特許第6384281号(P6384281)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6384281
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】内燃機関のオイルセパレータ
(51)【国際特許分類】
   F01M 13/04 20060101AFI20180827BHJP
【FI】
   F01M13/04 E
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-234338(P2014-234338)
(22)【出願日】2014年11月19日
(65)【公開番号】特開2016-98674(P2016-98674A)
(43)【公開日】2016年5月30日
【審査請求日】2017年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】特許業務法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 晴義
(72)【発明者】
【氏名】鈴村 慎吾
【審査官】 齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−219665(JP,A)
【文献】 特開2014−051958(JP,A)
【文献】 特開2010−203299(JP,A)
【文献】 実開昭63−026713(JP,U)
【文献】 特開2005−201189(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0276767(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0202439(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01M 11/00−13/06
F02F 7/00
F16M 1/026
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カムシャフトが収容される動弁室を有する内燃機関のシリンダヘッドカバーに、前記動弁室に隣接して設けられ、ブローバイガスに含まれるオイルミストを分離した後に、ブローバイガスを吸気管に導出するオイルセパレータであって、
前記動弁室からブローバイガスを導入するガス導入孔と、
前記カムシャフトの軸線方向に延びる底壁を有し、前記ガス導入孔から導入されるブローバイガスからオイルミストを分離する気液分離室と、
前記気液分離室でオイルミストが分離されたブローバイガスを前記気液分離室から前記吸気管に導出するガス導出孔と、
前記ガス導出孔の近傍に位置するようにして前記気液分離室の前記底壁に形成され、ブローバイガスから分離したオイルミストを前記動弁室に排出するオイルミスト排出孔とを備えたオイルセパレータにおいて、
前記底壁の前記動弁室側に、前記オイルミスト排出孔を取り囲む周壁を設け、前記周壁の内径を、前記オイルミスト排出孔の内径よりも大きくし、
オイルミスト誘導部を設け、前記オイルミスト誘導部は、前記周壁の下面と連続する下面を有し、前記周壁から前記周壁の放射方向外方に延びることを特徴とする内燃機関のオイルセパレータ。
【請求項2】
前記内燃機関が車両に搭載された状態において、前記オイルミスト誘導部の下面は、前記周壁から斜め下方に向かって傾斜することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関のオイルセパレータ。
【請求項3】
前記内燃機関が車両に搭載された状態において、前記周壁の下面は、鉛直軸に対して傾斜することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の内燃機関のオイルセパレータ。
【請求項4】
前記周壁の下面および前記オイルミスト誘導部の下面は、鉛直軸に対して同一直線上に傾斜することを特徴とする請求項ないし請求項のいずれか1項に記載の内燃機関のオイルセパレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のオイルセパレータに関し、特に、ブローバイガスからオイルミストを分離する内燃機関のオイルセパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に搭載される内燃機関においては、燃焼室からシリンダとピストンとの間の隙間を通ってクランクケース内に未燃ガスや排気ガスを含むブローバイガスが漏出する。このため、大気汚染防止やエンジンオイルの劣化防止等のために、クランクケース内を換気するオイルセパレータが設けられている。
【0003】
従来のこの種のオイルセパレータは、カムシャフトが収容される動弁室を有する内燃機関のシリンダヘッドカバーにおいて、動弁室に隣接して設けられたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このオイルセパレータは、吸入負圧によって動弁室からブローバイガスを導入するガス導入孔と、カムシャフトの軸線方向に延びる底壁を有し、ガス導入孔から導入されるブローバイガスからオイルミストを分離する気液分離室と、オイルミストが分離されたブローバイガスを、気液分離室から吸気管に導出するガス導出孔と、気液分離室の底壁に形成され、ブローバイガスから分離したオイルミストを動弁室に排出するオイル落とし穴とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−219665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような従来の内燃機関のオイルセパレータにあっては、気液分離室の底壁に、ブローバイガスから分離したオイルミストを動弁室に排出するオイル落とし穴が形成されており、気液分離室は、吸気管に連通するガス導出孔に連通しているため、負圧状態となっている。
【0007】
また、動弁室は、気液分離室に比べて容積が大きく、ガス導入孔を介して気液分離室に連通しているため、動弁室に作用する負圧に比べて気液分離室に作用する負圧が大きく、動弁室と気液分離室との圧力差が大きい。
【0008】
これにより、気液分離室でブローバイガスから分離された後に、オイル落とし穴から動弁室に流れるオイルミストが気液分離室に逆流するおそれがある。特に、オイル落とし穴がガス導出孔の近傍に設けられている場合には、ガス導出孔から気液分離室に作用する吸入負圧の影響を大きく受けてしまい、オイル落とし穴から動弁室に流れるオイルミストが気液分離室に逆流し易くなり、気液分離室からオイルミストを容易に排出できないおそれがある。
【0009】
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたものであり、気液分離室から動弁室に流れるオイルミストが気液分離室に逆流することを抑制でき、気液分離室からオイルミストを容易に排出できる内燃機関のオイルセパレータを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、カムシャフトが収容される動弁室を有する内燃機関のシリンダヘッドカバーに、前記動弁室に隣接して設けられ、ブローバイガスに含まれるオイルミストを分離した後に、ブローバイガスを吸気管に導出するオイルセパレータであって、前記動弁室からブローバイガスを導入するガス導入孔と、前記カムシャフトの軸線方向に延びる底壁を有し、前記ガス導入孔から導入されるブローバイガスからオイルミストを分離する気液分離室と、前記気液分離室でオイルミストが分離されたブローバイガスを前記気液分離室から前記吸気管に導出するガス導出孔と、前記ガス導出孔の近傍に位置するようにして前記気液分離室の前記底壁に形成され、ブローバイガスから分離したオイルミストを前記動弁室に排出するオイルミスト排出孔とを備えたオイルセパレータにおいて、前記底壁の前記動弁室側に、前記オイルミスト排出孔を取り囲む周壁を設け、前記周壁の内径を、前記オイルミスト排出孔の内径よりも大きくし、オイルミスト誘導部を設け、前記オイルミスト誘導部は、前記周壁の下面と連続する下面を有し、前記周壁から前記周壁の放射方向外方に延びるものから構成されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、気液分離室の底壁の動弁室側に、オイルミスト排出孔を取り囲む周壁が設けられ、周壁の内径が、オイルミスト排出孔の内径よりも大きく形成される。
これにより、気液分離室と動弁室との間に、周壁の内周面によって囲まれた空間を設けることができ、この空間によって気液分離室と動弁室との圧力差を小さくできる。このため、気液分離室から動弁室に流れるオイルミストが気液分離室に逆流することを抑制することができ、気液分離室からオイルミストを容易に排出できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の内燃機関のオイルセパレータの一実施形態を示す図であり、エンジンの外観図である。
図2図2は、本発明の内燃機関のオイルセパレータの一実施形態を示す図であり、エンジンの低負荷運転時のブローバイガスと新気との流れを示すエンジンの概略構成図である。
図3図3は、本発明の内燃機関のオイルセパレータの一実施形態を示す図であり、シリンダヘッドの縦断面図である。
図4図4は、本発明の内燃機関のオイルセパレータの一実施形態を示す図であり、オイルミスト誘導板の付近で切断したシリンダヘッドの斜視断面図である。
図5図5は、本発明の内燃機関のオイルセパレータの一実施形態を示す図であり、カム室側から見たシリンダヘッドカバーの底面図である。
図6図6は、本発明の内燃機関のオイルセパレータの一実施形態を示す図であり、図3のVI−VI方向矢視断面図である。
図7図7は、本発明の内燃機関のオイルセパレータの一実施形態を示す図であり、図3のVII−VII方向矢視断面図である。
図8図8は、本発明の内燃機関のオイルセパレータの一実施形態を示す図であり、シリンダヘッドカバーの要部底面図である。
図9図9は、本発明の内燃機関のオイルセパレータの一実施形態を示す図であり、オイルミスト誘導板の付近で切断したシリンダヘッドの斜視断面図である。
図10図10は、本発明の内燃機関のオイルセパレータの一実施形態を示す図であり、エンジンの高負荷運転時のブローバイガスと新気との流れを示すエンジンの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る内燃機関のオイルセパレータの実施形態について、図面を用いて説明する。
図1図10は、本発明に係る一実施形態の内燃機関のオイルセパレータを示す図である。
まず、構成を説明する。なお、図1図10において、左右前後方向は、運転席から見た車両21の左右前後方向を表す。
【0014】
図1において、内燃機関としてのエンジン1は、車両21に搭載されている。図1図2において、エンジン1は、シリンダブロック2と、シリンダブロック2の上部に設けられたシリンダヘッド3と、シリンダヘッド3の上部に設けられたシリンダヘッドカバー4と、シリンダブロック2の下部に設けられたオイルパン5とを備えている。
【0015】
図2において、シリンダブロック2にはシリンダ27内に上下動自在に収容されたピストン28と、ピストン28の上下運動を回転運動に変換するクランク軸6等が収容されており、シリンダブロック2の下部にはクランク軸6を回転自在に支持するクランクケース2Aが一体的に設けられている。また、クランクケース2Aとオイルパン5との間にはクランク室24が形成されている。
【0016】
図2図3図4において、シリンダヘッド3は、シリンダ27の配列方向に沿って延び、吸気カム7a(図6参照)を備えた吸気カムシャフト7と、吸気カムシャフト7と平行に配置されてシリンダ27の配列方向に沿って延び、吸気カムシャフト7に対して車両21の前後方向前方に設けられた排気カム8a(図6参照)を備えた排気カムシャフト8とを備えている。
【0017】
ここで、本実施形態の吸気カムシャフト7および排気カムシャフト8は、本発明のカムシャフトを構成する。図2に示すように、エンジン1は、車両21に搭載された状態において、シリンダ27の軸線が鉛直軸に対して車両21の前方に傾いており、吸気カムシャフト7および排気カムシャフト8が車幅方向に延びている。
【0018】
本実施形態のエンジン1は、吸気カムシャフト7および排気カムシャフト8が収容されるシリンダヘッド3とシリンダヘッドカバー4との間の空間が動弁室13を構成している。
【0019】
図2において、シリンダヘッド3には吸気ポート29および排気ポート30が形成されており、吸気ポート29および排気ポート30は、吸気カム7aおよび排気カム8aの回転に伴って駆動される吸気バルブ31および排気バルブ32によって開閉される。
【0020】
吸気ポート29および排気ポート30を開閉すると、シリンダ27の上部に形成された燃焼室14と吸気ポート29および排気ポート30とが連通および遮断される。シリンダヘッド3には吸気マニホールド33が取付けられており、吸気マニホールド33には吸気管34を介してエアクリーナ35が接続されている。
【0021】
エアクリーナ35は、外部から取り入れられる吸入空気Aiを浄化するようになっており、エアクリーナ35によって浄化された吸入空気Aiは、吸気管34から吸気マニホールド33に吸入され、吸気マニホールド33から各吸気ポート29を介して各シリンダ27に分配されて吸入される。
【0022】
吸気管34にはスロットルバルブ34Aが設けられており、このスロットルバルブ34Aは、シリンダ27に吸入される空気量を調整する。
シリンダヘッドカバー4にはオイルセパレータ41が設けられており、オイルセパレータ41は、動弁室13に設置される排気カムシャフト8の上方において動弁室13に隣接して設けられる。図3図4において、オイルセパレータ41は、シリンダヘッドカバー4から上方に突出し、排気カムシャフト8の軸線方向に延びるハウジング42と、ハウジング42の下方に設けられて排気カムシャフト8の軸線方向に延びる底壁43とを備えている。
【0023】
図3において、底壁43は、鉛直軸に対して前後方向に傾斜している。なお、図1図2に示すように、本実施形態のエンジン1は、車両21に搭載された状態において、シリンダ27の軸線が鉛直軸に対して車両21の前方に傾いているが、エンジン1の実装状態において、底壁43は、鉛直軸に対して前後方向に傾斜している。
【0024】
ハウジング42および底壁43によって囲まれる空間は、気液分離室44を構成しており、底壁43は、気液分離室44と動弁室13とを仕切っている。底壁43の車幅方向右方側にはガス導入孔43Aが形成されており、気液分離室44は、ガス導入孔43Aを介して動弁室13に連通している(図5参照)。これにより、気液分離室44にはガス導入孔43Aを介して動弁室13からブローバイガスが導入される。
【0025】
図7において、気液分離室44の内部には複数の衝突壁45が設けられている。衝突壁45は、排気カムシャフト8の軸線方向に沿って車両21の前後方向において交互に設けられており、気液分離室44に導入されるブローバイガスは、衝突壁45に衝突することでブローバイガスからオイルミストが分離される。
【0026】
ハウジング42の車幅方向左端にはガス導出孔43Bが形成されており、ガス導出孔43Bは、ハウジング42の車幅方向左端外方に延びるブリーザパイプ46の内部のブリーザ通路(図示省略)に連通している。
【0027】
ブリーザパイプ46は、ガス導出管47を介して吸気マニホールド33に連通しており、気液分離室44に流入したブローバイガスは、エンジン1の吸入負圧によってガス導出管47から吸気マニホールド33を通して吸気管34に吸引される。
【0028】
吸気マニホールド33に吸引されたブローバイガスは、エンジン1の燃焼室14に導入されて混合気と共に燃焼室14で燃焼される。
【0029】
気液分離室44とガス導出管47との間にはPCVバルブ48が設けられており、PCVバルブ48は、気液分離室44からガス導出管47に流れるブローバイガス流量を調整する。
【0030】
シリンダヘッドカバー4およびスロットルバルブ34Aに対して上流側の吸気管34は、新気導入管49によって接続されており、新気導入管49は、吸入空気Aiの一部、すなわち、新気Anを動弁室13に導入する。
【0031】
シリンダブロック2およびシリンダヘッド3には新気導入通路50が形成されており、新気導入通路50は、動弁室13とクランク室24とを連通している。吸入負圧によって新気導入管49から動弁室13に導入された新気Anは、クランク室24からクランクケース2Aと動弁室13とを連通する連通路51を通して動弁室13に導入される。
【0032】
動弁室13に導入される新気Anは、ガス導入孔43Aを通して気液分離室44に吸入された後、ガス導出管47から吸気マニホールド33を介してシリンダ27に導入される。これにより、動弁室13およびクランク室24を含んだエンジン1の内部が新気Anによって換気される。
【0033】
図5図7において、気液分離室44の底壁43にはオイル落とし穴52A〜52Cが形成されており、オイル落とし穴52A〜52Cは、気液分離室44と動弁室13とを連通している。オイル落とし穴52A〜52Cは、底壁43の傾斜方向下方に位置している(図3図4にオイル落とし穴52Cを示す)。
これにより、気液分離室44においてブローバイガスから分離されたオイルミストは、底壁43に沿って傾斜方向下方に集められた後、オイル落とし穴52A〜52Cを通して動弁室13に排出される。ここで、本実施形態のオイル落とし穴52Cは、本発明のオイルミスト排出孔を構成する。
【0034】
車幅方向の左端に設けられたオイル落とし穴52Cは、ガス導出孔43Bの近傍に位置している(図5図7参照)。なお、ガス導出孔43Bの近傍とは、エンジン1のクランク軸6の軸線方向(車幅方向)において気液分離室44の車幅方向中央よりもガス導出孔43B側に位置することを示す。
【0035】
図3図5図6において、底壁43の動弁室13側には周壁53が設けられており、周壁53は、オイル落とし穴52Cを取り囲んでいる。周壁53の内径は、オイル落とし穴52Cの内径よりも大きく形成されており、本実施形態のシリンダヘッドカバー4は、底壁43を挟んで気液分離室44の容積に対して周壁53の内部の容積が小さく、かつ、気液分離室44の容積に対して動弁室13の容積が大きく形成される。
【0036】
周壁53は、底壁43から下方に延びている。図8図9において、周壁53の放射方向外方で、かつ、底壁43の下方には周壁53に連続する側面および底壁43に連続する上面を有するオイルミスト誘導板54が設けられており、オイルミスト誘導板54の下面54aは、周壁53の下面53aと連続している。
【0037】
ここで、本実施形態のオイルミスト誘導板54は、本発明のオイルミスト誘導部を構成する。このように本実施形態のエンジン1のオイルセパレータ41は、オイルミスト誘導板54を有し、オイルミスト誘導板54は、周壁53の下面53aと連続する下面54aを有し、周壁53の放射方向外方に延びている。
【0038】
図1に仮想線で示すように、エンジン1が車両21に搭載された状態において、オイルミスト誘導板54の下面54aは、周壁53から車両21の斜め前方下方に向かって傾斜している。
【0039】
また、エンジン1が車両21に搭載された状態において、周壁53の下面53aは、鉛直軸に対して傾斜しており、周壁53の下面53aおよびオイルミスト誘導板54の下面54aは、鉛直軸に対して同一直線上に傾斜している。
【0040】
図3図4図9において、排気カムシャフト8の端部にはセンシングロータ55が設けられている。センシングロータ55は、図示しない回転角度センサに検出されるようになっており、回転角度センサは、排気カムシャフト8の回転角度を検出する。回転角度センサは、図示しない制御装置に回転角度情報を送信するようになっており、制御装置は、この回転角度情報に基づいて排気カムシャフト8の回転数を算出する。
【0041】
オイルミスト誘導板54は、底壁43からセンシングロータ55の上端を遮る位置まで延びており、オイルミスト誘導板54の下面54aは、センシングロータ55の上端を通り越して排気カムシャフト8に向かって延びている。
【0042】
また、オイルミスト誘導板54は、底壁43の下面において底壁43の傾斜方向下端から傾斜方向上端に向かって延びており、排気カムシャフト8の断面積よりも大きな表面積を有する。
【0043】
次に、作用を説明する。
燃焼室14からシリンダ27とピストン28との間の隙間を通ってクランク室24内に未燃ガスや排気ガスを含むブローバイガスが漏出すると、ブローバイガス中に含まれるNOx(窒素酸化物)と水分が反応して硝酸が生成され、オイルがこの硝酸によって凝集し、スラッジが発生する。
【0044】
このスラッジは、タール状の物質であり、スラッジがエンジン1を潤滑するオイルに混入すると、オイルの劣化を引き起してしまい、油圧系の作動不良やクランク軸6、吸気カムシャフト7および排気カムシャフト8等の摺動部材の潤滑不良を引き起こしてしまい、エンジン1の摺動抵抗が増大してエンジン1の燃費が悪化してしまう。ここで、摺動とは、回転運動や直線運動を行う移動部材を、移動部材を支持する支持部材に対して滑らせながら動かすことを意味する。
【0045】
図2において、エンジン1の低負荷運転時にはスロットルバルブ34Aの開度が小さいので、エンジン1の吸入負圧が大きい。エンジン1の低負荷運転時にはクランク室24内に漏出したブローバイガスが、吸入負圧によって連通路51、動弁室13およびガス導入孔43Aを通して気液分離室44に導入される。ここで、ブローバイガスの流れを矢印Bで示す。
【0046】
気液分離室44に導入されるブローバイガスBは、衝突壁45に衝突しながらブローバイガスBからオイルミストが分離された後にガス導出孔43Bに向かって流れる。ガス導出孔43Bに流れるブローバイガスは、ブリーザパイプ46からガス導出管47に導出された後、ガス導出管47から吸気マニホールド33を通して吸気管34に吸引される。 吸気マニホールド33に吸引されたブローバイガスは、エンジン1の燃焼室14に導入されて混合気と共に燃焼室14で燃焼される。
また、吸入負圧の大きいエンジン1の低負荷運転時には新気導入管49から動弁室13に新気Anが導入され、新気Anによってクランク室24の換気が行われる。
【0047】
また、図10に示すように、エンジン1の高負荷運転時にはスロットルバルブ34Aの開度が大きいため、エンジン1の吸入負圧が小さく、クランク室24のブローバイガスの一部が新気導入通路50から新気導入管49を通して吸気マニホールド33に吸引される。ここで、ブローバイガスの流れを矢印Bで示す。
【0048】
新気導入管49を通して吸気マニホールド33に吸引されるブローバイガスは、ブリーザパイプ46からガス導出管47を介して吸気マニホールド33に吸引されたブローバイガスと共にエンジン1の燃焼室14に導入されて混合気と共に燃焼室14で燃焼される。
【0049】
一方、気液分離室44でブローバイガスから分離されたオイルミストは、底壁43に沿って傾斜方向下方に集められた後、オイル落とし穴52A〜52Cを通して動弁室13に排出される。
【0050】
オイル落とし穴52A〜52Cのうち、オイル落とし穴52Cは、ブリーザパイプ46に最も近く、オイル落とし穴52A、52Bよりも大きな吸入負圧を受ける。また、動弁室13は、気液分離室44に比べて容積が大きく、ガス導入孔43Aを介して気液分離室44に連通している。これにより、動弁室13に作用する負圧に比べて気液分離室44に作用する負圧が大きく、動弁室13と気液分離室44との圧力差が大きい。
【0051】
このため、特に、エンジン1の低負荷運転時において、気液分離室44でブローバイガスから分離されたオイルミストがオイル落とし穴52Cから気液分離室44に逆流するおそれがある。
【0052】
これに対して、本実施形態のオイルセパレータ41によれば、気液分離室44の底壁43の動弁室13側に、オイル落とし穴52Cを取り囲む周壁53を設け、周壁53の内径を、オイル落とし穴52Cの内径よりも大きく形成した。
【0053】
これにより、気液分離室44と動弁室13との間に、周壁53の内周面によって囲まれた空間を設けることができ、この空間によって気液分離室44と動弁室13との圧力差を小さくできる。
【0054】
このため、気液分離室44から動弁室13に流れるオイルミストが気液分離室44に逆流することを抑制することができ、気液分離室44からオイルミストを容易に排出できる。これにより、スラッジがエンジンオイルに混入することを抑制して、オイルが劣化することを抑制できる。この結果、油圧系の作動不良やクランク軸6、吸気カムシャフト7および排気カムシャフト8等の摺動部材の潤滑不良が発生することを防止して、エンジン1の摺動抵抗が増大することを防止でき、エンジン1の燃費が悪化することを防止できる。
【0055】
なお、本実施形態の周壁53は、円筒状に形成されているが、周壁の形状は、円柱状、円錐状あるいは角形状に形成されてもよい。また、周壁は、底壁43から下方に向かうに従って内径が段階的に大きくなるような形状に形成されてもよい。
【0056】
ここで、オイルセパレータ41は、気液分離室44と動弁室13との圧力差を小さくするための周壁53を設けた場合であっても、周壁53に流出するオイルミストが気液分離室44の吸入負圧によって引っ張られて時間の経過と共に周壁53の内周面に堆積するおそれがある。
【0057】
そして、周壁53の内周面に堆積したオイルミストがオイル落とし穴52Cを塞ぐと、気液分離室44と動弁室13との圧力差が大きくなり、周壁53の内周面に堆積したオイルミストがオイル落とし穴52Cから気液分離室44に逆流するおそれがある。
【0058】
これに対して、本実施形態のオイルセパレータ41は、オイルミスト誘導板54を有し、オイルミスト誘導板54は、周壁53の下面53aと連続する下面54aを有し、周壁53の放射方向外方に延びるように形成されている。
【0059】
これにより、周壁53の内周面に付着するオイルミストを、周壁53の内周面からオイルミスト誘導板54に誘導させることができる。このため、周壁53の内周面にオイルミストが堆積することを防止でき、周壁53の内周面からオイルミストが気液分離室44に逆流することを防止できる。
【0060】
特に、本実施形態のオイルセパレータ41によれば、エンジン1が車両21に搭載された状態において、オイルミスト誘導板54の下面54aを、周壁53から斜め下方に向かって傾斜させている。
【0061】
これにより、周壁53の内周面に付着するオイルミストを、周壁53の内周面からオイルミスト誘導板54に誘導させた後に、オイルミスト誘導板54の下面54aに沿って排気カムシャフト8と直交する気液分離室44の前方に集め、自重によって下方に滴下させることができる。
【0062】
これに加えて、本実施形態のオイルセパレータ41によれば、エンジン1が車両21に搭載された状態において、周壁53の下面53aを、鉛直軸に対して傾斜させるとともに、周壁53の下面53aおよびオイルミスト誘導板54の下面54aを、鉛直軸に対して同一直線上に傾斜させた。
【0063】
これにより、周壁53の内周面からオイルミスト誘導板54に誘導させた後に、オイルミスト誘導板54の下面54aに沿って排気カムシャフト8と直交する気液分離室44の前方により効果的に集めて、自重によって下方に滴下させることができる。
【0064】
また、本実施形態のオイルセパレータ41によれば、オイルミスト誘導板54が、底壁43からセンシングロータ55の上端を遮る位置まで延びており、オイルミスト誘導板54の下面54aが、センシングロータ55の上端を通り越して排気カムシャフト8まで延ばした。
【0065】
これに加えて、オイルミスト誘導板54を、底壁43の下面において底壁43の傾斜方向下端から傾斜方向上端に向かって延ばし、排気カムシャフト8の断面積よりも大きな表面積に形成した。
【0066】
これにより、オイル落とし穴52Cから動弁室13に排出されて、オイルミスト誘導板54の下面54aを伝ってオイルミスト誘導板54の傾斜方向下方に誘導されたオイルミストを、オイル落とし穴52Cからより遠くに遠ざけることができる。このため、オイルミストが動弁室13から気液分離室44に逆流することをより効果的に防止できる。
【0067】
なお、本実施形態のオイルセパレータ41によれば、周壁53の内周面に付着するオイルミストをオイルミスト誘導板54によって排出しているが、これに限定されるものではない。
【0068】
例えば、オイルミスト誘導部を、周壁の下面と連続する下面を有し、周壁の放射方向外方に延びる線上の部材等から構成してもよい。但し、オイルミスト誘導部は、線上の部材に限定されるものでもない。
【0069】
本発明の実施形態を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0070】
1…エンジン(内燃機関)、4…シリンダヘッドカバー、7…吸気カムシャフト(カムシャフト)、8…排気カムシャフト(カムシャフト)、13…動弁室、21…車両、34…吸気管、41…オイルセパレータ、43…底壁、43A…ガス導入孔、43B…ガス導出孔、44… 気液分離室、52C…オイル落とし穴(オイルミスト排出孔)、53…周壁、53a…下面、54…オイルミスト誘導板(オイルミスト誘導部)、54a…下面
図1
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