【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたフィルム被覆部品の製造装置及び製造方法には、以下の問題があった。
すなわち、
図13に示すフィル貼り込み工程において、上チャンバ101a内を大気圧以上に開放した際には、下チャンバb内は真空状態のままであるので、上下チャンバ内の気圧差により、テーブル108に対して下方へ押し下げる荷重が作用する。そのため、その荷重に耐えうる押し上げ能力を持ったテーブル駆動装置101dが必要となる。
特に、近年、車両用部品の大型化、一体化に伴い、大型のフィルム被覆部品に対応する要請が高い。そのため、テーブル108の平面サイズを大きくした場合、テーブル面積に比例した過大な押し下げ荷重がテーブル108に作用するので、テーブル駆動装置101dは大型の油圧シリンダ等を備えた大掛りな装置とならざるを得ず、設備コスト及び設置スペースが大幅に増大する問題があった。
また、テーブル駆動装置101dの押し上げ能力が不足する場合には、圧空タンク106等を使用して大気圧以上の圧力をフィルム材103に作用させても、テーブル108が下降してしまうことにより、成形不良や設備故障の発生原因となりやすい問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、テーブル駆動装置によって所定位置に上昇したテーブル上に載置された基材の表面に、上チャンバと下チャンバとの間に把持されて加熱軟化したフィルム材を気圧差により貼着させるフィルム被覆部品の製造装置及び製造方法において、テーブル駆動装置の簡素化に基づく設備コスト及び設置スペースを低減できると共に、成形不良や設備故障を回避できることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係るフィルム被覆部品の製造装置及び製造方法は、次のような構成を有している。
(1)上下方向で接合、離反が可能とする上チャンバ及び下チャンバと、各チャンバに接続された真空回路及び空気回路と、前記上チャンバ内又は前記下チャンバ内に装着されたヒータと、前記下チャンバ内に昇降可能に配設されたテーブルと、前記テーブルを昇降させるテーブル駆動装置とを備え、前記テーブル駆動装置によって所定位置に上昇した前記テーブル上に載置された基材の表面に、前記上チャンバと前記下チャンバとの間に把持されて加熱軟化したフィルム材を気圧差により貼着させるフィルム被覆部品の製造装置であって、
前記テーブル駆動装置によって前記テーブルを所定位置に上昇させた後、前記下チャンバの真空回路を停止させると同時に当該下チャンバの空気回路を作動させ、その後に、前記上チャンバの前記真空回路を停止させると同時に当該上チャンバの空気回路を作動させる制御部を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明においては、テーブル駆動装置によってテーブルを所定位置に上昇させた後、下チャンバの真空回路を停止させると同時に当該下チャンバの空気回路を作動させる制御部を備えるので、フィルム貼り込み前に、上チャンバ内を真空状態に保持したまま下チャンバ内を大気開放させることができる。そのため、下チャンバ内のテーブルには、テーブル駆動装置の押し上げ力に加えて、気圧差に基づく上方へ持ち上げる力が作用する。そのため、フィルム貼り込み時において、テーブル駆動装置の押し上げ能力を下チャンバ内の大気圧によって補強することができる。
また、制御部は、その後に、上チャンバの真空回路を停止させると同時に当該上チャンバの空気回路を作動させるので、下チャンバ内を大気圧状態としたうえで、上チャンバ内を大気開放させることができる。そのため、フィルム貼り込み時に、例えば、圧空タンク等を使用して大気圧以上の圧力をフィルム材に作用させても、上下チャンバ内の気圧差が零又は微小であり、テーブルを下方へ押圧する荷重は僅かである。したがって、テーブル駆動装置の押し上げ能力が小さくても、テーブルが簡単に下降せず、成形不良や設備故障の発生を回避することができる。
その結果、成形不良や設備故障の発生を回避しつつ、テーブル駆動装置の簡素化を図ることができる。
よって、本発明によれば、テーブル駆動装置の簡素化に基づく設備コスト及び設置スペースを低減できると共に、成形不良や設備故障を回避できる。
【0009】
(2)(1)に記載されたフィルム被覆部品の製造装置において、
前記テーブルには、前記基材を包囲するように上方へ突設された外壁部を備え、当該外壁部は、前記テーブルを所定位置へ上昇させたとき、前記外壁部と前記下チャンバとがシール部材を介して密接するように形成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明においては、テーブルには、基材を包囲するように上方へ突設された外壁部を備え、当該外壁部は、テーブルを所定位置へ上昇させたとき、外壁部と下チャンバとがシール部材を介して密接するように形成されているので、下チャンバ内を大気開放した後に、フィルム材と基材を載置したテーブルとの間に、外壁部に包囲され、かつ真空状態に保持された気密空間が形成される。そのため、その後に、上チャンバ内を大気開放することによって、上下チャンバ内の気圧差が零又は微小となっても、上チャンバ内と気密空間内との間の気圧差によって、フィルム材を基材の表面に押し付けて貼着させることができる。
また、上記気密空間は、テーブルを所定位置へ上昇させたとき、外壁部と下チャンバとがシール部材を介して密接して形成されるので、下チャンバの真空回路によって吸引された真空状態を気密空間内にそのまま保存させることができる。また、テーブルは、下チャンバ内の大気圧によって上方へ押し上げられるので、テーブル駆動装置の押し上げ能力が小さくても、気密空間は、エア漏れが発生しにくく、その真空状態を保持させることができる。
その結果、テーブル駆動装置の簡素化に基づく設備コスト及び設置スペースを低減できると共に、成形不良や設備故障をより一層回避できる。
【0011】
(3)(2)に記載されたフィルム被覆部品の製造装置において、
前記下チャンバには、前記気密空間に連通する第2の真空回路を備え、前記制御部は、フィルム貼り込み時に前記第2の真空回路を作動させることを特徴とする。
【0012】
本発明においては、下チャンバには、気密空間に連通する第2の真空回路を備え、制御部は、フィルム貼り込み時に第2の真空回路を作動させるので、大型又は複雑な形状のフィルム被覆部品のフィルム貼り込み時においても、気密空間の真空状態を保持又は向上させることができる。そのため、大型又は複雑な形状の基材に対してフィルム材を過不足なく押し付けて、確実に貼着させることができる。
その結果、大型又は複雑な形状のフィルム被覆部品に対して、テーブル駆動装置の簡素化に基づく設備コスト及び設置スペースを低減できると共に、成形不良や設備故障をより一層回避できる。
【0013】
(4)上下方向で接合、離反が可能とする上チャンバ及び下チャンバと、各チャンバに接続された真空回路及び空気回路と、前記上チャンバ内又は前記下チャンバ内に装着されたヒータと、前記下チャンバ内に昇降可能に配設されたテーブルと、前記テーブルを昇降させるテーブル駆動装置とを備え、前記テーブル駆動装置によって所定位置に上昇した前記テーブル上に載置された基材の表面に、前記上チャンバと前記下チャンバとの間に把持されて加熱軟化したフィルム材を気圧差により貼着させるフィルム貼り込み工程を有するフィルム被覆部品の製造方法であって、
前記フィルム貼り込み工程は、前記上チャンバ内を真空状態に保持したまま前記下チャンバ内を大気開放する下チャンバ大気開放工程の後に、前記上チャンバ内を大気開放することを特徴とする。
【0014】
本発明においては、フィルム貼り込み工程は、上チャンバ内を真空状態に保持したまま下チャンバ内を大気開放する下チャンバ大気開放工程の後に、上チャンバ内を大気開放するので、フィルム貼り込み前に、上チャンバ内を真空状態に保持したまま下チャンバ内を大気開放させることができる。そのため、下チャンバ内のテーブルには、テーブル駆動装置の押し上げ力に加えて、気圧差に基づく上方へ持ち上げる力が作用する。したがって、フィルム貼り込み時において、テーブル駆動装置の押し上げ能力を下チャンバ内の大気圧によって補強することができる。
また、フィルム貼り込み工程は、下チャンバ内を大気開放した後に、上チャンバ内を大気開放するので、フィルム貼り込み時に、例えば、圧空タンク等を使用して大気圧以上の圧力をフィルム材に作用させても、上下チャンバ内の気圧差が零又は微小であり、テーブルを下方へ押圧する荷重は僅かである。そのため、テーブル駆動装置の押し上げ能力が小さくても、テーブルが簡単に下降せず、成形不良や設備故障の発生を回避することができる。
その結果、成形不良や設備故障の発生を回避しつつ、テーブル駆動装置の簡素化を図ることができる。
よって、本発明によれば、テーブル駆動装置の簡素化に基づく設備コスト及び設置スペースを低減できると共に、成形不良や設備故障を回避できる。
【0015】
(5)(4)に記載されたフィルム被覆部品の製造方法において、
前記テーブルには、前記基材を包囲するように上方へ突設された外壁部を備え、前記テーブルを所定位置へ上昇させたとき、前記外壁部と前記下チャンバとをシール部材を介して密接させることを特徴とする。
【0016】
本発明においては、テーブルには、基材を包囲するように上方へ突設された外壁部を備え、テーブルを所定位置へ上昇させたとき、外壁部と下チャンバとをシール部材を介して密接させるので、下チャンバ内を大気開放した後に、フィルム材と基材を載置したテーブルとの間に、外壁部に包囲され、かつ真空状態に保持された気密空間が形成される。そのため、その後に、上チャンバ内を大気開放することによって、上下チャンバ内の気圧差が零又は微小となっても、上チャンバ内と気密空間内との間の気圧差によって、フィルム材を基材の表面に押し付けて貼着させることができる。
また、上記気密空間は、テーブルを所定位置へ上昇させたとき、外壁部と下チャンバとがシール部材を介して密接して形成されるので、下チャンバの真空回路によって吸引された真空状態を気密空間内にそのまま保存させることができる。また、テーブルは、下チャンバ内の大気圧によって上方へ押し上げられるので、テーブル駆動装置の押し上げ能力が小さくても、気密空間は、エア漏れが発生しにくく、その真空状態を保持させることができる。
その結果、テーブル駆動装置の簡素化に基づく設備コスト及び設置スペースを低減できると共に、成形不良や設備故障をより一層回避できる。
【0017】
(6)(5)に記載されたフィルム被覆部品の製造方法において、
前記下チャンバには、前記気密空間に連通する第2の真空回路を備え、前記フィルム貼り込み工程にて前記第2の真空回路を作動させることを特徴とする。
【0018】
本発明においては、下チャンバには、気密空間に連通する第2の真空回路を備え、フィルム貼り込み工程にて第2の真空回路を作動させるので、大型又は複雑な形状のフィルム被覆部品のフィルム貼り込み工程においても、気密空間の真空状態を保持又は向上させることができる。そのため、大型又は複雑な形状の基材に対してフィルム材を過不足なく押し付けて、確実に貼着させることができる。
その結果、大型又は複雑な形状のフィルム被覆部品に対して、テーブル駆動装置の簡素化に基づく設備コスト及び設置スペースを低減できると共に、成形不良や設備故障をより一層回避できる。