特許第6384373号(P6384373)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6384373
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】パターン形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/038 20060101AFI20180827BHJP
   G03F 7/039 20060101ALI20180827BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20180827BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20180827BHJP
   C07F 7/00 20060101ALN20180827BHJP
【FI】
   G03F7/038 601
   G03F7/039 601
   G03F7/004
   G03F7/20 503
   G03F7/20 504
   G03F7/20 521
   !C07F7/00 Z
   !C07F7/00 A
【請求項の数】9
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2015-58722(P2015-58722)
(22)【出願日】2015年3月20日
(65)【公開番号】特開2016-177203(P2016-177203A)
(43)【公開日】2016年10月6日
【審査請求日】2017年7月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 美和子
(72)【発明者】
【氏名】中川 恭志
(72)【発明者】
【氏名】成岡 岳彦
(72)【発明者】
【氏名】永井 智樹
【審査官】 塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−216042(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/128313(WO,A1)
【文献】 特開2003−238573(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004 − 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜を形成する膜形成工程、
前記膜を露光する露光工程、及び
該露光工程において露光された膜を現像する現像工程、
を備え、
前記膜が、金属化合物と、下記化学式(1)で表される化合物と、を有機溶媒[I]中で混合することにより得られる生成物と、有機溶媒[II]と、を含有する感放射線性組成物を用いて形成され
前記金属化合物は、下記化学式(3)で表される金属化合物であるパターン形成方法。
【化1】
(式(1)中、R、R’は、各々独立に、水素原子、炭素数2〜20の鎖状または環状のアルキル基、炭素数2〜20の鎖状または環状のアルキルカルボニル基、炭素数6〜20のアリール基、または炭素数6〜20のアリーロキシ基を表し、上記環状のアルキル基、環状のアルキルカルボニル基、アリール基、またはアリーロキシ基における水素原子の一部は置換基で置換されていても良い。)
【化3】
(式(3)中、Mは、チタン原子、アルミニウム原子、ジルコニウム原子、タンタル原子、ハフニウム原子、モリブデン原子またはタングステン原子である。Lは、多座配位子である。aは、1〜3の整数である。aが2以上の場合、複数のLは同一でも異なっていてもよい。Xは、ハロゲン配位子、ヒドロキソ配位子、カルボキシ配位子、アルコキシ配位子、カルボキシレート配位子またはアミド配位子である。bは、2〜6の整数である。複数のXは同一でも異なっていてもよい。但し、a+bは7以下である。)
【請求項2】
前記生成物は、さらに、下記化学式(2)で表される化合物を混合して得られる請求項1記載のパターン形成方法。
【化2】
(式(2)中、Rは、n価の有機基である。Xは、−OH、−COOH、−NCOまたは−NRである。R、Rは同一または異なる水素または1価の有機基である。nは、2〜4の整数である。複数のXは同一でも異なっていてもよい。)
【請求項3】
前記式(1)におけるRおよびR’が水素原子である請求項1または2に記載のパターン形成方法。
【請求項4】
前記感放射線性組成物は、水を含み、
前記有機溶媒[II]の重量が、前記水の重量以上である請求項1からのいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項5】
前記有機溶媒[I]と前記有機溶媒[II]は、同一である請求項1からのいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項6】
前記感放射線性組成物が、感放射線性酸発生剤をさらに含有する請求項1からいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項7】
前記現像工程においてアルカリ溶液で現像し、ネガ型のパターンを形成する請求項1からのいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項8】
前記現像工程において有機溶媒で現像し、ネガ型のパターンを形成する請求項1からのいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項9】
前記露光工程を極端紫外線又は電子線の照射により行う請求項1からのいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リソグラフィーによる微細加工に用いられる感放射線性組成物は、ArFエキシマレーザー光、KrFエキシマレーザー光等の遠紫外線等の電磁波、電子線等の荷電粒子線などの照射により露光部に酸を発生させ、この酸を触媒とする化学反応により露光部と未露光部との現像液に対する溶解速度に差を生じさせ、基板上にレジストパターンを形成する。
【0003】
かかる感放射線性組成物には、加工技術の微細化に伴ってレジスト性能を向上させることが要求される。この要求に対し、組成物に用いられる重合体、酸発生体、その他の成分の種類や分子構造が検討され、さらにその組み合わせについても詳細に検討されている(特開平11−125907号公報、特開平8−146610号公報及び特開2000−298347号公報参照)。
【0004】
現状、レジストパターンの微細化は線幅40nm以下のレベルまで進展しているが、さらに高いレジスト性能(例えば、解像度、感度、ナノエッジラフネス、適度な厚膜化)が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−125907号公報
【特許文献2】特開平8−146610号公報
【特許文献3】特開2000−298347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、高感度で高解像度かつ適度な厚膜化が可能なパターンを形成することができ、組成物の保存安定性も良好であるパターン形成方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、本発明では、
膜を形成する膜形成工程、
前記膜を露光する露光工程、及び
該露光工程において露光された膜を現像する現像工程、
を備え、
前記膜が、金属化合物と、下記化学式(1)で表される化合物と、を有機溶媒[I]中で混合することにより得られる生成物と、有機溶媒[II]と、を含有する感放射線性組成物を用いて形成されるパターン形成方法を提供する。
【化1】
(式(1)中、R、R’は、各々独立に、水素原子、炭素数2〜20の鎖状または環状のアルキル基、炭素数2〜20の鎖状または環状のアルキルカルボニル基、炭素数6〜20のアリール基、または炭素数6〜20のアリーロキシ基を表し、上記環状のアルキル基、環状のアルキルカルボニル基、アリール基、またはアリーロキシ基における水素原子の一部は置換基で置換されていても良い。)
本発明に係るパターン形成方法に用いることができる前記生成物は、さらに、下記化学式(2)で表される化合物を混合して得ることができる。
【化2】
(式(2)中、Rは、n価の有機基である。Xは、−OH、−COOH、−NCOまたは−NRである。R、Rは同一または異なる水素または1価の有機基である。nは、2〜4の整数である。複数のXは同一でも異なっていてもよい。)
本発明では、前記金属化合物として、下記化学式(3)で表される金属化合物を用いることができる。
【化3】
(式(3)中、Mは、チタン原子、アルミニウム原子、ジルコニウム原子、タンタル原子、ハフニウム原子、モリブデン原子またはタングステン原子である。Lは、多座配位子である。aは、1〜3の整数である。aが2以上の場合、複数のLは同一でも異なっていてもよい。Xは、ハロゲン配位子、ヒドロキソ配位子、カルボキシ配位子、アルコキシ配位子、カルボキシレート配位子またはアミド配位子である。bは、2〜6の整数である。複数のXは同一でも異なっていてもよい。但し、a+bは7以下である。)
本発明では、前記式(1)におけるRおよびR’を、水素原子とすることができる。
本発明では、前記感放射線性組成物として、水を含み、前記有機溶媒[II]の重量が、前記水の重量以上である組成物を用いることができる。
本発明では、前記有機溶媒[I]と前記有機溶媒[II]として、同一の有機溶媒を用いることができる。
本発明で用いる前記感放射線性組成物には、感放射線性酸発生剤をさらに含有させることができる。
本発明に係るパターン形成方法では、前記現像工程においてアルカリ溶液で現像し、ネガ型のパターンを形成することができる。
また、前記現像工程において有機溶媒で現像し、ネガ型のパターンを形成することもできる。
本発明に係るパターン形成方法では、前記露光工程を極端紫外線又は電子線の照射により行うことができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高感度で高解像度かつ適度な厚膜化が可能なパターンを形成することができ、組成物の保存安定性も良好であるパターン形成方法を形成することができる。従って、当該パターン形成方法は、今後ますます微細化が進行すると予想される半導体デバイスの加工プロセス等に好適に用いることができる。なお、ここに記載された効果は、必ずしも限定されるものではなく、本技術中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明が、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0010】
<パターン形成方法>
当該パターン形成方法は、膜形成工程、露光工程及び現像工程を備え、前記膜を、金属化合物と、前記化学式(1)で表される化合物と、を有機溶媒[I]中で混合することにより得られる生成物と、有機溶媒[II]と、を含有する感放射線性組成物を用いて形成する方法である。以下、各工程について説明する。
【0011】
[膜形成工程]
膜形成工程では、後述の感放射線性組成物を用い、膜を形成する。膜の形成は、例えば感放射線性組成物を基板上に塗布することにより行うことができる。塗布方法としては特に限定されないが、例えば回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の適宜の塗布手段を採用することができる。基板としては、例えばシリコンウエハ、アルミニウムで被覆されたウエハ等が挙げられる。具体的には、得られる膜が所定の厚さになるように感放射線性組成物を塗布した後、必要に応じてプレベーク(PB)することで塗膜中の溶媒を揮発させる。塗膜の膜厚としては、10nm以上500nm以下が好ましい。PBの温度の下限としては、通常60℃であり、80℃が好ましい。PBの温度の上限としては、通常140℃であり、120℃が好ましい。PBの時間の下限としては、通常5秒であり、10秒が好ましい。PBの時間の上限としては、通常600秒であり、300秒が好ましい。
【0012】
〔感放射線性組成物〕
本発明に係るパターン形成方法で用いられる感放射線性組成物は、有機溶媒[I]中において、金属化合物と、前記化学式(1)で表される化合物と、を混合することにより得られる生成物(以下、「[A]生成物」ともいう)と、有機溶媒[II](以下、「[B]有機溶媒」ともいう)を含有する。また、必要に応じて、[C]感放射線性酸発生剤を含有することもでき、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の任意成分を含有していてもよい。
以下、各成分について、詳細に説明する。
【0013】
[[A]生成物]
[A]生成物は、有機溶媒[I]中において、金属化合物と、前記化学式(1)で表される化合物と、を混合することにより得られる生成物である。より具体的には、[A]生成物は、有機溶媒[I]中において、金属化合物と、過酸化水素とを反応させて得られる生成物である。また、必要に応じて、前記生成物を得る際に、前記化学式(2)で表される化合物(以下、「化合物(2)」ともいう)を混合することもできる。
【0014】
[有機溶媒[I]]
[A]生成物を得るために用いることができる有機溶媒[I]は、本発明の効果を損なわない限り、感放射線性組成物に用いることが可能な公知の有機溶媒を、1種または2種以上自由に選択して用いることができる。例えば、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、炭化水素系溶媒などが挙げられる。
【0015】
アルコール系溶媒としては、例えば
メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、iso−アミルアルコール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、tert−ペンタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、3−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、2,6−ジメチル−4−ヘプタノール、n−デカノール、sec−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec−テトラデシルアルコール、sec−ヘプタデシルアルコール等の1価の脂肪族アルコール;
シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール等の1価の脂環式アルコール;
ベンジルアルコール、フェネチルアルコール等の芳香族アルコール;
3−メトキシブタノール、フルフリルアルコール、ジアセトンアルコール等の1価のエーテル基またはケト基含有アルコール;
エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2,4−ヘプタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等の多価アルコール;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル;
ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等のエーテル基含有アルキレングリコールモノアルキルエーテルなどが挙げられる。
【0016】
ケトン系溶媒としては、例えば、
アセトン、メチルエチルケトン、メチルn−プロピルケトン、メチルn−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチルiso−ブチルケトン、メチルn−ペンチルケトン、エチルn−ブチルケトン、メチルn−ヘキシルケトン、ジiso−ブチルケトン、トリメチルノナノン等の鎖状ケトン;
シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、メチルシクロヘキサノン等の環状ケトン;
アセトフェノン、フェニルエチルケトン等の芳香族ケトン;
アセトニルアセトン等のγ−ジケトンなどが挙げられる。
【0017】
アミド系溶媒としては、例えば、
N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド等の鎖状アミド;
N−メチルピロリドン、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン等の環状アミドなどが挙げられる。
【0018】
エーテル系溶媒としては、例えば、
ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジプロピルエーテル等のジ脂肪族エーテル;
アニソール、フェニルエチルエーテル等の芳香族−脂肪族エーテル;
ジフェニルエーテル等のジ芳香族エーテル;
テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン等の環状エーテルなどが挙げられる。
【0019】
エステル系溶媒としては、例えば、
酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸iso−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n−ノニル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸iso−アミル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のモノカルボン酸エステル;
シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル等のジカルボン酸エステル;
酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピオン酸プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテルのカルボン酸エステル;
酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピオン酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル基含有アルキレングリコールモノアルキルエーテルのカルボン酸エステル;
グリコール酸メチル、グリコール酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル等のヒドロキシ酸エステル;
γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等のラクトン;
ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネートなどが挙げられる。
【0020】
有機溶媒[I]としては、これらの中でも、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、炭化水素系溶媒が好ましく、1価の脂肪族アルコール、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、ヒドロキシ酸エステル、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボン酸エステル、ラクトン、環状エーテル、芳香族炭化水素がより好ましく、炭素数2以上の1価の脂肪族アルコール、炭素数6以上のアルキレングリコールモノアルキルエーテル、炭素数4以上のヒドロキシ酸エステル、炭素数6以上のアルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボン酸エステル、炭素数4以上のラクトン、炭素数4以上の環状エーテル、炭素数7以上の芳香族炭化水素がさらに好ましく、エタノール、n−ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、乳酸エチル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、トルエンが特に好ましい。
【0021】
有機溶媒[I]は、反応後、除去することなくそのまま、感放射線性組成物の[B]有機溶媒(有機溶媒[II])とすることもできる。
【0022】
[金属化合物]
[A]生成物を得るために用いることができる金属化合物は、本発明の効果を損なわない限り、感放射線性組成物に用いることが可能な金属化合物を、1種または2種以上自由に選択して用いることができる。例えば、前記化学式(3)で表される金属化合物を挙げることができる。
【0023】
前記化学式(3)中、前記Lで表される多座配位子は、感放射線性組成物の洗浄溶剤への溶解性を高めるために用いることができる。金属化合物中に用いることができる多座配位子の種類は特に限定されず、感放射線性組成物の金属化合物中に用いることができる多座配位子を、1種または2種以上自由に選択して用いることができる。
【0024】
本発明では、多座配位子として、ヒドロキシ酸エステル、β−ジケトン、β−ケトエステル、β−ジカルボン酸エステルおよびΠ結合を有する炭化水素からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する配位子を選択することが好ましい。多座配位子を前記配位子とすることで、感放射線性組成物の洗浄溶剤除去性をより向上させることができる。これらの化合物は、通常、1個の電子を得てなるアニオンとして、またはそのままの構造で多座配位子を形成する。
【0025】
前記ヒドロキシ酸エステルとしては、ヒドロキシ基を有するカルボン酸エステルであれば特に限定されないが、例えば、下記化学式(4)で表される化合物等が挙げられる。
【0026】
【化4】
【0027】
前記化学式(4)中、Rは、炭素数1〜20の2価の有機基である。Rは、炭素数1〜20の1価の有機基である。
【0028】
前記Rで表される2価の有機基としては、例えば、炭素数1〜20の1価の炭化水素基、この炭化水素基の炭素−炭素間または結合手側の末端に2価のヘテロ原子含有基を含む基(a)、前記炭化水素基および基(a)が有する水素原子の一部または全部を1価のヘテロ原子含有基で置換した基等が挙げられる。
前記1価または2価のヘテロ原子含有基が有するヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、イオウ原子、ケイ素原子、リン原子等が挙げられる。
前記2価のヘテロ原子含有基としては、例えば、−O−、−S−、−CO−、−CS−、−NR’−、これらを組み合わせた基等が挙げられる。R’は、水素原子または炭素数1〜10の1価の炭化水素基である。
前記1価のヘテロ原子含有基としては、例えば、ヒドロキシ基、スルファニル基(−SH)、アミノ基、シアノ基、カルボキシ基、ケト基(=O)等が挙げられる。
前記Rで表される1価の有機基としては、例えば、前記Rの2価の有機基として例示した基に水素原子を1個加えた基等が挙げられる。
【0029】
前記Rとしては2価の炭化水素基が好ましく、アルカンジイル基、シクロアルカンジイル基、アレーンジイル基がより好ましく、メタンジイル基、エタンジイル基、シクロヘキサンジイル基、ベンゼンジイル基がさらに好ましく、エタンジイル基が特に好ましい。
前記Rとしては、1価の炭化水素基が好ましく、アルキル基がより好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基がさらに好ましく、エチル基が特に好ましい。
【0030】
ヒドロキシ酸エステルとしては、例えば、グリコール酸エステル、乳酸エステル、2−ヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸エステル、サリチル酸エステル等が挙げられる。これらの中で、乳酸エステルが好ましく、乳酸エチルがより好ましい。
【0031】
前記β−ジケトンとしては、1,3−ジケト構造を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、下記化学式(5)で表される化合物等が挙げられる。
【0032】
【化5】
【0033】
前記化学式(5)中、RおよびRは、それぞれ独立して、炭素数1〜20の1価の有機基である。Rは、水素原子または炭素数1〜20の1価の有機基である。
【0034】
前記R、RおよびRで表される炭素数1〜20の1価の有機基としては、例えば、前記式(3)のRの1価の有機基として例示したものと同様の基等が挙げられる。
【0035】
前記RおよびRとしては、1価の炭化水素基が好ましく、アルキル基がより好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基がさらに好ましく、メチル基が特に好ましい。
前記Rとしては、水素原子、1価の炭化水素基が好ましく、水素原子、アルキル基がより好ましく、水素原子、メチル基がさらに好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0036】
β−ジケトンとしては、例えば、アセチルアセトン、メチルアセチルアセトン、エチルアセチルアセトン等が挙げられる。これらの中で、アセチルアセトンが好ましい。
【0037】
前記β−ケトエステルとしては、カルボン酸エステルのβ位にケトン性カルボニル基を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、下記化学式(6)で表される化合物等が挙げられる。
【0038】
【化6】
【0039】
前記化学式(6)中、RおよびRは、それぞれ独立して、炭素数1〜20の1価の有機基である。Rは、水素原子または炭素数1〜20の1価の有機基である。
【0040】
前記R、RおよびRで表される炭素数1〜20の1価の有機基としては、例えば、前記式(4)のRの1価の有機基として例示したものと同様の基等が挙げられる。
【0041】
前記Rとしては、1価の炭化水素基、カルボニルオキシ炭化水素基置換炭化水素基が好ましく、アルキル基、アリール基、アルコキシカルボニルアルキル基がより好ましく、メチル基、フェニル基、メトキシカルボニルメチル基がさらに好ましく、メチル基が特に好ましい。
前記Rとしては、1価の炭化水素基が好ましく、アルキル基がより好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基がさらに好ましく、エチル基が特に好ましい。
前記Rとしては、水素原子、1価の炭化水素基が好ましく、水素原子、アルキル基がより好ましく、水素原子、メチル基がさらに好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0042】
β−ケトエステルとしては、例えば、アセト酢酸エステル、α−アルキル置換アセト酢酸エステル、β−ケトペンタン酸エステル、ベンゾイル酢酸エステル、1,3−アセトンジカルボン酸エステル等が挙げられる。これらの中で、アセト酢酸エステルが好ましく、アセト酢酸エチルがより好ましい。
【0043】
前記β−ジカルボン酸エステルとしては、例えば、下記化学式(7)で表される化合物等が挙げられる。
【0044】
【化7】
【0045】
前記化学式(7)中、RおよびRは、それぞれ独立して、炭素数1〜20の1価の有機基である。Rは、水素原子または炭素数1〜20の1価の有機基である。
【0046】
前記R、RおよびRで表される炭素数1〜20の1価の有機基としては、例えば、前記式(4)のRの1価の有機基として例示したものと同様の基等が挙げられる。
【0047】
前記RおよびRとしては、1価の炭化水素基が好ましく、アルキル基がより好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基がさらに好ましく、エチル基が特に好ましい。
前記Rとしては、水素原子、1価の炭化水素基が好ましく、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基がより好ましく、水素原子、アルキル基がさらに好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0048】
β−ジカルボン酸エステルとしては、例えば、マロン酸ジエステル、α−アルキル置換マロン酸ジエステル、α−シクロアルキル置換マロン酸ジエステル、α−アリール置換マロン酸ジエステル等が挙げられる。これらの中で、マロン酸ジエステルが好ましく、マロン酸ジエチルがより好ましい。
【0049】
前記Π結合を有する炭化水素としては、例えば、
エチレン、プロピレン等の鎖状オレフィン;
シクロペンテン、シクロヘキセン、ノルボルネン等の環状オレフィン;
ブタジエン、イソプレン等の鎖状ジエン;
シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン、ペンタメチルシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ノルボルナジエン等の環状ジエン;
ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサメチルベンゼン、ナフタレン、インデン等の芳香族炭化水素などが挙げられる。
これらの中で、環状ジエンが好ましく、シクロペンタジエンがより好ましい。シクロペンタジエンは、通常1個の電子を得て多座配位子であるシクロペンタジエニルアニオンを形成する。
【0050】
前記金属原子に配位する多座配位子の数(前記化学式(3)中の「a」)としては、1個の金属原子に対して、1〜3個であるが、1個または2個が好ましく、1個がより好ましい。なお、この多座配位子の数は、金属原子1個あたりの平均の数を示す。
【0051】
前記化学式(3)中、前記Xで表されるハロゲン配位子としては、例えば、フッ素配位子、塩素配位子、臭素配位子、ヨウ素配位子等が挙げられる。これらの中で、塩素配位子が好ましい。
【0052】
前記Xで表されるアルコキシ配位子としては、例えば、メトキシ配位子(OMe)、エトキシ配位子(OEt)、n−プロポキシ配位子(nOPr)、i−プロポキシ配位子(iOPr)、n−ブトキシ配位子(nOBu)等が挙げられる。これらの中で、エトキシ配位子、i−プロポキシ配位子、n−ブトキシ配位子が好ましい。
【0053】
前記Xで表されるカルボキシレート配位子としては、例えば、ホルメート配位子(OOCH)、アセテート配位子(OOCMe)、プロピオネート配位子(OOCEt)、ブチレート配位子(OOCPr)等が挙げられる。これらの中で、アセテート配位子が好ましい。
【0054】
前記Xで表されるアミド配位子としては、無置換アミド配位子(NH)、メチルアミド配位子(NHMe)、ジメチルアミド配位子(NMe)、ジエチルアミド配位子(NEt)、ジプロピルアミド配位子(NPr)等が挙げられる。これらの中で、ジメチルアミド配位子、ジエチルアミド配位子が好ましい。
【0055】
前記化学式(3)中、前記bとしては、2〜6の整数であり、2〜4の整数が好ましく、2または3がより好ましく、2がさらに好ましい。bを2とすることで、形成される[A]生成物をより直鎖状の構造とすることができ、その結果、感放射線性組成物の洗浄溶剤安定性を向上させることができる。
【0056】
[有機過酸化物]
[A]生成物を得るために用いることができる有機過酸化物は、本発明の効果を損なわない限り、感放射線性組成物に用いることが可能な有機過酸化物を、1種または2種以上自由に選択して用いることができる。前記有機過酸化物は、前記化学式(1)で表される化合物で表すことができる。
【0057】
上記式(1)中のR、R’は、各々独立に、水素原子、炭素数2〜20の鎖状または環状のアルキル基、炭素数2〜20の鎖状または環状のアルキルカルボニル基、炭素数6〜20のアリール基、または炭素数6〜20のアリーロキシ基を表し、上記環状のアルキル基、環状のアルキルカルボニル基、アリール基、またはアリーロキシ基における水素原子の一部は置換基で置換されていても良い。
上記置換基としては、水酸基、シアノ基、炭素数1〜10の鎖状のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基またはこれらの基が組み合わされた基を挙げることができる。
【0058】
上記式(1)で表される化合物としては、例えば、過酸化水素、過酢酸、ジイソブチリルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジラウロイルパーオキサイド、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、クミルパーオキシネオデカノエート、メチルエチルケトンパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、メタクロロ過安息香酸、等を挙げることができる。
これらの中で、過酸化水素が好ましい。
【0059】
[化学式(2)で表される化合物]
[A]生成物を得るためには、前記化学式(2)で表される化合物(以下、「化合物(2)」ともいう)を混合することが好ましい。
化合物(2)の正確な作用効果は定かではないが、前記有機溶媒[I]中において、前記金属化合物と、有機過酸化物とを混合して得られる錯体と反応し有機溶剤への溶解性を高める機能を有すると考えられる。また、前記金属化合物中の金属原子を架橋するように配位する架橋配位子としても、機能すると考えられる。そのため、前記有機溶媒[I]中において、前記金属化合物と、過酸化水素とを混合する際に、化合物(2)を存在させることで、錯体の沈殿を抑制して、前記金属化合物との反応性を向上させるとともに、前記金属化合物に由来する複核錯体を形成させることができる。なお、化合物(2)は、それ自体で架橋配位子として機能させることもできるし、化合物(2)からプロトンが脱離したアニオンの状態で架橋配位子として機能させることができる。
【0060】
前記化学式(2)中、前記Rで表されるn価の有機基としては、例えば、n価の炭化水素基、この炭化水素基の炭素−炭素間にヘテロ原子を有する基を含むn価のヘテロ原子含有基、前記炭化水素基およびヘテロ原子含有基が有する一部または全部の水素原子を置換基で置換したn価の基等が挙げられる。
【0061】
前記n価の炭化水素基としては、例えば、
メタン、エタン、プロパン、ブタン等のアルカン;エテン、プロペン、ブテン、ペンテン等のアルケン;エチン、プロピン、ブチン、ペンチン等のアルキンなどの炭素数1〜30の鎖状炭化水素、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ノルボルナン、アダマンタン等のシクロアルカン、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、ノルボルネン等のシクロアルケンなどの炭素数3〜30の脂環式炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、ナフタレン、メチルナフタレン、ジメチルナフタレン、アントラセン等のアレーンなどの炭素数6〜30の芳香族炭化水素などの炭化水素からn個の水素原子を除いた基等が挙げられる。
【0062】
前記ヘテロ原子を有する基としては、例えば、酸素原子、窒素原子、ケイ素原子、リン原子およびイオウ原子からなる群より選ばれる少なくとも1種を有する基等が挙げられ、−O−、−NH−、−CO−、−S−、これらを組み合わせた基等が挙げられる。これらの中で、−O−が好ましい。
【0063】
前記置換基としては、例えば、
フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;
メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基;
メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;
メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基等のアルコキシカルボニルオキシ基;
ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ベンゾイル基等のアシル基;シアノ基、ニトロ基などが挙げられる。
【0064】
前記nとしては、2〜4が好ましく、2または3がより好ましい。
【0065】
前記式(2)中のXにおける−NRのRおよびRで表される1価の有機基としては、例えば、水素原子、炭素数1〜20の1価の炭化水素基、この炭化水素基の炭素−炭素間にヘテロ原子を有する基を含むヘテロ原子含有基、前記炭化水素基およびヘテロ原子含有基が有する一部または全部の水素原子を置換基で置換した基等が挙げられる。RおよびRとしては、1価の炭化水素基が好ましく、1価の鎖状炭化水素基がより好ましく、アルキル基がさらに好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0066】
前記Rとしては、
nが2のものとして、2価の鎖状炭化水素基、2価の芳香族炭化水素基、2価のヘテロ原子含有基が好ましく、アルカンジイル基、アルケンジイル基、アレーンジイル基、アルカンジイルオキシアルカンジイル基がより好ましく、1,1−エタンジイル基、1,2−エタンジイル基、1,2−プロパンジイル基、ブタンジイル基、ヘキサンジイル基、エテンジイル基、キシレンジイル基、エタンジイルオキシエタンジイル基がさらに好ましい。
nが3のものとして、3価の鎖状炭化水素基が好ましく、アルカントリイル基がより好ましく、1,2,3−プロパントリイル基がさらに好ましい。
nが4のものとして、4価の鎖状炭化水素基が好ましく、アルカンテトライル基がより好ましく、1,2,2,3−プロパンテトライル基、1,2,3,4−ブタンテトライル基がさらに好ましい。
【0067】
化合物(2)としては、例えば、下記化学式(8)で表される化合物(以下、「化合物(8)」ともいう)等が挙げられる。
【0068】
【化8】
(式(8)中、X’は、−COOH、−NCOまたは−NRである。R、Rは同一または異なる水素または1価の有機基である。nは、0〜4の整数である。複数のXは同一でも異なっていてもよい。R1は、n価の有機基である。)
【0069】
前記式(8)中、R、RおよびRは、前記化学式(2)と同義である。
【0070】
化合物(8)としては、例えば、
nが2のものとして、
エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコール等のアルキレングリコール;
ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等のジアルキレングリコール;
シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ノルボルナンジオール、ノルボルナンジメタノール、アダマンタンジオール等のシクロアルキレングリコール;
1,4−ベンゼンジメタノール、2,6−ナフタレンジメタノール等の芳香環含有グリコール;
カテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン等の2価フェノールなどが挙げられ、
nが3のものとして、
グリセリン、1,2,4−ブタントリオール等のアルカントリオール;
1,2,4−シクロヘキサントリオール、1,2,4−シクロヘキサントリメタノール等のシクロアルカントリオール;
1,2,4−ベンゼントリメタノール、2,3,6−ナフタレントリメタノール等の芳香環含有グリコール;
ピロガロール、2,3,6−ナフタレントリオール等の3価フェノール等が挙げられ、
nが4のものとして、
エリスリトール、ペンタエリスリトール等のアルカンテトラオール;
1,2,4,5−シクロヘキサンテトラオール等のシクロアルカンテトラオール;
1,2,4,5−ベンゼンテトラメタノール等の芳香環含有テトラオール;
1,2,4,5−ベンゼンテトラオール等の4価フェノールなどが挙げられる。
これらの中で、nが2または3のものが好ましく、アルキレングリコール、ジアルキレングリコール、アルカントリオールがより好ましく、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリンがさらに好ましい。
【0071】
化合物(8)のX’が、−COOHの化合物としては、例えば、
シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸等の鎖状飽和ジカルボン酸;
マレイン酸、フマル酸等の鎖状不飽和ジカルボン酸;
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸、アダマンタンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;
フタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸; 1,2,3−プロパントリカルボン酸等の鎖状飽和トリカルボン酸;
1,2,3−プロペントリカルボン酸等の鎖状不飽和トリカルボン酸;
1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸等の脂環式トリカルボン酸;
トリメリット酸、2,3,7−ナフタレントリカルボン酸等の芳香族トリカルボン酸; 1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸等の鎖状飽和テトラカルボン酸;
1,2,3,4−ブタジエンテトラカルボン酸等の鎖状不飽和テトラカルボン酸;
1,2,5,6−シクロヘキサンテトラカルボン酸、2,3,5,6−ノルボルナンテトラカルボン酸等の脂環式テトラカルボン酸;
ピロメリット酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸等の芳香族テトラカルボン酸などが挙げられる。
これらの中で、鎖状飽和ジカルボン酸、鎖状不飽和ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸が好ましく、鎖状飽和ジカルボン酸、鎖状不飽和ジカルボン酸がより好ましく、マレイン酸、コハク酸がさらに好ましい。
【0072】
化合物(8)のX’が、−NCOの化合物としては、例えば、
エチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の鎖状ジイソシアネート;
1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート;
トリレンジイソシアネート、1,4−ベンゼンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート; トリメチレントリイソシアネート等の鎖状トリイソシアネート;
1,2,4−シクロヘキサントリイソシアネート等の脂環式トリイソシアネート;
1,2,4−ベンゼントリイソシアネート等の芳香族トリイソシアネート; テトラメチレンテトライソシアネート等の鎖状テトライソシアネート;
1,2,4,5−シクロヘキサンテトライソシアネート等の脂環式テトライソシアネート;
1,2,4,5−ベンゼンテトライソシアネート等の芳香族テトライソシアネートなどが挙げられる。
これらの中で、鎖状ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネートが好ましく、鎖状ジイソシアネートがより好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートがさらに好ましい。
【0073】
化合物(8)のX’が、−NRの化合物としては、例えば、
エチレンジアミン、N−メチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、トリメチレンジアミン、N,N’−ジメチルトリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、N,N’−ジメチルテトラメチレンジアミン等の鎖状ジアミン;
1,4−シクロヘキサンジアミン、1,4−ジ(アミノメチル)シクロヘキサン等の脂環式ジアミン;
1,4−ジアミノベンゼン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン等の芳香族ジアミン; トリアミノプロパン、N,N’,N”−トリメチルトリアミノプロパン等の鎖状トリアミン;
1,2,4−トリアミノシクロヘキサン等の脂環式トリアミン;
1,2,4−トリアミノベンゼン等の芳香族トリアミン; テトラアミノブタン等の鎖状テトラアミン;
1,2,4,5−テトラアミノシクロヘキサン、2,3,5,6−テトラアミノノルボルナン等の脂環式テトラアミン;
1,2,4,5−テトラアミノベンゼン等の芳香族テトラアミンなどが挙げられる。
これらの中で、鎖状ジアミン、脂環式ジアミン、芳香族ジアミンが好ましく、鎖状ジアミンがより好ましく、N,N’−ジメチルエチレンジアミンがさらに好ましい。
【0074】
また、化合物(8)のそれぞれの官能基を複数種有する化合物を、化合物(2)として用いることも可能である。複数種の前記官能基を有する化合物としては、例えば、クエン酸、グリコール酸、乳酸、アミノ酸、トリエタノールアミン、エチレンジアミン二酢酸などを挙げることができる。
【0075】
[[A]生成物の合成方法]
[A]生成物は、前記有機溶媒[I]中において、前記金属化合物と、前記有機過酸化物とを反応させて得ることができる。この際、前記化学式(2)で表される化合物を混合することが好ましい。化合物(2)を混合する場合、その混合の順番は特に限定されず、前記金属化合物と、前記有機過酸化物と、化合物(2)を、順不同で混合することができる。
【0076】
前記反応の温度としては、0℃〜150℃が好ましく、10℃〜120℃がより好ましい。前記反応の時間としては、30分〜24時間が好ましく、1時間〜20時間がより好ましく、2時間〜15時間がさらに好ましい。
【0077】
[[B]有機溶媒(有機溶媒[II])]
[B]有機溶媒としては、[A]生成物を溶解または分散することができるものであれば、感放射線性組成物に用いることが可能な公知の有機溶媒を、1種または2種以上自由に選択して用いることができる。例えば、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、炭化水素系溶媒などが挙げられる。また、[B]有機溶媒としては、前記[A]生成物の合成において反応に用いた有機溶媒を除去せずに、そのまま用いることも可能である。なお、各有機溶媒の具体例は、前述の有機溶媒[I]と同一のため、ここでは説明を割愛する。
【0078】
[B]有機溶媒の含有量としては、感放射線性組成物中における[A]生成物の含有量が、通常、0.1質量%〜50質量%となる含有量であり、0.5質量%〜30質量%となる含有量が好ましく、1質量%〜15質量%となる含有量がより好ましく、2質量%〜10質量%となる含有量がさらに好ましい。感放射線性組成物は、該組成物中の[A]生成物の含有量を前記範囲とすることで、保存安定性および塗布性をより向上させることができる。
【0079】
感放射線性組成物には、水を含有させることも可能である。組成物に水を含有させる場合、[B]有機溶媒の重量が水の重量以上となるように、[B]有機溶媒の含有量を調整することが好ましい。[B]有機溶媒の重量を水の重量以上とすることで、基板上への良好な塗布性を維持することができる。
【0080】
[[C]感放射線性酸発生剤]
感放射線性組成物は、[C]感放射線性酸発生剤をさらに含有していてもよい。[C]感放射線性酸発生剤は、光または熱によって酸を発生する化合物である。感放射線性組成物は、[C]感放射線性酸発生剤をさらに含有することで、レジストパターン形成性およびエッチング選択性を向上させることができる。[C]感放射線性酸発生剤としては、例えば、オニウム塩化合物、N−スルホニルオキシイミド化合物等が挙げられ、その中でもオニウム塩化合物が好ましい。
【0081】
オニウム塩化合物としては、例えば、スルホニウム塩、テトラヒドロチオフェニウム塩、ヨードニウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
【0082】
スルホニウム塩としては、例えば、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム1,1,2,2−テトラフルオロ−6−(1−アダマンタンカルボニロキシ)−ヘキサン−1−スルホネート等が挙げられる。
【0083】
テトラヒドロチオフェニウム塩としては、例えば、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート等が挙げられる。
【0084】
ヨードニウム塩としては、例えば、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ジフェニルヨードニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート等が挙げられる。
【0085】
アンモニウム塩としては、例えば、蟻酸アンモニウム、マレイン酸アンモニウム、フマル酸アンモニウム、フタル酸アンモニウム、マロン酸アンモニウム、コハク酸アンモニウム、酒石酸アンモニウム、リンゴ酸アンモニウム、乳酸アンモニウム、クエン酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、プロピオン酸アンモニウム、ブタン酸アンモニウム、ペンタン酸アンモニウム、ヘキサン酸アンモニウム、ヘプタン酸アンモニウム、オクタン酸アンモニウム、ノナン酸アンモニウム、デカン酸アンモニウム、シュウ酸アンモニウム、アジピン酸アンモニウム、セバシン酸アンモニウム、酪酸アンモニウム、オレイン酸アンモニウム、ステアリン酸アンモニウム、リノール酸アンモニウム、リノレイン酸アンモニウム、サリチル酸アンモニウム、ベンゼンスルホン酸アンモニウム、安息香酸アンモニウム、p−アミノ安息香酸アンモニウム、p−トルエンスルホン酸アンモニウム、メタンスルホン酸アンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸アンモニウム、トリフルオロエタンスルホン酸アンモニウム等が挙げられる。また、前記アンモニウム塩のアンモニウムイオンが、メチルアンモニウムイオン、ジメチルアンモニウムイオン、トリメチルアンモニウムイオン、テトラメチルアンモニウムイオン、エチルアンモニウムイオン、ジエチルアンモニウムイオン、トリエチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、プロピルアンモニウムイオン、ジプロピルアンモニウムイオン、トリプロピルアンモニウムイオン、テトラプロピルアンモニウムイオン、ブチルアンモニウムイオン、ジブチルアンモニウムイオン、トリブチルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン、トリメチルエチルアンモニウムイオン、ジメチルジエチルアンモニウムイオン、ジメチルエチルプロピルアンモニウムイオン、メチルエチルプロピルブチルアンモニウムイオン、エタノールアンモニウムイオン、ジエタノールアンモニウムイオン、トリエタノールアンモニウムイオン等に置換されたアンモニウム塩、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン蟻酸塩、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エンp−トルエンスルホン酸塩等の1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン塩、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン蟻酸塩、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネンp−トルエンスルホン酸塩等の1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン塩等が挙げられる。
【0086】
N−スルホニルオキシイミド化合物としては、例えば、N−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(ノナフルオロ−n−ブタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(パーフルオロ−n−オクタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド等が挙げられる。
【0087】
これらの[C]感放射線性酸発生剤の中で、オニウム塩化合物が好ましく、スルホニウム塩がより好ましく、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1−ジフルオロエタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムカンファースルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムカンファースルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムカンファースルホネート、トリフェニルスルホニウム1,1,2,2−テトラフルオロ−6−(1−アダマンタンカルボニロキシ)−ヘキサン−1−スルホネート等が挙げられる。さらに好ましいスルホニウム塩としてはトリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネートが挙げられる。
【0088】
これらの[C]感放射線性酸発生剤は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。[C]感放射線性酸発生剤の含有量としては、[A]生成物100質量部に対して、0質量部以上10質量部以下が好ましく、0.1質量部以上5質量部以下がより好ましい。[C]感放射線性酸発生剤の含有量を前記範囲とすることで、感放射線性組成物のレジストパターン形成性およびエッチング選択性をより向上させることができる。
【0089】
[その他の任意成分]
感放射線性組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、界面活性剤等のその他の任意成分を含有していてもよい。
【0090】
界面活性剤は、塗布性、ストリエーション等を改良する作用を示す成分である。界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンn−オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンn−ノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のノニオン系界面活性剤の他、以下商品名として、KP341(信越化学工業株式会社製)、ポリフローNo.75、同No.95(以上、共栄社化学株式会社製)、エフトップEF301、同EF303、同EF352(以上、株式会社トーケムプロダクツ製)、メガファックF171、同F173(以上、大日本インキ化学工業株式会社製)、フロラードFC430、同FC431(以上、住友スリーエム株式会社製)、アサヒガードAG710、サーフロンS−382、同SC−101、同SC−102、同SC−103、同SC−104、同SC−105、同SC−106(以上、旭硝子株式会社製)等が挙げられる。
【0091】
界面活性剤は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。また、界面活性剤の配合量は、その目的に応じて適宜決定することができる。
【0092】
[感放射線性組成物の調製方法]
感放射線性組成物は、例えば、[A]生成物および[B]有機溶媒、並びに必要に応じて、水、[C]感放射線性酸発生剤およびその他の任意成分等を所定の割合で混合することにより調製できる。前述の通り、[B]有機溶媒として、[A]生成物の合成に用いた有機溶媒[I]をそのまま用いて、感放射線性組成物を調製してもよい。感放射線性組成物は、通常、その使用に際して溶媒に溶解した後、例えば孔径0.2μm程度のフィルターでろ過することによって調製される。
【0093】
以上説明した感放射線性組成物は、アルカリ溶液にも有機溶媒にも可溶である。そのため、後述する現像工程では、アルカリ溶液に加え、有機溶媒での現像も可能である。
また、本発明に係るパターン形成方法では、前述した感放射線性組成物を用いているため、組成物の保存安定性が高く、また高感度化、高解像度化および適度な厚膜化が可能である。
【0094】
[露光工程]
露光工程では、上記膜形成工程で形成された膜を露光する。この露光は、場合によっては、水等の液浸媒体を介し、所定のパターンを有するマスクを介して放射線を照射することにより行う。上記放射線としては、例えば可視光線、紫外線、遠紫外線、極端紫外線(EUV;波長13.5nm)、X線、γ線等の電磁波;電子線、α線等の荷電粒子線等から適宜選択される。これらの中で、露光により金属から二次電子が放出される放射線が好ましく、EUV及び電子線がより好ましい。
【0095】
また、露光後にポストエクスポージャーベーク(PEB)を行ってもよい。PEBの温度の下限としては、通常50℃であり、80℃が好ましい。PEBの温度の上限としては、通常180℃であり、130℃が好ましい。PEBの時間の下限としては、通常5秒であり、10秒が好ましい。PEBの時間の上限としては、通常600秒であり、300秒が好ましい。
【0096】
本発明においては、感放射線性組成物の潜在能力を最大限に引き出すため、例えば、使用される基板上に有機系又は無機系の反射防止膜を形成しておくこともできる。また、環境雰囲気中に含まれる塩基性不純物等の影響を防止するため、例えば、塗膜上に保護膜を設けることもできる。また、液浸露光を行う場合は、液浸媒体と膜との直接的な接触を避けるため、例えば、膜上に液浸用保護膜を設けてもよい。
【0097】
[現像工程]
本工程では、上記露光工程で露光された膜を現像する。この現像に用いる現像液としては、アルカリ溶液及び有機溶媒が挙げられる。従って、本工程では、アルカリ溶液で現像し、ネガ型のパターンを形成することができる。また、有機溶媒で現像し、ネガ型のパターンを形成することも可能である。
【0098】
上記アルカリ溶液としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、けい酸ナトリウム、メタけい酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、エチルジメチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネン等のアルカリ性化合物の少なくとも1種を溶解したアルカリ性水溶液等が挙げられる。
【0099】
上記有機溶媒として、例えば上記感放射線性組成物の有機溶媒[I]として例示した溶媒と同様のもの等が挙げられる。これらの中で、エステル系溶媒が好ましく、酢酸ブチルがより好ましい。
【0100】
これらの現像液は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、現像後は、水等で洗浄し、乾燥することが一般的である。
【実施例】
【0101】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0102】
<[A]生成物の合成>
[A]生成物の合成に用いた金属化合物は以下の通りである。
M−1:チタン(IV)ジイソプロポキシビス(2,4−ペンタンジオナート)(75質量%濃度の2−プロパノール溶液)
M−2:アルミニウム(III)ジイソプロポキシエチルアセトアセテート
M−3:ジルコニウム(IV)・ジn−ブトキシド・ビス(2,4−ペンタンジオナート)(60質量%濃度のブタノール溶液)
M−4:タンタル(V)テトラエトキシ(2,4−ペンタンジオナート)
M−5:ビス(シクロペンタジエニル)タングステン(IV)ジクロリド
M−6:ハフニウム(IV)テトラt-ブトキシド
M−7:ハフニウム(IV)モノオキシドジクロリド(HfOCl)・8水和物
【0103】
[合成例1]
前記化合物(M−1)10.0g(錯体質量:7.5g、20.6mmol)をプロピレングリコールモノエチルエーテル65.0gに溶解し、よく撹拌してからこの溶液に室温で30%過酸化水素水0.75g(過酸化水素として0.23g、6.6mmol)を10分かけて滴下した。次いで、室温で1時間反応を行った後にクエン酸7.9g(41.2mmol)を加えた後、室温で2時間撹拌し、溶液(S−1)を得た。
【0104】
[合成例2]
前記化合物(M−2)4.9g(18mmol)を2−プロパノール40.2gに溶解し、よく撹拌してからこの溶液に室温で無水マレイン酸1.8g(18mmol)と水7.2gの混合液を加えて30分撹拌した。次いで30%過酸化水素水1.02g(過酸化水素として0.31g、9.0mmol)を室温で10分かけて滴下した。室温で3時間反応させた後、この溶液に酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル42.2gを追加し溶液(S−2)を得た。
【0105】
[合成例3]
前記化合物(M−3)16.7g(錯体質量:10.0g、23mmol)を1−ブタノール99.6gに溶解し、よく撹拌してからこの溶液に30%過酸化水素水1.3g(過酸化水素として0.39g、11.5mmol)を室温で10分かけて滴下した。次いで60℃で1時間反応を行った後に室温で冷却し、さらにジエチレングリコール1.2g(11.5mmol)を加えた後、室温で2時間撹拌し、溶液(S−3)を得た。
【0106】
[合成例4]
前記化合物(M−4)4.6g(10mmol)をジブチルエーテル44.32gに溶解し、よく撹拌してからこの溶液に30%過酸化水素水1.1g(過酸化水素として0.34g、10mmol)を室温で10分かけて滴下した。次いで60℃で1時間反応を行った後に室温で冷却し、さらにエチレンジアミン0.30g(5.0mmol)を加えた後、室温で1時間撹拌し、溶液(S−4)を得た。
【0107】
[合成例5]
前記化合物(M−5)3.8g(10mmol)を乳酸エチル44.42gに溶解し、よく撹拌してからこの溶液に30%過酸化水素水0.57g(過酸化水素として0.17g、5.0mmol)を室温で10分かけて滴下した。次いで室温で2時間反応を行った後、さらに乳酸0.90g(10mmol)を加えた後、室温で1時間撹拌し溶液(S−5)を得た。
【0108】
[合成例6]
前記合成例1において、クエン酸を添加しなかった以外は、合成例1と同様の操作を行い、溶液(S−6)を得た。
【0109】
[合成例7]
前記化合物(M−6)10.0gを20mlのテトラヒドロフランに溶解し、ここに6.0gの2,2−ジメチル―3,5−ヘキサンジオンと50mlのテトラヒドロフランを溶解させた液を室温で添加した。その後1時間還流させた後、溶媒を減圧除去して下記化学式(M−8)で表される化合物を得た。この化合物(M−8)(錯体質量:7.5g、20.6mmol)をプロピレングリコールモノエチルエーテル65.0gに溶解し、よく撹拌してからこの溶液に室温で30%過酸化水素水0.75g(過酸化水素として0.23g、6.6mmol)を10分かけて滴下した。次いで、室温で1時間反応を行った後にクエン酸7.9g(41.2mmol)を加えた後、室温で2時間撹拌し、溶液(S−7)を得た。
【0110】
【化9】
【0111】
[比較合成例1]
前記合成例1において、30%過酸化水素水0.75gを加えるところを純水0.52gとした以外は、合成例1と同様の操作を行い、溶液(CS−1)を得た。
【0112】
[比較合成例2]
前記化合物(M−7)の1.0M水溶液10ml(10.0mmol)に30%過酸化水素水3.42g(過酸化水素として1.05g、30.0mmol)を10分かけて滴下した。ここに1.0Mの硫酸水溶液を7ml(7.0mmol)加えた後、超純水を添加することで合計66mlの溶液(CS−2:0.15M相当)および合計20mlの溶液(CS−3:0.5M相当)を調製した。
【0113】
<感放射線性組成物の調製>
感放射線性組成物の調製に用いた[C]感放射線性酸発生剤は、以下の通りである。
C−1:トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート
【0114】
[調製例1]
前記で得られた[A]生成物の溶液(S−1)を、孔径0.2μmのフィルターでろ過して、感放射線性組成物(R−1)を調製した。なお膜厚を薄くする必要がある場合は、合成例で用いた溶剤(複数ある場合は沸点の高いもの)で適宜希釈した後、孔径0.2μmのフィルターでろ過した。
【0115】
[調製例2〜7および比較調製例1]
下記表1に示す種類の[A]生成物の溶液を用い、必要に応じて、表1に示す種類および量の[C]感放射線性酸発生剤を用いた以外は調整例1と同様に操作して、感放射線性組成物(R−2)〜(R−7)および(CR−1)を調製した。なお、「−」は該当する成分を使用しなかったことを示す。また、[C]感放射線性酸発生剤の使用量は、[A]生成物の溶液100質量部に対する使用量(質量部)である。
【0116】
[比較調製例2および3]
上記比較合成例で挙げたCS−2およびCS−3をそのまま孔径0.2μmのフィルターでろ過して、感放射線性組成物(CR−2)および(CR−3)とした。
【0117】
【表1】
【0118】
<レジストパターンの形成>
[実施例1]
東京エレクトロン社の「クリーントラックACT−8」内で、シリコンウエハ上に上記実施例1で調製した感放射線性組成物(R−1)をスピンコートした後、80℃、60秒の条件でPBを行い、膜厚50nmのレジスト膜を形成した。続いて、真空紫外光露光装置(NA:0.3、ダイポール照明)を用いてパターニングを行った。その後、上記クリーントラックACT−8内で、酢酸ブチル(AcOBu)を用い、23℃で1分間、パドル法により現像した後、乾燥して、ネガ型レジストパターンを形成した。このようにして形成されたレジストパターンについて、下記に示す感度、解像度についての各評価を行った。その評価結果を表2に示す。
【0119】
[実施例2〜7、比較例1〜4]
表2に記載した感放射線性組成物、現像液を変更した以外は、実施例1と同様に操作し、各レジストパターンを形成した。またこの際に得られたPB後の膜厚も表2に記載した。このようにして形成されたネガ型レジストパターンについて、下記に示す感度、解像度についての各評価を行った。その評価結果を表2に示す。
【0120】
[感度(mJ/cm)]
真空紫外線によるパターニングで、線幅30nmのライン部と、隣り合うライン部によって形成される間隔が30nmのスペース部とからなるライン・アンド・スペースパターン(1L1S)を1対1の線幅に形成する露光量を最適露光量とし、この最適露光量を感度(mJ/cm)とした。
【0121】
[限界解像度(nm)]
真空紫外線によるパターニングで、ライン部とスペース部とからなるライン・アンド・スペースパターン(1L1S)で1nm毎に線幅を変えてSEM像を観察した際の、限界下限解像度を求めた。
【0122】
[保存安定性評価]
上記実施例で得た感放射線性組成物を室温で1週間保管後に、真空紫外線によるパターニングで、レジストパターン形成試験を実施し、線幅30nmのライン・アンド・スペースパターン(1L1S)を1対1の線幅に形成する露光量の変化が保管開始前と比較して5%未満であるものを「AA(極めて良好)」、保管開始前と比較して5%以上10%以下のものを「A(良好)」、10%を超える場合を「B(不良)」、さらに30nmのライン・アンド・スペースパターン(1L1S)を解像できなかったもの(限界解像度が30nmよりも線幅が大きかった)を「C(解像不可)」とした。
【0123】
【表2】
【0124】
表2の真空紫外光露光装置によるパターニングの結果から、本発明の感放射線性組成物を用いたパターニング方法を適用することで、高解像度でのパターニングが可能であり、また組成物の保存安定性も良好であることが認められた。また本発明によるパターニング方法によればレジストの高感度化に有効な有機溶剤での現像も可能であることが確認された。
【0125】
一方過酸化水素を作用させなかった組成物(比較例1)では30nmのLSを実現するのにかなりの紫外線露光量が必要であり、また薬液の保存安定性も不良であった。また無機成分のみで構成された過酸化物による感放射線性組成物を用いた場合(比較例2〜4)においては、(1)有機溶剤での現像が不可(2)保存安定性が非常に悪い(3)レジストをマスクにしてエッチングする際に有効となる厚膜化が困難であることが判明し、本発明の有効性が認められる結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明は、現像液の種類に関わらず、高感度で高解像度かつ適度な厚膜化が可能なパターンを形成することができる。また組成物の保存安定性も良好である。従って、当該パターン形成方法は、今後ますます微細化が進行すると予想される半導体デバイスの加工プロセス等に好適に用いることができる。