特許第6384490号(P6384490)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱瓦斯化学株式会社の特許一覧

特許6384490亜鉛とスズを含む酸化物のエッチング液およびエッチング方法
<>
  • 特許6384490-亜鉛とスズを含む酸化物のエッチング液およびエッチング方法 図000004
  • 特許6384490-亜鉛とスズを含む酸化物のエッチング液およびエッチング方法 図000005
  • 特許6384490-亜鉛とスズを含む酸化物のエッチング液およびエッチング方法 図000006
  • 特許6384490-亜鉛とスズを含む酸化物のエッチング液およびエッチング方法 図000007
  • 特許6384490-亜鉛とスズを含む酸化物のエッチング液およびエッチング方法 図000008
  • 特許6384490-亜鉛とスズを含む酸化物のエッチング液およびエッチング方法 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6384490
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】亜鉛とスズを含む酸化物のエッチング液およびエッチング方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/308 20060101AFI20180827BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20180827BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   H01L21/308 C
   H01L29/78 618B
   H01L29/78 627C
【請求項の数】12
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-556752(P2015-556752)
(86)(22)【出願日】2014年12月16日
(86)【国際出願番号】JP2014083273
(87)【国際公開番号】WO2015104962
(87)【国際公開日】20150716
【審査請求日】2017年9月14日
(31)【優先権主張番号】特願2014-847(P2014-847)
(32)【優先日】2014年1月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 共永
(74)【代理人】
【識別番号】100128761
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】茂田 麻里
(72)【発明者】
【氏名】夕部 邦夫
【審査官】 杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−103214(JP,A)
【文献】 特開2010−248547(JP,A)
【文献】 特開平08−217578(JP,A)
【文献】 特開2009−235438(JP,A)
【文献】 特開2013−084680(JP,A)
【文献】 特開2002−367974(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0164498(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/308
H01L 21/336
H01L 29/786
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも亜鉛とスズを含む酸化物をエッチングするためのエッチング液であって、
(A)硫酸、硝酸、メタンスルホン酸、塩酸、過塩素酸、またはこれらの塩からなる群より選ばれる1種以上、および
(B)シュウ酸またはその塩と水を含み、pH値が−1〜1であるエッチング液。
【請求項2】
さらに(C)カルボン酸(シュウ酸を除く)を含む、請求項1に記載のエッチング液。
【請求項3】
(C)カルボン酸が、酢酸、グリコール酸、マロン酸、マレイン酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、グリシンおよびクエン酸からなる群より選ばれる1種以上である、請求項2に記載のエッチング液。
【請求項4】
さらに(D)ポリスルホン酸化合物を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のエッチング液。
【請求項5】
(D)ポリスルホン酸化合物がナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物およびその塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、およびポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩からなる群より選ばれる1種以上である、請求項4に記載のエッチング液。
【請求項6】
エッチング液がさらに(E)亜鉛を濃度10〜5000質量ppmの範囲で含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のエッチング液。
【請求項7】
エッチング後のパターンにおけるテーパー角が10°〜80°である、請求項1から6のいずれか一項に記載のエッチング液。
【請求項8】
(A)硫酸、硝酸、メタンスルホン酸、塩酸、過塩素酸、またはこれらの塩からなる群より選ばれる1種以上を0.5〜30質量%、および(B)シュウ酸またはその塩0.1〜10質量%と水(残部)を含み、pH値が−1〜1であるエッチング液と、少なくとも亜鉛とスズを含む酸化物を含む基板とを接触させて、少なくとも亜鉛とスズを含む酸化物をエッチングする方法。
【請求項9】
エッチング液がさらに(C)カルボン酸(シュウ酸を除く)0.1〜15質量%を含む、請求項8に記載のエッチングする方法。
【請求項10】
エッチング液がさらに(D)ポリスルホン酸化合物0.0001〜10質量%を含む、請求項8または9に記載のエッチングする方法。
【請求項11】
エッチング液がさらに(E)亜鉛を濃度10〜5000質量ppmの範囲で含む、請求項8から10のいずれか一項に記載のエッチングする方法。
【請求項12】
エッチング後のパターンにおけるテーパー角が10°〜80°である、請求項8から11のいずれか一項に記載のエッチングする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイ(LCD)やエレクトロルミネッセンスディスプレイ(LED)等の表示デバイスに使用される少なくとも亜鉛とスズを含む酸化物のエッチング液およびそれを用いたエッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイやエレクトロルミネッセンスディスプレイ等の表示デバイスの半導体層としてアモルファスシリコンや低温ポリシリコンが広く用いられるが、ディスプレイの大画面化、高精細化、低消費電力化等を背景に各種の酸化物半導体材料の開発がなされている。
【0003】
酸化物半導体材料は、例えばインジウム・ガリウム・亜鉛酸化物(IGZO)などが挙げられ、電子移動度が高い、リーク電流が小さいなどの特長を有する。IGZO以外にも、より特性の優れた酸化物半導体材料として、インジウム・ガリウム酸化物(IGO)、ガリウム・亜鉛酸化物(GZO)、亜鉛・スズ酸化物(ZTO)、インジウム・亜鉛・スズ酸化物(IZTO)、インジウム・ガリウム・亜鉛・スズ酸化物(IGZTO)等、種々の組成の酸化物半導体材料が検討されている。
【0004】
一般に酸化物半導体材料は、スパッタ法などの成膜プロセスを用いてガラス等の基板上に薄膜として形成される。次いでレジスト等をマスクにしてエッチングすることで電極パタ−ンが形成される。このエッチング工程には湿式(ウェット法)と乾式(ドライ法)があるが、ウェット法ではエッチング液が使用される。
酸化物半導体材料の中でも、少なくとも亜鉛とスズを含む酸化物は耐薬品性に優れるため、他の周辺材料の成膜工程やエッチング工程において各種薬品やガスに晒されても安定であるという特徴を有する。しかしながら一方で、少なくとも亜鉛とスズを含む酸化物はウェットエッチング等による加工が困難であるという課題がある。
ウェットエッチングによって酸化物半導体材料のパターン形成をする際には、以下(1)〜(5)に示す性能がエッチング液に求められる。
(1)好適なエッチングレート(E.R.)を有すること。
(2)酸化物がエッチング液に溶解した際、エッチングレートの変動が小さいこと。すなわち、安定的に長期間の使用に耐え、薬液寿命が長いこと。
(3)酸化物の溶解時に析出物が発生しないこと。
(4)配線等の周辺材料を腐食しないこと。
(5)エッチング後の酸化物半導体のパターン形状(テーパー角、直線性、残渣除去性)が良好であること。
【0005】
酸化物半導体材料のエッチングレートは、10nm/min以上が好ましく、より好ましくは20nm/min以上、さらに好ましくは30nm/min以上である。また、10000nm/min以下が好ましく、より好ましくは5000nm/min以下、さらに好ましくは2000nm/min以下である。中でも、10〜10000nm/minが好ましく、より好ましくは20〜5000nm/min、さらに好ましくは30〜2000nm/minである。エッチングレートが10〜10000nm/minであるとき、高い生産効率を維持し、かつ安定的にエッチング操作を行うことができる。
【0006】
また、エッチングにともなってエッチング液中の酸化物濃度は増加する。そのことによるエッチングレートの低下もしくは変化が小さいことが望まれる。エッチング液を用いて酸化物半導体層のエッチングを行う上で、このことは工業生産を効率よく行うことにおいて極めて重要である。
また、酸化物半導体材料が溶解したエッチング液中に析出物が発生すると、エッチング処理後の基板上に残渣として残存する可能性がある。この残渣は、その後の各種成膜工程においてボイドの発生、密着性不良、漏電や断線を誘引する原因にもなり得る。これらの結果、表示デバイスとしての特性が不良となる恐れがある。
また、酸化物半導体材料が溶解したエッチング液中に析出物が発生すると、この析出物がエッチング液の循環用に設けられたフィルターに詰まり、その交換が煩雑であり、コスト高につながる恐れもある。
そのため、たとえエッチング液としての性能がまだ残っていても、この析出物が発生する前にエッチング液を廃棄せねばならず、結果的にエッチング液の使用期間が短くなり、エッチング液の費用が増大することにもなる。加えて、廃液処理費用も増大する。
例えばシュウ酸を含むエッチング液を用いて酸化亜鉛をエッチングすると、シュウ酸亜鉛が固形物として析出するという大きな課題がある。一般的なシュウ酸を含むエッチング液では、溶解した亜鉛の濃度が10質量ppm程度で析出物が発生する(比較例1、2)。
【0007】
したがって、エッチング液中に亜鉛が溶解した際にも析出物が発生しないことが求められる。具体的な亜鉛の溶解量としては、10質量ppm以上であることが望ましい。より好ましくは100質量ppm以上、特に1000質量ppm以上がより好ましい。
また、上限は限定されないが、安全かつ安定的なエッチング操作を行うために5000質量ppm以下が好ましく、より好ましくは4000質量ppm以下、さらには3000質量ppm以下が特に好ましい。
【0008】
一般に液晶ディスプレイ等の表示デバイスに用いられる配線材料としては、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)およびチタン(Ti)等が挙げられる。酸化物半導体材料のエッチング時にエッチング液がこれらの配線材料に接触する可能性があるため、配線材料に対する腐食が無視できるもの、もしくは低いことが望ましい。配線材料へのエッチングレートは具体的には3nm/min以下が望ましい。より好ましくは2nm/min以下、さらに1nm/min以下が特に好ましい。
【0009】
エッチング後の酸化物半導体のパターン形状として、具体的には、テーパー角(半導体層端部のエッチング面と下地層面との角度)が10°〜80°であることが望ましい。図5は、エッチング処理後の半導体層を断面から観察したときの模式図である。下地層3の上に半導体層2及びレジスト1が積層しており、レジスト1により半導体層2がパターニングされている。ここで、半導体層端部のエッチング面と下地層面との角度をテーパー角4という。テーパー角は、より好ましくは15°〜75°、特に20°〜70°が好ましい。テーパー角がこの範囲よりも大きい場合には、その上に積層した際のカバレッジが悪くなるという問題が生じる。テーパー角がこの範囲よりも小さい場合には(図3参照)、直線性(半導体層端部を鉛直上方から見た際の直線形状)が悪化する傾向にある(図4参照)。
また、エッチング後の酸化物半導体のパターン形状は、直線性の最大誤差が0.2μm以下であることが望ましい。より好ましくは0.15μm以下、さらに0.1μm以下が好ましい。直線性が悪い場合には、半導体層の幅に誤差が生じるため好ましくない。図6は、エッチング処理し、レジストを剥離した後の半導体層を鉛直上方の表面から観察したときの模式図である。図中、左から順に、下地層5、エッチング処理により形成された半導体層のテーパー部6、半導体層7である。エッチング処理によりパターニングされた半導体層端部の境界線8の直線性(図中、点線で表示)からの誤差9の最大値が「直線性の最大誤差」である。
またエッチング後の酸化物半導体層が除去された下地層の上に、残渣(酸化物の取れ残りや析出物など)が生じないことが望ましい(図2参照)。
【0010】
ZTOのエッチング液として特許文献1には、塩酸と硝酸を主成分としたエッチング液が知られている。
また、特許文献2では、ZTOをシュウ酸などの有機酸の水溶液またはハロゲン系や硝酸系などの無機酸の水溶液でエッチングすることが可能であるとされている。
【0011】
また、特許文献3では、インジウム酸化物を含む膜を、(a)シュウ酸、(b)ナフタレンスルホン酸縮合物又はその塩、(c)塩酸、硫酸、水溶性アミンおよびこれらの塩のうち少なくとも1種、並びに、(d)水を含有する組成を特徴としたエッチング液を開示している。
【0012】
また、特許文献4には、インジウム・スズ酸化物(ITO)およびインジウム・亜鉛酸化物(IZO)を主成分とした透明導電膜のエッチング液として、(a)シュウ酸、(b)塩酸、および(c)界面活性剤を含有する組成を特徴としたエッチング液を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許出願第2009/75421号明細書
【特許文献2】特開2010−248547号公報
【特許文献3】国際公開第2008/32728号
【特許文献4】特開2010−103214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、特許文献1のエッチング液では配線材料への腐食が懸念される(比較例3および4参照)。
特許文献2のシュウ酸を含むエッチング液では、シュウ酸塩が析出する(比較例1および2参照)。また、無機酸を含むエッチング液では、配線材料への腐食が懸念される(比較例3および4参照)。
特許文献3および4には、ZTOのエッチング特性についての記載はない。
このような状況下、亜鉛およびスズを含む酸化物のエッチングにおいて好適なエッチングレートを有し、該酸化物が溶解してもエッチングレートの低下および変化が小さく、かつ酸化物の溶解時に析出物の発生がなく、さらにはアルミニウム、銅、チタンなどの配線材料への腐食性が小さく、パターン形状の直線性に優れたエッチング液を提供することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
すなわち本発明は、上記課題を解決すべく鋭意検討し完成したものであり、少なくとも亜鉛とスズを含む酸化物をエッチングするためのエッチング液であって、(A)硫酸、硝酸、塩酸、メタンスルホン酸、過塩素酸、またはこれらの塩からなる群より選ばれる1種以上、および(B)シュウ酸またはその塩と水を含み、pH値が−1〜1であるエッチング液を用いて処理することにより、その目的を達成できることを見出して完成したものである。
本発明は下記のとおりである。
1.少なくとも亜鉛とスズを含む酸化物をエッチングするためのエッチング液であって、
(A)硫酸、硝酸、塩酸、メタンスルホン酸、過塩素酸、またはこれらの塩からなる群より選ばれる1種以上、および(B)シュウ酸またはその塩と水を含み、pH値が−1〜1であるエッチング液。
2.さらに(C)カルボン酸(シュウ酸を除く)を含む、第1項に記載のエッチング液。
3.(C)カルボン酸が、酢酸、グリコール酸、マロン酸、マレイン酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、グリシンおよびクエン酸からなる群より選ばれる1種以上である、第2項に記載のエッチング液。
4.さらに(D)ポリスルホン酸化合物を含む、第1項から第3項のいずれか一項に記載のエッチング液。
5.(D)ポリスルホン酸化合物がナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物およびその塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、およびポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩からなる群より選ばれる1種以上である、第4項に記載のエッチング液。
6.エッチング液がさらに(E)亜鉛を濃度10〜5000質量ppmの範囲で含む、第1項から第5項のいずれか一項に記載のエッチング液。
7.エッチング後のパターンにおけるテーパー角が10°〜80°である、第1項から第6項のいずれか一項に記載のエッチング液。
8.(A)硫酸、硝酸、メタンスルホン酸、塩酸、過塩素酸、またはこれらの塩からなる群より選ばれる1種以上を0.5〜30質量%、および(B)シュウ酸またはその塩0.1〜10質量%と水(残部)を含み、pH値が−1〜1であるエッチング液と、少なくとも亜鉛とスズを含む酸化物を含む基板とを接触させて、少なくとも亜鉛とスズを含む酸化物をエッチングする方法。
9.エッチング液がさらに(C)カルボン酸(シュウ酸を除く)0.1〜15質量%を含む、第8項に記載のエッチングする方法。
(C)カルボン酸は、酢酸、グリコール酸、マロン酸、マレイン酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、グリシンおよびクエン酸からなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい。
10.エッチング液がさらに(D)ポリスルホン酸化合物0.0001〜10質量%を含む、第8項または第9項に記載のエッチングする方法。
(D)ポリスルホン酸化合物は、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物およびその塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、およびポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩からなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい。
11.エッチング液がさらに(E)亜鉛を濃度10〜5000質量ppmの範囲で含む、第8項から第10項のいずれか一項に記載のエッチングする方法。
12.エッチング後のパターンにおけるテーパー角が10°〜80°である、第8項から第11項のいずれか一項に記載のエッチングする方法。
13.第8項から第12項のいずれか一項に記載の方法により製造された表示デバイス。
【発明の効果】
【0016】
本発明の好ましい態様によれば、少なくとも亜鉛とスズを含む酸化物をエッチングするために本願発明のエッチング液を用いることにより、好適なエッチングレートを有し、しかもパターン形状に優れ、亜鉛とスズを含む酸化物の溶解に対してエッチングレートの低下や変化が小さく、かつ析出物の発生がなく、さらには配線材料への腐食性も小さいため長期間、安定的に好適なエッチング操作を行うことができ、かつエッチング後のパターン形状の直線性に優れるといった効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例2の薬液を用いてエッチングしたZTOの断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した図である。
図2】実施例2の薬液を用いてエッチング処理した後、レジストを剥離し、SEMにより上方からZTO(右)およびガラス基板(左)を観察した図である。
図3】比較例3の薬液を用いてエッチングしたZTOの断面をSEMにより観察した図である。
図4】比較例3の薬液を用いてエッチング処理した後、レジストを剥離し、SEMにより上方からZTO(右)およびガラス基板(左)を観察した図である。
図5】エッチング処理後の半導体層を、断面から観察した時の模式図である。
図6】エッチング処理し、レジストを剥離した後の半導体層を、鉛直上方の表面から観察した時の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の亜鉛とスズを含む酸化物は、亜鉛とスズを含む酸化物であれば特に制限されることはなく、また亜鉛およびスズ以外の元素を1種以上含んでいても構わない。
酸化物中に含まれる亜鉛およびスズの含有量は、それぞれ1質量%以上が好ましく、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上である。亜鉛及びスズ以外の金属元素の含有量は、それぞれ10質量%以下が好ましく、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
【0019】
本願発明のエッチング液は、(A)硫酸、硝酸、塩酸、メタンスルホン酸、過塩素酸、またはこれらの塩からなる群より選ばれる1種以上、および(B)シュウ酸またはその塩と水を含み、pH値が−1〜1であるエッチング液である。
本発明のエッチング液は、(A)として、硫酸、硝酸、メタンスルホン酸、塩酸、過塩素酸、またはこれらの塩からなる群より選ばれる1種以上を含む。具体的には、硫酸、発煙硫酸、硫酸アンモニウム、硫酸水素アンモニウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム、硝酸、硝酸アンモニウム、メタンスルホン酸、塩酸、過塩素酸などが好ましく、より好ましくは硫酸、硝酸、メタンスルホン酸、塩酸、過塩素酸であり、さらに好ましくは硫酸、硝酸、メタンスルホン酸であり、特に硫酸が好ましい。また、(A)成分で選択される酸またはその塩の濃度は、酸換算の濃度で0.5質量%以上が好ましく、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上である。また、30質量%以下が好ましく、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。中でも、0.5〜30質量%が好ましく、より好ましくは1〜20質量%、さらに好ましくは2〜15質量%である。0.5〜30質量%である時、良好なエッチングレートが得られる。
【0020】
本発明のエッチング液に含まれる(B)シュウ酸としては、シュウ酸イオンを供給できるものであれば特に制限はない。また、(B)成分で選択されるシュウ酸イオンの濃度は、シュウ酸換算で0.1質量%以上が好ましく、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上である。また、10質量%以下が好ましく、より好ましくは7質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。中でも、0.1〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜7質量%、さらに好ましくは1〜5質量%である。0.1〜10質量%である時、良好なエッチングレートが得られる。
【0021】
本発明で使用される水は、蒸留、イオン交換処理、フィルター処理、各種吸着処理などによって、金属イオンや有機不純物、パーティクル粒子などが除去された水が好ましく、特に純水、超純水が好ましい。また、水の濃度は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上である。その場合、水の濃度は各種薬剤を除いた残部である。
【0022】
本発明のエッチング液には、さらに(C)として、シュウ酸を除くカルボン酸を含むことができる。
具体的なカルボン酸としては、カルボン酸イオン(ただしシュウ酸イオンを除く)を供給できるものであれば特に制限はない。カルボン酸イオンは、亜鉛およびスズからなる酸化物をエッチングする液体組成物の安定性を向上させ、エッチング速度の調節機能を有する。例えば炭素数1〜18の脂肪族カルボン酸、炭素数6〜10の芳香族カルボン酸のほか、炭素数1〜10のアミノ酸などが好ましく挙げられる。
炭素数1〜18の脂肪族カルボン酸として、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、グリコール酸、ジグリコール酸、ピルビン酸、マロン酸、酪酸、ヒドロキシ酪酸、酒石酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、吉草酸、グルタル酸、イタコン酸、カプロン酸、アジピン酸、クエン酸、プロパントリカルボン酸、trans−アコニット酸、エナント酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸またはそれらの塩が好ましい。
さらに好ましいカルボン酸は酢酸、グリコール酸、乳酸、マロン酸、マレイン酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸またはそれらの塩であり、特に好ましくは酢酸、マレイン酸、リンゴ酸、クエン酸である。また、これらは単独でまたは複数を組み合わせて用いることができる。
【0023】
(C)カルボン酸(ただしシュウ酸を除く)またはその塩の濃度はカルボン酸換算の濃度で、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上である。また、好ましくは15質量%以下、より好ましくは12質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。中でも、好ましくは0.1〜15質量%、より好ましくは1〜12質量%、さらに好ましくは3〜10質量%である。0.1〜15質量%である時、配線材料への腐食を小さく抑えることができる。
【0024】
本発明のエッチング液は、pH値が−1〜1の範囲である。より好ましいpH値は−0.7〜0.7で、さらに好ましいpH値は−0.5〜0.5である。
また本発明のエッチング液は、必要に応じてpH調整剤を含有することができる。pH調整剤はエッチング性能に影響を及ぼさないものであれば特に制限はないが、(A)成分としての機能を有する硫酸、メタンスルホン酸や、(C)成分であるカルボン酸(ただしシュウ酸を除く)を用いて調整することも可能である。さらにpH調整剤として、アンモニア水、アミド硫酸などを用いることもできる。
【0025】
本発明のエッチング液は、必要に応じて(D)成分として、ポリスルホン酸化合物を含有することができる。ポリスルホン酸化合物は、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物およびその塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、およびポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩などが好ましい。ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物はデモールN(花王株式会社)、ラベリンFP(第一工業製薬株式会社)、ポリティN100K(ライオン株式会社)等の商品名で市販されている。
(D)ポリスルホン酸化合物の濃度は、好ましくは0.0001質量%以上、さらに好ましくは0.001質量%以上である。また、好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。中でも、0.0001〜10質量%の範囲が好ましく、さらに好ましくは、0.001〜5質量%である。
【0026】
本発明の好ましい態様によれば、本発明のエッチング液は、亜鉛成分が溶解しても、析出やエッチング特性の変化が起こらない。必要に応じて、(E)成分として、亜鉛を含有することができる。亜鉛は、亜鉛とスズを含む酸化物が溶解した際のエッチングレートの変動をさらに抑制する機能を有する。亜鉛は、亜鉛イオンを供給できるものであれば特に制限はない。具体的には、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、塩化亜鉛などの塩を用いても良いし、金属亜鉛、亜鉛とスズを含む酸化物や酸化亜鉛を溶解しても良い。
(E)亜鉛としての濃度は、好ましくは10質量ppm以上、より好ましくは100質量ppm以上、さらに好ましくは1000質量ppm以上である。また、好ましくは5000質量ppm以下、より好ましくは4000質量ppm以下、さらに好ましくは3000質量ppm以下である。中でも、好ましくは10〜5000質量ppm、より好ましくは100〜4000質量ppm、さらに好ましくは1000〜3000質量ppmである。10〜5000質量ppmである時、エッチングレートの変動をさらに小さくすることができる。
【0027】
本発明のエッチング液は上記した成分のほか、エッチング液に通常用いられる各種添加剤をエッチング液の効果を害しない範囲で含むことができる。例えば、溶媒やpH緩衝剤などを用いることができる。
【0028】
本発明のエッチング方法では、少なくとも亜鉛(Zn)とスズ(Sn)を含む酸化物をエッチング対象物とする。亜鉛とスズの合計含有量に対する亜鉛の含有量の比(原子比、Zn÷(Zn+Sn)で計算される値)は、半導体特性の観点から0.3以上が好ましいが、これに限定されるものではない。
【0029】
本発明のエッチング方法は、本発明のエッチング液、すなわち(A)硫酸、硝酸、メタンスルホン酸、過塩素酸、またはこれらの塩からなる群より選ばれる1種以上、および(B)シュウ酸またはその塩と水を含み、pH値が−1〜1であるエッチング液とエッチング対象物とを接触させる工程を有するものである。本発明のエッチング方法により、連続的にエッチング操作を実施した際にも析出物の発生を防止することができる。また、エッチングレートの変化が小さいため、長期間安定的にエッチング操作を行うことができる。
本発明のエッチング方法においてエッチング対象物の形状に制限は無いが、フラットパネルディスプレイの半導体材料として用いる場合は、薄膜であることが好ましい。例えば酸化ケイ素の絶縁膜上に亜鉛・スズ酸化物(ZTO)の薄膜を形成し、その上にレジストを塗布し、所望のパターンマスクを露光転写し、現像して所望のレジストパターンを形成したものをエッチング対象物とする。エッチング対象物が薄膜である場合、その膜厚は1〜1000nmの範囲にあることが好ましい。より好ましくは5〜500nmであり、特に好ましくは10〜300nmである。またエッチング対象物は、組成の異なる二つ以上の酸化物の薄膜からなる積層構造であっても良い。その場合、組成の異なる二つ以上の酸化物の薄膜からなる積層構造を一括でエッチングすることができる。
【0030】
エッチング対象物とエッチング液との接触温度(すなわち、エッチング対象物と接触する時のエッチング液の温度)は、10℃以上が好ましく、より好ましくは15℃以上、さらに好ましくは20℃以上である。また、接触温度は70℃以下が好ましく、より好ましくは60℃以下、さらに好ましくは50℃以下である。特に10〜70℃の温度が好ましく、15〜60℃がより好ましく、20〜50℃が特に好ましい。10〜70℃の温度範囲の時、良好なエッチングレートが得られる。さらに上記温度範囲でのエッチング操作は装置の腐食を抑制することができる。エッチング液の温度を高くすることで、エッチングレートは上昇するが、水の蒸発等によるエッチング液の濃度変化が大きくなることなども考慮した上で、適宜好適な処理温度を決定すればよい。
本発明のエッチング方法において、エッチング時間は特に制限されないが、亜鉛(Zn)とスズ(Sn)を含む酸化物のエッチングが完了して下地が露出するまでのジャストエッチング時間は、通常0.01〜30分程度が好ましく、より好ましくは0.03〜10分、さらに好ましくは0.05〜5分、特に好ましくは0.1〜2分である。
【0031】
エッチング対象物にエッチング液を接触させる方法には特に制限はなく、例えばエッチング液を滴下(枚葉スピン処理)やスプレーなどの形式により対象物に接触させる方法、または対象物をエッチング液に浸漬させる方法など通常のウェットエッチング方法を採用することができる。
【実施例】
【0032】
以下に本発明の実施例と比較例によりその実施形態と効果について具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0033】
pH値測定方法
pH値は、堀場製作所のpH/IONメーターを用い、撹拌しているエッチング液に電極を浸漬し、22℃で測定した。pH測定装置のpH値の調製はpH2および7の標準液を用いて行った。
【0034】
SEM観察
SEM観察に用いた測定機器は、日立社製電界放出型走査型電子顕微鏡S−5000Hである。測定条件は、加速電圧2.0kV、引出電圧4.2kV、エミッション電流10μAとした。
【0035】
亜鉛・スズ酸化物(ZTO)薄膜/ガラス基板の作製
酸化亜鉛と酸化スズを粉砕、混合、焼結した亜鉛・スズ酸化物のターゲットを用いて、ガラス基板上にスパッタ法により亜鉛とスズの原子比 0.7の亜鉛・スズ酸化物の薄膜(膜厚:100nm)を成膜した。
レジストパターン付き/亜鉛・スズ酸化物薄膜/ガラス基板の作製
上述した亜鉛・スズ酸化物の薄膜の上へ、フォトレジストを塗布、露光、現像して、レジストパターンを形成した亜鉛・スズ酸化物の薄膜を作製した。
【0036】
評価(判定)
1.エッチングレートの測定
ガラス基板上に形成した亜鉛・スズ酸化物(ZTO)の薄膜(膜厚100nm)に対し、表1および表2に示すエッチング液を用いてエッチング処理した。エッチング処理は、上記ZTO膜/ガラス基板を35℃に保ったエッチング液に20秒〜60秒間浸漬し、その後純水で洗浄した後乾燥した。次に、エッチング処理前後のZTO膜の膜厚を光学式膜厚測定装置n&k Analyzer 1280(n&k Technology Inc.製)を用いて測定し、その膜厚差をエッチング時間で除することによりエッチングレート(初期エッチングレート)を算出した。評価結果は以下の基準に従った。
E:エッチングレート30nm/min〜200nm/min
G:エッチングレート20nm/min〜30nm/min未満、または201nm/min〜500nm/min
F:エッチングレート10nm/min〜20nm/min未満、または501nm/min〜1000nm/min
P:エッチングレート10nm/min未満、または1001nm/min以上
なお、ここでの合格はE、GおよびFである。
【0037】
2.酸化物溶解性の確認
表1および表2に示したエッチング液に、亜鉛・スズ酸化物(ZTO)を所定濃度(亜鉛濃度として10、100、もしくは1000質量ppm)になるよう溶解し、不溶物の有無を目視にて観察した。評価結果は以下の基準に従った。
合格はE、GおよびFである。
E:亜鉛濃度として1000質量ppm添加後、完全に溶解。
G:亜鉛濃度として100質量ppm添加後、完全に溶解。
F:亜鉛濃度として10質量ppm添加後、完全に溶解。
P:亜鉛濃度として10質量ppm添加後、不溶物あり。
【0038】
3.酸化物溶解後のエッチングレート変化の測定
表1および表2に示したエッチング液に、ZTOを亜鉛濃度として1000質量ppmになるよう溶解した後に、上記1と同様の方法でエッチングレートを測定した。ZTO溶解前後での、エッチングレートの変化量を算出した。評価結果を以下の基準で表記した。
E:エッチングレート変化量5nm/min以下
G:エッチングレート変化量5nm/min超〜10nm/min以下
P:エッチングレート変化量10nm/min超
なお、ここでの合格はEおよびGである。
【0039】
4.パターン形状の評価
レジストパターンを形成した亜鉛・スズ酸化物の薄膜(膜厚100nm)を、表1および表2に示したエッチング液を用いてエッチング処理した。エッチング処理は、35℃においてディップ方式で実施した。エッチング時間はエッチングに要する時間(ジャストエッチング時間)の2倍の時間(100%オーバーエッチング条件)とした。なお、ジャストエッチング時間はZTO膜の膜厚を「1.エッチングレートの測定」で測定したエッチングレートで除することにより算出した(後述する実施例2の場合、ジャストエッチング時間=ZTOの膜厚100[nm]/エッチングレート35[nm/min]=2.857[min]=171秒となり、したがって100%オーバーエッチング条件での処理時間は171秒×2=342秒となる)。エッチング後の基板は、水で洗浄し、窒素ガスを吹き付け乾燥させた後、走査型電子顕微鏡(「S5000H型(型番)」;日立製)で観察を行い、評価結果は以下の基準で判定した。
各項目の合格はGである。
テーパー角
G: テーパー角10〜80°
P: テーパー角0〜10°未満あるいは80°超
直線性
G: 直線性の誤差0.2μm以下
P: 直線性の誤差0.2μm超
残渣除去性
G: 残渣がない
P: 残渣がある
【0040】
5.配線材料のエッチングレートの測定(腐食性)
ガラス基板上にスパッタ法により成膜した銅(Cu)/チタン(Ti)積層膜、アルミニウム(Al)単層膜、モリブデン(Mo)単層膜およびTi単層膜を用いて、表1および表2に示したエッチング液によるCu、Al、Mo、Tiのエッチングレートを測定した。エッチング処理は、上記金属膜/ガラス基板を35℃に保ったエッチング液に浸漬する方法で行った。エッチング処理前後の金属膜の膜厚を蛍光X線分析装置SEA1200VX(Seiko Instruments Inc.製)を用いて測定し、その膜厚差をエッチング時間で除することによりエッチングレートを算出した。評価結果を以下の基準で表記した。
E:エッチングレート1nm/min未満
G:エッチングレート1nm/min〜2nm/min未満
P:エッチングレート2nm/min以上
なお、ここでの合格はEおよびGである。
【0041】
実施例1
容量100mlのポリプロピレン容器にA成分として70%硝酸(和光純薬工業株式会社製)14.3gおよび純水84.0gを投入した。さらにB成分としてシュウ酸(和光純薬工業株式会社製)1.7gを加えた。これを攪拌して各成分をよく混合し、エッチング液を調製した(合計重量は100.0g)。得られたエッチング液の硝酸の配合量は10質量%であり、シュウ酸の配合量は1.7質量%である。また、pH値は−0.1であった。
該エッチング液を用いて、上記1〜5の評価を実施した。結果を表1にまとめた。
エッチングレートは66nm/minで、ZTO2200質量ppm(亜鉛濃度として1000質量ppm)を添加しても液は透明であり、不溶解分はなかった。ZTO(亜鉛濃度として1000質量ppm)添加後のpH値は−0.1で、エッチングレートは61nm/minで、変化量は小さくE判定(5nm/min)であった。配線材料(Cu)のE.R.はG判定で、Mo、Al、TiはE判定であった。
【0042】
実施例2
実施例1の硝酸の代わりに硫酸を10質量%にした以外は、実施例1と同様にしてエッチング液を調製し、該エッチング液を用いて上記の評価を実施した。得られた結果を表1に示す。また、パターニング形状をSEM観察した結果を図1、2に示す。断面図(図1)よりテーパー角は25°でG判定となり、表面図(パターンを上方部から観察した図(図2))より直線性および残渣除去性においてもG判定であった。
図に示した断面図は、レジストによりパターニングした基板を割り、その断面を観察した図である。また、表面図はレジストを剥離した後、上方部から配線部(右)および基板(左)を観察した図である。
【0043】
実施例3〜6
実施例1の硝酸の代わりにメタンスルホン酸を15質量%(実施例3)、塩酸を10質量%(実施例4)、硫酸7質量%と硝酸5質量%(実施例5)、または硫酸10質量%と過塩素酸15質量%(実施例6)にした以外は、実施例1と同様にしてエッチング液を調製し、該エッチング液を用いて上記の評価を実施した。得られた結果を表1に示す。
【0044】
実施例7
実施例1のA成分およびB成分の濃度を2倍にした以外は、実施例1と同様にしてエッチング液を調製し、該エッチング液を用いて上記の評価を実施した。得られた結果を表1に示す。
【0045】
実施例8
硝酸濃度10質量%、シュウ酸濃度1.7質量%、C成分としてグリシン5質量%にした以外は、実施例1と同様にしてエッチング液を調製し、該エッチング液を用いて上記の評価を実施した。得られた結果を表1に示す。
【0046】
実施例9
硫酸濃度を10質量%、シュウ酸濃度1.7質量%、C成分としてクエン酸濃度を5質量%にした以外は、実施例1と同様にしてエッチング液を調製し、該エッチング液を用いて上記の評価を実施した。得られた結果を表1に示す。
【0047】
実施例10
硫酸濃度10質量%、シュウ酸濃度1.7質量%、ラべリンFP(第一工業製薬株式会社)を0.1質量%にした以外は、実施例1と同様にしてエッチング液を調製し、該エッチング液を用いて上記の評価を実施した。得られた結果を表1に示す。
【0048】
比較例1、2
エッチング液をシュウ酸濃度3.4質量%(比較例1)、または1.7質量%(比較例2)とした以外は、実施例1と同様にしてエッチング液を調製し、該エッチング液を用いて上記の評価を実施した。得られた結果を表2に示す。
【0049】
比較例3、4、5
エッチング液を塩酸10質量%(比較例3)、硝酸20質量%(比較例4)、マレイン酸10質量%(比較例5)とした以外は、実施例1と同様にしてエッチング液を調製し、該エッチング液を用いて上記の評価を実施した。得られた結果を表2に示す。また比較例3のエッチング操作後のSEM観察によるパターニング形状を図3、4に示す。10質量%の塩酸を用いてパターニングすると、断面図よりテーパー角は5°でP判定となり、表面図より直線性は悪く、残渣除去性も不十分であることからP判定であった。
【0050】
上記実施例1〜10から本発明のエッチング液は、亜鉛およびスズを含む酸化物を好適なエッチングレートでエッチングでき、酸化物の溶解に対してエッチングレートの変化が小さく、析出物の発生もなく、エッチング処理が可能であることが分かる。さらに、配線材料への腐食性も小さく、パターン形状に優れ、工業生産で使用されるエッチング液として優れた性能を有することが分かった。
一方、比較例1〜2、5では亜鉛・スズ酸化物(ZTO)溶解能が低く(酸化物を亜鉛濃度として10質量ppm未満しか溶解することができなかった)、エッチングレートの変化量は評価できなかった。また、比較例3〜4ではエッチングレートは比較的良好であるが、配線材料であるCuやMo、Alのエッチングレートが大きく、腐食性があった。また、パターン形状も不良であった。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のエッチング液は、亜鉛およびスズを含む酸化物を好適なエッチングレートでエッチングでき、酸化物の溶解に対してエッチングレートの変化が小さく、析出物の発生もなく、配線材料への腐食性も小さい。本発明のエッチング液は、薬液寿命が長いことが期待できるため、薬液使用時のコストの低減、および環境負荷を大幅に下げるメリットも高い。
【符号の説明】
【0054】
1 レジスト
2 半導体層
3 下地層
4 テーパー角
5 下地層
6 エッチング処理により形成された半導体層のテーパー部
7 半導体層
8 エッチング処理によりパターニングされた半導体層端部の境界線
9 半導体層の直線性からの誤差
図1
図2
図3
図4
図5
図6