(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
中心軸を中心とする径方向に延びるガイド溝が複数形成された爪支持台と、前記中心軸の軸周りに並んで配置されそれぞれが前記ガイド溝に沿って径方向に開閉してワークを把持する複数のチャック爪と、前記各チャック爪を開閉させるチャック爪開閉機構と、を備えるチャック装置において、
前記チャック爪開閉機構は、前記各チャック爪を前記ガイド溝上の任意の待機位置に移動させる電気式の第1のアクチュエータと、前記各チャック爪を前記ガイド溝に沿って微小距離移動させる流体圧式の第2のアクチュエータと、を含み、
前記チャック爪開閉機構を制御する制御装置をさらに含み、
前記制御装置は、前記各チャック爪が前記ガイド溝上のうち前記ワークの径に応じた前記待機位置に移動して待機するように前記第1のアクチュエータを動作した後、前記各チャック爪が前記ガイド溝に沿って前記待機位置から前記ワークに向けて微小距離移動するように前記第2のアクチュエータを動作することで、前記各チャック爪に前記ワークを把持させるチャック装置。
中心軸を中心とする径方向に延びるガイド溝が複数形成された爪支持台と、前記中心軸の軸周りに並んで配置されそれぞれが前記ガイド溝に沿って径方向に開閉してワークを把持する複数のチャック爪と、前記各チャック爪を開閉させるチャック爪開閉機構と、を備えるチャック装置を用いたワークの保持方法において、
前記チャック爪開閉機構に設けられる電気式の第1のアクチュエータにより、前記各チャック爪を前記ガイド溝上のうち前記ワークの径に応じた前記待機位置に移動して待機させるステップと、
前記チャック爪開閉機構に設けられる流体圧式の第2のアクチュエータにより、前記各チャック爪を前記ガイド溝に沿って前記待機位置から前記ワークに向けて微小距離移動させることで前記ワークを把持するステップと、を含み、
前記各チャック爪が前記ガイド溝上のうち前記ワークの径に応じた前記待機位置に移動して待機するように前記第1のアクチュエータを動作した後、前記各チャック爪が前記ガイド溝に沿って前記待機位置から前記ワークに向けて微小距離移動するように前記第2のアクチュエータを動作することで、前記各チャック爪に前記ワークを把持させるワークの保持方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、エアシリンダ機構を駆動源とするチャック装置では、チャック爪を開閉させる場合のストロークが一定となる。したがって、例えば径の細いワークであっても、径の太いワークであっても、ワークを把持及び開放するために一定の時間を要することになる。そのため、例えば上記のチャック装置を有するローダが搭載された工作機械により、径の細いワークに僅かな加工を行うような場合、加工に要する時間に対してワークの把持及び開放に要する時間が長くなり、加工全体のサイクルタイムが長くなってしまう。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本発明は、ワークの把持及び開放のために要する時間を短縮できるチャック装置、ワークの保持方法及びローダ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るチャック装置は、中心軸を中心とする径方向に延びるガイド溝が複数形成された爪支持台と、中心軸の軸周りに並んで配置されそれぞれがガイド溝に沿って径方向に開閉してワークを把持する複数のチャック爪と、各チャック爪を開閉させるチャック爪開閉機構と、を備えるチャック装置において、チャック爪開閉機構は、各チャック爪をガイド溝上の任意の待機位置に移動させる電気式の第1のアクチュエータと、各チャック爪をガイド溝に沿って微小距離移動させる
流体圧式の第2のアクチュエータと、を
含み、チャック爪開閉機構を制御する制御装置をさらに含み、制御装置は、各チャック爪がガイド溝上のうちワークの径に応じた待機位置に移動して待機するように第1のアクチュエータを動作した後、各チャック爪がガイド溝に沿って待機位置からワークに向けて微小距離移動するように第2のアクチュエータを動作することで、各チャック爪にワークを把持させる。
【0007】
また、チャック爪開閉機構を制御する制御装置をさらに含み、制御装置は、各チャック爪がガイド溝上のうちワークの径に応じた待機位置に移動して待機するように第1のアクチュエータを動作した後、各チャック爪がガイド溝に沿って待機位置からワークに向けて微小距離移動するように第2のアクチュエータを動作することで、各チャック爪にワークを把持させてもよい。
【0008】
また、チャック爪開閉機構は、螺旋溝を有する溝カムをさらに含み、第1のアクチュエータは、中心軸の軸周りに溝カムを回転させる回転モータであり、溝カムは、各チャック爪が螺旋溝に摺動可能に係合されるように、かつ、回転時において各チャック爪が螺旋溝内を摺動しながらガイド溝に沿って移動するように配置されてもよい。
【0009】
また、第2のアクチュエータは、溝カムを中心軸の軸線方向に移動させる駆動源を有し、各チャック爪は、螺旋溝との係合部分がテーパ部として形成され、テーパ部は、溝カムが軸線方向に移動する際に、螺旋溝の溝壁によって径方向に押されるように配置されてもよい。
【0010】
また、駆動源は、溝カムに対して軸線方向に空気圧を作用させる空気圧シリンダであってもよい。また、第2のアクチュエータは、溝カムに対して軸線方向への空気圧を大気開放する場合に溝カムを軸線方向に引き戻す弾性部材を有してもよい。
【0011】
本発明に係るワークの保持方法は、中心軸を中心とする径方向に延びるガイド溝が複数形成された爪支持台と、中心軸の軸周りに並んで配置されそれぞれがガイド溝に沿って径方向に開閉してワークを把持する複数のチャック爪と、各チャック爪を開閉させるチャック爪開閉機構と、を備えるチャック装置を用いたワークの保持方法において、チャック爪開閉機構に設けられる電気式の第1のアクチュエータにより、各チャック爪をガイド溝上のうちワークの径に応じた待機位置に移動して待機させるステップと、
チャック爪開閉機構に設けられる流体圧式の第2のアクチュエータにより、各チャック爪をガイド溝に沿って待機位置からワークに向けて微小距離移動させることでワークを把持するステップと、を含み、各チャック爪がガイド溝上のうちワークの径に応じた待機位置に移動して待機するように第1のアクチュエータを動作した後、各チャック爪がガイド溝に沿って待機位置からワークに向けて微小距離移動するように第2のアクチュエータを動作することで、各チャック爪にワークを把持させる。
【0012】
本発明に係るローダ装置は、チャック装置でワークを保持して搬送するローダ装置であって、チャック装置として、上記のチャック装置を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るチャック装置によれば、各チャック爪をガイド溝上の任意の待機位置に移動させる動作を電気式の第1のアクチュエータに行わせ、各チャック爪をガイド溝に沿って微小距離移動させてワークを把持する動作を第2のアクチュエータに行わせることができるため、チャック開閉機構の大型化を防ぎつつ、ワークを短時間で把持することができる。これにより、ワークの把持及び開放のために要する時間を短縮できる。
【0014】
また、チャック爪開閉機構を制御する制御装置をさらに含み、各チャック爪がガイド溝上のうちワークの径に応じた待機位置に移動して待機するように制御装置が第1のアクチュエータを動作した後、各チャック爪がガイド溝に沿って待機位置からワークに向けて微小距離移動するように制御装置が第2のアクチュエータを動作することで、各チャック爪にワークを把持させるものでは、第1のアクチュエータによりチャック爪がワークの径に応じた待機位置に移動するため、ワークの径にかかわらず短時間でワークを把持することができる。
【0015】
また、チャック爪開閉機構が、螺旋溝を有する溝カムをさらに含み、第1のアクチュエータが、中心軸の軸周りに溝カムを回転させる回転モータであり、各チャック爪が螺旋溝に摺動可能に係合されるように、かつ、回転時において各チャック爪が螺旋溝内を摺動しながらガイド溝に沿って移動するように溝カムが配置されるものでは、溝カムを回転させるだけの簡単な構成でチャック爪をガイド溝に沿って移動させることができるため、第1のアクチュエータの大型化を防ぐことができる。
【0016】
また、第2のアクチュエータが、溝カムを中心軸の軸線方向に移動させる駆動源を有し、各チャック爪において螺旋溝との係合部分がテーパ部として形成され、溝カムが軸線方向に移動する際に、螺旋溝の溝壁によって径方向に押されるようにテーパ部が配置されるものでは、溝カムを軸線方向に移動させることでテーパ部と共にチャック爪を径方向に移動させることができる。
【0017】
また、駆動源が、溝カムに対して軸線方向に空気圧を作用させる空気圧シリンダであるものでは、空気圧シリンダのストロークが短くなるため、短時間でワークを把持することができる。また、第2のアクチュエータが、溝カムに対して軸線方向への空気圧を大気開放する場合に溝カムを軸線方向に引き戻す弾性部材を有するものでは、空気圧を大気開放することでワークへの把持を開放することができる。これにより、ワークの開放に要する時間を短縮できる。
【0018】
本発明に係るワークの保持方法によれば、第1のアクチュエータでチャック爪をワークの径に応じた待機位置に移動させた後、第2のアクチュエータでワークに対して把持力を加えることができるため、ワークの径にかかわらず短時間でワークを把持することができる。
【0019】
本発明に係るローダ装置によれば、チャック装置として、ワークの把持及び開放のために要する時間を短縮できる上記のチャック装置を備えるため、ワークの搬送に要する時間を短縮できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1実施形態>
図1(a)は、第1実施形態に係るチャック装置100の一例を示す斜視図である。
図1(b)は、
図1(a)に示す切断面Lによりチャック装置100を切断した例を示す斜視図である。
図2は、切断面Lによるチャック装置100の断面を示す図である。
【0022】
図1及び
図2に示すように、チャック装置100は、爪支持台10と、チャック爪20と、チャック爪開閉機構30と、制御装置60とを備えている。チャック装置100は、チャック爪20によってワークWを把持する。チャック装置100には、中心軸AXが設定される。以下、円筒状の外周面を有するワークWを把持した場合のワークWの中心軸に一致する軸を、チャック装置100の中心軸AXとして説明する。
【0023】
爪支持台10は、第1基板11と、第2基板12と、複数本の柱部13とを有している。第1基板11及び第2基板12は、中心軸AXの軸線方向D2に対向して配置される。第1基板11と第2基板12とは、柱部13によって間隔を空けて略平行に配置されている。
【0024】
第1基板11には、表裏を貫通するガイド溝11aを有している。ガイド溝11aは、チャック爪20を案内するための溝である。ガイド溝11aは、中心軸AXを中心とする径方向D1に沿って形成される。ガイド溝11aは、中心軸AXの軸周りに複数並んで配置されている。各ガイド溝11aは、中心軸AXの軸線周りに等間隔に配置されている。本実施形態では、3つのガイド溝11aが放射状に中心軸AXを中心として放射状に形成されている。また、第1基板11の中心部分には、開口部11bが形成されている。開口部11bからは、後述の伝達軸52の先端部分が露出している。
【0025】
チャック爪20は、中心軸AXの軸線周りに複数配置されている。複数のチャック爪20は、ガイド溝11aに沿って径方向D1に移動可能に設けられる。複数のチャック爪20は、径方向D1の内側に移動することでワークWの外周面に当接され、これによりワークWを把持する。
【0026】
チャック爪20は、把持部材21及び係合部22を有している。把持部材21は、ガイド溝11aによって案内されて径方向D1に沿って移動する。把持部材21のうち第2基板12側の端部には、凹部21aが形成されている。係合部22は、後述の螺旋溝43aに係合される。係合部22は、基部22a及びテーパ部22bを有している。基部22aは、凹部21aに挿入される。テーパ部22bは、先端部分が螺旋溝43aに挿入されると共に、螺旋溝43aに摺動可能に係合される。
【0027】
チャック開閉機構30は、制御装置60の制御により、複数のチャック爪20を径方向D1に移動させる。チャック開閉機構30は、第1アクチュエータ40及び第2アクチュエータ50を有している。
【0028】
第1アクチュエータ40は、電気式のモータ41と、ギア42と、溝カム43とを有している。モータ41は、第1基板11と第2基板12との間の空間に配置され、例えば第2基板12に支持されている。モータ41としては、例えばステッピングモータなどが用いられる。ギア42は、モータ41の出力軸41aに取り付けられている。ギア42は、出力軸41aの回転を溝カム43に伝達可能である。
【0029】
溝カム43は、例えば円板状に形成される。溝カム43は、中心軸AXの軸周りに回転可能に設けられる。溝カム43は、中心軸AXに同軸に配置されたギア43dを有している。ギア43dは、ギア42に噛み合わされている。モータ41の出力軸41aが回転することにより、出力軸41aの回転がギア42を介してギア43dに伝達される。これにより、溝カム43が中心軸AXの軸線周りに回転するようになっている。
【0030】
また、溝カム43の表面側には、螺旋溝43aが形成される。
図3(a)及び(b)は、溝カム43の一例を示す図である。なお、
図3(a)は、第1基板11側から溝カム43を見たときの図である。また、
図3(b)は、
図3(a)に示す状態から溝カム43が中心軸AXの軸線周りに回転した状態を示している。
【0031】
図3(a)に示すように、螺旋溝43aは、チャック爪20の個数に対応する数だけ、中心軸AXの軸線周りに並んで配置されている。本実施形態では、1つの螺旋溝43aに1つのチャック爪20の係合部22(テーパー22b)が挿入されるようになっている。各螺旋溝43aは、それぞれ例えばベルヌーイ螺旋に沿って配置され、外側から中心軸AXにかけて反時計回りに形成されている。
【0032】
溝カム43が、
図3(a)の状態から時計回りに回転する場合、
図3(b)に示すように、螺旋溝43aが時計回りに回転する。そのため、螺旋溝43aのうち中心軸AXの軸線方向視でガイド溝11aに重なる部分が、径方向D1の内側に移動する。これにより、テーパ部22bは、螺旋溝43aを画定する壁面のうち径方向D1の外側の壁面(外側溝壁43b)に押され、径方向の内側に移動する。このとき、テーパ部22bは、螺旋溝43aに摺動しながらガイド溝11aに沿って移動する。
【0033】
また、溝カム43が、
図3(a)の状態から反時計回りに回転する場合、螺旋溝43aが反時計回りに回転する。そのため、螺旋溝43aのうち中心軸AXの軸線方向視でガイド溝11aに重なる部分が、径方向D1の外側に移動する。これにより、テーパ部22bは、螺旋溝43aを画定する壁面のうち径方向D1の内側の壁面(内側溝壁43c)に押され、径方向の外側に押される。このとき、テーパ部22bは、螺旋溝43aに摺動しながらガイド溝11aに沿って移動する。
【0034】
第2アクチュエータ50は、駆動源51と、伝達軸52とを有している。駆動源51としては、例えば空圧式シリンダが用いられる。駆動源51は、伝達軸52を中心軸AXの軸線方向D2に移動させる。駆動源51は、後述の弾性部材54の弾性力よりも強い圧力で伝達軸52を第1基板11側に移動させる。
【0035】
伝達軸52は、中心軸AXの軸線方向D2に沿って配置されている。伝達軸52は、第2基板12及び溝カム43を貫通して設けられ、先端が第1基板11の開口部11bに入り込むように配置される。また、伝達軸52は、軸受部53によって支持されている。これにより、伝達軸52は、中心軸AXに対して径方向D1に位置ずれしないようになっている。なお、伝達軸52は、不図示の締結部材(ボルトなど)によって溝カム43と一体で形成されるが、これに限定するものではない。例えば、伝達軸52と溝カム43とが一部材で形成されてもよい。
【0036】
伝達軸52は、拡径部52aを有している。拡径部52aは、伝達軸52のうち軸受部53から第1基板11側に突出する部分に設けられている。拡径部52aは、軸受部53の端面53aに係止されるように設けられる。これにより、伝達軸52が駆動源51に戻る際に、戻り過ぎるのを防いでいる。
【0037】
拡径部52aのうち第1基板11側の端面52bは、溝カム43に当接される。伝達軸52が軸線方向D2に沿って第1基板11側に移動する場合、端面52bが溝カム43を第1基板11側に押すことになる。これにより、溝カム43は、第1基板11側に移動するようになっている。
【0038】
また、伝達軸52には、弾性部材54が取り付けられている。弾性部材54は、伝達軸52のうち第2基板12から駆動源51側に突出した部分に設けられる。弾性部材54は、伝達軸52を駆動源51側に引っ張るように弾性力を作用させる。これにより、伝達軸52を第1基板11側に押し出すための空気圧を開放した時に、弾性力によって伝達軸52が駆動源51側に戻るようになっている。
【0039】
図4(a)及び(b)は、第2アクチュエータ50を用いてチャック爪20を移動させる動作の一例を模式的に示す図である。なお、
図4(a)及び(b)では、図を判別しやすくするため、チャック爪20、係合部22及び溝カム43以外の構成を省略して示している。
第1アクチュエータ40によってチャック爪20を径方向D1の内側に移動させた場合、
図4(a)に示すように、テーパ部22bが、螺旋溝43aの外側溝壁43bに当接した状態となる。
【0040】
この状態で、第2アクチュエータ50によって溝カム43を第1基板11側(
図4(a)の上側)に押すことにより、溝カム43が中心軸AXの軸線方向D2に沿って第1基板11側に移動する。この溝カム43の移動により、
図4(b)に示すようにテーパ部22bが外側溝壁43bによって内側に押される。これにより、テーパ部22bが螺旋溝43a内に入り込むように径方向D1の内側に移動し、これに伴ってチャック爪20が径方向D1の内側に移動する。
【0041】
逆に、第1アクチュエータ40によってチャック爪20を径方向D1の外側に移動させた場合、テーパ部22bが、螺旋溝43aの内側溝壁43cに当接した状態となる。その状態で、第2アクチュエータ50によって溝カム43を第1基板11側に押すことにより、溝カム43が中心軸AXの軸線方向D2に沿って第1基板11側に移動する。この溝カム43の移動により、テーパ部22bが内側溝壁43cによって外側に押される。これにより、テーパ部22bが螺旋溝43a内に入り込むように径方向D1の外側に移動し、これに伴ってチャック爪20が径方向D1の外側に移動する。
【0042】
次に、上記のように構成されたチャック装置100を用いた動作を説明する。
図5は、チャック装置100を用いてワークの保持及び開放を行う方法の一例を示すフローチャートである。
図6(a)〜(c)は、チャック装置100の動作を示す図である。以下では、円柱状のワークWの外周を保持する場合を例に挙げて説明する。
【0043】
まず、
図6(a)に示すように、チャック装置100をワークWに対向させる。このとき、ワークWの中心軸とチャック装置100の中心軸AXとを略一致させた状態とする。そして、この状態で、第1アクチュエータ40を用いてチャック爪20を所定の待機位置に移動させて待機させる(ステップS01)。この待機位置は、ワークWの径に応じて設定される。本実施形態では、ワークWの外周面Waに近接する位置に待機位置P(
図6(b)参照)が設定されるが、これに限定するものではなく、例えばワークWの外周面Waに当接する位置であってもよい。
【0044】
このステップにおいて、制御装置60は、チャック爪20が径方向D1の内側に移動するようにモータ41を回転させる。モータ41の回転により、溝カム43が中心軸AXの軸周りに回転し、チャック爪20がチャック装置100の径方向D1の内側に移動する。そして、
図6(b)に示すように、チャック爪20が待機位置Pに移動した後、制御装置60は、モータ41の回転を停止させ、チャック爪20を待機位置Pに待機させる。制御装置60は、ワークWの径に応じて溝カム43の回転量を設定し、設定結果に基づいた回転量で溝カム43を回転させる。
【0045】
次に、第2アクチュエータ50によって溝カム43を第1基板11側に移動させる(ステップS02)。このステップにおいて、制御装置60は、伝達軸52に対して空気圧を作用させ、伝達軸52を中心軸AXの軸線方向D2に沿って第1基板11側に移動させる。伝達軸52が移動することにより、溝カム43が第1基板11側に押される。そして、チャック爪20のテーパ部22bが螺旋溝43aの外側溝壁43bによって内側に押され、チャック爪20が径方向D1の内側に移動する。これにより、各チャック爪20がワークWの外周面Waに当接され、ワークWに対して内側に力を作用させる。このように、第2アクチュエータ50を用いてチャック爪20を微小距離だけ移動させることで、ワークを把持することができる。
【0046】
また、この状態からワークWの把持を開放する場合、第2アクチュエータ50によって溝カム43を第2基板12側に移動させる(ステップS03)。このステップにおいて、制御装置60は、伝達軸52に対して空気圧を解除(大気開放)する。これにより、伝達軸52に接続される弾性部材54の弾性力によって伝達軸52が駆動源51側に引き戻される。そのため、溝カム43が第2基板12側に移動する。なお、伝達軸52は、拡径部52aが軸受部53の端面に当接されるまで移動する。こうして、ワークの把持状態を解除することができる。同一径のワークに対して、同じ加工を繰り返す場合にが、以降はステップS02とステップS03を繰り返すだけでよく、ワークWの把持及び開放のための時間を短縮する。
【0047】
次に、第1アクチュエータ40によってチャック爪20を開く(ステップS04)。このステップにおいて、制御装置60は、チャック爪20が径方向D1の外側に移動するように、ワークWを把持する場合とは逆の方向にモータ41を回転させる。モータ41の回転により、溝カム43がワークWを把持する場合とは逆方向に回転し、チャック爪20がガイド溝11aに沿って径方向D1の外側に移動する。このステップS04は、ワークWを異なる径のものに取り換える場合にのみ行えばよい。
【0048】
以上のように、本実施形態では、各チャック爪20をガイド溝11a上の待機位置Pに移動させる動作を電気式の第1アクチュエータ40に行わせ、各チャック爪20をガイド溝11aに沿って微小距離移動させてワークWを把持する動作を、例えば流体圧式の第2アクチュエータ50に行わせることができるため、チャック開閉機構30の大型化を防ぎつつ、ワークWを短時間で把持することができる。これにより、ワークWの把持及び開放のために要する時間を短縮できる。
【0049】
<第2実施形態>
図7は、第2実施形態に係るローダ装置200の一例を示す図である。
図7においては、XYZ座標系を用いて図中の方向を説明する場合がある。このXYZ座標系においては、水平面(例、床面)に平行な平面をXZ平面とする。このXZ平面に平行な任意の方向をZ方向と表記し、Z方向に直交する方向をX方向と表記する。また、XZ平面に垂直な方向はY方向と表記する。X方向、Y方向及びZ方向のそれぞれは、図中の矢印の方向が+方向であり、矢印の方向とは反対の方向が−方向であるものとして説明する。
【0050】
ローダ装置200は、ワークWの搬送を行うものである。ローダ装置200は、例えばワークWの加工を行う工作機械等に搭載されるが、これに限定するものではなく、他の機械や装置等に搭載されてもよいし、ローダ装置200単独で用いられてもよい。
【0051】
ローダ装置200は、ローダヘッド110と、ヘッド駆動部120とを備えている。また、ローダ装置200は、これらローダヘッド110及びヘッド駆動部120を統括的に制御する不図示の制御装置を有している。この制御装置は、後述するチャック装置112、113の制御装置を兼ねてもよい。
【0052】
ローダヘッド110は、チャック保持部111と、チャック装置112及び113と、回転機構114とを有している。
チャック保持部111は、チャック装置112及び113を保持する。チャック保持部111は、床面に対して所定角度(例、45°)傾斜した軸(
図6に一点鎖線で示す)の周りに回転可能である。
【0053】
チャック装置112及び113は、一方が下方向に向けた姿勢(床面に対面する姿勢)に配置され、他方が水平方向に向けた姿勢(床面に沿った姿勢)に配置される。
図6では、チャック装置112が下方向に向けた姿勢で配置され、チャック装置113が水平方向に向けた姿勢で配置されている。チャック装置112、113としては、例えば上記のチャック装置100が用いられる。なお、上記のチャック装置100A、100Bが用いられてもよい。
【0054】
回転機構114は、チャック保持部111を中心軸AXの軸周りに回転させる。回転機構114は、例えばモータなど不図示の駆動源を有している。回転機構114により、中心軸AXの軸周りにチャック保持部111を180°回転させることにより、2つのチャック装置112及び113が互いの位置を入れ替え可能となっている。
【0055】
ヘッド駆動部120は、ローダヘッド110をX方向、Z方向及びY方向のそれぞれに三次元的に移動させる。ヘッド駆動部120は、X駆動部121と、Z駆動部122と、Y駆動部123とを有している。
X駆動部121は、X移動体121aと、ガイドレール121bとを有している。ガイドレール121bは、X方向に平行に延びており、不図示の固定部に固定されている。ガイドレール121bは、X移動体121aを案内する。X移動体121aは、不図示の駆動源により、ガイドレール121bに沿ってX方向に移動可能となっている。
【0056】
Z駆動部122は、Z移動体122aと、ガイド部122bとを有している。このガイド部122bは、Z方向に延びており、X移動体121aに固定されている。ガイド部122bは、Z移動体122aを案内する。Z移動体122aは、不図示の駆動源により、ガイド部122bに沿ってZ方向に移動可能となっている。
【0057】
Y駆動部123は、Y移動体123aと、ガイド部123bとを有している。このガイド部123bは、Y方向に平行に延びており、Z移動体122aに固定されている。ガイド部123bは、Y移動体123aを案内する。Y移動体123aは、棒状に形成されている。Y移動体123aは、不図示の駆動源により、ガイド部123bに沿ってY方向に移動可能となっている。Y移動体123aの−Y側端部には、ローダヘッド110が固定されている。
【0058】
ローダ装置200は、チャック装置112、113によってワークWを保持した状態でローダヘッド110をX方向、Y方向及びZ方向に移動させることで、ワークWを搬送するようになっている。
【0059】
本実施形態に係るローダ装置200は、チャック装置112、113として、ワークWの把持及び開放のために要する時間を短縮できる上記のチャック装置100(又は100A,100B)を備えるため、ワークWの搬送に要する時間を短縮できる。これにより、ローダ装置200が工作機械に用いられる場合、工作機械におけるワークWの加工のサイクルタイムを短縮することができる。
【0060】
以上、実施形態について説明したが、本発明は、上述した説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
例えば、第1実施形態では、螺旋溝43aがチャック爪20の個数に対応する数だけ、中心軸AXの軸線周りに並んで配置され、各螺旋溝43aがそれぞれ例えばベルヌーイ螺旋に沿って配置された構成を例に挙げて説明したが、これに限定するものではない。
【0061】
図8(a)及び(b)は、変形例に係る溝カム44及び45の一例を示す図である。
図8(a)に示す溝カム44のように、各螺旋溝44aがそれぞれ例えばアルキメデス螺旋に沿って配置された構成であってもよい。この場合、第1実施形態と同様、テーパ部22bが各螺旋溝43aに1つずつ係合される構成とすることができる。
【0062】
また、
図8(b)に示す溝カム45のように、一条の螺旋溝45aが形成された構成であってもよい。この場合、テーパ部は、螺旋溝45aのうち平面視でガイド溝11aに重なる部分にそれぞれ係合されるように配置できる。このような構成では、溝カム45が回転することにより、3つのチャック爪20のテーパ部22bが一条の螺旋溝45aの異なる部分に沿って案内されることになる。この場合であっても、チャック爪20を径方向D1に移動させることができる。なお、テーパ部22bを案内する溝の形状については、螺旋に限定するものではなく、直線や他の曲線等であってもよい。
【0063】
また、第1実施形態では、第2アクチュエータ50の駆動源51として、空気圧シリンダ機構が設けられた構成を例に挙げて説明したが、これに限定するものではなく、油圧シリンダ機構やボールねじ機構などが用いられてもよい。また、例えば、
図9(a)に示すチャック装置100Aのように、駆動源としてピエゾ素子55が用いられた構成であってもよい。この場合、ピエゾ素子55は、例えば軸受部53の端面53a側に設けられた凹部53bに配置させることができる。また、ピエゾ素子55は、駆動源として不図示の電圧源に接続される。制御装置60は、電圧源を制御することにより、ピエゾ素子55を軸線方向D2に伸縮させることが可能となっている。このように、ピエゾ素子55を用いることにより、軸線方向D2に強い駆動力を発生させることができると共に、空気圧シリンダ機構を用いる場合に比べて チャック装置100Aを小型化することができる。
【0064】
また、第1実施形態では、螺旋溝43aにテーパ部22bが直接当接する構成を例に挙げて説明したが、これに限定するものではない。例えば、
図9(b)に示すチャック装置100Bのように、螺旋溝43aテーパ部22bとの間にアイドラ部材46が設けられた構成であってもよい。アイドラ部材46は、螺旋溝43aに挿入されると共に螺旋溝43aに沿って移動可能である。アイドラ部材46には、テーパ状の凹部46aが設けられている。凹部46aの外側溝壁46b及び内側溝壁46cの傾きは、テーパ部22bの傾きとほぼ等しくなっている。
図9(b)に示す構成では、溝カム43が第1基板11側に移動する場合、テーパ状の外側溝壁46b又は内側溝壁46cによってテーパ部22bが押されることになるため、テーパ部22bの摩耗が少なくなる。また、螺旋溝43aの外側溝壁43b及び内側溝壁43cの摩耗を防ぐことができる。これにより、チャック装置100の耐久性が高められる。
【0065】
また、上記実施形態では、円柱状のワークWの外周面Waを保持する場合を例に挙げて説明したが、これに限定するものではなく、円筒状のワークの内周を保持する場合においてもチャック装置100を用いることができる。この場合、チャック100の径方向D1について外周を把持する場合と逆方向にチャック爪20を移動させるようにすればよい。