(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6384654
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】ドライスポット除去装置及びドライスポット除去方法
(51)【国際特許分類】
B29C 43/12 20060101AFI20180827BHJP
B29C 73/02 20060101ALI20180827BHJP
B29C 73/24 20060101ALI20180827BHJP
B29C 43/34 20060101ALI20180827BHJP
B29C 43/56 20060101ALI20180827BHJP
B29C 70/44 20060101ALI20180827BHJP
B29C 70/54 20060101ALI20180827BHJP
B29K 105/08 20060101ALN20180827BHJP
【FI】
B29C43/12
B29C73/02
B29C73/24
B29C43/34
B29C43/56
B29C70/44
B29C70/54
B29K105:08
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-100420(P2014-100420)
(22)【出願日】2014年5月14日
(65)【公開番号】特開2015-217532(P2015-217532A)
(43)【公開日】2015年12月7日
【審査請求日】2017年2月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】村田 祥
【審査官】
一宮 里枝
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−203021(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/058802(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/00−43/58
B29C 39/00−39/44
B29C 70/00−70/88
B29C 73/00−73/34
WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形型上に載置した繊維シート積層体をフィルムで包み込んだ状態で前記フィルム内を真空引きすることで、前記フィルムと前記繊維シート積層体との間に樹脂を流し込んで該樹脂を前記繊維シート積層体に含浸させるVaRTM成形時に生じるドライスポットを除去するドライスポット除去装置であって、
筒状を成す装置本体と、
前記装置本体の中空部分に軸方向に移動可能に配置された移動体と、
前記装置本体の中空部分における前記移動体の移動を規制するロック機構と、
前記ロック機構により前記移動体の移動が規制された状態において前記装置本体の中空部分を真空引きすることで該装置本体の端部を前記ドライスポット発生箇所ないしその近傍における前記フィルムに密着させる排気手段と、
前記装置本体の中空部分を真空引きして該装置本体の端部が前記フィルムに密着した状態において前記ロック機構による移動規制を解くことで前記移動体と一体で移動して前記フィルムを貫通して前記ドライスポット内の気体を排気する貫通手段を備えているドライスポット除去装置。
【請求項2】
前記移動体は、前記装置本体の中空部分と前記排気手段とを連通する排気チューブの端部であり、前記貫通手段は、前記排気チューブの端部に配置されている請求項1に記載のドライスポット除去装置。
【請求項3】
前記移動体は、前記装置本体の中空部分と前記排気手段とを連通する排気チューブの端部に固定された移動筒体であり、前記貫通手段は、前記移動筒体又は前記排気チューブの端部のいずれかに配置されている請求項1に記載のドライスポット除去装置。
【請求項4】
成形型上に載置した繊維シート積層体をフィルムで包み込んだ状態で前記フィルム内を真空引きすることで、前記フィルムと前記繊維シート積層体との間に樹脂を流し込んで該樹脂を前記繊維シート積層体に含浸させるVaRTM成形時に生じるドライスポットを除去するドライスポット除去方法であって、
前記ドライスポット発生箇所ないしその近傍における前記繊維シート積層体と反対側の前記フィルム上に真空環境を形成した後、
前記フィルム上の真空環境を維持しつつ該フィルムに貫通孔を穿って前記ドライスポット内の気体を排気するドライスポット除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、VaRTM(Vacuum assisted Resin Transfer Molding)成形時に生じるドライスポットを除去するドライスポット除去装置及びドライスポット除去方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記したVaRTM成形は、例えば、船舶や航空機や車両のFRP部品の成形に用いられる成形法であり、成形型上に載置した繊維シート積層体をフィルムで包み込んだ状態でフィルム内を真空引きし、これによりフィルムと繊維シート積層体との間に流し込んだ樹脂を繊維シート積層体に含浸させて硬化させる成形法である。
【0003】
このVaRTM成形では、ドライスポット(ボイド)と呼ばれるこの成形法特有の樹脂未含浸部位が生じることがあり、従来において、このドライスポットを除去する除去装置としては、例えば、特許文献1に記載されたものがある。
【0004】
このドライスポット除去装置は、筒状の装置本体と、この装置本体に一体で形成されたジョイント部と、このジョイント部と吸引用管を介して接続する吸引部を有しており、このドライスポット除去装置において、繊維シート積層体に対する樹脂含浸中にドライスポットを検出した場合には、ドライスポット発生箇所ないしその近傍でフィルムに孔を形成するのに続いてこの孔に装置本体の端部を密着させて、吸引部によりジョイント部及び吸引用管を介してドライスポットの気体を排気するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5374519号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記した従来のドライスポット除去装置では、樹脂含浸中にドライスポットを検出した場合、ドライスポット発生箇所ないしその近傍でフィルムに孔を形成した後に、この孔に装置本体の端部を密着させるようにしているので、すなわち、フィルム上に真空環境を形成することなく孔を穿つようにしているので、この孔開け工程においてフィルム内に空気が入り込む虞が多分にあり、その結果、成形不良が生じてしまうという問題を有しており、この問題を解決することが従来の課題となっていた。
【0007】
本発明は、上記した従来の課題に着目してなされたもので、成形不良が生じる懸念がなく、樹脂含浸中に生じるドライスポットを確実に除去することが可能であるドライスポット除去装置及びドライスポット除去方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、成形型上に載置した繊維シート積層体をフィルムで包み込んだ状態で前記フィルム内を真空引きすることで、前記フィルムと前記繊維シート積層体との間に樹脂を流し込んで該樹脂を前記繊維シート積層体に含浸させるVaRTM成形時に生じるドライスポットを除去するドライスポット除去装置であって、筒状を成す装置本体と、前記装置本体の中空部分に軸方向に移動可能に配置された移動体と、前記装置本体の中空部分における前記移動体の移動を規制するロック機構と、前記ロック機構により前記移動体の移動が規制された状態において前記装置本体の中空部分を真空引きすることで該装置本体の端部を前記ドライスポット発生箇所ないしその近傍における前記フィルムに密着させる排気手段と、前記装置本体の中空部分を真空引きして該装置本体の端部が前記フィルムに密着した状態において前記ロック機構による移動規制を解くことで前記移動体と一体で移動して前記フィルムを貫通して前記ドライスポット内の気体を排気する貫通手段を備えている構成としている。
【0009】
また、本発明の第2の態様において、前記移動体は、前記装置本体の中空部分と前記排気手段とを連通する排気チューブの端部であり、前記貫通手段は、前記排気チューブの端部に配置されている構成とし、本発明の第3の態様において、前記移動体は、前記装置本体の中空部分と前記排気手段とを連通する排気チューブの端部に固定された移動筒体であり、前記貫通手段は、前記移動筒体又は前記排気チューブの端部のいずれかに配置されている構成としている。
【0010】
一方、本発明に係るドライスポット除去方法は、成形型上に載置した繊維シート積層体をフィルムで包み込んだ状態で前記フィルム内を真空引きすることで、前記フィルムと前記繊維シート積層体との間に樹脂を流し込んで該樹脂を前記繊維シート積層体に含浸させるVaRTM成形時に生じるドライスポットを除去するドライスポット除去方法であって、前記ドライスポット発生箇所ないしその近傍における
前記繊維シート積層体と反対側の前記フィルム上に真空環境を形成した後、前記フィルム上の真空環境を維持しつつ該フィルムに貫通孔を穿って前記ドライスポット内の気体を排気する構成としている。
【0011】
本発明に係るドライスポット除去装置において、ドライスポット発生箇所の直上のフィルムに装置本体の端部を密着させることが望ましいが、ドライスポット発生箇所の直上が装置本体の端部よりも狭隘であったり、稜線にかかっていたり、突起上であったりした場合には、ドライスポット発生箇所の近傍に装置本体の端部を密着させても構わない。
この際、排気手段によってドライスポット内の気体を排気し且つドライスポット内に周囲の樹脂を引き込んで充填し得る範囲をドライスポット発生箇所の近傍と規定する。
【0012】
本発明に係るドライスポット除去装置では、VaRTM成形時における樹脂含浸中にドライスポットが発生した場合、ドライスポット発生箇所ないしその近傍に装置本体の端部をセットし、シールテープ等の接着手段で装置本体の端部をフィルムに密着させる。この際、ロック機構により移動体を装置本体の中空部分における所定の待機位置に固定する。
【0013】
次いで、排気手段により装置本体の中空部分を真空引きすることで、ドライスポット発生箇所ないしその近傍におけるフィルム上に真空環境を形成した後、ロック機構による移動規制を解くことで貫通手段を移動体と一体で移動させると、貫通手段がフィルムを貫通してこれにより形成されたフィルムの孔からドライスポット内の気体が排気され、ドライスポット内に周囲の樹脂が引き込まれてドライスポットが除去されることとなる。
【0014】
この孔開けの間、装置本体の中空部分の真空状態が維持されているので、すなわち、フィルム上に真空環境が形成されているので、貫通手段により形成されたフィルムの孔からフィルム内に空気が入り込むといったことが回避され、その結果、成形不良が生じる懸念が払拭されることとなる。
【0015】
また、本発明に係るドライスポット除去装置において、装置本体の中空部分と排気手段とを連通する排気チューブの端部を移動体とし、この排気チューブの端部に貫通手段を配置するように成すと、装置本体の小型化が図られることとなり、ドライスポット発生箇所の直上に装置本体の端部を配置し易くなる。
【0016】
さらに、本発明に係るドライスポット除去装置において、排気チューブの端部に固定された移動筒体を移動体とし、移動筒体又は排気チューブの端部のいずれかに貫通手段を配置するように成すと、移動筒体を利用することでロック機構の構造の容易化が図られることとなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るドライスポット除去装置では、新たな成形不良が発生する懸念を払拭したうえで、樹脂含浸中に生じるドライスポットを確実に除去することが可能であるという非常に優れた効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施例によるドライスポット除去装置によりドライスポットを除去している状況を示すFRP部品製造装置の断面説明図である。
【
図2】
図1のドライスポット除去装置の分解斜視説明図である。
【
図3】
図1のドライスポット除去装置の作動前の状況を示す断面説明図(a)及び作動中の状況を示す断面説明図(b)である。
【
図4】本発明の他の実施例によるドライスポット除去装置の分解斜視説明図である。
【
図5】
図4のドライスポット除去装置の作動前の状況を示す断面説明図(a)及び作動中の状況を示す断面説明図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1〜
図3は、本発明の一実施例によるドライスポット除去装置を示している。
【0020】
図1に示すように、VaRTM成形時に生じるドライスポットを除去するドライスポット除去装置10が用いられるFRP部品製造装置1は、成形型2(実際は複雑な形状の場合がほとんどであるが、簡単のため平板状としている。)と、この成形型2上に載置した繊維シート積層体Wを包み込む網目状の樹脂流動媒体4と、繊維シート積層体Wを樹脂流動媒体4とともに包み込む真空バッグフィルム5を備えており、繊維シート積層体Wと網目状の樹脂流動媒体4との間には、成形終了後の繊維シート積層体Wから樹脂流動媒体4を剥がし易くするための離型シート3が介在させてある。
【0021】
このFRP部品製造装置1の真空バッグフィルム5には、樹脂注入口5a及び排気口5bが設けられており、樹脂注入口5aには、弁7を介してタンク6内の樹脂Pを真空バッグフィルム5内に供給する注入チューブ6aが接続してあり、一方、排気口5bは、排気チューブ8bを介してドレンタンク8及び真空ポンプ9に接続している。
【0022】
このFRP部品製造装置1では、成形型2上に載置した繊維シート積層体Wを真空バッグフィルム5で包み込み、この状態で真空ポンプ9を作動させて真空バッグフィルム5内を真空引きすることで、
図1に破線の矢印で示すように、真空バッグフィルム5内の気体を排気しつつ、
図1に実線の矢印で示すように、真空バッグフィルム5と繊維シート積層体Wとの間の樹脂流動媒体4に樹脂Pを流し込んで繊維シート積層体Wに含浸させて硬化させるようになっている。
【0023】
このVaRTM成形時に生じるドライスポットを除去するドライスポット除去装置10は、
図2に示すように、円筒状を成す装置本体11と、この装置本体11の中空部分に軸方向に移動可能に嵌合配置された排気チューブ13の一端部(移動体)13aと、装置本体11の中空部分における排気チューブ13の一端部13aの移動を規制するロック機構と、このロック機構により排気チューブ13の一端部13aの移動が規制された状態において装置本体11の中空部分を真空引きすることでこの装置本体11の端部をドライスポットDSの発生箇所の直上における真空バッグフィルム5に密着させる排気手段と、排気チューブ13の一端部13aの端面に配置された刃部(貫通手段)17を備えている。
【0024】
この場合、排気チューブ13の他端部13bは、FRP部品製造装置1のドレンタンク8に接続され、装置本体11の中空部分を真空引きする排気手段には、FRP部品製造装置1の真空ポンプ9が用いられている。
【0025】
また、装置本体11の中空部分における排気チューブ13の一端部13aの移動を規制するロック機構は、装置本体11の先端における内周縁に形成された環状溝11aに配置される押圧リング14と、装置本体11の先端に配置されて該先端に形成されたねじ孔11bにねじ15をねじ込むことで固定される蓋体16を具備している。
【0026】
このロック機構では、
図3(a)に示すように、ねじ15を締め付けて蓋体16を装置本体11の先端に固定することで、これにより環状溝11a内で変形する押圧リング14を排気チューブ13の一端部13aに押し付けて、装置本体11の中空部分における移動を規制し、一方、
図3(b)に示すように、ねじ15を緩めて蓋体16を装置本体11の先端から浮かせることで、押圧リング14の排気チューブ13の一端部13aに対する押付け状態を緩和して、排気チューブ13の一端部13aの移動規制を解くようになっている。
【0027】
つまり、このドライスポット除去装置10では、装置本体11の中空部分を真空引きしてその端部を真空バッグフィルム5に密着させた状態において、ロック機構による移動規制を解くことで排気チューブ13の端部13aと一体で刃部17を移動させて真空バッグフィルム5を貫通させ、これにより形成された真空バッグフィルム5の孔HからドライスポットDS内の気体を排気するようになっている。なお、
図3における符号18はシールテープである。
【0028】
このドライスポット除去装置10では、VaRTM成形時における樹脂含浸中にドライスポットDSが発生した場合、ドライスポットDSの発生箇所(或いはその近傍)に装置本体11の端部をセットし、シールテープ18で装置本体11の端部を真空バッグフィルム5に密着させる。
【0029】
この際、ロック機構のねじ15を締め付けて蓋体16を装置本体11の先端に固定することにより、環状溝11a内で変形する押圧リング14を排気チューブ13の一端部13aに押し付けて、装置本体11の中空部分における排気チューブ13の一端部13aの移動を規制して所定の待機位置に固定する。
【0030】
次いで、この状態で真空ポンプ9を作動させて装置本体11の中空部分を真空引きすることで、ドライスポットDSの発生箇所(或いはその近傍)における真空バッグフィルム5上に真空環境を形成した後、ロック機構のねじ15を緩めて蓋体16を装置本体11の先端から浮かせることにより、押圧リング14の排気チューブ13の一端部13aに対する押し付け状態を緩和して、排気チューブ13の一端部13aの移動規制を解いて刃部17を一体的に移動させると、刃部17が真空バッグフィルム5を貫通してこれにより形成された孔HからドライスポットDS内の気体が排気され、ドライスポットDS内に周囲の樹脂Pが引き込まれてドライスポットDSが除去されることとなる。
【0031】
この孔Hを開ける間、装置本体11の中空部分の真空状態が維持されているので、すなわち、真空バッグフィルム5上に真空環境が形成されているので、刃部17により形成された真空バッグフィルム5の孔Hから真空バッグフィルム5内に空気が入り込むといったことが回避され、その結果、新たな成形不良が生じる懸念が払拭されることとなる。
【0032】
また、この実施例に係るドライスポット除去装置10では、装置本体11の中空部分と真空ポンプ9とを連通する排気チューブ13の一端部13aを移動体とし、この排気チューブ13の一端部13aに刃部17を配置しているので、装置本体11の小型化が図られることとなり、ドライスポットDSの発生箇所の直上に装置本体11を配置し易くなる。
【0033】
図4及び
図5は、本発明の他の実施例によるドライスポット除去装置を示しており、
図4に示すように、この実施例によるドライスポット除去装置20では、排気チューブ13の一端部13aに固定した移動筒体22を移動体として、排気チューブ13の一端部13aに刃部17を配置するようにしている。
【0034】
また、この実施例によるドライスポット除去装置20のロック機構は、移動筒体22の外周壁に形成した径方向のピン孔22bと、このピン孔22bに取り外し可能に嵌合するピン25を具備しており、このロック機構では、
図5(a)に示すように、移動筒体22のピン孔22bに嵌合したピン25を装置本体21の先端に引っ掛けることで、装置本体21の中空部分における排気チューブ13の一端部13a及び移動筒体22の移動を規制し、一方、
図5(b)に示すように、ピン孔22bからピン25を離脱させることで、排気チューブ13の一端部13a及び移動筒体22の移動規制を解くようになっている。なお、
図4及び
図5における符号22aは装置本体21の外周壁に形成された環状溝であり、符号24はこの環状溝22aに嵌め込まれたOリングである。
【0035】
この実施例によるドライスポット除去装置20では、VaRTM成形時における樹脂含浸中にドライスポットDSが発生した場合、ドライスポットDSの発生箇所(或いはその近傍)に装置本体21の端部をセットし、シールテープ18で装置本体21の端部を真空バッグフィルム5に密着させる。
【0036】
この際、ロック機構の移動筒体22のピン孔22bに嵌合したピン25を装置本体21の先端に引っ掛けることにより、装置本体21の中空部分における排気チューブ13の一端部13a及び移動筒体22の移動を規制して所定の待機位置に固定する。
【0037】
次いで、この状態で真空ポンプ9を作動させて装置本体21の中空部分を真空引きすることで、ドライスポットDSの発生箇所(或いはその近傍)における真空バッグフィルム5上に真空環境を形成した後、ロック機構のピン孔22bからピン25を離脱させることにより、排気チューブ13の一端部13a及び移動筒体22の移動規制を解いて刃部17を一体的に移動させると、刃部17が真空バッグフィルム5を貫通してこれにより形成された孔HからドライスポットDS内の気体が排気され、ドライスポットDS内に周囲の樹脂Pが引き込まれてドライスポットDSが除去されることとなる。
【0038】
この孔Hを開ける間も、装置本体21の中空部分の真空状態が維持されているので、すなわち、真空バッグフィルム5上に真空環境が形成されているので、刃部17により形成された真空バッグフィルム5の孔Hから真空バッグフィルム5内に空気が入り込むといったことが回避され、その結果、成形不良が生じる懸念が払拭されることとなる。
【0039】
また、この実施例に係るドライスポット除去装置20では、排気チューブ13の一端部13aに固定した移動筒体22を移動体として、排気チューブ13の一端部13aに刃部17を配置しているので、上記したように、移動筒体22を利用したロック機構の構築が可能となる。すなわち、移動筒体22に形成したピン孔22bに対してピン25を着脱するだけで、排気チューブ13の一端部13a及び移動筒体22の移動規制及び規制解除を行い得ることとなる。
【0040】
本発明に係るドライスポット除去装置及びドライスポット除去方法の構成は、上記した実施例に限定されるものではなく、他の構成として、例えば、貫通手段に針を用いた構成とすることが可能である。
【符号の説明】
【0041】
2 成形型
5 真空バッグフィルム(フィルム)
9 真空ポンプ(排気手段)
10,20 ドライスポット除去装置
11,21 装置本体
11b ねじ孔(ロック機構)
13 排気チューブ
13a 排気チューブの一端部(移動体)
14 押圧リング(ロック機構)
15 ねじ(ロック機構)
16 蓋体(ロック機構)
17 刃部(貫通手段)
22 移動筒体(移動体)
22b ピン孔(ロック機構)
25 ピン(ロック機構)
DS ドライスポット
H 孔(貫通孔)
P 樹脂
W 繊維シート積層体