【実施例】
【0030】
表3に示す配合剤を共通配合とし、表1,2に示す配合からなる21種類のトレッド用ゴム組成物(実施例1〜5、標準例、比較例1〜15)を、硫黄、加硫促進剤を除く成分を1.8Lの密閉型ミキサーで170℃、5分間混練し放出したマスターバッチに、硫黄、加硫促進剤を加えてオープンロールで混練することにより調製した。なお、表3に記載した共通配合剤の添加量は、表1に記載したジエン系ゴム100質量部に対する質量部で表わした。各ゴム組成物において、ジエン系ゴムの平均ガラス転移温度を算出し、表1,2の「平均Tg」の欄に記載した。また硫黄の配合量Ms質量部に対する加硫促進剤の配合量Ma質量部の比Ma/Msを算出し、表1,2の「配合比Ma/Ms」の欄に記載した。
【0031】
得られた21種類のトレッド用ゴム組成物を、所定形状の金型中で、160℃、20分間加硫して試験片を作製し、下記に示す方法により、ゴム硬度、引張り破断強度(耐カット・チッピング性)、ランボーン摩耗試験(耐摩耗性)、および60℃のtanδ(発熱性)の評価を行った。
【0032】
ゴム硬度
得られた試験片のゴム硬度を、JIS K6253に準拠しデュロメータのタイプAにより温度20℃で測定した。得られた結果を表1,2の「ゴム硬度」の欄に記載した。
【0033】
引張り破断強度(23℃)
得られた試験片から、JIS K6251に準拠してJIS3号ダンベル型試験片を切り出した。23℃で500mm/分の引張り速度で引張り試験を行い、破断したときの強度を測定した。得られた結果は、標準例の値を100にする指数として表1,2の「耐カット・チッピング性」の欄に記載した。この指数が大きいほど引張破断強度が大きく、耐カット・チッピング性が優れることを意味する。本明細書において、耐カット・チッピング性の指数が102以上であればよいものとする。
【0034】
ランボーン磨耗(耐摩耗性)
得られた加硫ゴム試験片をJIS K6264に準拠して、ランボーン摩耗試験機(上島製作所製)を使用して、温度20℃、荷重15N、スリップ率50%、時間10分の条件で摩耗量を測定した。得られた結果は標準例の逆数を100にする指数として表1,2の「耐摩耗性」の欄に示した。この指数が大きいほど耐摩耗性が優れることを意味する。本明細書において、耐摩耗性の指数が96以上であればよいものとする。
【0035】
60℃のtanδ(発熱性)
得られた試験片を、JIS K6394に準拠して、東洋精機製作所社製粘弾性スペクトロメーターを用いて、初期歪み10%、振幅±2%、周波数20Hzの条件で、温度60℃における損失正接tanδを測定した。得られたtanδの値の逆数を算出し標準例の値を100とする指数として表1,2の「tanδ(60℃)」の欄に示した。この指数が大きいほど発熱性(60℃のtanδ)が小さく、悪路走行時に発熱によりタイヤ温度が高くなるのを抑制し、タイヤ耐久性を向上可能にすることを意味する。本明細書において、発熱性の指数が96以上であればよいものとする。
【0036】
得られたトレッド用ゴム組成物をトレッドゴムとして、空気入りタイヤ(タイヤサイズ265/70R17)を加硫成形した。これらの空気入りタイヤのトレッドパターンは、
図2に記載のブロックパターンまたは
図3に記載のリブ&ブロックのパターンとした。またトレッドゴムの路面に接地するショルダー部の溝深さを表1,2の「トレッド溝深さ」の欄に記載した。得られた空気入りタイヤを使用し、以下の方法で悪路走破性の試験を行った。
【0037】
悪路走破性
得られた空気入りタイヤを標準リムにリム組みし、泥濘路のテストコースを実車走行させ、そのときの操縦安定性を専門パネラーによる感応評価により採点した。得られた結果は、標準例の値を100とする指数として表1,2の「悪路走破性」の欄に示した。この指数が大きいほど悪路走破性が優れることを意味する。本明細書において、悪路走破性の指数が96以上であればよいものとする。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
なお、表1において使用した原材料の種類を下記に示す。
・NR:天然ゴム、TSR20
・SBR−1:スチレンブタジエンゴム、日本ゼオン社製Nipol 1502、非油展品
・SBR−2:スチレンブタジエンゴム、日本ゼオン社製Nipol NS116R、非油展品
・BR:ブタジエンゴム、日本ゼオン社製Nipol BR1200
・CB−1:カーボンブラック、東海カーボン社製シースト 9、窒素吸着比表面積が139m
2/g
・CB−2:カーボンブラック、東海カーボン社製シースト 7HM、窒素吸着比表面積が120m
2/g
・CB−3:カーボンブラック、東海カーボン社製シースト FM、窒素吸着比表面積が35m
2/g
・オイル:昭和シェル石油社製エキストラクト4号S
・加硫促進剤−1:FLEXSYS社製SANTOCURE CBS
・加硫促進剤−2:FLEXSYS社製PERKACIT DPG
・硫黄:鶴見化学工業社製金華印油入 微粉硫黄
【0041】
【表2】
【0042】
なお、表2において使用した原材料の種類を下記に示す。
・老化防止剤:NICOL LIMITED社製PILFLEX 13
・ワックス:大内新興化学工業社製 サンノック
・ステアリン酸:日油社製ビーズステアリン酸
・酸化亜鉛:正同化学工業社製酸化亜鉛3種
【0043】
表1,2から明らかなように実施例1〜5のトレッド用ゴム組成物および空気入りタイヤは、ゴム硬度、耐カット・チッピング性(引張り破断強度)、耐摩耗性(ランボーン摩耗)、発熱性(60℃のtanδ)および悪路走破性が従来レベル以上に向上することが確認された。
【0044】
また表1から明らかなように、比較例1の空気入りタイヤは、ショルダー部の溝深さが10mm未満であるので、悪路走破性が劣る。
比較例2の空気入りタイヤは、トレッドゴムのゴム硬度が65未満であるので、耐摩耗性が劣る。
比較例3の空気入りタイヤは、トレッドゴムのゴム硬度が70を超えるので、悪路走破性が劣る。
比較例4の空気入りタイヤは、トレッド用ゴム組成物を構成するジエン系ゴムの平均ガラス転移温度が−65℃より高いので、耐摩耗性および発熱性が劣る。
比較例5の空気入りタイヤは、トレッド用ゴム組成物の天然ゴムの含有量が10質量%未満であるので、耐カット・チッピング性が劣る。
比較例6の空気入りタイヤは、トレッド用ゴム組成物のブタジエンゴムの含有量が20質量%未満であり、ジエン系ゴムの平均ガラス転移温度が−65℃より高いので、耐摩耗性が劣り発熱性が大きい。
比較例7の空気入りタイヤは、トレッド用ゴム組成物の天然ゴムの含有量が10質量%未満、スチレンブタジエンゴムの含有量が70質量%を超え、ブタジエンゴムの含有量が20質量%未満であり、ジエン系ゴムの平均ガラス転移温度が−65℃より高いので、耐カット・チッピング性が劣り発熱性が大きい。
比較例8の空気入りタイヤは、トレッド用ゴム組成物の天然ゴムの含有量が30質量%を超え、スチレンブタジエンゴムの含有量が50質量%未満、ブタジエンゴムの含有量が20質量%未満であるので、悪路走破性が劣る。
【0045】
また表2から明らかなように、比較例9の空気入りタイヤは、トレッド用ゴム組成物に配合したカーボンブラックの窒素吸着比表面積が130m
2/gを超えるので、発熱性が大きい。
比較例10の空気入りタイヤは、トレッド用ゴム組成物に配合したカーボンブラックの窒素吸着比表面積が70m
2/g未満であるので、耐カット・チッピング性および耐摩耗性が劣る。
比較例11の空気入りタイヤは、トレッド用ゴム組成物のカーボンブラックの配合量が60質量部未満であるので、耐摩耗性が劣る。
比較例12の空気入りタイヤは、トレッド用ゴム組成物のカーボンブラックの配合量が70質量部を超えるので、発熱性が大きい。
比較例13の空気入りタイヤは、トレッド用ゴム組成物における硫黄の配合量Msに対する加硫促進剤の配合量Maの比Ma/Msが1.0未満であるので、発熱性が大きい。
比較例14の空気入りタイヤは、トレッド用ゴム組成物における硫黄に対する加硫促進剤の配合量の比Ma/Msが1.3を超えるので、耐カット・チッピング性および悪路走破性が劣る。
比較例15の空気入りタイヤは、トレッド用ゴム組成物における硫黄の配合量Msが0.5質量部未満であり、かつ硫黄に対する加硫促進剤の配合量の比Ma/Msが1.3を超えるので、耐カット・チッピング性および耐摩耗性が劣り、発熱性が大きい。