(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイ、タッチパネル、有機エレクトロルミネッセンス、太陽電池などに透明導電材料が使用されている。透明導電材料に用いる導電材料は酸化インジウム錫(ITO)を用いた薄膜が主流である。しかし、ITOの原料であるインジウムの供給不安や、ITOの導電性が不十分であるといった問題がある。また、屈曲可能なディスプレイの開発に伴い、脆く曲げ応力に弱いITOの代替となる透明導電材料が求められている。
そこで、導電材料には曲げ応力に強い金属銀、基材にはポリエチレンテレフタレート(PET)などの透明樹脂基材を用いた透明導電材料の開発が盛んに行われている。
【0003】
しかしながら、一般的に透明樹脂基材は、ガラスなどと比較して軟化点が低い。よって、透明樹脂基材が高温曝露による軟化によって変形することを抑止するために、150℃以下の低温加熱で金属銀を生成可能な低温焼結性材料が望まれている。
特許文献1は、アセトンジカルボン酸銀と特定の構造を有するアミン化合物からなる組成物が150℃以下の加熱によって金属銀を形成することを開示している。
また、金属銀を用いた透明導電材料の作製方法として、銀ナノワイヤーの網目構造を用いた方法が知られており、特許文献2は、銀ナノワイヤー同士を金属などの導電成分によって接合することにより導電性を向上させた透明導電材料を開示している。そして、特許文献2に記載されている透明導電材料は、金属塩から得られる金属で銀ナノワイヤー同士を接合することにより導電性を向上させている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されている金属銀は150℃以下の加熱で金属銀が得られるものの、優れた導電性を発現するためには金属銀の膜厚を厚くする必要がある。よって、十分な透明性を得ることができず、導電性と透明性との両立に至っていない。
また、特許文献2に記載の技術では、銀ナノワイヤーの表面に選択的に金属を析出させることができないため、導電性の向上に寄与しない不要な金属成分が多く、導電性の向上効果が不十分である。また、銀ナノワイヤーが存在しない開口部分に析出する金属成分が多く、銀ナノワイヤーのネットワーク構造における開口部分を遮る金属銀が多いことから透明性の点でも不十分である。
【0006】
そこで、本発明の課題は、低温かつ短時間の加熱でも導電性、透明性に優れた銀要素形成基材が得られる銀含有組成物を提供することにある。さらに、その銀含有組成物の塗付により、基材表面に導電性膜が形成された銀要素形成基材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、銀ナノワイヤーと、アセトンジカルボン酸銀と、特定の構造を有するアミン化合物を含む分散媒と、を含有する銀含有組成物が、低温、短時間の加熱で導電性と透明性に優れた導電性膜を形成しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によれば、(A)銀ナノワイヤー、(B)アセトンジカルボン酸銀、及び(C)式(1)で表されるアミン化合物を含む分散媒を含有し、前記各成分の含有量が、(A)0.1〜5質量%、(B)0.002〜5質量%、及び(C)90〜99.898質量%である、銀含有組成物が提供される。
【化1】
[式(1)中、R
1は、水素、−(CX
2)
a−CX
3、又は−(CX
2)
b−O−(CX
2)
c−CX
3のいずれかを表し、R
2は、−(CX
2)
d−CX
3、−(CX
2)
e−O−(CX
2)
f−CX
3、−(CH
2)
g−NX
2で表される基のいずれかを表す。ここで、Xは水素原子または−(CH
2)
h−CH
3のいずれかを表す。また、aは0〜8の整数、bは1〜4の整数、cは0〜3の整数、dは0〜8の整数、eは1〜4の整数、fは0〜3の整数、gは0〜3の整数、hは0〜3の整数である。]
以後、上記(A)〜(C)を、それぞれ(A)成分、(B)成分、(C)成分と称する場合がある。
【0008】
さらに、上記本発明に係る銀含有組成物の塗付により、基材表面に導電性膜が形成された銀要素形成基材が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の銀含有組成物は、上記(A)成分、(B)成分及び(C)成分を特定の割合で含むことによって、150℃以下の低温、かつ短時間の加熱で導電性、透明性に優れた導電性膜を形成することができる。また、本発明の銀要素形成基材は、その表面上に当該導電性、透明性に優れた導電性膜が形成されているので、導電性が非常に良好で、広範囲の製品に適用することができる。具体的には、ディスプレイ、太陽電池、照明、光センサーなどの様々な分野への応用が可能である。
また、本発明の銀含有組成物は、低温かつ短時間での処理により導電性膜を形成できるので、軟化点の低い樹脂基材上に導電性膜を形成することができる。
さらに、所定の導電性を有する銀要素形成基材を作製するのに必要な銀化合物量を低減できるので、銀化合物の材料利用効率を高くすることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明の銀含有組成物は、(A)銀ナノワイヤー、(B)アセトンジカルボン酸銀、及び(C)式(1)で表されるアミン化合物を含む分散媒を特定割合で含有する。この銀含有組成物を塗布又は印刷した後に得られる導電性膜は、網目状に分散している銀ナノワイヤー同士が形成する接合部分などの導電経路を、(B)成分から得られる金属銀が補強する。よって、銀ナノワイヤー同士が形成する導電経路の低抵抗化が達成され、優れた導電性が発現する。
また、(B)成分から得られる金属銀が銀ナノワイヤーの表面に析出するため、網目構造における開口部分に析出する導電性にほとんど寄与しない金属銀の量を低減できる。よって、銀ナノワイヤー同士が形成する網目構造の開口率を向上することができるため優れた透明性が発現する。
【0011】
本発明の銀含有組成物において、(A)成分の含有割合は0.1〜5質量%であり、(B)成分の含有割合は0.002〜5質量%であり、(C)成分の含有割合は90〜99.898質量%である。
(A)の含有割合が0.1質量%未満の場合、得られる銀要素形成基材の導電性が低くなるおそれがあり、5質量%を超えた場合、透明性が悪化するおそれがある。
(B)成分の含有割合が0.002質量%未満の場合、得られる銀要素形成基材の導電性が低くなるおそれがあり、5質量%を超えた場合、透明性が悪化するおそれがある。
(C)成分の含有割合が90質量%未満では(B)成分の溶解性が低下する場合がある。
【0012】
[(A)銀ナノワイヤー]
本発明の(A)成分である銀ナノワイヤーは、材質が銀であり、形状が直線または曲線の細長いワイヤー状であり、直径がナノメートルサイズの微細な導電性物質である。銀ナノワイヤーで構成された透明導電層を用いれば、銀ナノワイヤーが網目状となることにより、銀ナノワイヤーが少量であっても良好な導電経路を形成することができ、良好な導電性を有する透明導電性膜を得ることができる。さらに、銀ナノワイヤーが網目状となることにより、網目の隙間に開口部分を形成するため、透明性が良好な透明導電性膜を得ることができる。
本発明に用いる銀ナノワイヤーの長さは特に限定されず、直径はナノメートルサイズであれば特に限定されないが、長さは1〜500μm、直径は10〜300nmであることが好ましい。また、銀ナノワイヤーは、当技術分野で既知の方法で調製されたものを用いることができる。具体的には、ポリオール(エチレングリコールなど)及びポリビニルピロリドンの存在下で、銀塩(硝酸銀など)の液相還元により合成可能である。
均一サイズの銀ナノワイヤーの製造は、例えば、「Xia,Y.et al.,Chem.Mater.(2002)、14、4736−4745」及び「Xia,Y.et al.,Nanoletters(2003)3(7)、955−960」に記載される方法に準じて調製することができるが、特にこれらに記載の方法に限定されるものではない。
【0013】
[(B)アセトンジカルボン酸銀]
本発明の(B)成分であるアセトンジカルボン酸銀は、下記式(2)で表される化合物である。(B)成分の製造方法は何ら制限されない。具体的製造方法として、例えば、非特許文献「Jounal fur praktische Chemie.Band 312(1970)pp.240−244」に記載の方法が挙げられる。特に、塩基性物質を用いてアセトンジカルボン酸銀を製造する場合、金属イオンの混入を避けるために有機塩基を用いることが望ましい。
【化2】
アセトンジカルボン酸銀の形態は通常粉体であり、溶剤に溶解した際に粘度が高くなり、印刷等のパターニングが難しい物質であることが知られている。しかし、特定のアミン化合物と組み合わせることで、銀含有量の高い組成物においても粘度を低く設定することができ、150℃以下の低温かつ短時間の加熱で金属銀を生成することが可能となることを見出した。
【0014】
アセトンジカルボン酸銀はアセトンジカルボン酸骨格を有しており、一分子中にカルボニル基酸素を3つ有している。ここで、カルボニル基酸素は不対電子を有していることから、金属への配位子として働くことが知られている。
そのため、アセトンジカルボン酸銀を用いた銀含有組成物は、銀含有組成物中においてアセトンジカルボン酸銀が銀ナノワイヤーに対し配位結合を形成するため、銀ナノワイヤー表面にアセトンジカルボン酸銀が存在することになる。
その結果、本発明の銀含有組成物を塗布・印刷後に得られる導電性膜においては、銀ナノワイヤーの表面に(B)成分から得られる金属銀が析出することで、銀ナノワイヤーが形成する導電経路を補強する効果が得られる。よって、銀ナノワイヤーとアセトンジカルボン酸銀から得られる金属銀が形成する導電経路の低抵抗化が成され、優れた導電性が発現する。
また、(B)成分から得られる金属銀が銀ナノワイヤーの表面に析出するため、網目構造における開口部分に析出する導電性にほとんど寄与しない金属銀の量を低減できる。よって、銀ナノワイヤー同士が形成する網目構造の開口率を向上することができるため優れた透明性が発現する。
【0015】
[(C)成分中のアミン化合物]
本発明の(C)成分を構成するアミン化合物は、式(1)で表される化合物である。式(1)で表されるアミン化合物はアセトンジカルボン酸銀の溶解性に優れており、導電性組成物中の銀濃度を高めることができる。
当該アミン化合物としては、例えば、1−プロピルアミン、1−ブチルアミン、1−アミルアミン、n−ヘキシルアミン、1−ヘプチルアミン、2−ヘプチルアミン、1−オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、イソプロピルアミン、イソブチルアミン、イソアミルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、tert−アミルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジイソプロピルアミノエチルアミン、2−メトキシエチルアミン、2−エトキシエチルアミン、3−メトキシプロピルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−イソプロポキシプロピルアミン、N−(2−メトキシエチル)メチルアミン、ビス(2−メトキシエチル)アミン、ビス(2−エトキシエチル)アミン、ビス(2−イソプロポキシエチル)アミンが挙げられ、いずれかを単独で用いてもよく、また、二種以上を併用することもできる。
【化3】
[式(1)中、R
1は、水素、−(CX
2)
a−CX
3、又は−(CX
2)
b−O−(CX
2)
c−CX
3のいずれかを表し、R
2は、−(CX
2)
d−CX3、−(CX
2)
e−O−(CX
2)
f−CX
3、−(CH
2)
g−NX
2で表される基のいずれかを表す。ここで、Xは水素原子または−(CH
2)
h−CH
3のいずれかを表す。また、aは0〜8の整数、bは1〜4の整数、cは0〜3の整数、dは0〜8の整数、eは1〜4の整数、fは0〜3の整数、gは0〜3の整数、hは0〜3の整数である。]
【0016】
本発明の銀含有組成物について、150℃以下の加熱で優れた導電性を発揮させる場合、沸点が150℃以下のアミン化合物を用いることがより好ましい。このようなアミン化合物としては、例えば、1−プロピルアミン、1−ブチルアミン、1−ペンチルアミン、1−ヘキシルアミン、1−ヘプチルアミン、1−オクチルアミン、イソプロピルアミン、イソブチルアミン、イソアミルアミン、2−メトキシエチルアミン、2−エトキシエチルアミン、3−メトキシプロピルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−イソプロポキシプロピルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミンが挙げられ、いずれかを単独で用いてもよく、また、二種以上を併用することもできる。
【0017】
[(C)分散媒]
本発明の(C)成分である分散媒は、上記アミン化合物と溶媒の混合物とすることが出来る。溶媒の種類及びその混合比率は特に制限されないが、導電性膜の形成時に除去しやすいものが好ましく、溶媒は、用途に応じて単独、又は二種以上を混合して用いることができる。
溶媒の種類としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、3−メチル−1−ブタノール、2−メチル−1−ブタノール、2,2−ジメチル−1−プロパノール、3−メチル−2−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、3−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−1−ペンタノール、2−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−2−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−メチル−3−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、2,2−ジメチル−1−ブタノール、2,3−ジメチル−1−ブタノール、3,3−ジメチル−1−ブタノール、2,3−ジメチル−2−ブタノール、3,3−ジメチル−2−ブタノール、2−エチル−1−ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブトキシエタノール、メトキシエタノール、エトキシエタノール、1H,1H−ナノフルオロ−1−ペンタノールなどのアルコール類、アセトキシメトキシプロパン、フェニルグリシジルエーテル及びエチレングリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール1−モノメチルエーテル2−アセタートなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトンなどのケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル及び酢酸メトキシブチルなどのエステル類、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル及びイソブチロニトリルなどのニトリル類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、水並びに1−メチル−2−ピロリドンなどが挙げられる。
【0018】
本発明の銀含有組成物について、150℃以下の加熱で優れた導電性を発揮させうる点で、溶媒は、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、エチレングリコール、ブトキシエタノール、メトキシエタノール、エトキシエタノール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、アセトニトリル、水が好ましく、いずれかを単独で用いてもよく、また、二種以上を併用することもできる。
【0019】
本発明に用いられる銀含有組成物は、必要により、炭化水素、アセチレンアルコール、シリコーンオイルなどを更に添加して基材に対するレベリング性を調整したり、シランカップリング剤などのカップリング剤の添加により基材に対する密着性を調整したり、樹脂や可塑剤などの添加により粘度特性を調整したりしてもよい。さらに、他の導電性粉末や、ガラス粉末、界面活性剤、金属塩及びその他この種の組成液に一般的に使用される添加剤を配合してもよい。
【0020】
次に、本発明の銀含有組成物の製造方法について説明する。
導電性組成物製造のために各成分を配合するに当たり、(A)〜(C)成分の配合順は任意であり、特に制限はない。さらに、所望により他成分を配合する場合も、(A)〜(C)成分を含めて任意であり、特に制限はない。
配合温度も特に制限はないが、製造の簡便さの点で10〜40℃程度の温度が好ましく、室温がより好ましい。配合時間も特に制限はなく、各成分が均一に混合されればよい。
【0021】
本発明の銀含有組成物は、(A)〜(C)成分、又は、当該成分と所望による任意成分とからなる混合物であるが、これらに加えて還元剤を配合し、(B)アセトンジカルボン酸銀を還元して、銀クラスター及び/又は銀ナノ粒子を該組成物中に生成させた銀コロイド分散液状の銀含有組成物としてもよい。
還元剤としては、例えば、ホウ素化水素化合物、三級アミン、チオール化合物、リン化合物、アスコルビン酸、キノン類、フェノール類が挙げられる。還元剤の使用量は、得られる透明導電膜の導電性が失われない範囲、及び(A)〜(C)成分の必要含有量を確保した範囲内で適宜選択することができる。
【0022】
つづいて、本発明の銀要素形成基材について説明する。
本発明の銀要素形成基材は、本発明の銀含有組成物を基材に塗布・印刷することにより製造することができる。該銀要素形成基材の製造に当たり、導電性膜形成のための乾燥時間を短縮するために、銀含有組成物をあらかじめ加温してもよい。
【0023】
本発明の銀含有組成物を塗布する基材は特に制限されず、例えば樹脂、ガラスなどを挙げることができる。樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、アラミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ乳酸、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチルなどのアクリル系・メタクリル系樹脂、脂環式アクリル樹脂、シクロオレフィン樹脂、トリアセチルセルロース、ABS樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、ポリ塩化ビニルやポリ塩化ビニリデンなどの塩素元素を含有する樹脂、フッ素元素を含有する樹脂、シリコーン系樹脂及びこれら樹脂の混合及び/または共重合したものが挙げられ、ガラスとしては、通常の無アルカリガラスやソーダガラスなどを用いることができる。
【0024】
本発明における銀含有組成物を基材上に塗布・印刷して、導電性膜を形成する方法としては、銀含有組成物を構成する材料の種類により最適な方法を選択すればよく、制限はない。基材上に銀含有組成物を形成する方法として、例えば、キャスト、スピンコート、ディップコート、バーコート、スプレー、ブレードコート、スリットダイコート、グラビアコート、リバースコート、パッド印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、グラビアオフセット印刷、リバースオフセット印刷、スクリーンオフセット印刷、インクジェット印刷、鋳型塗布、マイクロコンタクトプリントなどの一般的な方法が挙げられる。
また導電性膜形成のための乾燥方法も特に制限はなく、ホットプレート上での加熱、熱風による加熱等を例示できる。加熱温度は150℃以下で十分であるが、耐熱性基材を使用する場合は、150℃以上での加熱も可能で、短時間で導電性膜を形成することができるため、生産性の向上に資することができる。
【実施例】
【0025】
次に本発明について実施例及び比較例により、本発明及びその効果を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0026】
銀ナノワイヤーの調製
銀ナノワイヤー分散液(Nano Gap社製)を遠心分離し、銀ナノワイヤー成分と液体成分に分離した。液体成分をデカンテーションした後、乾燥を行い銀ナノワイヤーを得た。なお、遠心分離と乾燥は以下のように実施した。
遠心分離条件:2000rpm×5分間(日立工機(株)製、CP100NX)
乾燥条件:室温×3時間
【0027】
合成例1:アセトンジカルボン酸銀の合成
アセトンジカルボン酸43.8gを1000mLビーカーに秤量後、600gのイオン交換水を添加して溶解させた後、氷冷し、該水溶液にさらに102gの硝酸銀を溶解させた。そこへ、48gのヘキシルアミンを投入後、30分間撹拌した。得られた白色の固体をろ取しアセトンで洗浄後、減圧乾燥することで、88.2gの白色固体状のアセトンジカルボン酸銀を得た(収率:82%)。
得られたアセトンジカルボン酸銀(Ac
3Ag
2)のTGA分析を、熱質量分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)社製)を用いて行った。分析条件は、昇温速度10℃/分、測定雰囲気を空気中とした。その結果、熱分解温度は175℃であった。また、熱質量分析後の残分は59.7%であり、理論残存率(59.4%)と一致していた。
【0028】
実施例1
(B)アセトンジカルボン酸銀0.02gを、室温下、(C)3−エトキシプロピルアミン(EPA)998.98gに溶解させ、その後に(A)銀ナノワイヤー1gを該溶液に添加して実施例1の銀含有組成物を得た。該銀含有組成物の組成を表1に示す。
【0029】
[導電性評価:シート抵抗の測定]
上記のようにして得た銀含有組成物をSelect−Roller(オーエスジーシステムプロダクツ(株)製)を用いてポリエチレンテレフタレート(PET)基材上に塗布し、120℃で2分間の加熱処理を行うことで銀要素形成基材を作製した。加熱処理にはアドバンテック東洋(株)製、DRC423FCを用いた。
得られた銀要素形成基材の導電性の評価として、非接触式抵抗率計(ナプソン(株)製NC−10)を用いてシート抵抗を測定した。結果を表2に示す。
なお、本評価においては、シート抵抗が150Ω/□以下を導電性良好と判定する。
【0030】
[透明性評価]
得られた銀要素形成基材の透明性の評価として、分光色差計(日本電色工業(株)製SE−6000)を用いて色差b*値を測定した。結果を表2に示す。
なお、本評価においては、b*値が0.8以下を透明性良好と判定する。
【0031】
実施例2〜20、比較例1〜22
(A)〜(C)成分の種類及び配合量を表1に示したものとした以外は、実施例1と同様にして各銀含有組成物を調製した。このようにして得た各銀含有組成物を用いて、実施例1と同様にして各銀要素形成基材を作製し、実施例1と同様にシート抵抗及びb*値を測定した。結果を表2に示す。
【0032】
比較例23
(A)成分を使用せず、(B)及び(C)成分の種類及び配合量を表1に示したものとした以外は、実施例1と同様にして銀含有組成物を調製した。このようにして得た銀含有組成物を用いて、実施例1と同様にして銀要素形成基材を作製し、実施例1と同様にシート抵抗及びb*値を測定した。結果を表2に示す。
【0033】
比較例24
(B)成分を使用せず、(A)及び(C)成分の種類及び配合量を表1に示したものとした以外は、実施例1と同様にして銀含有組成物を調製した。このようにして得た銀含有組成物を用いて、実施例1と同様にして銀要素形成基材を作製し、実施例1と同様にシート抵抗及びb*値を測定した。結果を表2に示す。
【0034】
比較例25
(B)成分の代わりに硝酸銀を使用し、その配合量、並びに(A)及び(C)成分の種類及び配合量を表1に示したものとした以外は、実施例1と同様にして銀含有組成物を調製した。このようにして得た銀含有組成物を用いて、実施例1と同様にして銀要素形成基材を作製し、実施例1と同様にシート抵抗及びb*値を測定した。結果を表2に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
表2から明らかなように、実施例1〜20に係る本発明の銀含有組成物による銀要素形成基材は、高導電性の達成と良好な透明性とを両立することができた。一方、比較例1〜25は、導電性及び厚膜形成性の両方又はいずれかが不良で、両性能を両立することはできなかった。