(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、車両用ドアロック装置の一実施形態について図面に従って説明する。
<車両用ドアロック装置の構成>
図1及び
図2に示すように、スイング式の車両ドア10に設けられる車両用のドアロック装置1は、ラッチ機構2とクローザ装置3とを備えている。
【0020】
ラッチ機構2は、回転変位するラッチ21(
図3参照)を備え、
図2に示すように、車両ドア10の開閉動作に伴い相対移動するストライカ11とラッチ21との協働により車両ドア10の開閉状態を切り替える。
【0021】
クローザ装置3は、モータ31(
図5参照)を備え、当該モータ31の駆動力をラッチ機構2に伝達することにより、当該ラッチ機構2をストライカ11の相対移動が許容されるハーフラッチ状態からストライカ11の相対移動が許容されないフルラッチ状態へ切り替える。
【0022】
<ラッチ機構>
図3及び
図4(a)〜(c)に示すように、ラッチ機構2は、ラッチ21と、ポール22と、これらを収容するケース23と、を備えている。
【0023】
ケース23は、外側面をスリット状に切り欠くように形成された入出部24を備えている。入出部24は、相対移動に伴うストライカ11のケース23内部への入出を許容する。また、ケース23には、入出部24を溝幅方向(
図3中における上下方向)で挟むように、2本の支持軸25,26が立設されている。当該2本の支持軸25,26は、ケース23に対して回転変位可能とされている。なお、支持軸25にはラッチ21が、支持軸26にはポール22が、それぞれ固定されている。
【0024】
なお、ケース23には、ワイヤ27を介してクローザ装置3に連結されたレバー28が回転可能に軸支されている。レバー28は、クローザ装置3が駆動することによりラッチ21と係合しない初期位置(
図3に示す位置)から時計方向へ回転変位してラッチ21と係合し、これを押圧可能とされている。後に詳述するが、ラッチ21は、レバー28の時計方向への回転変位に伴う押圧により、反時計方向へ回転変位する。
【0025】
平板状のラッチ21は、その外周面に開口する係合溝21aを備えている。ラッチ21は、図示しないラッチ付勢ばねにより図中時計方向に回転変位するように常時付勢されている。また、ラッチ21は、ケース23に設けられる図示しないストッパ部と当接することにより、入出部24と係合溝21aの開口端とが一致する位置(以下、アンラッチ位置)でラッチ付勢ばねによる時計方向への回転変位が規制されている。したがって、ラッチ21がアンラッチ位置にある状態で車両ドア10が閉じ操作されると、係合溝21aは、入出部24から進入したストライカ11と係合する。そして、ラッチ付勢ばね(図示略)の付勢力に抗してストライカ11が更に進入することにより当該ストライカ11に係合溝21aが押圧されて、ラッチ21が反時計方向に回転変位する。ラッチ21は、ラッチ付勢ばね(図示略)の付勢力に抗して反時計方向に回転変位することにより、
図3及び
図4(a)に示すアンラッチ位置から
図4(b)に示すハーフラッチ位置を経て
図4(c)に示すフルラッチ位置まで回転変位する。ラッチ機構2がハーフラッチ状態からフルラッチ状態へ切り替わることにより、ストライカ11が相対的にラッチ機構2の内部へ引き込まれる。これにより、車両ドア10が半ドア状態から全閉状態へ移行する。
【0026】
なお、
図3及び
図4(a)〜(c)に示すように、ラッチ21の外周面には、当該ラッチ21がハーフラッチ位置においてポール22と半係合する第1の係合部21bが、ラッチ21がフルラッチ位置においてポール22と係合する第2の係合部21cが、それぞれ設けられている。ラッチ21とポール22との半係合によりラッチ付勢ばね(図示略)の付勢力によるラッチ21の時計方向への回転変位が規制される。また、ラッチ21とポール22との係合によりラッチ21の時計方向への回転変位が規制される。
【0027】
また、ラッチ21の外周面には、当該ラッチ21がハーフラッチ位置からフルラッチ位置にかけて位置する状態にあるとき、時計方向に回転するレバー28と係合可能な第3の係合部21dが、設けられている。ハーフラッチ位置からフルラッチ位置にかけて位置するラッチ21は、第3の係合部21dを介して時計方向に回転するレバー28に押圧されることによりフルラッチ位置まで反時計方向に回転変位する。
【0028】
ポール22は、図示しないポール付勢ばねにより反時計方向に回転変位するように常時付勢されている。ポール22は、ケース23に設けられるストッパ部と当接することにより、ラッチ21の第1の係合部21b及び第2の係合部21cと係合することが可能な位置(以下、規制位置)に維持されている。
【0029】
なお、ポール22は、図示しない周知の機構を介して車両ドア10に設けられるインサイドドアハンドル12及びアウトサイドドアハンドル13(
図2参照)にそれぞれ連結されている。このため、インサイドドアハンドル12又はアウトサイドドアハンドル13が操作されると、ポール22は、ポール付勢ばね(図示略)の付勢力に抗して時計方向に回転変位することにより、規制位置からラッチ21の第1の係合部21b及び第2の係合部21cと係合不能とされる開放位置まで変位する。
【0030】
なお、
図3に示すように、ケース23は、各種配線をインサートさせたインサート成形により製造される。ケース23には、ラッチ21の位置を検出するラッチスイッチ、ポール22の位置を検出するポールスイッチ、レバー28の位置を検出するレバースイッチ等の各種スイッチが設けられる。これら各スイッチの電気的な接続部は、インサートされた各種配線を通じて1箇所のコネクタ部29に集約されている。コネクタ部29は、車両に設けられ、ドアロック装置1の駆動を制御する制御部等と専用のハーネスを通じて接続されている。
【0031】
<クローザ装置>
図5に示すように、クローザ装置3は、モータ31、ボデー32、ハウジング33、スピンドル34、スピンドルガイド35、キャンセルレバー36、キャンセルポール37、キャンセルカラー38、及びキャンセルアシストスプリング39を備えている。ボデー32及びハウジング33を除くこれら各種構成は、ボデー32とハウジング33とが互いに合わせられることにより形成される内部空間に収容されている。なお、ボデー32及びハウジング33がケースに相当する。
【0032】
図6(a)〜(d)に示すように、モータ31のモータ軸31aに対してねじれの位置に設けられるスピンドル34は円柱状をなし、ウォーム&ホイール40を構成するホイールに螺挿されている。なお、モータ31は、ドアロック装置1の駆動を制御する制御部等と専用のハーネスを通じて接続されている。
【0033】
図5及び
図8に示すように、スピンドル34において、ホイールに螺挿される部分よりもラッチ機構2側の外周部には、スピンドル34の軸方向に対して平行とされる面を有する2つの直方体状の突起34aが突設されている。なお、ウォーム&ホイール40のホイールがねじ軸に、スピンドル34が軸状部材に、それぞれ相当する。
【0034】
スピンドル34は、
図6(a)(d)に示す第1の軸位置と、
図6(b)(c)に示す第1の軸位置からラッチ機構2と反対側(後述するキャンセルアシストスプリング39側)の第2の軸位置との間を変位可能とされている。スピンドル34の第1の軸位置側から第2の軸位置側への変位は、第2の軸位置において突起34aが後述する縮径部53に当接することにより規制される。スピンドル34の第2の軸位置側から第1の軸位置側への変位は、第1の軸位置において突起34aがスピンドルガイド35の後述するガイド溝35aの溝端部と当接することにより規制される。
【0035】
なお、
図5及び
図7に示すように、スピンドル34においてラッチ機構2とは反対側の先端部、すなわち、突起34aよりもホイールに螺挿される部分側の先端部34bは、先端に向かうにつれて徐々に外径が小さくなる半球とされている。一方、スピンドル34において、ラッチ機構2側の先端部、すなわち、先端部34bとは反対側の先端部は、スイベル41を介してワイヤ27(
図3参照)に接続されている。スイベル41及びスイベル41とワイヤ27との接続構造については、後に詳述する。なお、ワイヤ27は伝達部材に相当する。
【0036】
図5〜
図8に示すように、スピンドルガイド35は、スピンドル34の外径よりも若干大きい内径を有する円筒状とされている。
図8に示すように、スピンドルガイド35の内周面には、当該スピンドルガイド35の軸方向に延びる2つのガイド溝35aが凹設されている。ガイド溝35aの溝幅は、スピンドル34の突起34aにおいてスピンドル34の軸方向に対して平行とされる面同士の距離よりも若干大きく設定されている。このため、スピンドルガイド35及びスピンドル34の周方向において、ガイド溝35aと突起34aとの位置を合わせることにより、スピンドルガイド35の内部にスピンドル34が挿通される。したがって、スピンドル34は、スピンドルガイド35の内部において軸方向への変位が許容されるとともに、スピンドルガイド35と周方向において一体回転する。
【0037】
また、
図5〜
図8に示すように、スピンドルガイド35は、軸方向中央部における外周面に略正八角形とされた係合部35bが設けられている。
図8に示すように、係合部35bを構成する8枚の各面は、その中央部が端部(隣接する面との境界部分)よりもスピンドルガイド35の軸心に近接するように湾曲している。
【0038】
なお、スピンドルガイド35は、筒状部材に相当し、軸方向周りの回転が許容されるとともに軸方向への変位が規制された状態でボデー32及びハウジング33により形成される内部空間に収容されている。また、
図7に示すように、スピンドルガイド35のラッチ機構2側の端部の外径を反対側の端部の外径よりも小さく設定している。なお、ボデー32とハウジング33とが互いに合わせられることにより形成されるスピンドルガイド35を収容する部分の内部空間は、ラッチ機構2側の空間を反対側の空間よりも狭く設定されている。
【0039】
図5〜
図8に示すように、平板状のキャンセルポール37は、スピンドルガイド35の係合部35bと係合可能な湾曲面37aと、円柱の支持軸37bと、を備えている。キャンセルポール37は、円柱の支持軸37bがボデー32に設けられる図示しないガイド溝に案内されることにより、湾曲面37aがスピンドルガイド35の係合部35bと当接(係合)して当該スピンドルガイド35の回転を規制する回転規制位置と湾曲面37aが係合部35bから離間してスピンドルガイド35の回転を許容する回転許容位置との間を変位する。
【0040】
なお、キャンセルポール37が回転規制位置に位置するときの支持軸37bと後述するキャンセルレバー36の揺動中心との間の距離を第1の距離とし、キャンセルポール37が回転許容位置に位置するときの支持軸37bとキャンセルレバー36の揺動中心との間の距離を第2の距離とする。このキャンセルポール37は、規制部材に相当する。また、湾曲面37aが係合面に相当する。
【0041】
図5〜
図8に示すように、扇形状のキャンセルレバー36は、扇の要部分で揺動可能にボデー32に軸支されている。キャンセルレバー36は、ボデー32に設けられる図示しないストッパと当接することにより、
図6(a)(b)に示す第1の位置と当該第1の位置よりもモータ31側に揺動した
図6(c)(d)に示す第2の位置との間で変位する。
【0042】
キャンセルレバー36は、扇の弧に沿うように設けられるガイド溝36aを備えている。当該ガイド溝36aの溝幅は、キャンセルポール37の支持軸37bの外径よりも若干大きく設定されている。ガイド溝36aには、キャンセルポール37の支持軸37bが挿通されている。また、ガイド溝36aは、モータ31側の端部と揺動中心との間の距離が第1の距離に、モータ31とは反対側の端部と揺動中心との間の距離が第2の距離に、それぞれ設定されている。したがって、キャンセルレバー36が第1の揺動位置に位置するときキャンセルポール37は回転規制位置に、キャンセルレバー36が第2の揺動位置に位置するときキャンセルポール37は回転許容位置に、それぞれ位置する。また、キャンセルレバー36が揺動することにより、キャンセルポール37が回転規制位置と回転許容位置との間を変位する。
【0043】
なお、キャンセルレバー36は、
図5に示すリターンスプリング42により、
図6(a)〜(d)における時計方向へ向かって常時付勢されている。これにより、キャンセルレバー36は、通常、
図6(a)(b)に示すように第1の揺動位置に位置する。また、キャンセルレバー36は、図示しない周知の機構を介して車両ドア10に設けられるインサイドドアハンドル12及びアウトサイドドアハンドル13(
図2参照)にそれぞれ連結されている。これにより、インサイドドアハンドル12又はアウトサイドドアハンドル13が操作されると、
図6(a)〜(d)における反時計方向へ向かって揺動し、第1の揺動位置から第2の揺動位置まで変位する。
【0044】
図5〜
図7に示すように、キャンセルカラー38、及びキャンセルアシストスプリング39は、スピンドル34の先端部34bとボデー32及びハウジング33により構成されるスピンドル34の軸方向における内壁との間に介在されている。
【0045】
キャンセルカラー38は、スピンドル34側から円柱部38aと円筒部38bとを備えている。これら円柱部38a及び円筒部38bは、同軸状に設けられている。
円柱部38aのスピンドル34に望む端面は、スピンドル34の軸方向と直交する平面38cとされている。一方、円柱部38aの平面38cとは反対側の端部は円柱部38a本体よりも大きい直径を有するフランジ38dとされている。フランジ38dの外径は、コイルスプリングであるキャンセルアシストスプリング39の外径よりも若干大きく設定されている。
【0046】
円筒部38bは、フランジ38dに連続する。当該円筒部38bの外径は、キャンセルアシストスプリング39の内径よりも若干小さく設定されている。
キャンセルアシストスプリング39は、そのスピンドル34側の端部が円筒部38bの外周を取り巻くとともに弾性圧縮された状態でキャンセルカラー38とボデー32及びハウジング33により構成されるスピンドル34の軸方向における内壁との間に介在されている。キャンセルアシストスプリング39は、キャンセルカラー38を介してスピンドル34をラッチ機構2側へ常時付勢する。なお、キャンセルカラー38及びキャンセルアシストスプリング39が付勢部材に相当する。
【0047】
図7に示すように、スイベル41は、円筒部41aと、円筒部41aの一方の端部に設けられる第1の接続部41b及び他方の端部に設けられる第2の接続部41cと、を備えている。第1及び第2の接続部41b,41cは、それぞれ円筒部41aに対して自由回転可能とされている。したがって、第1及び第2の接続部41b,41cは、互いに対して自由回転可能とされている。なお、第1及び第2の接続部41b,41cは、それぞれ他の構成に接続されるための環状部分を有している。
【0048】
第1の接続部41bは、スピンドル34のラッチ機構2側の端部と接続されている。
第2の接続部41cは、第1接続器43を介してワイヤ27(
図3参照)に接続されている。なお、スイベル41が回転吸収部材に相当する。
【0049】
球状の第1接続器43は、ワイヤ27において、レバー28に接続される端部とは反対側の端部に固定されている。第1接続器43のスピンドル34に望む部位には、当該スピンドル34側に開口する切り欠き溝43aが形成されている。当該切り欠き溝43aには、スイベル41の第2の接続部41cを構成する環状部分が挿入可能とされている。また、第1接続器43には、切り欠き溝43aに対し直交する円筒部43bが形成されている。円筒部43bと第2の接続部41cを構成する環状部分とが円筒部43bの軸方向で一致した状態で、ピン51が挿入され、そのピン51の両端部がかしめられることにより、第1接続器43と第2の接続部41cとが接続される。
【0050】
図5に示すように、ボデー32は、スピンドル34及びスピンドルガイド35等を収容する半円筒状の収容部のさらにラッチ機構2側に延びる半円筒部32aを有する。ハウジング33には、当該半円筒部32aに対応する部位は設けられない。このため、
図7に示すように、当該半円筒部32aは、ボデー32及びハウジング33が互いに取り付けられることにより形成される円筒状の内部空間の軸方向のラッチ機構2側に連続する。なお、半円筒部32aは延出部に相当する。
【0051】
半円筒部32aの先端部の内周側には、半環状の係合突部32cが設けられている。係合突部32cは、支持部に相当する。当該係合突部32cは、ワイヤ27が挿通される円筒状の第2接続器44の外周面に凹設される環状の係合溝44aと係合可能とされている。
【0052】
なお、第2接続器44において、係合溝44aのラッチ機構2側には、環状の第1の防水溝45が凹設されている。
また、ボデー32及びハウジング33が互いに取り付けられることにより連続するボデー32における半円筒部32aの根元部とハウジング33におけるラッチ機構2側の先端部とにより形成される円環状の部位を環状部46とする。環状部46の外径は、第2接続器44の外径よりも大きく設定されている。環状部46には、環状の第2の防水溝47が凹設されている。
【0053】
なお、ワイヤ27は、円筒状の防水キャップ48に挿通されている。当該防水キャップ48は、樹脂材料(例えば、透明な樹脂材料)により成形されている。防水キャップ48のラッチ機構2側の内径は第2接続器44の外径と等しく設定されている。また、防水キャップ48のラッチ機構2とは反対側の内径は、ボデー32及びハウジング33が互いに取り付けられることにより形成される環状部46の外径と等しく設定されている。
【0054】
防水キャップ48は、半円筒部32aの係合突部32cと第2接続器44の係合溝44aとが係合している状態で、ラッチ機構2側からスピンドル34側に変位させることにより、ボデー32及びハウジング33が互いに取り付けられることにより形成される環状部46及び第2接続器44に取り付けられる。ここで、第1の防水溝45及び第2の防水溝47にそれぞれ溝の深さよりも大きい直径を有するOリング49,50が配設される。すなわち、Oリング49は第2接続器44の周囲を、Oリング50は環状部46の周囲を、それぞれ囲繞する。これにより、防水キャップ48を第2接続器44の外周及び環状部46に取り付けることにより、Oリング49,50がつぶれて防水キャップ48の内部への液体の進入を抑制する。ひいては、ボデー32及びハウジング33の内部への液体をはじめとする異物の進入が抑制される。
【0055】
なお、
図7に示すように、ボデー32及びハウジング33が互いに取り付けられることにより形成される円筒状の内部空間は、縮径部53によってスピンドルガイド35を収容する空間とウォーム&ホイール40を収容する空間とに分けられている。縮径部53の内径は、スピンドル34の2つの突起34a間の距離よりも小さく設定されている。したがって、スピンドル34のラッチ機構2とは反対側への変位は、突起34aが縮径部53に当接することにより規制される。
【0056】
なお、ウォーム&ホイール40を構成するホイールと縮径部53との間には、ベアリング55が介在されている。ホイールは、ベアリング55を介してボデー32及びハウジング33に回転可能に支持されている。
【0057】
<作用>
次に、ドアロック装置1の作用について説明する。なお、説明の前提として、
図6(a)に示すように、クローザ装置3は、スピンドル34が第1の軸位置に、キャンセルレバー36が第1の揺動位置に、キャンセルポール37が回転規制位置に、それぞれ位置する状態にあるものとする。
【0058】
まず、ドアロック装置1が通常動作する場合、すなわち、ドアロック装置1の作動中にインサイドドアハンドル12及びアウトサイドドアハンドル13(
図2参照)が操作されない場合について説明する。
【0059】
ドアロック装置1を制御する制御部は、
図6(a)に示す状態で、ラッチ機構2がハーフラッチ状態(
図4(b)参照)になったことを検出すると、モータ31を駆動させる。モータ31が駆動力は、ウォーム&ホイール40を介してスピンドル34に伝達される。このとき、スピンドルガイド35の回転が規制されているので、
図6(b)に示すように、スピンドル34はモータ31から伝達される駆動力によりキャンセルアシストスプリング39の付勢力に抗して第1の軸位置から第2の軸位置へと変位する。当該変位によりワイヤ27がクローザ装置3側に引き込まれ、レバー28が初期位置から時計方向に回転変位し、その結果、ラッチ機構2がハーフラッチ状態からフルラッチ状態(
図4(c)参照)へ移行するとともに、車両ドア10が半ドア状態から全閉状態へ移行する。
【0060】
ドアロック装置1を制御する制御部は、ドアロック装置1がフルラッチ状態へ移行したことを検出すると、モータ31の駆動を停止する。これにより、モータ31の駆動力がスピンドル34に作用しない、すなわち、スピンドル34には、キャンセルアシストスプリング39の付勢力のみ作用するので、当該スピンドル34は、第2の軸位置から第1の軸位置へ変位する。これによりレバー28が反時計方向へ回転変位し、初期位置へ復帰する。なお、ラッチ機構2は、フルラッチ状態に維持される。
【0061】
次に、ドアロック装置1の作動中にインサイドドアハンドル12又はアウトサイドドアハンドル13(
図2参照)が操作される場合について説明する。
図6(c)に示すように、インサイドドアハンドル12又はアウトサイドドアハンドル13が操作されると、キャンセルレバー36が第1の揺動位置から第2の揺動位置へ揺動する。したがって、キャンセルポール37が回転規制位置から回転許容位置へ変位する。これにより、キャンセルポール37とスピンドルガイド35との当接が解消するので、スピンドルガイド35の回転が許容される。
【0062】
モータ31が駆動力は、ウォーム&ホイール40を介してスピンドル34に回転として伝達されるものであるから、スピンドルガイド35の回転が許容されると、スピンドル34及びスピンドルガイド35がともに回転する。したがって、スピンドル34には、モータ31の駆動力による第1の軸位置から第2の軸位置方向へ変位させようとする力が作用しない。すなわち、スピンドル34には、キャンセルアシストスプリング39の付勢力のみ作用するので、当該スピンドル34は、
図6(d)に示すように、第2の軸位置側から第1の軸位置へ変位する。したがって、ラッチ機構2のラッチ21には、クローザ装置3による反時計方向へ回転変位させようとする力が作用しない。すなわち、ラッチ21には、インサイドドアハンドル12又はアウトサイドドアハンドル13の操作による時計方向へ回転変位させようとする力のみ作用するので、車両ドア10を開放することができる。
【0063】
なお、スピンドル34は、ウォーム&ホイール40のホイールに螺挿されているので、キャンセルアシストスプリング39の付勢力により第2の軸位置側から第1の軸位置へ変位するとき、軸方向まわりの回転を伴う。
【0064】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られる。
(1)スピンドル34のキャンセルカラー38側の先端部を球状に、キャンセルカラー38のスピンドル34側の先端部の端面を平面38cに、それぞれ形成した。これにより、スピンドル34とキャンセルカラー38との接触が点接触となる。点接触となることにより、他の接触態様となる他の形状を採用する場合と比較して、スピンドル34が回転したときに当該スピンドル34とキャンセルカラー38との間に生じる摩擦力が小さい。したがって、スピンドル34が第2の軸位置側から第1の軸位置へ変位するとき、スピンドル34とキャンセルカラー38との間に生じる摩擦力によるキャンセルアシストスプリング39の付勢力の減衰が小さいので、キャンセルアシストスプリング39に小型のスプリングを採用することができる。これに起因して、クローザ装置3、ひいてはドアロック装置1を小型化することができる。
【0065】
(2)スピンドル34の軸方向にキャンセルアシストスプリング39を配設するとともに、当該軸方向において、スピンドル34とキャンセルカラー38とを当接させる構成を採用した。これにより、キャンセルアシストスプリング39の付勢力による回転モーメントがスピンドル34に入力されにくいので、スピンドル34が他の部材と接触することによる摩擦力の発生が抑制される。
【0066】
(3)スピンドル34をウォーム&ホイール40のホイールに螺挿した。このため、スピンドル34は、その軸方向まわりにおいて回転しても軸ぶれしない。したがって、キャンセルアシストスプリング39の付勢力による回転モーメントがスピンドル34に入力されにくい。
【0067】
(4)スピンドル34の第1の軸位置側から第2の軸位置側への変位を規制するために突起34aと当接する縮径部53は、第2の軸位置側においてベアリング55と当接している。すなわち、縮径部53は、スピンドル34の第1の軸位置側から第2の軸位置側への変位を規制するとき、突起34aとベアリング55とにはさまれる。このため、スピンドル34の変位を規制する際、縮径部53は、挟まれる両方向から押圧されるので、当該規制に際し、縮径部53における不具合の発生が抑制される。
【0068】
なお、上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施形態に採用されるスピンドル34に代えて、
図9に示すスピンドル60を採用してもよい。すなわち、
図9に示すように、スピンドル60に、当該スピンドル60の軸方向に延びるとともにラッチ機構2とは反対側に開口する筒部61を設ける。そして、筒部61の内部にキャンセルカラー38及びキャンセルアシストスプリング39が挿入される構成とする。このように構成すれば、スピンドル60の内部(筒部61)にキャンセルカラー38及びキャンセルアシストスプリング39が挿入される分だけ、上記実施形態のスピンドル34よりも軸方向長さが短くなる。したがって、クローザ装置3、ひいてはドアロック装置1を小型化することができる。
【0069】
・上記実施形態に採用されるスピンドル34に代えて、
図10に示すスピンドル70を採用してもよい。すなわち、
図10に示すように、スピンドル70に、円盤状のつば部71を設け、当該つば部71を押圧するように、キャンセルカラー38及びキャンセルアシストスプリング39を配設する。このように構成すれば、上記実施形態のようにスピンドル34の先端部にキャンセルカラー38及びキャンセルアシストスプリング39を配設する場合と比較して、上記実施形態のスピンドル34よりも軸方向長さが短くなる。したがって、クローザ装置3、ひいてはドアロック装置1を小型化することができる。
【0070】
なお、この構成を採用する場合は、キャンセルカラー38の先端部を球状に形成することが望ましい。このように構成すれば、キャンセルカラー38の先端部とつば部71との接触が点接触となり、スピンドル70の軸方向まわりにおける回転変位に伴いキャンセルカラー38とつば部71との間に生じる摩擦力を小さくすることができる。
【0071】
・上記実施形態において、スピンドル34のキャンセルカラー38側の先端部を球状に、キャンセルカラー38のスピンドル34側の先端部の端面を平面に、それぞれ形成したが、この関係は逆であってもよい。
【0072】
・上記実施形態において、ラッチ機構2のケース23は、各種配線がインサートされていなくてもよい。この場合、コネクタ部29を省略してもよい。
・上記実施形態において、クローザ装置3は、スイング式の車両ドア10のラッチ機構2だけでなくスライドドアのクローザ装置3として採用してもよい。
【0073】
・上記実施形態において、係合部35bは、略正八角形とされたが、正多角形であればよい。また、係合部35bは、湾曲面を有していたが、必ずしも湾曲面でなくてもよい。なお、係合部35bが湾曲面でなく平面を採用する場合には、キャンセルポール37の湾曲面37aも、それに対応する平面を採用する。
【0074】
・上記実施形態において、伝達部材としてワイヤ27を採用したが、ひも状の部材であればよい。また、ラッチ機構2とクローザ装置3との位置関係によっては、直線状の棒状部材を採用してもよい。
【0075】
・上記実施形態において、スピンドルガイド35の外形が一様とされるものを採用してもよい。
・上記実施形態において、回転吸収部材は、スイベル41に限らない。例えば、ボールジョイント等を採用してもよい。
【0076】
・上記実施形態において、スピンドル34は、ウォーム&ホイール40を構成するホイールに螺挿されたが、ウォームに直接螺合する構成であってもよい。
・上記実施形態において、シール部材としてOリング49,50を採用したが、異物の進入を抑制するものであれば他のシール部材であってもよい。なお、Oリング49,50は省略されてもよい。
【0077】
・上記実施形態において、スピンドルガイド35を省略してもよい。この場合、ガイド溝35aに相当する構成をボデー32又はハウジング33に設け、そのガイド溝35aに相当する構成にスピンドル34が案内されるようにする。なお、当該構成を採用する場合、スピンドル34と当接して当該スピンドル34の変位を規制する位置とスピンドル34から離間して当該スピンドル34の変位を許容する位置との間で変位するようにキャンセルポール37を設ければよい。