特許第6384227号(P6384227)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6384227
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】スタータ保護装置
(51)【国際特許分類】
   F02N 11/00 20060101AFI20180827BHJP
   F02N 11/10 20060101ALI20180827BHJP
   F02N 11/08 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   F02N11/00 E
   F02N11/10 E
   F02N11/08 X
   F02N11/10 C
   F02N11/10 A
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-191260(P2014-191260)
(22)【出願日】2014年9月19日
(65)【公開番号】特開2016-61254(P2016-61254A)
(43)【公開日】2016年4月25日
【審査請求日】2017年8月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068021
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 信雄
(72)【発明者】
【氏名】ペレラ マイラヌワンゲ ワサンタ ヤハンパトゥ
【審査官】 首藤 崇聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−197599(JP,A)
【文献】 特開昭63−173848(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/162022(WO,A1)
【文献】 特開2010−215007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02N 11/00 − 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のエンジンを始動させるためのスタータを停止させるスタータ停止部と、
前記スタータの駆動時に前記スタータ停止部による前記スタータの停止を許可する通常モードと前記スタータ停止部による前記スタータの停止を禁止する緊急脱出モードとを切り替えるモード切替部と、
を備えており、
前記モード切替部は、タイヤロック状態である場合に通常モードに切り替え、
前記スタータ停止部は、現在のモードが緊急脱出モードでなく、前記エンジンにおけるカムパルス信号又はクランクパルス信号の積算値が閾値以下でなく、所定時間に亘りクランキングが継続している場合に前記スタータを停止させることを特徴とするスタータ保護装置。
【請求項2】
前記スタータ停止部は、現在のモードが緊急脱出モードでなく、前記エンジンにおけるカムパルス信号又はクランクパルス信号の積算値が閾値以下でなく、所定時間に亘りクランキングが継続しておらず、前記エンジンが始動されている場合に前記スタータを停止させる請求項1に記載のスタータ保護装置。
【請求項3】
前記モード切替部は、タイヤロック状態でなく、現在のモードが緊急脱出モードでなく、ギアイン状態である場合に緊急脱出モードに切り替える請求項1又は2に記載のスタータ保護装置。
【請求項4】
前記モード切替部は、タイヤロック状態でなく、現在のモードが緊急脱出モードでなく、ギアイン状態でない場合にモードの切り替えを保留する請求項1から3の何れか一項に記載のスタータ保護装置。
【請求項5】
前記モード切替部は、タイヤロック状態でなく、現在のモードが緊急脱出モードである場合に緊急脱出モードを維持する請求項1から4の何れか一項に記載のスタータ保護装置。
【請求項6】
前記スタータ停止部は、現在のモードが緊急脱出モードでなく、前記エンジンにおけるカムパルス信号又はクランクパルス信号の積算値が閾値以下である場合に前記スタータを停止させる請求項1から5の何れか一項に記載のスタータ保護装置。
【請求項7】
前記モード切替部は、パーキングブレーキ又はフットブレーキが効いている場合にタイヤロック状態であると判定する請求項1から6の何れか一項に記載のスタータ保護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のエンジンを始動させるためのスタータを保護するスタータ保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、踏切でエンジンが停止してしまいエンジンを再始動させることができない等の緊急時に、運転者が所定の条件の下でスタータを駆動させることにより、自動車を緊急発進させてその場からの緊急脱出を図ることができる技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−024216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ギアイン状態で且つタイヤロック状態である場合にスタータの駆動を継続すると、スタータに大電流が印加され続けるため、過電流によるスタータの故障が懸念される。
【0005】
そこで、本発明の目的は、タイヤロック状態に伴う過電流に起因するスタータの故障を防止することが可能なスタータ保護装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために創案された本発明は、自動車のエンジンを始動させるためのスタータを停止させるスタータ停止部と、前記スタータの駆動時に前記スタータ停止部による前記スタータの停止を許可する通常モードと前記スタータ停止部による前記スタータの停止を禁止する緊急脱出モードとを切り替えるモード切替部と、を備えており、前記モード切替部は、タイヤロック状態である場合に通常モードに切り替え、前記スタータ停止部は、現在のモードが緊急脱出モードでなく、前記エンジンにおけるカムパルス信号又はクランクパルス信号の積算値が閾値以下でなく、所定時間に亘りクランキングが継続している場合に前記スタータを停止させるスタータ保護装置である。
【0007】
前記スタータ停止部は、現在のモードが緊急脱出モードでなく、前記エンジンにおけるカムパルス信号又はクランクパルス信号の積算値が閾値以下でなく、所定時間に亘りクランキングが継続しておらず、前記エンジンが始動されている場合に前記スタータを停止させることが好ましい。
【0008】
前記モード切替部は、タイヤロック状態でなく、現在のモードが緊急脱出モードでなく、ギアイン状態である場合に緊急脱出モードに切り替えることが好ましい。
【0009】
前記モード切替部は、タイヤロック状態でなく、現在のモードが緊急脱出モードでなく、ギアイン状態でない場合にモードの切り替えを保留することが好ましい。
【0010】
前記モード切替部は、タイヤロック状態でなく、現在のモードが緊急脱出モードである場合に緊急脱出モードを維持することが好ましい。
【0011】
前記スタータ停止部は、現在のモードが緊急脱出モードでなく、前記エンジンにおけるカムパルス信号又はクランクパルス信号の積算値が閾値以下である場合に前記スタータを停止させることが好ましい。
【0012】
前記モード切替部は、パーキングブレーキ又はフットブレーキが効いている場合にタイヤロック状態であると判定することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、タイヤロック状態に伴う過電流に起因するスタータの故障を防止することが可能なスタータ保護装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態に係るスタータ保護装置を示す概略図である。
図2】スタータ保護装置の全体動作を示す流れ図である。
図3】モード切替部の動作を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面に順って説明する。
【0016】
図1に示すように、本発明の好適な実施の形態に係るスタータ保護装置100は、自動車のエンジン101を始動させるためのスタータ102を停止させるスタータ停止部103と、スタータ102の駆動時にスタータ停止部103によるスタータ102の停止を許可する通常モードとスタータ停止部103によるスタータ102の停止を禁止する緊急脱出モードとを切り替えるモード切替部104と、を備えている。
【0017】
スタータ停止部103とモード切替部104は電子制御装置(ECU)105により実現されており、電子制御装置105はスタータ保護装置100により使用される種々のパラメータを取得している。
【0018】
図2に示すように、スタータ保護装置100は、運転者によりイグニッションキーがスタータ駆動位置に回されてスタータ102が駆動されたときに動作を開始し、ステップS101でモード切替部104によりモードを切り替える。
【0019】
最初にスタータ保護装置100の動作が開始された時点では、現在のモードは通常モード、即ち、緊急脱出モードが無効になっており、ステップS101で緊急脱出モードを有効にして現在のモードを緊急脱出モードにするか、又は緊急脱出モードを無効に維持して現在のモードを通常モードに維持するかを判定する。
【0020】
図3に示すように、モード切替部104は、ステップS201とステップS202でタイヤロック状態であるか否かを判定し、タイヤロック状態である場合にステップS203に移行して現在のモードを通常モードに切り替えると共にステップS101を終えてステップS102に移行し、タイヤロック状態でない場合にステップS204に移行する。具体的には、ステップS201でパーキングブレーキが効いているか否かを判定し、ステップS202でフットブレーキが効いているか否かを判定し、パーキングブレーキ又はフットブレーキが効いている場合にタイヤロック状態であると判定する。
【0021】
タイヤロック状態である場合に現在のモードを通常モードに切り替える理由は、運転者による緊急脱出の意図がない可能性があり、スタータ102の故障が懸念されるため、スタータ102を保護する必要があると想定されるからである。例えば、運転者がギアイン駐車を意図して自動車を操作している場合が考えられる。
【0022】
ステップS204では、現在のモードが緊急脱出モードであるか否かを判定し、現在のモードが緊急脱出モードでない場合(即ち、通常モードである場合)にステップS205に移行し、現在のモードが緊急脱出モードである場合にステップS206に移行して現在のモードを緊急脱出モードに維持すると共にステップS101を終えてステップS102に移行する。
【0023】
ステップS205では、ギアイン状態であるか否かを判定し、ギアイン状態である場合にステップS206に移行して現在のモードを緊急脱出モードに切り替え、ギアイン状態でない場合にモードの切り替えを保留した上で動作を終了する。
【0024】
タイヤロック状態でなく、現在のモードが緊急脱出モードでなく、ギアイン状態である場合に現在のモードを緊急脱出モードに切り替える理由は、運転者による緊急脱出の意図があり、スタータ停止部103によるスタータ102の停止を禁止する必要があるからである。
【0025】
また、タイヤロック状態でなく、現在のモードが緊急脱出モードでなく、ギアイン状態でない場合にモードの切り替えを保留した上で動作を終了する理由は、運転者による緊急脱出の意図がなく、スタータ102の故障が懸念されるため、スタータ102を保護する必要があるからである。
【0026】
更に、タイヤロック状態でなく、現在のモードが緊急脱出モードである場合にギアイン状態と無関係に現在のモードを緊急脱出モードに維持する理由は、緊急脱出中にクラッチが切断されたとしても、自動車の操作のために運転者により意図的にクラッチが切断された可能性があるため、スタータ停止部103によるスタータ102の停止を禁止する必要があるからである。
【0027】
再び図2を参照し、ステップS102では、スタータ停止部103により現在のモードが緊急脱出モードであるか否かを判定し、現在のモードが緊急脱出モードである場合にスタータ102を停止させることなく動作を終了し、現在のモードが緊急脱出モードでない場合(即ち、通常モードである場合)にステップS103からステップS106に亘る通常制御(スタータ停止制御)に移行する。
【0028】
現在のモードが緊急脱出モードである場合にスタータ102を停止させることなく動作を終了する理由は、緊急時はスタータ102の保護よりも自動車の緊急脱出を優先する必要があるからである。
【0029】
ステップS103では、スタータ停止部103によりエンジン101におけるカムパルス信号又はクランクパルス信号の積算値が閾値以下であるか否かを判定し、エンジン101におけるカムパルス信号又はクランクパルス信号の積算値が閾値以下でない場合にステップS104に移行し、エンジン101におけるカムパルス信号又はクランクパルス信号の積算値が閾値以下である場合にステップS106に移行してスタータ停止部103によりスタータ102を停止させる。
【0030】
エンジン101におけるカムパルス信号又はクランクパルス信号の積算値が閾値以下である場合にスタータ停止部103によりスタータ102を停止させる理由は、運転者による緊急脱出の意図がなく、スタータ102の故障が懸念されるため、スタータ102を保護する必要があるからである。例えば、運転者がギアイン駐車を意図して自動車を操作している場合が考えられる。
【0031】
また、エンジン101におけるカムパルス信号又はクランクパルス信号の積算値が閾値以下でない場合に通常制御を継続する理由は、運転者による緊急脱出の意図があるものの、自動車の操作のために運転者により意図的にパーキングブレーキが弱く引かれていたりフットブレーキが弱く踏まれていたりする可能性があるため、完全なタイヤロック状態でないときは緊急脱出モードでなくても、スタータ102の停止を禁止する必要がある場合も存在するからである。
【0032】
ステップS104では、スタータ停止部103により所定時間に亘りクランキングが継続しているか否かを判定し、所定時間に亘りクランキングが継続していない場合にステップS105に移行し、所定時間に亘りクランキングが継続している場合にステップS106に移行してスタータ停止部103によりスタータ102を停止させる。
【0033】
所定時間に亘りクランキングが継続している場合にスタータ停止部103によりスタータ102を停止させる理由は、スタータ102の駆動を更に継続してもエンジン101が始動される可能性は低く、またスタータ102の故障も懸念されるため、スタータ102を保護する必要があるからである。例えば、エンジン101の故障等を原因として自動車が走行不能に陥っている場合が考えられる。
【0034】
ステップS105では、スタータ停止部103によりエンジン101が始動されているか否かを判定し、エンジン101が始動されている場合にステップS106に移行してスタータ停止部103によりスタータ102を停止させ、エンジン101が始動されていない場合にスタータ102を停止させることなく動作を終了する。
【0035】
エンジン101が始動されている場合にスタータ停止部103によりスタータ102を停止させる理由は、もはやスタータ102の駆動を継続する必要がないからであり、エンジン101が始動されていない場合にスタータ102を停止させることなく動作を終了する理由は、スタータ102の駆動を更に継続することによりエンジン101が始動される可能性があるためである。
【0036】
以上の通り、本発明によれば、タイヤロック状態に伴う過電流に起因するスタータの故障を防止することが可能なスタータ保護装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0037】
100 スタータ保護装置
101 エンジン
102 スタータ
103 スタータ停止部
104 モード切替部
105 電子制御装置
図1
図2
図3