(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一例である実施形態について詳細に説明する。
【0017】
<静電荷像現像剤>
本実施形態に係る静電荷像現像剤(以下、単に「現像剤」とも称する)は、静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」とも称する)と、キャリアとを含む。
そして、トナーは、ポリエステル樹脂を含む結着樹脂、及びスチレン(メタ)アクリル樹脂を含有し、スチレン(メタ)アクリル樹脂が平均径300nm以上800nm以下のドメインを形成しているトナー粒子を有する。
また、キャリアは、磁性粉分散型の芯材粒子、及び前記芯材粒子の表面に設けられ、窒素原子を含有する(メタ)アクリル酸誘導体を由来とする構造単位を有する樹脂を含む被覆層を有する。なお、窒素原子を含有する(メタ)アクリル酸誘導体を由来とする構造単位を有する樹脂は、すなわち、窒素原子を有する(メタ)アクリル酸誘導体を少なくとも重合した樹脂を示す。
【0018】
本実施形態に係る現像剤は、上記のトナーとキャリアとの組み合わせにより、直接転写方式、且つ、トナーリクレーム方式の画像形成装置において、記録媒体の両面に繰り返し画像を形成したときに生じる画像濃度の低下が抑制される。その理由は定かではないが、以下に示す理由によると推測される。
【0019】
電子写真方式の画像形成装置において、画質、耐久性、高速対応性等の点から、トナー及び磁性キャリアを含有する現像剤が用いられている。近年では、画像形成装置の高速化、省エネルギー化に対する市場の要求から、現像剤に含有するトナーとして、低温定着性を有するトナーが有効である。
【0020】
しかしながら、例えば、結着樹脂としてポリエステル樹脂を含むトナーは、低温定着性を有する点で有利である。ポリエステル樹脂を含むトナーを用いて画像を形成した場合、機械的負荷、熱的負荷等によって、外添剤がトナー粒子に埋没することがある。外添剤がトナー粒子に埋没した場合、トナーの流動性が低下し、帯電量が低下し易くなる。
【0021】
一方で、画像形成装置は、トナーの帯電量が低下すると、現像に必要なトナーの帯電量を維持しようとして、現像手段(現像装置)内で、トナー濃度を低下するように制御されている。上記制御がされた画像形成装置によって画像を形成する際に、トナーの帯電量が低下した場合、画像形成装置は、上記制御によって、トナーの帯電量を維持しようとして、現像手段内のトナー濃度を低下させる。そして、現像手段内でのトナー濃度が低下しているために、トナー画像の現像に供されるトナーの量が低下し、画像濃度が低下してしまうことがある。
【0022】
上記の画像濃度が低下する現象は、特に、直接転写方式の画像形成装置であって、且つ、像保持体(感光体)の表面に残留したトナーをクリーニング手段で除去し、除去したトナーを現像手段に供給し、トナーとして再利用する方式(いわゆるトナーリクレーム方式)を採用した画像形成装置によって、結着樹脂としてポリエステル樹脂を含むトナーを用いて、記録媒体の両面に対して繰り返し画像を形成(例えば、10万枚を連続出力)した場合に、顕著に発生し易いことが分かってきた。
【0023】
上記の画像形成装置(直接転写方式、且つ、トナーリクレーム方式の画像形成装置)において、結着樹脂としてポリエステル樹脂を含むトナーを用い、記録媒体の両面に繰り返し画像を形成した場合、画像濃度の低下が発生する現象は次のように説明される。
【0024】
上記の画像形成装置で記録媒体の両面に対して繰り返し画像を形成すると、まず、記録媒体の一方の面に転写されたトナー画像を定着する際に、定着手段から受ける熱によって記録媒体が暖められ、熱が保持される。次に、他方の面にトナー画像を転写する際に、記録媒体が保持している熱によって像保持体が暖められる。像保持体が暖められると、その熱が像保持体の表面に残留したトナーに伝わり、トナーが熱的負荷を受ける。そして、熱的負荷を受けたトナーが、トナーリクレーム方式の現像装置の供給搬送路を通じて現像手段に供給される。熱的負荷を受けたトナーは、外添剤がトナー粒子に埋没し易くなる。
また、ポリエステル樹脂を含むトナーは現像手段内での攪拌によって、機械的負荷を受けることで、外添剤がトナー粒子に埋没し易くなる。
これらの結果、現像手段内に存在するトナーは、トナー粒子に外添剤が埋没したトナーによって、流動性が低下し、帯電量が低下し易くなる。
【0025】
その一方で、現像手段内のキャリアは、現像手段内での攪拌に伴ってキャリア自身も機械的負荷を受けており、その機械的負荷によって、トナーへの帯電付与能が低下していく。トナーへの帯電付与能が低下したキャリアは、トナーを帯電する作用が低いため、トナーの帯電量は低くなり易い。
【0026】
そして、画像形成装置の現像手段内に存在している、外添剤が埋没しているトナー粒子を含むトナーは、帯電量が低下しているため、上記設定の画像形成装置は、現像に必要なトナーの帯電量を維持するために、現像手段内でトナー濃度を低下させるように働く。その結果、トナー画像の現像に供されるトナーの量が低下し、画像濃度の低下が発生し易くなる。
【0027】
これに対して、本実施形態に係る現像剤は、ポリエステル樹脂を含む結着樹脂、及びスチレン(メタ)アクリル樹脂を含有し、スチレン(メタ)アクリル樹脂が平均径300nm以上800nm以下のドメインを形成しているトナー粒子を有するトナーと、磁性粉分散型の芯材粒子、及び前記芯材粒子の表面に設けられ、窒素原子を含有する(メタ)アクリル酸誘導体を由来とする構造単位を有する樹脂を含む被覆層を有するキャリアとを組み合わせている。
【0028】
トナーは、平均径300nm以上800nm以下のドメインを形成しているスチレン(メタ)アクリル樹脂を含むトナー粒子を有することによって、トナーが受ける熱的負荷、及び機械的負荷に対する耐性が向上し、外添剤のトナー粒子への埋没を抑制し易くなる。その結果、トナーの帯電量の低下が抑制される。
キャリアは、芯材粒子が、磁性粉分散型であることで、磁性粒子(例えば、フェライト粒子)と比較して比重が小さい。そのため、現像手段内でのキャリアが受ける機械的負荷が軽減され易くなり、トナーへの帯電付与能の低下が抑制される。また、被覆層が、窒素原子を含有する(メタ)アクリル酸誘導体を由来とする構造単位を有する樹脂を含むことで、トナーへの帯電付与能が確保され易くなる。窒素原子を含有する(メタ)アクリル酸誘導体は、温度が高くなっても、トナーへの高い帯電付与能力を維持する。
その結果、上記の芯材粒子と被覆層とを組み合わせたキャリアは、トナーへの帯電付与能が安定化され易いものとなる。
【0029】
上記のとおり、本実施形態に係る現像剤は、上記のトナーとキャリアとを組み合わせた構成によって、トナーの帯電量の低下が抑制され、キャリアのトナーへの帯電付与能が維持され易くなる。その結果として、本実施形態に係る現像剤は、直接転写方式、且つ、トナーリクレーム方式の画像形成装置において、記録媒体の両面に繰り返し画像を形成したときに生じる画像濃度の低下が抑制される。
【0030】
以上から、本実施形態に係る現像剤は、上記構成により、画像濃度の低下が抑制されると推測される。
【0031】
なお、上記のとおり、本実施形態に係る現像剤は、上記のトナーとキャリアとを組み合わせた構成によって、トナーの帯電量の低下が抑制される。そのため、直接転写方式、且つ、トナーリクレーム方式の画像形成装置において、記録媒体の両面に繰り返し画像を形成した場合であっても、かぶりや黒点等の画像欠陥の発生が抑制され易くなる。
【0032】
以下、本実施形態に係る現像剤を構成するトナー及びキャリアの詳細について説明する。
【0033】
〔静電荷像現像用トナー〕
本実施形態に係る静電荷像現像用トナー(以下、「トナー」と称する)は、トナー粒子と、外添剤と、を含んで構成される。
【0034】
(トナー粒子)
トナー粒子は、例えば、ポリエステル樹脂を含む結着樹脂と、スチレン(メタ)アクリル樹脂と、必要に応じて、離型剤と、着色剤と、その他添加剤と、を含んで構成される。
【0035】
−結着樹脂−
結着樹脂としては、定着性の点で、ポリエステル樹脂が適用される。全結着樹脂に対するポリエステル樹脂の割合は、例えば、85質量%以上がよく、好ましくは95質量%以上、より好ましくは100質量%である。
【0036】
ポリエステル樹脂としては、例えば、公知のポリエステル樹脂が挙げられる。
ポリエステル樹脂としては、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールとの縮重合体が挙げられる。なお、ポリエステル樹脂としては、市販品を使用してもよいし、合成したものを使用してもよい。
【0037】
多価カルボン酸としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸(例えばシュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アルケニルコハク酸、アジピン酸、セバシン酸等)、脂環式ジカルボン酸(例えばシクロヘキサンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等)、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステルが挙げられる。これらの中でも、多価カルボン酸としては、例えば、芳香族ジカルボン酸が好ましい。
多価カルボン酸は、ジカルボン酸と共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上のカルボン酸を併用してもよい。3価以上のカルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステル等が挙げられる。
多価カルボン酸は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0038】
多価アルコールとしては、例えば、脂肪族ジオール(例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等)、脂環式ジオール(例えばシクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA等)、芳香族ジオール(例えばビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等)が挙げられる。これらの中でも、多価アルコールとしては、例えば、芳香族ジオール、脂環式ジオールが好ましく、より好ましくは芳香族ジオールである。
多価アルコールは、ジオールと共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上のアルコールを併用してもよい。3価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
多価アルコールは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、50℃以上80℃以下が好ましく、50℃以上65℃以下がより好ましい。
ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線より求める。より具体的にはJIS K7121−1987「プラスチックの転移温度測定方法」のガラス転移温度の求め方に記載の「補外ガラス転移開始温度」により求められる。
【0040】
ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、5,000以上1,000,000以下が好ましく、7,000以上500,000以下がより好ましい。
ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は、2,000以上100,000以下が好ましい。
ポリエステル樹脂の分子量分布Mw/Mnは、1.5以上100以下が好ましく、2以上60以下がより好ましい。
重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定する。GPCによる分子量測定は、測定装置として東ソー社製HLC−8120を用い、カラムとして東ソー社製TSKgel SuperHM−M15cm)を用い、溶媒としてテトラヒドロフランを用いて行う。重量平均分子量及び数平均分子量は、この測定結果から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して算出する。
【0041】
ポリエステル樹脂は、周知の製造方法により得られる。具体的には、例えば、重合温度を180℃以上230℃以下とし、必要に応じて反応系内を減圧にし、縮合の際に発生する水やアルコールを除去しながら反応させる方法により得られる。
なお、原料の単量体が、反応温度下で溶解又は相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助剤として加え溶解させてもよい。この場合、重縮合反応は溶解補助剤を留去しながら行う。共重合反応において相溶性の悪い単量体が存在する場合は、あらかじめ相溶性の悪い単量体とその単量体と重縮合予定の酸又はアルコールとを縮合させておいてから主成分と共に重縮合させるとよい。
【0042】
結着樹脂の含有量としては、例えば,トナー粒子全体に対して、40質量%以上95質量%以下が好ましく、50質量%以上90質量%以下がより好ましく、60質量%以上85質量%以下がさらに好ましい。
【0043】
結着樹脂は、ポリエステル樹脂と共に、他の結着樹脂を併用してもよい。
他の結着樹脂としては、例えば、スチレン類(例えば、スチレン、パラクロロスチレン、α−メチルスチレン等)、(メタ)アクリル酸エステル類(例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等)、エチレン性不飽和ニトリル類(例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等)、ビニルエーテル類(例えば、ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等)、ビニルケトン類(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等)、オレフィン類(例えば、エチレン、プロピレン、ブタジエン等)等の単量体の単独重合体、又はこれら単量体を2種以上組み合せた共重合体からなるビニル系樹脂(但し、スチレン(メタ)アクリル樹脂は除く)が挙げられる。
他の結着樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、変性ロジン等の非ビニル系樹脂、これらと前記ビニル系樹脂との混合物、又は、これらの共存下でビニル系単量体を重合して得られるグラフト重合体等も挙げられる。
これらの他の結着樹脂は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0044】
−スチレン(メタ)アクリル樹脂−
スチレン(メタ)アクリル樹脂は、スチレン骨格を有する単量体と(メタ)アクリロイル骨格を有する単量体とを少なくとも共重合した共重合体である。
なお、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び「メタクリル」の両方を含む表現である。また、「(メタ)アクリロイル」とは、「アクリロイル」、「メタクリロイル」の両方を含む表現である。
【0045】
スチレン骨格を有する単量体(以下、「スチレン系単量体」とも称する)としては、例えば、スチレン、アルキル置換スチレン(例えば、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−エチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレン等)、ハロゲン置換スチレン(例えば、2−クロロスチレン、3−クロロスチレン、4−クロロスチレン等)、ビニルナフタレン等が挙げられる。スチレン系単量体は、1種単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。
これらの中で、スチレン系単量体としては、反応し易さ、反応の制御の容易さ、さらに入手性の点で、スチレンが好ましい。
【0046】
(メタ)アクリロイル骨格を有する単量体(以下、「(メタ)アクリル系単量体」とも称する)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、(メタ)アクリル酸n−メチル、(メタ)アクリル酸n−エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸n−デシル、(メタ)アクリル酸n−ドデシル、(メタ)アクリル酸n−ラウリル、(メタ)アクリル酸n−テトラデシル、(メタ)アクリル酸n−ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸n−オクタデシル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸イソヘキシル、(メタ)アクリル酸イソヘプチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t−ブチルシクロヘキシル等)、(メタ)アクリル酸アリールエステル(例えば、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ビフェニル、(メタ)アクリル酸ジフェニルエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルフェニル、(メタ)アクリル酸ターフェニル等)、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−カルボキシエチル、(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。(メタ)アクリル酸系単量体は、1種単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。
【0047】
スチレン系単量体と(メタ)アクリル系単量体との共重合比(質量基準、スチレン系単量体/(メタ)アクリル系単量体)は、例えば85/15乃至70/30であることがよい。
【0048】
スチレン(メタ)アクリル樹脂は、画像濃度の低下をより抑制する点で、架橋構造を有することがよい。架橋構造を有するスチレン(メタ)アクリル樹脂は、例えば、スチレン系単量体と、(メタ)アクリル系単量体と、架橋性単量体とを少なくとも共重合して、架橋した架橋物が挙げられる。
【0049】
架橋性単量体としては、例えば、2官能以上の架橋剤が挙げられる。
2官能の架橋剤としては、例えば,ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジ(メタ)アクリレート化合物(例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、デカンジオールジアクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等)、ポリエステル型ジ(メタ)アクリレート、メタクリル酸2−([1’−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル等が挙げられる。
多官能の架橋剤としては、トリ(メタ)アクリレート化合物(例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等)、テトラ(メタ)アクリレート化合物(例えば、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、オリゴエステル(メタ)アクリレート等)、2,2−ビス(4−メタクリロキシ、ポリエトキシフェニル)プロパン、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリテート、ジアリールクロレンデート等が挙げられる。
【0050】
全単量体に対する架橋性単量体の共重合比(質量基準、架橋性単量体/全単量体)は、例えば2/1000乃至30/1000であることがよい。
【0051】
スチレン(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量は、保管安定性の点で、例えば、30000以上200000以下がよく、好ましくは40000以上100000以下、より好ましくは50000以上80000以下である。
スチレン(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量は、ポリエステル樹脂の重量平均分子量と同じ方法により測定された値である。
【0052】
スチレン(メタ)アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、画像濃度の低下をより抑制する点で、例えば、50℃以上75℃以下がよく、好ましくは55℃以上65℃以下、より好ましくは57℃以上60℃以下である。
なお、スチレン(メタ)アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線より求め、より具体的にはJIS K−7121−1987「プラスチックの転移温度測定方法」のガラス転移温度の求め方に記載の「補外ガラス転移開始温度」により求められる。
【0053】
スチレン(メタ)アクリル樹脂の含有量は、画像濃度の低下をより抑制する点で、例えば、トナー粒子に対して10質量%以上30質量%以下がよく、好ましくは12質量%以上28質量%以下、より好ましくは15質量%以上25質量%以下である。
【0054】
−離型剤−
離型剤としては、例えば、炭化水素系ワックス;カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等の天然ワックス;モンタンワックス等の合成又は鉱物・石油系ワックス;脂肪酸エステル、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス;などが挙げられる。離型剤は、これに限定されるものではない。
【0055】
これらの中でも、離型剤としては、炭化水素系ワックス(炭化水素を骨格として有するワックス)が好ましい。炭化水素系ワックスは、定着時に速やかにトナー(トナー粒子)表面に染み出し易く、離型性の点で好適である。
炭化水素系ワックスとしては、フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレン系ワックス(ポリエチレン骨格を有するワックス)、ポリプロピレン系ワックス(ポリプロピレン骨格を有するワックス)等の合成ワックス;パラフィン系ワックス(パラフィン骨格を有するワックス)、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス;等が挙げられる。炭化水素系ワックスの中でも、離型性の点で、合成ワックスが好ましい。特に、画像濃度の低下をより抑制する点でフィッシャートロプシュワックスがより好ましい。
【0056】
炭化水素系ワックスを用いる場合、全離型剤に対する炭化水素系ワックスの含有量は、85質量%以上100質量%以下がよく、95質量%以上100質量%以下が好ましい。より好ましくは100質量%である。
【0057】
離型剤の融解温度は、50℃以上110℃以下が好ましく、60℃以上100℃以下がより好ましい。
なお、融解温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線から、JIS K7121−1987「プラスチックの転移温度測定方法」の融解温度の求め方に記載の「融解ピーク温度」により求める。
【0058】
離型剤の含有量としては、例えば、トナー粒子全体に対して、1質量%以上20質量%以下が好ましく、5質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0059】
−着色剤−
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、ピグメントイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、ブリリアントカーミン3B、ブリリアントカーミン6B、デュポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ピグメントレッド、ローズベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、ピグメントブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオキサレートなどの種々の顔料、又は、アクリジン系、キサンテン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、チオインジコ系、ジオキサジン系、チアジン系、アゾメチン系、インジコ系、フタロシアニン系、アニリンブラック系、ポリメチン系、トリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、チアゾール系などの各種染料等が挙げられる。
着色剤は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0060】
着色剤は、必要に応じて表面処理された着色剤を用いてもよく、分散剤と併用してもよい。また、着色剤は、複数種を併用してもよい。
【0061】
着色剤の含有量としては、例えば、トナー粒子全体に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、3質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0062】
−その他の添加剤−
その他の添加剤としては、例えば、磁性体、帯電制御剤、無機粉体等の周知の添加剤が挙げられる。これらの添加剤は、内添剤としてトナー粒子に含まれる。
【0063】
−トナー粒子の特性等−
トナー粒子は、単層構造のトナー粒子であってもよいし、芯部(コア粒子)と芯部を被覆する被覆層(シェル層)とで構成された所謂コア・シェル構造のトナー粒子であってもよいが、コア・シェル構造のトナー粒子であることが好ましい。
ここで、コア・シェル構造のトナー粒子は、例えば、結着樹脂と必要に応じて着色剤等のその他添加剤とを含んで構成された芯部と、結着樹脂と離型剤とを含んで構成された被覆層と、で構成されていることが好ましい。
【0064】
トナー粒子の体積平均粒径(D50v)としては、2μm以上10μm以下が好ましく、4μm以上8μm以下がより好ましい。
【0065】
なお、トナー粒子の各種平均粒径、及び各種粒度分布指標は、コールターマルチサイザーII(ベックマン・コールター社製)を用い、電解液はISOTON−II(ベックマン・コールター社製)を使用して測定される。
測定に際しては、分散剤として、界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい)の5%水溶液2ml中に測定試料を0.5mg以上50mg以下加える。これを電解液100ml以上150ml以下中に添加する。
試料を懸濁した電解液は超音波分散器で1分間分散処理を行い、コールターマルチサイザーIIにより、アパーチャー径として100μmのアパーチャーを用いて2μm以上60μm以下の範囲の粒径の粒子の粒度分布を測定する。なお、サンプリングする粒子数は50000個である。
測定される粒度分布を基にして分割された粒度範囲(チャンネル)に対して体積、数をそれぞれ小径側から累積分布を描いて、累積16%となる粒径を体積平均粒径D16v、数平均粒径D16p、累積50%となる粒径を体積平均粒径D50v、累積数平均粒径D50p、累積84%となる粒径を体積平均粒径D84v、数平均粒径D84pと定義する。
これらを用いて、体積平均粒度分布指標(GSDv)は(D84v/D16v)
1/2、数平均粒度分布指標(GSDp)は(D84p/D16p)
1/2として算出される。
【0066】
トナー粒子の形状係数SF1としては、110以上150以下が好ましく、120以上140以下がより好ましい。
【0067】
なお、形状係数SF1は、下記式により求められる。
式:SF1=(ML
2/A)×(π/4)×100
上記式中、MLはトナーの絶対最大長、Aはトナーの投影面積を各々示す。
具体的には、形状係数SF1は、主に顕微鏡画像又は走査型電子顕微鏡(SEM)画像を画像解析装置を用いて解析することによって数値化され、以下のようにして算出される。すなわち、スライドガラス表面に散布した粒子の光学顕微鏡像をビデオカメラによりルーゼックス画像解析装置に取り込み、100個の粒子の最大長と投影面積を求め、上記式によって計算し、その平均値を求めることにより得られる。
【0068】
本実施形態に係る現像剤を構成するトナーのトナー粒子は、スチレン(メタ)アクリル樹脂のドメインの平均径が、300nm以上800nm以下である。この範囲であると、外添剤のトナー粒子への埋没が抑制され、画像濃度の低下が抑制される。この平均径は、画像濃度の低下をより抑制する点から、350nm以上750nm以下が好ましく、400nm以上700nm以下がより好ましい。
【0069】
なお、スチレン(メタ)アクリル樹脂のドメインにおいて、平均径±0.1μmの範囲に含まれるドメインの個数割合は、65%以上であることが好ましい。この個数割合は、画像濃度の低下をより抑制の点から、70%以上が好ましく、75%以上が更に好ましい。
【0070】
以下、スチレン(メタ)アクリル樹脂のドメインの平均径の測定方法を説明する。
【0071】
測定用の試料および画像は、以下の方法により調製する。
トナーをエポキシ樹脂に混合して包埋し、エポキシ樹脂を固化する。得られた固化物を、ウルトラミクロトーム装置(Leica社製UltracutUCT)により切断し、厚さ80nm以上130nm以下の薄片試料を作製する。次に、得られた薄片試料を30℃のデシケータ内で四酸化ルテニウムにより3時間染色する。そして、超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡(FE−SEM、日立ハイテクノロジーズ社製、S−4800)にて、染色された薄片試料のSEM画像を得る。離型剤、スチレン(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂の順で四酸化ルテニウムに染色され易いので、染色度合いに起因する濃淡で、各成分が識別される。試料の状態などにより濃淡が判別しにくい場合は、染色時間を調整する。
なお、トナー粒子の断面において、着色剤のドメインは、離型剤のドメイン及びスチレン(メタ)アクリル樹脂のドメインよりも小さいので、大きさによって区別される。
【0072】
スチレン(メタ)アクリル樹脂のドメインの平均径は、以下の方法により測定される値である。
前記SEM画像において、最大長がトナー粒子の体積平均粒径の85%以上であるトナー粒子断面を30個選択し、染色されたスチレン(メタ)アクリル樹脂のドメインを合計100個観察する。ドメインそれぞれの最大長を測定し、該最大長をドメインの直径とみなし、その算術平均を平均径とする。
なお、平均径±100nmの範囲に含まれるドメインの個数は、上記の測定した合計100個のドメインの各直径をもとに、その個数割合が求められる。
【0073】
スチレン(メタ)アクリル樹脂のドメインの平均径、及びドメインサイズの分布は、例えば、トナー粒子を凝集合一で製造し、製造の際に使用するスチレン(メタ)アクリル樹脂粒子分散液に含まれる樹脂粒子の体積平均粒径を調整すること;体積平均粒径の異なるスチレン(メタ)アクリル樹脂粒子分散液を複数用意し、それを組み合せて使用すること;等によって制御する方法が挙げられる。
【0074】
(外添剤)
上記のようなトナー粒子に外添される外添剤として、例えば、無機粒子が挙げられる。該無機粒子として、SiO
2、TiO
2、Al
2O
3、CuO、ZnO、SnO
2、CeO
2、Fe
2O
3、MgO、BaO、CaO、K
2O、Na
2O、ZrO
2、CaO・SiO
2、K
2O・(TiO
2)n、Al
2O
3・2SiO
2、CaCO
3、MgCO
3、BaSO
4、MgSO
4等が挙げられる。
【0075】
外添剤としての無機粒子の表面は、疎水化処理が施されていることがよい。疎水化処理は、例えば、疎水化処理剤に無機粒子を浸漬する等して行う。疎水化処理剤は特に制限されないが、例えば、シラン系カップリング剤、シリコーンオイル、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
疎水化処理剤の量としては、通常、例えば、無機粒子100質量部に対して、1質量部以上10質量部以下である。
【0076】
外添剤としては、樹脂粒子(ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、メラミン樹脂等の樹脂粒子)、クリーニング活剤(例えば、ステアリン酸亜鉛に代表される高級脂肪酸の金属塩、フッ素系高分子量体の粒子)等も挙げられる。
【0077】
外添剤の外添量としては、例えば、トナー粒子に対して、0.01質量%以上5質量%以下が好ましく、0.01質量%以上2.0質量%以下がより好ましい。
【0078】
外添剤としては、上記に挙げた外添剤の中でも、画像濃度の低下をより抑制する点で、体積平均粒径が80nm以上200nm以下の無機粒子を含むことがよい。体積平均粒径は、100nm以上200nm以下が好ましく、120nm以上180nm以下がより好ましい。
体積平均粒径が80nm以上200nm以下の無機粒子は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0079】
外添剤の体積平均粒子径は、次に示す方法により測定される。
測定対象となるトナーのトナー粒子に付着している無機粒子の一次粒子500個を走査型電子顕微鏡SEM(Scanning Electron Microscope)装置により40000倍の倍率で観察し、一次粒子の画像解析によって粒子ごとの最長径、最短径を測定し、この中間値から球相当径を測定する。得られた球相当径の累積頻度における50%径(D50v)を、外添剤の平均粒径(つまり体積平均粒径)とする。
【0080】
体積平均粒径が80nm以上200nm以下の無機粒子としては、例えば、トナー粒子に対して、0.01質量%以上5質量%以下が好ましく、0.01質量%以上2.0質量%以下がより好ましい。
【0081】
体積平均粒径が80nm以上200nm以下の無機粒子としては、特に限定されるものではないが、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。例えば、この無機粒子としてはシリカ粒子、チタニア粒子、アルミナ粒子からなる群より選ばれる少なくとも一つを含むのがよい。
シリカ粒子としては、具体的には、ゾルゲルシリカ粒子、水性コロイダルシリカ粒子、アルコール性シリカ粒子、気相法により得られるフェームドシリカ粒子、溶融シリカ粒子等が挙げられる。
チタニア粒子としては、具体的には、アナターゼ型、及びルテル型の酸化チタン粒子等が挙げられる。
アルミナ粒子としては、具体的には、α−アルミナ、δ−アルミナ、θ−アルミナ、χ−アルミナ等の無水アルミナや、活性酸化アルミニウム等が挙げられる。
【0082】
これらの中でも、シリカ粒子、及びチタニア粒子の少なくとも一つを含むのが好ましい。シリカ粒子の中でも、ゾルゲルシリカ粒子が好ましく、チタニア粒子の中でも、メタチタン酸粒子が好ましい。体積平均粒径が80nm以上200nm以下の無機粒子としては例えば、ゾルゲルシリカ粒子と、メタチタン酸粒子とを併用してもよい。
【0083】
ゾルゲルシリカ粒子は、例えば、水ガラスを原料としてシリカゾルを得る方法によって製造されたものでもよく、アルコキシシランに代表されるケイ素化合物を原料としてゾルゲル法によって粒子を生成する方法(いわゆる湿式方法)によって製造されたものでもよい。ゾルゲルシリカ粒子は、例えば、アルコールを含む溶媒中に、アルカリ触媒が含まれるアルカリ触媒溶液を準備し、アルカリ触媒溶液中に、テトラアルコキシシランを供給すると共に、アルカリ触媒を供給する方法等によって得られる。
【0084】
メタチタン酸とは、チタン酸水和物TiO
2・nH
2Oのうち、n=1のものをいう。
メタチタン酸粒子は、通常、溶媒中で化学反応させるという湿式法によって精製される。湿式法は、硫酸法及び塩酸法に分けられる。硫酸法では、液相中で下記の反応が進行し、TiO(OH)
2が加水分解により得られる。
FeTiO
3+2H2SO
4→FeSO
4+TiOSO
4+2H
2O
TiOSO
4+2H
2O→TiO(OH)
2+H
2SO
4
【0085】
また、塩酸湿式法では、まず乾式法と同様の方法により塩素化して4塩化チタンを生成し、その後、水に溶解させ、これに強塩基を投入しながら加水分解させることによりTiO(OH)
2が得られる。これを化学反応式で示すと、以下のようになる。
TiCl
4+H
2O→TiOCl
2+2HCl
TiOCl
2+2H
2O→TiO(OH)
2+2HCl
【0086】
(トナーの製造方法)
次に、本実施形態に係るトナーの製造方法について説明する。
本実施形態に係るトナーは、トナー粒子を製造後、トナー粒子に対して、外添剤を外添することで得られる。
【0087】
トナー粒子は、乾式製法(例えば、混練粉砕法等)、湿式製法(例えば、凝集合一法、懸濁重合法、溶解懸濁法等)のいずれにより製造してもよい。これらの製法に特に制限はなく、周知の製法が採用される。中でも、凝集合一法によりトナー粒子を得ることが好ましい。
【0088】
具体的には、例えば、トナー粒子を凝集合一法により製造する場合、
ポリエステル樹脂粒子が分散されたポリエステル樹脂粒子分散液を準備する工程(ポリエステル樹脂粒子分散液準備工程)と;
スチレン(メタ)アクリル樹脂粒子が分散されたスチレン(メタ)アクリル樹脂粒子分散液を準備する工程(スチレン(メタ)アクリル樹脂粒子分散液準備工程)と;
前記2つの樹脂粒子分散液を混合した混合分散液中で(必要に応じて、離型剤、着色剤等の他の粒子分散液も混合した分散液中で)、樹脂粒子を(必要に応じて他の粒子をも)凝集させ、集粒子を形成する工程と;
凝集粒子が分散された凝集粒子分散液を加熱し、凝集粒子を融合・合一して、トナー粒子を形成する工程(融合・合一工程)と;
を経て、トナー粒子を製造する。
【0089】
以下、各工程の詳細について説明する。
以下の説明では、着色剤、及び離型剤を含むトナー粒子を得る方法について説明するが、着色剤、離型剤は、必要に応じて用いられるものである。無論、着色剤以外のその他添加剤を用いてもよい。
【0090】
−樹脂粒子分散液準備工程−
まず、結着樹脂となるポリエステル樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液と共に、スチレン(メタ)アクリル樹脂粒子が分散されたスチレン(メタ)アクリル樹脂粒分散液、着色剤粒子が分散された着色剤分散液、離型剤粒子が分散された離型剤粒子分散液を準備する。
【0091】
ポリエステル樹脂粒子分散液は、例えば、ポリエステル樹脂粒子を界面活性剤により分散媒中に分散させることにより調製する。
【0092】
ポリエステル樹脂粒子分散液に用いる分散媒としては、例えば水系媒体が挙げられる。
水系媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の水;アルコール類;などが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0093】
界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン系界面活性剤;などが挙げられる。これらの中でも特に、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤が挙げられる。非イオン系界面活性剤は、アニオン界面活性剤又はカチオン界面活性剤と併用してもよい。
界面活性剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0094】
ポリエステル樹脂粒子を分散媒に分散する方法としては、例えば、回転せん断型ホモジナイザーや、メディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミル等を用いた一般的な分散方法が挙げられる。ほかに、転相乳化法によって分散媒にポリエステル樹脂粒子を分散させてもよい。転相乳化法とは、分散すべき樹脂を、その樹脂が可溶な疎水性有機溶剤中に溶解せしめ、有機連続相(O相)に塩基を加えて中和したのち、水(W相)を投入することによって、W/OからO/Wへの転相を行い、樹脂を水系媒体中に粒子状に分散する方法である。
【0095】
ポリエステル樹脂粒子分散液中に分散するポリエステル樹脂粒子の体積平均粒径としては、例えば0.01μm以上1μm以下が好ましく、0.08μm以上0.8μm以下がより好ましく、0.1μm以上0.6μm以下が更に好ましい。
ポリエステル樹脂粒子の体積平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、堀場製作所製、LA−700)の測定によって得られた粒度分布を用い、分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、体積について小粒径側から累積分布を描き、全粒子に対して体積50%となる粒径を体積平均粒径D50vとする。なお、他の分散液中の粒子の体積平均粒径も同様に測定される。
【0096】
ポリエステル樹脂粒子分散液に含まれるポリエステル樹脂粒子の含有量としては、例えば、5質量%以上50質量%以下が好ましく、10質量%以上40質量%以下がより好ましい。
【0097】
ポリエステル樹脂粒子分散液と同様にして、スチレン(メタ)アクリル樹脂粒子分散液、着色剤粒子分散液、離型剤粒子分散液も調製される。つまり、ポリエステル樹脂粒子分散液における粒子の体積平均粒径、分散媒、分散方法、及び粒子の含有量に関しては、スチレン(メタ)アクリル樹脂粒子分散液中に分散するスチレン(メタ)アクリル樹脂粒子、着色剤粒子分散液中に分散する着色剤粒子、及び離型剤粒子分散液中に分散する離型剤粒子についても同様である。
【0098】
−凝集粒子形成工程−
次に、ポリエステル樹脂粒子分散液と、スチレン(メタ)アクリル樹脂粒子分散液と、離型剤粒子分散液と、着色剤粒子分散液と、を混合する。
そして、混合分散液中で、ポリエステル樹脂粒子とスチレン(メタ)アクリル樹脂粒子と着色剤粒子と離型剤粒子とをヘテロ凝集させ目的とするトナー粒子の径に近い径を持つ、ポリエステル樹脂粒子とスチレン(メタ)アクリル樹脂粒子と着色剤粒子と離型剤粒子とを含む凝集粒子を形成する。
【0099】
具体的には、例えば、混合分散液に凝集剤を添加すると共に、混合分散液のpHを酸性(例えばpH2以上5以下)に調整し、必要に応じて分散安定剤を添加した後、ポリエステル樹脂のガラス転移温度に近い温度(具体的には、例えば、ポリエステル樹脂のガラス転移温度の−30℃以上且つガラス転移温度の−10℃以下)に加熱し、混合分散液に分散された粒子を凝集させて、凝集粒子を形成する。
凝集粒子形成工程においては、例えば、混合分散液を回転せん断型ホモジナイザーで攪拌下、室温(例えば25℃)で上記凝集剤を添加し、混合分散液のpHを酸性(例えばpH2以上5以下)に調整し、必要に応じて分散安定剤を添加した後に、上記加熱を行ってもよい。
【0100】
凝集剤としては、例えば、混合分散液に添加される分散剤として用いる界面活性剤と逆極性の界面活性剤、無機金属塩、2価以上の金属錯体が挙げられる。特に、凝集剤として金属錯体を用いた場合には、界面活性剤の使用量が低減され、帯電特性が向上する。
凝集剤の金属イオンと錯体もしくは類似の結合を形成する添加剤を必要に応じて用いてもよい。この添加剤としては、キレート剤が好適に用いられる。
【0101】
無機金属塩としては、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム等の金属塩;ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシウム等の無機金属塩重合体;などが挙げられる。
キレート剤としては、水溶性のキレート剤を用いてもよい。キレート剤としては、例えば、酒石酸、クエン酸、グルコン酸等のオキシカルボン酸;イミノ二酢酸(IDA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等のアミノカルボン酸;などが挙げられる。
キレート剤の添加量は、例えば、樹脂粒子100質量部に対して0.01質量部以上5.0質量部以下が好ましく、0.1質量部以上3.0質量部未満がより好ましい。
【0102】
−融合・合一工程−
次に、凝集粒子が分散された凝集粒子分散液に対して、例えば、ポリエステル樹脂のガラス転移温度以上(例えば、ポリエステル樹脂のガラス転移温度より10℃乃至50℃高い温度以上)に加熱して、凝集粒子を融合・合一し、トナー粒子を形成する。
【0103】
以上の工程を経て、トナー粒子が得られる。
なお、凝集粒子が分散された凝集粒子分散液を得た後、当該凝集粒子分散液と、樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液と、をさらに混合し、凝集粒子の表面にさらに樹脂粒子を付着するように凝集して、第2凝集粒子を形成する工程と、第2凝集粒子が分散された第2凝集粒子分散液に対して加熱をし、第2凝集粒子を融合・合一して、コア/シェル構造のトナー粒子を形成する工程と、を経て、トナー粒子を製造してもよい。
【0104】
ここで、融合・合一工程終了後は、溶液中に形成されたトナー粒子を、公知の洗浄工程、固液分離工程、乾燥工程を経て乾燥した状態のトナー粒子を得る。
洗浄工程は、帯電性の点から充分にイオン交換水による置換洗浄を施すことがよい。また、固液分離工程は、特に制限はないが、生産性の点から吸引濾過、加圧濾過等を施すことがよい。また、乾燥工程も特に方法に制限はないが、生産性の点から凍結乾燥、フラッシュジェット乾燥、流動乾燥、振動型流動乾燥等を施すことがよい。
【0105】
そして、本実施形態に係るトナーは、例えば、得られた乾燥状態のトナー粒子に、外添剤を添加し、混合することにより製造される。混合は、例えばVブレンダー、ヘンシェルミキサー、レーディゲミキサー等によって行うことがよい。更に、必要に応じて、振動篩分機、風力篩分機等を使ってトナーの粗大粒子を取り除いてもよい。
【0106】
〔キャリア〕
本実施形態におけるキャリアは、マトリックス樹脂中に磁性粉が分散・配合された磁性粉分散型の芯材粒子と、芯材粒子の表面に設けられ、窒素原子を有する(メタ)アクリル酸誘導体を由来とする構造単位を有する樹脂を含む被覆層と、を有する。
【0107】
(芯材粒子)
磁性粉分散型の芯材粒子に用いられる磁性粉としては、特に限定されないが、従来公知のいずれの磁性粉を使用してもよい。具体的には、γ−酸化鉄、フェライトや、マグネタイト等を挙げることができ、安定性に優れている点で、フェライトや、マグネタイトを用いることがよく、安価な点で、マグネタイトが好ましい。
【0108】
フェライトの例としては、例えば、下記構造式で表されるフェライトの粒子が挙げられる。
構造式:(MO)
X(Fe
2O
3)
Y
(構造式中、Mは、Cu、Zn、Fe、Mg、Mn、Ca、Li、Ti、Ni、Sn、Sr、Al、Ba、Co、及びMoから選ばれる少なくとも1種の金属元素を表す。また、X、Yは、モル比を示し、且つ、X+Y=100を満たす)。
【0109】
フェライトとして、上記構造式で示される構造のうち、Mが複数の金属元素で表される構造は、例えば、Mn−Zn系フェライト、Ni−Zn系フェライト、Mn−Mg系フェライト、Li系フェライト、Cu−Zn系フェライトなどの鉄系酸化物が挙げられる。
【0110】
磁性粉の体積平均粒径は、0.01μm以上1μm以下の範囲であることがよく、0.03μm以上0.5μm以下の範囲であることが好ましく、0.05μm以上0.35μm以下の範囲であることがより好ましい。
なお、磁性粉の体積平均粒径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(LS Particle Size Analyzer:LS13 320、ベックマン・コールター社製)を用いて測定された値をいう。得られた粒度分布を分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、小粒径側から体積累積分布を引いて、累積50%となる粒径(D50v)を体積平均粒径とする。
【0111】
また、磁性粉の芯材粒子中における含有量としては、造粒や、トナー等への機械的負荷が抑制される等の点で、30質量%以上98質量%以下の範囲であることがよく、45質量%以上95質量%以下の範囲であることが好ましく、60質量%以上95質量%以下の範囲であることがより好ましい。
【0112】
磁性粉分散型の芯材粒子を構成する樹脂成分としては、熱可塑性樹脂、又は熱硬化性樹脂のいずれでもよく、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレン(メタ)アクリル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
また、上記キャリアの芯材には、目的に応じて、更にその他の成分を含有していてもよい。その他の成分としては、例えば、帯電制御剤、フッ素含有粒子などが挙げられる。
【0113】
前記磁性粉分散型の芯材粒子の製造方法は、例えば、前記磁性粉とスチレンアクリル樹脂等の樹脂とを、バンバリーミキサー、ニーダなどを用いて溶融混練し、冷却した後に粉砕し、分級する溶融混練法(特公昭59−24416号公報、特公平8−3679号公報等)や、結着樹脂のモノマー単位と磁性粉とを溶媒中に分散して懸濁液を調製し、この懸濁液を重合させる懸濁重合法(特開平5−100493号公報等)や、樹脂溶液中に磁性粉を混合分散した後、噴霧乾燥するスプレードライ法などが知られている。
上記の溶融混練法、懸濁重合法、及びスプレードライ法はいずれも、磁性粉をあらかじめ何らかの手段により調製しておき、この磁性粉と樹脂溶液とを混合し、樹脂溶液中に磁性粉を分散させる工程を含む。
【0114】
(被覆層)
上記した芯材粒子の表面に設けられる被覆層は、窒素原子を有する(メタ)アクリル酸誘導体を由来とする構造単位を有する樹脂(以下、「含窒素(メタ)アクリル樹脂」とも称することがある)を含む。つまり、含窒素(メタ)アクリル樹脂は、窒素原子を有する(メタ)アクリル酸誘導体を少なくとも重合した樹脂である。
なお、本実施形態において、窒素原子を有する(メタ)アクリル酸誘導体とは、(メタ)アクリル系単量体((メタ)アクリロイル骨格を有する単量体)であって、その構造内に窒素原子を有するものを指す。
含窒素(メタ)アクリル樹脂とは、(メタ)アクリル系単量体による主鎖構造を有し、側鎖に窒素原子を含有する置換基を有する樹脂である。含窒素(メタ)アクリル樹脂において、側鎖の窒素原子は、窒素原子を有する(メタ)アクリル酸エステルにより導入されたものであってもよいし、他の窒素原子を有する単量体により導入されたものであってもよい。
なお、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び「メタクリル」の両方を含む表現である。また、「(メタ)アクリロイル」とは、「アクリロイル」、「メタクリロイル」の両方を含む表現である。
【0115】
本実施形態において用いられる含窒素(メタ)アクリル樹脂としては、高帯電付与能の発現の点から、窒素原子を有する(メタ)アクリル酸誘導体として、窒素原子を有する(メタ)アクリル酸エステルを用いることが好ましい。つまり、含窒素(メタ)アクリル樹脂は、少なくとも窒素原子を有する(メタ)アクリル酸エステルを重合した樹脂であることが好ましい。
特に、含窒素(メタ)アクリル樹脂としては、高帯電付与能の発現の点から、窒素原子を有する(メタ)アクリル酸エステルを由来とする構造単位を、含窒素(メタ)アクリル樹脂の質量に対して1質量%以上含む樹脂であることが好ましい。
含窒素(メタ)アクリル樹脂中の、窒素原子を有する(メタ)アクリル酸エステルを由来とする構造単位を含有量は、更なる高帯電付与能の発現の点から、含窒素(メタ)アクリル樹脂の質量に対して3質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上が特に好ましい。上限としては、100質量%であることがよい。共重合体である場合、90質量%以下がよく、80%以下が好ましく、70%以下がより好ましい。
【0116】
含窒素(メタ)アクリル樹脂は、窒素原子を有する(メタ)アクリル酸エステルを由来とする構造単位のみから構成される単独重合体であってもよい(つまり、窒素原子を有する(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体)。また、含窒素(メタ)アクリル樹脂は、窒素原子を有する(メタ)アクリル酸エステルを由来とする構造単位以外のその他の構造単位を含んでいてもよい。つまり、含窒素(メタ)アクリル樹脂は、窒素原子を有する(メタ)アクリル酸エステルと、窒素原子を有する(メタ)アクリル酸エステル以外の単量体との共重合体であってもよい。
【0117】
窒素原子を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、窒素原子を含む置換基を有する(メタ)アクリル酸エステルであれば、特に制限なく用いられる。
窒素原子を含む置換基としては、アミノ基、メチルアミノ基、カルバモイル基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基、スルホンアミド基、スルファモイル基カルバモイル基アミド基等が挙げられる。
【0118】
窒素原子を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、特に制限はないが、帯電付与能の点から、アミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステルがよい。
具体的には、例えば、N,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジプロピルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N−ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジプロピルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−メチルエチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N−メチルエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−メチルエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−メチルプロピルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N−メチルプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−メチルプロピルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−エチルプロピルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N−エチルプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−エチルプロピルアミノプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルエステルが挙げられる。これらの中でも、高帯電付与能という観点から、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、及びジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0119】
窒素原子を有する(メタ)アクリル酸エステル以外の単量体としては、特に制限はないが、次の単量体が挙げられる。
具体的には、例えば、スチレン、パラクロロスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体(スチレン骨格を有する単量体);(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸の直鎖状又は分岐状アルキルエステル((メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等)、(メタ)アクリル酸の環状アルキルエステル((メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル等)の(メタ)アクリル系単量体((メタ)アクリロイル骨格を有する単量体);アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のエチレン性不飽和ニトリル系単量体(エチレン性不飽和ニトリル骨格を有する単量体);ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル系単量体(ビニルエーテル骨格を有する単量体);ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン系単量体(ビニルケトン骨格を有する単量体):エチレン、プロピレン、ブタジエン等のオレフィン系単量体(オレフィン骨格を有する単量体);等が挙げられる。
【0120】
含窒素(メタ)アクリル樹脂は、画像濃度の低下をより抑制する点で、アミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、又はアミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステルと、アミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル以外の(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体が好ましい。具体的には、(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルエステルの単独重合体、又は、(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルエステルと、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの共重合体であることがより好ましい。
なお、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとは、(メタ)アクリル酸の直鎖状、分岐状、及び環状のアルキルエステルの総称を表す。
(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルエステルと、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの共重合体としては、具体的には、(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルエステルと、(メタ)アクリル酸の直鎖状又は分岐状アルキルエステルとの共重合体;(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルエステルと、(メタ)アクリル酸の環状アルキルエステルとの共重合体;(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルエステルと、(メタ)アクリル酸の直鎖状又は分岐状アルキルエステル、及び(メタ)アクリル酸の環状アルキルエステルとの三元共重合体;が挙げられる。
【0121】
含窒素(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量は、50000以上140000以下の範囲が好ましく、70000以上120000以下の範囲がより好ましい。
【0122】
被覆層に含まれる含窒素(メタ)アクリル樹脂の含有量は、高帯電付与能の発現の点から、被覆層全体に対し、0.1質量%以上5質量%以下が好ましく、0.2質量%以上4質量%以下がより好ましく、0.3質量%以上3質量%以下が更に好ましい。
【0123】
被覆層は、高帯電付与能の発現といった効果を損なわない範囲において、含窒素(メタ)アクリル樹脂以外の樹脂を含んでいてもよい。
含窒素(メタ)アクリル樹脂以外の樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン等のポリビニル系樹脂;ポリビニリデン系樹脂;塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体;スチレン−アクリル酸共重合体;オルガノシロキサン結合からなるストレートシリコーン樹脂又はその変性品;ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン等のフッ素系樹脂;シリコーン樹脂;ポリエステル;ポリウレタン;ポリカーボネート;フェノール樹脂;尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、ポリアミド樹脂等のアミノ樹脂;エポキシ樹脂、等のそれ自体公知の樹脂が挙げられる。
これら樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの樹脂の含有量は、被覆層の全樹脂中、50質量%以下であることが好ましい。
【0124】
被覆層は、導電性粒子を含有してもよい。
ここで、導電性とは、体積抵抗率が10
7Ω・cm未満であることを意味する。
導電性粒子としては、金、銀、銅等の金属粒子;カーボンブラック粒子;酸化チタン、酸化亜鉛等の半導電性酸化物粒子;酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム粉末等の表面を酸化スズ、カーボンブラック、金属等で覆った粒子;メラミン樹脂粒子、尿素樹脂粒子、ウレタン樹脂粒子、ポリエステル樹脂粒子、アクリル樹脂粒子等の樹脂粒子;などが挙げられる。
これらは、1種を用いてもよいし、複数種を用いてもよい。
【0125】
被覆層の厚さは、特に限定されるものではないが、0.1μm以上3.0μm以下が望ましく、0.2μm以上2.0μm以下がより望ましく、0.2μm以上1.0μm以下が更に望ましい。
被覆層の厚さは、以下の方法により測定される。
2液式接着剤クイック30(コニシ社製)の混合液70質量部に、キャリア30質量部を加えて更に混合し、25℃下で48時間静置して硬化させる。硬化後の包埋物を剃刀で形を整えた後、ダイヤモンドナイフSK2035(住友電気工業社製)を取り付けたウルトラミクロトーム装置(LEICA社製、URUTRACUT UCT)により切削する(面出し)。更に光学顕微鏡で切断面の平滑性を確認しながら、平滑な切断面が形成されるまで切削を実施して試験片を作製する。得られた試験片を走査型電子顕微鏡にて観察し試験片の断面画像を得る。得られた画像を画像解析ソフトWinROOF(三谷商事社製)に取り込み、モノクロ画像化した後、無作為に選択した1個の芯材について90度間隔に4箇所の被覆層の厚さを測定し、これを50個について行い、算術平均を算出する。
【0126】
芯材に対する被覆層の被覆量は、例えば、キャリア全体の質量に対して0.5質量%以上が望ましく、0.7質量%以上6質量%以下がより望ましく、1.0質量%以上5.0質量%以下が更に望ましい。
ここで、被覆量は、次のようにして求められる。
被覆層が溶剤可溶である場合は、キャリアを可溶溶剤(例えば、トルエン)に投入し、芯材を磁石で保持し、被覆層が溶解した溶液を洗い流す。これを数回繰り返すことにより、被覆層が取り除かれた芯材が残る。芯材を乾燥させ、芯材の質量を測定する。予め測定したキャリア量と芯材量との差分をキャリア量で除することで被覆量が算出される。
被覆層が溶剤不溶である場合は、差動型示差熱天秤(例えば、リガク社製、TG8120)を用い、窒素雰囲気下で、25℃以上1000℃以下の範囲で加熱し、その質量減少分から被覆量を算出する。
【0127】
(被覆層の形成)
被覆層を芯材粒子表面に形成する方法としては、例えば、湿式製法及び乾式製法が挙げられる。湿式製法は、被覆層の被覆樹脂を溶解又は分散させる溶剤を用いる製法である。一方、乾式製法は、上記溶剤を用いない製法である。
【0128】
湿式製法としては、例えば、芯材粒子を被覆層形成用樹脂液中に浸漬して被覆する浸漬法;被覆層形成用樹脂液を芯材粒子表面に噴霧するスプレー法;芯材粒子を流動床中に流動化させた状態で被覆層形成用樹脂液を噴霧する流動床法;ニーダーコーター中で芯材粒子と被覆層形成用樹脂液とを混合し、溶剤を除去するニーダーコーター法;などが挙げられる。
【0129】
乾式製法としては、例えば、芯材粒子と被覆層形成材料の混合物を乾燥状態で加熱して被覆層を形成する方法が挙げられる。具体的には例えば、芯材粒子と被覆層形成材料とを気相中で混合して加熱溶融し、被覆層を形成する。
【0130】
−キャリアの特性−
キャリアの体積平均粒径は、例えば、20μm以上200μm以下であり、好ましくは25μm以上60μm以下、より好ましくは25μm以上40μm以下である。
ここで、キャリアの体積平均粒径の測定は、芯材粒子の体積平均粒径の測定と同様である。
【0131】
キャリアの磁力は、1000エルステッドの磁場における飽和磁化が、例えば40emu/g以上が好ましく、50emu/g以上がより好ましい。
ここで、キャリアの飽和磁化の測定は、振動試料型磁気測定装置VSMP10−15(東英工業社製)を用いて行う。測定試料は内径7mm、高さ5mmのセルに詰めて前記装置にセットする。測定は印加磁場を加え、最大3000エルステッドまで掃引する。次いで、印加磁場を減少させ、記録紙上にヒステリシスカーブを作製する。カーブのデータより、飽和磁化を求める。
【0132】
キャリアの体積電気抵抗(25℃)は、例えば1×10
7Ω・cm以上1×10
15Ω・cm以下であってよく、1×10
8Ω・cm以上1×10
14Ω・cm以下であってもよく、1×10
8Ω・cm以上1×10
13Ω・cm以下であってもよい。
キャリアの体積電気抵抗は、以下のように測定する。20cm
2の電極板を配した円形の治具の表面に、測定対象物を1mm以上3mm以下の厚さになるように平坦に載せ、層を形成する。この上に前記20cm
2の電極板を載せて層を挟み込む。測定対象物間の空隙をなくすため、層上に配置した電極板の上に4kgの荷重をかけてから層の厚み(cm)を測定する。層の上下の両電極には、エレクトロメーター及び高圧電源発生装置に接続されている。両電極に電界が103.8V/cmとなるように高電圧を印加し、このとき流れた電流値(A)を読み取る。測定環境は、温度20℃、湿度50%RHとする。測定対象物の体積電気抵抗(Ω・cm)の計算式は、下記式に示す通りである。
R=E×20/(I−I
0)/L
上記式中、Rは測定対象物の体積電気抵抗(Ω・cm)、Eは印加電圧(V)、Iは電流値(A)、I
0は印加電圧0Vにおける電流値(A)、Lは層の厚み(cm)をそれぞれ表す。係数20は、電極板の面積(cm
2)を表す。
【0133】
−トナーとキャリアとの混合比−
本実施形態において、トナーとキャリアとの混合比(質量比)は、トナー:キャリア=1:100乃至30:100が好ましく、3:100乃至20:100がより好ましい。
【0134】
<画像形成装置/画像形成方法>
本実施形態に係る画像形成装置/画像形成方法について説明する。
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体と、像保持体の表面を帯電する帯電手段と、帯電した像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、静電荷像現像剤を収容し、静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に直接転写する直接転写方式の転写手段(以下、単に「転写手段」と称する)と、記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着手段と、像保持体の表面に残留したトナーを除去するクリーニング手段と、除去したトナーを前記現像手段へ供給するトナー供給手段と、を備える。そして、静電荷像現像剤として、本実施形態に係る静電荷像現像剤が適用される。
【0135】
本実施形態に係る画像形成装置では、像保持体の表面を帯電する帯電工程と、帯電した像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に直接転写する直接転写方式の転写工程(以下、単に「転写工程」と称する)と、記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、像保持体の表面に残留したトナーを除去するクリーニング工程と、除去したトナーを、現像手段へ供給するトナー供給工程と、を有する画像形成方法(本実施形態に係る画像形成方法)が実施される。
【0136】
本実施形態に係る画像形成装置は、トナー画像の転写後、帯電前に像保持体の表面に除電光を照射して除電する除電手段を備える装置等の周知の画像形成装置が適用される。
【0137】
なお、本実施形態に係る画像形成装置において、例えば、現像手段を含む部分が、画像形成装置に対して脱着されるカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよい。プロセスカートリッジとしては、例えば、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容した現像手段を備えるプロセスカートリッジが好適に用いられる。
【0138】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0139】
図1は、本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
図1に示す画像形成装置300は、例えば、直方体の筐体200を有し、筐体200内の下方側には記録紙(記録媒体の一例)Pを収納する用紙入れ204が設けられている。また、用紙入れ204に収納された記録紙Pを引き出すためのアームの一端側に配置された引出ロール92、他端側に配置されたロール94、及び、ロール94に対向して配置されたロール96が設けられている。
【0140】
画像形成に当たっては、用紙入れ204に収納された記録紙P位置に応じて、引出ロール92を下方へ移動させると共に、引出ロール92が最上層の記録紙Pに接触した状態で回転することで、記録紙Pの引出しを行う。引き出された記録紙Pはロール94、96に搬送され、ロール96の用紙搬送方向下流側に配置されたロール対82に挟まれて搬送される。またロール対82の搬送方向下流側には、互いに対向して配置されたロール84とロール86、記録紙Pの搬送方向を変更するロール88が設けられ、さらに、ロール対90が順に設けられている。
また画像形成装置300は、筐体200内の上方側に、時計回り方向に回転する円筒状の感光体(像保持体の一例)10が設けられている。
【0141】
感光体10の周囲には、帯電ロール(帯電手段の一例)20、露光装置(静電荷像形成手段の一例)30、現像装置(現像手段の一例)40、転写ロール(転写手段の一例)52、除電装置(除電手段の一例)60、及びクリーニング装置(クリーニング手段の一例)70が、時計回り方向に沿って順次設けられている。具体的には、感光体10の周囲には、感光体10に対向して設けられ、感光体10の表面を予め定められた電位に帯電させる帯電ロール20と、帯電ロール20により帯電した感光体10の表面を露光して静電荷像を形成する露光装置30と、静電荷像に帯電したトナーを供給して静電荷像を現像する現像装置40と、を備えている。さらに、感光体10に対向して設けられ、記録紙Pにトナー画像を転写する転写ロール52と、転写ロール52にトナー画像を転写した後の感光体10の表面に、除電光を照射して除電する除電装置60と、感光体10の表面を清掃して、残留したトナーを除去するクリーニング装置70と、除去したトナー(回収トナー)を現像装置40へ供給する供給搬送路74(トナー供給手段の一例)と、を備えている。なお、除電装置60は、必要に応じて設けられる装置である。
【0142】
上記においては、帯電ロール20により感光体10の表面を負に帯電させ、帯電した感光体10の表面に、露光装置30により静電荷像を形成する。
【0143】
以下、現像装置40について説明する。現像装置40は、現像領域で感光体10に対向して配置されており、例えば、負(−)極性に帯電するトナー及び正(+)極性に帯電するキャリアからなる2成分現像剤を収容する現像容器41を有している。現像容器41は、現像容器本体41Aとその上端を塞ぐ現像容器カバー41Bとを有している。
【0144】
現像容器本体41Aはその内側に、現像ロール42を収容する現像ロール室42Aを有しており、現像ロール室42Aに隣接して、第1攪拌室43Aと第1攪拌室43Aに隣接する第2攪拌室44Aとを有している。また、現像ロール室42A内には、現像容器カバー41Bが現像容器本体41Aに装着されたときに、現像ロール42表面の現像剤の層厚を規制する層厚規制部材45が設けられている。
【0145】
第1攪拌室43A及び第2攪拌室44Aの間には仕切り壁41Cにより仕切られており、第1攪拌室43A及び第2攪拌室44Aは仕切り壁41Cの長手方向(現像装置長手方向)両端部に開口部(不図示)が設けられて通じており、第1攪拌室43A及び第2攪拌室44Aによって循環攪拌室(43A+44A)を構成している。
【0146】
現像ロール室42Aには、感光体10と対向するように現像ロール42が配置され、現像ロール42と感光体10とは、逆方向に回転している。現像ロール42は、磁性を有する磁性ロール(固定磁石)の外側にスリーブを設けたものである。第1攪拌室43Aに存在する現像剤は、磁性ロールの磁力によって現像ロール42の表面上に吸着される。また、現像ロール42はそのロール軸が現像容器本体41Aに回転自由に支持されている。
【0147】
現像ロール42のスリーブには、バイアス電源(不図示)が接続され、例えば、直流成分(AC)に交流成分(DC)を重畳した現像バイアスが印加されるようになっている。
【0148】
第1攪拌室43A及び第2攪拌室44Aには現像剤を攪拌しながら搬送する第1攪拌部材43(攪拌・搬送部材)及び第2攪拌部材44(攪拌・搬送部材)が配置されている。第1攪拌部材43は、現像ロール42の軸方向に伸びる第1回転軸と、回転軸の外周に螺旋状に固定された攪拌搬送羽根(突起部)とで構成されている。また、第2攪拌部材44も、同様に、第2回転軸及び攪拌搬送羽根(突起部)とで構成されている。なお、攪拌部材は現像容器本体41Aに回転自由に支持されている。そして、第1攪拌部材43及び第2攪拌部材44は、その回転によって、第1攪拌室43A及び第2攪拌室44Aの中の現像剤は互いに逆方向に搬送されるように配置されている。
【0149】
次に、クリーニング装置70について説明する。クリーニング装置70は、筐体71と、筐体71から突出するように配置されるクリーニングブレード72を含んで構成されている。クリーニングブレード72は、板状として形成されており、先端部(以下、エッジ部とも称する)が感光体10に接触するように設けられている。また、クリーニングブレード72は、感光体10における転写ロール52による転写位置より回転方向(時計回り方向)下流側で且つ、除電装置60によって除電される位置より回転方向下流側に設けられている。
【0150】
クリーニングブレード72は、感光体10が時計回り方向に回転することによって、記録紙Pに転写されずに感光体10の表面に残留しているトナーや記録紙Pの紙粉等の異物を堰き止めて、感光体10から除去する。
【0151】
ここで、クリーニングブレード72の材質としては公知の材質を用いてもよく、例えばウレタンゴム、シリコンゴム、フッソゴム、クロロプレンゴム、ブタジエンゴム等を用いてもよい。その中で特に、耐摩耗性に優れていることからポリウレタンを用いる事が好ましい。
【0152】
また、筐体71内の底部には、搬送部材73が配置されており、筐体71における搬送部材73の搬送方向下流側にはクリーニングブレード72により除去されたトナー(現像剤)を現像装置40へ供給するための供給搬送路74の一端が連結されている。そして、供給搬送路74の他端は現像装置40(第2攪拌室44A)に連結されている。
【0153】
クリーニング装置70は、筐体71の底部に設けられた搬送部材73の回転に伴い、クリーニングブレード72により除去されたトナーを、供給搬送路74を通じて現像装置40(第2攪拌室44A)へと供給する。第2攪拌室44Aに供給された回収トナーは、第2攪拌室44Aに収容されているトナーとともに攪拌され、再利用される。画像形成装置300は、回収トナーを再利用するトナーリクレーム方式を採用している。なお、現像装置40には、トナー供給管(不図示)を通じて、トナーカートリッジ46に収められたトナーの供給もなされる。
【0154】
また、感光体10に対向して設けられている転写ロール52が配置された位置まで搬送された記録紙Pは、転写ロール52によって感光体10に押圧され、感光体10の外周面に形成されたトナー画像が転写される。転写ロール52の用紙搬送方向下流側には、対向配置された定着ロール100とロール102とを備える定着装置(定着手段の一例)、カム104が順次配置されている。トナー画像が転写された記録紙Pは定着ロール100とロール102とに挟まれてトナー画像が定着され、カム104配置部位に到達する。カム104は図示しないモータにより回転駆動され、
図1に実線で示す位置又は想像線で示す位置に固定される。
【0155】
カム104は、定着ロール100側から記録紙Pが到来したときは、定着ロール100の逆側(実線で示す位置)に回転駆動される。これにより、定着ロール100側から到来した記録紙Pはカム104の外周面に沿ってロール対106に案内される。このときのカム104による記録紙Pの案内方向の下流側にはロール対106、108、112、及び114が順に配置されており、ロール対114の用紙搬送方向下流側には用紙受け202が配置されている。
従って、定着ロール100側から到来した記録紙Pはロール対106、108に挟まれ、ロール対106、108が連続して回転すれば、記録紙Pは用紙受け202に搬送される。
【0156】
また、ロール対106、108に一旦挟まれた記録紙Pの画像が形成された面を、画像が形成された面の裏面に反転する際には、カム104は、定着ロール100側(想像線で示す位置)に回転駆動される。この状態で、ロール対106、108の回転方向が反転されることにより、反転搬送(以下、「スイッチバック」と称する。)方式で記録紙Pの搬送方向が反転され、ロール対106、108側からカム104へ向けて記録紙Pが搬送されると、記録紙Pはカム104の外周面に沿って下方に案内される。このときのカム104による記録紙Pの搬送方向の下流側にはロール対120が配置されており、ロール対120配置部位に到達した記録紙Pは、ロール対120によって搬送力が付与されて更に搬送される。
なお、
図1では記録紙Pの搬送路を想像線で示している。
【0157】
ロール対120による記録紙Pの搬送方向下流側には、
図1に想像線で示す記録紙Pの搬送経路に沿ってロール対122、124、126、128、130、及び132が順に配置されており、これらのロール対は前述のカム104、ロール対106、108、120と共に記録紙反転部220を構成している。ロール対106、108の配置部位でスイッチバックされた記録紙Pは、
図1に想像線で示す搬送経路に沿って搬送されてロール対90配置部位に到達し、再び感光体10と転写ロール52とのニップ部へ搬送される。
【0158】
このとき、記録紙Pは前述したように記録紙反転部220でスイッチバックされたことにより、先に画像が形成された面の裏面が感光体10側を向くように反転されており、この裏面にトナー画像が転写され、定着ロール100で定着された場合には両面に画像が形成されることになる。両面に画像が形成された記録紙Pは、後に画像が形成された面が裏となる向きで用紙受け202に排出される。また、後の画像形成(記録紙反転部で記録紙Pが反転した後の画像形成)において記録紙Pに画像が形成されなかった場合には、記録紙Pは先に画像が形成された面が表となる向きで用紙受け202に排出されることになる。
【0159】
なお、トナー画像を転写する記録紙Pとしては、例えば、電子写真方式の複写機、プリンター等に使用される普通紙が挙げられる。記録媒体は記録紙P以外にも、OHPシート等も挙げられる。記録紙Pは、例えば、普通紙の表面を樹脂等で塗工した塗工紙、印刷用のアート紙等が好適に使用される。
【0160】
<プロセスカートリッジ/現像剤カートリッジ>
本実施形態に係るプロセスカートリッジについて説明する。
本実施形態に係るプロセスカートリッジは、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容し、静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段を備え、画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジである。
【0161】
なお、本実施形態に係るプロセスカートリッジは、上記構成に限られず、現像装置と、その他、必要に応じて、例えば、像保持体、帯電手段、静電荷像形成手段、及び転写手段等のその他手段から選択される少なくとも一つと、を備える構成であってもよい。
【0162】
以下、本実施形態に係るプロセスカートリッジの一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0163】
図2は、本実施形態に係るプロセスカートリッジを示す概略構成図である。
図2に示すプロセスカートリッジ400は、例えば、取り付けレール416及び露光のための開口部418が備えられた筐体417により、感光体(像保持体の一例)407と、感光体407の周囲に備えられた帯電ロール(帯電手段の一例)408、現像装置(現像手段の一例)411、及び感光体クリーニング装置(クリーニング手段の一例)413を一体的に組み合わせて保持して構成し、カートリッジ化されている。
また、
図2中、409は露光装置(静電荷像形成手段の一例)、412は転写装置(転写手段の一例)、415は定着装置(定着手段の一例)、500は記録紙(記録媒体の一例)を示している。なお、
図2では、感光体クリーニング装置413により除去されたトナーを、例えば、供給搬送路(トナー供給手段の一例)を通じて現像装置411へと供給して再利用するトナーリクレームの機構は省略している。
【0164】
次に、本実施形態に係る現像剤カートリッジについて説明する。
本実施形態に係る現像剤カートリッジは、本実施形態に係る現像剤を収容し、画像形成装置に着脱される現像剤カートリッジである。
【0165】
本実施形態に係るキャリアは、現像手段に収容されているキャリアを入れ替えながら現像を行う、いわゆるトリクル方式の現像用キャリアとしても好適に使用することができる。例えば、
図1に示す画像形成装置において、トナーカートリッジ46は、本実施形態に係る現像剤カートリッジとし、現像剤を現像装置40に補給し、現像装置40に収容されている静電荷像現像用キャリアを入れ替えながら現像を行うトリクル方式の画像形成装置としてもよい。
【0166】
現像剤カートリッジに含まれる現像剤中の本実施形態に係るキャリアの量は、キャリア量が多くなるほど、現像装置40に補給されるキャリア量のばらつきが大きくなるため、トナー量の20質量%以下が好ましく、より好ましくは、1質量%以上10質量%以下である。
なお、補給用トナーを単独で収納するカートリッジと本実施形態に係るキャリアを単独で収納するカートリッジとを別体としたものであってもよい。
【実施例】
【0167】
以下に実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」及び「%」はすべて質量基準である。
【0168】
〔ポリエステル樹脂粒子分散液の調製〕
(ポリエステル樹脂粒子分散液(1)の調製)
・ビスフェノールAエチレンオキサイド2.2モル付加物 :45モル部
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド2.2モル付加物 :55モル部
・テレフタル酸ジメチル :55モル部
・フマル酸ジメチル :15モル部
・ドデセニルコハク酸無水物 :20モル部
・トリメリット酸無水物 : 5モル部
【0169】
攪拌機、温度計、コンデンサー及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、上記モノマーのうちフマル酸ジメチルとトリメリット酸無水物以外と、ジオクタン酸スズを上記モノマーの合計100部に対して0.25部投入した。窒素ガス気流下、235℃で6時間反応させた後、200℃に降温して、フマル酸ジメチルとトリメリット酸無水物を投入し1時間反応させた。温度を220℃まで5時間かけて昇温し、10kPaの圧力下で予め定められた分子量になるまで重合させ、淡黄色透明なポリエステル樹脂(1)を得た。
得られたポリエステル樹脂(1)は、重量平均分子量が36,000、数平均分子量が8,500、ガラス転移温度が60℃であった。
【0170】
次に、キャビトロンCD1010(ユーロテック社製)を高温高圧型に改造した分散機を用いて、得られたポリエステル樹脂(1)を分散した。イオン交換水80%、ポリエステル樹脂の濃度が20%の組成比で、アンモニアによりpHを8.5に調整し、回転子の回転速度が60Hz、圧力が5kg/cm
2、熱交換器による加熱140℃、の条件でキャビトロンを運転し、ポリエステル樹脂粒子分散液(1)(固形分20%)を得た。
【0171】
(ポリエステル樹脂粒子分散液(2)の調製)
・1,10−ドデカン二酸 :50モル部
・1,9−ノナンジオール :50モル部
【0172】
攪拌機、温度計、コンデンサー及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に上記モノマーを入れ、反応容器中を乾燥窒素ガスで置換した後、チタンテトラブトキサイド(試薬)を前記モノマー100部に対して0.25部投入した。窒素ガス気流下、170℃で3時間攪拌し反応させた後、温度をさらに210℃まで1時間かけて昇温し、反応容器内を3kPaまで減圧し、減圧下で13時間攪拌し反応させて、ポリエステル樹脂(2)を得た。
ポリエステル樹脂(2)は、重量平均分子量が26,000、数平均分子量が10,500、酸価が10.3mgKOH/g、DSCによる融解温度が73.1℃であった。
【0173】
次に、キャビトロンCD1010(ユーロテック社製)を高温高圧型に改造した分散機を用いて、得られたポリエステル(2)を分散した。イオン交換水80%、ポリエステル樹脂の濃度が20%の組成比で、アンモニアによりpHを8.5に調整し、回転子の回転速度が60Hz、圧力が5kg/cm
2、熱交換器による加熱140℃、の条件でキャビトロンを運転し、ポリエステル樹脂粒子分散液(2)(固形分20%)を得た。
【0174】
〔スチレンアクリル樹脂粒子分散液の調製〕
(スチレンアクリル樹脂粒子分散液(1)の調製)
・スチレン :78部
・n−ブチルアクリレート :22部
・1,10−デカンジオールジアクリレート:0.4部
・ドデカンチオール :0.7部
【0175】
上記の材料を混合溶解したものに、アニオン性界面活性剤(ダウ・ケミカル社製ダウファックス)1.0部をイオン交換水60部に溶解した溶液を加えてフラスコ中で分散、乳化し、乳化液を作製した。
続いて、アニオン性界面活性剤(ダウ・ケミカル社製ダウファックス)2.0部をイオン交換水90部に溶解させ、その中に前記乳化液20部加え、さらに、過硫酸アンモニウム1.0部を溶解したイオン交換水10部を投入した。
その後、乳化液の残りを3時間かけて投入し、フラスコ内の窒素置換を行った後、フラスコ内の溶液を攪拌しながらオイルバスで65℃になるまで加熱し、5時間そのまま乳化重合を継続した後、固形分を32%に調整したスチレンアクリル樹脂粒子分散液(1)を得た。
【0176】
(スチレンアクリル樹脂粒子分散液(2)の調製)
乳化液20部を加える溶液のアニオン性界面活性剤(ダウ・ケミカル社製ダウファックス)2.0部を3.0部とし、加える前記乳化液20部を30部に変更した以外は、スチレンアクリル樹脂粒子分散液(1)と同様にして、固形分32%のスチレンアクリル樹脂粒子分散液(2)を得た。
【0177】
(スチレンアクリル樹脂粒子分散液(3)の調製)
乳化液20部を加える溶液のアニオン性界面活性剤(ダウ・ケミカル社製ダウファックス)2.0部を1.5部に変更した以外は、スチレンアクリル樹脂粒子分散液(1)と同様にして、固形分32%のスチレンアクリル樹脂粒子分散液(3)を得た。
【0178】
(スチレンアクリル樹脂粒子分散液(4)の調製)
乳化液20部を加える溶液のアニオン性界面活性剤(ダウ・ケミカル社製ダウファックス)2.0部を4.0部とし、添加する前記乳化液20部を40部に変更した以外は、スチレンアクリル樹脂粒子分散液(1)と同様にして、固形分32%のスチレンアクリル樹脂粒子分散液(4)を得た。
【0179】
(スチレンアクリル樹脂粒子分散液(5)の調製)
乳化液20部を加える溶液のアニオン性界面活性剤(ダウ・ケミカル社製ダウファックス)2.0部を1.2部に変更した以外は、スチレンアクリル樹脂粒子分散液(1)と同様にして、固形分32%のスチレンアクリル樹脂粒子分散液(5)を得た。
【0180】
ここで、各スチレンアクリル樹脂粒子分散液中の粒子の体積平均粒径について、表1に一覧に示す。
なお、表1において、「St−Ac分散液」は、スチレンアクリル樹脂粒子分散液を表す。
【0181】
【表1】
【0182】
〔着色剤粒子分散液の調整〕
(着色剤粒子分散液(1)の調製)
・カーボンブラック(キャボット製、Regal330):250部
・アニオン系界面活性剤(第一工業製薬社製、ネオゲンSC):33部(有効成分60%。着色剤に対して8%)
・イオン交換水:750部
【0183】
上記成分をすべて投入した際に液面の高さが容器の高さの1/3程度になる大きさのステンレス容器に、イオン交換水を280部とアニオン系界面活性剤33部とを入れ、充分に界面活性剤を溶解させた後、前記固溶体顔料すべてを投入し、攪拌機を用いて濡れていない顔料がなくなるまで攪拌するとともに、充分に脱泡させた。脱泡後に残りのイオン交換水を加え、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックス T50)を用いて、5000回転で10分間分散した後、攪拌機で1昼夜攪拌させて脱泡した。脱泡後、再度ホモジナイザーを用いて、6000回転で10分間分散した後、攪拌機で1昼夜攪拌させて脱泡した。続けて、分散液を高圧衝撃式分散機アルティマイザー(スギノマシン社製、HJP30006)を用いて、圧力240MPaで分散した。分散は、トータル仕込み量と装置の処理能力とから換算して25パス相当行った。得られた分散液を72時間放置して沈殿物を除去し、イオン交換水を加えて、固形分濃度を15%に調製し、着色剤粒子分散液(1)を得た。
【0184】
〔離型剤粒子分散液の調製〕
(離型剤粒子分散液(1)の調製)
・ポリエチレン系ワックス(炭化水素系ワックス:商品名「ポリワックス725(ベーカーペトロライト社製)」、融解温度104℃): 270部
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬社製、ネオゲンRK、有効成分量:60%): 13.5部(有効成分として、離型剤に対して3.0%)
・イオン交換水: 21.6部
上記成分を混合し、圧力吐出型ホモジナイザー(ゴーリン社製、ゴーリンホモジナイザ)で、内液温度120℃にて離型剤を溶解した後、分散圧力5MPaで120分間、続いて40MPaで360分間分散処理し、冷却して、離型剤粒子分散液(1)を得た。その後、イオン交換水を加えて固形分濃度が20%になるように調整した。
【0185】
(離型剤粒子分散液(2)の調製)
ポリエチレン系ワックスをポリエチレン系ワックス(炭化水素系ワックス、:商品名「ポリワックス1000、(ベーカーペトロライト社製)、融解温度113℃」に変更した以外は、離型剤粒子分散液(1)の調製方法と同様にして、離型剤粒子分散液(2)を得た。
【0186】
(離型剤粒子分散液(3)の調製)
ポリエチレン系ワックスに代えて、パラフィン系ワックス(炭化水素系ワックス:商品名「HNP−9(日本精蝋社製)」、融解温度75℃)に変更した以外は、離型剤粒子分散液(1)と同様にして、離型剤粒子分散液(3)を得た。
【0187】
〔混合粒子分散液の調製〕
(混合粒子分散液(1)の調製)
ポリエステル樹脂粒子分散液(1):400部と、離型剤粒子分散液(1):60部とアニオン性界面活性剤(ダウケミカル社製、Dowfax2A1):2.9部を混合したのち、温度25℃下に1.0%硝酸を添加しpHを3.0に調整し、混合粒子分散液(1)を得た。
【0188】
〔トナー粒子の調製〕
(トナー粒子(1)の作製)
・ポリエステル樹脂粒子分散液(1) :700部
・ポリエステル樹脂粒子分散液(2) :50部
・スチレンアクリル樹脂粒子分散液(1) :205部
・離型剤粒子分散液(1) :15部
・着色剤粒子分散液(1) :133部
・イオン交換水 :600部
・アニオン性界面活性剤 :2.9部
(ダウケミカル社製、Dowfax2A1)
【0189】
温度計、pH計、攪拌機を備えた3リットルの反応容器に上記の材料を入れ、温度25℃下に1.0%硝酸を添加してpHを3.0に調整した後、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックス T50)にて3000rpmで分散しながら、濃度2%の硫酸アルミニウム水溶液を100部添加した。
この凝集剤滴下の途中で、原料分散液の粘度が急激に増大するので、粘度上昇した時点で、滴下速度を緩め、凝集剤が一箇所に偏らないようにした。凝集剤の滴下が終了したら、更に回転数5,000rpmに上げて5分間攪拌した。
その後、反応容器に攪拌機、マントルヒーターを設置し、スラリーが充分に攪拌されるように攪拌機の回転数を調整しながら、温度40℃までは0.2℃/分の昇温速度、40℃を超えてから53℃までは0.05℃/分の昇温速度で昇温し、10分ごとにマルチサイザーII(アパーチャー径50μm、ベックマン・コールター社製)にて粒径を測定した。体積平均粒径が5.0μmになったところで温度を保持し、混合粒子分散液(1):460部を5分間かけて投入した。
50℃に30分間保持した後、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)の20%液を反応容器に入っている分散液の総量に対し8部添加した後、1モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を加え、原料分散液のpHを9.0に制御した。その後、5℃ごとにpHを9.0に調整しながら、昇温速度1℃/分で90℃まで昇温し、90℃で保持した。光学顕微鏡と電界放出形走査電子顕微鏡(FE−SEM)にて粒子形状及び表面性を観察したところ、6時間目で粒子の合一が確認されたので、冷却水で容器を30℃まで5分間かけて冷却した。
冷却後のスラリーを、目開き15μmのナイロンメッシュに通過させ粗大粉を除去し、メッシュを通過したトナースラリーをアスピレータで減圧濾過した。濾紙上に残った固形分を手で、できるだけ細かく砕いて、温度30℃で固形分量の10倍のイオン交換水に投入し、30分間攪拌混合した。次いで、アスピレータで減圧濾過し、濾紙上に残った固形分を手で、できるだけ細かく砕いて、温度30℃で固形分量の10倍のイオン交換水に投入し、30分間攪拌混合した後、再度アスピレータで減圧濾過し、濾液の電気伝導度を測定した。濾液の電気伝導度が10μS/cm以下になるまでこの操作を繰り返し、固形分を洗浄した。
洗浄された固形分を湿式乾式整粒機(コーミル)で細かく砕き、35℃のオーブン中で36時間真空乾燥して、トナー粒子(1)を得た。トナー粒子(1)は、体積平均粒径が6.0μmであった。
【0190】
(トナー粒子(2)〜(8)の作製)
表2に従って、スチレンアクリル樹脂粒子分散液の種類、離型剤の種類を変更して、各現トナー粒子(2)〜(8)を得た。表2に一覧を示す。
なお、表2において、「St−Ac分散液」は、スチレンアクリル樹脂粒子分散液を表す。「無」はスチレンアクリル樹脂粒子分散液の添加が無いことを表す。
【0191】
【表2】
【0192】
〔外添剤の作製〕
(シリカ粒子(1)の作製)
テトラメトキシシラン150部を、イオン交換水100部、25%のアルコール100部の存在下で25%アンモニア水150部を30℃で4時間かけて滴下しながら130rpmで攪拌した。この反応で得られたシリカゾル懸濁液の遠心分離を行い、湿潤シリカゲルとアルコール、アンモニア水に分離し、更に分離した湿潤シリカゲルを120℃で2時間乾燥した後、シリカ100部とエタノール500部とをエバポレーターに入れ、温度を40℃に維持したまま15分間攪拌した。次にシリカ100部に対して10部のジメチルジメトキシシランを入れ更に15分間攪拌した。最後に温度を90℃に上げてエタノールを減圧乾燥させ、処理物を取り出して更に120℃で30分間真空乾燥を行った。乾燥されたシリカを粉砕し、体積平均粒径150nmのシリカ粒子(1)を得た。
【0193】
(シリカ粒子(2))
シリカ粒子(2)として、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)で表面疎水化処理を施したシリカ粒子(日本アエロジル社製、RX50)を用意した。
【0194】
(チタニア粒子(1)の作製)
イルメナイト鉱石(FeTiO
3)を濃硫酸中で加熱、溶解させ鉄粉を分離し、TiOSO
4を得た。さらに加熱加水分解によりTiO(OH)
2の沈殿物を生成させ、これをろ過し、水洗浄を繰り返した後、150℃で乾燥させた。次に、750℃、120分の条件で加熱、焼成を行い、チタン酸化物を得た。次いで、水中に得られたチタン酸化物を分散し、イソブチルメトキシシランを固形分の5質量%を、25℃の温度の下、攪拌しながら滴下した。次に、これをろ過し、水洗浄を繰り返した。得られたイソブチルメトキシシランで表面処理されたチタン酸化物を150℃で乾燥し、体積平均粒径85nmのチタニア粒子(1)を作製した。
【0195】
〔キャリアの作製〕
(キャリア(1)の作製)
ヘンシェルミキサーに、体積平均粒径0.22μmの球状マグネタイト粒子の粉末500質量部を投入し、十分に攪拌した後、チタネート系カップリング剤4.5質量部を添加し、95℃まで昇温し、30分間混合攪拌することにより、チタネート系カップリング剤被覆された球状マグネタイト粒子を得た。続いて、1Lの四つ口フラスコに、フェノール6.5質量部、30%ホルマリン10質量部、上記マグネタイト粒子500質量部と25%アンモニア水7質量部、水400質量部を入れ、混合攪拌した。次に、攪拌しながら60分間で85℃まで昇温し、同温度にて180分間反応させた後、25℃まで冷却し、500mlの水を添加した後、上澄み液を除去、沈殿物を水洗した。これを減圧下、180℃で乾燥し、目開き106μmの篩分網にて粗大粉を取り除き、平均粒径32μmの芯材粒子(A)を得た。
【0196】
・芯材粒子(A) :100部
・トルエン :15部
・メタクリル酸ジメチルアミノエチル(DMAEMA)/メタクリル酸シクロヘキシル(CHMA)樹脂(共重合体) :2.5部
(共重合比:DMAEMA/CHMA=0.05部/2.45部、重量平均分子量100000)
・樹脂粒子 :0.25部
(メラミン樹脂粒子、体積平均粒子径100nm)
【0197】
芯材粒子(A)を除く上記成分をホモミキサーで3分間分散し、被覆層形成用樹脂液を調製した。この被覆層形成用樹脂液と、上記で作製した芯材粒子(A)とを60℃に維持された真空脱気型ニーダーで15分間攪拌した後、15分間5kPaで減圧してトルエンを留去して、キャリア(1)を得た。
【0198】
(キャリア(2)の作製)
芯材粒子(A)のマグネタイト粒子を、体積平均粒径0.65μmの球状マグネタイト粒子に変更して芯材粒子(B)を作製したこと以外は、キャリア(1)の作製と同様にして、キャリア(2)を得た。
【0199】
(キャリア(3)の作製)
・芯材粒子(A) :100部
・トルエン :15部
・メタクリル酸ジメチルアミノエチル(DMAEMA)樹脂 :2.5部
(重量平均分子量120000)
・樹脂粒子 :0.25部
(メラミン樹脂粒子、体積平均粒子径100nm)
【0200】
芯材粒子(A)を除く上記成分をホモミキサーで3分間分散し、被覆層形成用樹脂液を調製した。この被覆層形成用樹脂液と、上記で作製した芯材粒子(A)とを60℃に維持された真空脱気型ニーダーで15分間攪拌した後、15分間5kPaで減圧してトルエンを留去して、キャリア(3)を得た。
【0201】
(キャリア(4)の作製)
・フェライト粒子 :100部
(Mn−Mgフェライト、BET比表面積0.09g/m
2、体積平均粒子径34μm)
・トルエン :15部
・スチレン−メタクリル酸メチル樹脂(共重合体) :2.5部
(重量平均分子量110000)
・樹脂粒子 :0.25部
(メラミン樹脂粒子、体積平均粒子径100nm)
【0202】
フェライト粒子を除く上記成分をホモミキサーで3分間分散し、被覆層形成用樹脂液を調製し、この被覆層形成用樹脂液と、上記のフェライト粒子とを60℃に維持された真空脱気型ニーダーで15分間攪拌した後、15分間5kPaで減圧してトルエンを留去して、被覆層を有するキャリア(4)を得た。
【0203】
(キャリア(5)の作製)
・フェライト粒子 :100部
(Mn−Mgフェライト、BET比表面積0.09g/m
2、体積平均粒子径34μm)
・トルエン :15部
・メタクリル酸ジメチルアミノエチル(DMAEMA)樹脂 :2.5部
(重量平均分子量120000)
・樹脂粒子 :0.25部
(メラミン樹脂粒子、体積平均粒子径100nm)
【0204】
フェライト粒子を除く上記成分をホモミキサーで3分間分散し、被覆層形成用樹脂液を調製し、この被覆層形成用樹脂液と、上記のフェライト粒子とを60℃に維持された真空脱気型ニーダーで15分間攪拌した後、15分間5kPaで減圧してトルエンを留去して、被覆層を有するキャリア(5)を得た。
【0205】
(キャリア(6)の作製)
・芯材粒子(A) :100部
・トルエン :15部
・スチレン−メタクリル酸メチル樹脂(共重合体) :2.5部
(重量平均分子量110000)
・樹脂粒子 :0.25部
(メラミン樹脂粒子、体積平均粒子径100nm)
【0206】
芯材粒子(A)を除く上記成分をホモミキサーで3分間分散し、被覆層形成用樹脂液を調製し、この被覆層形成用樹脂液と芯材粒子(A)とを60℃に維持された真空脱気型ニーダーで15分間攪拌した後、15分間5kPaで減圧してトルエンを留去して、被覆層を有するキャリア(6)を得た。
【0207】
<実施例1>
(現像剤(1)の作製)
トナー粒子(1):100部と、シリカ粒子(1):1.5部とをヘンシェルミキサー(周速30m/秒、3分)を用いて混合し、トナー(1)を得た。
次に、キャリア(1):100部に対して、トナー(1):9部を混合し、現像剤(1)を得た。
【0208】
<実施例2〜10、比較例1〜5>
表3に従って、トナー粒子の種類、外添剤の種類、キャリアの種類を変更して、各現像剤(1)〜(10)、(C1)〜(C5)を得た。
【0209】
〔評価〕
(ドメインの平均径)
各例で得られた現像剤のトナーについて、スチレン(メタ)アクリル樹脂のドメインの平均径について、既述の方法に従って測定した。
【0210】
(画像濃度の評価)
各例で得られた現像剤を、富士ゼロックス社製700 Digital Color Pressの改造機に収容し、画像の出力テストを行った。高温高湿環境下(28℃85%)で1日放置度、評価を開始した。用紙として、Premier TCF 80gsmを用い、この用紙の両面に、エリアカバレッジ20%のベタ画像を100000枚連続で出力した。画像濃度計(X−Rite404A:X−Rite社製)を用いて、10枚目の画像濃度、及び100000枚目の画像濃度を測定し、画像濃度の測定結果の差を求めて画像濃度の評価行った。Cまでが許容できる範囲である。
【0211】
−画像濃度の評価基準−
A:10枚目に対し100000枚目の画像濃度が97%以上。
B:10枚目に対し100000枚目の画像濃度が94%以上97%未満。
C:10枚目に対し100000枚目の画像濃度が90%以上94%未満。
D:10枚目に対し100000枚目の画像濃度が90%未満。
【0212】
(かぶり及び黒点の評価)
画像濃度の評価で用いられた99900〜100000枚の100枚について、非画像部のかぶりの評価、及び黒点の評価を行った。
【0213】
−かぶりの評価基準−
A:かぶりが認識されない。
B:かぶりがわずかに認識される。
C:かぶりが認識されるが問題ないレベル。
【0214】
−黒点の評価基準−
A:黒点が認識されない。
B:黒点がわずかに認識される。
C:黒点が認識されるが問題ないレベル。
【0215】
(離型性の評価)
画像濃度の評価で用いられた現像剤を用いて、さらにこの用紙の両面に、用紙進行方向先端の領域に、ベタ画像(先端ベタ画像)を形成し、用紙進行方向後端の領域に文字(後端文字)を100枚形成した。先端ベタ画像及び後端文字が定着しているPremier TCF 80gsm紙のオフセット(用紙表面に形成した画像が定着部材に付着する現象)を目視で確認した。評価基準は以下のとおりである。
【0216】
−評価基準−
A:特に剥離が良好であり、先端ベタ画像、後端文字部ともにオフセット未発生。
B:先端ベタ画像、後端文字部ともにオフセット未発生。
C:剥離爪の使用により剥離され、実使用上問題ないレベル。
【0217】
【表3】
【0218】
表3中のトナー粒子欄において、「St−Ac樹脂ドメイン径」は、トナー粒子中のスチレン(メタ)アクリル樹脂の平均ドメイン径を表す。
表3中のキャリア欄において、「含窒素Ac樹脂」は、窒素原子を含有する(メタ)アクリル酸誘導体を由来とする構造単位を有する樹脂を表す。
【0219】
上記結果から、本実施例では、比較例に比べ、画像の評価に優れることが分かる。これにより、本実施例は、比較例に比べ、画像濃度の低下が抑制されていることがわかる。