(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6384494
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】油圧ユニット
(51)【国際特許分類】
F15B 1/26 20060101AFI20180827BHJP
【FI】
F15B1/26
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-17425(P2016-17425)
(22)【出願日】2016年2月1日
(65)【公開番号】特開2017-137900(P2017-137900A)
(43)【公開日】2017年8月10日
【審査請求日】2017年3月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 宏年
(72)【発明者】
【氏名】綾戸 健二
【審査官】
加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭55−135801(JP,U)
【文献】
実開昭64−053502(JP,U)
【文献】
実開昭49−118410(JP,U)
【文献】
実開平04−096602(JP,U)
【文献】
実開昭61−170702(JP,U)
【文献】
特開平09−072492(JP,A)
【文献】
実公平05−040322(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプが載置された架台と、
前記架台の下方に配置され、前記ポンプに供給される油を収容する油タンクとを備え、
前記油タンク内には、
前記油タンクに油を流入させる流入管と、
前記ポンプから排出された油を前記油タンクに戻すドレンホースと、
前記油タンクに収容された油を前記ポンプに対し供給する供給管と、
前記流入管の流入口および前記ドレンホースのドレン口と、前記供給管の供給口とを仕切る仕切り板とが配置され、
前記仕切り板は、
前記流入管および前記ドレンホースが配置された流入側空間と前記供給管が配置された供給側空間とを連通させる連通口を有し、
前記連通口が、前記油タンクの底面から離れており、
前記仕切り板は、前記連通口の下端部から前記流入側空間に向かって延在する移動規制部を有し、
前記移動規制部は、前記流入管および前記ドレンホースのうち、下端が前記油タンクの底面に近い方の下端以上の高さに配置されていることを特徴とする油圧ユニット。
【請求項2】
前記移動規制部は、前記仕切り板の一部分が前記連通口の下端部において折り曲げられることにより構成されることを特徴とする請求項1に記載の油圧ユニット。
【請求項3】
前記油タンクは、前記流入側空間および前記供給側空間のいずれかを前記油タンクの外部空間に連通させる廃油口を有し、
前記仕切り板は、その下端部に形成された開口を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の油圧ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油を油圧アクチュエータへ供給する油圧ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械等の主機に搭載されており、ポンプから送り出された高圧の油を油圧アクチュエータに供給するための油圧ユニットが知られている。従来、油圧ユニットとしては、ポンプおよびポンプを駆動するためのモータが固定された架台を有し、ポンプに供給する油を収容する油タンクが架台の下方に配置されたものがある。油タンク内には、主機のアクチュエータ又は油圧回路からの戻り油の戻り口である流入管と、油タンク内の油をポンプに供給するための供給管とが配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−42501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の油タンクにおいて、流入管から流入した油に含まれる塵が油タンクの底面に堆積する場合があり、その塵が油と共に供給管からポンプに供給される問題がある。したがって、従来の油タンクの内部に、流入管の流入口と供給管の供給口を仕切る仕切り板を配置することが考えられる。この場合、流入管から流入した油は、仕切り板に形成した連通穴から供給管に供給されるが、流入管から流入した油に含まれる塵は、仕切り板がない場合と比べ、供給管からポンプに供給されにくくなる。ただし、連通穴が仕切り板の下端に形成された場合、油タンクの底面に堆積した塵が油と共に、連通穴から供給管に向かって流れることがあり、油に含まれる塵がポンプに供給される問題が残っている。
【0005】
そこで、本発明の目的は、油タンク内の油がポンプに供給されるときに、油タンク内の塵が油と共にポンプに供給されるのを防止できる油圧ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明にかかる油圧ユニットは、ポンプが載置された架台と、前記架台の下方に配置され、前記ポンプに供給される油を収容する油タンクとを備え、前記油タンク内には、前記油タンクに油を流入させる流入管と、
前記ポンプから排出された油を前記油タンクに戻すドレンホースと、前記油タンクに収容された油を前記ポンプに対し供給する供給管と、前記流入管の流入口
および前記ドレンホースのドレン口と
、前記供給管の供給口とを仕切る仕切り板とが配置され、前記仕切り板は、前記流入管
および前記ドレンホースが配置された流入口側空間と前記供給管が配置された供給口側空間とを連通させる連通口を有し、前記連通口が、前記油タンクの底面から離れて
おり、前記仕切り板は、前記連通口の下端部から前記流入側空間に向かって延在する移動規制部を有し、前記移動規制部は、前記流入管および前記ドレンホースのうち、下端が前記油タンクの底面に近い方の下端以上の高さに配置されていることを特徴とする。
【0007】
この油圧ユニットでは、流入管から流入した油が、油タンクの底面から離れた仕切り板の連通口から供給管側に移動することから、流入口側空間にある油に含まれる塵が、仕切り板の連通口より下方部分によりせき止められる。したがって、流入口側空間にある油に含まれる塵が供給口側空間に移動しにくい。よって、油タンク内の油に含まれる塵がポンプに供給されるのを防止できる。
【0008】
【0009】
この油圧ユニットでは、流入口側空間の油が移動規制部の下方で循環した後、連通口を介して供給口側空間に移動することから、流入口側空間にある油に含まれる塵が供給口側空間に移動するのを効果的に防止できる。
【0010】
第
2の発明にかかる油圧ユニットは、第
1の発明にかかる油圧ユニットにおいて、前記移動規制部は、前記仕切り板の一部分が前記連通口の下端部において折り曲げられることにより構成されることを特徴とする。
【0011】
この油圧ユニットでは、仕切り板の一部分が連通口の下端部において折り曲げられることにより、移動規制部を容易に構成できる。
【0012】
第
3の発明にかかる油圧ユニットは、第1−第
2のいずれかの発明にかかる油圧ユニットにおいて、前記油タンクは、前記流入口側空間および前記供給口側空間のいずれかを前記油タンクの外部空間に連通させる廃油口を有し、前記仕切り板は、その下端部に形成された開口を有していることを特徴とする。
【0013】
この油圧ユニットでは、油タンク内の油を廃油口から外部に流出させることができる。
【発明の効果】
【0014】
以上の説明に述べたように、本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0015】
第1の発明では、流入管から流入した油が、油タンクの底面から離れた仕切り板の連通口から供給管側に移動することから、流入口側空間にある油に含まれる塵が、仕切り板の連通口より下方部分によりせき止められる。したがって、流入口側空間にある油に含まれる塵が供給口側空間に移動しにくい。よって、油タンク内の油に含まれる塵がポンプに供給されるのを防止できる。
【0016】
第
1の発明では、流入口側空間の油が移動規制部の下方で循環した後、連通口を介して供給口側空間に移動することから、流入口側空間にある油に含まれる塵が供給口側空間に移動するのを効果的に防止できる。
【0017】
第
2の発明では、仕切り板の一部分が連通口の下端部において折り曲げられることにより、移動規制部を容易に構成できる。
【0018】
第
3の発明では、油タンク内の油を廃油口から外部に流出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態にかかる油圧ユニットの正面図である。
【
図5】本発明と比較例において、流入管の流入口およびドレンホースのドレン口から流入側空間に流入した油が供給側空間に流れるときの流動状態を図示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態にかかる油圧ユニット1について、図面を参照しつつ説明する。
【0021】
本実施形態の油圧ユニット1は、
図1に示すように、モータ2と、モータ2により駆動されるポンプ3とが搭載された架台4と、架台4の下方に配置され、ポンプ3に供給される油を収容する油タンク5とを備えている。
【0022】
架台4には、主機のアクチュエータ又は油圧回路からの戻り油の戻り口である流入管7と、ポンプ3から排出された後でクーラによって冷却されたドレン油を油タンク5に戻すためのドレンホース8と、油タンク5内の油をポンプ3に供給するための供給管9と、油タンク5に給油するための給油口を構成する給油管(図示しない)とが取り付けられている。これらの流入管7、ドレンホース8、供給管9および給油管は、いずれも油タンク5内に延びる部材である。
【0023】
図2−
図4は、油タンク5の内部の構成を示す斜視図、平面図、正面図である。油タンク5の内部には、流入管7と、ドレンホース8と、供給管9とが配置される。したがって、流入管7の下端に形成された流入口7aから、主機のアクチュエータ又は油圧回路からの戻り油が油タンク5に流入し、ドレンホース8の下端に形成されたドレン口8aからドレン油が油タンク5に戻される。これに対し、供給管9の下端に形成された供給口9aから油タンク5内の油がポンプ3に供給される。
【0024】
油タンク5の内部には、流入管7の流入口7aおよびドレンホース8のドレン口8aと、供給管9の供給口9aとを仕切る仕切り板20が配置される。仕切り板20は、油タンク5の底面5aまたは底面5a近傍から上方に向かって延びると共に、流入管7の流入口7aおよびドレンホース8のドレン口8aが配置された流入側空間30と、供給管9の供給口9aが配置された供給側空間31とを連通させる連通口21を有している。連通口21は、油タンク5の底面5aから離れていることから、仕切り板20の一部である連通口下方壁部25より上方に配置される。本発明において、仕切り板20の油タンク5に対する取付け方法は変更可能であって、油タンク5の底面や側面等に取り付けられてよい。
【0025】
仕切り板20は、連通口21の下端部(連通口下方壁部25の上端部)から流入側空間30に向かって延在する移動規制部27を有している。移動規制部27は、仕切り板20の一部分が連通口の下端部において折り曲げられることにより構成される。
【0026】
油タンク5は、流入側空間30を油タンク5の外部空間に連通させる廃油口11を有している。廃油口11は、油タンク5の正面側の側面に配置され、油タンク5内の廃油を廃油口11から外部に流出させるときに開放される。仕切り板20の下端部には、開口20aが形成され、供給側空間31にある油を流入側空間30に移動可能に構成されている。
【0027】
本発明の実施形態の油タンク5と、比較例の油タンク105において、流入管7の流入口7aおよびドレンホース8のドレン口8aから流入側空間30に流入した油が供給側空間31に流れるときの流動を説明する。比較例の油タンク105では、流入側空間30と供給側空間31とを連通させる連通口121が仕切り板120の下端に形成されている。
【0028】
図5(a)及び
図5(b)は、それぞれ、本発明と比較例において、流入管7の流入口7aおよびドレンホース8のドレン口8aから流入側空間30に流入した油が供給側空間31に流れるときの流動状態を図示している。
【0029】
比較例では、
図5(b)示すように、流入管7の流入口7aおよびドレンホース8のドレン口8aから流入側空間30に流入した油が、仕切り板120の下端に形成された連通口121から供給側空間31に流れるが、このとき、油タンク105の底面105aに堆積していた塵が油と共に、供給側空間31に流れてしまう。したがって、その後、供給側空間31において、塵を含む油が供給管13からポンプ3に供給されてしまう。
【0030】
これに対し、本発明では、
図5(a)に示すように、流入管7の流入口7aおよびドレンホース8のドレン口8aから流入側空間30に流入した油が、仕切り板20の上端に形成された連通口21から供給側空間31に流れるが、このとき、油タンク5の底面5aに堆積していた塵は、仕切り板20の一部である連通口下方壁部25によりせき止められる。したがって、油タンク5の底面5aに堆積していた塵が油と共に、供給側空間31に流れるのを抑制でき、その後、供給側空間31において、塵を含む油が供給管13からポンプ3に供給されるのを防止できる。
【0031】
また、本発明では、仕切り板20が、連通口21の下端部(連通口下方壁部25の上端部)から流入口側空間30に向かって延在する移動規制部27を有していることから、流入管7の流入口7aおよびドレンホース8のドレン口8aから流入側空間30に流入した油が、移動規制部27の下方で循環し、その間に、油に含まれる塵が油タンク5の底面5aに堆積するようになる。したがって、油タンク5の底面5aに堆積していた塵が油と共に、仕切り板20の上端に形成された連通口21から供給口側空間31に流れるのを効果的に防止できる。
【0032】
<本実施形態の油圧ユニットの特徴>
本実施形態の油圧ユニット1には、以下の特徴がある。
【0033】
本実施形態の油圧ユニット1では、流入管7から流入した油が、油タンク5の底面5aから離れた仕切り板20の連通口21から供給管9側に移動することから、流入口側空間30にある油に含まれる塵が、仕切り板20の連通口21より連通口下方壁部25によりせき止められる。したがって、流入口側空間30にある油に含まれる塵が供給口側空間31に移動しにくい。よって、油タンク5内の油に含まれる塵がポンプ3に供給されるのを防止できる。
【0034】
本実施形態の油圧ユニット1では、流入口側空間30の油が移動規制部27の下方で循環した後、連通口21を介して供給口側空間31に移動することから、流入口側空間30にある油に含まれる塵が供給口側空間31に移動するのを効果的に防止できる。
【0035】
本実施形態の油圧ユニット1では、仕切り板20の一部分が連通口21の下端部において折り曲げられることにより、移動規制部27を容易に構成できる。
【0036】
本実施形態の油圧ユニット1では、仕切り板20が、その下端部に形成された開口20aを有していることから、油タンク5内の油を廃油口11から外部に流出させることができる。
【0037】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて、様々な設計変更を行うことが可能なものである。
【0038】
上述の実施形態では、油タンク5の内部に、主機のアクチュエータ又は油圧回路からの戻り油の戻り口である流入管7と、ポンプ3から排出された後でクーラによって冷却されたドレン油を油タンク5に戻すためのドレンホース8と、油タンク5内の油をポンプ3に供給するための供給管9とが配置された場合を説明したが、流入管7およびドレンホース8のいずれかが配置されたものであってよい。したがって、本発明の流入管として、流入管7とドレンホース8のいずれかが配置されたものであってよい。
【0039】
上述の実施形態では、連通穴21が仕切り板20の上端に形成された場合を説明したが、連通穴21は、油タンクの底面から離れていればよい。
【0040】
上述の実施形態では、仕切り板20が移動規制部27を有している場合を説明したが、仕切り板20が、移動規制部27を有してなくてよい。
【0041】
上述の実施形態では、仕切り板20が開口20aを有している場合を説明したが、仕切り板20は開口20aを有してなくてよい。
【符号の説明】
【0042】
1 油圧ユニット
3 ポンプ
4 架台
5 油タンク
5a 油タンクの底面
7 流入管、
8 ドレンホース
9 供給管
11 廃油口
20 仕切り板
20a 開口
21 連通穴
27 移動規制部
30 流入側空間
31 供給側空間