性の評価として体積抵抗率を測定した。体積抵抗率が小さいほど導電性が良好である。
なお、膜厚は触針式膜厚計(DektakXT、ブルカー・エイエックスエス社製)により測定し、体積抵抗率については、4端子4探針法抵抗率計(ロレスタ GP MCP−T610、三菱化学アナリテック社製)にて体積抵抗率(Ω・cm)を測定し、その測定結果とパターンの膜厚より、体積抵抗率を算出した。
結果を表1に示す。
【0024】
実施例2〜12
表1及び2に示した各成分の配合量にて、実施例1と同様に導電性組成物を調製し、実施例1と同様に膜厚を測定すると共に体積抵抗率を算出した。その結果を表1及び2に示す。
【0025】
実施例13〜23
表3及び4に示した各成分の配合量にて、(A)〜(C)成分からなる実施例については、実施例1と同様に導電性組成物を調製し、さらに(F)成分を含む実施例については(C)及び(F)成分の混合物に(B)成分を配合した後に、(A)成分を配合して導電性組成物を調製した。得られた各導電性組成物について実施例1と同様に膜厚を測定すると共に体積抵抗率を算出した。その結果を表3及び4に示す。
【0026】
実施例24〜30
表5に示した各成分の配合量にて、(A)成分と、(D)、(E)、(D)及び(E)、又は(D)及び(F)成分と、を混合した後に、(B)及び(C)成分の混合物を配合して導電性組成物を調製した。得られた各導電性組成物について実施例1と同様に膜厚を測定すると共に体積抵抗率を算出した。その結果を表5に示す。
【0027】
実施例31〜36
表6に示した各成分の配合量にて、(A)〜(C)成分を混合した後に、(E)成分を配合して導電性組成物を調製した。得られた各導電性組成物について実施例1と同様に膜厚を測定すると共に体積抵抗率を算出した。その結果を表6に示す。
【0028】
実施例37〜42
表7に示した各成分の配合量にて、(A)〜(C)成分を混合した後に、(F)、(D)及び(F)、又は(E)及び(F)成分を配合して導電性組成物を調製した。得られた各導電性組成物について実施例1と同様に膜厚を測定すると共に体積抵抗率を算出した。その結果を表7に示す。
【0029】
比較例1
表8に示した各成分の配合量にて、(D)及び(E)成分を混合した後に、(A)成分を配合して導電性組成物を調製した。得られた各導電性組成物について実施例1と同様に膜厚を測定すると共に体積抵抗率を算出した。その結果を表8に示す。
【0030】
比較例2〜4,7,8
表8及び9に示した各成分の配合量にて、実施例1と同様に導電性組成物を調製し、実施例1と同様に膜厚を測定すると共に体積抵抗率を算出した。その結果を表8及び9に示す。
【0031】
比較例5,6,9,10
表9に示した各成分の配合量にて、(A)〜(C)成分を混合した後に、(E)又は(F)成分を配合して導電性組成物を調製した。得られた各導電性組成物について実施例1と同様に膜厚を測定すると共に体積抵抗率を算出した。その結果を表9に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
【表3】
【0035】
【表4】
【0036】
【表5】
【0037】
【表6】
【0038】
【表7】
【0039】
【表8】
【0040】
【表9】
【0041】
表1〜9から明らかなように、実施例1〜42に係る本発明の導電性組成物による導電膜は、高導電性の達成と良好な厚膜形成性とを両立することができた。一方、比較例1〜9は、導電性又は厚膜形成性のいずれかが不良で、両性能を両立することはできなかった。
図1