特許第6384666号(P6384666)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6384666
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】発熱体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/10 20060101AFI20180827BHJP
   H05B 3/16 20060101ALI20180827BHJP
   H05B 3/02 20060101ALI20180827BHJP
   C03B 7/096 20060101ALN20180827BHJP
【FI】
   H05B3/10 C
   H05B3/16
   H05B3/02 A
   !C03B7/096
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-255324(P2014-255324)
(22)【出願日】2014年12月17日
(65)【公開番号】特開2016-115620(P2016-115620A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2017年7月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168550
【弁理士】
【氏名又は名称】友廣 真一
(72)【発明者】
【氏名】福西 晃朗
(72)【発明者】
【氏名】植西 寛
【審査官】 根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−086013(JP,A)
【文献】 特表2003−523306(JP,A)
【文献】 特開平08−081785(JP,A)
【文献】 特公昭46−040330(JP,B1)
【文献】 特開平09−188527(JP,A)
【文献】 特開2002−348174(JP,A)
【文献】 特開平05−315057(JP,A)
【文献】 特開平05−089946(JP,A)
【文献】 特開昭63−297926(JP,A)
【文献】 特開平08−185069(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/02− 3/18
H05B 3/40− 3/82
C23C 4/00− 6/00
C23C14/00−14/58
C04B35/56−35/599
C04B37/00−37/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱部及び端子部を有し、MoSi2を70wt%以上含む基材と、
前記端子部の表面に形成され、結晶を含む酸化物層とを備え
前記基材と前記酸化物層との間にガラス層が形成されていることを特徴とする発熱体。
【請求項2】
前記酸化物層が、SiO2を40〜60wt%、Al23を15〜40wt%、アルカリ金属酸化物を合量で5〜30wt%含むことを特徴とする請求項1に記載の発熱体。
【請求項3】
前記酸化物層の厚みが、前記ガラス層の厚みより厚いことを特徴とする請求項1又は2に記載の発熱体。
【請求項4】
発熱部及び端子部を有し、MoSi2を70wt%以上含む基材に対して、
前記端子部の表面に、加熱によって結晶を含む酸化物層を形成する材料を塗布し、
前記材料が、アルミノシリケート塩を35〜50wt%、アルカリ金属水酸化物を合量で1〜15wt%含むことを特徴とする発熱体の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜の何れか1項に記載の発熱体を用いて溶融ガラスを加熱する工程を備えることを特徴とするガラス物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばガラス物品の製造工程でヒーターとして用いられる発熱体及びその製造方法の改良技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばガラス物品の製造工程でヒーターとして用いられる発熱体として、MoSi2を主成分とするものが知られている。
【0003】
この発熱体は、1000℃以上の高温域では、MoSi2のSiが選択的に酸化され、表面に緻密でSiO2Richな酸化物保護膜が形成されるため、安定して使用できる。
【0004】
しかし、400〜600℃の低温域では、MoとSiが同時に酸化し、MoO3とSiO2から成る多孔質層が形成される「ペスト化」と呼ばれる酸化が、継続して進行する。このペスト化が進行した場合、ペスト化した箇所が脆くなり、その箇所で折損する可能性がある。
【0005】
MoSi2を主成分とする発熱体は、一般に、発熱部及び端子部を有する。端子部は、発熱部より温度が低いため、ペスト化が進行する可能性が高い。そのため、この種の発熱体では、発熱部より端子部のペスト化が寿命を決めるケースが多々ある。従って、この種の発熱体は、特に、端子部のペスト化を防止することが要求されている。
【0006】
このようなペスト化を防止する方法として、例えば特許文献1では、Cr、Ni、Rh、Ir、Pt及びAuから選択された金属の層を発熱体上に形成することが提案されている。つまり、この金属層の形成により、金属層が発熱体と酸素の接触を防止し、ペスト化を防止する。そして、特許文献1では、この金属層の形成方法として、溶射、めっき、イオンプレーティング等が挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−81785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、溶射、めっき、イオンプレーティング等は、所定の設備や所定の作業を必要とし、製造コストが増大する事態を招く。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑み、発熱体の製造コストを抑制しつつ、ペスト化を防止することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために創案された本発明に係る発熱体は、発熱部及び端子部を有し、MoSi2を70wt%以上含む基材と、前記端子部の表面に形成され、結晶を含む酸化物層とを備えることに特徴づけられる。
【0011】
この構成では、端子部の表面に、結晶を含む酸化物層が形成されているため、結晶を含む酸化物層が、酸素が端子部(基材)の表面に接触することを防止し、これにより、ペスト化が問題となり易い端子部のペスト化を抑制することができる。そして、結晶を含む酸化物層は、その原料を端子部の表面に塗布することで形成することができる。この原料の塗布方法には、例えば刷毛塗りやスプレー等を用いることができ、酸化物層を形成するために、高価な設備や複雑な作業が必要にならないようにすることができる。従って、本発明に係る発熱体では、製造コストを抑制することが可能である。
【0012】
上記の構成において、前記酸化物層が、SiO2を40〜60wt%、Al23を15〜40wt%、アルカリ金属酸化物を合量で5〜30wt%含むことが好ましい。
【0013】
この構成であれば、SiO2やAl23は、耐熱性があり、酸化物層の耐熱性を向上できる。また、アルカリ金属酸化物によって、酸化物層内のSiO2やAl23の結晶同士を接着するガラス部分が構成されるので、酸化物層の焼結性を向上し、酸化物層の強度を向上できる。
【0014】
上記の構成において、前記基材と前記酸化物層との間にガラス層が形成されていることが好ましい。
【0015】
この構成であれば、ガラス層が酸化物層と基材とを接着する効果を有するため、酸化物層を基材により強固に取り付けることができる。
【0016】
上記の構成において、前記酸化物層の厚みが、前記ガラス層の厚みより厚いことが好ましい。
【0017】
この構成であれば、ガラス層より酸素を透過し難い酸化物層が厚いので、ペスト化防止の効果がより確実に得られる。また、酸化物層より基材との熱膨張率差が大きいガラス層が薄いので、ガラス層が割れにくくなり、その結果、酸化物層が剥落することを抑制できる。
【0018】
また、前記課題を解決するために創案された本発明に係る発熱体の製造方法は、発熱部及び端子部を有し、MoSi2を70wt%以上含む基材に対して、前記端子部の表面に、加熱によって結晶を含む酸化物層を形成する材料を塗布することに特徴づけられる。
【0019】
この構成では、冒頭の構成の発熱体を製造することができ、その結果、冒頭の構成の発熱体と実質的に同様の効果を得ることができる。
【0020】
上記の構成において、前記材料が、アルミノシリケート塩を35〜50wt%、アルカリ金属水酸化物を合量で1〜15wt%含むことが好ましい。
【0021】
また、ガラス物品の製造方法において、上記の構成の発熱体を用いて溶融ガラスを加熱する工程を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
以上のように本発明によれば、発熱体の製造コストを抑制しつつ、ペスト化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態に係る発熱体を示す概略正面図である。
図2】発熱体の端子部における表面付近の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態について図面に基づき説明する。
【0025】
図1は、本発明の実施形態に係る発熱体1を示す概略正面図である。本実施形態では、この発熱体1は、ガラス物品の製造工程において、フィーダーを流れる溶融ガラスを加熱するためのヒーターとして用いられるものであるが、例えば、ガラス原料を溶融するためのヒーターとして用いられるものであってもよい。
【0026】
発熱体1は、棒状の基材2を備え、基材2は、発熱部3と、該発熱部3の両端に設けられた発熱部3より大径の端子部4とを有する。本実施形態では、発熱部3は、U字形状であるが、これに限定されるものでは無く、直線形状、波型形状等であってもよい。基材2は、MoSi2を70wt%以上含む。基材2の残りの成分としては、例えば、ガラスやセラミックス等が挙げられる。
【0027】
そして、発熱体1は、端子部4の表面に形成され、結晶を含む酸化物層5を備える。端子部4において、発熱部3とは反対側の端部側には、電気接触を良好とするためにアルミ層6が形成されており、このアルミ層6より発熱部3側の所定の領域に酸化物層5が形成されている。図示例では、酸化物層5が形成されている領域は、端子部4におけるアルミ層6より発熱部3側の一部領域であるが、端子部4におけるアルミ層6より発熱部3側の全領域であってもよい。
【0028】
酸化物層5は、例えばSiO2やAl23等の結晶が、ガラス成分によって結合された構造を有する。酸化物層5について、基材2との熱膨張係数の差は、5×10-6/℃以内であることが好ましい。酸化物層5と基材2の熱膨張係数の差が、5×10-6/℃を超えると、使用時に、基材2との熱膨張の差で酸化物層5が割れたり、剥落したりする可能性がある。この観点から、酸化物層5と基材2の熱膨張係数の差は、3×10-6/℃以内であることがより好ましく、1×10-6/℃以内であることが最も好ましい。なお、基材2の熱膨張係数は、7×10-6/℃〜8×10-6/℃である。
【0029】
図2に示すように、端子部4(基材2)と酸化物層5との間にガラス層7が形成されている。酸化物層5は、ガラス層7によって基材2と結合されている。酸化物層5の厚みTaは、ガラス層7の厚みTbより厚い。
【0030】
酸化物層5の厚みTaは、40μm〜300μmが好ましい。厚みTaが40μm未満の場合、ペスト化防止の効果が十分に得られない可能性がある。厚みTaが300μmを超える場合、酸化物層5とガラス層7の厚みムラが増大する可能性がある。これらの観点から、厚みTaは、70μm〜240μmがより好ましく、80μm〜180μmが最も好ましい。
【0031】
ガラス層7の厚みTbは、0.5μm〜20μmが好ましい。厚みTbが0.5μm未満の場合、酸化物層5と基材2を接着する効果が十分に得られず、酸化物層5が剥落する可能性がある。厚みTbが20μmを超える場合、基材との熱膨張率差が大きいガラス層が割れ易くなって酸化物層5が剥落する可能性がある。これらの観点から、厚みTbは、1μm〜15μmがより好ましく、3μm〜10μmが最も好ましい。
【0032】
酸化物層5は、SiO2を40〜60wt%、Al23を15〜40wt%、アルカリ金属酸化物を合量で5〜30wt%含むことが好ましい。本実施形態では、アルカリ金属酸化物の含有量は、Na2OとK2Oの合量である。しかし、アルカリ金属酸化物の含有量は、Na2OとK2Oに別のアルカリ金属酸化物を加えた合量、Na2OとK2O以外のアルカリ金属酸化物の合量であってもよい。
【0033】
SiO2の含有量が40wt%未満の場合、酸化物層5の耐熱性が低下する可能性がある。SiO2の含有量が60wt%を超える場合、焼結性が低下する可能性がある。Al23の含有量が15wt%未満の場合、酸化物層5の耐熱性が低下する可能性がある。Al23の含有量が40wt%を超える場合、焼結性が低下する可能性がある。アルカリ金属酸化物の含有量(合量)が5wt%未満の場合、結晶同士を接着する部分が十分に形成されず、酸化物層5の焼結性が低下し、酸化物層5の強度が低下する可能性がある。アルカリ金属酸化物の含有量(合量)が30wt%を超える場合、耐熱性が低下する可能性がある。
【0034】
これらの観点から、酸化物層5は、SiO2を42〜58wt%、Al23を20〜38wt%、アルカリ金属酸化物を合量で7〜25wt%含むことがより好ましい。そして、酸化物層5は、SiO2を45〜55wt%、Al23を25〜35wt%、アルカリ金属酸化物を合量で10〜20wt%含むことが最も好ましい。
【0035】
ガラス層7は、SiO2を65〜75wt%、Al23を1〜10wt%、アルカリ金属酸化物を合量で20〜35wt%含むことが好ましい。本実施形態では、アルカリ金属酸化物の含有量は、Na2OとK2Oの合量である。しかし、アルカリ金属酸化物の含有量は、Na2OとK2Oに別のアルカリ金属酸化物を加えた合量、Na2OとK2O以外のアルカリ金属酸化物の合量であってもよい。
【0036】
SiO2の含有量が65wt%未満の場合、ガラス層7の耐熱性が低下する可能性がある。SiO2の含有量が75wt%を超える場合、ガラス層7が十分形成されない可能性がある。Al23の含有量が1wt%未満の場合、ガラス層7の耐熱性が低下する可能性がある。Al23の含有量が10wt%を超える場合、ガラス層7が十分形成されない可能性がある。アルカリ金属酸化物の含有量(合量)が20wt%未満の場合、ガラス層7が十分に形成されず、酸化物層5が剥落する可能性がある。アルカリ金属酸化物の含有量(合量)が35wt%を超える場合、ガラス層7の耐熱性が低下する可能性がある。
【0037】
これらの観点から、ガラス層7は、SiO2を67〜73wt%、Al23を3〜8wt%、アルカリ金属酸化物を合量で22〜33wt%含むことがより好ましい。そして、ガラス層7は、SiO2を68〜71wt%、Al23を4〜6wt%、アルカリ金属酸化物を合量で24〜26wt%含むことが最も好ましい。
【0038】
次に、発熱体1の製造方法について説明する。基材2及びアルミ層6は、公知技術により製造できるものなので説明を省略し、ここでは、酸化物層5とガラス層7の形成方法について説明する。
【0039】
最初に、基材2の端子部4の表面に、加熱によって結晶を含む酸化物層を形成する材料(以下、酸化物層原料と記す)を塗布する。塗布方法は、例えば、刷毛塗りやスプレー等である。
【0040】
次に、酸化物層原料を塗布した基材2に乾燥処理を行なう。乾燥処理は、例えば、室温〜100℃で、0.5〜4h行なう。
【0041】
その後、酸化物層原料を塗布した基材2に加熱処理を行なう。加熱処理は、例えば、300〜400℃で、0.5〜2h行なう。これで、酸化物層5とガラス層7の形成が完了する。なお、本実施形態では、ガラス層7は、酸化物層原料由来の成分と基材2由来のガラス成分とが一体化して形成されている。
【0042】
塗布直後の酸化物層原料の層の厚みは、50μm〜300μmが好ましい。酸化物層原料の層の厚みが50μm未満の場合、形成される酸化物層5とガラス層7が十分に形成されない可能性がある。酸化物層原料の層の厚みが300μmを超える場合、成される酸化物層5とガラス層7の厚みにムラが生じる可能性がある。これらの観点から、酸化物層原料の層の厚みは、80μm〜250μmがより好ましく、100μm〜200μmが最も好ましい。
【0043】
酸化物層原料は、アルミノシリケート塩を35〜50wt%、アルカリ金属水酸化物を合量で1〜15wt%含むことが好ましい。アルミノシリケート塩としては、例えば、アルミノシリケートのアルカリ金属塩が挙げられ、アルカリ金属としては、例えば、Na、K等が挙げられる。また、この場合、アルミノシリケートのアルカリ金属塩は、組成中にH2Oを含んでいてもよい。
【0044】
本実施形態では、アルカリ金属水酸化物の含有量は、NaOHとKOHの合量である。しかし、アルカリ金属水酸化物の含有量は、NaOHとKOHに別のアルカリ金属水酸化物を加えた合量、NaOHとKOH以外のアルカリ金属水酸化物の合量であってもよい。
【0045】
アルミノシリケート塩の含有量が35wt%未満の場合、形成される酸化物層5の耐熱性が低下する可能性がある。アルミノシリケート塩の含有量が50wt%を超える場合、焼結性が低下する可能性がある。アルカリ金属水酸化物の含有量(合量)が1wt%未満の場合、酸化物層5の結晶同士を接着するガラス部分が十分に形成されず、形成される酸化物層5の焼結性が低下し、形成される酸化物層5の強度が低下する可能性がある。また、ガラス層7が十分に形成されず、酸化物層5が剥落する可能性もある。アルカリ金属水酸化物の含有量(合量)が15wt%を超える場合、耐熱性が低下する可能性がある。
【0046】
これらの観点から、酸化物層原料は、アルミノシリケート塩を37〜44wt%、アルカリ金属水酸化物を合量で4〜14wt%含むことがより好ましい。そして、酸化物層原料は、アルミノシリケート塩を40〜43wt%、アルカリ金属水酸化物を合量で6〜13wt%含むことが最も好ましい。
【0047】
また、酸化物層原料は、上述の成分に加えて、Al23を1〜8wt%含むことが好ましい。Al23の含有量が1wt%未満の場合、形成される酸化物層5の耐熱性が低下する可能性がある。Al23の含有量が8wt%を超える場合、焼結性が低下する可能性がある。これらの観点から、酸化物層原料は、上述の成分に加えて、Al23を2〜7wt%含むことがより好ましい。そして、酸化物層原料は、上述の成分に加えて、Al23を3〜5wt%含むことが最も好ましい。
【0048】
また、酸化物層原料は、上述の成分に加えて、非晶質シリカを1〜8wt%含むことが好ましい。非晶質シリカの含有量が1wt%未満の場合、酸化物層5の結晶同士を接着するガラス部分が十分に形成されず、形成される酸化物層5の焼結性が低下し、形成される酸化物層5の強度が低下する可能性がある。また、ガラス層7が十分に形成されず、酸化物層5が剥落する可能性もある。非晶質シリカの含有量が8wt%を超える場合、耐熱性が低下する可能性がある。これらの観点から、酸化物層原料は、上述の成分に加えて、非晶質シリカを2〜7wt%含むことがより好ましい。そして、酸化物層原料は、上述の成分に加えて、非晶質シリカを3〜5wt%含むことが最も好ましい。
【0049】
また、酸化物層原料は、上述の成分に加えて、水を35〜40wt%含むことが好ましい。水の含有量が35wt%未満の場合、酸化物原料の分散性が悪化する。また、塗布方法によっては、水を添加し、粘度を下げてもよい。
【0050】
また、酸化物層原料は、上述の成分に加えて、アクリル樹脂等の接着剤を1〜8wt%含むことが好ましい。接着剤の含有量が1wt%未満の場合、乾燥時に原料が基材2から剥落する可能性がある。接着剤の含有量が8wt%を超える場合、加熱時に酸化物層5内に接着剤が残存する可能性がある。これらの観点から、酸化物層原料は、上述の成分に加えて、接着剤を2〜7wt%含むことがより好ましい。そして、酸化物層原料は、上述の成分に加えて、接着剤を3〜5wt%含むことが最も好ましい。
【0051】
また、酸化物層原料は、上述の成分に加えて、添加物として、酸化コバルトを、例えば1〜5wt%含んでもよい。また、酸化物層原料は、上述の成分に加えて、添加物として、アンチモン化合物、3価クロム化合物等の顔料を、例えば1〜5wt%含んでもよい。
【0052】
以上のように構成された発熱体1では、以下の効果を享受できる。
【0053】
発熱体1では、端子部4の表面に、結晶を含む酸化物層5が形成されているため、酸化物層5が、酸素が端子部4(基材2)の表面に接触することを防止し、これにより、ペスト化が問題となり易い端子部4のペスト化を抑制することができる。そして、酸化物層5は、酸化物層原料を端子部4の表面に塗布することで形成することができる。この酸化物層原料の塗布方法には、例えば刷毛塗りやスプレー等を用いることができ、酸化物層5を形成するために、高価な設備や複雑な作業が必要にならないようにすることができる。従って、本実施形態に係る発熱体1では、製造コストを抑制することが可能である。
【0054】
本発明は、上記実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲で様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態では、発熱体1は、ガラス物品の製造工程でヒーターとして用いられていたが、ガラス物品の製造工程以外の場所で用いられてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 発熱体
2 基材
3 発熱部
4 端子部
5 酸化物層
6 アルミ層
7 ガラス層
Ta 酸化物層の厚み
Tb ガラス層の厚み
図1
図2