特許第6384453号(P6384453)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6384453-エアジェット織機における緯糸検出方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6384453
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】エアジェット織機における緯糸検出方法
(51)【国際特許分類】
   D03D 51/34 20060101AFI20180827BHJP
   D03D 47/30 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   D03D51/34 101
   D03D47/30
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-216215(P2015-216215)
(22)【出願日】2015年11月3日
(65)【公開番号】特開2017-89020(P2017-89020A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2017年4月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(72)【発明者】
【氏名】牧野 洋一
(72)【発明者】
【氏名】奥田 泰治郎
(72)【発明者】
【氏名】吉野 誠
(72)【発明者】
【氏名】湯沢 亮三
(72)【発明者】
【氏名】石黒 博紀
【審査官】 ▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−239059(JP,A)
【文献】 特開平04−257350(JP,A)
【文献】 特開昭61−252343(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D29/00−51/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
緯入れ側とは反対側の織端に、緯入れされた緯糸を検出する光電式緯糸センサーを設けたエアジェット織機における緯糸検出方法において、
緯入れ開始タイミング以降でかつ経糸クロスタイミング以前に設定される第1緯糸検出期間と、前記第1緯糸検出期間内であって、前記光電式緯糸センサーが経糸あるいは捨耳糸を検出してしまうおそれのある混合検出期間を除く第2緯糸検出期間とを設定し、
前記第1緯糸検出期間の検出信号に対する第1閾値を設定するとともに、前記第2緯糸検出期間の検出信号に対する第2閾値を設定し、
前記第1緯糸検出期間における前記第1閾値以上の検出信号を検出し、かつ前記第2緯糸検出期間における前記第2閾値以上の検出信号を検出した時、前記光電式緯糸センサーの設置位置への緯糸の正常な到達を判定することを特徴とするエアジェット織機における緯糸検出方法。
【請求項2】
前記光電式緯糸センサーの検出信号はパルス信号であり、前記第1閾値及び前記第2閾値はパルス信号数で設定することを特徴とする請求項1に記載のエアジェット織機における緯糸検出方法。
【請求項3】
前記光電式緯糸センサーの検出信号は受光部の受光信号であり、前記第1閾値及び前記第2閾値は前記受光信号の大きさが閾値以上となる期間で設定することを特徴とする請求項1に記載のエアジェット織機における緯糸検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、エアジェット織機において緯入れされた緯糸の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エアジェット織機には、緯入れされた緯糸が緯入れ側と反対側の織端に正常なタイミングで到達したか否かを検出する緯糸検出装置が緯入れ側と反対側の織端に設置されている。例えば、特許文献1には、空気噴射織機において、発光素子と受光素子を備えた反射式の緯糸探知装置を緯入れ側と反対側の織端の経糸と捨耳糸との間に設置した発明が開示されている。
【0003】
特許文献1に開示された発明は、緯糸探知装置の織幅方向に関わる大きさに起因する緯糸のロスを節減するために、緯糸探知装置における発光素子及び受光素子を付設する突出部の幅を従来の緯糸探知装置より小さくなるように構成している。緯糸探知装置は、突出部の幅を小さくするために、発光素子及び受光素子を織幅方向に対して垂直方向に位置するように配列している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−325053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように、緯糸探知装置の織幅方向の長さを小さくすることは、1回の緯入れに使用する緯糸の長さを短くするために有効である。具体的には、緯糸探知装置の幅を小さくすることにより、緯入れに必要な緯糸の長さを短くすることができる。また、緯糸の長さをさらに短くするためには、緯糸探知装置と経糸及び捨耳糸との間隔を縮めることが好ましい。
【0006】
しかし、緯糸探知装置の発光素子から照射される光は、広がりを持っているため、緯糸探知装置と経糸及び捨耳糸との間隔を縮めると、緯糸探知装置は、緯糸の検知区間内で、緯糸探知装置に近接して配列される経糸あるいは捨耳糸を検出し易くなる。このため、緯糸が正常に緯入れされている場合は特に問題ないが、何らかの原因により緯入れ不良が生じ、緯糸が反対側の織端に届いていない場合であっても、緯糸探知装置は経糸あるいは捨耳糸の検出信号により、緯糸有と判定する誤検知を生じる恐れがある。
【0007】
上記のような緯入れ不良時の誤検知を避けるため、緯糸検知期間の終期を早めて、緯糸探知装置が経糸あるいは捨耳糸を検出しないようにすることが考えられる。しかし、給糸部から供給される緯糸の太さには、ばらつきが存在するため、同一緯入れ条件で緯入れする場合であっても反対側の織端に緯糸が到達するタイミングにばらつきが生じる。
【0008】
緯糸の到達タイミングにばらつきが生じると、緯糸検知期間の終期を早めた場合、正常に緯入れされた緯糸を検出することができなくなる恐れがある。正常に緯入れされた緯糸を検出することができないと、正常な緯入れにも関わらず、緯入れ不良と判定し、空気噴射織機を空止まりさせるという、誤検知が生じる。
【0009】
本願発明は、光電式緯糸センサーの誤検知を減少させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1は、緯入れ側とは反対側の織端に、緯入れされた緯糸を検出する光電式緯糸センサーを設けたエアジェット織機における緯糸検出方法において、
緯入れ開始タイミング以降でかつ経糸クロスタイミング以前に設定される第1緯糸検出期間と、前記第1緯糸検出期間内であって、前記光電式緯糸センサーが経糸あるいは捨耳糸を検出してしまうおそれのある混合検出期間を除く第2緯糸検出期間とを設定し、前記第1緯糸検出期間の検出信号に対する第1閾値を設定するとともに、前記第2緯糸検出期間の検出信号に対する第2閾値を設定し、前記第1緯糸検出期間における前記第1閾値以上の検出信号を検出し、かつ前記第2緯糸検出期間における前記第2閾値以上の検出信号を検出した時、前記光電式緯糸センサーの設置位置への緯糸の正常な到達を判定することを特徴とする。
【0011】
請求項1によれば、エアジェット織機において、光電式緯糸センサーが経糸あるいは捨耳糸との間隔を可能な限り縮めて配置されても光電式緯糸センサーによる誤検知を減少することができる。この結果、光電式緯糸センサーを経糸あるいは捨耳糸に可能な限り近づけて設けることにより、織布に使用されない無駄な緯糸の消費量を大きく削減することができる。
【0012】
請求項2は、前記光電式緯糸センサーの検出信号はパルス信号であり、前記第1閾値及び前記第2閾値はパルス信号数で設定することを特徴とする。請求項2によれば、検出信号の処理をパルス数のカウントで行う場合に、光電式緯糸センサーによる誤検知を好適に減少することができる。
【0013】
請求項3は、前記光電式緯糸センサーの検出信号は受光部の受光信号であり、前記第1閾値及び前記第2閾値は前記受光信号の大きさが閾値以上となる期間で設定することを特徴とする。請求項3によれば、検出信号の処理を受光信号の大きさで行う場合に、光電式緯糸センサーによる誤検知を好適に減少することができる。
【発明の効果】
【0014】
本願発明は、光電式緯糸センサーの誤検知を減少することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1の実施形態における光電式緯糸センサーの配置を示す平面図である。
図2】光電式緯糸センサーの検出期間及び閾値の設定値を示す表示画面の線図である。
図3】光電式緯糸センサーの設定値と検出信号の関係を示す線図である。
図4】第2の実施形態を示すもので、光電式緯糸センサーの検出期間と検出信号との関係を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施形態)
第1の実施形態を図1図3に基づいて説明する。図1は、エアジェット織機の緯入れ側と反対側の織端を示している。
【0017】
スレイ1は、スレイスォード(図示せず)を介してロッキングシャフト(図示せず)に固定され、織機の前後方向に揺動される。スレイ1上に取付けられた多数の筬羽2Aからなる変形筬2は、織前3側に向けて開口する緯糸案内通路4を備えている。織布5の織端及び捨耳6には、両者を跨ぐようにテンプル装置7が配設されている。
【0018】
テンプル装置7を通過した織布5と捨耳6との間の緯糸Yは、織布5と捨耳6との間に設けたカッター8により切断される。スレイ1上には、緯入れされた緯糸Yを搬送する複数の補助ノズル9が間隔を開けて配設されている。
【0019】
また、スレイ1上には、織布5の織端位置の経糸11と捨耳6の捨耳糸12との間に、緯糸検出装置を構成する光電式緯糸センサー10が配置されている。光電式緯糸センサー10は、図示されていないが、発光素子等を備えた投光部及び受光素子等を備えた受光部を備えている。投光部及び受光部は織幅方向に並べて配置しても良く、また、織幅方向と直角の方向(上下方向)に並べて配置しても良い。
【0020】
光電式緯糸センサー10は、投光部及び受光部が変形筬2の緯糸案内通路4と対向するように配置されている。光電式緯糸センサー10は投光部から照射された光が緯糸Yにより反射され、受光部に受光される反射式光電センサーで構成されている。また、光電式緯糸センサー10から出力される検出信号はパルス信号により後述する制御装置13に送信される。緯入れ側で緯入れされた緯糸Yが緯入れ側と反対側の織端位置に到達すると、光電式緯糸センサー10は、緯糸Yによって反射された光を受光部において受光し、緯糸Yを検出することができる。
【0021】
なお、本実施形態の光電式緯糸センサー10は、反射式光電センサーとして構成されているが、緯糸Yの通過位置を挟んで、投光部及び受光部を対向して配置し、緯糸Yの無い時、受光部が光を受光する透過式光電センサーで構成しても良い。
【0022】
光電式緯糸センサー10の受光部は、図示しない信号処理部を介してエアジェット織機の制御装置13に信号線14により電気的に接続されている。光電式緯糸センサー10は、受光信号を信号処理部にて閾値(感度)と比較処理してパルス信号に変換し、このパルス信号(検出信号)を制御装置13へ送信する。制御装置13は、光電式緯糸センサー10から送信されるパルス信号の数をカウントすることにより、緯糸Yが緯入れ側と反対側の織端に到達したか否かを判定する。制御装置13は、緯糸Yが有ると判定すると、緯入れが正常であるため、エアジェット織機の運転を継続し、緯糸Yが無いと判定すると、緯入れ不良のため、エアジェット織機の運転を停止する。
【0023】
なお、制御装置13は、信号線15により表示装置16と電気的に接続されている。表示装置16は、エアジェット織機の運転に必要な各種データを入力する入力部(図示せず)と制御装置13に記憶された各種データや制御装置13で処理された各種データの表示部17(図2参照)を備えている。
【0024】
捨耳6及び捨耳糸12の位置より外方には、緯糸張力付与装置18が配設されている。緯糸張力付与装置18は変形筬2の前面(織布5の巻取側)に配設したストレッチノズル19と、変形筬2の背面(経糸11の送出し側)に配置した緯糸捕捉管20と、緯糸排出ノズル21とから構成されている。緯糸張力付与装置18は、緯入れされた緯糸Yの先端部を吸引把持し、緯糸Yに一定の張力を付加することができる。
【0025】
図2は、光電式緯糸センサー10の緯糸Yの検出に関わる下記の設定値が表示装置16の表示部17に表示された状態を示している。光電式緯糸センサー10に関する設定値は、制御装置13に予め設定されている。光電式緯糸センサー10では、緯糸種類Aに対して、緯糸Yを検出する期間として、第1緯糸検出期間P1及び第2緯糸検出期間P2が設定されている。
【0026】
また、第1緯糸検出期間P1に対して、光電式緯糸センサー10から送信されたパルス信号が緯糸Yによるもので有るか否かを判定するための第1閾値(感度)S1が設定されている。第2緯糸検出期間P2に対しては、光電式緯糸センサー10から出力されたパルス信号が緯糸Yによるもので有るか否かを判定するための第2閾値(感度)S2が設定されている。第1緯糸検出期間P1は、緯入れ開始タイミング以降でかつ経糸クロスタイミング以前に設定される。
【0027】
本実施形態では、第1閾値(感度)S1及び第2閾値(感度)S2は、第1緯糸検出期間P1及び第2緯糸検出期間P2において、これ以上の数のパルス信号が光電式緯糸センサー10から送信されれば緯糸Y有りと判定する第1パルス信号数6及び第2パルス信号数2で設定されている。
【0028】
なお、本実施形態では、緯糸種類B及びCにおける第1緯糸検出期間P1、第2緯糸検出期間P2の設定値及び第1閾値(感度)S1、第2閾値(感度)S2の設定値は、緯糸種類Aと同一に設定されている。なお、緯糸種類B及びCの設定値は、緯糸種類Aの設定値と異ならせた値で設定しても構わない。
【0029】
第1緯糸検出期間P1は、検出開始タイミングT1から検出終了タイミングT4に設定され、期間内に光電式緯糸センサー10から送信されたパルス信号数が判定に使用される。第2緯糸検出期間P2は、検出開始タイミングT2から検出終了タイミングT3に設定され、期間内に光電式緯糸センサー10から送信されたパルス信号数が判定に使用される。緯糸到達タイミングTは、緯糸Yが光電式緯糸センサー10の設置位置に到達したタイミングである。
【0030】
第2緯糸検出期間P2の検出終了タイミングT3は、第1緯糸検出期間P1の期間内に設定され、経糸11あるいは捨耳糸12の緩みが生じたとしても光電式緯糸センサー10の検出範囲に経糸11あるいは捨耳糸12が入り得ないタイミングに設定されている。第2緯糸検出期間P2の検出終了タイミングT3から第1緯糸検出期間P1の検出終了タイミングT4との間は、緯糸と共に経糸も検出してしまうおそれのある混合検出期間P3となる。第2緯糸検出期間P2の検出開始タイミングT2は、第1緯糸検出期間P1の検出開始タイミングT1より遅れて開始するように設定されている。
【0031】
なお、第2緯糸検出期間P2の検出開始タイミングT2は、例えば、第1緯糸検出期間P1の検出開始タイミングT1と同一タイミング、あるいは第1緯糸検出期間P1の検出開始タイミングT1より早いタイミングで設定することができる。
【0032】
図3において、光電式緯糸センサー10の具体的な緯糸検出例を説明する。図3には、設定された第1緯糸検出期間P1及び第2緯糸検出期間P2が表示されている。図2に示すように、第1閾値(感度)S1は第1パルス信号数6個に設定され、第2閾値(感度)S2は第2パルス信号数2個に設定されている。また、緯糸Yの有無の判定条件は、第1緯糸検出期間P1においてパルス信号数が第1閾値(感度)S1(パルス信号数6個)以上検出され、かつ第2緯糸検出期間P2においてパルス信号数が第2閾値(感度)S2(パルス信号数2個)以上検出された時、緯糸Yが有ると判定するように、制御装置13に設定されている。
【0033】
例1の場合、緯入れされた緯糸Yが、第2緯糸検出期間P2の検出終了タイミングT3の前に、光電式緯糸センサー10の位置に到達すると、光電式緯糸センサー10の投光部から照射された光が緯糸Yにより反射され、反射光が受光部に受光される。光電式緯糸センサー10は、緯糸到達タイミングTから第2緯糸検出期間P2の検出終了タイミングT3までの間に、3個のパルス信号を制御装置13に送信する。検出終了タイミングT3の経過後、第1緯糸検出期間P1の検出終了タイミングT4までの間に、光電式緯糸センサー10はさらに3個のパルス信号を制御装置13に送信する。
【0034】
制御装置13は、第1緯糸検出期間P1の間に第1閾値(感度)S1(パルス信号数6個)以上となる6個のパルス信号D1をカウントする。また、制御装置13は第2緯糸検出期間P2の間に第2閾値(感度)S2(パルス信号数2個)以上となる3個のパルス信号D2をカウントする。この結果、制御装置13は、第1緯糸検出期間P1において第1閾値(感度)S1(パルス信号数6個)以上のパルス信号D1を検出し、第2緯糸検出期間P2において第2閾値(感度)S2(パルス信号数2個)以上のパルス信号D2を共に検出し、判定条件を満たしているため、緯糸Yが有ると判定する。
【0035】
例2では、緯糸Yが、第2緯糸検出期間P2の検出終了タイミングT3の前に、光電式緯糸センサー10の位置に到達し、緯糸到達タイミングTから検出終了タイミングT3の間に3個のパルス信号D2が送信される。検出終了タイミングT3から第1緯糸検出期間P1の検出終了タイミングT4までの間に、7個のパルス信号が送信されている。
【0036】
制御装置13は、第1緯糸検出期間P1において第1閾値(感度)S1以上となる10個のパルス信号D3を検出し、同時に第2緯糸検出期間P2において第2閾値(感度)S2以上となる3個のパルス信号D2を検出している。制御装置13は、光電式緯糸センサー10によって検出されたパルス信号D2及びD3が設定された判定条件を満たしているため、緯糸Yが有ると判定する。
【0037】
なお、パルス信号D3では、例1のパルス信号D1の場合より多い10個のパルス信号が存在するが、検出終了タイミングT4に近い位置のパルス信号D4で示した4個のパルス信号は、混合検出期間P3において、経糸11あるいは捨耳糸12を検出した信号と考えられる。例1では検出しなかった経糸11あるいは捨耳糸12を例2で検出した原因としては、経糸11あるいは捨耳糸12に突発的な緩みが生じ、混合検出期間P3において経糸11あるいは捨耳糸12が光電式緯糸センサー10の検出範囲に入ってきたためと推測される。
【0038】
例3では、第2緯糸検出期間P2において、光電式緯糸センサー10から送信されたパルス信号は存在しない。第2緯糸検出期間P2の検出終了タイミングT3から第1緯糸検出期間P1の検出終了タイミングT4までの間に、光電式緯糸センサー10から6個のパルス信号D5が制御装置13に送信されている。
【0039】
制御装置13は、第1緯糸検出期間P1において、第1閾値(感度)S1以上の6個のパルス信号D5を検出するが、第2緯糸検出期間P2においてパルス信号を検出していない。第2緯糸検出期間P2にパルス信号が発生せず、第2緯糸検出期間P2の検出終了タイミングT3以降、すなわち混合検出期間P3でのみ、6個のパルス信号D5が発生していることから、このパルス信号D5は経糸11あるいは捨耳糸12を検出したものであると推定される。従って、制御装置13は、光電式緯糸センサー10から送信されたパルス信号D5が設定された判定条件を満たさないため、緯糸Yが無いと判定し、直ちにエアジェット織機の停止信号を発信する。
【0040】
上述したように、第1緯糸検出期間P1において送信されたパルス信号D5は、混合検出期間P3において経糸11あるいは捨耳糸12を検出した信号と考えられる。しかし、第1閾値(感度)S1を設定された第1緯糸検出期間P1及び第2閾値(感度)S2を設定された第2緯糸検出期間P2の2段階で緯糸Yの有無の判定を行う構成であるため、緯糸Yと経糸11あるいは捨耳糸12との区別を確実に行うことができる。従って、本実施形態では、光電式緯糸センサー10の誤検知を減らすことができる。
【0041】
例4は、例3のケースと類似している。光電式緯糸センサー10は、第2緯糸検出期間P2において、1個のパルス信号D6を制御装置13に送信している。第1緯糸検出期間P1では、光電式緯糸センサー10は、第2緯糸検出期間P2の検出終了タイミングT3から第1緯糸検出期間P1の検出終了タイミングT4の間に、6個のパルス信号D5を制御装置13に送信している。
【0042】
光電式緯糸センサー10は制御装置13へ、第1緯糸検出期間P1において第1閾値(感度)S1以上の6個のパルス信号D5を検出するが、第2緯糸検出期間P2において第2閾値(感度)S2より少ない1個のパルス信号D6を送信している。制御装置13は、光電式緯糸センサー10から送信されたパルス信号D5及びD6が設定された判定条件を満たさないため、緯糸Yが無いと判定し、直ちにエアジェット織機の停止信号を発信する。
【0043】
なお、第1緯糸検出期間P1において送信されたパルス信号D5は、混合検出期間P3においてのみパルス信号が発生しているから、経糸11あるいは捨耳糸12を検出した信号と考えられ、第2緯糸検出期間P2において送信されたパルス信号D6は、第2閾値(感度)S2以下のパルス数であるため、風綿の検出信号と考えられる。従って、本実施形態では、経糸11あるいは捨耳糸12や風綿の検出による光電式緯糸センサー10の誤検知を減らすことができる。
【0044】
本実施形態では、エアジェット織機において、光電式緯糸センサー10が経糸11あるいは捨耳糸12との間隔を可能な限り縮めて配置されても光電式緯糸センサー10による誤検知を減少することができる。この結果、光電式緯糸センサー10を経糸11あるいは捨耳糸12に可能な限り近づけて設けることにより、織布5に使用されない無駄な緯糸Yの消費量を大きく削減することができる。
【0045】
(第2の実施形態)
図4は第2の実施形態を示したもので、第1の実施形態と同一の構成については同一の符号にて説明し、詳細な説明を省略する。第1の実施形態は、光電式緯糸センサー10の受光信号をパルス信号に変換して送信し、制御装置13においてパルス数のカウントを行っているが、第2の実施形態は、制御装置13において、光電式緯糸センサー10から送信された受光信号の大きさが閾値(感度)以上である期間を検出する構成である。
【0046】
図4に示すように、制御装置13には、第1緯糸検出期間P1及び第2緯糸検出期間P2が設定されている。受光信号が閾値(感度)以上である期間は、第1緯糸検出期間P1内では期間D7であり、第2緯糸検出期間P2内では期間D8である。第1閾値(感度)S1及び第2閾値(感度)S2は、期間D7及びD8に対する第1閾値R1及び第2閾値R2で設定されている。第2閾値R2は、第1閾値R1よりも小さくなるように制御装置13に設定されている。
【0047】
光電式緯糸センサー10の検出信号は、図4に示すように、緯糸Yを検出して受光信号が閾値(感度)以上である間は、ハイレベルとなる。光電式緯糸センサー10の検出信号は、第1緯糸検出期間P1において期間D7の間ハイレベルとなり、第2緯糸検出期間P2において期間D8の間ハイレベルとなる。
【0048】
制御装置13は、第1緯糸検出期間P1において第1閾値(感度)S1である第1閾値R1以上となる期間D7を検出し、第2緯糸検出期間P2において第2閾値(感度)S2である第2閾値R2以上となる期間D8を検出する。制御装置13は、光電式緯糸センサー10から送信された検出信号のハイレベル期間D7、D8が設定された判定条件を満たしているため、緯糸Yが有ると判定する。従って、第2の実施形態は、第1閾値(感度)S1及び第2閾値(感度)S2をそれぞれ第1閾値R1及び第2閾値R2によって設定しているが、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0049】
2 変形筬
4 緯糸案内通路
5 織布
6 捨耳
9 補助ノズル
10 光電式緯糸センサー
11 経糸
12 捨耳糸
13 制御装置
16 表示装置
17 表示部
18 緯糸張力付与装置
A、B、C 緯糸種類
D1〜 D6 パルス信号
D7、D8 受光期間
P1 第1緯糸検出期間
P2 第2緯糸検出期間
P3 混合検出区間
R1 第1閾値
R2 第2閾値
S1 第1閾値(感度)
S2 第2閾値(感度)
T 緯糸到達タイミング
T1、T2 検出開始タイミング
T3、T4 検出終了タイミング
図1
図2
図3
図4