(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記セパレータシートの間に配置された電極は、その一辺から延びて前記セパレータの外部に突出する延長部が形成された集電体を有し、前記噛み合い構造は、前記延長部が形成された部分を除いて、前記セパレータシートの4辺に形成されていることを特徴とする求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池。
前記凹部の深さおよび凸部の高さの、前記セパレータシートの厚さを含まない値が100μm以上400μm以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池。
前記凹部の底面または前記凸部の上面に垂直な方向に対する前記凹部および凸部の側壁の角度は37度以下であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池。
前記電極を置く工程は、一枚の前記セパレータシートの上に、互いに間隔をあけて複数の前記正極を置くことを含み、前記二枚のセパレータシートを互いに固定する工程の後に、前記二枚のセパレータシートを、それらの間に配置された一つの前記電極および該電極の周囲の少なくとも一部に形成された前記噛み合い構造を含むように裁断する工程をさらに有する請求項16に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【背景技術】
【0002】
ノート型パソコン、携帯電話、ハイブリッド自動車などの急速な市場拡大に伴い、キャパシタやリチウムイオン二次電池などの蓄電デバイスが盛んに研究されている。中でもリチウムイオン二次電池は、ニッケル・カドミウム電池、ニッケル・水素電池などと比べて、高いエネルギー密度を持つ。
【0003】
リチウムイオン二次電池は、蓄えることのできるエネルギー密度が高いため、従来の電池とくらべて大きな電流で充電と放電をすることが可能である。大きな電流で充電や放電をすると、電池内部の発熱が増えるため、電池の放熱が問題となる。内部で発生した熱を外部に逃がすことができないと電池が熱くなり、性能が低下することや寿命が短くなることが懸念される。
【0004】
リチウムイオン二次電池の電極体の構造には、帯状の正極と負極を同じく帯状のセパレータを介して重ねあわせ、これを巻き取ってロールを形成する捲回型電極体と、短冊状の正極と負極を、同じく短冊状のセパレータを介して積層した、積層型電極体がある。積層型電極体を用いると、同じ充放電容量の捲回型電極体と比べて、平坦で表面積の大きい電池となる。その平坦な形状のため、積層型電極体はリチウムイオン電池に必要な放熱性能を確保する上で有利である。
【0005】
現在、従来よりも高いエネルギー密度をもつリチウムイオン二次電池として、スズやシリコンなどの金属あるいはそれらの合金や酸化物を負極活物質として利用することが提案されている。しかし、高エネルギー密度の電池ほど、放出できるエネルギーが大きくなるため、安全性についての配慮が必要になる。
【0006】
リチウムイオン二次電池等の蓄電デバイスにおいて、セパレータは、正極と負極の短絡を防ぎ、かつリチウムイオンを効果的に移動させる役割を果たす。これまで、ポリプロピレンやポリエチレンなど、ポリオレフィン系の微多孔質セパレータが、主として用いられてきた。その理由の一つは、万一、電池が過大放電などで想定以上に発熱したとき、セパレータのリチウムイオンの通り道である微細な孔が熱収縮して塞がり、イオンの通り道をシャットダウンして電池動作を停止する作用を示すためである。しかし、高エネルギー密度の電池では、温度が急激に上がってシャットダウン効果が得られる前にセパレータが溶融してしまい、広い面積で電極間の短絡が発生する可能性がある。
【0007】
ポリオレフィン系の微多孔質セパレータに替えて、高耐熱性材料、たとえば、ポリエステル系樹脂からなるセパレータをリチウムイオン電池において使用することが、特許文献1(特許第4042413号公報)で示されている。また、融点を持たないセルロースの不織布をリチウムイオン二次電池に用いることが、特許文献2(特許第3661104号公報)で示されている。これらの材料は、ポリオレフィン系の微多孔膜のもつシャットダウン効果は期待できないが、高い温度でも、広い面積での電極間の短絡が起きないので、ポリオレフィン系セパレータよりも安全性に優れる場合がある。
【0008】
高温に曝されたリチウムイオン電池の安全性には、電極体の変形も関わっていると考えられる。リチウムイオン電池の外装体には、円筒形や角型の缶によるものと、金属フィルムと樹脂フィルムを重ねあわせたラミネートフィルムで形成したものがある。いずれの外装体に於いても、高温になった電解液が気化して電池の内圧が上がった時に作動する安全弁機構を設けることで、気化した電解液を外部に逃がすことができる。缶のような決まった形の外装体をもつ電池では、電極体の変形が外装体によって押さえこまれるので、電池の内圧が上がっても電極体の変形は少ない。これに対して、ラミネートフィルムによる外装体をもつ電池の内部圧力が増加すると、安全弁が動作する圧力まで外装体が膨張するため、電極体が変形する。電極体が変形すると、電極とセパレータがずれて正極と負極が短絡する恐れがある。したがって、耐熱性のセパレータだけではなく、電極とセパレータのずれを防止することも、高温での安全性向上には求められる。
【0009】
電極体が変形したときの電極とセパレータのずれを防止するには、セパレータを袋状に形成し、そのなかに正極または負極の少なくとも一方を収めることが有効である。正極または負極の少なくとも一方が袋状のセパレータに収められていることにより、電極体が変形しても、正極と負極の接触を防止することができる。
【0010】
袋状のセパレータに正極を収めて積層体を作製すると、以下に説明するように電極積層体を作製する際の積層ずれを、容易に低減できる利点もある。
【0011】
短冊状に切断した正極と負極を、セパレータを介して交互に積層した電極積層体では、正極、セパレータ、負極それぞれの積層位置を正しく合わせることが重要である。仮に、電極とセパレータが全て同じ寸法であれば、たとえば、隣り合う二辺をそろえることで互いの積層位置を合わせることができる。しかしこれらが同じ寸法である場合、電極端面で負極に収容しきれなかったリチウムイオンが析出したり、電極やセパレータの切断寸法誤差や積層位置のずれによって正極と負極が短絡したりすることがある。これを回避するために、正極が負極やセパレータよりも小さくなるように設計されることが多い。そのため、たとえば、電極やセパレータの辺や頂点を同じ位置に揃えても、積層する位置を合わせることはできない。
【0012】
電極やセパレータの積層位置のずれは、電池容量のばらつきや長期間使用後の電極端部での金属リチウムの析出、正極と負極の短絡事故の原因となる。袋状のセパレータを用いて積層時の位置合わせ精度を改善する方法として、特許文献3(特許第3380935号公報)に、融点が低いポリエチレンなどの微孔性プラスチックフィルムの周囲を熱で溶着することで袋状に加工し、そのなかに正極を収めて負極と積層することが示されている。この方法では、正極がセパレータ袋の中に固定されているので、セパレータと負極を同寸法にすると、隣り合う二辺を揃えることで負極とセパレータ、正極の積層位置を合わせることができる。
【0013】
しかし、特許文献3におけるセパレータは耐熱性が低いため、高温になると収縮や溶融を起こして、セパレータとしての機能を失う。したがって、高耐熱性材料によるセパレータが求められるが、高耐熱性であるために、熱溶着によって袋状に加工することは難しい。
【0014】
高耐熱性のフィルムのセパレータを袋状にする技術として、特許文献4(特開2006−059717号公報)では、アラミドやポリイミドの繊維を含むセパレータフィルムを400℃〜600℃で熱溶着して、袋状のセパレータに加工する技術が示されている。電極を収納し、袋の四辺で貼り合せた袋セパレータを作製するには、少なくとも一辺は電極をセパレータフィルムに挟んだ状態で溶着しなければならないが、溶着温度が400℃〜600℃という高温のため、電極が変質する恐れがある。また、高温で熱溶着する方法は、高熱を加えると溶融せずに炭化するセルロースなどには適用できない。
【0015】
高耐熱性のセパレータを袋状に加工する熱溶着以外の方法として、特許文献5(特開2012−33399号公報)には、接着剤の使用が記載されている。しかし、接着剤は、塗布と乾燥が必要なため工程が煩雑になることや、セパレータは液体を良く吸収するように設計されているので、塗布した接着材が不要な場所にまで広がって袋状セパレータの内側寸法精度が低くなる問題がある。
【0016】
熱溶着や接着剤以外の、セパレータを袋状に加工する方法として、特許文献6(特開2007―201248号公報)に、重ね合わせたセパレータシートの周縁部を抜き曲げ加工して、袋を形成する技術が示されている、この方法では、切れ込みを入れて折り曲げるための幅がセパレータに必要となり、全体の面積が大きくなってしまうこと、また、加工するための工程が複雑なことが課題である。
【0017】
その他に、鉛蓄電池用セパレータとして、特許文献7(実用新案公報平3−22857号)と、特許文献8(実用新案登録公報第2523460号)に、セパレータシートをU字状に二つ折りし、左右両端開放部に凹凸を形成して袋状に加工したセパレータが示されている。左右両端の開放部の凹凸は、かみ合いギアからなる加圧治具の間を通して形成される。
【0018】
しかし、一辺のみ開口した袋状セパレータに電極板を入れるので、作業上、袋の内寸に余裕が必要で、電極の位置決め精度が低くなる。また、セパレータをあらかじめ二つ折りにしてから、かみ合いギアの間を通すが、リチウムイオン電池で用いられる薄いセパレータ、例えば厚さ50μm以下のセパレータは、かみ合いギアの間を通る際に、ギアの回転する力を受けて破けてしまう恐れがある。かみ合いギアの歯は、回転のために高さと幅に制限があるため、薄いセパレータに適切な凹凸を形成するのが難しい。また、かみ合いギアの間を通す方法では、2枚のセパレータの固定部分が連続したものとなるため、製造工程における電解液の電極積層体への浸透に伴う不要な空気の追い出しや、電池の充放電中に電極積層体中に発生したガスの、電極積層体外への移動の妨げとなる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の一実施形態によるリチウムイオン二次電池は、電極である正極および負極と、これら正極と負極との間に配置されたセパレータとを有する。セパレータは、180℃まで加熱しても溶融しない材料から作られて互いに重ね合わせられた二枚で一組のセパレータシートを有し、正極および負極のいずれか一方の電極は、これら二枚のセパレータの間に配置されている。重ね合わせられたセパレータシート同士は、セパレータシートの外周部の少なくとも一部に形成された噛み合い構造の噛み合いによって互いに固定されている。
【0026】
以下、上述した各構成部材および構成材料について説明する。
【0027】
<セパレータ>
セパレータは、互いに重ね合わせられた二枚で一組の矩形のセパレータシートを有する。各セパレータシートの外周部の少なくとも一部には、二枚のセパレータシートを噛み合わせる噛み合い構造として、凹部および凸部が交互に形成されている。これら凹部および凸部は、セパレータシートの隣り合う少なくとも二辺それぞれの少なくとも一部に形成することができる。この凹部と凸部の噛み合いで二枚のセパレータシートは密着し、二枚のセパレータシートは、この凹部と凸部の噛み合いで作用する摩擦力でお互いに固定されている。二枚のセパレータシートの間には正極が配置され、正極の活物質塗工面はセパレータシートの面内に収まっている。また、正極の活物質塗工面はセパレータシートを介して対向する負極の活物質塗工面内に収まっている。二枚のセパレータシートの間に配置されるのは負極であってもよいが、以下の説明では、正極が二枚のセパレータシートの間に配置されている場合を例にして説明する。
【0028】
重ねあわせた二枚のセパレータシートを互いに固定する凹部と凸部は、セパレータシートの辺に沿って形成されるが、辺の長さ全体にわたって形成されるのではなく、凹部と凸部を形成しない箇所をつくることが好ましい。重ね合わせたセパレータシートの辺の長さ全体にわたってセパレータシート同士が噛み合っていると、電池の製造工程中の電解液を注入する工程で、電極積層体への電解液の進入や、電極積層体から空気が抜けることを阻害するおそれがある。また、充放電に伴って電池内部にガスが発生することがあるが、このガスが電極積層体外の隙間に移動することも、凹部と凸部の噛み合いによって阻害されるおそれがある。
【0029】
セパレータに形成される噛み合い構造の好ましい形状を確認するために、以下に示す2つの実験を行った。
【0030】
まず、実験1として、噛み合い構造の高さとセパレータの固定強さとの関係を調べた。表1に、噛み合い高さとセパレータの固定強さとの関係を示す。
【0032】
表1において、「噛み合い高さ」は、
図12に示す、セパレータシート22に形成された、セパレータシート22の厚さを含まない凸部の高さおよび凹部の深さHで定義される。二枚のセパレータシート22は、それぞれに形成された凹部と凸部の噛み合いにより互いに密着しているので、凸部の高さは凹部の深さと等しい。
【0033】
セパレータの固定強さは、次の方法で評価した。セパレータシートとして、厚さ25μmのセルロース不織布を幅70mm、長さ100mmに切断したしたものを用意した。用意したセパレータシートを、間におもりを挟んだ状態で二枚重ねた。重ねたセパレータシートの四辺それぞれの中央部を、互いに噛み合う凹部および凸部が表面に形成された二枚の加圧板で加圧した。これによって、二枚のセパレータシートに形成された凹凸の噛み合いにより二枚のセパレータシート同士が固定された評価サンプルを得た。セパレータシートに凹凸の噛み合い構造を形成する加圧板としては、凸部の高さ(凹部の深さ)が異なる6種類のものを用いた。セパレータシートに形成した凹凸の形状は、凹部と凸部の間に平坦部が無いものとした。凹凸部の幅は、セパレータシートの縁から内側1.5mmまでとし、凹凸8周期分をそれぞれ形成した。
【0034】
評価サンプルとしては、100gの重りを挟んだものと、20gの重りを挟んだものの2種類を用意した。得られたサンプルについて、二枚のセパレータシートのうち上側のセパレータシートを持ち上げたとき、セパレータシート同士の固定が外れなかったものを「○」、外れたものを「×」とした。
【0035】
噛み合い構造によりセパレータシート同士を固定したセパレータを用いて作成された電池が加熱され、内部の電解液が気化して内圧が上昇し、電極積層体が変形するときに、セパレータシート同士を引き剥がす力が生じる。この実験は、このセパレータシート同士を引き剥がす力に耐えるだけの固定力でセパレータシート同士が固定されているかどうかを評価するために行ったものである。100gという重りの重さは、セパレータシートの引き剥がし力に耐えるのに十分な固定力を実験により求めて決定した値である。100gの重りを挟んだものにおいて上記の評価で「○」と判定されたものは、電極積層体が変形してもセパレータシート同士の固定は外れないと考えられる。また、20gの重りは、100gの重りによりセパレータシート同士の固定が外れた場合であっても、ある程度の固定力は有しているのか、それとも殆ど固定されていないのかを知るための指標として用いた。
【0036】
表1の結果から、セパレータに形成する噛み合い構造の噛み合い高さは、100μm以上400μm以下とすることが好ましい。噛み合い高さが100μmよりも小さいと、二枚のセパレータシートの間に作用する摩擦力が小さくなり、セパレータシートの十分な固定ができないことがある。また、噛み合い高さが400μmを超えると、噛み合い構造を形成したときにセパレータシートが破れ、二枚のセパレータを互いに固定する力が低下することがある。
【0037】
次に、実験2として、噛み合い構造の側壁の角度による、セパレータの固定強さの変化を調べた。表2に、噛み合い構造の側壁の角度とセパレータの固定強さとの関係を示す。
【0039】
表2において、「側壁の角度」は、
図12に示す、凹部の底面または凸部の上面に垂直な方向に対する、凹部または凸部の側壁の角度θで定義される。
【0040】
セパレータ固定強さの評価は、セパレータに噛み合い構造を形成するのに用いた加圧板を変更した他は、上記の実験1と同様にして行った。加圧板としては、側壁の角度が異なる4種類のものを用いた。
【0041】
表2の結果から、側壁の角度は37度以内であることが好ましい。側壁の角度が37度よりも大きいと、セパレータシートの表面に対して垂直方向の力が働いたときに二枚のセパレータシートの固定が外れることがある。
【0042】
なお、上記の実験1では、評価サンプルの側壁の角度は32度から37度の間であった。また、実験2では、評価サンプルの噛み合い高さは200μmから300μmの間であった。
【0043】
上述の説明では、噛み合い構造として各セパレータシートに凹部及び凸部が形成されていることを示した。しかし、一枚のセパレータシートに凹部および凸部の両方が形成されている必要はなく、一方のセパレータシートに少なくとも一つの凸部が形成されるとともに、これと噛み合う少なくとも一つの凹部がもう一方のセパレータシートに形成された噛み合い構造であってもよい。
【0044】
セパレータシートの厚さは、50μm以下が好ましい。セパレータが50μmよりも厚いと必要な電解液の量も増え、電池の重量当たりおよび体積当たりのエネルギー密度の低下を無視できなくなる。また、セパレータが厚いと、セパレータで隔てた正極と負極の間のリチウムイオンの移動距離が長くなるので、電池の入出力特性が低下することもある。
【0045】
セパレータシートを構成する材料はポリエチレンテレフタラート、ポリイミド、ポリアミドイミド、アラミド、セルロースなど、180℃まで加熱しても溶融しない材料であることが好ましい。より詳しくは、セパレータシートは、融点が180℃を超える、あるいは熱溶融せずに、180℃を超える温度で熱分解が始まる有機材料で形成することが好ましい。特に、セパレータシートとして、これらの材料の細い繊維を使った不織布を用いることが、電解液中のリチウムイオンが通過する孔を多数有し、かつ正極と負極の短絡を防止するセパレータ構成するうえで好ましい。
【0046】
無機材料の繊維でセパレータシートを形成することもできる。無機材料の繊維としては、ガラス繊維が工業的に広く用いられ、容易に入手できる。ただし、ガラス繊維で形成したガラスクロスを二枚重ねて凹部と凸部の噛み合いにより固定しても、凹部の深さ(凸部の高さ)によっては、ガラス繊維が破断したりして、噛み合い構造の噛み合いが容易に外れてしまう場合がある。このような場合には、ガラスクロスを樹脂と複合化して用いると、ガラス繊維の破断が防止され、また、ガラスクロス同士の摩擦力が増えるので好ましい。
【0047】
樹脂と複合化したガラスクロスからなるセパレータシートの一例を
図11に示す。
図11に示すセパレータシート32は、ガラス繊維の織物であるガラスクロス32aと、ガラスクロス32aに付着した樹脂32bとを有する。このようなセパレータシート32は、例えば、メッシュの上においたガラスクロス32aの上から溶融した樹脂32bを含浸させ、樹脂32bを固化することによって得ることができる。ガラスクロス32aが保持できなかった樹脂32bはメッシュの下に排出されるので、
図11に示すように、樹脂32bは、ガラスクロス32aの網目には染み込まず、網目を残した状態でガラス繊維を拘束する。そのため、ガラスクロスは樹脂と複合されても、セパレータに必要なイオン伝導性を確保することができる。
【0048】
有機材料と無機材料のいずれの場合も、セパレータシートの表面が平滑な場合は凹部と凸部での摩擦が小さく、噛み合い構造の噛み合いが外れやすいことがある。その場合、厚さが電極以下の樹脂シートを二枚のセパレータシートの噛み合い構造を形成する部分に挟み込むことによって、セパレータシート間の摩擦力を増やすことができる。
【0049】
また、セパレータシート同士を固定する噛み合い構造を、セパレータシートの隣り合う少なくとも二辺に形成することで、セパレータシートの間に配置する電極(正極または負極)の隣り合う二辺を、この噛み合い構造に突き当てることで、セパレータと電極との位置合わせを容易に行うことができる。電極は、通常、電流取り出し用に延長した延長部を有しているが、この延長部を除いた形状が、セパレータシートと同様、矩形であるので、噛み合い構造への電極の突き当ては容易である。
【0050】
噛み合い構造は、セパレータシートの四辺に形成されることが好ましい。これにより、セパレータシートの間に配置された矩形の電極は、四辺すべてにおいて噛み合い構造によって位置が規制されるので、セパレータシートの間に挟んだ電極の、活物質塗工部がセパレータからはみ出すことが無くなる。噛み合い構造をセパレータシートの四辺に形成するには、まず、重ねたセパレータシートの二辺に噛み合い構造を形成して二枚のセパレータシートを固定し、電極をセパレータシートの間に位置を合わせて挿入する。このとき、電極の電流取り出し用の延長部がセパレータシートの外に突き出るように、電極の形状と噛み合い構造の配置を設定しておく。次に、重ねたセパレータシートの、残りの二辺に噛み合い構造を形成して、残りの二辺においてもセパレータシートを固定する。このとき、セパレータシートの外側に突き出した延長部を挟む部分には、噛み合い構造を形成しない。
【0051】
あるいは、一枚のセパレータシートの上に電極を置き、その上にもう一枚のセパレータシートをかぶせてから、電極の周囲の四辺の部分に噛み合い構造を形成してセパレータシート同士を固定する。あるいは、十分に大きなセパレータシートの上に複数の電極を互いに間隔をあけて並べて置いてから、その上にもう一枚のセパレータシートをかぶせ、各電極の周囲の四辺の部分に噛み合い構造を形成してもよい。この後、セパレータシートを所定の箇所で所定の大きさに切断することで、袋状のセパレータに収納された電極を効率よく作製することができる。
【0052】
<電極積層体およびリチウムイオン二次電池の構成>
リチウムイオン2次電池の電極体の構造には、大別して、捲回型と積層型があるが、本発明は積層型に好適に適用される。本発明を適用できる二次電池の形態としては、電極積層体を樹脂フィルムと金属フィルムのラミネートフィルムによる外装体に収めた積層ラミネート型がある。以下、積層ラミネート型の二次電池について説明する。
【0053】
図1に、本発明の一実施形態によるリチウムイオン二次電池1の分解斜視図が示されている。外装材11、12によって電極積層体10は、その厚み方向両側から包囲される。また、外装材11、12による外装体には、電解液も内包される。電極積層体10には負極タブ13および正極タブ14が接続され、それぞれ一部を外装体から突出させている。
【0054】
図2に示すように、電極積層体10は、複数の負極21と、複数のセパレータ付き電極アセンブリ25とを交互に積層して構成されている。セパレータ付き電極アセンブリ25は、
図3に示すように、重ね合わされた二枚のセパレータシート22と、その間に配置された正極27とを有する。二枚のセパレータシート22は、その外周部に形成された噛み合い構造26によって互いに固定されている。セパレータシート22は、負極21と正極27が直接接触することを防止している。正極27と負極21において、負極21の活物質塗工面は、正極27の活物質塗工面よりも面積が広く、正極27の活物質塗工面は、負極21と積層された状態で、対応する負極の活物質塗工面内に収まっている。負極21および正極27は、それぞれ延長部23a、24aを有している。正極27の延長部24aは、セパレータシート22から突き出ており、正極21および負極27は、その延長部23a、24aが互いに干渉せずに電極積層体10の外に延びるように積層されている。すべての負極21の延長部23aは一つに集められて、
図1に示す負極タブ13に溶接により接続される。正極27も同様に、すべての正極27の延長部24aが一つに集められて、
図1に示す正極タブ14に溶接によって接続される。
【0055】
<負極>
本実施形態のリチウムイオン二次電池は、負極活物質を有する負極を備える。負極活物質は負極用結着材によって負極集電体上に結着される。
図4(A)は、負極の断面模式図である。負極21は金属箔で形成される負極集電体23と、負極集電体23の両面に塗工された負極活物質41とを有する。負極集電体23は、
図1における負極タブ13と接続する延長部23aを有して形成され、この延長部23aには負極活物質41は塗工されない。
【0056】
本実施形態における負極活物質は、特に制限されるものではなく、例えば、リチウムイオンを吸蔵、放出し得る炭素材料(a)、リチウムと合金可能な金属(b)、およびリチウムイオンを吸蔵、放出し得る金属酸化物(c)等が挙げられる。
【0057】
炭素材料(a)としては、例えば、炭素、非晶質炭素、ダイヤモンド状炭素、カーボンナノチューブ、またはこれらの複合物等が挙げられる。ここで、結晶性の高い炭素は、電気伝導性が高く、銅などの金属からなる負極集電体との接着性および電圧平坦性が優れている。一方、結晶性の低い非晶質炭素は、体積膨張が比較的小さいため、負極全体の体積膨張を緩和する効果が高く、かつ結晶粒界や欠陥といった不均一性に起因する劣化が起きにくい。
【0058】
金属(b)としては、例えば、Al、Si、Pb、Sn、In、Bi、Ag、Ba、Ca、Hg、Pd、Pt、Te、Zn、La、またはこれらの2種以上の合金等が挙げられる。また、これらの金属又は合金は2種以上混合して用いてもよい。また、これらの金属又は合金は1種以上の非金属元素を含んでもよい。
【0059】
金属酸化物(c)としては、例えば、酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化リチウム、またはこれらの複合物等が挙げられる。本実施形態では、負極活物質として酸化スズ若しくは酸化シリコンを含むことが好ましく、酸化シリコンを含むことがより好ましい。これは、酸化シリコンは、比較的安定で他の化合物との反応を引き起こしにくいからである。また、金属酸化物(c)に、窒素、ホウ素およびイオウの中から選ばれる一種または二種以上の元素を、例えば0.1〜5質量%添加することもできる。こうすることで、金属酸化物(c)の電気伝導性を向上させることができる。
【0060】
金属酸化物(c)は、その全部または一部がアモルファス構造を有することが好ましい。アモルファス構造の金属酸化物(c)は、他の負極活物質である炭素材料(a)や金属(b)の体積膨張を抑制することができる。このメカニズムは明確ではないが、金属酸化物(c)がアモルファス構造であることにより、炭素材料(a)と電解液の界面への皮膜形成に何らかの影響があるものと推定される。また、アモルファス構造は、結晶粒界や欠陥といった不均一性に起因する要素が比較的少ないと考えられる。なお、金属酸化物(c)の全部または一部がアモルファス構造を有することは、エックス線回折測定(一般的なXRD測定)にて確認することができる。具体的には、金属酸化物(c)がアモルファス構造を有しない場合には、金属酸化物(c)に固有のピークが観測されるが、金属酸化物(c)の全部または一部がアモルファス構造を有する場合が、金属酸化物(c)に固有ピークがブロードとなって観測される。
【0061】
また、金属(b)はシリコンであり、金属酸化物(c)は酸化シリコンであることが好ましい。つまり、負極活物質は、シリコン、酸化シリコン及び炭素材料の複合体からなることが好ましい。また、あらかじめ、負極活物質が、リチウムを化学的・熱的にドープした材料を用いることも可能である。例えば、化学的ドープは、リチウム金属あるいはリチウム化合物を含んだ溶媒と還元剤を用いて、活物質に強制的にリチウムをドープする方法で得られることが出来る。また、熱ドープは、負極活物質とリチウム金属を接触させ、全体を温めることによって、負極活物質にリチウムをドープさせることが出来る。
【0062】
負極用結着剤としては、特に制限されるものではないが、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリル酸等を用いることができる。中でも、結着性が強いことから、ポリイミドまたはポリアミドイミドが好ましい。使用する負極用結着剤の量は、トレードオフの関係にある「十分な結着力」と「高エネルギー化」の観点から、負極活物質100質量部に対して、5〜25質量部が好ましい。
【0063】
負極集電体としては、電気化学的な安定性から、アルミニウム、ニッケル、ステンレス、クロム、銅、銀、およびそれらの合金が好ましい。その形状としては、箔、平板状、メッシュ状が挙げられる。
【0064】
<正極>
本実施形態のリチウムイオン二次電池は、正極活物質を有する正極を備える。正極は、正極活物質が正極用結着剤によって正極集電体を覆うように結着されてなる。
図4(B)は正極の断面模式図である。正極27は、金属箔で形成される正極集電体24と、正極集電体24の両面に塗工された正極活物質42とを有する。正極集電体24は、
図1の正極タブ14と接続する延長部24aを有して形成され、この延長部24aには正極活物質42は塗工されない。
【0065】
正極活物質としては、LiMnO
2、LixMn
2O
4(0<x<2)、Li
2MnO
3、Li
xMn
1.5Ni
0.5O
4(0<x<2)等の層状構造を持つマンガン酸リチウムまたはスピネル構造を有するマンガン酸リチウム、LiCoO
2、LiNiO
2またはこれらの遷移金属の一部を他の金属で置き換えたもの、LiNi
1/3Co
1/3Mn
1/3O
2などの特定の遷移金属が半数を超えないリチウム遷移金属酸化物、これらのリチウム遷移金属酸化物において化学量論組成よりもLiを過剰にしたもの、LiFePO
4などのオリビン構造を有するもの、等が挙げられる。また、これらの金属酸化物に、Al、Fe,P,Ti,Si、Pb、Sn、In、Bi、Ag、Ba、Ca、Hg、Pd、Pt、Te、Zn、La等により一部置換した材料も使用することができる。特に、Li
αNi
βCo
γAl
δO
2(1≦α≦2、β+γ+δ=1、β≧0.7、γ≦0.2)またはLi
αNi
βCo
γMn
δO
2(1≦α≦1.2、β+γ+δ=1、β≧0.6、γ≦0.2)が好ましい。正極活物質は、一種を単独で、または二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0066】
また、ラジカル材料等を正極活物質として用いることも可能である。
【0067】
正極用結着剤としては、負極用結着剤と同様のものと用いることができる。使用する正極用結着剤の量は、トレードオフの関係にある「十分な結着力」と「高エネルギー化」の観点から、正極活物質100質量部に対して、2〜15質量部が好ましい。
【0068】
正極集電体24としては、負極集電体と同様のものを用いることができる。
【0069】
正極活物質の塗工層には、インピーダンスを低下させる目的で、導電補助材を添加してもよい。導電補助材としては、グラファイト、カーボンブラック、アセチレンブラック等の炭素質微粒子が挙げられる。
【0070】
<電解液>
本実施形態で用いる電解液は、リチウム塩(支持塩)と、この支持塩を溶解する非水溶媒を含む非水電解液を用いることができる。
【0071】
非水溶媒としては、炭酸エステル(鎖状又は環状カーボネート)、カルボン酸エステル(鎖状又は環状カルボン酸エステル)、リン酸エステル等の非プロトン性有機溶媒を用いることができる。
【0072】
炭酸エステル溶媒としては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)等の環状カーボネート類;ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)等の鎖状カーボネート類;プロピレンカーボネート誘導体が挙げられる。
【0073】
カルボン酸エステル溶媒としては、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸エチル等の脂肪族カルボン酸エステル類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類が挙げられる。
【0074】
これらの中でも、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(MEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)等の炭酸エステル(環状または鎖状カーボネート類)が好ましい。
【0075】
リン酸エステルとしては、例えば、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリプロピル、リン酸トリオクチル、リン酸トリフェニル等が挙げられる。
【0076】
また、非水電解液に含有できる溶媒としては、その他にも、例えば、エチレンサルファイト(ES)、プロパンサルトン(PS)、ブタンスルトン(BS)、Dioxathiolane−2,2−dioxide(DD)、スルホレン、3−メチルスルホレン、スルホラン(SL)、無水コハク酸(SUCAH)、無水プロピオン酸、無水酢酸、無水マレイン酸、ジアリルカーボネート(DAC)、2,5−ジオキサヘキサンニ酸ジメチル、2,5−ジオキサヘキサンニ酸ジメチル、フラン、2,5−ジメチルフラン、ジフェニルジサルファイド(DPS)、ジメトキシエタン(DME)、ジメトキシメタン(DMM)、ジエトキシエタン(DEE)、エトキシメトキシエタン、クロロエチレンカーボネート、ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル、メチルプロピルエーテル、エチルプロピルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルブチルエーテル、ジエチルエーテル、フェニルメチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、2−メチルテトラヒドロフラン(2−MeTHF)、テトラヒドロピラン(THP)、1,4−ジオキサン(DIOX)、1,3−ジオキソラン(DOL)、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、イソプロピルアセテート、ブチルアセテート、メチルジフルオロアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネート、メチルフォルメイト、エチルフォルメイト、エチルブチレート、イソプロピルブチレート、メチルイソブチレート、メチルシアノアセテート、ビニルアセテート、ジフェニルジスルフィド、ジメチルスルフィド、ジエチルスルフィド、アジポニトリル、バレロニトリル、グルタロニトリル、マロノニトリル、スクシノニトリル、ピメロニトリル、スベロニトリル、イソブチロニトリル、ビフェニル、チオフェン、メチルエチルケトン、フルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、カーボネート電解液、グライム、エーテル、アセトニトリル、プロピオンニトリル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ジメチルスルホキシド(DMSO)イオン液体、ホスファゼン、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸エチル等の脂肪族カルボン酸エステル類、又は、これらの化合物の一部の水素原子がフッ素原子で置換されたものが挙げられる。
【0077】
本実施形態における支持塩としては、LiPF
6、LiAsF
6、LiAlCl
4、LiClO
4、LiBF
4、LiSbF
6、LiCF
3SO
3、LiC
4F
9SO
3、LiC(CF
3SO
2)
3、LiN(CF
3SO
2)
2等の通常のリチウムイオン電池に使用可能なリチウム塩を用いることができる。支持塩は、一種を単独で、または二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0078】
非水溶媒は、一種を単独で、または二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0079】
<外装体>
外装体としては、電解液に安定で、かつ十分な水蒸気バリア性を持つものであれば、適宜選択することができる。例えば、積層ラミネート型の二次電池の場合、外装体としては、アルミニウムと樹脂のラミネートフィルムを用いることが好ましい。外装体は、単一の部材で構成してもよいし、複数の部材を組み合わせて構成してもよい。
【0080】
<製造方法>
以下に、正極27が二枚のセパレータシート22に挟まれた構造を有するセパレータ付き電極アセンブリ25の作製方法と、電極積層体の作製方法を説明する。
【0081】
図5は、重ね合わせた二枚のセパレータシート22に、凹部と凸部からなる噛み合い構造を形成する方法の一例を説明する断面模式図である。表面に凹部51b、52bと凸部51a、52aを形成した一対の加圧板51、52の間に、重ねあわせた二枚のセパレータシート22の辺の部分を挟み、加圧板51の凸部51aと加圧板52の凹部52b、加圧板51の凹部51bと加圧板52の凸部52aが噛み合うように加圧する。これにより、二枚のセパレータシート22に
図6に示すような凹部61と凸部62からなる噛み合い構造が形成される。このように、加圧板51、52でセパレータシート22を挟み込むことによってセパレータシート22に噛み合い構造を形成することで、例えば厚さが50μm未満の薄いセパレータシート22であっても、セパレータシート22が破れることなく良好に噛み合い構造を形成することができる。
【0082】
加圧板51、52に形成される凹部51b、52bおよび凸部51a、52aの数は任意であってよい。例えば、加圧板51、52がそれぞれ一つの凹部51b、52bおよび凸部51a、52aを有するものあっても、セパレータシート22の加圧と加圧板51、52の移動を適宜繰り返すことで、セパレータシート22に所望の数の凹部および凸部を有する噛み合い構造を形成することができる。
【0083】
また、加圧板51、板52の表面に形成する凹部および凸部の平面形状を、折れ曲がり部を持つ形にすると、
図7に示すように、セパレータシート22に形成される凹部71と凸部72の外周長を長くすることができる。それにより、セパレータシート22同士の固定力を大きくすることができる。
図7に示す例では折れ曲がりが中央の1か所だけであるが、2か所以上にして凹凸部をジグザグにしても良い。
【0084】
図8は、二枚のセパレータ22に正極27が挟まれた構造を有するセパレータ付き電極アセンブリを作製する一方法を説明する図である。以下、図に従って説明する。
(工程A1)まず、セパレータシート22を二枚重ねる。
(工程A2)次に、重ねたセパレータシート22の隣り合う二辺に噛み合い構造26を形成して、二枚のセパレータシート22を互いに固定する。
(工程A3)次に、正極27を二枚のセパレータシート22の間に挿入する。このとき、セパレータシート22の噛み合い構造26によって固定された二辺に、正極27の二辺を突き合わせることで、正極27とセパレータシート22の位置関係を決める。
(工程A4)次に、正極27のずれを防止するために、重ねたセパレータシート22の残りの二辺に噛み合い構造を形成する。
【0085】
上述の一連の工程のうち、工程A2では、正極27電流取り出しのための延長部が突き出る上辺を除いた3辺に噛み合い構造26を形成し、残りの一辺の開口から電極27を挿入するようにしても良い。しかしこの場合、残りの一辺での開口のサイズによっては、正極27をセパレータシート22の間に挿入する工程A3の作業が、隣り合う二辺を固定した場合と比べて難しくなることがある。
【0086】
図8とは別の方法を、
図9を用いて説明する。
(工程B1)まず、一枚のセパレータシート81の上に、正極27を置く。このとき、正極27は一枚でも構わないが、
図9のように、セパレータシート81のサイズを、複数の正極27を互いに間隔をあけて並べて配置できるサイズとし、複数の正極27を同時に処理する方が、生産時間の短縮に有利なため好ましい。
(工程B2)次に、1つまたは複数の正極27を置いたセパレータシート81の上に、もう1枚のセパレータシート82を重ねる。
(工程B3)次に、重ねた二枚のセパレータシート81、82の、正極27の周囲四辺に対応する部分に噛み合い構造26を形成する。
(工程B4)最後に、セパレータシート81、82を、所定の箇所で裁断し、一つの正極27およびその周囲の噛み合い構造26を含むセパレータ付き電極アセンブリ25を得る。
図9に示すように、複数の正極27を同時に処理する場合は、セパレータシート81、82を、各正極27の間の位置で裁断し、これによって、それぞれ一つの正極27およびその周囲の噛み合い構造27を有する複数のセパレータ付き電極アセンブリ25を得る。
【0087】
電極積層体の作製方法を、
図10を用いて説明する。電極積層体の作製には、
図10に示すように、積層体の隣り合う二辺の位置を決めるために直交配置された二つの位置決めブロック101を用いる。この位置決めブロック101に、負極21と、正極を収納したセパレータ付き電極アセンブリ25とを、それぞれ隣り合う二辺を突き当てながら交互に重ねていくことで電極積層体が作製される。負極21とセパレータ付き電極アセンブリ25とを積層するとき、負極21の延長部と、セパレータ付きアセンブリ25に収納された正極の延長部とが重ならないようにする。所定の数だけ積層した後、負極の延長部に負極タブを溶接により接続し、正極の延長部に正極タブを溶接で接続する。
【0088】
次に、本発明を実
験例により具体的に説明する。
【0089】
<実
験例1>
<電池の作製>
(正極の作製)
正極活物質として、リチウムマンガン複合酸化物(LiMn
2O
4)材料を85質量%、導電助剤としてアセチレンブラックを7質量%、バインダとしてポリフッ化ビニリデン8質量%とを混合し、これをN−メチルピロリドン(NMP)に分散させてスラリーとした後、正極集電体としてのアルミニウム箔(厚さ15μm)に塗布し、乾燥させた。集電体の両面に活物質を塗布した後、電極をプレス処理し、処理後の厚さが80μmになるように作製した。さらに、これを延長部が突き出た形状に打ち抜いた。活物質塗布部分は幅66mm、長さ96mmとした。延長部は、活物質塗布部の長辺方向に沿って長さ15mm、幅20mmとした。延長部に活物質は塗布されていない。
【0090】
(負極の作製)
負極活物質として、黒鉛材料を90質量%、バインダとしてポリフッ化ビニリデン10質量%とを混合し、N−メチルピロリドン(NMP)に分散させてスラリーとした後、負極集電体として厚さ10μmの銅箔に塗布し、乾燥させた。集電体の両面に活物質を塗布した後、電極をプレス処理し、処理後の厚さが65μmになるように作製した。さらに、これを延長部が突き出た形状に打ち抜いた。活物質塗布部分は幅70mm、長さ100mmとした。延長部は、活物質塗布部の長辺方向に沿って長さ15mm、幅20mmで形成した。延長部に活物質は塗布されていない。
【0091】
(セパレータ付き電極アセンブリの作製)
セパレータシートとして、厚さ25μmのセルロース不織布を、幅70mm、長さ100mmの短冊状に裁断したものを用いた。得られた短冊状のセパレータシートを二枚重ね、隣り合う二辺を、平面形状が矩形の凹部と凸部を表面にもつ二枚の加圧板で挟んで加圧した。これにより、二枚のセパレータシートには、加圧板による凹部および凸部が噛み合った噛み合い構造が形成され、二枚のセパレータシート同士がこの噛み合い構造によって固定された。噛み合い構造は、凹部と凸部の間に平たん部が無く、セパレータシートの辺に沿った方向での凹部の底面および凸部の上面の長さはそれぞれ0.4mm、凹凸の周期は1.4mmであり、重ね合わせセパレータシートの辺の両端部に8周期分の長さで形成した。セパレータシートの辺に垂直な方向での、セパレータシートの縁からの噛み合い構造の長さで規定される噛み合い構造の幅は、1.5mmとした。凹部および凸部の噛み合い高さは0.4mmであり、上記の各寸法から算出した噛み合い構造の側壁部の角度は37度となる。
【0092】
次に、正極の二辺をセパレータシートの二辺に形成された噛み合い構造に突き当てて位置を合わせながら、正極を二枚のセパレータシートの間に挟んだ。次に、セパレータシートの固定されていない二辺に、同様の噛み合い構造を形成して、正極の外周四辺においてセパレータシートを固定した。これにより、正極を収納したセパレータ付き電極アセンブリを作製した。なお、正極の延長部が突き出ているセパレータシートの部分には、噛み合い構造は形成しなかった。
【0093】
(電極積層体の作製)
電極の積層、すなわち負極とセパレータ付き電極アセンブリとの積層は、
図10と同様の位置決めブロックを用いて行った。積層は、負極、セパレータ付き電極アセンブリ、負極、の順に、4枚の正極と5枚の負極が交互に重なるように行った。最も外側の面は負極となるが、対向する正極面が無いため、電池として動作しない。
【0094】
(電池の作製)
電極積層体の正極の延長部と負極の延長部に、それぞれ正極タブと負極タブを超音波溶接により接合した。次に、正極タブおよび負極タブが接合された電極積層体を、正極タブおよび負極タブを突出させて外装体内に封入し、これによって電池を作製した。電極積層体の封入は、以下の手順で行った。
【0095】
まず、外装材として、アルミニウムと樹脂のラミネートフィルムを二枚用意した。これら二枚のラミネートフィルムを、電極積層体を間に挟んで重ね合わせた。このとき、電極積層体は。正極タブおよび負極タブがラミネートフィルムから突出するように配置する。重ね合わせたラミネートフィルム同士を、電極積層体の外周部の三辺で熱溶着した。ラミネートフィルムの熱溶着後、熱溶着していない残りの一辺を注液口としてそこからラミネートフィルム内に電解液を注入した。電解液の注入後、真空雰囲気中で注液口を熱溶着により封止し、これにより電池を完成した。電解液としては、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを体積比1:2で混合したものを溶媒とし、溶媒1リットルあたりLiPF
6を1モル溶解したものを用いた。
【0096】
<電池の評価>
以上の手順で電池(セル)を10個作製し、初回の充電前に、電池の内部短絡の有無を電池10個で調べた。次に、そのうち5個の電池について、下限電圧2.5V、上限電圧4.2Vの充放電を100サイクル行った後の内部析出の有無を調べ、残りの5個の電池で、180℃まで恒温槽内で加熱したときの内部短絡の有無を調べた。その結果、充電前の電池の内部短絡は0個、100サイクルの充放電試験後の内部析出は0個、180℃まで加熱すると昇温中に電解液の気化で電池の外装体が膨らみ、熱溶着した外装体の辺の一部が開封したが、内部短絡は0個であった。180℃まで加熱した電池を冷却後に分解したところ、セパレータは正極を覆っており、正極と負極が接触した箇所は無かった。
【0097】
<実
験例2>
<電池の作製>
正極の二辺をセパレータシートの固定した隣り合う長辺と短辺に突き当てて位置を合わせながらセパレータシートの間に挟んだ後、セパレータシートの残りの二辺に噛み合い構造を形成しなかった。このこと以外は、実
験例1と同様にして電池を作製した。電極の積層時には、セパレータシートの固定した二辺を、
図10に示す位置決めブロックに突き当てて位置決めをした。
【0098】
<電池の評価>
実
験例1と同様に10個の電池を作製して評価を行った。その結果、充電前の電池の内部短絡は0個、100サイクルの充放電試験後の内部析出は0個、180℃まで加熱したときの内部短絡は0個であった。
【0099】
<実
験例3>
<電池の作製>
ポリイミドのマイクロ繊維から形成した厚さ30μmの不織布をセパレータシートとしてとして用いた。セパレータシートの噛み合い構造を形成する箇所に一枚のポリプロピレンシートを挟んで、二枚のセパレータシートを重ね合わせた。ポリプロピレンシートの厚さは25μmであった。挟んだポリプロピレンシートは、正極にかからないように配置した。その他は、実
験例1と同様にして電池を作製した。
本実験例が、本発明の実施例に相当する。
【0100】
<電池の評価>
実
験例1と同様に10個の電池を作製して評価を行った。その結果、充電前の電池の内部短絡は0個、100サイクルの充放電試験後の内部析出は0個、180℃まで加熱したときの内部短絡は0個であった。
【0101】
ポリプロピレンの融点を超えた温度まで加熱しても内部短絡が発生しなかった理由として、ポリプロピレンの溶融温度以上においても、溶融したポリプロピレンがポリイミド不織布の間に留まったためと考えられる。ポリイミド不織布の間に留まったポリプロピレンが、ポリイミド不織布に形成した噛み合い構造によるポリイミド不織布同士の固定力をより強固にし、ポリイミドシートのずれを防いだものと推測している。
【0102】
<実
験例4>
<電池の作製>
セパレータとしてEガラスのファイバーを製織した厚さ25μmのガラスクロスを用いた。製織したままのガラスクロスは織り目がずれやすい。そこで、ポリプロピレンフィルムをガラスクロスに重ねて200℃まで加熱して溶融し、ガラス繊維の間に浸透、固化させることで、ガラスクロスの織り目を固定した。ポリプロピレンの量は、セパレータシート全体に対して20重量%とした。その他は、実
験例1と同様にして電池を作製した。
【0103】
<電池の評価>
実
験例1と同様に10個の電池を作製して評価を行った。その結果、充電前の電池の内部短絡は0個、100サイクルの充放電試験後の内部析出は0個、180℃まで加熱したときの内部短絡は0個であった。ポリプロピレンの融点を超えた温度まで加熱しても内部短絡が発生しなかった理由として、ポリプロピレンの溶融温度以上においても、溶融したポリプロピレンがガラス繊維の間に留まって、ガラスクロスの変形を防いでいたためと推測している。
【0104】
<実
験例5>
<電池の作製>
セパレータシートに形成する噛み合い構造の形状を、凹部と凸部の間に平たん部が無く、セパレータシートの辺に沿った方向での凹部の底面および凸部の上面の長さはそれぞれ0.4mm、凹凸の周期1.0mmとし、重ねあわせたセパレータシートの辺の両端に8周期分を形成した。凹部および凸部の噛み合い高さは0.1mmで、上記の各寸法から算出した噛み合い構造の側壁部の角度は34度となる。その他は、実
験例1と同様にして電池を作製した。
【0105】
<電池の評価>
実
験例1と同様に10個の電池を作製して評価を行った。その結果、充電前の電池の内部短絡は0個、100サイクルの充放電試験後の内部析出は0個、180℃まで加熱したときの内部短絡は0個であった。
【0106】
<実
験例6>
<電池の作製>
セパレータシートとして、厚さ25μmのセルロース不織布を、幅140mm、長さ100mmの矩形状に裁断したものを用いた。一枚のセパレータシートの上に、正極を二枚並べて置いた。このとき、セパレータシートの長さ100mmの辺と正極の96mmの辺を平行とし、隣り合う正極の辺と辺の距離を4mm、そのほかの正極の辺(延長部を除く)とセパレータシートの辺の距離を2mmとなるようにした。次に、この上に、もう一枚のセパレータシートを重ねた。次に、二枚の正極それぞれの四辺から0.5mmの距離をとって、重なり合ったセパレータシートに凹部および凸部からなる噛み合い構造を形成した。隣り合う正極の間での噛み合い構造の幅(正極の辺に沿った方向に垂直な方向での噛み合い構造の長さ)を3mmとした他は、実
験例1と同様の噛み合い構造を形成した。次に、隣り合う正極の間の4mmの隙間の中央で、セパレータシートを切断した。これにより、実
験例1により得られたのと同様のセパレータ付き電極アセンブリが同時に二枚得られた。このようにして作製したセパレータ付き電極アセンブリを用いて、実
験例1と同様にして電池を作製した。
【0107】
<電池評価>
実
験例1と同じく10個の電池を作製して評価を行った。その結果、充電前の電池の内部短絡は0個、100サイクルの充放電試験後の内部析出は0個、180℃まで加熱したときの内部短絡は0個であった。
【0108】
<実
験例7>
<電池の作製>
実
験例3において、ポリイミド不織布からなるセパレータシートの間にポリプロピレンシートを挟まず、さらに、噛み合い構造の平面形状を、矩形から、中央部において折れ曲がった形状としたこと以外は実
験例3と同様にして電池を作製した。噛み合い構造の平面形状における折れ曲がり角度は120度とした。
【0109】
<電池評価>
実
験例1と同じく10個の電池を作製して評価を行った。その結果、充電前の電池の内部短絡は0個、100サイクルの充放電試験後の内部析出は0個、180℃まで加熱したときの内部短絡は0個であった。
【0110】
<比較例1>
<電池の作製>
セパレータシートとして厚さ25μmのポリプロピレン製微多孔質シートを用い、セパレータシート同士の固定を熱溶着で行ったこと以外は実
験例1と同様にして電池を作製した。
【0111】
<電池の評価>
実
験例1と同じく10個の電池を作製して評価を行った。その結果、充電前の電池の内部短絡は0個、100サイクルの充放電試験後の内部析出は0個であったが、180℃まで加熱したときには、試験した5個の電池すべてで内部短絡が発生した。電池の外装体は、気化した電解液で膨らんで、熱溶着した辺の一部が開封していた。180℃まで加熱した電池を冷却後に分解したところ、セパレータが収縮し、正極面と負極面が接触していた。
【0112】
<比較例2>
<電池の作製>
セパレータシートに噛み合い構造を形成しなかったこと、つまりセパレータシート同士を固定しなかったこと以外は実
験例1と同様に電池を作製した。積層時の位置合わせは、実
験例1と同じ位置決めブロックを用い、負極とセパレータシートとは位置決めブロックへの突き当てで位置を揃えたが、正極は寸法が小さいため位置決めブロックへの突き当てができず、目視で位置を合わせた。
【0113】
<電池の評価>
実
験例1と同じく10個の電池を作製して評価を行った。その結果、充電前の電池の内部短絡は0個であったが、100サイクルの充放電試験後の5個中1個で析出が負極の端部でみられた。これは組み立て中に電極積層体の中で正極がずれて、セパレータからは、はみ出さなかったものの、負極対向面からは、はみ出したことが原因と思われる。180℃まで加熱したときには、試験した5個のうち2個で内部短絡が発生した。電池の外装体は気化した電解液のために膨らんで、熱溶着した辺の一部が開封していた。内部短絡を起こした電池を冷却後に分解したところ、セパレータは収縮していなかったが、正極と負極が接触した箇所があった。電解液が気化して電池が膨らんだときに電極積層体が変形し、セパレータが動いたことが原因と考えられる。
【0114】
<参考例1>
<電池の作製>
実
験例1と同様、セパレータシートとして厚さ25μmのセルロース不織布を用いた。噛み合い構造は、凹部と凸部の間に平たん部は無く、セパレータシートの辺に沿った方向での凹部の底面および凸部の上面の長さがそれぞれ0.4mm、凹凸の周期1.3mmであり、重ねあわせたセパレータシートの辺の両端に8周期分の長さ(約10mm)で形成した。凹部および凸部の噛み合い高さは0.2mmであり、これらの各寸法から算出した噛み合い構造の側壁部の角度は45度となる。次に、正極の二辺をセパレータシートの固定箇所に突き当てて位置を合わせながら、正極をセパレータシートの間に挟んだが、正極を突き当てる際に強い力を加えすぎるとセパレータシート同士の固定が外れるものがあった。
【0115】
<参考例2>
実
験例1と同様、セパレータシートとして厚さ25μmのセルロース不織布を用いた。噛み合い構造は、凹部と凸部の間に平たん部は無く、セパレータシートの辺に沿った方向での凹部の底面および凸部の上面の長さがそれぞれ0.4mm、凹凸の周期1.0mmであり、重ねあわせたセパレータシートの辺の両端に8周期分の長さで形成した。凹部および凸部の噛み合い高さは0.08mmであり、これらの各寸法から算出した噛み合い構造の側壁部の角度は約37度となる。次に、正極の二辺をセパレータシートの固定箇所に突き当てて位置を合わせながら、正極をセパレータシートの間に挟んだが、正極を突き当てる際に強い力を加えすぎるとセパレータシート同士の固定が外れるものがあった。
【0116】
<参考例3>
実
験例1と同様、セパレータシートとして厚さ25μmのセルロース不織布を用いた。噛み合い構造は、凹部と凸部の間に平たん部は無く、セパレータシートの辺に沿った方向での凹部の底面および凸部の上面の長さがそれぞれ0.4mm、凹凸の周期1.4mmであり、重ねあわせたセパレータシートの辺の両端に8周期分の長さで形成した。凹部および凸部の噛み合い高さは0.5mmであり、これらの各寸法から算出した噛み合い構造の側壁部の角度は約29度となる。次に、正極の二辺をセパレータシートの固定箇所に突き当てて位置を合わせながら、正極をセパレータシートの間に挟んだが、正極を突き当てる際に強い力を加えすぎるとセパレータシート同士の固定が外れるものがあった。
【0117】
以上、実
験例1〜7の結果から、180℃まで加熱しても溶融しない耐熱性の高い材料によるセパレータシートを重ね合わせ、両者を凹部および凸部による噛み合い構造で互いに固定し、その間に正極を配置することで、積層電極体をもつリチウムイオン電池において、積層電極体内部での積層ずれを無くし、また、高温にさらした時の内部短絡を抑制する効果が得られることが認められた。なお、本発明の効果は、セパレータに用いる材料の性質と、重ねあわせたセパレータシートの構造によって発現するので、正極や負極の仕様やセパレータシートを変質させない限り電解液の種類には依存しない。
【0118】
また、実
験例3ではセパレータシートとしてポリイミド繊維から作られた不織布を用い、二枚のセパレータシートの間にポリプロピレンシートを挟み込んでいるが、このポリプロピレンシートは必須の構成ではない。ただし、180℃まで加熱しても溶融しない材料の一つであるポリアミド繊維やアラミド繊維などは繊維径のばらつきが小さいため、他の繊維材料と比べて、噛み合い構造によるセパレータシート同士の固定力が小さい傾向がある。このような場合であっても、例えば、凹部および凸部の数を増やしたり、噛み合い高さを高くしたり、凹部および凸部の側壁の角度を小さくしたり、実
験例7のように噛み合い構造の平面形状を工夫したり、これら二つ以上組み合わせたりすることで、セパレータシート同士の固定力をより高くすることができる。