特許第6384568号(P6384568)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6384568
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 1/00 20060101AFI20180827BHJP
   B60C 11/01 20060101ALI20180827BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20180827BHJP
   C08L 7/00 20060101ALI20180827BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20180827BHJP
   C08L 9/06 20060101ALI20180827BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20180827BHJP
   C08K 3/06 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   B60C1/00 A
   B60C11/01 B
   B60C11/03 300B
   B60C11/03 300C
   C08L7/00
   C08L9/00
   C08L9/06
   C08K3/04
   C08K3/06
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-97393(P2017-97393)
(22)【出願日】2017年5月16日
【審査請求日】2018年4月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 裕記
【審査官】 岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−7145(JP,A)
【文献】 特開2013−237724(JP,A)
【文献】 特開平5−117450(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0266454(US,A1)
【文献】 特開2015−206029(JP,A)
【文献】 国際公開第2018/003526(WO,A1)
【文献】 国際公開第2017/164329(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00
B60C 11/01
B60C 11/03
C08K 3/04
C08K 3/06
C08L 7/00−21/02
Japio−GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面に接地するショルダー部において、溝深さが10mm以上であるトレッドゴムを有する空気入りタイヤであって、前記トレッドゴムを構成するゴム組成物が、スチレンブタジエンゴム50〜70質量%、ブタジエンゴム20〜30質量%および天然ゴム10〜30質量%からなるジエン系ゴム100質量部に対し、窒素吸着比表面積が70〜130m2/gであるカーボンブラック60〜70質量部、硫黄0.5質量部以上、および加硫促進剤を配合してなり、前記ジエン系ゴムの平均ガラス転移温度が−65℃以下、前記硫黄の配合量Ms質量部に対する前記加硫促進剤の配合量Ma質量部の比Ma/Msが1.0〜1.3であり、前記トレッドゴムの20℃のゴム硬度が65〜70である空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記硫黄を前記ジエン系ゴム100質量部に対し、1.0〜3.0質量部配合してなる請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記トレッドゴムの接地面が、タイヤ周方向および幅方向に連続する溝により区画されたブロック状の陸部だけからなる請求項1または2空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、悪路走破性、耐摩耗性、耐カット・チッピング性および低発熱性を改良するようにした空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
オフロード走行用の空気入りタイヤは、悪路走破性に優れることに加え、耐カット・チッピング性および耐摩耗性にも優れることが重要である。更にタイヤを装着する車輌荷重が重く、使用環境が厳しいため、耐久性に影響する発熱性を低減することが重要である。
【0003】
オフロード走行用の空気入りタイヤにおいて、トレッドゴムを柔らかくすると悪路走破性および耐カット・チッピング性が良好になるが、耐摩耗性および発熱性が悪化する。一方、耐摩耗性を改良するため、耐摩耗性に優れた充填剤を多量に配合すると発熱性が悪化する。また発熱性を小さくするために充填剤を減量すると耐摩耗性が悪化するとう相反する性質がある。
【0004】
特許文献1は、スチレンブタジエン共重合体、天然ゴムおよび/またはポリイソプレンゴム、およびポリブタジエンゴムからなるゴム成分に、窒素吸着比表面積が150〜200m2/gのカーボンブラックを配合してなり、破壊時伸びが500%以上、スプリング硬さが60以上、反発弾性が40以上である悪路用大型空気入りタイヤ用トレッドゴム組成物が、耐摩耗性、発熱の抑制を維持しながら、耐カット性、耐チッピング性を改良することを記載する。
【0005】
しかしながら、近年、需要者がオフロード走行用の空気入りタイヤに求める性能はより高いものとなり、悪路走破性、耐摩耗性、耐カット・チッピング性および低発熱性をより優れたものにすることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−117450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は悪路走破性、耐摩耗性、耐カット・チッピング性および低発熱性を従来レベル以上に改良するようにした空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明の空気入りタイヤは、路面に接地するショルダー部において、溝深さが10mm以上であるトレッドゴムを有する空気入りタイヤであって、前記トレッドゴムを構成するゴム組成物が、スチレンブタジエンゴム50〜70質量%、ブタジエンゴム20〜30質量%および天然ゴム10〜30質量%からなるジエン系ゴム100質量部に対し、窒素吸着比表面積が70〜130m2/gであるカーボンブラック60〜70質量部、硫黄0.5質量部以上、および加硫促進剤を配合してなり、前記ジエン系ゴムの平均ガラス転移温度が−65℃以下、前記硫黄の配合量Ms質量部に対する前記加硫促進剤の配合量Ma質量部の比Ma/Msが1.0〜1.3であり、前記トレッドゴムの20℃のゴム硬度が65〜70であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の空気入りタイヤは、上述した特定のゴム組成物によりトレッドゴムを構成し、かつ路面に接地するショルダー部におけるトレッドゴムの溝深さを10mm以上にしたので、悪路走破性、耐摩耗性、耐カット・チッピング性および低発熱性を従来レベル以上に優れたものにすることができる。
【0010】
本発明において、前記硫黄を前記ジエン系ゴム100質量部に対し、1.0〜3.0質量部配合してなることが好ましく、耐カット・チッピング性をより優れたものにすることができる。
【0011】
また前記トレッドゴムの接地面が、タイヤ周方向および幅方向に連続する溝により区画されたブロック状の陸部だけからなることが好ましく、悪路走破性および耐摩耗性をより優れたものにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の空気入りタイヤの実施形態の一例を示す子午線方向の断面図である。
図2】本発明の空気入りタイヤのトレッドパターンの一例を示す説明図である。
図3】本発明の空気入りタイヤのトレッドパターンの他の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1において、空気入りタイヤは、トレッド部1、サイドウォール部2及びビード部3を有し、左右のビード部3,3間にカーカス層4が装架され、その両端部がビードコア5の周りにタイヤ内側から外側に折り返されている。トレッド部1におけるカーカス層4のタイヤ径方向外側には2層構造のベルト層6が配置され、最外側のベルト層6の外側にトレッドゴム7が配置される。トレッドゴム7は、路面に接地するショルダー部の溝深さdが10mm以上である。トレッドゴム7のショルダー部の溝深さdを10mm以上にすることにより、悪路走破性を優れたものにすることができる。ショルダー部の溝深さdは好ましくは12〜19mmであるとよい。
【0014】
トレッドゴム7は、ゴム組成物により構成される。このゴム組成物をトレッド用ゴム組成物ということがある。トレッド用ゴム組成物において、ゴム成分はジエン系ゴムであり、天然ゴム、ブタジエンゴムおよびスチレンブタジエンゴムからなる。ジエン系ゴム100質量%中、スチレンブタジエンゴムを50〜70質量%、ブタジエンゴムを20〜30質量%および天然ゴムを10〜30質量%含有する。
【0015】
スチレンブタジエンゴムの含有量は50〜70質量%、好ましくは52〜67質量%である。スチレンブタジエンゴムの含有量が50質量%未満であると、悪路走破性が低下する。またスチレンブタジエンゴムの含有量が70質量%を超えると、発熱性が大きくなり、また耐カット・チッピング性を十分に改良することができない。
【0016】
ブタジエンゴムの含有量は20〜30質量%、好ましくは22〜28質量%である。ブタジエンゴムの含有量が20質量%未満であると、悪路走破性が低下し、発熱性が大きくなる。またブタジエンゴムの含有量が30質量%を超えると、耐カット・チッピング性を十分に改良することができない。
【0017】
天然ゴムの含有量は、ジエン系ゴム100質量%中、10〜30質量%、好ましくは12〜22質量%である。天然ゴムの含有量が、10質量%未満であると耐カット・チッピング性を十分に改良することができない。天然ゴムの含有量が30質量%を超えると悪路走破性を良好なレベルに維持することができない。
【0018】
本発明では、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴムからなるジエン系ゴムの平均ガラス転移温度(Tg)を−65℃以下、好ましくは−80℃〜−65℃、より好ましくは−78℃〜−67℃にする。ゴム成分のガラス転移温度(Tg)を−65℃以下にすることにより、発熱性を小さくすることができる。
【0019】
本明細書において、ジエン系ゴムのガラス転移温度(Tg)は、構成する各ジエン系ゴムのガラス転移温度にそれぞれの質量分率を乗じた合計(ガラス転移温度の質量平均値)である。なお、すべてのジエン系ゴムの質量分率の合計を1とする。また各ジエン系ゴムのガラス転移温度(Tg)は、油展成分(オイル)を含まない状態におけるジエン系ゴムのガラス転移温度とする。ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量測定(DSC)により20℃/分の昇温速度条件によりサーモグラムを測定し、転移域の中点の温度とする。
【0020】
トレッド用ゴム組成物において、天然ゴム、ブタジエンゴムおよびスチレンブタジエンゴムの配合量の合計がジエン系ゴム100質量%となる。なお、トレッド用ゴム組成物に各種配合剤を添加するとき、希釈材料やマスターバッチのベースゴムとして、天然ゴム、ブタジエンゴムおよびスチレンブタジエンゴム以外の他のジエン系ゴムを含有する場合、そのような配合剤の使用を排除するものではなく、本発明の目的を阻害しない範囲で使用することができる。他のジエン系ゴムとしては、例えばイソプレンゴム、ブチルゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム等が挙げられる。
【0021】
トレッド用ゴム組成物は、カーボンブラックを配合することにより、ゴム組成物のゴム強度、ゴム硬度を高くし、耐摩耗性を高くすることができる。カーボンブラックは、ジエン系ゴム100質量部に対し、60〜70質量部、好ましくは62〜68質量部配合する。カーボンブラックの配合量が60質量部未満であると、ゴム組成物のゴム硬度、ゴム強度及び耐摩耗性が悪化する。カーボンブラックの配合量が70質量部を超えると発熱性が大きくなりタイヤ耐久性が低下する。
【0022】
カーボンブラックとしては、ASTM D1765により分類された等級が、好ましくはISAF級であるとよい。また、カーボンブラックの窒素吸着比表面積が70〜130m2/g、好ましくは95〜125m2/gであるとよい。窒素吸着比表面積が70m2/g未満であると、ゴム組成物のゴム硬度、ゴム強度などの機械的特性が低下し、耐摩耗性が悪化する。窒素吸着比表面積が130m2/gを超えると、発熱性が大きくなりタイヤ耐久性が低下する。カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、JIS K6217−2に準拠して、測定するものとする。
【0023】
本発明では、カーボンブラック以外の他の充填剤を配合することができる。他の充填剤としては、例えばシリカ、クレー、マイカ、タルク、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化チタン等を例示することができる。なかでもシリカ、炭酸カルシウム、クレー、酸化アルミニウムが好ましい。他の充填剤を配合することによりゴム組成物の機械的特性をより一層改良することができ、タイヤにしたときの低発熱性、耐カット性及び加工性のバランスを改良することができる。
【0024】
トレッド用ゴム組成物は、硫黄、加硫促進剤を含む。本明細書において、ジエン系ゴム100質量部に対する、硫黄の配合量をMs質量部、加硫促進剤の配合量をMa質量部とする。硫黄の配合量Msは、0.5質量部以上、好ましくは1.0〜3.0質量部、より好ましくは1.1〜2.0質量部である。硫黄の配合量Msが0.5質量部未満であると、耐カット・チッピング性および耐摩耗性が劣り、また発熱性が大きくなる。
【0025】
加硫促進剤の配合量Maは、硫黄の配合量Msとの関係で決められる。すなわち、硫黄の配合量Ms質量部に対する加硫促進剤の配合量Ma質量部の比Ma/Msが1.0〜1.3であることが必要であり、好ましくは1.1〜1.3である。硫黄に対する加硫促進剤の配合量の比Ma/Msが1.0未満であると、発熱性が大きくなる。また配合量の比Ma/Msが1.3を超えると、悪路走破性が低下し、また耐カット・チッピング性を十分に改良することができない。
【0026】
本発明において、トレッドゴムの20℃のゴム硬度は65〜70、好ましくは66〜69である。トレッドゴムのゴム硬度を65以上にすることにより、耐摩耗性を改良することができる。またゴム硬度を70以下にすることにより、悪路走破性を改良することができる。
【0027】
本発明の空気入りタイヤは、オフロード走行用の空気入りタイヤとして好適に用いることができる。この空気入りタイヤのトレッドパターンは、特に制限されるものではないが、トレッドゴムの接地面が、タイヤ周方向および幅方向に連続する溝により区画されたブロック状の陸部だけからなるとよい。タイヤ周方向に連続する陸部であるリブおよびブロックからなるトレッドパターンでも耐摩耗性および耐カット・チッピング性を改良することができるが、ブロック状の陸部だけからなるトレッドパターンにすることにより、悪路走破性をより優れたものにすることができる。
【0028】
図2は、トレッドゴムの接地面が、タイヤ周方向および幅方向に連続する溝により区画されたブロックパターンを例示する説明図である。図2の例ではすべての陸部が、ブロック11で構成されている。なお本発明において、路面に接地するショルダー部の溝21の深さを10mm以上にする。また図3に例示されるトレッドパターンでは、トレッドゴムの接地面が、ブロック11およびリブ13により構成されている。このトレッドパターンにおいても、路面に接地するショルダー部の溝21の深さを10mm以上にすることが必要である。ショルダー部の溝21の深さを10mm以上にすることにより、泥濘路などの悪路走破性を向上することができる。
【0029】
以下、実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0030】
表3に示す配合剤を共通配合とし、表1,2に示す配合からなる21種類のトレッド用ゴム組成物(実施例1〜5、標準例、比較例1〜15)を、硫黄、加硫促進剤を除く成分を1.8Lの密閉型ミキサーで170℃、5分間混練し放出したマスターバッチに、硫黄、加硫促進剤を加えてオープンロールで混練することにより調製した。なお、表3に記載した共通配合剤の添加量は、表1に記載したジエン系ゴム100質量部に対する質量部で表わした。各ゴム組成物において、ジエン系ゴムの平均ガラス転移温度を算出し、表1,2の「平均Tg」の欄に記載した。また硫黄の配合量Ms質量部に対する加硫促進剤の配合量Ma質量部の比Ma/Msを算出し、表1,2の「配合比Ma/Ms」の欄に記載した。
【0031】
得られた21種類のトレッド用ゴム組成物を、所定形状の金型中で、160℃、20分間加硫して試験片を作製し、下記に示す方法により、ゴム硬度、引張り破断強度(耐カット・チッピング性)、ランボーン摩耗試験(耐摩耗性)、および60℃のtanδ(発熱性)の評価を行った。
【0032】
ゴム硬度
得られた試験片のゴム硬度を、JIS K6253に準拠しデュロメータのタイプAにより温度20℃で測定した。得られた結果を表1,2の「ゴム硬度」の欄に記載した。
【0033】
引張り破断強度(23℃)
得られた試験片から、JIS K6251に準拠してJIS3号ダンベル型試験片を切り出した。23℃で500mm/分の引張り速度で引張り試験を行い、破断したときの強度を測定した。得られた結果は、標準例の値を100にする指数として表1,2の「耐カット・チッピング性」の欄に記載した。この指数が大きいほど引張破断強度が大きく、耐カット・チッピング性が優れることを意味する。本明細書において、耐カット・チッピング性の指数が102以上であればよいものとする。
【0034】
ランボーン磨耗(耐摩耗性)
得られた加硫ゴム試験片をJIS K6264に準拠して、ランボーン摩耗試験機(上島製作所製)を使用して、温度20℃、荷重15N、スリップ率50%、時間10分の条件で摩耗量を測定した。得られた結果は標準例の逆数を100にする指数として表1,2の「耐摩耗性」の欄に示した。この指数が大きいほど耐摩耗性が優れることを意味する。本明細書において、耐摩耗性の指数が96以上であればよいものとする。
【0035】
60℃のtanδ(発熱性)
得られた試験片を、JIS K6394に準拠して、東洋精機製作所社製粘弾性スペクトロメーターを用いて、初期歪み10%、振幅±2%、周波数20Hzの条件で、温度60℃における損失正接tanδを測定した。得られたtanδの値の逆数を算出し標準例の値を100とする指数として表1,2の「tanδ(60℃)」の欄に示した。この指数が大きいほど発熱性(60℃のtanδ)が小さく、悪路走行時に発熱によりタイヤ温度が高くなるのを抑制し、タイヤ耐久性を向上可能にすることを意味する。本明細書において、発熱性の指数が96以上であればよいものとする。
【0036】
得られたトレッド用ゴム組成物をトレッドゴムとして、空気入りタイヤ(タイヤサイズ265/70R17)を加硫成形した。これらの空気入りタイヤのトレッドパターンは、図2に記載のブロックパターンまたは図3に記載のリブ&ブロックのパターンとした。またトレッドゴムの路面に接地するショルダー部の溝深さを表1,2の「トレッド溝深さ」の欄に記載した。得られた空気入りタイヤを使用し、以下の方法で悪路走破性の試験を行った。
【0037】
悪路走破性
得られた空気入りタイヤを標準リムにリム組みし、泥濘路のテストコースを実車走行させ、そのときの操縦安定性を専門パネラーによる感応評価により採点した。得られた結果は、標準例の値を100とする指数として表1,2の「悪路走破性」の欄に示した。この指数が大きいほど悪路走破性が優れることを意味する。本明細書において、悪路走破性の指数が96以上であればよいものとする。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
なお、表1において使用した原材料の種類を下記に示す。
・NR:天然ゴム、TSR20
・SBR−1:スチレンブタジエンゴム、日本ゼオン社製Nipol 1502、非油展品
・SBR−2:スチレンブタジエンゴム、日本ゼオン社製Nipol NS116R、非油展品
・BR:ブタジエンゴム、日本ゼオン社製Nipol BR1200
・CB−1:カーボンブラック、東海カーボン社製シースト 9、窒素吸着比表面積が139m2/g
・CB−2:カーボンブラック、東海カーボン社製シースト 7HM、窒素吸着比表面積が120m2/g
・CB−3:カーボンブラック、東海カーボン社製シースト FM、窒素吸着比表面積が35m2/g
・オイル:昭和シェル石油社製エキストラクト4号S
・加硫促進剤−1:FLEXSYS社製SANTOCURE CBS
・加硫促進剤−2:FLEXSYS社製PERKACIT DPG
・硫黄:鶴見化学工業社製金華印油入 微粉硫黄
【0041】
【表2】
【0042】
なお、表2において使用した原材料の種類を下記に示す。
・老化防止剤:NICOL LIMITED社製PILFLEX 13
・ワックス:大内新興化学工業社製 サンノック
・ステアリン酸:日油社製ビーズステアリン酸
・酸化亜鉛:正同化学工業社製酸化亜鉛3種
【0043】
表1,2から明らかなように実施例1〜5のトレッド用ゴム組成物および空気入りタイヤは、ゴム硬度、耐カット・チッピング性(引張り破断強度)、耐摩耗性(ランボーン摩耗)、発熱性(60℃のtanδ)および悪路走破性が従来レベル以上に向上することが確認された。
【0044】
また表1から明らかなように、比較例1の空気入りタイヤは、ショルダー部の溝深さが10mm未満であるので、悪路走破性が劣る。
比較例2の空気入りタイヤは、トレッドゴムのゴム硬度が65未満であるので、耐摩耗性が劣る。
比較例3の空気入りタイヤは、トレッドゴムのゴム硬度が70を超えるので、悪路走破性が劣る。
比較例4の空気入りタイヤは、トレッド用ゴム組成物を構成するジエン系ゴムの平均ガラス転移温度が−65℃より高いので、耐摩耗性および発熱性が劣る。
比較例5の空気入りタイヤは、トレッド用ゴム組成物の天然ゴムの含有量が10質量%未満であるので、耐カット・チッピング性が劣る。
比較例6の空気入りタイヤは、トレッド用ゴム組成物のブタジエンゴムの含有量が20質量%未満であり、ジエン系ゴムの平均ガラス転移温度が−65℃より高いので、耐摩耗性が劣り発熱性が大きい。
比較例7の空気入りタイヤは、トレッド用ゴム組成物の天然ゴムの含有量が10質量%未満、スチレンブタジエンゴムの含有量が70質量%を超え、ブタジエンゴムの含有量が20質量%未満であり、ジエン系ゴムの平均ガラス転移温度が−65℃より高いので、耐カット・チッピング性が劣り発熱性が大きい。
比較例8の空気入りタイヤは、トレッド用ゴム組成物の天然ゴムの含有量が30質量%を超え、スチレンブタジエンゴムの含有量が50質量%未満、ブタジエンゴムの含有量が20質量%未満であるので、悪路走破性が劣る。
【0045】
また表2から明らかなように、比較例9の空気入りタイヤは、トレッド用ゴム組成物に配合したカーボンブラックの窒素吸着比表面積が130m2/gを超えるので、発熱性が大きい。
比較例10の空気入りタイヤは、トレッド用ゴム組成物に配合したカーボンブラックの窒素吸着比表面積が70m2/g未満であるので、耐カット・チッピング性および耐摩耗性が劣る。
比較例11の空気入りタイヤは、トレッド用ゴム組成物のカーボンブラックの配合量が60質量部未満であるので、耐摩耗性が劣る。
比較例12の空気入りタイヤは、トレッド用ゴム組成物のカーボンブラックの配合量が70質量部を超えるので、発熱性が大きい。
比較例13の空気入りタイヤは、トレッド用ゴム組成物における硫黄の配合量Msに対する加硫促進剤の配合量Maの比Ma/Msが1.0未満であるので、発熱性が大きい。
比較例14の空気入りタイヤは、トレッド用ゴム組成物における硫黄に対する加硫促進剤の配合量の比Ma/Msが1.3を超えるので、耐カット・チッピング性および悪路走破性が劣る。
比較例15の空気入りタイヤは、トレッド用ゴム組成物における硫黄の配合量Msが0.5質量部未満であり、かつ硫黄に対する加硫促進剤の配合量の比Ma/Msが1.3を超えるので、耐カット・チッピング性および耐摩耗性が劣り、発熱性が大きい。
【符号の簡単な説明】
【0046】
1 トレッド部
7 トレッドゴム
21 ショルダー部の溝
【要約】
【課題】悪路走破性、耐摩耗性、耐カット・チッピング性および低発熱性を従来レベル以上に改良するようにした空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】ショルダー部の溝深さdが10mm以上のトレッドゴム7を有し、トレッドゴム7を構成するゴム組成物が、スチレンブタジエンゴム50〜70質量%、ブタジエンゴム20〜30質量%および天然ゴム10〜30質量%からなるジエン系ゴム100質量部に対し、窒素吸着比表面積が70〜130m2/gのカーボンブラック60〜70質量部、硫黄0.5質量部以上、加硫促進剤を配合してなり、ジエン系ゴムの平均ガラス転移温度が−65℃以下、硫黄の配合量Ms質量部に対する加硫促進剤の配合量Ma質量部の比Ma/Msが1.0〜1.3であり、トレッドゴム7の20℃のゴム硬度が65〜70であることを特徴とする。
【選択図】図1
図1
図2
図3