(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
衝突時の乗員を保護する装置としてシートベルト装置やエアバッグ装置等の乗員保護装置がある。シートベルト装置は、ベルトによる乗員の胸腹部を保持することで前方移動を制限して保護を行う。これ等の保護においては、例えば、特許文献1に記載のようにシートベルトに付与する張力を衝突状況に応じて適切に制御することが望ましいとされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、エアバッグ装置に関して、「シートに着座している乗員は通常の大人であったり、小柄の大人であったり、子供であったりする。この場合、乗員を保護するためには乗員に応じてエアバッグの展開態様を変更することが好ましいが、従来装置では、乗員に応じてエアバッグの展開態様を変えることはできず、エアバッグ装置の制御が必ずしも適切ではない。」との記述がある。
【0004】
シートベルト装置に関しては、「シートベルト巻取り装置の作動時におけるシートベルトの張力を検出した体格に応じて制御するようにするとよい。これによれば、車両の衝突予知時、衝突時などに作動するシートベルト巻取り装置が、通常の大人、小柄な大人、子供などのように乗員の体格に応じて異なる張力をシートベルトに付与する。したがって、適切な張力を有するシートベルトで乗員を拘束できるようになり、乗員を適切に保護できる。」との記述がある。
【0005】
また、特許文献2及び特許文献3には、シートベルトのねじれが保護性能に及ぼす影響に関する記述がある。特許文献2では、シートベルトにねじれが生じた場合には、適切な保護性能が得られないことから、ねじれ状態に応じて好適に巻き取り力を制御する必要があるとの記述がある。特許文献2に記載の装置では、車室内に配置されたカメラにより運転者に装着されたシートベルトの画像を撮像し、撮像画像に基づいてねじれ判定を行っている。また、特許文献3には、シートベルトがねじれた状態で装着された場合は、事故発生時に所定の強度を確保できない虞があるとの記述がある。
【0006】
以上の通り、シートベルト装置やエアバッグ装置で衝撃時の乗員を保護するには、適切な作用力によって乗員を保護することが望ましい。そのためには、衝突後の乗員挙動に大きな影響を与えるシートベルトがねじれ無く適切に装着されていることが望ましい。
【0007】
また、特許文献4には、衝突時に乗員の運動エネルギーを広い面積で保持するために膨張可能なシートベルト(ウェビング)が開示されている。ウェビングにねじれがあると乗員当接部にガスがスムーズに流動しなくなり、迅速に膨張しない場合が考えられる。このため、ウェビングが乗員の運動エネルギーによる荷重を分散して、乗員が受ける荷重を小さくするエアベルトの機能を確実にかつ十分に果たすことができない場合が考えられると指摘されている。
【0008】
更に、特許文献5には、乗員胸部の剛性分布に応じた剛性変化手段により、車両前面衝突時に乗員が慣性力によって前方移動する際に、拘束時の身体への負担を身体変形に応じて略均一に分布させる内容が開示されている。即ち、身体の強度が必ずしも均一でないことから、荷重を均一に分布させた場合に身体の相対的に剛性の低い部分において変形量が大きくなってしまうことを回避することができる。特許文献5に記載の技術では、その保護性能を十分に発揮するには、身体変形にパットが適切に接することが望ましい。しかしながら、身体変形は体格や性別及び年齢でも大きく異なることから、乗員の身体変形が計測され、計測結果に基づいて種々の動作がなされることが望ましい。
【0009】
特許文献6では、従来の車両用乗員拘束装置にあっては、エアバッグ装置及びニーパッドが乗員中心線に対して左右対称であるのに対して、シートベルト装置が左右非対称であるため、乗員の体格や衝突条件等によって衝突後に乗員の身体がねじれたり、横方向へ変位したりする可能性が指摘されている。このため、従来は、シートベルト、エアバッグ、ニーパッド等を大型化してこれを防止しており、車体重量増加やコストアップになってしまうという問題があると述べられている。このため、車両衝突時の乗員の身体のねじれ等を抑え、車両軽量化及びコストダウンを図る車両用乗員拘束装置が開示されている。
【0010】
特許文献6に開示されている車両用乗員拘束装置は、車両衝突時に乗員のねじれ等を最小にするように、シートベルトのうちショルダベルトの乗員に対する高さを調整するショルダベルト位置調整手段と、ショルダベルト位置調整手段によりショルダベルトを調整した後に乗員の胸部にねじれが生じた場合にこのねじれに対応してエアバッグの最適位置で乗員を受けるエアバッグ調整手段と、エアバッグ調整手段によりエアバッグを調整した後に乗員の腰部にねじれが生じた場合に乗員の腰部をこのねじれを戻す方向に回動させる腰部回動手段と、乗員の体格、挙動を測定する乗員測定センサと、車両の衝突を検出する衝突検出センサと、を備えている。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。
【0021】
<第1の実施の形態>
(乗員保護装置)
まず、乗員保護装置の構成について説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態に係る乗員保護装置の構成の一例を示す概略図である。
図1に示すように、乗員保護装置10は、衝突時に車両内の乗員を保護する乗員保護手段としてエアバッグ装置12とシートベルト装置14とを備えている。また、乗員保護装置10は、エアバッグ装置12及びシートベルト装置14を含む装置各部を制御する制御装置16を備えている。
【0022】
エアバッグ装置12は、車両のステアリングホイール等に装備されている。エアバッグ装置には、インフレータの点火を機械的に行う起動装置が設けられている。車両の衝突時等にはこの起動装置によりインフレータが点火されてガスが発生し、エアバッグが膨張する仕組みとなっている。膨張したバックが、ステアリングホイールと乗員との間に介在することで、衝突時に車両内の乗員が保護される。
【0023】
シートベルト装置14は、本実施の形態では、ラップベルト18とショルダベルト20とを備えた3点式シートベルトとして構成されている。ラップベルト18は、一端部18aが車体側に固定されると共に、他端部18bがタング22を挿通してショルダベルト20の一端部20aに連結される。なお、一端部18aが車体側に固定される位置がラップアンカーである。ショルダベルト20は、他端部20bがセンターピラー24の上端部に設けられたショルダーアンカー26を挿通した後、センターピラー24の下端部に設置されたリトラクタ28に案内される。
【0024】
上記のシートベルト装置14を装着するには、ラップベルト18によって乗員の腰部を支持するとともに、ショルダベルト20によって乗員の片方の肩から斜めに胸部を支持した後、タング22をシートSのシートクッションSaの側方に固定したインナーバックル30に差し込む。ラップベルト18とショルダベルト20により乗員の腰部及び胸部を拘束して乗員の前方移動を制限することで、衝突時に車両内の乗員が保護される。なお、インナーバックル30には着脱センサ(図示せず)が内蔵されている。着脱センサは、タング22がインナーバックル30に差し込まれたときに、シートベルト装置14が装着されたことを検知する。
【0025】
(センサ設置状態)
次に、シートベルトのセンサ設置状態について説明する。
図2(A)〜(C)はシートベルトに設置された複数のセンサの構成の一例を示す概略図である。
図2(A)に示す例では、ショルダベルト20内部に複数のセンサ32が設置されている。この例では、センサ32
1〜32
10の10個のセンサが設置されている。なお、複数のセンサ32
1〜32
10の各々を区別する必要がない場合は、センサ32と総称する。複数のセンサ32は、ショルダベルト20の長さ方向に沿って配列されている。具体的な配列例の一例を示せば、複数のセンサ32は、ショルダベルト20の長さ方向に延びるショルダベルト20の幅方向の中心線(一点鎖線で表す)上に予め定めた間隔Lで配列されている(
図2(B)参照)。
【0026】
複数のセンサ32は、XYZ座標系の加速度、角速度、磁気強度等、設置位置に作用する少なくとも1つの物理量を検出するセンサである。シートベルト形状を正確に求める為には、複数の物理量を複合的に検出できる多軸センサが好ましい。1軸センサを複数組み合わせて多軸センサを構成してもよい。本実施の形態では、XYZ各軸方向の加速度とXYZ各軸周りの角速度とを検出可能な6軸センサを用いている。
【0027】
図2(B)に示すように、複数のセンサ32は予め定めた間隔Lで配列されている。即ち、隣接する2つのセンサは間隔Lだけ離間されている。この間隔Lは、乗員がシートベルト装置14を装着した際に、ショルダベルト20が柔軟性を有し体表面への密着性が損なわれない間隔とされる。間隔Lは、例えば、10mm以上90mm以下の範囲としてもよい。10mm以上50mm以下の範囲がより好ましい。
【0028】
互いに隣接する2つのセンサ32は、給電線34及び信号線36により接続されている。また、ショルダベルト20の端部に配置されたセンサ32は、給電線34及び信号線36により制御装置16に接続されている。給電線34は、乗員保護装置の電源(図示せず)から各センサ32に電力を供給するための導線である。信号線36は、各センサ32と制御装置16との間で信号を授受するための導線である。即ち、制御装置16は、複数のセンサ32の各々から、検出信号に基づく測定結果を取得することができる。
【0029】
図2(C)はショルダベルト20のI-I断面図である。
図2(C)から分かるように、ショルダベルト20は、基布38と、基布38を挟む込み、基布38の表裏両面を覆う一対の表布40
1、40
2とで構成されている。基布38と一対の表布40
1、40
2とは、縫い合わされて固定されている。シートベルトは変形するが伸縮しない。基布38には、ポリエステルやポリアミド等、低伸縮性の素材が用いられている。基布38の厚さは約1mm程度である。表布40
1、40
2には、低摩擦の素材が用いられ、摩擦力低減のためにコーティング処理等が施されていてもよい。表布40
1、40
2の厚さは、基布38と同等以下が望ましい。
【0030】
本実施の形態では、センサ32としては、縦3mm×横3mm×厚さ1mmと小型の6軸センサを用いている。複数のセンサ32の各々は、基布38の幅方向の中央部を部分的に切り取って形成した孔内に埋設されている。
図2(C)に示す例では、センサ32
4が配置されている。また、本実施の形態では、給電線34及び信号線36として、直径が約0.1mmの導線を用いる。給電線34及び信号線36の各々は、基布38の幅方向の中央部を長さ方向に切り取って形成した溝内に埋設されている。
【0031】
なお、上記では、ショルダベルト20に複数のセンサ32が設置されている例について説明したが、本実施の形態では、ラップベルト18もショルダベルト20と同様のベルト構造を有し、ラップベルト18にも同様に複数のセンサ32が設置されている。以下、ラップベルト18とショルダベルト20とを区別する必要がない場合は、単に「シートベルト」という。
【0032】
また、上記では、ショルダベルト20内部に複数のセンサ32が設置されている例について説明したが、センサ32は少なくとも1つ設置されていればよい。理由については後述する。更に、センサ32は、ショルダベルト20の表面に設置されていてもよい。
【0033】
(制御装置)
図3は
図2に示す乗員保護装置の電気的構成の一例を示すブロック図である。
制御装置16は、主制御部50、シートベルト制御部52、エアバッグ制御部54、警報装置制御部56、センサ制御部58、車両状態検出装置60、及び記憶装置62を備えている。主制御部50、シートベルト制御部52、エアバッグ制御部54、警報装置制御部56、センサ制御部58、車両状態検出装置60、及び記憶装置62の各部は、互いにバス64で接続されている。
【0034】
主制御部50、シートベルト制御部52、エアバッグ制御部54、警報装置制御部56、センサ制御部58、及び車両状態検出装置60の各々は、CPU、ROM、RAMを備えたコンピュータで構成されている。主制御部50は、制御装置16の各部を統括制御する制御部である。後述する「乗員保護適正化処理」は主制御部50により各部が制御されて実行される。
【0035】
シートベルト制御部52は、リトラクタ28(
図1参照)によるシートベルトの巻き取り張力の変更等、シートベルト装置14の作動を制御する。エアバッグ制御部54は、点火するインフレータの個数、インフレータの点火タイミングの変更等、エアバッグ装置12の作動を制御する。警報装置制御部56は、シートベルト警報装置48の作動を制御する。シートベルト警報装置48は、シートベルト装置14の装着を乗員に警告するための警告灯、警報ブザーを備えている。また、シートベルト警報装置48は、上記の着脱センサを備えており、シートベルト装置14の装着を検知する。
【0036】
なお、シートベルト警報装置48の着脱センサの検知信号は、図示しないA/D変換器によりアナログ信号からデジタル信号に変換されて、制御装置16に入力される。A/D変換器は、警報装置制御部56、シートベルト警報装置48等(センサ側)に設けられてもよく、制御装置16側に設けられていてもよい。
【0037】
センサ制御部58は、検出開始指示等によりセンサ32の作動を制御し、選択されたセンサ32から検出信号を取得する。また、センサ制御部58は、A/D変換器(図示せず)と曲率測定手段(図示せず)とを備えている。A/D変換器は、電圧又は電流の信号、オンオフ信号等、アナログ信号として得られた検出信号をデジタル信号に変換する。曲率測定手段は、デジタル化された検出信号(検出される物理量)から、各センサ32の設置位置でのシートベルトの曲率を測定する。
【0038】
ここで「曲率」とは、曲率半径の逆数である。物体が曲線上を移動するとき、曲線上のある点では当該曲線に接する曲率円の半径(曲率半径)で円運動をしていると考えられる。従って、XYZ座標系の加速度、角速度、磁気強度等、センサ32で検出される物理量は、センサ32の設置位置での「曲率」に変換することができる。物理量としてXYZ座標系の加速度が検出される場合には、センサ32の設置位置の座標(三次元座標値)が「曲率」に含まれる。また、物理量としてXYZ座標系の角速度が検出される場合には、センサ32の姿勢(各軸周りの回転角度)も「曲率」に含まれる。
【0039】
取得された測定結果は主制御部50に入力される。本実施の形態では、センサ制御部58において、物理量を表す検出信号をA/D変換し、デジタル化された物理量を曲率に変換しているが、制御装置側で各変換を行ってもよい。
【0040】
車両状態検出装置60は、前方障害物までの距離を測定するレーダ等の測距装置、車速センサ、クラッシュボックス、加速度センサ等を含み、車両の衝突を事前に予測すると共に車両の衝突を検出する。記憶装置62は、ハードディスク装置、メモリ等の記憶装置であり、センサ制御部58で受信した検出信号、測定結果、演算結果等、各種の情報を記憶する。
【0041】
(乗員保護適正化処理)
次に、「乗員保護適正化処理」の手順について説明する。
図4は制御装置16(主に主制御部50)で実行される「乗員保護適正化処理」の手順の一例を示すフローチャートである。乗員がシートSに着座してシートベルトを装着すると、シートベルト警報装置48によりシートベルト装置14の装着が検知される。シートベルト装置14の装着が検知されると、検知信号が制御装置16に入力されて「乗員保護適正化処理」が開始される。
【0042】
まず、ステップ100で、センサ制御部58を介して、複数のセンサの各々に電力を供給する。各センサに接続された給電線により、図示しない電源から各センサに所定の電力が供給される。各センサは、電力の供給が開始されてから一定時間経過後に起動し、検出可能な状態となる。
【0043】
次に、ステップ102で、センサ制御部58を介して、選択された所望のセンサに対して検出開始を指示する。各センサに接続された信号線により、検出開始信号が送信される。検出開始信号には、特定のセンサを識別するための識別信号が含まれている。このため、制御装置16は、複数のセンサの中から選択された所望のセンサに対して、検出開始を指示することができる。
【0044】
次に、ステップ104で、センサ制御部58から測定結果を取得する。選択された所望のセンサは、検出開始信号に同期して直ちに検出を開始し、信号線によりセンサ制御装置58に検出信号を送信する。センサ制御部58は、各センサ32の検出信号をデジタル信号に変換した後、デジタル化された検出信号(検出される物理量)から、各センサ32の設置位置でのシートベルトの曲率を測定する。取得された測定結果は主制御部50に入力される。なお、後述する通り、測定結果として得られた曲率の外に、固定点における曲率(固定値)や補間位置における曲率を利用してもよい。
【0045】
次に、ステップ106で、測定結果に基づいて曲面を演算する。ここで、シートベルトの長さ方向を「軸線方向/x軸方向」とし、軸線方向と直交するシートベルトの幅方向を「y軸方向」とする(
図2参照)。また、x軸方向及びy軸方向の各々と直交する方向がz軸方向である。例えば、シートベルトがx軸方向で大きく曲がるとx軸方向での曲率が大きくなる。また、シートベルトにねじれが生じている場合には、y軸方向の曲率がx軸方向の位置によって変化する。従って、x軸方向及びy軸方向での曲率から曲面(曲率分布)が演算される。演算結果(曲率分布)は、記憶装置62に保存される。
【0046】
次に、ステップ108で、曲面と基準点と原点とに基づいてシートベルト装着時のシートベルト形状を演算する。シートベルト形状を演算することで、例えば、
図5に示す傾斜状態、
図6(A)に示す曲げ状態、
図6(B)に示すねじれ状態にあるシートベルトの形状を演算することができる。
【0047】
シートベルト形状は、三次元空間におけるXYZ座標系の座標値で定義することができる。例えば、シートベルトを固定する固定点であるアンカーの位置を原点として、測定結果に基づいて得られた曲面の基準点を原点と一致させることにより、三次元空間におけるシートベルト形状を演算することができる。即ち、基準点はシートベルトの基点を表し、基準点を三次元空間の原点に一致させることで、三次元空間におけるシートベルト形状が得られる。なお、ショルダーアンカーやラップアンカーの位置は、シートベルト装置の設置時に予め設定されている(
図1参照)。
【0048】
次に、ステップ110で、演算により得られたシートベルト形状(以下、「演算ベルト形状」という。)を、記憶装置62に予め保存されている「基準ベルト形状」と比較して、乗員のシートベルト着用状態を把握する。ここで「基準ベルト形状」とは、乗員の体形、体格、着座姿勢、及びシートベルトのねじれ状態等、複数の条件下で予め測定したシートベルト形状であり、比較を行えるように複数のパラメータで表されている。
【0049】
次に、ステップ112で、シートベルト制御部52やエアバッグ制御部54を介して、把握されたシートベルト着用状態に応じて、エアバッグ装置やシートベルト装置等の乗員保護装置の作動状態を適正化して、ルーチンを終了する。
【0050】
例えば、シートベルトの傾斜は、乗員の腹部の表面傾斜に応じて変化するので、シートベルトの傾斜角度を測定することにより、乗員とシートベルトの接触状態が把握できる。また、上記の通り、本実施の形態ではシートベルトのねじれ状態を把握できる。従って、把握されたシートベルト着用状態に応じて、衝突時のシートベルトの張力を変更する等して、乗員の体格や着座姿勢などに応じた適正な乗員保護を行うことが可能となる。
【0051】
なお、上記の処理では、取得された測定結果(センサの設置位置でのシートベルトの曲率)に基づいて曲面を演算し、曲面と基準点と原点とからシートベルト装着時のシートベルト形状を演算するが、曲面を演算する手順は省略してもよい。基準点を原点として曲率分布を求める等、曲率と基準点と原点とから装着時のシートベルト形状を演算してもよい。
【0052】
また、上記の処理では、シートベルト形状を三次元空間におけるXYZ座標系の座標値で定義したが、測定結果として座標値と姿勢の両方が得られる場合には、シートベルト形状を座標値と姿勢とにより定義してもよい。これにより、ねじれ方向と変形形状とによりシートベルト形状を規定することができる。曲率測定手段は、XYZ座標系の座標値に加えて、各センサの姿勢(各軸周りの回転角度)も測定結果として得ることができる。
【0053】
図5では、平面視が矩形状の平板状のセンサ32がシートベルトに設置された様子を表す。センサ32の面に対する法線がセンサ32の設置位置における姿勢を表す。図示した例では、ベルトが中央に示す元の位置から+θ
0または−θ
0傾くことにより、センサ32の法線も傾くことが分かる。
図6(A)及び(B)では、ベルト幅方向に延びる線分によりセンサ32の位置を表す。図示はされていないが、平板状のセンサ32は線分の中央に配置されている。センサ32の面に対する法線がセンサ32の設置位置における姿勢を表す。
図6(A)に示す凸変形の場合は、法線がベルトの幅方向の周りに回転し、
図6(B)に示す曲げ変形の場合は、法線がベルトの長さ方向の周りに回転する。
【0054】
測定結果からシートベルト形状を求める際には、
図6(A)及び(B)に示した「基準点」を基に相対変形を算出し、算出した相対変形を基準点の姿勢を用いて原点に再定義できる。ここで「相対変形」とは、基準点に対する座標値と姿勢の相対変化である。即ち、基準点はシートベルトの基点を表し、基準点を三次元空間の原点に一致させると共に、基準点に設置されたセンサの姿勢を原点での姿勢とすることにより、相対変形が絶対変形となり、三次元空間におけるシートベルト形状が得られる。或いは、各センサの座標値と姿勢とを用いて原点から順次変形を算出してもよい。
【0055】
(基準点と原点)
ここで「基準点」と「原点」について説明する。上述した通り、「基準点」は、曲率測定上の基準点であり、シートベルトの基点を表す。これに対し、「原点」は、三次元空間においてシートベルトを固定する固定点を表す。従って、基準点を原点に一致させることにより、三次元空間におけるシートベルト形状が得られる。
【0056】
以下に、
図1を参照して原点となる固定点を例示する。ラップベルト18の場合は、一端部18aが固定されるラップアンカーの位置や、他端部18bが固定されるインナーバックル30の位置が原点となる。ショルダベルト20の場合は、一端部20aが固定されるインナーバックル30の位置や、他端部20bが固定されるショルダーアンカー26の位置が原点となる。
【0057】
図12は原点の座標値及び姿勢の一例を示す概略図である。原点の座標値を(x
n,y
n,z
n)とし、三次元空間の絶対座標系における原点の姿勢をa
nとする。三次元空間の絶対座標系xyzは右下に矢印で図示する。姿勢a
nは、x軸周りの回転角α
n、y軸周りの回転角θ
n、z軸周りの回転角φ
nを示すものである。
図12では姿勢a
nは回転後のxyz各軸として基準点の傍に矢印で図示した。姿勢a
nのx軸方向はベルト引き出し方向と一致する。
【0058】
ショルダーアンカー26の位置を原点とする場合を(n=1)とする。ショルダーアンカー26の座標値は(x
1,y
1,z
1)であり、姿勢はa
1である。インナーバックル30の位置を原点とする場合を(n=2)とする。インナーバックル30の座標値は(x
2,y
2,z
2)であり、姿勢はa
2である。ショルダーアンカー26やインナーバックル30の位置では、シートベルト装置の設置時に座標値や姿勢が予め設定されている。従って、これらの値は固定値となる。
【0059】
また、上記の処理では、基準点にセンサ32が設置されている例について説明したが、基準点における曲率の値を固定値として、基準点にセンサ32を設置しない構成としてもよい。例えば、基準点を、アンカー位置等の原点(固定点)とすればよい。この場合は、基準点に曲率が固定された仮想センサが設置されていると考えることができる。測定結果として座標値と姿勢の両方が得られる場合には、仮想センサの姿勢も固定とする。基準点における曲率は固定値であるため、センサ32が少なくとも1つ設置されていれば、2以上の曲率を得ることができる。
【0060】
図13(A)及び(B)はセンサが1つの場合の変形前後のシートベルト形状の一例を示す模式図である。センサと基準点とを線で結ぶことにより、シートベルト形状を模式的に表すことができる。センサと基準点との距離はLで一定である。
図13(A)は変形前のシートベルト形状を表し、
図13(B)は変形後のシートベルト形状を表す。センサで検出された物理量に基づいて曲率が測定される。
【0061】
図13(B)に示すように、シートベルトがねじれ変形すると、測定された曲率(特に姿勢)は固定値とは異なる値となる。換言すれば、互いに異なる2以上の曲率に基づいて、概略的なシートベルト形状を取得することができる。上記の処理では、演算により詳細なシートベルト形状を取得する例について説明したが、「ねじれ変形の大きさ」等、概略的なシートベルト形状を取得してもよい。「ねじれ変形の大きさ」が閾値以上である形状を異常とする等、概略的なシートベルト形状からも乗員のシートベルト着用状態が把握される。
【0062】
(複数のセンサの接続例)
ここで、複数のセンサの接続例について説明する。
通常は、
図7(A)に示すように、1つのセンサ当り、給電線2本、入力信号線1本、出力信号線1本、及びセンサ選択線1本と、合計5本の導線が必要となる。このような構成の場合、複数のセンサ間で共通化が可能なのは給電線であり、他の信号線の数は、センサ数の増加に伴い比例して増加する。一方、センサ選択線によって通信対象のセンサを選択し、入力信号線を共通化して、信号線の増加を抑えることも可能であるが、この場合は、各センサの信号が重ならないようにセンサを順次選択して信号の入力を行う必要があり、センサ数が増加した場合は、検出時間間隔が長くなるという問題が生じる。
【0063】
本実施の形態では、
図7(B)に示すように、予め定めたセンサ数(図示した例では3個)ごとに信号分配器を配設している。分配器の入出力信号線は、分配対象のセンサそれぞれの入出力信号線と共通接続されている。一方、センサを選択するための分配信号線は、分配対象のセンサ各々の選択信号線と接続されている。そして、分配信号線と接続された入出力信号線を介して、選択されたセンサの信号を得ている。これにより、センサ数の増加に対応して信号線数が増加することを回避することができる。また、センサ数が増加した場合に、選択信号線のみが比例して増加し、入出力信号線は増加しない。更に、図中の点線のように、予め定めた数のセンサごとにブロック化することで、並列処理が可能となり、検出時間間隔が長くなることを回避できる。
【0064】
以上の通り、第1の実施の形態によれば、観察映像からシートベルト形状を得る場合に比べて正確にシートベルト形状を得ることにより、乗員の状況に応じた適切な保護を行うことができる。
【0065】
<第2の実施の形態>
第2の実施の形態では、シートベルトの着用状態から乗員の危険度を評価(推定)設置位置し、評価結果に応じて警告を行う以外は、第1の実施の形態と同様であるため説明を省略する。
【0066】
図8は第2の実施の形態で実行される「乗員保護適正化処理」の手順の他の一例を示すフローチャートである。ステップ110で、乗員のシートベルト着用状態を把握した後に、ステップ112と並行して、ステップ114及びステップ116の手順を行う。これ以外は、
図4に示す「乗員保護適正化処理」の手順と同じであるため、同じ部分には同じ符号を付して説明を省略する。
【0067】
ステップ114で、シートベルト着用状態から乗員の危険度を評価する。下記表1に評価例を示す。この例では、評価項目は、ショルダベルトのねじり角度(deg)、ラップベルトのねじり角度(deg)、ショルダベルトの形状異常(Error)、及びラップベルトの形状異常(Error)とした。評価点は、−(−1)、+(+1)、++(+2)、+++(+3)の4段階評価とした。総計評価点が高いほど危険度が高い、
【0069】
ショルダベルトのねじり角度(deg)は、θ
1<θ
2<θ
3<θ
4という条件下で、θ
1未満が「−」、θ
2以上θ
3未満が「+」、θ
3以上θ
4未満が「++」、θ
4以上が「+++」である。ラップベルトのねじり角度(deg)は、θ
5<θ
6<θ
7という条件下で、θ
5未満が「−」、θ
5以上θ
6未満が「+」、θ
6以上θ
7未満が「++」、θ
7以上が「+++」である。ショルダベルトの形状異常(Error)及びラップベルトの形状異常(Error)の各々は、基準形状と比較した場合の異常度合いを百分率で表したものであり、10%未満が「−」、20%以上30%未満が「+」、30%以上40%未満が「++」、40%以上が「+++」である。
【0070】
次に、ステップ116で、危険度の評価値に応じて警告を行い、ルーチンを終了する。下記表2に総計評価点に応じた警告例を示す。
【0072】
この例では、総計評価点に応じてシートベルト警報装置による警告内容を変更する。0点では「警告無し」、+1点以上+3点未満では「警告灯(点灯)」、+3点以上+5点未満では「警告灯(点灯)+警報ブザー(小音)」、+6点以上+8点未満では「警告灯(点灯)+警報ブザー(中音)」、+9点以上では「警告灯(点灯)+警報ブザー(大音)」とする。
【0073】
以上の通り、第2の実施の形態によれば、観察映像からシートベルト形状を得る場合に比べて正確にシートベルト形状を得ることにより、乗員の状況に応じた適切な保護を行うことができる。また、乗員の状況に応じた適切な警告を行うことができる。
【0074】
<第3の実施の形態>
第3の実施の形態では、 車両状態検出装置の検出結果とシートベルトの着用状態とに応じて乗員保護装置の作動状態を適正化する以外は、第1の実施の形態と同様であるため説明を省略する。
【0075】
図9は第3の実施の形態で実行される「乗員保護適正化処理」の手順の更に他の一例を示すフローチャートである。ステップ100の前に、ステップ118で、車両の衝突又は衝突予測があったか否かを判定する以外は、
図4に示す「乗員保護適正化処理」の手順と同じであるため、同じ部分には同じ符号を付して説明を省略する。
【0076】
ステップ118で、車両状態検出装置の検出結果に基づいて、車両衝突の事前予測又は検出が行われたか否かを判定する。車両衝突の事前予測又は検出が行われていない場合は、ステップ118の判定を繰り返し行う。車両衝突の事前予測又は検出が行われた場合は、ステップ100に進み、ステップ100からステップ112までの手順を実行して、ルーチンを省略する。
【0077】
以上の通り、第3の実施の形態によれば、車両の衝突が予測又は検出された場合に、観察映像からシートベルト形状を得る場合に比べて正確にシートベルト形状を得ることにより、乗員の状況に応じた適切な保護を行うことができる。
【0078】
<第4の実施の形態>
複数のセンサがシートベルトに対し取付可能に構成されている以外は、第1の実施の形態と同様であるため同じ構成部分については説明を省略する。
【0079】
図10(A)は第4の実施の形態で使用される複数のセンサを備えた取付可能なセンサユニットがシートベルトに取り付けられた構成の一例を示す平面図である。
図10(B)は
図10(A)のA−A線断面図である。
図10(A)に示すように、センサユニット70は、長尺状の柔軟基材72を備えた長尺状のユニットである。柔軟基材72上には、制御装置74、複数のセンサ76、給電線78、及び信号線80が配設されている。
【0080】
複数のセンサ76
1〜76
7は、柔軟基材72の長さ方向に沿って予め定めた間隔Lで配列されている。以下、複数のセンサ76
1〜76
7の各々を区別する必要が無い場合は、センサ76と総称する。互いに隣接する2つのセンサ76は、給電線78及び信号線80により接続されている。また、センサユニット70の端部に配置されたセンサ76は、給電線78及び信号線80により制御装置74に接続されている。
【0081】
図10(A)及び(B)に示すように、センサユニット70は、密着部材82によりシートベルトSBに密着するように取り付けられて使用される。センサユニット70の長さ方向とシートベルトSBの長さ方向とを一致させることで、複数のセンサ76がシートベルトSBの長さ方向に沿って配列されることになる。なお、センサユニット70の表面を覆う保護部材(図示せず)を、更に取り付けてもよい。
【0082】
乗員がシートベルトSBを装着した際に、シートベルトSBは乗員の体表面に密着するように変形する。従って、柔軟基材72には、シートベルトSBの変形に影響を与えないように、十分な柔軟性を備えた部材が用いられる。このような柔軟性を備えた部材としては、例えば、鋼板やカーボン等の薄板を用いることができる。
【0083】
密着部材82としては、接着剤、マジックテープ(登録商標)等の接着テープ、袋材等を用いることができる。接着剤を用いることにより、センサユニット70を着脱不可の状態で取り付けることができる。一方、接着テープを用いることにより、センサユニット70を着脱可能な状態で取り付けることができる。更に、袋材を接着剤や接着テープによってシートベルトSBの表面に取り付け、袋材の内部にセンサユニット70を挿入することによって、センサユニット70をシートベルトSBに間接的に取り付けることができる。
【0084】
制御装置74は、CPU、ROM、RAMを備えたマイクロ・プロセッサで構成されている。制御装置74は、上記の「乗員保護適正化処理」の一部の手順を実行する処理装置として機能する。また、制御装置74は、車両の制御装置16と有線又は無線により通信を行う通信装置、シートベルト警報装置、電源を供給するバッテリ等を備えていてもよい。なお、装置を駆動するための電源を外部に配設して、有線や磁気などにより給電することも可能である。
【0085】
制御装置74は、複数のセンサ76に電力を供給し(
図4ステップ100参照)、選択された所望のセンサ76に対して測定開始を指示し(
図4ステップ102参照)、所望のセンサ76から測定結果を取得する(
図4ステップ104参照)。そして、得られた測定結果を、通信装置を介して車両の制御装置16に送信する。車両の制御装置16側では、測定結果に基づいて曲面を演算し(
図4ステップ106参照)、曲面からシートベルト形状を演算する(
図4ステップ108参照)。
【0086】
なお、制御装置74側で、測定結果に基づいて曲面を演算し(
図4ステップ106参照)、曲面からシートベルト形状を演算して(
図4ステップ108参照)、得られたシートベルト形状の情報を、通信装置を介して車両の制御装置16に送信してもよい。また、制御装置74側で、得られたシートベルト形状を基準ベルト形状と比較して、乗員のシートベルト着用状態を把握し(
図4ステップ110参照)、シートベルト着用状態から乗員の危険度を評価し(
図8ステップ114)、シートベルト警報装置を介して危険度の評価値に応じた警告を行うこともできる(
図8ステップ116参照)。
【0087】
(実施例)
図11(A)はセンサユニットが取り付けられた実施例に係るシートベルトの写真である。このセンサユニットでは、9個の6軸センサが厚さ0.1mm、幅12.7mmの長尺状の鋼板上に、鋼板の長さ方向に沿って間隔30mmで配列されている。センサユニットの全長は240mmである。隣接する2つの6軸センサは、給電線及び信号線により接続されている。また、センサユニットの端部に配置された6軸センサは、給電線及び信号線により図示しない制御装置に接続されている。
【0088】
図11(B)に示すように、シートSに着座させたダミー人形の腰部に、
図11(A)に示す実施例に係るシートベルトが装着されている。
図11(C)に示すように、シートベルトが矢印方向にねじれると、センサユニットも追随してねじれる。従って、センサユニットに配置された複数の6軸センサの検出値に基づく測定結果から、ねじれ状態のシートベルト形状が得られることが分かる。
【0089】
以上の通り、第4の実施の形態によれば、観察映像からシートベルト形状を得る場合に比べて正確にシートベルト形状を得ることにより、乗員の状況に応じた適切な保護を行うことができる。また、複数のセンサを既存のシートベルトに対して後から取り付けることができる。
【0090】
<第5の実施の形態>
各センサの設置位置で測定された曲率に基づいて、隣接するセンサ間等を結ぶ線分上の各補間位置の曲率を補間し、補間位置の各々の曲率をシートベルト形状の取得に利用する以外は、第1の実施の形態と同様であるため同じ構成部分については説明を省略する。
【0091】
図14は第5の実施の形態で実行される「乗員保護適正化処理」の手順の他の一例を示すフローチャートである。ステップ104で、センサ制御部58から測定結果として各センサの設置位置で測定された曲率を取得した後に、ステップ106及びステップ108に代えて、ステップ120からステップ124までを実行する以外は、
図4に示す「乗員保護適正化処理」の手順と同じであるため、同じ部分には同じ符号を付して説明を省略する。
【0092】
ステップ120で、測定結果に基づいて隣接するセンサ間または隣接するセンサと基準点との間を結ぶ線分上の各補間位置の曲率を補間する。次に、ステップ122で、センサの設置位置の各々の曲率、補間位置の各々の曲率、及び原点とした固定点の曲率から2以上の曲率を選択する。選択は任意に行うことができる。例えば、センサの設置位置の曲率だけを選択してもよいし、補間位置の曲率だけを選択してもよい。或いは、センサの設置位置の曲率と補間位置の曲率の両方が含まれるように選択してもよい。
【0093】
次に、ステップ124で、選択された2以上の曲率と基準点と原点(固定点)の座標値とに基づいて、装着時のシートベルト形状を取得する。即ち、基準点はシートベルトの基点を表し、基準点を三次元空間の原点に一致させることにより、三次元空間におけるシートベルト形状が得られる。
【0094】
(補間処理)
ここで「補間処理」について説明する。
一般に、センサの設置間隔を狭くしてセンサ数を増やすほど形状推定精度は高くなる。しかしながら、センサ数が増加すると信号処理量が増加し処理時間が長くなる。また、センサ数の増加は、シートベルトの柔軟性を損なうことにもなる。
【0095】
本実施の形態では、
図2(B)に示すように、複数のセンサ32は予め定めた間隔Lで配列されている。この間隔Lは、乗員がシートベルト装置14を装着した際に、シートベルトが柔軟性を有し体表面への密着性が損なわれない間隔とされる。上記の通り、隣接するセンサ間等を結ぶ線分上の各補間位置の曲率を補間することにより、シートベルトの柔軟性を損なうことなく形状推定精度を向上させることができる。
【0096】
隣接する2つのセンサをセンサnとセンサmとする。上記の通り、隣接するセンサ間の距離はLである。各センサの設置位置での曲率は連続して変化すると仮定する。センサ間の距離Lを任意のK等分した際の単位長さをdLとする。また、曲率はdLに対しても連続して変化すると仮定する。これらの仮定は、例えば、
図6(A)及び(B)に示す形状変化からも妥当である。従って、dLごとの曲率の値は、補間関数を用いて求めることができる。
【0097】
補間関数としては、例えばスプライン関数などを用いる。以下にその概要を示す。なお、補間関数をスプライン関数に限定するものではなく、測定条件に応じては、ラグランジュ多項式など他の補間関数や曲面関数を用いてもよい。本実施の形態においては(2M−1)次のスプライン補間関数を用いる。
【0098】
補間関数として(2M−1)次のスプライン補間関数を用いた例では、データは、(x0,y0),(x1,y1),…,(xn−1,yn−1)で与えられる。xがセンサ間の距離L、yが曲率となる。ここでは、曲率を表す関数の端点条件を、
【0100】
とすると、スプライン関数s(x)は、Bスプラインを用いて下記(1)式で得られる。
【0102】
具体的には、上記(1)式に従って、センサnとセンサmの設置位置での曲率に基づいて、センサnとセンサmとを結ぶ線分上の各補間位置の曲率を算出する。なお、曲率に代えて、三次元空間の絶対座標系における座標値(x,y,z)と姿勢a(x軸周りの回転角α、y軸周りの回転角θ、z軸周りの回転角φ)の各値を順次算出してもよい。
【0103】
以上の通り、第5の実施の形態によれば、観察映像からシートベルト形状を得る場合に比べて正確にシートベルト形状を得ることにより、乗員の状況に応じた適切な保護を行うことができる。また、補間処理により、センサが設置されていない補間位置での曲率を取得することができる。これにより、シートベルトの柔軟性を損なうことなく形状推定精度を向上させることができる。
【0104】
なお、上記各実施の形態で説明した、シートベルト、センサユニット、乗員保護装置の構成は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内においてその構成を変更してもよいことは言うまでもない。