特許第6384369号(P6384369)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6384369-Sn合金めっき用Sn補給剤 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6384369
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】Sn合金めっき用Sn補給剤
(51)【国際特許分類】
   C25D 21/14 20060101AFI20180827BHJP
   C25D 3/60 20060101ALN20180827BHJP
【FI】
   C25D21/14 E
   C25D21/14 J
   !C25D3/60
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-52192(P2015-52192)
(22)【出願日】2015年3月16日
(65)【公開番号】特開2016-172885(P2016-172885A)
(43)【公開日】2016年9月29日
【審査請求日】2017年9月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】巽 康司
(72)【発明者】
【氏名】峯尾 恭平
(72)【発明者】
【氏名】八田 健志
(72)【発明者】
【氏名】片瀬 琢磨
【審査官】 國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】 特表平06−509143(JP,A)
【文献】 特開2012−237022(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 1/00−21/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化第一錫粉末とめっき用液に溶解可能な結合剤との混合物を圧縮して固めた錠剤であることを特徴とするSn合金めっき用Sn補給剤。
【請求項2】
さらにめっき用液に溶解可能な酸化防止剤が混合されていることを特徴とする請求項1記載のSn合金めっき用Sn補給剤。
【請求項3】
めっき用液に溶融可能な酸素バリア性を有するコーティング膜又はカプセルからなる被覆層に被覆されていることを特徴とする請求項1又は2記載のSn合金めっき用Sn補給剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Sn合金めっき処理に用いて好適なSn補給剤に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の実装には、はんだバンプを利用して半導体素子を回路基板に接続することが多用されており、このはんだバンプとして、近年では、Pbフリー化に伴って、Sn−Pb系合金はんだに代えてSn−Ag系合金等のはんだが使用されるようになってきている。
【0003】
このSn−Ag系合金を電解めっきする場合、アノードにSnを用いると、AgがSnより貴であるために、アノード面にAgが置換析出する。これを避けるため、Pt等の不溶性アノードを用いて電解めっきする場合が多いが、めっき液の濃度を一定に維持するために、めっき液中の金属成分を補給することが必要になる。
このめっき液に金属成分を補給する方法として、金属成分を溶解させた要素液を用いる方法があるが、補給に伴いめっき液量が増加するため、その管理が煩雑である。
【0004】
このため、出願人は、特許文献1において、Sn合金めっき液中のSn成分を酸化第一錫(SnO)粉末として補給することを提案し、さらに特許文献2及び3に示す改良を行った。
特許文献2では、そのSnO粉末に酸化防止剤粉末を混合させ、めっき液への溶解性及び保存安定性を向上させた。酸化防止剤としては、グリセルアルデヒド、フェニルヒドラジン、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム、テトラヒドロフラン・ボラン錯体、ジメチルアミン・ボラン錯体、ジフェニルアミン・ボラン錯体及びピリジン・ボラン錯体からなる群より選ばれた1種又は2種以上を用いている。
【0005】
特許文献3では、SnO粉末を酸化防止剤水溶液で処理することにより、SnO粉末を酸化防止剤で被覆している。その酸化防止剤としては、ヒドロキノン、カテコール、レゾルシノール、ピロガロール、没食子酸、グルコース、ガラクトース、フルクトース、リボース、キシロース、マルトース、ラクトース、硫酸ヒドラジン、カルボヒドラジド及びシアノトリヒドロホウ酸ナトリウムからなる群より選ばれた1種又は2種以上が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−149979号公報
【特許文献2】特開2012−236724号公報
【特許文献3】特開2012−237022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、SnO粉末は、要素液の場合とは異なり、補給によるめっき液の増加を防止することができるが、平均粒径が例えばD50値で5〜15μmのものであるため、めっき液に補給する際等に飛散し易い。特に、クリーンルーム内で使用することは困難である。
【0008】
本発明では、前記事情に鑑みてなされたもので、酸化第一錫粉末の飛散を防止して、取扱い性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のSn合金めっき用Sn補給剤は、酸化第一錫粉末とめっき用液に溶解可能な結合剤との混合物を圧縮して固めた錠剤である。
【0010】
このSn補給剤は、酸化第一錫粉末と結合剤との混合物を圧縮して固めた錠剤であるので、その取扱い時に粉末が飛散することがない。そして、めっき用液に投入されると、結合剤が速やかにめっき用液に溶解して錠剤が崩壊し、個々の酸化第一錫粉末となってめっき用液に溶解する。この酸化第一錫粉末はめっき用液への溶解性に優れており、めっき用液に分散しながら速やかに溶解する。
【0011】
結合剤としては、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、アラビアゴム、デキストラン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、コポリビドン、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルファー化でんぷん、キサンタンガム、デキストリン、ヒプロメローズ、ポピドンの中から選択される一種又は二種以上を用いることができる。
【0012】
本発明のSn合金めっき用Sn補給剤において、さらにめっき用液に溶解可能な酸化防止剤が混合されているとよい。酸化第一錫粉末の酸化が防止されるので、めっき液に供給されたときの溶解性に優れ、良好なめっき性を有し、剥離や異常析出等の欠陥がなく、均質なめっき膜を形成することができる。
【0013】
酸化防止材としては、ヒドロキノン、カテコール、レゾルシノール、ピガロール、没食子酸、グルコース、ガラクトース、フルクトース、リボース、キシロース、マルトース、ラクトース、硫酸ヒドラジン、カルボヒドラジド、シアノトリヒドロホウ酸ナトリウム、グリセルアルデヒド、アラビノースから選択される一種又は二種以上を用いることができる。
なお、上記した結合剤、酸化防止剤の他、製造工程上の利便性により賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、流動化剤等を添加してもよい。
【0014】
本発明のSn合金めっき用Sn補給剤において、めっき用液に溶融可能な酸素バリア性を有する被覆層に被覆されているとよい。被覆層としては、コーティング膜又はカプセルを用いることができる。
【0015】
コーティング膜又はカプセルが酸素バリア性を有することにより、酸化第一錫粉末の酸化を防止することができ、めっき用液への溶解性に優れるSn補給剤を得ることができる。
【0016】
錠剤を被覆するコーティング膜としては、プルラン、クエン酸トリエチル、プロピレングリコール、グリセリン、ヒプメロース、エチルセルロース、ショ糖(グルコース)、ヒプメロースフタル酸エステル、マンニトールから選択される一種又は二種以上を用いることができる。
【0017】
また、これらのうち、グルコース、フルクトース、マルトース、ラクトース、グリセルアルデヒド、アラビノース、ショ糖(グルコース)など、糖類のうちアルデヒド基を持つものは、還元性を示すと共に、結合剤としてもコーティング剤としても使用可能である。
プルランは、酸素バリア性が高いので、コーティング膜を形成するためのコーティング剤として有効である。
【0018】
カプセルとしては、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロースによって形成するとよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、酸化第一錫粉末が飛散することがなく、取扱いが容易であり、また、酸化防止剤を用いることで、酸化第一錫粉末の酸化が防止されているので、めっき用液への溶解性に優れ、良好なめっき性を有し、剥離や異常析出等の欠陥がなく、均質なめっき膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施例の錠剤を用いためっき膜厚の測定箇所を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を説明する。
第1実施形態のSn合金めっき用Sn補給剤は、複数の酸化第一錫粉末(以下、SnO粉末という)とめっき用液に溶融可能な結合剤とを混合して、その混合物を圧縮して固めた錠剤である。
【0022】
SnO粉末としては、平均粒径が5μm〜25μmの範囲であることが好ましい。平均粒径がこの範囲内のSnO粉末は、酸または酸性めっき液への溶解性が極めて高い、すなわち酸または酸性めっき液への易溶性があるからである。具体的には、このSnO粉末は、温度25℃のアルカンスルホン酸水溶液300mlに対して20gを添加して攪拌すると、5秒以内で溶解する。
【0023】
溶解性に優れる酸としては、酸性めっき液の成分であるメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1−プロパンスルホン酸等のアルカンスルホン酸が挙げられる。したがって、補給のためのめっき用液には、これらの酸液が用いられる。
【0024】
このSnO粉末を製造する場合、まず、金属Sn粉末を酸に溶解して、酸性水溶液を調製する。この酸としてはたとえば塩酸が利用できる。次に、この酸性水溶液にアルカリ水溶液を添加し、攪拌して中和させ、水酸化第一錫のスラリーを調製する。このアルカリ水溶液としては、アンモニア水、重炭酸アンモニウム溶液またはこれらの混合液が例示される。この水酸化第一錫のスラリーを調製する中和工程は、窒素ガス雰囲気中で行う。この中和反応は、反応液の液温が30〜50℃で行われ、pHが6〜8の範囲で行うことが好ましい。
【0025】
次いで、調製したスラリーを加熱保持して、水酸化第一錫を熟成し脱水させ、酸化第一錫のスラリーを得る。この脱水工程は、窒素ガス雰囲気中で行う。加熱保持温度は80〜100℃が好ましい。さらに、この酸化第一錫のスラリーを濾過し、得られた酸化第一錫沈殿を水洗した後、真空乾燥により乾燥する。真空乾燥の際の温度は40〜100℃が好ましい。
【0026】
以上の工程を経ることにより、平均粒径が5μm〜25μmである、酸または酸性めっき液への溶解性が極めて高いSnO粉末が製造される。
【0027】
このSnO粉末に結合剤、及び、必要に応じて賦形剤、崩壊剤、潤沢剤、流動化剤等を添加して混合し、その混合物を型により圧縮成形して錠剤を製造する。
【0028】
結合剤としては、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、アラビアゴム、デキストラン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、コポリビドン、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルファー化でんぷん、キサンタンガム、デキストリン、ヒプロメローズ、ポピドンの中から選択される一種又は二種以上を用いることができる。
【0029】
この結合剤において、平均分子量の小さいポリエチレングリコール(例えば、平均分子量200)のように、常温で液体のものは、液体のまま使用が可能であり、平均分子量の大きいポリエチレングリコール(例えば、平均分子量4,000)のように、常温で固体のものは、水やエタノール等の溶媒に溶解させて使用するとよい。
これら結合剤のうち、分子量200以下の低分子のポリエチレングリコールが特にめっき膜の外観を平滑にするので好適である。
【0030】
賦形剤としては乳糖やでんぷん、崩壊剤としてでんぷん、セルロース類、潤沢剤としてワックスやタルク、流動化剤としてタルク、二酸化ケイ素などが用いられる。
【0031】
得られる錠剤は、密度が2.0〜4.5g/cmであり、球形、これを潰した円盤状、レンズ状、又は円柱の両端を球状にしたカプセル状、角形ブロック状等の形状とされる。その圧縮度は、めっき用液に投入されたときに速やかに崩壊する程度であり、保管時等には崩れない程度に形状を保持できればよい。
【0032】
このように製造された錠剤は、Snめっき槽とは別に用意した補給槽に投入される。補給槽には、予めめっき用液として前述した酸液が貯留されており、錠剤を投入して撹拌することにより、結合剤がめっき用液に溶解して、個々のSnO粉末に崩壊する。このSnO粉末は、前述したようにめっき用液への溶解性が極めて高く、速やかにめっき用液に溶解する。
そして、Sn成分が補給されることにより生成されためっき液が補給槽からSnめっき槽に移送され、新たなめっき処理に供される。
【0033】
このめっき液の生成において、SnO粉末は錠剤として提供されるので、粉が飛散することがなく、クリーンルーム内においても環境を汚染することなく使用することができる。そして、めっき用液に投入されると速やかに崩壊して、個々の微細なSnO粉末となってめっき用液に分散しながら溶解し、短時間で均一なめっき液を生成することができる。
【0034】
本発明は、以上の実施形態の他に、以下の各実施形態とすることも可能である。
<第2実施形態>
第2実施形態のSn合金めっき用Sn補給剤は、第1実施形態のSnO粉末とめっき用液に溶解可能な結合剤に、さらにめっき用液に溶解可能な酸化防止剤を加えて混合し、これらの混合物を圧縮して固めた錠剤である。
酸化防止剤としては、ヒドロキノン、カテコール、レゾルシノール、ピガロール、没食子酸、グルコース、ガラクトース、フルクトース、リボース、キシロース、マルトース、ラクトース、硫酸ヒドラジン、カルボヒドラジド、シアノトリヒドロホウ酸ナトリウム、グリセルアルデヒド、アラビノースから選択される一種又は二種以上を用いることができる。
このSn補給剤は、酸化防止剤が混合されているので、保管時等における酸化が防止され、めっき溶液への溶解性を長期に安定して維持することができる。
【0035】
<第3実施形態>
第3実施形態のSn合金めっき用Sn補給剤は、第1実施形態のSnO粉末とめっき用液に溶解可能な結合剤とを圧縮して固めた圧粉体の表面が、めっき用液に溶融可能な酸素バリア性を有するコーティング膜からなる被覆層によって被覆されたものである。
【0036】
このコーティング膜は、めっき用液に溶解可能で、酸素バリア性を有しており、プルラン、クエン酸トリエチル、プロピレングリコール、グリセリン、ヒプメロース、エチルセルロース、ショ糖(グルコース)、ヒプメロースフタル酸エステル、マンニトールから選択される一種又は二種以上を用いることができる。特に、プルランは酸素バリア性が高いため、コーティング膜の材料として有効である。このコーティング膜は、プルラン等の水溶液を圧粉体表面に噴霧等により塗布して乾燥することにより形成される。
【0037】
このSn合金めっき用Sn補給剤は、表面が酸素バリア性を有するコーティング膜により覆われているので、保管時の酸素との接触が遮断されて、酸化防止されており、また、そのコーティング膜及びSnO粉末を錠剤に結合している結合剤ともめっき用液(酸液)への溶解性が良いので、めっき用溶液に速やかに溶解することができる。
【0038】
この第3実施形態の場合、圧粉体に予め酸化防止剤を混合しておいてもよく、被覆層の内側でも酸化防止機能が備えられるので、コーティング剤として使用できる材料の選択肢を広げることができる。
さらに、この被覆層であるコーティング層に酸化防止剤を添加しておいてもよく、酸化防止機能をより高めることができる。
【0039】
<第4実施形態>
第4実施形態のSn合金めっき用Sn補給剤は、被覆層としてコーティング層に代えて、カプセルを適用したものであり、圧粉体の表面が、めっき用液に溶融可能な酸素バリア性を有するカプセルからなる被覆層によって被覆される。
【0040】
カプセルとしては、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等、めっき用液に溶解可能な材料によって形成するとよい。
この錠剤の場合も、保管時等の酸化が防止され、めっき用液に投入してカプセルが溶解すると、瞬時にSnO粉末がめっき用液中に分散するので、均一なめっき液を速やかに生成することができる。
【0041】
また、第3実施形態の場合と同様に、圧粉体に予め酸化防止剤を混合して、二重に酸化防止機能を備えるようにしてもよい。
さらに、カプセルに酸化防止剤を添加しておいてもよく、酸化防止機能をさらに高めることができる。
【実施例】
【0042】
本発明の実施例を説明する。
(実施例1)
ポリエチレングリコール(平均分子量4,000)の粉末を、純水中に50wt%溶解させた水溶液を作製し、この水溶液に対し、平均粒径10μmの酸化第一錫粉末を95wt%混練し、圧縮成型後、乾燥することで密度4.5g/cmの圧粉体を得た。
【0043】
(実施例2)
ポリエチレングリコール(平均分子量200)の液体中にヒドロキノンを10wt%溶解させた溶液を作製し、その溶液に対し、平均粒径5μmの酸化第一錫粉末を90wt%混練し、圧縮成型することで、密度4.2g/cmの圧粉体を得た。
【0044】
(実施例3)
ヒドロキシプロピルセルロースの粉末を2wt%溶解させた水溶液を作製し、この水溶液に対し、平均粒径8μmの酸化第一錫粉末を90wt%混練し、圧縮成型することで、密度4.0g/cmの圧粉体を得た。そして、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを2wt%溶解させたエタノール溶液を作製し、圧粉体表面に噴霧、乾燥させることで、膜厚1μmのコーティング層を形成した。
【0045】
(実施例4)
ポリビニルピロリドン(平均分子量160,000)35%水溶液を用意し、この水溶液に対し、平均粒径20μmの酸化第一錫粉末を98wt%混練し、圧縮成型することで、密度4.4g/cmの圧粉体を得た。この圧粉体をプルランを主成分とするカプセル内に収納した。
【0046】
(実施例5)
ゼラチンを8wt%溶解させた溶液を作製し、この溶液に対し、平均粒径12μmの酸化第一錫粉末を50wt%混練し、圧縮成型後、冷却することで、密度2.0g/cmの圧粉体を得た。そして、グルコースを15wt%、ヒドロキノンスルホン酸カリウムを5wt%溶解させた水溶液を作製し、圧粉体表面に噴霧、乾燥させることで、膜厚100μmのコーティング層を形成した。
【0047】
(実施例6)
プルランを10wt%、カテコールを15wt%溶解させた水溶液を作製し、この水溶液に対し、平均粒径25μmの酸化第一錫粉末を80wt%混練し、圧縮成型することで、密度3.5g/cmの圧粉体を得た。
これらの実施例を表1にまとめた。
【0048】
【表1】
【0049】
これらの実施例について、めっき液への溶解性、めっき膜の外観、膜厚の均一性を評価した。
(溶解性)
温度25℃の100g/Lアルキルスルホン酸水溶液1Lに各実施例の錠剤1gを投入して撹拌した時に、投入から溶解までに要する時間(秒)を調査した。
【0050】
(めっき膜の外観)
めっき液として、Sn2+濃度50g/L、Ag濃度0.5g/L、アルキルスルホン酸濃度150g/L、その他成分として錯体化剤、添加剤を含有した錫銀(Sn−Ag)合金めっき液1Lを建浴した。建浴初期のめっき性確認の為、図1に示すステンレス(SUS)製平板1上に25℃、3ASDの電流密度条件にてめっき試験を行った。図1において、符号は2は電気接点、符号3は、マスキング部である。
そして、めっき液を電解し、1Ah/L電解毎に各実施例の錠剤を用いて錫成分を補給し、10Ah/Lまで電解・補給を繰り返した。
10Ah/L電解・補給後のめっき液を用いて、再度、同条件でSUS平板上に膜厚50μmのめっきを行った。
【0051】
そして、初期めっき皮膜と、10Ah/L電解・補給後のめっき皮膜の外観、および膜厚の均一性の比較評価を行った。
膜厚均一性の評価方法は、図1の符号4で示すめっき被膜部において、平板1上の5箇所の膜厚測定箇所5について、膜厚を蛍光X線膜厚計を用いて測定し、以下の計算式より算出した値より評価を行った。
((最大膜厚−最少膜厚)/平均膜厚)×100
これらの評価結果を表2に示す。
【0052】
【表2】
【0053】
これらの結果より、いずれの錠剤も良好なめっき性を有することが示された。
図1