(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記バイオインピーダンス測定法は、単一周波数バイオインピーダンス測定であり、又は、前記多周波数バイオインピーダンス測定はBCMによるものである、請求項1記載の方法。
前記器械は、前記患者の前記ドライウェイトを、前記第2の期間における抵抗曲線及び/又は標準化抵抗率を分析することによって推定する、請求項1〜8のうちいずれか一に記載の方法。
前記器械は、抵抗を、ふくらはぎバイオインピーダンス分光法によって測定すると共に/或いは前記患者の前記標準化抵抗率は、標準化ふくらはぎ抵抗率である、請求項9記載の方法。
前記セントラルサーバは、前記伝送データを、前記患者及び/又は特定の患者群について統計値及び/又は結論を導き出すことができるよう処理する、請求項12記載の方法。
【背景技術】
【0003】
流体状態は、長期間透析患者における重要な課題であり、臨床上の結果に関連している。事実、患者の流体状態の知識は、血液透析患者並びに腹膜透析患者を効果的に管理する上で必要不可欠である。慢性流体過負荷は、左心室肥大、左心室拡張、動脈性高血圧及び最終的にうっ血性心不全の発生と関連している。慢性流体過負荷に加えて高い透析間体重増加は、心臓血管系の負担を一段と増大させる。最近における研究結果の示すところによれば、流体過負荷は、実際には死亡率の増加にも関連付けられる場合さえある(ワイズマン・ブイ等(Wizemann V. et al.),「ザ・モータリティ・リスク・オブ・オーバーハイドレーション・イン・ヒモダイアリシス・ペイシェンツ(The mortality risk of overhydration in haemodialysis patients)」,ネフロロジー・ダイアリシス・トランスプランテーション(Nephrol. Dial. Transplant),2009年,第24巻,p.1574〜1579)。流体状態の管理では、ナトリウム摂取の制限及び可能な程度までの且つ経時的な患者のドライウェイトに等しい透析後体重の達成が必要である。
【0004】
ドライウェイトの算定、達成及び保守は、ドライウェイトを推定するための適当な技術が存在しないために課題となっている。その結果、臨床的な透析後標的体重に関する医師の処方は、通常、臨床的インジケータに基づいており、残念ながら、情報を得た上での推測に過ぎない場合が多い。流体過負荷は、過剰細胞外流体量(ECV)として表される場合がある。体重を参照するための同等の標準を得るためには、身体成分又は総水分量(TBW)が必要である。
【0005】
ドライウェイトは、個人が流体過負荷又は流体不足を示す症状を呈さないで生理学的流体状態にできるだけ近い体重として定義される場合がある。臨床上、ドライウェイトは、患者が血液量減少症の透析中症状又は透析間症状を生じないで耐えることができる最も低い体重として定義される。この定義には欠陥がある。というのは、この定義は、症状が総流体過負荷で起こる場合のある心筋又は自律系疾患のある患者を考慮に入れていないからであり、即ち、これら患者は、事実自分達が流体過負荷状態にあるときに自分達がドライウェイト状態にあることを指示する症状を示す場合があるからである。臨床上の評価も又、数リットルの流体が体内に蓄積する場合があり、その後に浮腫が臨床的に明白になるということ及びかかる臨床上の評価が除脂肪体重、体脂肪量又は経時的な栄養状態の変化を考慮に入れていないことによって妨げられる。その結果、透析患者の大多数は、特有の症状の有無にかかわらず流体過負荷状態になる場合がある。
【0006】
ドライウェイトのより客観的な尺度を得るための種々の方式、例えば血液量モニタ、下大静脈直径の超音波評価及び幾つかの生化学パラメータ、例えば脳性又は心房性ナトリウム利尿ペプチドが開発された。しかしながら、これら尺度が個々の患者のドライウェイトの検出にあたって実用的であり又は信頼性があるということが判明しなかったのでこれら尺度はどれも、ドライウェイトの認定された正確な推定を与えていない。
【0007】
流体量測定(ECV又はTBW)について同位体希釈法が推奨される場合が多いが、これら同位体希釈方法は、技術的に困難であり且つ高価なので臨床的に実現可能ではない。これら方法は、ECV及びTBWの絶対量を算定することができるが、ドライウェイト値を提供するわけではないので過剰細胞外水の量(流体過負荷)を判定することはできない。
【0008】
従来、ドライウェイト処方プロセスを容易にするようバイオインピーダンス技術を用いる技術的努力が行われた。これについては、例えば、クールマン等(Kuhlmann et al.),「バイオインピーダンス・ドライ・ウェイト・アンド・ブラッド・プレッシャー・コントロール:ニュー・メソッド・アンド・コンシクエンシズ(Bioimpedance, dry weight and blood pressure control: new methods and consequences)」,カレント・オピニオン・イン・ネフロロジー・アンド・ハイパーテンション(Current Opinion in Nephrology and Hypertension),2005年,第14巻,p.543〜549を参照されたい。なお、この非特許文献を参照により引用し、その開示内容全体を本明細書の一部とする。
【0009】
ドライウェイトを算定する幾つかの互いに異なるバイオインピーダンス方式が公開された。
【0010】
正血量性‐血液量増加性スロープ方法(これについては、例えば、シャムニー等(Chamney et al.),「ア・ニュー・テクニック・フォア・エスタブリッシング・ドライ・ウェイト・イン・ヒモダイアリシス・ペイシェンツ・ヴィア・ホール・ボディ・バイオインピーダンス(A new technique for establishing dry weight in hemodialysis patients via whole body bioimpedance)」,キドニー・インターナショナル(Kidney Int.),2002年,第61巻,p.2250〜2258を参照されたい。なお、この非特許文献を参照により引用し、その開示内容全体を本明細書の一部とする。)は、全身多周波数バイオインピーダンスを適用して透析前体内細胞外総流体量を評価し、そして血液量減少症における細胞外流体量/体重関係を血液量増加性個人の標準値と比較する。
【0011】
抵抗‐リアクタンスグラフ方法(これについては、例えば、ピコリ等(Piccoli et al.),「ア・ニュー・メソッド・フォア・モニタリング・ボディ・フルイッド・バリエーション・バイ・バイオインピーダンス・アナリシス:ザ・アールエックスシー・グラフ(A new method for monitoring body fluid variation by bioimpedance analysis: the RXc graph)」,キドニー・インターナショナル(Kidney Int.),1994年,第46巻,p.534〜539を参照されたい。なお、この非特許文献を参照により引用し、その開示内容全体を本明細書の一部とする。)は、高さ調整後の抵抗及びリアクタンスからの流体状態及び栄養状態の評価について50kHzでの全身単一周波数バイオインピーダンスを用いる。その結果生じる抵抗‐リアクタンスベクトルは、正血量性母集団の分布範囲に関連して設定される。この方法の難点は、これが流体状態の絶対値をもたらさないということであり、即ち、患者を通常の母集団のパーセンタイルと比較することしかできない。
【0012】
「全身」バイオインピーダンス分光法(wBIS)は、交流周波数範囲(例えば、約1kHz〜1000kHzまでの50〜250の周波数)にわたり抵抗及びリアクタンスを測定することによって全身細胞外流体量(wECV)及び全身細胞内流体量(wICV)を計算する非侵襲的技術である。wECV又はwICVと体内総水分量(TBW)の比、又は比wECV/wICVは、患者の流体状態を評価するために用いられる(ウェイ・チェン等(Wei Chen et al.),「エクストラセルラー・ウォーター/イントラセルラー・ウォーター・イズ・ア・ストロング・プレディクター・オブ・ペイシェント・サバイバル・イン・インシデント・ペリトニアル・ダイアリシス・ペイシェンツ(Extracellular Water/Intracellular Water Is a Strong Predictor of Patient Survival in Incident Peritoneal Dialysis Patients)」,ブラッド・ピュリフィケーション(Blood Purif.),2007年,第25巻,p.260〜266、この非特許文献を参照により引用し、その開示内容全体を本明細書の一部とする)。
【0013】
最も新しく且つ最も複雑精巧な技術は、生理学的組織モデルを用いた全身バイオインピーダンス分光法であり、wECV及びwTBWが全身バイオインピーダンス分光法により測定され、更に、流体状態及び身体成分が計算される。これは、測定対象の患者を正常な流体状態及び同じ身体成分を持つ被験者に対して設定することによって達成される。かくして、これは、逆戻りして組織の正常水和特性に関連している。この生理学的組織モデルは、シャムニー・ピー・ダブリュー,ワベル・ピー,モイスル・ユー・エム等(Chamney P.W., Wabel P., Moissl U.M. et al.),「ア・ホールボディ・モデル・トゥ・ディスティングイッシュ・エクセス・フルイッド・フロム・ザ・ハイドレーション・オブ・メジャー・ボディ・ティシューズ(A whole-body model to distinguish excess fluid from the hydration of major body tissues)」,アメリカン・ジャーナル・オブ・クリニカル・ニュートゥリション(Am. J. Clin. Nutr.),2007年1月,第85巻,第1号,p.80〜89に記載されている。なお、この非特許文献を参照により引用し、その開示内容全体を本明細書の一部とする。この方法は、正常流体状態及び正常流体状態重量(体重)‐腎臓が働いている患者の体重の患者に特有の予測を可能にする。しかしながら、この方法の精度は、流体過負荷の度合いによって影響を受ける場合がある。
【0014】
別の方法は、結果と通常の母集団の比較による透析前又は透析後の互いに異なる流体状態でのふくらはぎの標準化された抵抗率(CNR)の測定を利用している(チュー・エフ,コタンコ・ピー,レビン・ダブリュー・エヌ等(Zhu F, Kotanko P, Levin W.N. et al.),「エスティメイション・オブ・ノーマル・ハイドレーション・イン・ダイアリシス・ペイシェンツ・ユージング・ホール・ボディ・アンド・カーフ・バイオインピーダンス・アナリシス(Estimation of Normal Hydration in Dialysis Patients using Whole Body and Calf Bioimpedance Analysis)」,フィジオロジカル・メジャーメント(Physiol. Meas.),2011年,第32巻,p.887〜902を参照されたい。なお、この非特許文献を参照により引用し、その開示内容全体を本明細書の一部とする)。
【0015】
概念的に異なる方法(これについては、例えば、チュー等(Zhu et al.),「アジャストメント・オブ・ドライ・ウェイト・イン・ヒモダイアリシス・ペイシェンツ・ユージング・イントラダイアリティック・コンティニュアス・マルチフリークエンシー・バイオインピーダンス・オブ・ザ・カーフ(Adjustment of dry weight in hemodialysis patients using intradialytic continuous multifrequency bioimpedance of the calf)」,インターナショナル・ジャーナル・オブ・アーティフィシャル・オーガンズ(Int. J. Artif. Organs),2004年,第12巻,p.104〜109及びチュー等(Zhu et al.),「ア・メソッド・フォア・ザ・エスティメイション・オブ・ハイドレーション・ステイト・ドゥアリング・ヒモダイアリシス・ユージング・ア・カーフ・バイオインピーダンス・テクニック(A method for the estimation of hydration state during hemodialysis using a calf bioimpedance technique)」,フィジオロジカル・メジャーメント(Physiol. Meas.),2008年,S503〜S516を参照されたい。なお、これらの非特許文献を参照により引用し、その開示内容全体を本明細書の一部とする。)は、透析中ふくらはぎバイオインピーダンスの形態の分節バイオインピーダンスを用いて透析中の細胞外流体量と同等なふくらはぎ抵抗又は抵抗率の変化を記録する(以下、cBIS)。この方法により算出されたドライウェイト(DW
cBIS)は、ふくらはぎ細胞外流体量が進行中の限外濾過にもかかわらずそれ以上は減少しない体重として定義される。この方法は、患者のDW
cBISを推定するには良好であるが、この技術は、透析セッション全体を通じてバイオインピーダンス測定の高い性能を必要とする。ドライウェイトをこの方法によって予測することはできない。加うるに、下肢のところでの患者の動きは、透析セッション中、制限され、測定電極は、セッションが完了するまで定位置に保たれなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上述の方法が世界中の診療所で広く用いられているという事実にもかかわらず、特に重篤な過負荷の患者が自分の正常流体状態又はドライウェイトになることが必要な場合、信頼性のあるドライウェイト推定を実施すると共に/或いは生じさせることが容易な改良型流体過負荷患者の流体状態のモニタ方法が要望されている。換言すると、透析患者の適切な流体管理が流体過負荷を定量化すると共に流体過負荷の減少中、現在臨床上のやり方で行われている程度よりも確実にドライウェイトを推定することができることが有益である。さらに、特に透析中の症状を回避するためにかかるモニタを利用した患者の治療の差し迫った要望が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
先行技術の上述の欠点に独立形式の請求項に記載された教示によって取り組む。好ましい実施形態は、従属形式の請求項にクレーム請求されている。
【0019】
一実施形態では、本発明は、患者のドライウェイトを推定する方法であって、第1期における治療セッション相互間の患者の第1の流体状態を算定するステップと、第2期における治療中、患者の第2の流体状態を算定するステップと、第2の流体状態に基づいてドライウェイトを推定するステップとを更に含むことを特徴とする方法に関する。
【0020】
一実施形態では、本発明は、当初において流体過負荷状態の透析患者をその人の正常な流体状態(正常流体状態)に至らせる方法であって、第1期における治療セッション相互間の患者の第1の流体状態を算定するステップと、第1の流体状態に基づいて患者の流体過負荷を減少させるステップと、第2期における治療セッション中の患者の第2の流体状態を算定するステップと、第2の流体状態に基づいて患者の流体過負荷を減少させるステップとを含むことを特徴とする方法に関する。
【0021】
一実施形態では、本発明は、当初において流体過負荷状態の透析患者をその人の正常な流体状態に至らせる方法であって、正常流体状態と第1の流体状態との絶対流体状態差を推定するステップを更に含み、第1期における流体過負荷を減少させるステップは、絶対流体状態差を利用することを特徴とする方法に関する。
【0022】
一実施形態では、本発明は、当初において流体過負荷状態の透析患者をその人の正常な流体状態に至らせる方法であって、第2の流体状態に基づいて患者のドライウェイトを推定するステップを更に含み、第2期における患者の流体過負荷を減少させるステップは、推定されたドライウェイトを利用することを特徴とする方法に関する。
【0023】
一実施形態では、本発明は、当初において流体過負荷状態の透析患者をその人の正常な流体状態に至らせる方法であって、第3期における治療セッション相互間の第3の流体状態を算定するステップと、オプションとして、第3期における第3の流体状態に基づいて患者の流体過負荷を減少させるステップとを更に含むことを特徴とする方法に関する。
【0024】
一実施形態では、本発明は、当初において流体過負荷状態の透析患者をその人の正常な流体状態に至らせる方法であって、患者の流体過負荷は、第1期、第2期及び/又は第3期における治療セッション中、せいぜい0.5kgの体重、好ましくは0.3kgの体重、より好ましくは0.2kgの体重及び最も好ましくは0.1kgの体重の減少に相当するレベルまで減らされることを特徴とする方法に関する。
【0025】
一実施形態では、本発明は、患者のドライウェイトを推定する方法及び/又は当初において流体過負荷状態の透析患者をその人の正常な流体状態に至らせる方法であって、患者は、透析患者であり、治療セッションは、透析治療のセッションであることを特徴とする方法に関する。
【0026】
一実施形態では、本発明は、透析患者のドライウェイトを推定する方法及び/又は当初において流体過負荷状態の透析患者をその人の正常な流体状態に至らせる方法であって、第1の流体状態は、治療前セッション測定によって算定されることを特徴とする方法に関する。
【0027】
一実施形態では、本発明は、透析患者のドライウェイトを推定する方法及び/又は当初において流体過負荷状態の透析患者をその人の正常な流体状態に至らせる方法であって、第1の流体状態は、治療後セッション測定によって算定されることを特徴とする方法に関する。
【0028】
一実施形態では、本発明は、透析患者のドライウェイトを推定する方法及び/又は当初において流体過負荷状態の透析患者をその人の正常な流体状態に至らせる方法であって、第1の流体状態は、a)物理的検査方法、好ましくは、足浮腫の観察、血圧の測定及び/又は頸静脈圧の算定、b)画像化方法、例えば胸部X線画像化及び/又は下大静脈直径超音波画像化、c)生化学マーカ、好ましくはANP、BNP、nT‐proBNP及び/又はcGMP、d)熱希釈算定法、例えば血管外肺指数算定、e)バイオインピーダンス測定法、特に単一周波数バイオインピーダンス測定、好ましくはベクトル法又は特にBCMによる、好ましくは全身バイオインピーダンス分光法による、より好ましくは分節バイオインピーダンス分光法(BIS)による、最も好ましくはふくらはぎバイオインピーダンス分光法による多周波数バイオインピーダンス測定、f)体内総水分量(TBW)と細胞外水分量(ECV)の比、及びg)好ましくは血液量モニタ(BVM)による、より好ましくは血管内コンパートメント中の血液の光学的性質を算定することによる血液量測定法のうちの少なくとも1つによって算定されることを特徴とする方法に関する。
【0029】
一実施形態では、本発明は、透析患者のドライウェイトを推定する方法及び/又は当初において流体過負荷状態の透析患者をその人の正常な流体状態に至らせる方法であって、第2の流体状態は、好ましくは血液量モニタ(BVM)による、より好ましくは血管内コンパートメント中の血液の光学的性質を算定することによる血液量測定法及び分節バイオインピーダンス分光法(BIS)、最も好ましくはふくらはぎバイオインピーダンス分光法(cBIS)のうち少なくとも一方によって算定されることを特徴とする方法に関する。
【0030】
一実施形態では、本発明は、透析患者のドライウェイトを推定する方法及び/又は当初において流体過負荷状態の透析患者をその人の正常な流体状態に至らせる方法であって、第1の流体状態に基づいて正常流体状態を推定するステップを更に含むことを特徴とする方法に関する。
【0031】
一実施形態では、本発明は、透析患者のドライウェイトを推定する方法及び/又は当初において流体過負荷状態の透析患者をその人の正常な流体状態に至らせる方法であって、算定された第1の流体状態が患者の推定される正常流体状態と比較して、2.5〜0.25Lの治療後セッション流体過負荷、好ましくは1.5〜0.5Lの治療後セッション流体過負荷、最も好ましくは1Lの治療後セッション流体過負荷を下回った場合、第1期が終了すると共に/或いは第2期が開始することを特徴とする方法に関する。
【0032】
一実施形態では、本発明は、透析患者のドライウェイトを推定する方法及び/又は当初において流体過負荷状態の透析患者をその人の正常な流体状態に至らせる方法であって、正常流体状態は、全身モデル又はふくらはぎ標準化抵抗率の測定を利用する方法によって推定されることを特徴とする方法に関する。
【0033】
一実施形態では、本発明は、透析患者のドライウェイトを推定する方法及び/又は当初において流体過負荷状態の透析患者をその人の正常な流体状態に至らせる方法であって、血液量モニタにより相対血液量(RBV)が治療セッション中に減少したことが示された場合、第1期が終了すると共に/或いは第2期が開始することを特徴とする方法に関する。
【0034】
一実施形態では、本発明は、透析患者のドライウェイトを推定する方法及び/又は当初において流体過負荷状態の透析患者をその人の正常な流体状態に至らせる方法であって、相対血液量(RBV)は、治療セッション中、5%超、好ましくは10%超、より好ましくは15%超、最も好ましくは20%超減少することを特徴とする方法に関する。
【0035】
一実施形態では、本発明は、透析患者のドライウェイトを推定する方法及び/又は当初において流体過負荷状態の透析患者をその人の正常な流体状態に至らせる方法であって、第1期は、約1〜6ヶ月間、好ましくは約1〜3ヶ月間、より好ましくは1〜2ヶ月間続くことを特徴とする方法に関する。
【0036】
一実施形態では、本発明は、透析患者のドライウェイトを推定する方法及び/又は当初において流体過負荷状態の透析患者をその人の正常な流体状態に至らせる方法であって、第1の流体状態は、好ましくは1〜6週間ごと、より好ましくは2〜4週間ごと、更により好ましくは3週間ごと、更により好ましくは10回目の治療(透析)セッションごとに、更により好ましくは9回目の治療セッションごとに、更により好ましくは8回目の治療セッションごとに、更により好ましくは7回目の治療セッションごとに、更により好ましくは6回目の治療セッションごとに、更により好ましくは5回目の治療セッションごとに、更により好ましくは4回目の治療セッションごとに、更により好ましくは3回目の治療セッションごとに、更により好ましくは2回目の治療セッションごとに、最も好ましくは毎回の治療セッションごとに定期的に算定されることを特徴とする方法に関する。
【0037】
一実施形態では、本発明は、透析患者のドライウェイトを推定する方法及び/又は当初において流体過負荷状態の透析患者をその人の正常な流体状態に至らせる方法であって、第1の流体状態及び/又は第2の流体状態は、治療セッション中、測定されることを特徴とする方法に関する。
【0038】
一実施形態では、本発明は、透析患者のドライウェイトを推定する方法及び/又は当初において流体過負荷状態の透析患者をその人の正常な流体状態に至らせる方法であって、第2の流体状態は、毎回の治療セッション中に算定されることを特徴とする方法に関する。
【0039】
一実施形態では、本発明は、透析患者のドライウェイトを推定する方法及び/又は当初において流体過負荷状態の透析患者をその人の正常な流体状態に至らせる方法であって、患者の推定ドライウェイトは、治療セッション中の第2の流体状態の進展によって算定されることを特徴とする方法に関する。
【0040】
一実施形態では、本発明は、透析患者のドライウェイトを推定する方法及び/又は当初において流体過負荷状態の透析患者をその人の正常な流体状態に至らせる方法であって、患者の推定ドライウェイトは、第2期における抵抗曲線及び/又は標準化抵抗率を分析することによって算定されることを特徴とする方法に関する。
【0041】
一実施形態では、本発明は、透析患者のドライウェイトを推定する方法及び/又は当初において流体過負荷状態の透析患者をその人の正常な流体状態に至らせる方法であって、第2期における治療セッション中に記録された患者の抵抗曲線の平坦化に達すると共に/或いは患者の血液透析後の標準化抵抗率が健常な個人を含むその患者の比較群の特定の正常範囲内にある場合、患者のドライウェイトに達したと考えることを特徴とする方法に関する。
【0042】
一実施形態では、本発明は、透析患者のドライウェイトを推定する方法及び/又は当初において流体過負荷状態の透析患者をその人の正常な流体状態に至らせる方法であって、抵抗は、ふくらはぎバイオインピーダンス分光法によって測定されると共に/或いは患者の標準化抵抗率は、標準化ふくらはぎ抵抗率であることを特徴とする方法に関する。
【0043】
一実施形態では、本発明は、透析患者のドライウェイトを推定する方法及び/又は当初において流体過負荷状態の透析患者をその人の正常な流体状態に至らせる方法であって、第1の流体状態、第2の流体状態、推定正常流体状態、推定ドライウェイト又は治療セッション全体を通じて得られた任意他のデータは、好ましくはデータ接続手段を介してデータベースに伝送されることを特徴とする方法に関する。
【0044】
一実施形態では、本発明は、透析患者のドライウェイトを推定する方法及び/又は当初において流体過負荷状態の透析患者をその人の正常な流体状態に至らせる方法であって、データベースをセントラルサーバのところで操作することを特徴とする方法に関する。
【0045】
一実施形態では、本発明は、透析患者のドライウェイトを推定する方法及び/又は当初において流体過負荷状態の透析患者をその人の正常な流体状態に至らせる方法であって、伝送データは、患者及び/又は特定の患者群、特に同等な身体パラメータを備えた特定の患者群について統計値及び/又は結論を導き出すことができるよう処理されることを特徴とする方法に関する。
【0046】
一実施形態では、本発明は、透析患者のドライウェイトを推定する方法及び/又は当初において流体過負荷状態の透析患者をその人の正常流体状態に至らせる方法であって、第1の流体状態、第2の流体状態、推定正常流体状態、推定ドライウェイト及び/又は治療セッション全体を通じて得られた任意他のデータは、薬物、好ましくはEPO、抗生物質及び/又は他の非経口的に投与される薬剤の投与量を求めるために用いられることを特徴とする方法に関する。
【0047】
本発明は、患者に投与されるべき薬物、好ましくはEPO、抗生物質及び/又は他の非経口的に投与される薬剤であって、薬物の投与量及び/又は投与方式は、透析患者のドライウェイトを推定する方法及び/又は当初において流体過負荷状態の透析患者をその人の正常な流体状態に至らせる方法に従って決定されることを特徴とする薬物に関する。
【0048】
本発明は、特にメモリ及びデジタル信号プロセッサを備えた器械であって、透析患者のドライウェイトを推定する方法及び/又は当初において流体過負荷状態の透析患者をその人の正常な流体状態に至らせる方法を実施するよう構成された器械に関する。
【0049】
一実施形態では、本発明は、コンピュータプログラムであって、コンピュータによって実行されると、コンピュータが透析患者のドライウェイトを推定する方法及び/又は当初において流体過負荷状態の透析患者をその人の正常な流体状態に至らせる方法を実施するようにする命令を含むことを特徴とするコンピュータプログラムに関する。
【0050】
一実施形態では、本発明は、コンピュータプログラム製品であって、命令をコンピュータ上で実行すると、透析患者のドライウェイトを推定する方法及び/又は当初において流体過負荷状態の透析患者をその人の正常な流体状態に至らせる方法の実施のための機械可読媒体上に記憶された命令を含むことを特徴とするコンピュータプログラム製品に関する。
【発明を実施するための形態】
【0052】
上述したように、本発明は、その実施形態の種々のものに関して、患者の体内の流体状態をモニタする課題に関する。患者は、代表的には、腎不全の結果として血液透析、腹膜透析又は他形態の透析を受けるであろう。
【0053】
それにもかかわらず、本明細書において開示する方法及び器械は、流体状態を評価すると共に/或いは腎不全以外の疾患、例えば心不全、肝不全及び/又はまだ透析治療を必要とするに至っていない慢性腎疾患に苦しんでいる患者の流体過負荷を減少させるのにも使用できる。例えば、ドライウェイトの知識は、流体量を減少させるために利尿薬で治療を受けている心不全患者に関して有用な場合がある。透析の場合と同様、患者のドライウェイトの知識は、どれほど多くの利尿薬を調整すべきかを決定する際に臨床上重要である。
【0054】
加うるに、本方法及び本器械をドライウェイトの推定及び/又は通常の被験者、例えば高温及び/又は高湿度条件下で激しい活動に参加している個人(競技者)の流体過負荷の減少と関連して使用できる。より一般的に言えば、患者のドライウェイトの知識は、例えば患者のダイエットにおけるナトリウムの摂取の制御の面で有益な場合があり、例えば、患者(病気の被験者又は通常の被験者)は、自分の体重を本発明に従って算定された推定又は予測ドライウェイトと比較することによってナトリウム摂取の結果としての自分の流体保持量をモニタすることができる。ドライウェイトに関する情報を得ることは、フィットネス愛好者や自分の健康状態を特に気遣っている他の人々にとって特に関心のあるものであると言える。
【0055】
本明細書において開示する手技及び器械は、推定ドライウェイトが個人の身体成分の変化、例えばダイエット及び/又は運動の結果又はこれらを行わない場合の結果としての個人の脂肪及び/又は筋肉量の変化につれて最新のものであるよう種々の時点で採用される。
【0056】
本発明の意味において、患者は、健常な状態又は病気の状態の任意種類の個人、特に人間又は動物である。
【0057】
本発明の意味において、流体過負荷は、患者の身体が正常な流体状態重量に対応した自分の正常流体状態よりも多い量を含んでいる状態、特に流体過剰を意味している。
【0058】
本発明の意味において、治療セッションは、患者の定期的又は不規則に繰り返される治療として定義される。
【0059】
本発明の意味において、治療セッション中は、患者が治療を受けている段階として定義される。
【0060】
本発明の意味において、流体状態は、個人の身体成分中の流体のレベルである。
【0061】
本発明の意味において、ドライウェイトは、個人が正常流体状態に可能な限り近い体重又は流体過負荷又は流体不足を表す症状を呈していない体重として定義され、即ち、患者の流体状態は、血液量減少症候性体重を上回るようなものである。本発明の意味において、正常流体状態重量は、健常な個人のジェンダースペシフィック(性差を考慮したの意)体重である。
【0062】
本発明の意味において、流体過負荷を減少させることは、患者の流体状態に影響を及ぼす体液の損失である。
【0063】
本発明の意味において、第3期は、患者が自分の状態の同程度の狭い範囲内に保たれる維持段階である。患者を上述の段階及び対応の流体状態内に維持することにより、患者のクオリティオブライフ(QOL)が著しく向上する。
【0064】
本発明の意味において、透析中は、透析セッション中として定義される。
【0065】
本発明の意味において、透析間は、透析セッション相互間として定義される。
【0066】
本発明の意味において、絶対流体状態差は、現在の流体状態と正常流体状態重量又はドライウェイトに対応した正常流体状態との差である。
【0067】
本発明の意味において、抵抗は、患者の身体がこの身体を通る電流に対抗する程度の尺度である。
【0068】
本発明の意味において、身体セグメント、例えばふくらはぎの抵抗率は、このセグメントの抵抗をバイオインピーダンス手技で用いられる記録電極相互間の距離で除算し、そしてセグメントの平均断面積、例えば、患者のふくらはぎの断面積の実際の平均値又は患者のふくらはぎの代表的な断面の面積を表す面積を乗算して得られる値である。
【0069】
本発明の意味において、標準化抵抗率は、抵抗率を体重(kg)を身長(m)の2乗で除算して得られる患者の体型指数(BMI)で除算することによって得られる。
【0070】
本発明の意味において、透析中に記録された抵抗曲線の平坦化が起こった場合(例えば、透析中に連続的に記録された抵抗曲線の平坦化が起こった場合)、経時的な抵抗曲線の勾配は、小さな絶対値に達し又はそれどころかゼロに近づく。
【0071】
本発明によれば、透析患者のドライウェイトは、第1期(I)において生理学的組織モデル又は予測ふくらはぎ抵抗率モデルを用いた全身バイオインピーダンス分光法によって治療セッション相互間における患者の第1の流体状態を算定するステップ、第2期(II)において透析中方法(例えば、連続透析中方法)を用いて治療セッション中における患者の第2の流体状態を算定するステップ及び第2の流体状態に基づいてドライウェイトを推定するステップによって求められる。
【0072】
開示する方法の実施形態により、患者の流体状態の診断の精度と費用効果との間の最大限有利なトレードオフの関係に達することができる。事実、流体状態の正確な算定に対する感度が低い第1期では、治療セッション相互間の算定による経済的な方式が選択され、これに対し、ドライウェイトの正確な値を推定することが特に重要である第2期では、治療セッション中に算定によるより正確な方式が選択される。
【0073】
期(I)では、患者は、電極が患者に取り付けられた状態での連続測定を必要とする測定を受ける必要はない。
【0074】
重篤な流体過負荷状態の患者の場合、まず最初に、正常流体状態に対する流体過負荷の或る程度の減少に達するまで治療セッション相互間の算定によりモニタすることが有利である。この時点から、或る特定の実施形態では、治療セッション中又は治療セッション後における算定によるモニタを用いて患者をその患者のドライウェイトに合わせて調節するのが良い。
【0075】
結論として、治療セッション相互間の算定と治療セッション中における患者の流体状態の算定を組み合わせた方法を用いることにより、患者の流体過負荷のモニタを患者にとって極めて効果的且つ好都合に構成することができ、かくして時間及びコストが節約される一方で、患者に高いクオリティオブライフが保証される。
【0076】
本発明によれば、第1期における治療セッション相互間の患者の第1の流体状態を算定するステップと、第1の流体状態に基づいて患者の流体過負荷を減少させるステップと、第2期における治療セッション中の患者の第2の流体状態を算定するステップと、第2の流体状態に基づいて患者の流体過負荷を減少させるステップによって当初において流体過負荷状態の透析患者をその患者の正常流体状態に至らせる。
【0077】
治療セッション相互間の流体状態の算定方法と治療セッション中における流体状態の算定方法を組み合わせた本発明の方法によって、患者の流体状態を患者の重さがほぼ正常な流体状態重量に等しい正常な流体状態の範囲に向かって滑らかに誘導することができる。
【0078】
事実、体液は、第1期において、患者の体重、それぞれ流体過負荷を次第に減少させることによって減少する。したがって、治療セッション時における患者の第1の流体状態を先の治療セッション時における流体状態の変化と比較する。これは、時間及びコストの面で極めて効果的である。というのは、流体状態の算定を毎回の治療セッション時に実施する必要がないからである。
【0079】
さらに、この算定は、患者にとって極めて好都合である。というのは、この算定を干渉が最小限に抑えられた状態で実施することができるからである。幾つかの場合において、医師の目視による診断は、患者が依然として流体過負荷状態にあることを判定するのに十分な場合がある。
【0080】
次に、患者の流体過負荷を算定した第1の流体状態に基づいて減少させる。この手技は、或る特定の流体過負荷レベルに達するまで何度も繰り返される。
【0081】
この時点から、患者の第2の流体状態を治療セッション中に算定する。この算定時、流体状態は、測定した第2の流体状態を先の治療セッション時の流体状態と比較することによっては算定されない。これとは異なり、治療セッション中における連続して算定される進展は、第2の流体状態を算定する基準として役立つ。変形例として、ふくらはぎ抵抗率を測定することによって患者の流体状態を先の治療セッション時の流体状態と比較することができる。次に、患者の流体過負荷をこの第2の流体状態に基づいて減少させる。
【0082】
図1Aは、経時的な患者の流体状態の進展状態を示している。本発明によれば、この流体状態は、少なくとも2つの期(I,II)に分割される。第1期(I)では、患者は、重篤な流体過負荷状態にある。第2期(II)では、患者は、正常な流体状態の範囲にある。正常流体状態は、この図に示されたベースラインによって表されている。
【0083】
それにより、正常流体状態又は体重は、約1〜2kgの範囲で患者の流体状態に対する患者の最適体重の指標を与える。ここではゼロリットルの流体過負荷として示されたドライウェイトは、大部分がこの範囲の下端部に位置する別個の流体状態を示している。上述したような患者の流体状態は、患者が血液減少症状を呈するはずがなく、即ち、血液減少徴候性体重(HSW)を上回るようなものである。
【0084】
図1Bは、一連の透析セッションにわたり、ふくらはぎバイオインピーダンス分光法によって算定されたドライウェイト(DW
cBIS)並びに血液量減少症状重量(HSW)、全身バイオインピーダンス分光法又はふくらはぎ抵抗率によって算定された正常流体状態重量(NFSW
wBIS)の進展の代表的な構成を概略的に示す図である。通常、以下の実施例でも示されているように、ドライウェイト(DW
cBIS)は、患者の流体過負荷の任意のレベルで推定された正常流体状態重量(NFSW
wBIS)範囲の下端部のところにある。
【0085】
ギザギザの曲線は、流体状態の進展を示している。各歯は、2つの透析セッション相互間の期間に対応している。透析セッション中、流体状態が低下する。2つのセッション相互間の期間の間、患者の体内の流体の量は、次第に増加する。理想的には、流体状態は、先の透析前流体状態の流体過負荷の量に達することがない。かくして、長期間にわたり、患者の体内の流体の量は、本発明により定められた第1及び第2期(I,II)全体を通じて理解できるように実質的に減少する。代表的には、患者が例えば7Lの流体過負荷状態にある第1期(I)の開始時、流体状態を透析セッション1つ当たり約3〜4Lだけ減少させる。第2期(II)の終了時及び/又は第3期(III)中、流体状態を透析セッション1つ当たり約1.5〜2.5Lしか減少させない。この第3期では、患者がその患者のドライウェイトに合わせて調節されることが想定される場合、流体状態のそれ以上の永続的な減少は不要である。これとは異なり、患者は、その患者の正常流体状態又は体重内で且つ僅かにその付近で透析セッション相互間で「揺れ動き」状態に維持されるべきである。患者を上述の期(III)及び対応の流体状態内に維持することにより、患者のクオリティオブライフが著しく向上する。というのは、患者は、あらゆる場合において患者にとって厄介な透析間、透析後及び/又は透析前の流体過負荷減少プロセスを受けなくてすむからである。
【0086】
患者の流体過負荷の上述の減少は、本発明の第1の観点による方法によってモニタされる。
【0087】
一実施形態では、透析患者のドライウェイトを推定する本発明の方法の適用の開始時に、現在における流体状態を算定する。患者が重篤な過負荷状態にあり、流体過負荷レベルが患者の推定正常流体状態と比較して約2.5〜0.2Lを超える透析後流体過負荷状態にあり、一実施形態では1.5〜0.5Lを超える透析後流体過負荷状態にあり、一実施形態では約1Lを超える透析後流体過負荷状態にあることを意味している場合、本発明の方法を適用する。現在の流体状態並びに正常流体状態がそれにより、一実施形態では、全身バイオインピーダンス分光法(wBIS)及び全身モデル(NFSW
wBIS)による正常流体状態重量を推定することにより又は標準化されたふくらはぎ抵抗率方法によって算定される。以下に説明するように、現在の流体状態と正常流体状態の絶対流体状態差を推定することによりこれを行うことができる。
【0088】
本発明の別の実施形態では、現在の流体状態のこの算定は、透析中算定方法により実施され、一実施形態では、特に患者のふくらはぎ上に対する分節バイオインピーダンス分光法(cBIS)を用いて流体状態の進展をモニタすることにより、一実施形態では相対血液量(RBV)の一時的進展をモニタすることによって実施される。
【0089】
以下において、第1の流体状態を或る特定の透析セッション時に透析間的に算定する。好ましい一実施形態では、第1の流体状態を定期的に、一実施形態では1〜6週間ごとに、一実施形態では2〜4週間ごとに、一実施形態では3週間ごとに算定する。
【0090】
別の実施形態では、この算定を全身バイオインピーダンス分光法(wBIS)又はふくらはぎ標準化抵抗率(CNR)によって実施する。流体状態が変化せず、流体過負荷の増大を示し又は先の又は当初に算定された流体状態と比較して流体過負荷のほんの僅かな減少を示す場合、透析療法を続行し、本発明の方法は、第1期(I)内に留まる。
【0091】
先の又は当初の流体状態と比較して流体状態の重要な減少を評価する場合、流体過負荷レベルを算定する。好ましい一実施形態では、これは、正常流体状態又は体重(NFSW
wBIS)を推定することによって実施される。別の好ましい実施形態では、これは、透析中算定方法により、一実施形態では特に患者のふくらはぎ(cBIS)に対する分節バイオインピーダンス分光法を用いる流体状態の進展により実施される。
【0092】
算定された流体過負荷レベルが依然として患者の重篤な流体過負荷を示す場合、この方法を第1期(I)で続行する。
【0093】
算定された流体過負荷レベルにより、患者が依然として流体過負荷状態にあるが、流体状態が正常流体状態重量に対応した正常流体状態の範囲内にあることが示された場合、本発明の方法の第2期(II)が開始する。好ましい一実施形態によれば、この条件は、算定された流体過負荷レベルが正常流体状態又は体重(NFSW
wBIS)と比較して流体過負荷の2.5〜0.25Lを下回り、一実施形態では1.5〜0.5Lを下回り、一実施形態では1Lを下回った場合に満たされる。
【0094】
さらに別の実施形態では、流体状態及び/又は流体過負荷レベルは、
図2に示されている透析セッション中における患者の血液量の進展によって算定される。
【0095】
血液量モニタは、ロドリゲス・エイチ・ジェイ等(Rodriguez H.J. et al.),「アセスメント・オブ・ドライ・ウェイト・バイ・モニタリング・チェインジズ・イン・ブラッド・ボリューム・ユージング・クリット‐ライン(Assessment of dry weight by monitoring changes in blood volume using Crit-Line)」,キドニー・インターナショナル(Kidney Int.),2005年8月,第68巻,第2号,p.854〜61による透析セッション中に実施される。なお、この非特許文献を参照により引用し、その開示内容全体を本明細書の一部とする。血漿補充率は、要因の中でとりわけ、流体過負荷度で決まることが知られている。その結果、一般的に言えば、血液量低下は、限外濾過率が同一である場合に流体過負荷の高い値で低い値を示す。したがって、透析セッションの終わりにおける血液量の減少が正常流体状態の範囲に達したときに見込まれる。この実施形態に従って血液量をモニタした場合、第2期(II)は、透析セッション中における重要な減少が観察された後に開始する。
【0096】
図2A〜
図2Cの図は、透析セッション中における血液量の進展を示しており、縦座標(y軸)は、百分率で表されたセッションの開始と比較してΔ重量%として表された血液量の差(BVΔ)を示し、横座標(x軸)は、経過時間を示している。
図2Aは、患者が本発明による第1期(I)の開始時に流体過負荷状態にあるときの透析セッション中における患者の相対血液量(RBV)の進展を示している。
図2Bは、第1期(I)の終了時/本発明による第2期(II)の開始時に患者が流体過負荷状態にあるときの透析セッション中における患者の相対血液量(RBV)の進展を示している。
図2Cは、患者が本発明に従ってその患者の正常流体状態及び/又はドライウェイトに達したとき又は僅かに血液量減少状態にあるときにおける透析セッション中の患者の相対血液量(RBV)の進展を示している。
【0097】
本発明による第1期(I)の終了/第2期(II)の開始に関する指標は、相対血液量(RBV)が透析セッション中、5%超減少し、一実施形態では10%超減少し、一実施形態では15%超減少し、一実施形態では20%以上減少するということにある。
【0098】
この実施形態によれば、本発明の方法の一実施形態における第2期(II)は、血液量の進展が
図2Bの曲線に対応し又はそれどころか
図2Cの曲線に対応した勾配を示す場合に始まる。
【0099】
しかしながら、当業者であれば理解されるように、他の条件が本発明の第2期(II)の開始時点を定めるために適用される場合がある。別の好ましい実施形態では、流体状態は、物理的測定法、一実施形態では、足浮腫の観察、血圧の測定及び/又は頸静脈圧の算定(アグラワル・アール,アンダーセン・エム・ジェイ,プラット・ジェイ・エイチ(Agarwal R., Andersen M.J., Pratt J.H.),「オン・ザ・インポータンス・オブ・ペダル・イディマ・イン・ヒモダイアリシス・ペイシェンツ(On the importance of pedal edema in hemodialysis patients)」,クリニカル・ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・ソサエティ・オブ・ネフロロジー(Clin. J. Am. Soc. Nephrol.),2008年,第3巻,p.153〜158;トムソン・ジー・イー,ウォーターハウス・ケー,マクドナルド・エイチ・ピー・ジュニア,フリードマン・イー・エー(Thomson G.E., Waterhouse K., McDonald H.P.Jr., Friedman E.A.),「ヒモダイアリシス・フォア・クロニック・リーネル・フェイリュア(Hemodialysis for chronic renal failure)」,クリニカル・オブザベーションズ(Clinical observations),アーチ・インターン・メッド(Arch. Intern. Med.),1967年,第120巻,p.153〜167;チャラ・ビー,ベルグストローム・ジェイ,スクリブナー・ビー・エイチ(Charra B., Bergstrom J., Scribner B.H.),「ブラッド・プレッシャー・コントロール・イン・ダイアリシス・ペイシェンツ:インポータンス・オブ・ザ・ラグ・フェノミナン(Blood pressure control in dialysis patients: importance of the lag phenomenon)」,アメリカン・ジャーナル・オブ・キドニー・ディジーズ(Am. J. Kidney. Dis.),1998年,第32巻,p.720〜724;ボースト・ジェイ・ジー,モルヒュイセン・ジェイ・エー(Borst J.G., Molhuysen J.A.),「エグザクト・ディターミネイション・オブ・ザ・セントラル・ヴィナス・プレッシャー・バイ・ア・シンプル・クリニカル・メソッド(Exact determination of the central venous pressure by a simple clinical method)」,ランセット(Lancet),1952年,第2巻,p.304〜309)、画像化方法、一実施形態では、胸部X線画像化及び/又は下大静脈直径超音波画像化(ポッジ・エー,マッジョーレ・キュー(Poggi A., Maggiore Q.),「カーディオソラシック・レイシオ・アズ・ア・ガイド・トゥ・ウルトラフィルトレイション・セラピー・イン・ダイアライズド・ペイシェンツ(Cardiothoracic ratio as a guide to ultrafiltration therapy in dialyzed patients)」,インターナショナル・ジャーナル・オブ・アーティフィシャル・オーガンズ(Int. J. Artif. Organs),1980年,第3巻,p.332〜337;コウ・ピー・エム,コーマン・ジェイ・ピー,チェリエックス・イー・シー,オルソフ・シー・ジー,デ・フリース・ピー・エム,レウニッセン・ケー・エム(Kouw P.M., Kooman J.P., Cheriex E.C., Olthof C.G., de Vries P.M., Leunissen K.M.),「アセスメント・オブ・ポストダイアリシス・ドライ・ウェイト:ア・コンパリソン・オブ・テクニクス(Assessment of postdialysis dry weight: a comparison of techniques)」,ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・ソサエティ・オブ・ネフロロジー(J. Am. Soc. Nephrol),1993年,第4巻,98〜104;チェリエックス・イー・シー,レウニッセン・ケー・エム,ジャッセン・ジェイ・エイチ,モーイ・ジェイ・エム,ヴァン・ホーフ・ジェイ・ピー(Cheriex E.C., Leunissen K.M., Jassen J.H., Mooy J.M., van Hooff J.P.),「エコグラフィー・オブ・ザ・インフェリア・ヴェナ・カヴァ・イズ・ア・シンプル・アンド・リライアブル・ツール・フォア・エスティメイション・オブ・ドライ・ウェイト・イン・ヒモダイアリシス・ペイシェンツ(Echography of the inferior vena cava is a simple and reliable tool for estimation of ‘dry weight’ in heamodialysis patients)」,ネフロロジー・ダイアリシス・トランスプランテイション(Nephrol. Dial. Transplant),1989年,第4巻,p.563〜568)、生化学マーカ、一実施形態でANP、BNP、nT‐proBNP及び/又はcGMP(ヤシロ・エム,カマタ・ティー,ヤマドリ・エヌ,トミタ・エム,ムソウ・イー(Yashiro M., Kamata T., Yamadori N., Tomita M., Muso E.),「エヴァリュエイション・オブ・マーカーズ・トゥ・エスティメイト・ボリューム・ステイタス・イン・ヒモダイアリシス・ペイシェンツ:エイトゥリアル・ネイトゥリウレティック・ペプタイド・インフェリア・ヴェナ・カヴァ・ダイアミター・ブラッド・ボリューム・チェインジズ・アンド・フィルトレーション・コエフィシエンツ・オブ・マイクロヴァスキュラー(Evaluation of markers to estimate volume status in hemodialylsis patients: atrial natriuretic peptide, inferior vena cava diameter, blood volume changes and filtration coefficients of microvasculature)」,セラピュイティック・アフェレシス・アンド・ダイアリシス(Ther. Apher. Dial.),2007年,第11巻,p.1331〜1337;チャゾット・シー,ヴォ‐ヴァン・シー,ザオウイ・イー(Chazot C., Vo-Van C., Zaoui E.),「フルイッド・オーバーロード・コレクション・アンド・カーデイアック・ヒストリー・インフルエンス・ブレイン・ネイトゥリウレティック・ペプタイド・エボリューション・イン・インシデント・ヒモダイアリシス・ペイシェンツ(Fluid overload correction and cardiac history influence brain natriuretic peptide evolution in incident haemodialysis patients)」,ネフロロジー・ダイアリシス・トランスプランテイション(Nephrol Dial Transplant);リー・ジェイ・エー,キム・ディー・エイチ,ヨー・エス・ジェイ,オウ・ディー・ジェイ,ユ・エス・エイチ,カン・イー・ティー(Lee J.A., Kim D.H., Yoo S.J., Oh D.J., Yu S.H., Kang E.T.),「アソシエイション・ビトゥイーン・セラム・エヌ‐ターミナル・プロ‐ブレイン・ネイトゥリウレティック・ペプタイド・コンセントレイション・アンド・レフト・ベントリキュラー・ディスファンクション・アンド・エクストラセルラー・ウォーター・イン・コンティニュアス・アンビュラトリー・ペリトニアル・ダイアリシス・ペイシェンツ(Association between serum n-terminal pro-brain natriuretic peptide concentration and left ventricular dysfunction and extracellular water in continuous ambulatory peritoneal dialysis patients)」,ペリトニアル・ダイアリシス・インターナショナル(Perit. Dial. Int.),2006年,第26巻,p.360〜365;ロスナー・エム・エイチ(Rosner M.H.),「メジャリング・リスク・イン・エンド‐ステージ・リーナル・ディジーズ:イズ・エヌ‐ターミナル・プロ・ブレイン・ネイトゥリウレティック・ペプタイド・ア・ユーズフル・マーカ?(Measuring risk in end-stage renal disease: is N-terminal pro brain natriuretic peptide a useful marker?)」,キドニー・インターナショナル(Kidney. Int.),2007年,第71巻,p.481〜483;オサジマ・エー,オカザキ・エム,カトウ・エイチ(Osajima A., Okazaki M., Kato H.),「クリニカル・シグニフィカンス・オブ・ネイトゥリウレティック・ペプタイズ・アンド・サイクリック・ジーエムピー・イン・ヒモダイアリシス・ペイシェンツ・ウィズ・コーナリー・アーテリー・ディジーズ(Clinical significance of natriuretic peptides and cyclic GMP in hemodialysis patients with coronary artery disease)」,アメリカン・ジャーナル・オブ・ネフロロジー(Am. J. Nephrol.),2001年,第21巻,p.112〜119;クーン・シー,クーン・エー,ルイコフ・ケー,オステン・ビー(Kuhn C., Kuhn A., Rykow K., Osten B.),「エクストラヴァスキュラー・ラング・ウォーター・インデックス:ア・ニュー・メソッド・トゥ・ディターミン・ドライ・ウェイト・イン・クロニック・ヒモダイアリシス・ペイシェンツ(Extravascular lung water index: a new method to determine dry weight in chronic hemodialysis patients)」,ヒモダイアリシス・インターナショナル(Hemodial. Int.),2006年,第10巻,p.68〜72)、熱希釈算定法、一実施形態では血管外肺指数算定(クーン・シー,クーン・エー,ルイコフ・ケー,オステン・ビー(Kuhn C., Kuhn A., Rykow K., Osten B.),「エクストラヴァスキュラー・ラング・ウォーター・インデックス:ア・ニュー・メソッド・トゥ・ディターミン・ドライ・ウェイト・イン・クロニック・ヒモダイアリシス・ペイシェンツ(Extravascular lung water index: a new method to determine dry weight in chronic hemodialysis patients)」,ヒモダイアリシス・インターナショナル(Hemodial. Int.),2006年,第10巻,p.68〜72)、一実施形態ではベクトル法によるバイオインピーダンス測定法、特に単一周波数バイオインピーダンス測定又は多周波数バイオインピーダンス測定、特にBCMによる、一実施形態では全身バイオインピーダンス分光法による、一実施形態では分節バイオインピーダンス分光法(BIS)又はふくらはぎ標準化抵抗率による(チュー・エフ,コタンコ・ピー,レビン・ダブリュー・エル(Zhu F., Kotanko P., Levin W.L.),「エスティメイション・オブ・ノーマル・ハイドレーション・イン・ダイアリシス・ペイシェンツ・ユージング・ホール・ボディ・アンド・カーフ・バイオインピーダンス・アナリシス(Estimation of normal hydration in dialysis patients using whole body and calf bioimpedance analysis)」,フィジオロジカル・メジャーメント(Physiol. Meas.),2011年,第32巻,p.887〜902R)、一実施形態では ふくらはぎバイオインピーダンス分光法による(ピコリ・エー,ロッシ・ビー,ピロン・エル,ブキアンテ・ジー(Piccoli A., Rossi B., Pillon L., Bucciante G.),「ア・ニュー・メソッド・フォア・モニタリング・ボディ・フルイッド・バリエーション・バイ・バイオインピーダンス・アナリシス:ザ・アールエックスシー・グラフ(A new method for monitoring body fluid variation by bioimpedance analysis: the RXc graph)」,キドニー・インターナショナル(Kidney. Int.),1994年,第46巻,p.534〜539;モイスル・ユー・エム,ワベル・ピー,シャムニー・ピー・ダブリュー(Moissl U.M., Wabel P., Chamney P.W.),「ボディ・フルイッド・ボリューム・ディターミネーション・ヴィア・ボディ・コンポジション・スペクトロスコピー・イン・ヘルス・アンド・ディジーズ(Body fluid volume determination via body composition spectroscopy in health and disease)」,フィジオロジカル・メジャーメント(Physiol. Meas.),2006年,第27巻,921〜933;シャムニー・ピー・ダブリュー,クラマー・エム,ロード・シー,クライネコフォート・ダブリュー,ワイズマン・ブイ(Chamney P.W., Kramer M., Rode C., Kleinekofort W., Wizemann V.),「ア・ニュー・テクニック・フォア・エスタブリッシング・ドライ・ウェイト・イン・ヒモダイアリシス・ペイシェンツ・ヴィア・ホール・ボディ・バイオインピーダンス(A new technique for establishing dry weight in hemodialysis patients via whole body bioimpedance)」,キドニー・インターナショナル(Kidney Int.),2002年,第61巻,p.2250〜2258;チュー・エフ,コタンコ・ピー,ハンデルマン・ジー・ジェイ(Zhu F., Kotanko P., Handelman G.J.),「エスティメイション・オブ・ノーマル・ハイドレーション・イン・ダイアリシス・ペイシェンツ・ユージング・ホール・ボディ・アンド・カーフ・バイオインピーダンス・アナリシス(Estimation of normal hydration in dialysis patients using whole body and calf bioimpedance analysis)」,フィジオロジカ
ル・メジャーメント(Physiol. Meas.),2011年,第32巻,p.887〜902;チュー・エフ,クールマン・エム・ケー,コタンコ・ピー,セイバート・イー,レオナルド・イー・エフ,レビン・エヌ・ダブリュー(Zhu F., Kuhlmann M.K., Kotanko P., Seibert E., Leonard E.F., Levin N.W.),「ア・メソッド・フォア・ザ・エスティメイション・オブ・ハイドレーション・ステイト・ドゥアリング・ヒモダイアリシス・ユージング・ア・カーフ・バイオインピーダンス・テクニック(A method for the estimation of hydration state during hemodialysis using a calf bioimpedance technique)」,フィジオロジカル・メジャーメント(Physiol. Meas.),2008年,第29巻,p.503〜516;ロポット・エフ,ネイエドリー・ビー,ノヴォトナ・エイチ,マクノヴァ・エム,スルコヴァ・エス(Lopot F., Nejedly B., Novotna H., Mackova M., Sulkova S.),「エイジ‐リレイテッド・エクストラセルラー・トゥ・トータル・ボディ・ウォーター・ボリューム・レイシオ(イーシーヴイ/ティービーダブリュー)‐‐キャン・イット・ビー・ユーズド・フォア“ドライ・ウェイト”ディターミネイション・イン・ダイアリシス・ペイシェンツ? アプリケーション・オブ・マルチフリークエンシー・バイオインピーダンス・メジャーメント(Age-related extracellular to total body water volume ratio (Ecv/TBW)?can it be used for “dry weight” determination in dialysis patients? Application of multifrequency bioimpedance measurement)」,ザ・インターナショナル・ジャーナル・オブ・アーティフィシャル・オーガンズ(Int. J. Atrif. Organs),2002年,第25巻,p.762〜769)、体内総水分量(TBW)と細胞外水分量(ECV)の比、及び一実施形態では血液量モニタ(BVM)による、一実施形態では細胞外コンパートメント中の光学的性質を算定することによる血液量測定法(ロポット・エフ,ニヨンネイサン・ブイ,スバロヴァ,ポラコヴィック・ブイ,スヴァラ・エフ,スルコヴァ・エス(Lopot F., Nyiomnaitham V., Svarova, Polakovic V., Svara F., Sulkova S.),「コンティニュアス・ブラッド・ボリューム・モニタリング・アンド“ドライ・ウェイト”アセスメント(Continuous blood volume monitoring and “dry weight” asessment)」,ジェイ・レン・ケア(J. Ren. Care),2007年,第33号,p.52〜58;ブース・ジェイ,ピニー・ジェイ,ダベンポート・エー(Booth J., Pinney J., Davenport A.),「ドゥ・チェインジズ・イン・レラティブ・ブラッド・ボリューム・モニタリング・コリレイト・トゥ・ヒモダイアリシス‐アソシエイテッド・ハイポテンション?(Do changes in relative blood volume monitoring correlate to hemodialysis-associated hypotension?)」,ネフロン・クリニカル・プラクティス(Nephron. Clin. Pract.),第117号,p.179〜183;シンハ・エー・ディー,ライト・アール・ピー,アグラワル・アール(Sinha A.D., Light R.P., Agarwal R.),「レラティブ・プラズマ・ボリューム・モニタリング・ドゥアリング・ヒモダイアリシス・エイズ・ザ・アセスメント・オブ・ドライ・ウェイト(Relative plasma volume monitoring during hemodialysis AIDS the assessment of dry weight)」,ハイパーテンション(Hypertension),第55巻,p.305〜311)によって算定される。なお、これら非特許文献を参照により引用し、その開示内容全体を本明細書の一部とする。
【0100】
以下において、第2の流体状態を或る特定の透析セッション中、一実施形態では、毎回の透析セッション中、透析内測定によって算定する。
【0101】
好ましい一実施形態では、透析内測定は、分節バイオインピーダンス分光法、一実施形態ではふくらはぎバイオインピーダンス分光法(cBIS)によって実施される。
【0102】
この好ましい実施形態では、透析セッション中における相対抵抗及び/又は標準化抵抗率CNR(ρ/BMI)の進展が連続的に又は間欠的に評価される。対応のグラフ図が
図3及び
図4に示されている。
【0103】
相対抵抗の変化の勾配は、身体の考慮対象の分節、この場合ふくらはぎ中の過剰流体量の除去を表している。相対抵抗曲線の平坦化は、血管内コンパートメントと隙間コンパートメントとの間の流体交換が平衡状態に達したことを意味している。したがって、相対抵抗の曲線が平坦になった場合、患者のドライウェイトに対応した正常流体状態に達する。このことは、経時的な抵抗曲線の勾配が僅かな絶対値に達し又はそれどころかゼロになったことを意味している。
【0104】
図3は、比R(t=0)/R(t)(連続線)により表された相対抵抗及び透析セッションの開始(0分のところ)とセッションの終わり(200分後)との間の標準化抵抗率(点線)の進展を示している。相対抵抗の曲線から、相対抵抗が直線的に減少していることが明らかになっている。したがって、ドライウェイトにはまだ達していない。
【0105】
図4は、相対抵抗(R(t=0)/R(t))及び標準化抵抗率CNRの別の進展を示している。相対抵抗は、透析セッションの終わりのところで平坦化していることが理解できる。さらに、CNRは、この特定の患者のドライウェイトのジェンダースペシフィック範囲に対応して18のところに位置している。したがって、ドライウェイトに達している。
【0106】
ドライウェイトに達したかどうかを透析中に判定する別の判断基準は、第1期(I)の終了/第2期(II)の開始に関して上述した相対血液量の進展である。この場合、経時的な曲線が
図2Cに同等な形態を示したときにドライウェイトに達する。
【0107】
患者のドライウェイトに対応する正常流体状態に達したことを確かめる追加の判断基準は、一実施形態では、標準化抵抗率が患者の正常流体状態のジェンダースペシフィック範囲内にあるかどうかを判定することである。当業者には理解されるように、これは、オプションとしての判断基準に過ぎず、必ずしも患者のドライウェイトを算定するために必要であるわけではない。
【0108】
本発明の方法の一実施形態では、透析中測定は、第2期(II)において
図1の流体状態曲線上のフラッシュによって示されているように毎回の透析セッション中に実施される。透析中測定によって、患者の流体状態を極めて正確に算定すると共に着実にモニタすることができる。これは、特に重要である。というのは、ドライウェイトは、患者が血液量減少症状で苦しむのが始まる血液量減少徴候性体重(HSW)をほんの僅か上回るからである。
【0109】
患者が正常流体状態又は体重範囲内の流体状態の安定した条件にいったん達すると、本発明の方法の透析中測定及びかくして第2期(II)を停止させる。一実施形態では、この場合、患者の流体状態は、
図1の第3期(III)に示されているように正常流体状態を中心として揺れ動く。
【0110】
この第3期(III)では、患者の流体状態を第1期(I)の場合のように透析間で算定する。流体状態の算定の定期性は、それほど頻繁でなくても良い。というのは、患者は、正確な流体状態、即ち正常流体状態を中心として揺れ動く流体状態に合わせて調節されるからである。第3期(III)を流体状態維持段階として指示することができる。患者は、その患者の流体状態が調節された後に最適流体状態に維持されるべきである。診断の第3期(III)の目的は、患者の流体状態の比較的正確な推定を提供する一方で、測定による算定の不都合をできるだけ小さく保つことにある。したがって、患者がその患者の流体状態に関してその患者の正常流体状態又は体重を中心として揺れ動いている限り、透析セッション相互間では算定の頻度を少なくした状態で透析間算定を行うことができる。
【0111】
患者が不快であると感じた場合又は患者の流体過負荷及び/又は体重が再び上昇を始めた場合、第2期(II)から始まって本発明の方法を再び適用して患者の変化したドライウェイトを新たに算定すると共にこの新たなドライウェイトに合わせて患者を調節する。体重のかかる変化は、例えば身体脂肪又は筋肉の多少に起因して患者の体重の変化によって又は患者の身体成分の他の何らかの変化によって引き起こされる場合がある。
【0112】
当初において流体過負荷状態の透析患者を正常流体状態にする別の方法では、上述したのと同一又は同等のステップを適用する。
【0113】
この方法と先の方法の差は、更に第1期(I)において第1の流体状態を算定すると共に第2期(II)において第2の流体状態を算定するために、患者の流体過負荷も又これらの期の各々の間、それぞれ第1又は第2の流体状態に基づいて減少させることにある。
【0114】
透析セッション中に体内から除去される流体の量は、先のセッションに対する相対的な体重減少、推定正常流体状態及び絶対的な流体状態差の情報に基づいて又は患者の推定ドライウェイトに基づいて算定される。
【0115】
絶対的流体状態差は、算定された流体(過負荷)状態と正常流体状態の差である。流体状態と正常流体状態は共に、リットル又はキログラムで表される場合がある。以下の実施例に示されているように、透析セッション中における体重の1kgの減少は、体内流体量の1Lの減少にほぼ対応している。
【0116】
正常流体状態が患者の最適体重を中心として約1〜2kgの範囲内におけるその患者の流体状態に対する患者の最適体重の指標を与えるが、ドライウェイトは、この範囲に含まれる別個の流体状態を指示する。既に上述したように、ドライウェイトは、個人が流体過負荷又は流体不足を表す症状を示さないで正常流体状態にできるだけ近い状態にある体重であり、即ち、患者の流体状態は、患者が
図1Bに示されているように血液量減少徴候性体重(HSW)を上回るようなものである。通常、ドライウェイトは、正常流体状態又は体重NFSW
wBISの算定された値よりも小さいが、正常流体状態の範囲内にある。
【0117】
この場合も又、本発明の方法の互いに異なる期(I,II,III)は、流体状態の互いに異なる段階を定めており、流体減少の基準を与える流体状態の算定の種々の技術は、経済的な観点、患者の快適さ及び/又は算定の必要な精度に関して利点を有する。
【0118】
流体状態を透析間で算定する第1期(I)の間、患者の流体過負荷は、せいぜい、第1期(I)における各透析セッション中、一実施形態では0.5kgの体重の減少、一実施形態では0.3kgの体重の減少、一実施形態では0.2kgの体重の減少、一実施形態では0.1kgの体重の減少に対応したレベルまで減少する。これは、血液量減少の透析中症状を引き起こさないようにするために重要である。他の好ましい実施形態では、この限度は又、本発明の方法の第2及び/又は第3期(II;III)において流体過負荷減少に合わせて設定される場合がある。この制限された減少は、患者のドライウェイトを正確に算定することができない場合であっても、患者がセッション中、血液量減少症状をこうむらないようにするようにする。
【0119】
第2期(II)中、患者がドライウェイトを透析中算定によって正確に算定することができる。これは、患者をその患者の正常流体状態重量に正確に調節するのに役立つ。
【0120】
第3期(III)、即ち維持段階では、流体状態の算定方法は、この場合も透析間であり、その結果、流体状態は、過度のコストを生じさせることなく且つ/或いは患者に不快感を生じさせることなく制御下にある。
【0121】
流体状態の算定及び/又はドライウェイト、wECV/wTBWの比の推定に用いられるバイオインピーダンス方法、全身モデル(WBM)、ふくらはぎ標準化抵抗率(CNR)方法及び連続cBISが
図5〜
図9を参照して以下に与えられている。
【0122】
a)全身バイオインピーダンス分光法(wBIS)
【0123】
バイオインピーダンスは、非侵襲性技術である。代表的な用途では、電流を
図5に示されているように患者の手首及び足首上に配置された1対の刺激電極を介して被験者に流す。追加の対の記録電極が結果としての電位差をモニタする。細胞内コンパートメントを通る電流の導通度は、電気キャパシタの電気的性質とほぼ同じ電気的性質を示す細胞膜の存在に起因して周波数依存性である。組織前後で生じる電位差も又印加された電流に対して位相ずれを生ずるので、全体的測定が周波数依存性を意味する(インピーダンス)と呼ばれている。低周波数交流電流の印加により、組織の細胞外空間をほぼもっぱら通る導通が生じる。低周波数では、細胞膜は、電流の通過を妨げる絶縁材として挙動する。高周波数範囲では、細胞膜は、導電性であり、電流が細胞内空間と細胞外空間の両方を通って流れる。
【0124】
互いに異なる周波数でのインピーダンス及び位相ずれの分析によって、身体組織の細胞外水分量の抵抗(ECV;R
E)及び細胞内水分量の抵抗(ICV;R
I)を導き出すことができる。R
EとR
Iの両方の値は、それぞれの組織コンパートメント内の流体の量に依存している。身体分節の人体計測測定と希釈試験から求められた組織抵抗率定数を組み合わせることによってECV及びICVを計算することができる。
【0125】
b)流体状態を推定するための全身モデル(WBM)
【0126】
上述したように、重篤な流体過負荷量は、wBISにより過小評価される。
【0127】
wBIS方法のこれらの欠点を解決するため、wECV、wICV、wTBW及び体脂肪量の評価に基づく新型全身成分モデル(WBM)がシャムニー・ピー・ダブリュー,ワベル・ピー,モイスル・ユー・エム等(Chamney P.W., Wabel P., Moissl U.M. et al.),アメリカン・ジャーナル・オブ・クリニカル・ニュートゥリション(Am. J. Clin. Nutr.),2007年1月,第85巻,第1号,p.80〜89に記載されているように最近において開発された。なお、この非特許文献を参照により引用し、その開示内容全体を本明細書の一部とする。WBMは、身体コンパートメントの流体成分の評価を組み込み、wECV、wICV及び体重(BW)の透析前測定を採用することによって現在の流体状態と正常流体状態又は正常流体状態重量(NFSW
wBIS)との絶対的な流体状態差(ΔHS)を計算する。このモデルは、一部は、正常水和状態の脂肪の少ない組織及び脂肪組織の流体状態が一定であるという概念に基づいている。臨床上の報告の示すところによれば、これは、流体評価にとって有用な方法である。
【0128】
以下の実施例では、Hydra 4200により測定されたwECV及びwICVを用いてこのモデルを適用し、そして、シャムニー・ピー・ダブリュー,ワベル・ピー,モイスル・ユー・エム等(Chamney P.W., Wabel P., Moissl U.M. et al.),アメリカン・ジャーナル・オブ・クリニカル・ニュートゥリション(Am. J. Clin. Nutr.),2007年1月,第85巻,第1号,p.80〜89、国際公開第2006/002656(A1)号パンフレット及び/又は同第2006/002685号パンフレットに従って再計算した。なお、かかる非特許文献及び特許文献を参照により引用し、これらの開示内容全体を本明細書の一部とする。このモデルは、正常流体状態及び正常流体状態重量の、即ち、腎臓が働いている状態の患者の体重の患者に特有の予測が可能である。
【0129】
WBMによる正常流体状態(NFSW
wBIS)での予想体重を次式によって書き表すことができる。
NFSW
wBIS = 透析前重量(体重) - ΔHS [kg] (1)
流体状態又は過剰流体の質量若しくは過剰流体量の絶対差(ΔHS)は、次の通りである。
ΔHS = [ECW
WB - H
ECW_NH_AT X M
WB + k X (ICW
WB - H
ICW_NH_AT X M
WB)]
/ [H
ExF - (H
ECW NH_AT + k X H
ICW_
NH_AT)] [kg] (2)
上式において、次の通りである。
H
ECW_NH_AT = M
ECW_NH_
AT / M
NH_AT (3)
H
ICW_NH_AT = M
ICW_NH_AT / M
NH_AT (4)
H
ExF = M
ExW / M
ExF (5)
k = (H
ECW_NH_AT - H
ECW_NH_LT)/ (H
ICW_NH_LT - H
ICW_NH_AT) (6)
上式において、NHは、正常流体状態を示し、ATは、脂肪組織であり、LTは、脂肪の少ない組織である。
【0130】
c)ドライウェイト(DW
cBIS)を算定するためのふくらはぎバイオインピーダンス測定
【0131】
DW
cBISと呼ばれる実際のドライウェイトの算定のためのふくらはぎバイオインピーダンス分光法(cBIS)は、ユニークにも、流体量と正常母集団の比較を必要としない。
【0132】
測定の目的は、ふくらはぎの細胞外水分量(cECV)に関する情報を得ることにある。
【0134】
ドライウェイト推定は、個人のふくらはぎに対するバイオインピーダンス測定の性能に基づいている。ふくらはぎは、他の身体分節、例えば腕及び体幹よりも重力に鑑みて一層水和又は水分過剰状態になっていることが分かっているのでふくらはぎが選択された。
【0135】
実際には、5kHzの刺激周波数について得られた抵抗値の結果としてドライウェイトの非常に正確な推定(DW
cBIS)が得られることが判明しており、他の周波数を用いることができ、抵抗値に代えて、5kHz又は別の周波数でのインピーダンスの大きさについての値(|Z|)を用いることができるということは言うまでもない。同様に、複数の周波数での抵抗値及び/又はインピーダンス値の組み合わせを用いることができ、例えば、平均R値、平均|Z|値又は複数の周波数(例えば、1.5及び10kHz)に関するR値の平均値を用いることができる。
【0136】
図6は、個人のふくらはぎに対するバイオインピーダンス測定の性能に関与する基本要素を示す略図である。図示のように、バイオインピーダンスシステムは、AC電流を2つの互いに間隔を置いた場所で患者のふくらはぎの表面上に流す刺激システムと、一実施形態では刺激場所の内側に位置する2つの互いに間隔を置いた場所での結果として生じるAC電圧差を検出する記録システムとを含む。次に、AC電圧差を用いてバイオインピーダンス値を計算し又は場合によっては単純に抵抗(R)値を計算する。
【0137】
この手順は、一実施形態では、一周波数、例えば5kHzで又は一実施形態では複数の周波数で実施される。この技術は、ふくらはぎバイオインピーダンス分光法(cBIS)と呼ばれている。
【0138】
図7は、患者のふくらはぎに対するバイオインピーダンス手技で用いられる刺激電極(E
11,E
12)及び記録電極(E
S1,E
S2)の代表的な場所を示している。この図に示されているように、E
S1に都合の良い場所は、ふくらはぎの最大周囲(C
1)のところであり、E
S2は、最大周長及びE
S1から10cm遠位側に位置したところに位置する。以下の実施例では、2つの刺激電極E
11,E
12の一方をE
S1/C
1の5cm近位側に配置し、他方の電極をE
S2/C
2の5cm遠位側に配置した。
【0139】
DW
cBISは、透析中に記録された抵抗曲線の(R(t=0)/R(t))の平坦化が起こった体重として定義される。cBISは、このインターベンションにより透析後体重をDW
cBIS未満に減少させることによって臨床的に有効にされ、その結果、低血圧及び他の血液量減少症状が生じ、即ち、DW
cBISは、血液減少徴候性体重(HSW)よりも大きい中で患者の最も低い体重である。
【0140】
抵抗曲線(R(t=0)/R(t))の平坦化に加えて、DW
cBISの存在を確認するため、これは、一実施形態では、患者のふくらはぎ標準化抵抗率(ρN)がそれぞれのジェンダースペシフィック透析後正常範囲内にあるかどうかを判定される。
図9は、健常は男性及び女性について算定されたふくらはぎ標準化抵抗率値を示している。
【0141】
ふくらはぎ標準化抵抗率(ρN)をチュー等(Zhu et al.),「ア・メソッド・フォア・ザ・エスティメイション・オブ・ハイドレイション・ステイト・ドゥアリング・ヒモダイアリシス・ユージング・ア・カーフ・バイオインピーダンス・テクニック(A method for the estimation of hydration state during hemodialysis using a calf bioimpedance technique)」,フィジオロジカル・メジャーメント(Physiol. Meas.),2008年,S503〜S516に従って計算する。なお、この非特許文献を参照により引用し、その開示内容全体を本明細書の一部とする。抵抗率値を次の方程式から求める。
ρ = R ・ A/L [Ω・m] (7)
上式において、Aは、例えば2つの周長の平均値によって計算された断面積であり、
A=(C
1+C
2)
2/(16・π) [m
2] (8)
上式において、
図6に示されているように、Lは、バイオインピーダンス手技で用いられた記録電極相互間の間隔であり(この場合、L=0.1m)、Aは、個々のふくらはぎの代表的な断面積であり、メートルで表されたCは、ふくらはぎに対して実施された1回又は2回以上の周長測定から得られた個人のふくらはぎに関する周長値であり、Rは、バイオインピーダンス手技から得られたふくらはぎに関する抵抗値である。
【0142】
方程式(7)から得られたρ値を標準化するのに、これを個人の体型指数(BMI=体重[kg]/(身長[m])
2)で除算し、即ち、標準化された抵抗率ρN(“nRho”とも呼ばれる)は、次式によって与えられる。
ρN = ρ/BMI [Ω・m
3/kg] (9)
【0143】
図8は、ドライウェイトが推定されるべき個人についてのバイオインピーダンス及び他のデータを受け取って分析するための代表的な処理システムを示している。このシステムは、cBISのみについて表されているが、他の電極を備えた同一のシステムをwBISに適用できることが理解されるべきである。図示のように、このシステムは、バイオインピーダンスシステムから測定データを受け取ると共に入力モジュールから他形式の入力、例えば、キー入力でき又は電子的に提供される個々の性別、体重、身長等に関する入力を受け取る中央処理装置(CPU)を含むのが良い。このシステムは、情報をユーザに提供するディスプレイモジュール、一実施形態では、液晶ディスプレイ(LCD)を採用したディスプレイモジュール並びに入力モジュールに接続されていて、ユーザが情報をシステムに提供することができる手段としてのキーボード(図示せず)を更に含むのが良い。
【0144】
図8に示されているように、バイオインピーダンスシステムは、一実施形態では、刺激電極(例えば、
図7のE
11,E
12)及び記録電極(例えば、
図7のE
S1,E
S2)を支持した圧力カフ7を採用している。電極は、所望に応じて使い捨てであっても良く再使用可能であっても良い。圧力カフは、例えば
図8の周長モジュールの使用により患者のふくらはぎの周長に関する値を算定するプロセスの一部として採用可能である。例えば、張力センサを用いて、張力試験を
図8の張力試験モジュールによって実施することができ、それにより周長を算定する前に個人のふくらはぎを所望程度まで圧縮したことを確認することができる。周長を種々の方法、例えば国際公開第2005/027717号パンフレットに開示されている形式の電気抵抗技術によって算定することができ、なお、この特許文献を参照により引用し、その開示内容全体を本明細書の一部とする。周長を例えば記録電極の配置場所のところ(又は1つ又は2つ以上の他の好都合な場所のところ)で測定するのが良く、多数回の測定を行う場合、平均値が得られるようこれらを平均するのが良い。圧力カフを用いるのではなく、柔軟性巻き尺を用いて周長を手作業で測定することができる。この場合も又、1回の測定を行っても良く、或いは多数回の測定を行って平均しても良い。個人のふくらはぎの周長を算定する他の技術を所望に応じて使用することができる。しかしながら、算定されると、周長値は、最終的には、CPUに提供され、次に個人のふくらはぎに関する抵抗率値を求める際に使用される。
【0145】
本発明によれば、本発明の方法を実施するのに必要な要素の全てを一器械内に具体化するのが良い。これは、全身バイオインピーダンス分光法、ふくらはぎバイオインピーダンス分光法及び/又は相対的血液量モニタを実施し、必要な測定を制御し、そして測定値に基づいて上述の指定されたパラメータを計算するために必要なハードウェアを含む。特に、かかる器械は、メモリ、デジタル信号プロセッサ、第1期(I)における治療セッション相互間の患者の第1の流体状態を算定するよう構成された第1の算定ユニット、第1の流体状態に基づいて患者の流体過負荷を減少させるよう構成された第1の減少ユニット、第2期(II)における治療セッション中、患者の第2の流体状態を算定するよう構成された第2の算定ユニット及び/又は第2の流体状態に基づいて患者の流体過負荷を減少させるよう構成された第2の減少ユニットを含むのが良い。別の実施形態では、この器械は、第3の判定及び/又は第3の減少ユニットを含む。これらユニットは、各々、本発明の方法を実施するために必要なアクションを行うよう構成されている。別の実施形態では、かかる器械は、更に、患者の流体過負荷を減少させるために患者の流体状態を自動的に制御するようになっている。
【0147】
実施例の実験手順は次のようなものであった。実験手順は、ニューヨーク所在のベス・イスラエル・メディカル・センター(Beth Israel Medical Center)のインスティテューショナル・レビュー・ボード(Institutional Review Board)によって認可された。書面によるインフォームドコンセントを全ての参加者から得た。
【0149】
ベス・イスラエル・メディカル・センター及びレナル・リサーチ・インスティテュート(Renal Research Institute)透析施設からの21人の流体過負荷維持血液透析患者(男性11人/女性10人、年齢58±13歳)について研究した。連続cBISを用いてDW
cBISを算定することによって、流体状態を全ての患者において研究の開始時に評価し、DW
cBIS基準が第1期(I)において第1のセッションの終わりに満たされていない場合、血液透析後透析体重を次の各セッションにおいて0.2〜0.3kgだけ減少させた。患者がDW
cBISにいったん達すると、患者は、第2期(II)の標的領域内にあると定められた。
【0150】
患者の流体状態の減少のモニタを次のセッションごとに連続cBISによって行った。これと並行して、wBISにより算定されたECV/TBWの比をモニタした。このことから、上述の指定された生理学的組織モデル、即ち、全身モデル(WBM)を用いて正常流体状態も又算定した。連続cBISによって算定されたドライウェイト(DW
cBS)に達した患者がDW
cBS患者群を構成し、残りの患者は、非DW
cBS患者群を構成した。
【0151】
この実施例では、Hydra 4200(カリフォルニア州サンディエゴ所在のキシトロン・テクノロジーズ・インコーポレイテッド(Xitron Technologies Inc.))を用いて血液透析前及び血液透析後全身バイオインピーダンス分光法(wBIS)を実施し、その間、患者は、各透析セッション時に仰臥位値にあった。wBIS測定を手首及び足首上に配置された電極により50個の周波数範囲(5kHz〜1000kHz)にわたり血液透析前に実施して全身細胞外水分量(wECV)、全身細胞内水分量(wICV)を測定し、そして全身水分量(TBW)を計算した。モイスル・ユー・エム,ワベル・ピー,シャムニー・ピー・ダブリュー等(Moissl U.M., Wabel P., Chamney P.W., et al.),「ボディ・フルイッド・ボリューム・ディターミネーション・ヴィア・ボディ・コンポジション・スペクトロスコピー・イン・ヘルス・アンド・ディジーズ(Body fluid volume determination via body composition spectroscopy in health and disease)」,フィジオロジカル・メジャーメント(Physiol. Meas.),2006年,第27巻,921〜933によって変形された方程式を用いてwECV及びwICVを計算した。なお、この非特許文献を参照により引用し、その開示内容全体を本明細書の一部とする。wBIS測定も又、透析セッションの終了後数分で実施した。wECV/TBWの比及びwECV/wICVの比を用いて研究の互いに異なる期で流体状態を表示した。
【0152】
改造型Hydra 4200装置を用いてcBISにより透析中細胞外ふくらはぎ抵抗(R)を連続的に測定した。瞬間比R(t=0)/R(t)をこれら測定値から求めた(R(t=0)は、透析セッションの開始時におけるRであり、R(t)は、時刻tにおけるRであり、ふくらはぎECVの透析中変化を反映している)。5kHzにおける抵抗がバイオインピーダンス値として選択された。
【0153】
血液透析前及び血液透析後に収縮期血圧(SBP)及び拡張期血圧(DBP)を測定した(ブラッド・プレッシャー・モジュール(Blood Pressure Module)、フレセニウス2008K・ダイアリシス・マシン(Fresenius 2008K Dialysis Machine)を使用)。各セッション全体を通じて限外濾過率(UFR)及び限外濾過量(UFV)を記録した。
【0155】
SPSSソフトウェアバージョン15.0(米国イリノイ州シカゴ所在のエスピーエスエス・インコーポレイテッド(SPSS Inc.))及びGraphPad Prism 5(カリフォルニア州サンディエゴ所在のグラフパッド・ソフトウェア・インコーポレイテッド(GraphPad Software Inc.))を用いて統計的分析を実施した。データは平均値±標準偏差(SD)として報告される。DW
cBISに達する前に異なる流体状態で量(体積)パラメータと流体状態パラメータを比較するために、各患者について血液透析後体重を、ベースラインとDW
cBISとの血液透析後体重の差を3分割することによって3つのサブグループに分類して、DW
cBISに達する前に流体状態の3つの互いに異なる段階(本発明の第1及び第2期(I,II)に対応している)を表した。第1期(I)は、全ての患者に関して流体過負荷状態を示すベースライン測定を表している。第1期(I)と研究の終わりの比較のために対をなしたt試験を用いた。NFSW
wBISとDW
cBISの関係を単純な線形相関及びブランド‐アルトマン分析によって分析した。cBIS及びWBMにより推定される流体状態の差の臨床的意義を評価するため、平均収縮期血圧(SBP)及び拡張期血圧(DBP)を異なる流体状態で比較した。0.05未満の値のPを統計学的に有意であるとみなした。血液透析セッション中における体重の1kgの減少が体液量の1Lの減少に相当すると仮定した。体成分は、研究中全体にわたって一定のままであると仮定された。
【0157】
実験の終わりに、患者の2つの群を識別しなければならず、一方の群は、DW
cBIS(DW
cBIS患者)に達し、他方の群は、達しなかった(非DW
cBIS患者)。21人の患者のうちの9人(43%)がcBISにより定められたDW
cBISに達し、12人の患者(57%)がDW
cBISに達しなかった。DW
cBIS患者群の中で50±30日以内にDW
cBISに達した。非DW
cBIS患者に関し、研究を45±24日後に終了させた。
【0158】
wECVの透析中変化は、体重の透析中変化と良好な一致を示した(期Iでは−0.109kg±0.77kg、実験の終わりでは0.035kg±0.77kg)。かくして、血液透析セッション中における体重1kgの減少は、体液量の1Lの減少に対応することが確認された。
【0159】
DW
cBIS患者の群では、R(t=0)/R(t)曲線の平坦化が起こり、血液透析後ρNが第1期(I)と第2期(II)の終わりとの間でジェンダースペシフィック正常範囲に増大した(ベースラインにおけるρNは、18.2±3.0・10
-2Ωm
3/kg、研究の終わりでは、21.4±1.8・10
-2Ωm
3/kg、p<0.01)。これら患者は、その時点でドライウェイト状態にあるとみなされた。第1期(I)と第2期(II)の終わりとの間で全てのDW
cBIS患者について比較を行った。3人のDW
cBIS患者は、測定エラーのために第2期(II)の分析では除かれなければならなかった。
【0160】
1.a)この群に関するwBISは、以下の結果を示し、即ち、第1期(I)と第2期(II)の終わりとの間では、平均血液透析後体重は、2.3±0.8kg(75.7±16.2kg対73.4±15.8kg、p<0.001)だけ減少した。wBISにより測定されたwECVは、1.1±1.0L(13.8±2.5L対12.72±2.2L、p<0.01)しか減少せず、かくして、実際の体重減少の46%にしか相当しなかった。wECVの相当な低下にもかかわらず、血液透析後wECV/TBWの比(0.42±0.03対0.41±0.03、p=0.22)及びwECV/wICVの比(0.72±0.08対0.69±0.08、p=0.24)は、それぞれ、第1期(I)と第2期(II)との終わりとの間では変化しなかった。血液透析後wICVではなく血液透析前wICVは、第1期(I)から第2期(II)の終わりまで減少した。
【0161】
1.b)全身モデル(WBM)による正常流体状態重量(NFSW
wBIS)の予想は、実際のDW
cBISよりも全ての流体状態段階でNFSW
wBISについてかなり高い値を示した。これら患者のNFSW
wBIS平均予想値は、第1期(I)中1.8±1.2kg、1.4±1.0kg、1.0±1.2kg、第2期(II)では0.59±1.3kgであった流体状態の互いに異なる程度を表す現在の血液透析前体重に基づいて並行して減少した。さらに、DW
cBISに達したときに透析セッション時に測定されたDW
cBISとNFSW
wBISの差の平均値は、1.96±1.04kgになった。
図1Bは、全ての流体過負荷段階におけるNFSW
wBISとDW
cBISとの関係を示している。DW
CBSとNFSW
wBISは高い相関関係(R
2=0.996、p<0.001)を示した。さらに、WBM(NFSW
wBIS)により予想される正常流体状態重量は、流体過負荷の漸次減少につれて減少した。研究の終わりでは、NFSW
wBISは、1.97±1.0kgであり、DW
cBISよりも高かった。NFSW
wBISとDW
cBISは、DW
cBIS群では強い相関関係を示した(r
2>0.99)が、これは、患者のドライウェイトがwBISにより予想されたNFSW
wBISよりも低いことを示している。結果の示すところによれば、重篤な流体過負荷の量は、wBISでは過小評価される。cBIS方法により求められた実際のドライウェイト(DW
cBIS)とふくらはぎ標準化抵抗率を用いた予想ドライウェイト(DW
CNR)との相関関係が
図10Aに示されている。結果の示すところによれば、DW
CNRは、DW
cBISと強い相関関係をなしており(R
2=0.99)、これについては、
図10Bのブランド‐アルトマン分析も又参照されたい。
【0162】
2)非DW
cBIS患者の群では、R(t=0)/R(t)のふくらはぎバイオインピーダンス分光法(cBIS)曲線は、血液透析セッション中、本質的には平坦にはならず、ふくらはぎ標準化抵抗率は、第1期(I)(15.2±2.8・10
-2Ωm
3/kg)から正常範囲のしきい値(18〜20・10
-2Ωm
3/kg)のしきい値に向かって研究の終わりまで(16.2±2.2・10
-2Ωm
3/kg)まで僅かしか増大しなかった。これが、これら患者が流体除去にもかかわらず流体過負荷状態のままであり、従って、非DW
cBIS患者群にグループ分けされたことを示している。
【0163】
2.a)この群に関するwBISは、次の結果を示しており、即ち、1.9±1kgの体重の減少では(75.5±16.3kg対73.7±16.1kg、p<0.001)、wECVは、0.56±0.8L(15.9±3.6L対15.4±3.6L、p<0.05)減少し、これは、第1期(I)と研究の終わりとの間における実際の血液透析後体重減少の29%にしかなっていなかった。DW
cBIS患者について注目されるように、wECV/TBW(0.46±0.07対0.46±0.05、p=0.74)及びwECV/ICV(0.79±0.15対0.78±0.11、p=0.72)の血液透析後比は、第1期(I)と研究の終わりとの間ではそれほど異なっていなかった。結論を言えば、この群に見受けられるwBISに関する結果は、DW
cBIS患者群で得られた結果とほぼ同じであった。このことは、wBISが患者のドライウェイトが(DW)を算定するのに適していなかったことを意味している。
【0164】
2.b)予想正常流体状態重量(NFSW
wBIS)は、第1期(I)における血液透析後体重(74.9±17.2kg対75.5±16.3kg、p=0.53)とも研究の終わりにおける血液透析後体重(73.5±16.9kg対73.7±16.1kg、p=0.86)とも異なっていなかった。しかしながら、研究の開始時の第1期(I)におけるNFSW
wBIS(74.9±17kg、p<0.01)は、第1期(I)の終了時におけるNFSW
wBIS(73.5±17kg)よりも著しく高かった。このことは、NFSW
wBISの予想値が患者の流体過負荷の減少目的体重である信頼性のある基準体重を与えていないことを意味している。事実、NFSW
wBISは、患者の流体状態につれて変化する。結論を言えば、NFSW
wBISも又、患者の流体過負荷を減少させるべき目標である流体状態の絶対レベルを算定するようにはなっていない。
【0165】
3)血圧及び低血圧現象の数:DW
cBIS患者群では、NFSW
wBISでは血液透析前及び血液透析後仰臥位置血圧の高いレベルへの傾向が存在していたが、仰臥位置血圧は、それほど異なるものではなかった。したがって、血圧も又、患者の流体過負荷を減少させる目標としてのドライウェイトに対応した流体状態の絶対レベルのための指標として役立つことができない。
【0166】
4)wBISによる分析の示すところによれば、更に、DW
cBIS患者群は、正常流体状態と比較して+1.5±1.2L(透析後:−1.2±1L)の透析前流体状態で始まった。したがって、これら患者をこれら患者のドライウェイトについて調節することができるようにするためには、短期間後、これら患者の全てをcBISによりモニタし、従って、本発明の第2期(II)に入った。第2期(II)の終わりでは、患者は、0.6±1.0L(透析後:−2.0±1.0L)の透析前流体状態を有していた。
【0167】
非DW
cBIS患者群は、正常流体状態と比較して3.35±3.16L(透析後:0.6±3.2L)の透析前流体状態で始まった。かくして、これら患者は断然、研究の開始時では本発明の第1期(I)にあった。研究の終わりでは、患者は、依然として3±2.88L(透析後:0.15±3.02L)の透析前流体状態を有していた。このことは、これら患者が研究の終わりでは依然として明らかに第1期(I)にあったことを示している。これら患者に関し、研究の終わりは、これら患者にとって早すぎるので、本発明の第2期(II)に達することができなかった。
【0168】
患者がDW
cBISに達しなかった理由は幾つかあり、研究の開始時における流体過負荷度が高い場合、食事における塩分及び水分の処方についてのコンプライアンスが欠けると共に/或いは3ヶ月後において患者の不快感と関連して研究が時期尚早に終了したことが挙げられる。
【0170】
透析治療の目的のうちの1つは、透析患者の流体過負荷を減少させることである(一実施形態では、限外濾過によって)。研究から、重篤な流体過負荷状態の患者(非DW
cBIS患者群に含まれる患者)に関し、まず最初に、透析セッション相互間での算定による従来方法によってモニタし、次に、正常流体状態に対する流体過負荷の或る程度の減少が達成されるようにすることが有利である。この時点から、セッション中、流体状態の算定による方法を用いて患者をその患者のドライウェイトに合わせて調節するのが良い。これにより、患者の調節を正確に実施することができる一方で、ノンコンプライアンスを招く透析中算定方法の長い適用期間により引き起こされる患者への不快感を回避することができる。一方式は、透析中ドライウェイト算定の初期段階において連続測定ではなく間欠的測定を用いることである。これにより、快適さ及び患者のコンプライアンスが向上することになる。