(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6384351
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】アミノ酸配列分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 30/88 20060101AFI20180827BHJP
G01N 35/00 20060101ALI20180827BHJP
G01N 30/06 20060101ALI20180827BHJP
G01N 30/26 20060101ALI20180827BHJP
G01N 33/68 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
G01N30/88 F
G01N35/00 C
G01N30/06 Z
G01N30/26 M
G01N33/68
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-24094(P2015-24094)
(22)【出願日】2015年2月10日
(65)【公開番号】特開2016-148530(P2016-148530A)
(43)【公開日】2016年8月18日
【審査請求日】2017年9月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100114030
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿島 義雄
(72)【発明者】
【氏名】秋永 伸幸
(72)【発明者】
【氏名】松本 博幸
(72)【発明者】
【氏名】此下 竜
(72)【発明者】
【氏名】江連 徹
【審査官】
高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第02/099124(WO,A2)
【文献】
特開平9−068534(JP,A)
【文献】
特開2002−139500(JP,A)
【文献】
実開平6−012963(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3188163(JP,U)
【文献】
実開平6−033067(JP,U)
【文献】
特開平6−167500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00−30/96
G01N 33/48−33/98
G01N 1/00− 1/44
G01N 35/00−37/00
G01N 27/60−27/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質もしくはペプチドの試料を収容した反応槽内に試薬を供給してエドマン反応を生起させ、試料のN末端のアミノ酸を逐次切断して分析部に導入することにより、試料のアミノ酸配列情報を得るアミノ酸配列分析装置において、
上記反応槽を複数個備え、その各反応槽には、試薬容器に連通する試薬供給管からの試薬が電磁弁を介して選択的に供給され、一つの反応槽内の試料の分析動作を終了した後、次の反応槽内の試料の分析動作に移行すべく上記電磁弁を自動的に作動させて試薬の供給先を変更するように構成されているとともに、
一つの反応槽内の試料の分析動作中に、分析待ちの試料を収容する反応槽内に定期的にパージガスが導入されるように構成されていることを特徴とするアミノ酸配列分析装置。
【請求項2】
上記試薬容器内の試薬は、当該試薬容器内に不活性ガス源からの不活性ガスを導入することによって上記試薬供給管内に導かれるように構成され、上記分析待ちの試料を収容する反応槽内へのパージガスは、上記不活性ガス源からの不活性ガスを用い、当該不活性ガス源からの不活性ガスが上記試薬容器を経ず直接的に上記試薬供給管を介して導入されるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のアミノ酸配列分析装置。
【請求項3】
上記分析待ちの試料を収容する反応槽内へのパージガスの導入は、分析中の試料の一つのN末端アミノ酸の分離、検出を終了したタイミングで行われることを特徴とする請求項1または2に記載のアミノ酸配列分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エドマン反応を用いてN末端から試料アミノ酸を逐次切断して液体クロマトグラフィなどの分析機器で分析することにより、タンパク質やペプチドのアミノ酸配列の分析を行うアミノ酸配列分析装置に関し、さらに詳しくは、試料を収容してエドマン分解反応を生じさせるための反応槽を複数個備え、これらの各反応槽内の試料の分析を順次自動的に行う機能を備えたアミノ酸配列分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エドマン反応を用いたアミノ酸配列分析装置においては、一般に、タンパク質やペプチドの試料を収容した反応槽(リアクタ)内に各種試薬を順次供給することにより、カップリング反応、切断反応からなるエドマン分解反応を生起させ、N末端のペプチド結合を切断してATZアミノ酸を生成し、遊離したATZアミノ酸をコンバージョンフラスコなどの転換槽(コンバータ)内に抽出した後、試薬を用いて安定したPTHアミノ酸へ転換する。そして、そのPTHアミノ酸をHPLCなどの分析部に導入して分離および検出することでアミノ酸の同定や定量を行う。この動作を逐次繰り返し行うことで、試料のアミノ酸の配列情報を得る。
【0003】
反応槽や転換槽内への各種試薬の供給は、各試薬を収容した試薬容器内に窒素ガスなどの不活性ガスを所定の圧力で注入することによって容器内の試薬を試薬供給管内に圧送し、その試薬供給管上に設けた電磁弁を介して反応槽や転換槽に導入する構成が一般に用いられている(例えば特許文献1,2参照)。
【0004】
このようなアミノ酸配列分析装置では、一つの試料について多数のアミノ酸を切断して分析する必要があることから、分析を完了するまでの所要時間が長時間に及ぶ。そのため、従来から、反応槽を複数個用いて分析の効率化並びに省力化を実現する方法が提案・実用化されている(例えば特許文献3参照)。
【0005】
複数個の反応槽を用いる手法のうち、複数の反応槽内の試料に対して順次エドマン反応を生起させていく手法、つまり複数の反応槽内にそれぞれ試料を収容し、一つの反応槽内の試料のアミノ酸配列の分析を終了後、次の反応槽内の試料の分析に自動的に移行する手法であれば、例えば休日中にも自動的に分析が実行されるなど、分析の効率化や省力化の点で有益であり、実用に供されている。
【0006】
この手法を用いた装置では、試薬容器内に不活性ガスを導入することにより試薬供給管から送られてくる試薬を、各反応槽のうち分析に供される一つの反応槽に向けて選択的に導入する構成が採られる。具体的には、共通の試薬供給管上に各反応槽に対応した電磁弁を設け、その電磁弁の作動により一つの反応槽内にのみ試薬を供給してエドマン反応を生起させる構成が採られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平6−12963号公報
【特許文献2】実用新案登録第3188163号公報
【特許文献3】特開平9−68534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、この種の分析装置においては、エドマン反応の試薬のうちの一つに、強酸であるTFA(トリフルオロ酢酸)を用いるため、使用する電磁弁のダイヤフラムなどの接合部にはPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を用いる必要がある。ここで、PTFEは多数の微孔が存在するポーラス構造であるため、待機中の試料を収容している反応槽内に意図せずに試薬が入り込み、試料のペプチド結合を無作為に切断してしまう可能性がある。
【0009】
すなわち、上記したように一つの試料の分析に長時間を要するため、分析待ちの試料は必然的に長時間の待機状態を維持する必要があり、待機中の試料を収容する反応槽は電磁弁によって試薬の侵入が阻止された状態となっているものの、時間の経過とともに接合部のPTFEを介して各種の試薬が僅かずつではあるが徐々に反応槽内へと拡散する。この拡散した試薬が、反応槽内で待機中の試料に作用し、その試料のペプチド結合を無作為に切断してしまう可能性がある。このことは、待機状態を経た試料についての分析結果に誤りを含む原因となる。
【0010】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたもので、複数の反応槽を設けてその各反応槽内の試料を順番に分析に供するようにしたアミノ酸配列分析装置において、一つの反応槽を用いて単発の分析を行う場合と同等の安定性のもとに複数の試料についての分析を行うことのできる分析装置の提供をその課題としている。
【0011】
また、本発明の他の課題は、上記の課題を解決するにあたり、装置構成の大幅な改造が不要であって、コストを抑えて実現することのできるアミノ酸配列分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、本発明のアミノ酸配列分析装置は、タンパク質もしくはペプチドの試料を収容した反応槽内に試薬を供給してエドマン反応を生起させ、試料のN末端のアミノ酸を逐次切断して分析部に導入することにより、試料のアミノ酸配列情報を得るアミノ酸配列分析装置において、上記反応槽を複数個備え、その各反応槽には、試薬容器に連通する試薬供給管からの試薬が電磁弁を介して選択的に供給され、一つの反応槽内の試料の分析動作を終了した後、次の反応槽内の試料の分析動作に移行すべく上記電磁弁を自動的に作動させて試薬の供給先を変更するように構成されているとともに、一つの反応槽内の試料の分析動作中に、分析待ちの試料を収容する反応槽内に定期的にパージガスが導入されるように構成されていることによって特徴づけられる。
【0013】
ここで、本発明においては、試薬容器内の試薬を、当該試薬容器内に不活性ガス源からの不活性ガスを導入することによって試薬供給管内に導くようにした構成を採る場合、分析待ちの
試料を収容する反応槽内へのパージガスは、上記不活性ガス源からの不活性ガスを用い、当該不活性ガス源から上記試薬容器を経ず直接的に上記試薬供給管を介して導入するように構成することができる。
【0014】
また、本発明において、分析待ちの試料を収容する反応槽内へのパージガス導入のタイミングは、分析中の試料の一つのN末端アミノ酸の分離、検出を終了したタイミングとすることができる。
【0015】
本発明の構成によると、待機中の試料を収容している反応槽内が、所定のタイミングでパージガスにより置換されて試薬がパージされるので、待機中の試料への影響をなくすことができる。
【0016】
そして、不活性ガスを所定の圧力で試薬容器内に導入してその内部の試薬を試薬供給管に導いて各反応槽内に供給する構成を有する分析装置にあっては、その不活性ガスをパージガスとして、試薬供給管を通じて直接待機中の試料を収容する反応槽内に導入する構成を採用することにより、装置構成を変更することなく電磁弁の動作手順の変更のみで課題を解決することができる。
【0017】
待機中の試料を収容する反応槽内へのパージガス導入のタイミングについては特に限定されるものではないが、分析中の試料について、一つのアミノ酸の分離、検出を終了するごとに行うことが、特に試薬供給管への試薬の導入において不活性ガスをパージガスとして用いる上記の構成の採用との組み合わせに際し、各電磁弁の動作手順を簡素化する上で有用である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、複数の反応槽を設けてその各反応槽内の試料を順番に分析するようにしたアミノ酸配列分析装置において、分析待ちの試料を収容する反応槽内に、意図せず試薬が電磁弁のPTFE製ダイヤフラムなどを介して侵入しても、その内部に所定のタイミングでパージガスが導入されて試薬が反応槽外に排除されるので、分析待ちの試料に対する影響をなくすことができ、一つの反応槽を用いて単発の分析を行う場合と同等の安定性のもとに複数の試料についてのアミノ酸配列分析が可能となる。
【0019】
また、試薬容器内に不活性ガスを導入することにより、試薬供給管を介して試薬容器内部の試薬を各反応槽内に供給する構成を採用する場合、不活性ガスをパージガスとして用い、試薬供給管を介して各反応槽内に導くようにすることで、装置構成を変更することなく上記の作用効果を実現することができ、実質的にコストアップを伴うことなく課題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図2】本発明の実施形態における分析工程を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ本発明の好適な実施の形態について説明する。
図1は本発明の実施の形態における要部配管図である。この例では、3個の反応槽(リアクタ)1a,1b,1cを備え、これらの各反応槽1a,1b,1cそれぞれに試料が収容される。また、分析に際し、一つの反応槽内の試料の分析実行中は他の反応槽内の試料を分析待ち状態とし、一つの試料のアミノ酸配列分析を完了後、自動的に次の反応槽内の試料の分析に移行するように設定されている。
【0022】
装置は、各反応槽1a,1b,1cに対して択一的に試薬を供給するための第一試薬供給装置2と、反応槽1a,1b,1c内で切断されたATZアミノ酸が移送される転換槽(コンバージョンフラスコ)3と、転換槽3内に試薬を供給するための第二試料供給装置4と、転換槽3内で転換されたPTHアミノ酸を分析するPTHアミノ酸分析装置5を備えている。
【0023】
第一試薬供給装置2は、酢酸エチルの試薬容器21と、塩化n−ブチルの試薬容器22、トリメチルアミンの試薬容器23、PITCのn−ヘプタン溶液の試薬容器24、およびトリフルオロ酢酸の試薬容器25を備えている。これらの各試薬容器21〜25には、それぞれガス供給管26を介して、窒素ガス源27から所定の圧力の窒素ガスが各試薬容器21〜25に対応して設けられた電磁開閉弁261〜265を開くことによって導入される。また、各試薬容器21〜25にはそれぞれ電磁開閉弁281〜285を備えたドレイン管28が連通している。
【0024】
さらに、各試薬容器21〜25には、それぞれ試薬供給管291〜295が連通しており、これらの各試薬供給管291〜295は、それぞれに対応する電磁三方弁211〜251を介して共通の試薬供給管29に連通している。また、電磁三方弁211と窒素ガス源27との間には電磁開閉弁260が設けられている。
【0025】
そして、共通の試薬供給管29は、電磁三方弁29a,29b,29cを介して反応槽1a,1b,1cに連通している。また、電磁三方弁29a,29b,29cの下流側には電磁開閉弁290が設けられている。
【0026】
以上の構成により、反応槽1a,1b,1cのうちの任意のものに、試薬容器21〜25から任意の試薬を供給することができる。例えば、試薬容器21内の酢酸エチルを反応槽1a内に導入する場合、電磁開閉弁261を開いて電磁開閉弁281を閉じることによって試薬容器21内を加圧し、その内部の酢酸エチルを試薬供給管291内へ導くとともに、電磁三方弁211のみを図中直角方向に連通させ、他の電磁三方弁221,231,241,251は図中水平方向に連通させるようにセットすることによって共通の試薬供給管29へと酢酸エチルを導き、電磁三方弁29a,29b,29cのうち、電磁三方弁29aのみを図中直角方向に連通させることによって、酢酸エチルを反応槽1a内にのみ供給することができる。
【0027】
各反応槽1a,1b,1cの底部には、それぞれ試料移動管11a,11b,11cが接続されており、これらの各試料移動管11a,11b,11cはそれぞれ電磁三方弁12a,12b,12cおよび電磁三方弁14を介して共通の試料移動管16に連通している。そしてこの共通の試料移動管16は転換槽3に連通している。この構成により、反応槽1a,1b,1c内での反応により切断されたATZアミノ酸を転換槽3内に導くことができる。例えば反応槽1a内のATZアミノ酸を転換槽3に導く場合、電磁三方弁12aと14を図中直交する方向に連通させることにより、反応槽1a内の内容物は試料移動管11a,電磁三方弁12a、電磁三方弁14および共通の試料移動管16を経て転換槽3内に移動する。
【0028】
なお、電磁三方弁12cは第一試薬供給装置2の電磁開閉弁290と電磁開閉弁13を介して連通するとともに、電磁三方弁14は電磁開閉弁15を備えたドレイン管17にも連通している。
【0029】
転換槽3内に試薬を供給する第二試薬供給装置4は、アセトニトリルと水の混合液の試薬容器41と、トリフルオロ酢酸溶液の試薬容器42を備え、これらの各試薬容器41,42には、それぞれガス供給管26を介して、窒素ガス源27から所定の圧力の窒素ガスが各試薬容器41,42に対応して設けられた電磁開閉弁461,462を開くことによって導入される。また、各試薬容器41,42にはそれぞれ電磁開閉弁481,482を備えたドレイン管48が連通している。
【0030】
さらに、各試薬容器41,42には、それぞれ試薬供給管491,492が連通しており、これらの各試薬供給管491,492は、それぞれに対応する電磁三方弁411,421を介して共通の試薬供給管49に連通している。また、電磁三方弁411と窒素ガス源27との間には電磁開閉弁460が設けられている。この構成により、上記した第一試薬供給装置2と同様に、試薬容器41,42に収容された試薬のうち、任意のものを転換槽3内に供給することができる。
【0031】
転換槽3には、電磁開閉弁311を備えたドレイン管31と、PTHアミノ酸分析装置5に連通する試料導出管32が接続されている。転換槽3内の反応により生成されたPTHアミノ酸は電磁開閉弁460を開き、転換槽3内を窒素ガスで加圧することによって試料導出管32を通じてPTHアミノ酸分析装置5に送られる。
【0032】
PTHアミノ酸分析装置5は、六方弁51とポンプ52、高速液体クロマトグラフィのカラム53、検出器54およびデータ処理装置55を有している。転換槽3に連通する試料導出管32の出口は六方弁51に接続されており、この六方弁51とポンプ52の駆動により、試料導出管32を介して導かれたPTHアミノ酸は一定量がカラム53に送られて分離され、検出器54で検出される。その検出結果がデータ処理装置55で解析されることにより、試料のN末端のPTHアミノ酸の同定および定量が行われ、これを逐次繰り返すことによって試料のアミノ酸配列情報が得られる。
【0033】
例えば反応槽1a内の試料のアミノ酸配列の分析中は、他の反応槽1b,1cは待機状態となっており、この待機状態において反応槽1b,1cの試薬の入口部分に設けられた電磁三方弁29b,29cは閉状態、つまり水平方向に連通した状態を維持するが、そのダイヤフラムなどの接合部に用いられているPTFEがポーラス構造であるが故に、時間経過とともに試薬が徐々に反応槽1b,1c内へ拡散して試料のペプチド結合を無作為に切断してしまう可能性があることは上記した通りである。
【0034】
この実施の形態の特徴は、以下に示すように各電磁弁の動作手順の工夫により、上記の課題を解消するようにした点にある。
図2のフローチャートにその分析動作手順を示す。
【0035】
まず、分析に先立ち、各反応槽1a,1b,1c内にそれぞれ試料を設置する。具体的には、ガラスファイバフィルタやPVDF膜に保持したタンパク質やペプチドの試料を、PTFEフィルタとともに上下のガラスブロックで挟み込み、それぞれの反応槽1a,1b,1cにセットして指令を与えることにより自動運転を開始する。
【0036】
分析動作においては、該当の電磁弁を作動させることにより、まず、反応槽1a内の試料に対するカップリング反応を生起させるべく、試薬容器23内のトリメチルアミン(気体)で反応槽1a内を満たした後、試薬容器24内のPITCのn−ヘプタン溶液を供給し、タンパク質のN末端アミノ基に反応させ、PTC−タンパク質を生成し、試薬容器21内の酢酸エチルで過剰試薬や副生成物を洗浄する。
【0037】
その後、切断反応を生起させるべく、試薬容器25内のトリフルオロ酢酸でPTC−タンパク質のN末端ペプチド結合を切断し、ATZアミノ酸を生成する。遊離したATZアミノ酸を試薬容器22内の塩化n−ブチルで転換槽3に抽出する。
【0038】
次いで転換槽3内で転換反応を生起させるべく、試薬容器42内のトリフルオロ酢酸溶液を転換槽3内に導入し、ATZアミノ酸を安定なPTHアミノ酸へ転換する。次いで試薬容器41内のアセトニトリルと水の混合液を転換槽3内に導入してPTHアミノ酸を溶解する。
【0039】
そして、転換槽3内のPTHアミノ酸を六方弁51に流入させて、六方弁51とポンプ52により高速液体クロマトグラフィのカラム53に注入(インジェクション)し、クロマトグラフィのカラム53によってPTHアミノ酸を分離して検出器54で検出する。その検出結果をデータ処理装置55で解析し、PTHアミノ酸の同定、定量、収率計算などを行う。
【0040】
以上は公知の処理であり、これにより一つのN末端アミノ酸についての分析を終え、続けて同じ試料について次のN末端アミノ酸についての分析に移行すべく、上記の分析動作を繰り返す。
【0041】
この実施の形態においては、一つのN末端アミノ酸の分析を終了して次のN末端アミノ酸の分析に移行するタイミングで、待機中の試料を収容している反応槽1b,1cの内部に窒素ガスのパージを実行する。具体的には、
図1において、第一試薬供給装置2内の電磁開閉弁260を開き、電磁三方弁211〜251の全てを図中水平方向に連通させるとともに、電磁三方弁29cを図中水平方向に連通させて電磁三方弁29bを直角方向に連通させることにより、窒素ガス源27と反応槽1bとを直接連通させて、この反応槽1bの底部に連通する試料移動管11bに設けられている電磁三方弁12bを直角方向に連通させ、かつ、電磁三方弁12a〜14を図中鉛直方向に連通させるとともに、電磁開閉弁15を開いてドレイン管17に連通させる。これにより、窒素ガス源27からの窒素ガスが試薬供給管29を経て直接反応槽1b内に導入され、試料移動管11bを介してドレイン管17を通じて外部に排気され、反応槽1b内が窒素ガスでパージされる。なお、反応槽1c内についても該当の電磁弁を上記と同様に制御することによって、その内部が窒素ガスでパージされる。
【0042】
以上の実施の形態によれば、待機時間が長くても、その間に分析待ちの試料を収容した反応槽内が窒素ガスで定期的にパージされるため、待機中の試料を収容する反応槽内に電磁弁を介して試薬が侵入しても、その影響を抑制ないし解消することができる。
【0043】
また、以上の実施の形態においては、試薬供給装置で用いる窒素ガス源をパージガス源として用い、また、既存の試薬供給管を利用して電磁弁の制御により待機中の試料を収容した反応槽内をパージしているので、上記した作用効果を実現するための新たな配管やガス源などは必要とせず、コストを抑えて実現することができる。ただし、本発明はこのような構成に限定されるものではなく、別途パージ用の配管や、あるいはこれに加えてパージ用のガス源を設けてもよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0044】
1a,1b,1c 反応槽
11a,11b,11c 試料移動管
12a,12b,12c 電磁三方弁
15 電磁開閉弁
16 試料移動管
17 ドレイン管
2 第一試薬供給装置
21〜25 試薬容器
211,221,231,241、251 電磁三方弁
26 ガス供給管
260〜265 電磁開閉弁
27 窒素ガス源
29 試薬供給管
3 転換槽
32 試料導出管
4 第二試薬供給装置
41,42 試薬容器
460〜462 電磁開閉弁
49 試薬供給管
5 PTHアミノ酸分析装置
51 六方弁
52 ポンプ
53 クロマトグラフィのカラム
54 検出器
55 データ処理装置