【実施例】
【0018】
図1に示すように、液面位置検出装置10は、容器70に貯留された液体80の液面81の位置を検出する装置である。容器70は、例えば燃料タンクであり、液体80は、例えばガソリンである。ガソリンの使用、給油に伴い、液面81の位置は上下に移動する。なお、容器70は燃料タンクに限定されず、液体80を貯留できれば一般的な容器であってもよい。また、液体80はガソリンに限定されず、アルコール等の燃料や水等でもよく、いずれの液体であっても差し支えない。
【0019】
液面位置検出装置10は、液体80に浸るように設けられ超音波を伝搬する伝搬体20と、この伝搬体20に設けられ伝搬体20に振動を与えるとともに反射した超音波を検出する圧電素子51が設けられた振動発生検出手段50と、圧電素子51で検出された信号から超音波の反射時間を計測して液面位置を算出する位置検出手段60とを備える。
【0020】
伝搬体20の上端部には、圧電素子51を収納する素子収納部30が設けられている。素子収納部30は、この素子収納部30の収納空間31と連通するように形成され回路基板41を収納する基板収納部40を備える。基板収納部40は鍔部42を一体的に備え、この鍔部42は締結部材43によって容器70に締結されている。
【0021】
伝搬体20は、樹脂材料からなる。樹脂材料は、例えばポリフェニレンスルファイド(PPS)である。伝搬体20の材料をPPSとすることで、超音波(表面波W1、内部伝搬波W2)を良好に伝搬することができる。なお、樹脂材料はPPSに限定されず、超音波を伝搬できれば他の一般的な樹脂であっても差し支えない。
【0022】
また、伝搬体20は、上下に長い四角柱形状であり、その途中に切り欠いた溝21を備えている。この溝21は、内部伝搬波を反射する内部伝搬波反射部22を備えている。なお、実施例では伝搬体20の形状を四角柱としたが、これに限定されず、円柱、三角柱等、上下に長い柱形状であれば他の形状であっても差し支えない。
【0023】
振動発生検出手段50は、圧電素子51と、圧電素子51を駆動させる信号を送信する回路と、圧電素子で検出した信号を受信する回路とから構成され、これらの回路は回路基板41に実装されている。
【0024】
圧電素子51は、伝搬体20に表面波W1と内部伝搬波W2を発生させるとともに、表面波W1と内部伝搬波W2を検出するために、伝搬体20の端部まで溝21が設けられていない表面(表面そのものと表面から伝搬体20の厚さよりも短い所定の深さまでの領域とを含む)の主面23から圧電素子51の一部が迫り出すように配置されている。圧電素子51は、伝搬体20に振動を与え、伝搬体20の主面23に表面波W1を発生させるとともに、伝搬体20の内部に内部伝搬波W2を発生させる。さらに圧電素子51は、主面23の下端24で反射された表面波W1と、内部伝搬波反射部22で反射された内部伝搬波W2とを検出し電圧に変換する。なお、表面波W1としては、レイリー波、漏洩レイリー波及び横波型弾性表面波(SH−SAW)等があり、内部伝搬波W2としては、横波がある。
【0025】
振動発生では、位置検出手段60が所定周期で出力する駆動信号によって、振動発生検出手段50の圧電素子51に電圧が加えられ、圧電素子51が駆動する。結果、上述した表面波W1及び内部伝搬波W2を発生する。
【0026】
振動検出では、反射した表面波W1及び反射した内部伝搬波W2によって、圧電素子51から出力信号が出力される。結果、出力信号が位置検出手段60に送られ、液面の位置が算出される。
【0027】
なお、実施例では、位置検出手段60を回路基板41に実装された回路としたが、これに限定されず、位置検出手段60を基板収納部40の外部に配置された外部装置に設けても差し支えない。
【0028】
次に、液面81の高さを算出する基本原理を説明する。概略を説明すると、液面81の高さは、表面波W1の伝搬時間T1と内部伝搬波W2の伝搬時間T2から求められる。以下、詳細に説明する。
【0029】
表面波W1の伝搬時間T1は、位置検出手段60が駆動信号を出力した時点t1から表面波W1が発生し、伝搬体20の下端24で反射した表面波W1を圧電素子51で検出して位置検出手段60が出力信号を受信した時点t2までの時間である。
【0030】
内部伝搬波W2の伝搬時間T2は、位置検出手段60が駆動信号を出力した時点t1から内部伝搬波W2が発生し、伝搬体20の内部伝搬波反射部22で反射した内部伝搬波W2を圧電素子51で検出して位置検出手段60が出力信号を受信した時点t3までの時間である。
【0031】
表面波W1は、伝搬体20が液体80に浸かった部分では、伝搬体20(主面23)を進む速度が遅くなる。このため、容器70内の液面が高い位置にあるほど、T1が大きくなる。内部伝搬波W2は、伝搬体20の内部を進むため、伝搬体20が液体80に浸かっている部分に影響されずにT2の値が定まる。
【0032】
内部伝搬波W2の伝搬時間T2から、位置検出手段60のメモリ等に記憶した温度条件を参照し、伝搬体20の温度を求める。伝搬体20の温度に基づいて、表面波W1の伝搬時間T1の温度補正を行う。伝搬時間T1の温度補正を行った値から、位置検出手段60のメモリ等に記憶した情報を参照し、液面81の高さを算出する。
なお、実施例では温度補正の式については言及しないが、予め決められた補正係数等を考慮して位置検出手段60によって演算し、温度補正を行うものとする。
【0033】
次に、液面位置検出装置10の要部について説明する。
図2〜
図4に示すように、液面位置検出装置10は、上下に長い伝搬体20と、圧電素子51が収納された素子収納部30と、回路基板41が収納された基板収納部40とを備える。
【0034】
伝搬体20は、上部に素子収納部30を一体的に備える。素子収納部30は、側面視で伝搬体20の主面23から一部が迫り出すように形成された底面部32と、この底面部32から垂直方向に延設された壁部33とを有する。圧電素子51は、側面視で主面23から一部が迫り出すとともに、底面部32の上面に密着し、底面部32を介して主面23の垂直方向に振動を与えるように配置されている。
【0035】
壁部33のうち、迫り出し側の壁部33aは、主面23よりも外側(図左側)に位置する。壁部33のうち、迫り出し側と反対側の壁部33bは、伝搬体20の主面23と反対側の裏面25よりも内側(図左側)に位置する。圧電素子51の迫り出し側の端部51aは、主面23よりも外側(図左側)に位置する。圧電素子51の迫り出し側と反対側の端部51bは、反対側の裏面25よりも内側(図左側)に位置する。圧電素子51の端部51bが裏面25から迫り出さないように配置することで、裏面25にノイズとなる表面波が発生することを防止し、表面波W1を主面23側にのみ良好に発生させることができる。なお、圧電素子51の端部51bが裏面25から迫り出さないように配置されれば、壁部33の迫り出し側と反対側の壁部33bが、伝搬体20の裏面25よりも外側(図右側)に位置してもよい。
【0036】
底面部32及び圧電素子51は、主面23から一部が迫り出す領域S1を有する。このため、圧電素子51の中央部を主面23の延長線上に配置することができ、表面波W1を良好に発生させることができる。さらに、伝搬体20は樹脂材料からなるので、液体接触部分を伝搬する表面波W1の速度と露出部分を伝搬する表面波W1の速度の差を大きくし、液面81(
図1参照)の検出精度を向上させることができる。
【0037】
圧電素子51は、例えば、主面23と垂直に振動するすべり素子からなる。圧電素子51の振動は、底面部32を介して伝搬体20の主面23に付与され、主面23に表面波W1が発生する。また、伝搬体20の内部には、内部伝搬波W2が発生する。圧電素子51は、主面23の下端24(
図1参照)で反射した表面波W1及び内部伝搬波反射部22(
図1参照)で反射した内部伝搬波22を検出する検出部としての機能も有する。
【0038】
また、伝搬体20の上部に素子収納部30が一体的に設けられているので、圧電素子51を密閉された素子収納部30の収納空間31内に配置して圧電素子51への液体の接触を防止できる。
【0039】
素子収納部30の収納空間31には、底面部32の上面にオイル、グリス、接着剤等からなり空気層を遮断するための干渉部材34が設けられ、この干渉部材34上に圧電素子51が設けられ、この圧電素子51を覆うようにゴム等の弾性部材35が設けられ、弾性部材35上にスペーサー36が設けられる。このスペーサー36は、押圧部材37で圧電素子51側に付勢される。
【0040】
押圧部材37は、板ばね部材であり、素子収納部30の上部38に接着されている。なお、素子収納部30に対する押圧部材37の固定方法は、接着に限定されず、ねじ、フック等によって固定する方法であっても差し支えない。また、押圧部材37は、板ばね部材に限定されず、弾性部材であればコイルばね、トーションばね等でもよく、スペーサー36を押し圧できれば他の弾性部材であってもよい。
【0041】
圧電素子51は、伝搬体20の上面(素子収納部30の底面部32)に振動面が接触している。押圧部材37で弾性部材35を直接押すのではなく、スペーサー36を介在させてスペーサー36を押すことで、圧電素子51を均一に押圧することができる。
【0042】
スペーサー36が押圧部材37で付勢されることで、圧電素子51が底面部32に押圧されるので、周囲環境の温度変化によって生じる圧電素子51の取付部の精度誤差を吸収し、圧電素子51を底面部32に隙間なく押しつけることができる。このため、周囲環境の温度が変化した場合でも、伝搬体20からの表面波W1を圧電素子51で検出し、液面位置の検出精度を向上させることができる。
【0043】
振動発生検出手段50は、圧電素子51と、図示せぬ送信回路及び受信回路を実装した回路基板41とを備え、圧電素子51から延びたリードピン52が回路基板41に接続されている。弾性部材35には、リードピン52を回避する切り欠き35aが形成され、スペーサー36には、リードピン52を回避する切り欠き36aが形成されている。
【0044】
基板収納部40は、樹脂材料からなる。樹脂材料は、例えばポリアセタール(POM)である。基板収納部40及び鍔部42を構成する材料をポリアセタール(POM)とすることで、基板収納部40及び鍔部42の材料を素子収納部30の材料よりも安価で靭性が高い材料とすることができる。結果、装置全体を安価にし、且つ容器70への取付強度を向上させることができる。
【0045】
基板収納部40は、素子収納部30の収納空間31と連通し、回路基板41を収納するための収納空間44を備える。基板収納部40の開口部は、図示せぬシール部材を介してカバー部材45によって覆われている。このため、素子収納部30の開口部もカバー部材45で密閉される状態となる。カバー部材45は、締結部材45aによって基板収納部40に締結されている。なお、カバー部材45を基板収納部40に接着しても差し支えない。
【0046】
容器70の上面と基板収納部40との間は、シール部材46によってシールされている。シール部材46は、Oリングであるが、シールできれば他の部材であってもよい。また、素子収納部30の上部38には、係止片39が設けられている。
【0047】
図2、
図5に示すように、基板収納部40には、組み付け用切り欠き部47が形成されている。素子収納部30は、素子収納部30の係止片39を組み付け用切り欠き部47に通して回転することで、基板収納部40へ組み付けられる。素子収納部30の下部にはフランジ部39aが形成されており、フランジ部39aと基板収納部40との間のシール部材48によってシールされる。シール部材48は、Oリングである。基板収納部40は、係止片39とOリング48によって挟持して固定された状態となる。
【0048】
伝搬体20には、圧電素子51を配置するための素子収納部30が一体的に成形され、素子収納部30には、シール部材48を介して回路基板41を収納する基板収納部40が備えられ、基板収納部40の開口部がカバー部材45で覆われる。このため、圧電素子51が密閉された素子収納部30の収納空間31に配置されることになり、気密性を確保し、圧電素子51及び回路基板41への液体の接触を防止することができる。
【0049】
尚、実施例では、基板収納部40は素子収納部30と別体で構成したが、基板収納部40を素子収納部30と一体に成形しても差し支えない。また、実施例では、伝搬体20、素子収納部30及び基板収納部40を、容器70の上方から取り付けるものとしたが、容器70の底面から、上下を逆にして伝搬体20、素子収納部30及び基板収納部40を取り付けてもよく、同様の効果を得ることができる。