(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電力系統に接続される蓄電池システムであって、前記電力系統の電力需給を管理するエネルギマネジメントシステムからの充放電要求に基づいて動作する蓄電池システムにおいて、
並列に接続された複数の蓄電池モジュールと、
それぞれの前記蓄電池モジュールに設けられ、前記蓄電池モジュールの状態を監視する複数の蓄電池監視装置と、
前記電力系統の交流電力を直流電力に変換して前記複数の蓄電池モジュールに充電する機能と、前記複数の蓄電池モジュールの直流電力を交流電力に変換して前記電力系統に放電する機能とを有する交直変換装置と、
前記充放電要求と前記複数の蓄電池監視装置から供給される蓄電池情報とを受信し、前記充放電要求と前記蓄電池情報とに基づいて前記交直変換装置を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記蓄電池情報に基づいて充放電可能電力を計算し、前記充放電可能電力を制約条件として、前記充放電要求に基づき前記交直変換装置に対する充放電指令を決定する充放電指令部を備え、
1つの前記交直変換装置に1又は複数の前記蓄電池モジュール及び前記蓄電池監視装置が割り当てられることにより1つのPCSグループが構成され、
前記PCSグループは複数設けられ、その複数の前記PCSグループのそれぞれに前記制御装置が設けられ、
前記PCSグループごとに設けられた複数の前記制御装置は、そのうちの所定の1つは主制御装置として機能し、前記所定の1つ以外は従制御装置として機能するように構成され、
前記制御装置は、前記主制御装置として機能する場合、前記充放電指令部を作動させ、前記従制御装置として機能する場合、前記充放電指令部を作動させずに、担当する前記PCSグループ内の前記蓄電池監視装置から前記蓄電池情報を受信して前記主制御装置に供給するとともに、前記主制御装置から前記充放電指令を受信して担当する前記PCSグループ内の前記交直変換装置に供給するように構成され、
前記主制御装置の前記充放電指令部は、前記主制御装置が担当する前記PCSグループ内の前記蓄電池監視装置から供給される前記蓄電池情報と、前記従制御装置から受信した前記蓄電池情報とに基づいて前記PCSグループごとに前記充放電可能電力を計算し、前記PCSグループごとに計算される前記充放電可能電力に合わせて、前記充放電指令を前記PCSグループごとに決定するように構成され、
異常の発生により前記主制御装置の前記充放電指令部が機能しない場合、主と従の関係が入れ替わり、前記主制御装置に代わって前記従制御装置が前記充放電指令部を作動させる
ことを特徴とする蓄電池システム。
前記主制御装置の前記充放電指令部は、複数の前記PCSグループの全体の充放電電力が前記充放電要求に合致するように、前記充放電指令を前記PCSグループ間で調整するように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の蓄電池システム。
前記主制御装置の前記充放電指令部は、前記PCSグループごとにSOCを計算し、前記PCSグループ間でSOCが均一になるように、前記充放電指令を前記PCSグループごとに決定するように構成されている
ことを特徴とする請求項1又は6に記載の蓄電池システム。
前記過放電防止部は、前記蓄電池モジュールの電圧を所定の下限電圧と比較し、前記蓄電池モジュールの電圧が前記下限電圧以下になったことによって前記蓄電池モジュールが過放電状態に近づいたことを検知するように構成されている
ことを特徴とする請求項8に記載の蓄電池システム。
【背景技術】
【0002】
電力系統は、発電設備と負荷設備とを送配電設備によって接続することで構築されている。電力系統には、複数の大規模発電所と多数の工場や商業施設及び家庭とを接続する大規模なシステムから、特定の施設内で構築される小規模なシステムまで様々な規模のものが存在する。何れの規模の電力系統においても、電力系統全体の電力需給を管理するエネルギマネジメントシステム(EMS)が備えられ、EMSによって発電設備による電力の供給と負荷設備による電力の需要とをバランスさせることが行われている。
【0003】
蓄電池システムは、上記のような電力系統に接続されて、電力需給をバランスさせるための1つの手段として用いられる。かつては、大量の電力の貯蔵は困難であるとされていたが、リチウムイオン電池やナトリウム硫黄電池のような大容量の蓄電池が実用化されたことによって、大量の電力の貯蔵が可能になった。このような蓄電池を備えた蓄電池システムを電力系統に接続することにより、電力の需要に対して供給が過大なときには、過剰な電力を蓄電池に充電し、電力の需要に対して供給が不足するときには、蓄電池からの放電により電力の不足を補填するといった運用をとることができる。
【0004】
このような蓄電池システムの好適な用途の一例が、太陽光や風力等の自然エネルギを利用した発電設備との組み合わせである。自然エネルギを利用した発電設備は、昨今のエネルギ問題或いは環境問題に対する意識の高まりをうけて広く導入されつつある。しかし、自然エネルギを利用した発電設備には、季節や天候等の自然的要因によって発電電力が左右されやすいために安定した電力供給を行えないという短所がある。蓄電池システムは、この短所を補うことのできるシステムであり、自然エネルギを利用した発電設備に蓄電池システムを組み合わせることで安定した電力供給を行うことが可能になる。
【0005】
蓄電池システムを電力系統に接続する場合、蓄電池システムの動作は前述のEMSによって管理される。蓄電池システムは、蓄電池に接続された交直変換装置(PCS)を備える。PCSは、電力系統の交流電力を直流電力に変換して蓄電池に充電する機能と、蓄電池の直流電力を交流電力に変換して電力系統に放電する機能とを有している。EMSからPCSに対して充放電要求が供給され、PCSが充放電要求に従って動作することで、電力系統から蓄電池への充電、或いは、蓄電池から電力系統への放電が達成される。
【0006】
なお、出願人は、本発明に関連するものとして、以下に記載する文献を認識している。特許文献1の
図9には、電力系統に接続された蓄電池システムの一例が描かれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、EMSからPCSに供給される充放電要求は、電力系統全体において電力の需給をバランスさせるように決定されているが、蓄電池にとっては必ずしも適切ではない。EMSが実行している演算の量は膨大であるので、EMSが要求の受け手である蓄電池の状態を逐一把握し、それに応じたきめ細かな制御を行うことは難しい。特に、蓄電池システムが大容量である場合には、蓄電池は極めて多数のセル、具体例としては、数百個から数万個のセルから構成されるため、それらの全ての状態について逐一把握することは極めて困難である。このため、EMSが個々の蓄電池を管理するのであれば、常に変化している蓄電池の状態に対し、EMSによる蓄電池システムの制御の周期は長く取らざるを得なくなる。その結果、EMSから供給される充放電要求は蓄電池の状態に応じた適切なものとはならず、充放電要求と蓄電池の状態との関係次第では、蓄電池を十分に使いこなすことができない場合があるだけでなく、性能や寿命に影響する無理な運転を蓄電池に強いることになるおそれもある。
【0009】
本発明は、上述のような課題に鑑みなされたもので、蓄電池に対して無理な運転を強いることなく蓄電池の最大限の性能を引き出すことができる蓄電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的の達成のため、本発明に係る蓄電池システムは以下のように構成される。
【0011】
本発明に係る蓄電池システムは電力系統に接続され、電力系統の電力需給を管理するエネルギマネジメントシステムからの充放電要求に基づいて動作するように構成される。本発明に係る蓄電池システムが接続される電力系統の規模や構成には限定はない。
【0012】
本発明に係る蓄電池システムは、蓄電池
モジュール、蓄電池監視装置、交直変換装置、及び制御装置を備える。
蓄電池モジュールは、複数個、並列に接続されている。蓄電池
モジュールは単一の蓄電池セルで構成されていてもよいし、複数の蓄電池セルの集合体として構成されていてもよい。蓄電池
モジュールの種類としては、リチウムイオン電池やナトリウム硫黄電池やニッケル水素電池等の大容量の蓄電池が好ましい。
【0013】
蓄電池監視装置は、蓄電池
モジュールの状態を監視する装置である。
蓄電池監視装置は、複数ある蓄電池モジュールのそれぞれに設けられている。蓄電池監視装置による監視項目としては、例えば、電流、電圧、温度等の状態量を挙げることができる。電圧に関して言えば、蓄電池
モジュールが複数のセルで構成されている場合には、セルごとに電圧を監視することが好ましい。蓄電池監視装置は、監視項目である状態量をセンサによって常時或いは所定の周期で計測し、得られたデータの一部或いは全部を蓄電池情報として外部に出力する。
【0014】
交直変換装置は、電力系統に蓄電池
モジュールを接続する装置であり、電力系統の交流電力を直流電力に変換して蓄電池
モジュールに充電する機能と、蓄電池
モジュールの直流電力を交流電力に変換して電力系統に放電する機能とを有している。交直変換装置はパワーコンディショナーとも呼ばれ、蓄電池
モジュールへの充電電力量、及び蓄電池
モジュールからの放電電力量は、交直変換装置によって調整される。
【0015】
制御装置は、エネルギマネジメントシステムと交直変換装置との間に介在する装置である。エネルギマネジメントシステムから蓄電池システムに供給される充放電要求は、この制御装置が受信する。制御装置は、充放電要求とともに
複数の蓄電池監視装置から供給される蓄電池情報を受信し、充放電要求と蓄電池情報とに基づいて交直変換装置を制御するように構成される。制御装置は充放電指令部を備える。充放電指令部は、蓄電池情報に基づいて充放電可能電力を計算し、充放電可能電力を制約条件として、充放電要求に基づき交直変換装置に対する充放電指令を決定するように構成される。
【0016】
充放電可能電力は蓄電池
モジュールの電圧から算出することができる。蓄電池
モジュールの電圧は蓄電池監視装置から供給される蓄電池情報に含まれる。充放電可能電力の計算において電圧以外の情報を参照することはもちろん可能である。複数の蓄電池セルが直列に接続されてなる蓄電池モジュール
の場合には、蓄電池
モジュールの電圧と蓄電池モジュールの並列数とから充放電可能電力を計算することができる。充放電指令部は、蓄電池の充放電電力が最大になるように充放電指令を決定するように構成することができる。
【0017】
制御装置は複数のPCSグループを制御するように構成することができる。PCSグループとは、1つの交直変換装置に1又は複数の蓄電池モジュール及び蓄電池監視装置が割り当てられることにより構成されたグループである。PCSグループは複数設けられ、その複数のPCSグループのそれぞれに制御装置が設けられている。PCSグループごとに設けられた複数の制御装置は、そのうちの所定の1つは主制御装置として機能し、所定の1つ以外は従制御装置として機能する。制御装置は、主制御装置として機能する場合、充放電指令部を作動させるが、従制御装置として機能する場合、充放電指令部を作動させない。従制御装置として機能する場合、制御装置は、担当するPCSグループ内の蓄電池監視装置から蓄電池情報を受信して主制御装置に供給するとともに、主制御装置から充放電指令を受信して担当するPCSグループ内の交直変換装置に供給する。この場合、エネルギマネジメントシステムから供給される充放電要求は、複数のPCSグループの全体に対する要求となる。主制御装置は、エネルギマネジメントシステムからの充放電要求に基づいて複数のPCSグループの全体を制御する。このようなシステム構成では、主制御装置の充放電指令部は、主制御装置が担当するPCSグループ内の蓄電池監視装置から供給される蓄電池情報と、従制御装置から受信した蓄電池情報とに基づいてPCSグループごとに充放電可能電力を計算し、充放電可能電力に合わせてPCSグループごとに充放電指令を決定するように構成することができる。
なお、異常の発生により主制御装置の充放電指令部が機能しない場合、主と従の関係が入れ替わり、主制御装置に代わって従制御装置が充放電指令部を作動させる。また、充放電指令部は、複数のPCSグループの全体の充放電電力が充放電要求に合致するように、充放電指令を前記PCSグループ間で調整するように構成することができる。さらに、充放電指令部は、PCSグループごとにSOC(State of Charge)を計算し、PCSグループ間でSOCが均一になるように、充放電指令をPCSグループごとに決定するように構成することもできる。
【0018】
本発明に係る蓄電池システムの好ましい形態では、制御装置は過放電防止部をさらに備える。過放電防止部は、蓄電池
モジュールが過放電状態に近づいたときには、蓄電池
モジュールが過放電状態に至らないように、エネルギマネジメントシステムから供給される充放電要求とは無関係に交直変換装置に対して自動的に充電指令を出力するように構成される。蓄電池
モジュールが過放電状態に近づいたことは、例えば蓄電池
モジュールの電圧から判断することができる。蓄電池
モジュールの電圧を所定の下限電圧と比較し、蓄電池
モジュールの電圧が下限電圧以下になったことによって蓄電池
モジュールが過放電状態に近づいたことを検知するように過放電防止部を構成することができる。蓄電池
モジュールが複数の蓄電池セルから構成されている場合には、蓄電池セルのそれぞれの電圧を所定の下限セル電圧と比較し、蓄電池セルの何れか1つの電圧が下限セル電圧以下になったことによって蓄電池
モジュールが過放電状態に近づいたことを検知するように過放電防止部を構成することが好ましい。
【0019】
本発明に係る蓄電池システムの別の好ましい形態では、制御装置はインターロック処理部をさらに備える。インターロック処理部は、蓄電池システムの異常を検知した場合に、検知した異常の内容に応じたインターロック処理を施すように構成される。蓄電池システムの異常は、例えば、蓄電池監視装置から供給される蓄電池情報から検知することができる。蓄電池システムの異常の検知において、蓄電池情報以外の情報、例えば、交直変換装置からの情報を参照することはもちろん可能である。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る蓄電池システムによれば、エネルギマネジメントシステムが出す充放電要求に忠実に従って交直変換装置を動作させるのではなく、制御装置が決定した充放電指令に従って交直変換装置を動作させる。制御装置による充放電指令の決定では、エネルギマネジメントシステムが出す充放電要求だけでなく、蓄電池監視装置から供給される蓄電池情報が参照されるので、蓄電池の状態に応じた指示を交直変換装置に与えることができる。このため、本発明に係る蓄電池システムによれば、蓄電池に対して無理な運転を強いることなく蓄電池の最大限の性能を引き出すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、各図において共通する要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0023】
実施の形態1.
[実施の形態1の全体構成]
図1は、本発明の実施の形態1に係るシステム構成を説明するための概念構成図である。
図1に示す蓄電池システム10は、電力系統の送電設備20に接続される。電力系統には、送電設備20の他、送電設備20に接続された発電設備(図示省略)、送電設備20に接続された負荷設備(図示省略)が含まれる。蓄電池システム10は、コンピュータネットワーク40により遠方のエネルギマネジメントシステム(以下、EMS)30に接続される。EMS30は、発電設備の発電量、蓄電池システム10の充放電量、負荷設備の受電量など、電力系統の電力需給を管理する。
【0024】
蓄電池システム10は、交直変換装置(以下、PCS)100、フロントバッテリーコントロールステーション盤(以下、FBCS盤)120、及び蓄電池盤140を備える。蓄電池システム10では、1つのPCS100に対して1つのFBCS盤120が接続され、1つのFBCS盤120に対して複数の蓄電池盤140が並列に接続される。
図1では、蓄電池盤140は3列であるが、これは単なる一例である。蓄電池盤140の並列数はPCS100の仕様に基づいて定められる。よって、蓄電池盤140の並列数が1列となることもあり得る。
【0025】
(蓄電池盤)
蓄電池盤140は、ヒューズ141、コンタクタ142、蓄電池モジュール143、及び蓄電池監視装置(以下、BMU:Battery Management Unit)144を備える。蓄電池モジュール143は、複数のセルが直列に接続されたモジュールである。各セルは、リチウムイオン電池(LiB)である。蓄電池モジュール143は、コンタクタ142及びヒューズ141を介して送電線によりFBCS盤120に接続される。また、蓄電池モジュール143は、信号線によりBMU144に接続される。BMU144は、コンピュータネットワーク50によりFBCS盤120上の制御装置130に接続され、信号線によりコンタクタ142に接続される。
【0026】
BMU144は、蓄電池モジュール143の状態を監視する。具体的には、BMU144は、蓄電池モジュール143の状態量を計測する手段として電流センサ、電圧センサ、及び温度センサを備える。電流センサによって蓄電池モジュール143に流れる電流が計測される。電圧センサによって各セルの電圧が計測される。そして、温度センサによって蓄電池モジュール143の温度が計測される。BMU144による蓄電池モジュール143の監視は常時行われる。ただし、本実施の形態でいう常時監視とは、センサから絶え間のない連続した信号を取り込む動作だけでなく、所定の短い周期でセンサの信号を取り込む動作を含む概念である。BMU144は、各センサによる計測で得られた情報を含む蓄電池情報を制御装置130に送信する。
【0027】
コンタクタ142は、ヒューズ141と蓄電池モジュール143との間に配備されている。コンタクタ142が投入信号を受けると接点がONとなり投入される。また、コンタクタ142が開放信号を受けると接点がOFFとなり開放される。例えば、投入信号は所定値[A]以上の電流であり、開放信号は所定値[A]未満の電流である。コンタクタ142の投入によってPCS100と蓄電池モジュール143とは電気的に接続され、コンタクタ142の開放によってPCS100と蓄電池モジュール143との電気的接続は遮断される。
【0028】
(FBCS盤)
FBCS盤120は、蓄電池盤140とPCS100とに接続される。具体的には、各蓄電池盤140は、個別の送電線によりFBCS盤120に接続される。個別の送電線はFBCS盤の内部で合流し、より太い送電線に接続される。合流後の送電線はPCS100に接続される。また、FBCS盤120は制御装置130を備える。制御装置130は、例えばROM、RAM等を含むメモリ、各種情報を入出力する入出力インタフェース、各種情報に基づいて各種演算処理を実行可能なプロセッサを備える。制御装置130は、コンピュータネットワーク40によりEMS30に、コンピュータネットワーク50によりBMU144に、コンピュータネットワーク60によりPCS100に接続される。また、制御装置130は、信号線によりコンタクタ142に接続される。
【0029】
制御装置130は、PCS100に対して充放電指令を出す司令塔の役割を担う。一例として、制御装置130は、EMS30から送信された充放電要求と、BMU144から送信された蓄電池情報を受信する。充放電要求は、PCS100に充放電させる有効電力と無効電力に関する要求を含む。ただし、充放電要求には、具体的な電力量を数値で示す具体的要求と、充放電電力を最大にすることを要求する抽象的要求が含まれる。制御装置130は、充放電要求と蓄電池情報とに基づいてPCS100に対する充放電指令(充放電量[kW]に相当する)を決定し、PCS100に送信する。また、制御装置130は、蓄電池モジュール143の性能・寿命を安全且つ最大に制御する機能、PCS100に対してトリップ指令を出力する機能、コンタクタ142を投入・開放させる機能等を備える。
【0030】
(PCS)
PCS100は、変圧器を介して送電線により送電設備20に接続される。PCS100は、電力系統の交流電力を直流電力に変換して蓄電池モジュール143に充電する充電機能と、蓄電池モジュール143の直流電力を交流電力に変換して電力系統に放電する放電機能とを備える。蓄電池モジュール143への充電電力量、及び蓄電池モジュール143からの放電電力量は、PCS100によって調整される。PCS100による充放電電力量の調整は、制御装置130から供給される充放電指示に従って行われる。PCS100は電流センサと電圧センサとを備え、PCS100はこれらのセンサの出力値を参照して充放電電力量の調整を実施する。
【0031】
[実施の形態1の特徴的構成]
図2は、本発明の実施の形態1に係るシステムのブロック図である。
図2における制御装置130を示すブロック内には、制御装置130が備える種々の機能のうちの一部がブロックで表されている。これらブロックのそれぞれに演算資源が割り当てられている。制御装置130には各ブロックに対応するプログラムが用意され、それらがプロセッサによって実行されることで各ブロックの機能が制御装置130において実現される。
【0032】
(充放電指令機能)
制御装置130は充放電指令機能を有し、その機能は充放電指令部131が受け持つ。制御装置130は、EMS30から充放電要求を受信し、BMU144から蓄電池情報を受信する。充放電指令部131は、充放電要求と蓄電池情報とに基づいて充放電指令を決定し、充放電指令をPCS100に送信する。
【0033】
具体的には、充放電指令部131は、蓄電池情報に含まれる蓄電池モジュール143の電圧から充放電可能電力を計算する。本実施の形態でいう電圧とは、蓄電池モジュール143の両端にかかる電圧を意味する。
図3はリチウムイオン電池のOCV(閉回路電圧)とSOCとの関係を表したグラフである。本実施の形態ではSOCは満充電に対する充電率を意味するものとする。このグラフから分かるように、リチウムイオン電池は、満タンに充電されているほど電圧が高く、空に近いほど電圧が低くなるという特性を有している。この電圧−SOC特性を利用することにより、電圧の計測値からSOCを計算し、SOCから充放電可能電力を計算することができる。なお、充放電指令部131が計算する充放電可能電力は、PCS100に接続された全ての蓄電池モジュール143の放電可能電力の和を意味する。これは、蓄電池モジュール143の電圧と並列数とから計算することができる。
【0034】
充放電指令部131は、充放電可能電力を制約条件として、EMS30からの充放電要求に基づきPCS100に対する充放電指令を決定する。具体的には、充放電要求が充電電力量を具体的に指定する具体的要求の場合には、充電電力量の要求値が充電可能電力以下であれば、その要求値を充放電指令(充電指令)として決定し、充電電力量の要求値が充電可能電力よりも大きければ、充電可能電力を充放電指令(充電指令)として決定する。充放電要求が放電電力量を具体的に指定する具体的要求の場合には、放電電力量の要求値が放電可能電力以下であれば、その要求値を充放電指令(放電指令)として決定し、放電電力量の要求値が放電可能電力よりも大きければ、放電可能電力を充放電指令(放電指令)として決定する。一方、充放電要求が抽象的要求であり最大充電が要求されている場合には、充電可能電力を充放電指令(充電指令)として決定し、最大放電が要求されている場合には、放電可能電力を充放電指令(放電指令)として決定する。ただし、制約条件としての充放電可能電力は、充放電指令の決定において満たすのが望ましい条件ではあるが、絶対に外してはならない条件ではない。よって、一時的であればPCS100に対する充放電指令が充放電可能電力を超えることもできる。
【0035】
(過放電防止機能)
制御装置130は過放電防止機能を有し、その機能は過放電防止部132が受け持つ。過放電防止部132は、蓄電池が過放電状態に近づいたときには、蓄電池が過放電状態に至らないように、EMS30からの充放電要求とは無関係にPCS100に対して自動的に充電指令を出力する。本実施の形態でいう蓄電池とは、並列接続された蓄電池モジュール143の全体を意味し、蓄電池が過放電状態に近づくとは、蓄電池モジュール143を構成するセルの少なくとも1つが過放電状態に近づくことを意味する。BMU144から供給される蓄電池情報にはセルごとの電圧が含まれている。過放電防止部132は、各セルの電圧を所定の下限セル電圧と比較し、電圧が下限セル電圧以下になっている過放電セルの存在を検知することによって蓄電池が過放電状態に近づいたことを検知する。過放電防止部132は、過放電セルの電圧が回復して下限セル電圧よりも高くなるまで、PCS100に対して充電指令を出力する。このとき過放電防止部132が出力する充電指令は、充放電指令部131においてEMS30からの充放電要求に基づき決定される充放電指令に優先する。
【0036】
(インターロック機能)
また、制御装置130はインターロック機能を有し、その機能はインターロック処理部133が受け持つ。蓄電池モジュール143のインターロックは、BMU144が過放電、過充電、温度異常等を検出した場合に、BMU144によっても行われる。しかし、これらの異常が発生したときには、蓄電池は既にかなりの過負荷状態になっている。そこで、本実施の形態のシステムでは、BMU144によるインターロックが実行される前に、ソフトウェアインターロックによりPCS100、コンタクタ142を制御する。インターロック処理部133は、蓄電池システム10の異常を検知した場合に、検知した異常の内容に応じたインターロック処理を施す。具体的には、インターロック処理は、PCS100へトリップ指令を出力する処理や、コンタクタ142を開放させる処理である。なお、BMU144に先駆けてインターロック処理を実行するために、電流、電圧、温度等のインターロック閾値は、BMU144に設定された閾値よりも低く設定されている。
【0037】
(フローチャート)
図4は、EMS30からの充放電要求に基づく充放電制御を実現するために、蓄電池システム10が実行する制御ルーチンのフローチャートである。このフローチャートに示す制御装置130の処理は、充放電指令部131の機能によって実現される処理である。制御装置130のメモリには、
図4に示すフローチャートの処理を実行するプログラムが記憶されており、制御装置130のプロセッサがプログラムを読み出して、実行することにより
図4示す処理が実現される。
【0038】
図4に示すルーチンでは、まず、EMS30は、電力系統における電力の需要と供給とをバランスさせるように蓄電池システム10に対する充放電要求を決定する(ステップS101)。このとき、EMS30は、蓄電池システム10の状態は顧みずに充放電要求を決定することもできるし、蓄電池システム10の状態を参酌して充放電要求を決定することができる。ただし、後者の場合、EMS10が負担する演算量との関係により、EMS10が蓄電池システム10の状態を把握する周期は長く取らざるを得ない。このため、EMS10で決定される充放電要求は、必ずしも蓄電池システム10が備える蓄電池の状態に応じた適切なものとはなっていない。EMS30は、決定した充放電要求を制御装置130に送信する(ステップS102)。
【0039】
一方、BMU144は、上述した各種センサを用いて蓄電池情報を常時取得する(ステップS401)。蓄電池情報には蓄電池モジュール143に流れる電流、各セルの電圧、蓄電池モジュール143の温度が含まれる。その後、BMU144は、取得した蓄電池情報を制御装置130に送信する(ステップS402)。
【0040】
制御装置130は、EMS30から送信された充放電要求を受信する(ステップS201)。また、制御装置130は、BMU144から送信された蓄電池情報を受信する(ステップS202)。制御装置130は、ステップS202において受信した蓄電池情報に基づいて充放電可能電力を計算する(ステップS203)。充放電可能電力は、ステップS401において蓄電池情報が取得され、BMU144から制御装置130に送信される度に制御装置130で再計算される。
【0041】
制御装置130は、ステップS203において算出した充放電可能電力を制約条件として、ステップS201において受信した現場充放電要求に基づきPCS100に対する充放電指令を決定する(ステップS204)。ステップS204で実行される充放電指令の決定の方法は、充放電指令機能の説明において述べたとおりである。その後、制御装置130は、充放電指令をPCS100に送信する(ステップS205)。
【0042】
PCS100は、制御装置130から送信された充放電指令を受信する(ステップS301)。PCS100は、充放電指令に従って充放電操作を実行する(ステップS302)。
【0043】
以上説明したように、本実施の形態の蓄電池システム10は、EMS30で決定された充放電要求にそのまま従ってPCS100を動作させることは行わない。本実施の形態の蓄電池システム10は、制御装置130が決定した充放電指令に従ってPCS100を動作させる。制御装置130による充放電指令の決定では、EMS30から供給される充放電要求だけでなく、BMU144から供給される蓄電池情報が参照され、蓄電池情報に基づき計算された充放電可能電力が制約条件として用いられる。充放電可能電力は蓄電池情報が取得される度に再計算されるので、常に最新の充放電可能電力に基づいた充放電指令をPCS100に対して与えることができる。このため、本実施の形態の蓄電池システム10によれば、蓄電池に対して無理な運転を強いることなく蓄電池の最大限の性能を引き出すことができる。
【0044】
実施の形態2.
[実施の形態2の全体構成]
図5は、本発明の実施の形態2に係るシステム構成を説明するための概念構成図である。本実施の形態と実施の形態1との相違点は、蓄電池システムに含まれるPCSグループの数にある。1つのPCSグループは、1つのPCSと、そのPCSに接続される1つのFBCS盤と1又は複数の蓄電池盤とから構成される。ただし、FBCS盤に配置される制御装置は、概念としてのPCSグループを構成する要素ではない。PCSグループにおけるFBCS盤は、PCSを経由して電力系統につながる容量の大きい送電線と、それぞれの蓄電池盤から延びる送電線とを接続するための盤としての意味を持つ。蓄電池システムに含まれるPCSグループの数が多いほど、蓄電池モジュールの数も多くなることから、その蓄電池システムは大容量であると言える。
【0045】
本実施の形態の蓄電池システム12は、2つのPCSグループ15A,15Bを備えている。第1のPCSグループ15Aは、PCS100A、FBCS盤120A、及び複数の蓄電池盤140Aによって構成されている。第2のPCSグループ15Bは、PCS100B、FBCS盤120B、及び複数の蓄電池盤140Bによって構成されている。PCS100A,100Bと蓄電池盤140A,140Bのそれぞれの構成は、実施の形態1におけるPCS100と蓄電池盤140の構成と同一である。蓄電池盤140A,140Bは、実施の形態1における蓄電池盤140と同じく、ヒューズ141A,141B、コンタクタ142A,142B、蓄電池モジュール143A,143B、及びBMU144A,144Bを備えている。
【0046】
本実施の形態の蓄電池システム12は、主制御装置130Aと従制御装置130Bとを備える。主制御装置130AはFBCS盤120Aに配置され、従制御装置130BはFBCS盤120Bに配置される。本実施の形態では、実施の形態1における制御装置130の機能が主制御装置130Aと従制御装置130Bとに分散されている。ただし、各PCS100A,100Bに対して充放電指令を出す司令塔の役割は主制御装置130Aが担い、従制御装置130Bは主制御装置130Aからの指示に従って動作する。
【0047】
主制御装置130Aと従制御装置130Bは、例えばROM、RAM等を含むメモリ、各種情報を入出力する入出力インタフェース、各種情報に基づいて各種演算処理を実行可能なプロセッサを備える。主制御装置130Aと従制御装置130Bは、コンピュータネットワーク40によりEMS30に接続されるとともに、コンピュータネットワーク40により互いに接続されている。主制御装置130Aは、コンピュータネットワーク50AによりBMU144Aに、コンピュータネットワーク60AによりPCS100Aに接続される。また、主制御装置130Aは、信号線によりコンタクタ142Aに接続される。一方、従制御装置130Bは、コンピュータネットワーク50BによりBMU144Bに、コンピュータネットワーク60BによりPCS100Bに接続される。また、従制御装置130Bは、信号線によりコンタクタ142Bに接続される。
【0048】
[実施の形態2の特徴的構成]
図6は、本発明の実施の形態2に係るシステムのブロック図である。
図6における主制御装置130Aを示すブロック内には、主制御装置130Aが備える種々の機能のうちの一部がブロックで表されている。また、従制御装置130Bを示すブロック内には、従制御装置130Bが備える種々の機能のうちの一部がブロックで表されている。主制御装置130Aと従制御装置130Bのそれぞれには各ブロックに対応するプログラムが用意され、それらがプロセッサによって実行されることで各ブロックの機能が実現される。
【0049】
(充放電指令機能)
主制御装置130Aは充放電指令機能を有し、その機能は充放電指令部131Aが受け持つ。主制御装置130Aは、EMS30から充放電要求を受信し、BMU144Aから蓄電池モジュール143Aに関する蓄電池情報を受信する。さらに、主制御装置130Aは、従制御装置130BがBMU144Bから受信した蓄電池モジュール143Bに関する蓄電池情報を従制御装置130Bから受信する。充放電指令部131Aは、充放電要求と蓄電池情報とに基づいて各PCS100A,100Bに対する充放電指令を決定する。そして、充放電指令部131Aは、PCS100Aに対して充放電指令を送信するとともに、PCS100Bに対する充放電指令を従制御装置130Bに送信する。
【0050】
充放電指令部131Aは、BMU144Aから受信した蓄電池情報に含まれる電圧から第1のPCSグループ15Aにおける充放電可能電力を計算し、従制御装置130Bから受信した蓄電池情報に含まれる電圧から第2のPCSグループ15Bにおける充放電可能電力を計算する。そして、充放電指令部131Aは、PCSグループ15A,15Bごとに計算された充放電可能電力を制約条件として、PCSグループ15A,15Bの全体の充放電電力をEMS30からの充放電要求にできるだけ合致させるように、各PCS100A,100Bに対する充放電指令を決定する。例えば、第1のPCSグループ15Aにおける充電可能電力が40kWであり、第2のPCSグループ15Bにおける充電可能電力が60kWである場合において、EMS30から100KWの電力の充電が要求されたならば、PCS100Aに対する充放電指令(充電指令)は40kWとされ、PCS100Bに対する充放電指令(充電指令)は60kWとされる。
【0051】
また、充放電指令部131Aは、各PCSグループ15A,15Bの電圧に基づき、PCSグループ15A,15BごとにSOCを計算する。そして、充放電指令部131Aは、PCSグループ15A,15B間でSOCが均一になるように、各PCS100A,100Bに対する充放電指令を調整することも行う。例えば、第1のPCSグループ15Aにおける充電可能電力が40kWであり、第2のPCSグループ15Bにおける充電可能電力が60kWである場合において、EMS30から80KWの電力の充電が要求されたとする。この場合、充放電指令部131Aは、各PCS100A,100Bに対する充電指令をともに40kWとするのではなく、例えば、PCS100Aに対する充放電指令(充電指令)は30kWとし、PCS100B対する充放電指令(充電指令)は50kWとする。これにより、2つのPCSグループ15A,15BのSOCを同じレベルに近づけることができる。このようにPCSグループ15A,15BごとのSOCに応じてPCS100A,100Bごとに充放電指令を決定することにより、蓄電池の寿命の低下を抑えつつ蓄電池の最大限の性能を引き出すことができる。
【0052】
以上のように、各PCS100A,100Bに対する充放電指令の決定は主制御装置130Aにて行われ、従制御装置130Bでは行われない。従制御装置130Bは主制御装置130Aから送信される充放電指令を受信し、それをPCS100Bに対して送信するのみである。また、充放電可能電力の計算は主制御装置130Aにて行われ、従制御装置130Bでは行われない。従制御装置130Bは充放電可能電力の計算に必要な蓄電池情報をBMU144Bから受信し、それを主制御装置130Aに対して送信するのみである。ただし、充放電指令部131Aに相当する機能は、従制御装置130Bにも備えられている。異常が発生し主制御装置130Aの充放電指令機能が働かない場合には、主と従の関係が入れ替わり、従制御装置130Bが充放電指令部131Aに代わって充放電指令機能を働かせるようにプログラムされている。
【0053】
(過放電防止機能)
主制御装置130Aは過放電防止機能を有し、その機能は過放電防止部132Aが受け持つ。過放電防止部132Aは、BMU144から送信される蓄電池情報に基づいて第1のPCSグループ15Aの蓄電池が過放電状態に近づいたことを検知し、従制御装置130Bから送信される蓄電池情報に基づいて第2のPCSグループ15Bの蓄電池が過放電状態に近づいたことを検知する。そして、過放電防止部132Aは、第1のPCSグループ15Aにおいて蓄電池が過放電状態に近づいたことを検知したときには、PCS100Aに対して自動的に充電指令を出力する。また、第2のPCSグループ15Bにおいて蓄電池が過放電状態に近づいたことを検知したときには、従制御装置130Bに対して自動的に充電指令を出力する。過放電防止機能の詳細は実施の形態1と共通する内容になっている。
【0054】
従制御装置130Bは主制御装置130Aから送信される充電指令を受信し、それをPCS100Bに対して送信する。ただし、過放電防止部132Aに相当する機能は、従制御装置130Bにも備えられている。異常が発生し主制御装置130Aの過放電防止機能が働かない場合には、主と従の関係が入れ替わり、従制御装置130Bが過放電防止部132Aに代わって過放電防止機能を働かせるようにプログラムされている。
【0055】
(インターロック機能)
主制御装置130Aはインターロック機能を有し、その機能はインターロック処理部133Aが受け持つ。また、従制御装置130Bもインターロック機能を有し、その機能はインターロック処理部133Bが受け持つ。インターロック処理部133Aは、第1のPCSグループ15Aの異常を検知した場合に、検知した異常の内容に応じてPCS100Aへトリップ指令を出力したり、コンタクタ142Aを開放させたりする。インターロック処理部133Bは、第2のPCSグループ15Bの異常を検知した場合に、検知した異常の内容に応じてPCS100Bへトリップ指令を出力したり、コンタクタ142Bを開放させたりする。各インターロック処理部133A,133Bによるソフトウェアインターロックの詳細は実施の形態1と共通する内容になっている。
【0056】
(フローチャート)
図7は、EMS30からの充放電要求に基づく充放電制御を実現するために、蓄電池システム12が実行する制御ルーチンのフローチャートである。このフローチャートに示す主制御装置130Aの処理は、充放電指令部131Aの機能によって実現される処理である。主制御装置130Aのメモリには、
図7に示すフローチャートの処理を実行するプログラムが記憶されており、主制御装置130Aのプロセッサがプログラムを読み出して、実行することにより
図7示す処理が実現される。
【0057】
図7に示すルーチンでは、まず、EMS30は、電力系統における電力の需要と供給とをバランスさせるように蓄電池システム12に対する充放電要求を決定する(ステップS111)。EMS30は、決定した充放電要求を主制御装置130Aに送信する(ステップS112)。
【0058】
第1のPCSグループ15Aでは、BMU144Aが各種センサを用いて蓄電池情報を常時取得する(ステップS411)。蓄電池情報には蓄電池モジュール143Aに流れる電流、各セルの電圧、蓄電池モジュール143Aの温度が含まれる。その後、BMU144Aは、取得した蓄電池情報を主制御装置130Aに送信する(ステップS412)。
【0059】
第2のPCSグループ15Bでは、BMU144Bが各種センサを用いて蓄電池情報を常時取得する(ステップS711)。蓄電池情報には蓄電池モジュール143Bに流れる電流、各セルの電圧、蓄電池モジュール143Bの温度が含まれる。その後、BMU144Bは、取得した蓄電池情報を従制御装置130Bに送信する(ステップS712)。
【0060】
従制御装置130Bは、BMU144Bから送信された蓄電池情報を受信する(ステップS511)。そして、従制御装置130Bは、受信した蓄電池情報を主制御装置130Aに送信する(ステップS512)。
【0061】
主制御装置130Aは、EMS30から送信された充放電要求を受信する(ステップS211)。また、主制御装置130Aは、第1のPCSグループ15AのBMU144Aから送信された蓄電池情報を受信する(ステップS212)。主制御装置130Aは、ステップS212において受信した蓄電池情報に基づいて第1のPCSグループ15Aの充放電可能電力を計算する(ステップS213)。この充放電可能電力は、ステップS411において蓄電池情報が取得され、BMU144Aから主制御装置130Aに送信される度に主制御装置130Aで再計算される。さらに、主制御装置130Aは、従制御装置130Bから送信された蓄電池情報を受信する(ステップS214)。主制御装置130Aは、ステップS214において受信した蓄電池情報に基づいて第2のPCSグループ15Bの充放電可能電力を計算する(ステップS215)。この充放電可能電力は、ステップS711において蓄電池情報が取得され、従制御装置130Bから主制御装置130Aに送信される度に主制御装置130Aで再計算される。
【0062】
主制御装置130Aは、ステップS213において算出した充放電可能電力と、ステップS215において算出した充放電可能電力とをそれぞれ制約条件として、ステップS211において受信した現場充放電要求に基づきPCS100A,100Bに対する充放電指令を決定する(ステップS216)。ステップS216で実行される充放電指令の決定の方法は、充放電指令機能の説明において述べたとおりである。その後、主制御装置130Aは、PCS100Aに対する充放電指令をPCS100Aに送信する(ステップS217)。また、主制御装置130Aは、PCS100Bに対する充放電指令を従制御装置130Bに送信する(ステップS218)。
【0063】
従制御装置130Bは、主制御装置130Aから送信された充放電指令を受信する(ステップS513)。そして、従制御装置130Bは、受信した充放電指令をPCS100Bに送信する(ステップS514)。
【0064】
第1のPCSグループ15Aでは、PCS100Aが主制御装置130Aから送信された充放電指令を受信する(ステップS311)。PCS100Aは、充放電指令に従って充放電操作を実行する(ステップS312)。
【0065】
第2のPCSグループ15Bでは、PCS100Bが従制御装置130Bから送信された充放電指令を受信する(ステップS611)。PCS100Bは、充放電指令に従って充放電操作を実行する(ステップS612)。
【0066】
以上説明したように、本実施の形態の蓄電池システム12は、EMS30で決定された充放電要求にそのまま従って各PCS100A,100Bを動作させるのではなく、主制御装置130Aが決定した充放電指令に従って各PCS100A,100Bを動作させる。主制御装置130Aによる充放電指令の決定では、PCSグループ15A,15Bの全体の充放電電力が充放電要求に合致するように、また、PCSグループ15A,15B間でSOCが均一になるように、PCSグループ15A,15BごとにPCS100A,100Bに対する充放電指令が決定される。このため、本実施の形態の蓄電池システム12によれば、各PCSグループ15A,15Bを構成する蓄電池に対して無理な運転を強いることなく蓄電池の最大限の性能を引き出すことができる。
【0067】
その他.
本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、実施の形態2においてPCSグループの数を増やすこともできる。増設したPCSグループには、従制御装置130Bと同機能の従制御装置を備えればよい。
【0068】
ところで、上述した実施の形態のシステムにおいては、制御装置130,130A,130BをFBCS盤120,120A,120Bに配置することとしているが、制御装置130,130A,130Bの配置位置はこれに限定されるものではない。例えば、PCS100,100A,100B、蓄電池盤140,140A,140B、または、いずれかのBMU144,144A,144Bに配置することとしてもよい。また、制御装置130,130A,130Bに実装される各種機能をPCS100,100A,100Bに実装して、PCS100,100A,100Bが各種機能を搭載することとしてもよい。蓄電池盤140,140A,140B、BMU144,144A,144Bについても同様である。