(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数のシリンダが上下方向に並んで配置されたシリンダブロックと、前記シリンダブロックのシリンダと協働してそれぞれの燃焼室を形成すると共にこれらの燃焼室に接続される排気ポートが形成されたシリンダヘッドとを含む4サイクルエンジンと、
前記4サイクルエンジンを支持して下部ユニットと連結するエンジンホルダと、
複数の前記排気ポートが接続される複数の第1開口を備えて上下方向に延びる第1通路と、この第1通路の下方に配置されて下端部に前記エンジンホルダに形成された第3通路に接続される第2開口を備えた第2通路とが設けられた排気マニホールドとを備え、
前記排気マニホールドは、前記第1通路及び前記第2通路が一体に形成される一方、前記シリンダヘッド及び前記シリンダブロックに対して別体に成形されて着脱可能に形成され、
前記排気マニホールドは、前記第1通路及び前記第2通路の間を区画壁で区画し、前記第1通路の上部から分岐して前記第2通路に連通して内部に排気浄化触媒を備えた第4通路を設けたことを特徴とする船外機。
前記排気マニホールドの第4通路は前記第1通路に沿って上下方向に延び、前記第1通路の前方の前記シリンダブロック側方又は後方の前記シリンダヘッド側方あるいは両側に並べて配置したことを特徴とする請求項1に記載の船外機。
前記排気マニホールドの第4通路は、前記第1通路及び前記第2通路で形成される排気マニホールド本体に対して着脱可能に形成され、中間部に前記第1通路側及び前記第2通路側に分割可能な接合部が形成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の船外機。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づき、本発明による船外機における好適な実施の形態を説明する。
図1は、本発明に係る船外機100の概略構成例を示す左側面図である。この場合、船外機100は図示のように、その前部側にて船体の後尾板Pに固定されている。なお、以下の説明中で各図において必要に応じて、船外機100の前方を矢印Frにより、後方を矢印Rrにより示し、また船外機100の側方右側を矢印Rにより、側方左側を矢印Lによりそれぞれ示す。
【0016】
船外機100の全体構成において、上部から下部へアッパユニット101、ミッドユニット102及びロアユニット(下部ユニット)103が順に配置構成される。アッパユニット101において、エンジン10はエンジンホルダ11を介して、そのクランクシャフト12が鉛直方向を向くように縦置きに搭載支持される。エンジン10として、例えばV型多気筒エンジンあるいは直列多気筒エンジン等を採用可能である。クランクシャフト12を支持するクランクケース13に対して、シリンダブロック14、シリンダヘッド15及びシリンダヘッドカバー16が順次結合する。なお、エンジン10はエンジンカバー101Aによって覆われる。
【0017】
ミッドユニット102は、アッパマウント104及びロアマウント105を介して、スイベルブラケット106に設定された支軸のまわりに水平方向に回動可能となるように支持される。スイベルブラケット106の左右両側にはクランプブラケット107が設けられ、このクランプブラケット107を介して船体の後尾板Pに固定される。スイベルブラケット106は、左右方向に設定されたチルト軸108のまわりに上下方向に回動可能に支持される。
【0018】
ミッドユニット102において、エンジン10のクランクシャフト12の下端部に連結するドライブシャフト109が上下方向に貫通配置され、このドライブシャフト109の駆動力が、ロアユニット103のギヤケース110内に配置されたプロペラシャフト111に伝達されるようになっている。ドライブシャフト109の前側には、前後進の切換等を行うためのシフトロッド112が上下方向に平行配置される。また、ミッドユニット102にはエンジン10を潤滑するためのオイルを貯留するオイルパン113等が配設される。なお、ミッドユニット102は、ドライブシャフト109を収容するドライブシャフトハウジング114を有している。
【0019】
ロアユニット103においてギヤケース110内に、ドライブシャフト109の駆動力によりプロペラシャフト115を介してプロペラ116を回転駆動する複数のギヤ群117等を有する。ギヤ群117においてミッドユニット102から下方へ延出したドライブシャフト109はそれ自体に取り付けたギヤが、ギヤケース110内のギヤと噛合することで最終的にプロペラ116を回転させるが、シフトロッド112を介してのシフト装置の操作によりギヤケース110内のギヤ群117の動力伝達経路を切り換える、即ちシフトするようになっている。
【0020】
図2〜
図5は、本実施形態におけるエンジン10の例を示している。
図2はエンジン10を左方から見た側面図、
図4はエンジン10の後方正面図、
図5はエンジン10の上面図である。なお、
図3は、本実施形態に係る排気マニホールドまわりを後方から見た図である。本例のエンジン10は直列4気筒エンジンとし、
図4に示されるように上から順に1番(♯1)気筒、2番(♯2)気筒、3番(♯3)気筒及び4番(♯4)気筒の4気筒が配列される。エンジン10はクランクケース13が前方に、シリンダブロック14及びシリンダヘッド15が後方に配置されるかたちで♯4気筒側にてエンジンホルダ11上に搭載される。以下にエンジン10について概略説明するが、その構成部材等は必要に応じて適宜図示し、あるいはその図示を省略する。
【0021】
クランクケース13において、クランクシャフト12はその上端部及び下端部並びにそれらの中間部にて複数のジャーナル軸受によって、クランクケース13内で回転可能に支持される。クランクシャフト12はまた、その下端にて例えば一対の連結ギヤ(リダクションギヤ)を介してドライブシャフト109の上端と結合してもよく、これによりクランクシャフト12の回転動力がドライブシャフト109へと伝達される。
【0022】
シリンダブロック14において、内部には気筒毎にシリンダボアが形成され、ピストンがシリンダボア内で往復動可能(前後方向)に内嵌する。このピストンはコンロッドを介してクランクシャフト12のクランクピンに連結し、これによりシリンダボア内のピストンの往復運動がクランクシャフト12の回転運動に変換され、更にエンジン10の出力としてドライブシャフト109に伝達される。
【0023】
シリンダヘッド15において、
図5を参照して気筒毎にシリンダボアに整合する燃焼室17とこの燃焼室17にそれぞれ連通する吸気ポート18及び排気ポート19が形成される。吸気ポート18は、燃焼室17との連通部が吸気バルブ20によって開閉制御される。この場合、吸気バルブ20は、上下方向に延設された吸気側カムシャフト21に設けたカムによって駆動される。また、排気ポート19は、燃焼室17との連通部が排気バルブ22によって開閉制御される。この場合、排気バルブ22は、上下方向に延設された排気側カムシャフト23に設けたカムによって駆動される。なお、この実施形態では、各気筒において吸気側及び排気側にそれぞれ2つのバルブを持つ4バルブであってよい。
【0024】
各気筒の燃焼室17の頂部には点火プラグが装着され、燃焼室17内に供給された混合気は点火プラグにより着火される。更に各気筒のシリンダボア内で爆発・燃焼した燃焼ガスは、排気ポート19から後述する排気マニホールド24へ排出される。各気筒において排気ポート19には、シリンダブロック14のシリンダボアの外側部に設けられた排気マニホールド24が連通するように接続される。排気マニホールド24は
図2及び
図4等に示されるようにシリンダヘッド15の左側面部にて上下方向に延設されており、各排気ポート19からの排気ガスを合流させる。排気ガスは排気マニホールド24を通って、後述するように最終的にエンジン10の下方へと導かれ、更にエンジンホルダ11内に形成された排気通路を経て水中に排出される。
【0025】
さて、本発明の船外機100において排気マニホールド24の構成例として、先ず触媒搭載モデルの場合で説明する。
図2及び
図4等に示されるように、複数(本例では4つ)の排気ポート19が接続される複数(本例では4つ)の第1開口25を備えて上下方向に延びる第1通路26と、この第1通路26の下方に配置されて、下端部にエンジンホルダ11に形成された第3通路29に接続される第2開口27を備えた第2通路28とが設けられる。排気マニホールド24は、概略矩形状の断面形状を持つ中空構造を有する。特に排気マニホールド24は、第1通路26及び第2通路28が一体に形成される一方、シリンダヘッド15及びシリンダブロック14に対して別体に成形されて着脱可能に形成されている。
【0026】
排気マニホールド24は
図2に示されるように締結手段としての複数のボルト30等によって、シリンダヘッド15の左側面部に締着される。ボルト30を外すことで、排気マニホールド24をシリンダヘッド15から取り外すことができる。
【0027】
更に排気マニホールド24は、
図2あるいは
図4に示されるように第1通路26及び第2通路28の間を区画壁31で区画される。そして、
図2に示されるように排気マニホールド24には第1通路26の上部から分岐して第2通路28に連通して、内部に排気浄化触媒33を備えた第4通路32が付設される。従って、この例では排気経路中に2つの排気浄化触媒33が装着される。
【0028】
本例では
図2のように第4通路32はそれぞれ第1通路26に沿って上下方向に延び、第1通路26の前方のシリンダブロック14の側方(左側)と、第1通路26の後方のシリンダヘッド15の側方(左側)とに並べて配置される。
第4通路32の上部は連通孔34を介して、第1通路26の上部と連通する。また、第4通路32の下部は連通孔35を介して、第2通路28と連通する。
【0029】
また、各第4通路32は、第1通路26及び第2通路28を有する排気マニホールド24(マニホールド本体)に対して着脱可能に形成される。この場合、各第4通路32は
図3に示されるように、締結手段としての複数のボルト36等によって、排気マニホールド24の前面部及び後面部に締着される。ボルト36を外すことで、各第4通路32を排気マニホールド24から取り外すことができる。
【0030】
また、各第4通路32の中間部には
図3等に示されるように、第1通路26側及び第2通路28側に分割可能とする接合部37が形成されている。接合部37において上下に二分される第4通路32の下端部及び上端部をフランジ状に形成し、二分された第4通路32の上下部位がボルト等によって相互に締結される。排気浄化触媒33は、上下に二分された第4通路32の分割部位に形成される開口部に装着することができる。
【0031】
更に、
図2に示されるように第1通路26の上部には、排気ガス中の酸素濃度を検出する酸素センサ38が装着される。酸素センサ38は、排気浄化触媒33の上流側の酸素濃度を検出することができる。
また、
図4に示されるように必要に応じて第2通路28には、同様に排気ガス中の酸素濃度を検出する酸素センサ39が装着される。酸素センサ39は、排気浄化触媒33の下流側の酸素濃度を検出することができる。
【0032】
この例の排気マニホールド24において、各排気ポート19からの排気ガスが第1開口25に流入して、第1通路26にて合流する。この合流した排気ガスは第1通路26内で上方へ流通し、その上部で連通孔34を介して各第4通路32へ分岐する。排気ガスは更に、第4通路32内で下方へ流通し、その間に排気浄化触媒33を通過しながら、その下部で連通孔35を介して第2通路28に流入する。各第4通路32から第2通路28にて合流した排気ガスは、第2開口27を介してエンジンホルダ11の第3通路29に流入し、更にロアユニット103に形成されている排気通路を経て、最終的に水中に排出される。
【0033】
次に
図6及び
図7は、本発明の船外機100に係る触媒搭載モデルの場合における排気マニホールド24の別の態様を示している。
図6はエンジン10を左方から見た側面図、
図7はエンジン10の上面図である。この例では第4通路32は第1通路26に沿って上下方向に延び、第1通路26の前方のシリンダブロック14の側方に配置される。つまり第1通路26に対して前方の一方側にのみ第4通路32が付設される。第4通路32内部には排気浄化触媒33が装着され、従って、この例では排気経路中に単一の排気浄化触媒33を有する。その他の構成は、実質的に上記の場合と同様である。
【0034】
なお、排気マニホールド24の後面部に形成された連通孔34及び連通孔35には、カバープレート40,41が蓋着され、これらのカバープレート40,41によって連通孔34及び連通孔35を閉塞することができる。
【0035】
この態様例の排気マニホールド24において、各排気ポート19からの排気ガスが第1開口25に流入して、第1通路26にて合流する。この合流した排気ガスは第1通路26内で上方へ流通し、その上部で前面部に形成された連通孔34を介して第4通路32へ流入する。排気ガスは更に、第4通路32内で下方へ流通し、その間に排気浄化触媒33を通過しながら、その下部で前面部に形成された連通孔35を介して第2通路28に流入する。第4通路32から第2通路28にて流入した排気ガスは、第2開口27を介してエンジンホルダ11の第3通路29に流入し、更にロアユニット103に形成されている排気通路を経て、最終的に水中に排出される。
【0036】
図8及び
図9は、本発明の船外機100に係る触媒不搭載モデルの場合における排気マニホールド24の態様を示している。
図8はエンジン10を左方から見た側面図、
図9はエンジン10の後方正面図である。この例では排気マニホールド24は、第1通路26及び第2通路28が直接連通され、排気通路中に排気浄化触媒33を備えていない。つまり第1通路26及び第2通路28の間を区画する区画壁31(
図4参照)を持たず、第4通路32を有しておらず、即ち排気マニホールド24(マニホールド本体)のみの構成である。その他の構成は、実質的に上記の場合と同様である。
【0037】
なお、排気マニホールド24の前面部及び後面部には、上述の連通孔34及び連通孔35を持たず、また、これらの連通孔34及び連通孔35を持つ場合には、それらを前述したカバープレート40,41によって閉塞するようにしてもよく、ここではそれらの図示を省略する。
【0038】
この態様例の排気マニホールド24において、各排気ポート19からの排気ガスが第1開口25に流入して、第1通路26にて合流する。この合流した排気ガスは第1通路26内で下方へ流通して、第2通路28に流入する。第1通路26から第2通路28にて流入した排気ガスは、第2開口27を介してエンジンホルダ11の第3通路29に流入し、更にロアユニット103に形成されている排気通路を経て、最終的に水中に排出される。
【0039】
本発明の船外機100において特に排気マニホールド24は、シリンダヘッド15及びシリンダブロック14と別体に構成されて、エンジン10本体に対して着脱可能である。ここで、この種の船外機は商品として、エンジン排気量や主要部品の配置等の基本構成を同一にしながら、出力の異なる仕様で使用される。また、エンジンの基本構成は同一でも排気ガス規制レベルが異なる国や地域に対応可能であることが要望されている。本発明の船外機100において触媒搭載モデルの場合には、
図2あるいは
図6のように排気浄化触媒33を備えた第4通路32が排気マニホールド24に付設される。一方、触媒不搭載モデルの場合には、
図8のように排気マニホールド24にはそのような第4通路32が付設されない。同一のエンジン10に対して排気浄化触媒33を装着し、あるいは装着しない仕様とし、触媒搭載モデルと触媒不搭載モデルでエンジン10を共用可能とする船外機100が実現される。
【0040】
触媒搭載モデルと触媒不搭載モデルとで各別にエンジン10本体側の仕様を変更する必要がないため、製造上及び部品点数等の点でコスト的に極めて有利である。また、締結手段であるボルト30を外して、排気マニホールド24を簡単に交換することができ、使用性あるいは取扱い性等に極めて優れている。
特に触媒搭載モデルの場合には、
図2あるいは
図6のように排気浄化触媒33を備えた第4通路32を付設し、これにより排気浄化触媒33の個数を増減することができる。このように同一の船外機100において必要に応じて排気浄化触媒33の個数を切り替え、排気ガス規制レベルが異なる国や地域に有効且つ適確に対応することができる。
【0041】
また、第4通路32は接合部37にて、第1通路26側及び第2通路28側に分割可能に構成されている。上下に二分された第4通路32の分割部位に形成される開口部から排気浄化触媒33を出し入れすることができ、必要に応じて排気浄化触媒33を簡単に交換する等が可能になる。
【0042】
排気マニホールド24は、触媒搭載モデルでは第1通路26及び第2通路28の間を区画壁31で区画され、また、触媒不搭載モデルでは第1通路26及び第2通路28が直接連通される。触媒搭載モデル及び触媒不搭載モデルとも第1通路26及び第2通路28が一体化して構成される。これらの通路を流通した排気ガスは、下方に位置する第3通路29に流入する。このように一体化され、あるいは一体的に構成された排気通路を排気ガスが流通し、極めてコンパクトな構成となっている。
【0043】
また、第1通路26には酸素センサ38が装着され、第2通路28には酸素センサ39が装着される。触媒搭載モデル及び触媒不搭載モデルとも、あるいは触媒搭載モデルにあっては排気浄化触媒33の個数を変えても、同一の構成にて排気ガス中の酸素濃度を検出することができる。
【0044】
上記の場合、排気浄化触媒33を含めた排気系をエンジン10の左右方向片側(左側)に集中した配置構成とすることで、組付性にも優れていると共に、吸気系及び燃料系とは反対側に配置することで、仮に例えば排気系での冷却水不足のためにオーバーヒートした場合でも高い信頼性、安全性を保証することができる。また、点火プラグやシリンダヘッドカバー16等の取外し等に支障のない配置構成であり、メンテナンス性等にも極めて優れている。
【0045】
以上、本発明を種々の実施形態と共に説明したが、本発明はこれらの実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能である。
上記実施形態においてエンジン10が直列4気筒エンジンとした例を説明したが、エンジン10の気筒数は増減することができる。