特許第6384368号(P6384368)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6384368
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】感熱記録体
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/323 20060101AFI20180827BHJP
   B41M 5/337 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   B41M5/323 220
   B41M5/337 212
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-47410(P2015-47410)
(22)【出願日】2015年3月10日
(65)【公開番号】特開2016-165859(P2016-165859A)
(43)【公開日】2016年9月15日
【審査請求日】2017年6月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】押阪 智恵子
(72)【発明者】
【氏名】竹村 尚
(72)【発明者】
【氏名】村井 徹
【審査官】 野田 定文
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/181745(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/181746(WO,A1)
【文献】 特開平05−064960(JP,A)
【文献】 特開平06−227143(JP,A)
【文献】 特開2008−168566(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0075675(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/28 − 5/48
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体の一方の面に染料前駆体と顕色剤を含有する感熱記録層を備えた感熱記録体において、感熱記録層が下記一般式(1)で表される染料前駆体と、下記一般式(2)で表されるフェノール化合物を含有し、前記一般式(2)で表されるフェノール化合物の平均粒子径が0.4〜1.5μmであることを特徴とする感熱記録体。
【化1】

(式中、R及びRは水素原子もしくは炭素数1〜8の分岐してもよいアルコキシ基を表し、同一であっても、異なっていてもよい。Rは炭素数1〜4の分岐してもよいアルキル基を表す。)
【化2】

(式中、Rは置換されてもよい飽和または不飽和のアルキレン基、置換されてもよい飽和または不飽和のアルキリデン基、置換されてもよいシクロアルキレン基を示し、R、Rは水素、ハロゲン原子、置換されてもよい飽和または不飽和のアルキル基、置換されてもよい飽和または不飽和のアルコキシル基を示す。)
【請求項2】
前記一般式(1)で表される染料前駆体が、4−[2−(2−ブトキシフェニル)−6−フェニル−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミン、4−[2−(2−ペンチルオキシフェニル)−6−フェニル−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミン、4−[2−(2−ヘキシルオキシフェニル)−6−フェニル−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミン、4−[2−[2−(エトキシフェニル]−6−フェニル−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミン、4−[2−(2−オクチルオキシフェニル)−6−フェニル−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミン、4−(2,6−ジフェニル−4−ピリジニル)−N,N−ジメチルベンゼンアミン、4−[2,6−ビス(2−ブトキシフェニル)−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミン、4−[2,6−ビス(2−ペンチルオキシフェニル)−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミン、4−[2,6−ビス(2−ヘキシルオキシフェニル)−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミン、及び4−[2,6−ビス(2−オクチルオキシフェニル)−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミンからなる群れから選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の感熱記録体。
【請求項3】
前記一般式(2)で表されるフェノール化合物が、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)及び2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1または2に記載の感熱記録体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、染料前駆体と顕色剤の反応を利用し、サーマルヘッドや熱スタンプ等からの熱エネルギーにより発色した部分が、黄色の色相域において記録濃度及び記録部の耐光保存性が高く、耐熱地肌カブリ性が良好な感熱記録体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
染料前駆体と顕色剤との反応を利用し、熱エネルギーによって両物質を反応させて記録像を得るようにした感熱記録体は良く知られている。かかる感熱記録体は比較的安価であり、また記録機器がコンパクトでその保守も容易であるため、ファクシミリやプリンター用の記録媒体としてのみならず幅広い分野において使用されている。
【0003】
用途の拡大に伴って要求される性能、品質も多様化しており、黄色の色相領域でも記録濃度及び記録部の画像保存性が高い感熱記録体が求められている。しかしながら、黄色に発色する感熱記録体の実用化を妨げる要因として、記録部の耐光保存性に乏しく、また、高温下で黄色の地肌カブリを起こす問題が挙げられる。
【0004】
黄色に発色する感熱記録体としては、特定の発色成分を用いた感熱記録体(特許文献1〜4参照)、低温記録領域及び高温記録領域で異なる色相を持つ2色感熱記録体(特許文献5参照)等が提案されている。しかしながら、前記の課題について、必ずしも満足すべき結果が得られていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−162447号公報
【特許文献2】特開平5−169829号公報
【特許文献3】特開平6−255251号公報
【特許文献4】特開平10−250237号公報
【特許文献5】特開2001−105744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、黄色の色相域において、記録濃度が高く、記録部の耐光保存性と耐熱地肌カブリ性に優れる感熱記録体を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、感熱記録層に下記一般式(1)で表される染料前駆体と下記一般式(2)で表されるフェノール化合物を用いることにより、前記問題点を解決するに至った。即ち、本発明は、下記の感熱記録体に係る。
【0008】
項1:支持体の一方の面に染料前駆体と顕色剤を含有する感熱記録層を備えた感熱記録体において、感熱記録層が下記一般式(1)で表される染料前駆体と、下記一般式(2)で表されるフェノール化合物を含有することを特徴とする感熱記録体。
【0009】
【化1】
(式中、R及びRは水素原子もしくは炭素数1〜8の分岐してもよいアルコキシ基を表し、同一であっても、異なっていてもよい。Rは炭素数1〜4の分岐してもよいアルキル基を表す。)
【0010】
【化2】
(式中、Rは置換されてもよい飽和または不飽和のアルキレン基、置換されてもよい飽和または不飽和のアルキリデン基、置換されてもよいシクロアルキレン基を示し、R、Rは水素、ハロゲン原子、置換されてもよい飽和または不飽和のアルキル基、置換されてもよい飽和または不飽和のアルコキシル基を示す。)
【0011】
項2:前記一般式(1)で表される染料前駆体が、4−[2−(2−ブトキシフェニル)−6−フェニル−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミン、4−[2−(2−ペンチルオキシフェニル)−6−フェニル−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミン、4−[2−(2−ヘキシルオキシフェニル)−6−フェニル−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミン、4−[2−[2−(エトキシフェニル]−6−フェニル−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミン、4−[2−(2−オクチルオキシフェニル)−6−フェニル−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミン、4−(2,6−ジフェニル−4−ピリジニル)−N,N−ジメチルベンゼンアミン、4−[2,6−ビス(2−ブトキシフェニル)−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミン、4−[2,6−ビス(2−ペンチルオキシフェニル)−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミン、4−[2,6−ビス(2−ヘキシルオキシフェニル)−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミン、及び4−[2,6−ビス(2−オクチルオキシフェニル)−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミンからなる群れから選ばれる少なくとも1種である、項1に記載の感熱記録体。
【0012】
項3:前記一般式(2)で表されるフェノール化合物が、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)及び2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)からなる群から選ばれる少なくとも1種である、項1または2に記載の感熱記録体。
【0013】
項4:前記一般式(2)で表されるフェノール化合物の平均粒子径が0.4〜2.0μmである、項1〜3のいずれか1項に記載の感熱記録体。
【発明の効果】
【0014】
本発明の感熱記録体は、黄色の色相域において、記録濃度が高く、記録部の耐光保存性と耐熱地肌カブリ性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明における感熱記録層は、支持体の一方の面に形成されており、前記一般式(1)で表される染料前駆体、顕色剤及び前記一般式(2)で表されるフェノール化合物を含有している。これにより、黄色の発色を呈し、黄色の色相域において記録部の保存性と耐熱地肌カブリ性に優れる。
【0016】
本発明では、一般式(1)で表される染料前駆体は、4−[2−(2−ブトキシフェニル)−6−フェニル−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミン、4−[2−(2−ペンチルオキシフェニル)−6−フェニル−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミン、4−[2−(2−ヘキシルオキシフェニル)−6−フェニル−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミン、4−[2−[2−(エトキシフェニル]−6−フェニル−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミン、4−[2−(2−オクチルオキシフェニル)−6−フェニル−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミン、4−(2,6−ジフェニル−4−ピリジニル)−N,N−ジメチルベンゼンアミン、4−[2,6−ビス(2−ブトキシフェニル)−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミン、4−[2,6−ビス(2−ペンチルオキシフェニル)−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミン、4−[2,6−ビス(2−ヘキシルオキシフェニル)−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミン、及び4−[2,6−ビス(2−オクチルオキシフェニル)−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミンからなる群れから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。これにより、黄色の色相域において記録濃度を高めることができる。
【0017】
本発明では、記録濃度を高めて、記録部の保存性と耐光性を向上する観点から、前記一般式(1)中、RまたはRのいずれか一方が炭素数4〜8のアルコキシ基を表すことが好ましい。また、記録濃度を向上する観点から、RまたはRのいずれか一方が水素原子を表すことが好ましい。記録濃度を高める観点からは、前記一般式(1)中、RとRが同時に水素原子である場合を除くことが好ましい。
【0018】
本発明において、感熱記録層に含有される染料前駆体の形態については特に限定されるものではなく、例えば固体微粒子の形態での使用、或いは多価イソシアネート化合物を溶媒とし、及び染料前駆体を溶質として含む溶液状組成物を水中に乳化分散後、多価イソシアネート化合物の重合反応により得られる複合微粒子の形態での使用、マイクロカプセルに内包してマイクロカプセル化した形態での使用等が挙げられ、所望とする品質が得られるよう適宜選択して使用することができる。
【0019】
染料前駆体を固体分散微粒子の形態で使用する場合、水を分散媒体として、例えば、サンドグラインダー、アトライター、ボールミル、コボーミル等の各種湿式粉砕機によって粉砕し、これをポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、スルホン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、スチレン−無水マレイン酸共重合体塩及びそれらの誘導体等の水溶性高分子化合物のほか、必要に応じて界面活性剤、消泡剤等と共に分散媒体中に分散させて分散液とし、この分散液を感熱記録層用塗液の調製に用いることができる。
【0020】
本発明では、一般式(2)で表されるフェノール化合物の具体例として、例えば、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−エチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−(2,2’−プロピリデン)ビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メトキシ−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(6−tert−ブチルフェノール)等が挙げられる。これらのなかでも2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)と2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)が特に好ましく用いられる。
【0021】
一般式(2)で表されるフェノール化合物の含有割合は、特に限定するものではないが、染料前駆体100質量部に対して1〜500質量部程度、好ましくは10〜200質量部程度である。
【0022】
一般式(2)で表されるフェノール化合物の平均粒子径は、記録濃度と耐光保存性を高める観点から、0.4〜2.0μmの範囲であることが好ましく、0.4〜1.5μmの範囲であることがより好ましい。ここで、平均粒子径は、レーザー回析法による体積平均粒子径である。
【0023】
本発明では、保存性改良剤としては、例えば、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、4,4’−〔1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)〕ビスフェノール、及び4,4’−〔1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)〕ビスフェノール等のフェノール化合物、4−ベンジルオキシフェニル−4’−(2−メチル−2,3−エポキシプロピルオキシ)フェニルスルホン、4−(2−メチル−1,2−エポキシエチル)ジフェニルスルホン、及び4−(2−エチル−1,2−エポキシエチル)ジフェニルスルホン等のエポキシ化合物、並びに1,3,5−トリス(2,6−ジメチルベンジル−3−ヒドロキシ−4−tert−ブチル)イソシアヌル酸等のイソシアヌル酸化合物から選ばれる少なくとも1種以上等を感熱記録層に含有させることもできる。勿論、保存性改良剤はこれらに限定されるものではなく、また必要に応じて2種以上の化合物を併用することもできる。
【0024】
本発明における顕色剤は、温度の上昇によって液化、または溶解する性質を有し、染料前駆体と接触してこれを発色させる性質を有するものから選ばれる。顕色剤の具体例としては、例えば、フェノール化合物、芳香族カルボン酸、或いはこれらの化合物の多価金属塩等の有機酸性物質等を挙げることができる。
【0025】
顕色剤は通常、複合微粒子中やマイクロカプセル中に存在していてもよいし、また、固体分散微粒子の状態で存在していてもよい。顕色剤の含有割合としては、染料前駆体100質量部に対し、30〜2000質量部程度が好ましく、より好ましくは50〜250質量部程度である。なお、複合微粒子は、前記の染料前駆体を含有する複合微粒子を調製する方法と同様の方法で調整することができる。
【0026】
顕色剤の具体例としては、例えば、4−tert−ブチルフェノール、4−アセチルフェノール、4−tert−オクチルフェノール、4,4’−sec−ブチリデンジフェノール、4−フェニルフェノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−イソプロピリデンジフェノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−シクロヘキシリデンジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルサルファイド、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−イソプロポキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−n−プロポキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−アリルオキシジフェニルスルホン、ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、4,4’−ビス[(4−メチル−3−フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド]ジフェニルスルホン、4−[4’−(1’−メチルエチルオキシ)フェニル]スルホニルフェノール、N−(p−トルエンスルホニル)−N’−(3−p−トルエンスルホニルオキシフェニル)ウレア、N−p−トリルスルホニル−p−ブトキシカルボニルフェニルウレア、N−(p−トルエンスルホニル)−N’−フェニルウレア、4,4’−ビス(3−トシルウレイド)ジフェニルメタン等の化合物を挙げることができる。
【0027】
更には、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシフタル酸ジメチル、4−ヒドロキシ安息香酸メチル、4−ヒドロキシ安息香酸プロピル、4−ヒドロキシ安息香酸−sec−ブチル、4−ヒドロキシ安息香酸フェニル、4−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、4−ヒドロキシ安息香酸トリル、4−ヒドロキシ安息香酸クロロフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル等のフェノール化合物、又は、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、トリクロル安息香酸、テレフタル酸、サリチル酸、3−tert−ブチルサリチル酸、3−イソプロピルサリチル酸、3−ベンジルサリチル酸、3,5−(α−メチルベンジル)サリチル酸、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸等の芳香族カルボン酸、及び前記フェノール化合物、芳香族カルボン酸と例えば亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム等の多価金属との塩等の有機酸性物質等が挙げられる。
【0028】
これらの顕色剤の中でも、4−ヒドロキシ−4’−イソプロポキシジフェニルスルホン、N−p−トリルスルホニル−p−ブトキシカルボニルフェニルウレア、N−(p−トルエンスルホニル)−N’−(3−p−トルエンスルホニルオキシフェニル)ウレア、N−(p−トルエンスルホニル)−N’−フェニルウレアが本発明の効果を遺憾なく発揮できることから好ましい。
【0029】
感熱記録層において、記録感度を向上させるために、更に増感剤を含有させることができる。増感剤としては、従来から感熱記録体の増感剤として知られている化合物を使用することができ、例えばパラベンジルビフェニル、ジベンジルテレフタレート、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸フェニル、シュウ酸ジベンジル、アジピン酸ジ−o−クロルベンジル、1,2−ジフェノキシエタン、1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エタン、シュウ酸ジ−p−メチルベンジル、シュウ酸ジ−p−クロルベンジル、1,2−ビス(3,4−ジメチルフェニル)エタン、1,3−ビス(2−ナフトキシ)プロパン、メタターフェニル、ジフェニル、ベンゾフェノン等を挙げることができる。
【0030】
感熱記録層において使用する顕色剤、保存性改良剤及び増感剤等の助剤は、染料前駆体を固体分散微粒子の形態で使用する時と同じ方法で水中に分散させ、感熱記録層用塗液の調製の際にこれに混合すればよい。また、これらの助剤を溶剤に溶解し、水溶性高分子化合物を乳化剤として用いて水中に乳化して使用することもできる。また保存性改良剤及び増感剤は、染料前駆体を含有する複合微粒子中に含有させてもよい。
【0031】
感熱記録層の白色度向上、及び画像の均一性向上のため、白色度が高く、平均粒子径が10μm以下の微粒子顔料を感熱記録層に含有させることができる。例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、焼成クレー、シリカ、珪藻土、合成珪酸アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、表面処理された炭酸カルシウムやシリカ等の無機顔料、並びに、尿素−ホルマリン樹脂、スチレン−メタクリル酸共重合樹脂、ポリスチレン樹脂等の有機顔料が使用できる。
【0032】
感熱記録層を構成する他の成分材料としては接着剤を用い、更に必要により、架橋剤、ワックス類、金属石鹸、有色染料、有色顔料、及び蛍光染料等を用いることができる。接着剤としては、例えばポリビニルアルコール及びその誘導体、澱粉及びその誘導体、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド−アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド−アクリル酸エステル−メタアクリル酸エステル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、カゼイン、ゼラチン及びそれらの誘導体等の水溶性高分子材料、並びに、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリブチルメタクリレート、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のエマルジョンやスチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリル系共重合体等の水不溶性重合体のラテックス等を挙げることができる。
【0033】
また、感熱記録層の耐水性を向上させるために、接着剤を硬化させるための架橋剤を感熱記録層中に含有させることができる。例えば、グリオキザール等のアルデヒド系化合物、ポリエチレンイミン等のポリアミン系化合物、エポキシ系化合物、ポリアミド樹脂、メラミン樹脂、グリオキシル酸塩、ジメチロールウレア化合物、アジリジン化合物、ブロックイソシアネート化合物、並びに過硫酸アンモニウムや塩化第二鉄、及び塩化マグネシウム、四硼酸ソーダ、四硼酸カリウム等の無機化合物、または硼酸、硼酸トリエステル、硼素系ポリマー、ヒドラジド化合物等から選ばれる少なくとも1種の架橋剤を感熱記録層の全固形分100質量部に対し、1〜10質量部程度の範囲で用いることが好ましい。
【0034】
感熱記録層に添加されるワックスとしては、パラフィンワックス、カルナバワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリオレフィンワックス、及びポリエチレンワックス等のワックス類、並びに例えばステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド等の高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステル、及びその誘導体等を挙げることができる。
【0035】
感熱記録層に添加される金属石鹸としては、高級脂肪酸多価金属塩、例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、及びオレイン酸亜鉛等を挙げることができる。本発明の感熱記録体を2色感熱記録材料とする場合、低温発色色調に対して補色の関係にある色調を有する有色染料または有色顔料を感熱記録層中に含有させることは、発色像印画(印字)前後の多色感熱記録材料の色調を調節するために好ましく用いられる。また、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、感熱記録層中に、更に撥油剤、消泡剤、粘度調節剤等の各種助剤を添加することができる。
【0036】
更に感熱記録層において、紫外線吸収剤を内包したマイクロカプセルまたは紫外線吸収剤の固体分散微粒子を添加し、耐光性を大幅に向上させることもできる。
【0037】
紫外線吸収剤の具体例としては、例えば、フェニルサリシレート、p−tert−ブチルフェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート等のサリチル酸系紫外線吸収剤、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5スルホベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤を挙げることができる。
【0038】
更には、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−(3”,4”,5”,6”−テトラヒドロフタルイミド−メチル)−5’−メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−ドデシル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−4’−(2”−エチルヘキシル)オキシフェニル〕ベンゾトリアゾール、ポリエチレングリコール(分子量約300)とメチル−3−〔3−tert−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル〕プロピオネートとの縮合物等のベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤、2’−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート等のシアノアクリレート系の紫外線吸収剤等を挙げることができる。勿論、これらに限られるものではなく、また必要に応じて2種以上を併用することもできる。
【0039】
本発明における感熱記録層は、例えば水を分散媒体とし、特定の染料前駆体、顕色剤、特定のフェノール化合物、必要により保存性改良剤、増感剤等を共に、或いは別々に分散した分散液を用いて、必要により顔料、接着剤、架橋剤、その他助剤等を混合撹拌することにより調製された感熱記録層用塗液を、塗布量が乾燥重量で好ましくは2〜12g/m程度、より好ましくは2〜8g/m程度となるように、支持体上に塗布及び乾燥して形成される。
【0040】
本発明における支持体の種類、形状、寸法等は、格別の限定はなく、例えば上質紙(酸性紙、中性紙)、中質紙、コート紙、アート紙、キャストコート紙、グラシン紙、樹脂ラミネート紙、ポリオレフィン系合成紙、合成繊維紙、不織布、合成樹脂フィルム等の他、各種透明支持体等も適宜選択して使用することができる。
【0041】
本発明では、必要に応じて、支持体と感熱記録層との間に、下塗り層を設けることもできる。これにより、記録感度をより高めることができる。下塗り層は、吸油量が70ml/100g以上、特に80〜150ml/100g程度の吸油性顔料、有機中空粒子及び熱膨張性粒子の少なくとも1種、並びにバインダーを含有する下塗り層用塗液を支持体上に塗布及び乾燥して形成される。ここで、吸油量はJIS K 5101に記載の方法に従い、求められる値である。下塗り層に、シリカ、焼成カオリン等の空隙率の高い顔料を使用することにより、感熱記録層の記録感度を上げることができる。また下塗り層中にプラスチックピグメント、中空粒子、発泡体等を含有させることもその上に形成される感熱記録層の記録感度向上に効果がある。下塗り層用塗液の塗布量は、乾燥重量で3〜20g/m程度が好ましく、4〜12g/m程度がより好ましい。
【0042】
下塗り層中のバインダーとしては、感熱記録層に使用できるものの中から適宜選択することができる。これらのバインダーの中でも、バリア性を向上する観点から、澱粉−酢酸ビニルグラフト共重合体、ポリビニルアルコール、スチレン−ブタジエン系ラテックス等が好ましい。
【0043】
本発明では、感熱記録層の上に従来より公知の感熱記録体に使用されているような水溶性高分子材料と顔料を含有する保護層を設けることができる。水溶性高分子材料及び顔料としては、前述の感熱記録層で例示したような材料を使用することができる。この時、架橋剤を添加して、保護層に耐水性を付与することがより望ましい。
【0044】
本発明においては、紫外線吸収剤を内包したマイクロカプセルまたは紫外線吸収剤の固体分散微粒子を保護層に含有することで、耐光性を大幅に向上させることもできる。特に、ポリウレタン−ポリウレア樹脂、或いはアミノアルデヒド樹脂からなる壁膜を有するマイクロカプセルは、耐熱性に優れるため、サーマルヘッドへのスティッキングを防止する目的で感熱記録層中、或いは保護層中に添加される無機顔料の機能をも果たすという優れた付随効果を発揮し、しかも、他の壁膜からなるマイクロカプセルや通常の顔料に比較して屈折率が低く、且つ形状が球形であるため、保護層中に多量に添加しても光の乱反射に起因する濃度低下を招く恐れがないので好ましく用いられる。
【0045】
保護層中に顔料を含有させることにより、サーマルヘッドに対するカス付着、及びスティッキングを防止することができる。顔料の吸油量としては、50ml/100g以上の顔料を使用することが好ましい。顔料の含有割合は、記録濃度を低下させない程度の量、即ち、保護層の全固形量のうち50質量%以下であることが好ましい。
【0046】
保護層は、例えば水を分散媒体として、接着剤、顔料、必要により架橋剤、その他助剤等を混合撹拌することにより調製された保護層用塗液を、塗布量が乾燥重量で好ましくは0.1〜15g/m程度、より好ましくは0.5〜8g/m程度となるように、感熱記録層上に塗布及び乾燥して形成される。
【0047】
本発明では、電子線や紫外線で硬化された樹脂層を感熱記録層上、或いは保護層上に設けることもできる。電子線で硬化され得る樹脂の例としては、特開昭58−177392号公報、特開昭58−177392号公報等に記載がある。このような樹脂中に、非電子線硬化樹脂、顔料、消泡剤、レベリング剤、滑剤、界面活性剤、及び可塑剤等の助剤を適宜添加することもできる。特に、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム等の顔料や、ワックス類、シリコン等の滑剤を添加することは、サーマルヘッドに対 するスティッキング防止に役立つため好ましい。
【0048】
本発明においては、感熱記録体の付加価値を高めるために、これに更に加工を施し、より高い機能を付与した感熱記録体とすることができる。例えば、裏面に粘着剤、再湿接着剤、ディレードタック型の粘着剤等による塗布加工を施すことにより粘着紙、再湿接着紙、ディレードタック紙とすることができる。また、裏面を利用して、これに熱転写用紙、インクジェット用紙、ノーカーボン用紙、静電記録用紙、ゼオグラフィー用紙としての機能を付与し、両面記録が可能な記録紙とすることもできる。勿論、両面感熱記録体とすることもできる。
【0049】
感熱記録層は、染料前駆体と顕色剤を含む感熱記録層用塗液を用いて、また、保護層は、水溶性高分子材料を含む保護層用塗液を用いて、1層ずつ塗布及び乾燥して形成してもよく、2つ以上の層を同時に塗布する同時多層塗布を行ってもよい。ここで同時多層塗布とは、2層以上の層を塗布するに際し、上下層を同時に塗布する方法であり、下層を塗布した後に乾燥することなく上層を塗布する方法を含む。
【0050】
支持体上に前記各層を形成する方法としては、エアナイフ法、ブレード法、グラビア法、ロールコーター法、スプレー法、ディップ法、バー法、カーテン法、スロットダイ法、スライドダイ法及びエクストルージョン法等の既知の塗布方法のいずれを利用してもよい。また、感熱記録体裏面からの油や可塑剤の浸透を抑制したり、またはカールコントロールや帯電防止のためにバック層を設けることもできる。
【0051】
感熱記録面をスーパーカレンダーやソフトカレンダー等の既知の平滑化方法を用いて平滑化処理することは、その記録感度を高めることに効果がある。感熱記録面を、カレンダーの金属ロール及び弾性ロールのいずれに当てて処理してもよい。
【実施例】
【0052】
本発明を実施例により更に詳しく説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。なお、特に断わらない限り、「部」及び「%」は、それぞれ「質量部」及び「質量%」を示す。また、染料前駆体、顕色剤、特定のフェノール化合物、保存性改良剤及び保護層に配合する顔料の粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置SALD−2200((株)島津製作所製)を用いて、体積平均粒子径を測定した。
実施例1、2及び5は参考例である。

【0053】
実施例1
・A液(染料前駆体分散液)の調製
4−[2−(2−オクチルオキシフェニル)−6−フェニル−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミン40部、ポリビニルアルコール(重合度500、鹸化度88%)の10%水溶液40部、及び水20部からなる組成物を、縦型サンドミル(アイメックス(株)製、サンドグラインダー)を用いて、平均粒子径が0.7μmとなるように粉砕、分散して染料前駆体分散液を得た。
【0054】
・B液(顕色剤分散液)の調製
4−ヒドロキシ−4’−イソプロポキシジフェニルスルホン40部、ポリビニルアルコール(重合度500、鹸化度88%)の10%水溶液40部、及び水20部からなる組成物を、ウルトラビスコミルを用いて、平均粒子径が1.5μmとなるよう粉砕、分散して顕色剤分散液を得た。
【0055】
・C液(特定のフェノール化合物分散液)の調製
2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)40部、ポリビニルアルコール(重合度500、鹸化度88%)の10%水溶液40部、及び水20部からなる組成物を、縦型サンドミル(アイメックス(株)製、サンドグラインダー)を用いて、平均粒子径が2.0μmとなるように粉砕、分散して特定のフェノール化合物分散液を得た。
【0056】
・感熱記録層用塗液の調製
A液10部、スチレン−ブタジエン系ラテックス(商品名:L1571、旭化成(株)製、固形分濃度48%)5部、ポリビニルアルコール(商品名:ポバール(登録商標)PVA−110、(株)クラレ製)の10%水溶液25部、B液23部、C液11部、5%界面活性剤水溶液(商品名:SNウェットOT−70、サンノプコ(株)製)2部、及び水17部からなる組成物を混合撹拌して感熱記録層用塗液を得た。
【0057】
・D液(カオリン分散液)の調製
カオリン(商品名:UW−90(登録商標)、BASF社製)80部、ポリアクリル酸ナトリウムの40%水溶液(商品名:アロンT−50、東亞合成(株)製)1部、及び水53部からなる組成物を、サンドミルを用いて体積平均粒子径が1.6μmとなるまで粉砕、分散してカオリン分散液を得た。
【0058】
・保護層用塗液の調製
D液25部、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール(商品名:ゴーセネックス(登録商標)Z−200、日本合成化学工業(株)製、重合度:約1000、鹸化度:約98モル%)の15%水溶液50部、パラフィンワックス(商品名:ハイドリンP−7、中京油脂(株)製、固形分濃度30%)7.5部、5%界面活性剤水溶液(商品名:SNウェットOT−70、サンノプコ(株)製)5部、グリオキザール(日本合成化学工業(株)製、固形分濃度40%)0.3部、及び水12.5部からなる組成物を混合、攪拌して保護層用塗液を得た。
【0059】
・感熱記録体の作製
合成紙(商品名:FPG−80、(株)ユポ・コーポレーション製、厚さ80μm)の片面上に、感熱記録層用塗液、保護層用塗液をそれぞれ乾燥後の塗布量が乾燥後の塗布量が6g/m、3g/mとなるようにメイヤーバーにより塗布し、乾燥させた後、スーパーカレンダー処理を行い、感熱記録体を得た。
【0060】
実施例2
実施例1のC液の調製において、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)に代えて、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)を用いた以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0061】
実施例3
実施例1のC液の調製において、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)の平均粒子径を2.0μmに代えて、1.5μmとなるように粉砕、分散した以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0062】
実施例4
実施例1のC液の調製において、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)の平均粒子径が2.0μmに代えて、0.5μmとなるように粉砕、分散した以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0063】
実施例5
実施例1のA液の調製において、4−[2−(2−オクチルオキシフェニル)−6−フェニル−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミンに代えて、4−[2−(2−ブトキシフェニル)−6−フェニル−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミンを用いた以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0064】
比較例1
実施例1のC液の調製において、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)に代えて、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−o−クレゾール)を用いた以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0065】
比較例2
実施例1のC液の調製において、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)に代えて、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−m−クレゾール)を用いた以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0066】
比較例3
実施例1のC液の調製において、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)に代えて、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)ブタンを用いた以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0067】
比較例4
実施例1の感熱記録層用塗液の調製において、C液11部を用いなかった以外は、実施例1と同様にして感熱記録体を得た。
【0068】
かくして得られた感熱記録体について、以下の評価を行った。その結果は、表1に示す通りであった。
【0069】
(記録濃度)
感熱記録用シミュレーター(商品名:TH−PMD、大倉電機社製)を用い、印加エネルギー0.968mJ/dotの条件にて記録し、x−rite分光濃度計(商品名:x−rite528、色彩測定使用)を用いて記録部のY(イエロー)濃度を測定した。
【0070】
(記録部の耐光保存性)
感熱記録用シミュレーター(商品名:TH−PMD、大倉電機社製)を用い、印加エネルギー0.968mJ/dotの条件にて記録し、記録部を有する感熱記録体を、蛍光灯下5000Luxで100時間処理した後、x−rite分光濃度計(商品名:x−rite528、色彩測定使用)を用いて記録部のY(イエロー)濃度を測定した。下記式で表される処理後の記録部の濃度残存率を求めた。濃度残存率は、処理前の初期濃度に対し、50%以上が好ましい。
濃度残存率(%)=(処理後の記録濃度)/(処理前の記録濃度)×100
【0071】
(耐熱地肌カブリ性)
感熱記録体の未記録部(地肌部)を60℃で24時間処理した後、x−rite分光濃度計(商品名:x−rite528、色彩測定使用)を用いて未記録部のY(イエロー)濃度を測定した。処理後の地肌部の濃度は、0.10以下が好ましい。
【0072】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の黄色の色相域において記録濃度及び記録部の耐光保存性が高く、耐熱地肌カブリ性の良好な感熱記録体は、鮮明な黄色色相を活かした金券、チケット、切符、籤、ラベル、クーポン券等の用途に実用化が期待できるものである。