(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6384670
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】空冷式電気機器、及び、空冷式電気機器におけるエアフィルタの着脱方法
(51)【国際特許分類】
H05K 7/20 20060101AFI20180827BHJP
B01D 46/10 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
H05K7/20 K
B01D46/10 B
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-3796(P2015-3796)
(22)【出願日】2015年1月13日
(65)【公開番号】特開2016-131166(P2016-131166A)
(43)【公開日】2016年7月21日
【審査請求日】2017年3月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091281
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】中島 健裕
(72)【発明者】
【氏名】酒井 貴悠
(72)【発明者】
【氏名】張 碧波
【審査官】
久松 和之
(56)【参考文献】
【文献】
特開平9−98360(JP,A)
【文献】
実開昭64−35333(JP,U)
【文献】
特開2004−265999(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0040554(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/18 − 7/20
B01D 46/00 − 46/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器の内部を冷却する空気を、エアフィルタを介して、前記電気機器の筺体に形成された吸気孔から前記筺体の内部に吸入する空冷式電気機器であって、前記エアフィルタが、前記筺体の外側に着脱可能に取り付けられたフィルタカバーによって保持される空冷式電気機器において、
前記エアフィルタを内側に保持してなる前記フィルタカバーの前記筺体側の端部に、複数の係止片を突設し、
前記係止片を前記筺体に形成された複数の係止孔にそれぞれ係止させて前記エアフィルタを前記筺体に取り付け、前記係止片と前記係止孔との係止を解除して前記エアフィルタを前記筺体から取り外し可能であると共に、
前記複数の係止片は、前記フィルタカバーの背面下端部に設けられた第1係止片と、前記フィルタカバーの背面上端部に設けられた第2係止片と、を有し、
前記複数の係止孔は、前記第1係止片が挿入されて係止する第1係止孔と、前記第2係止片が挿入されて係止する第2係止孔と、を有し、
前記第1係止片は、前記筺体の下方に向けて開放されて前記フィルタカバーが下方に移動した時に前記第1係止孔の下縁部に係止する第1スリット部と、前記第1係止孔の下縁部に係止して前記フィルタカバーの回動時に支点として機能する突起部と、を備え、
前記第2係止片は、前記筺体の下方に向けて開放されて前記フィルタカバーが下方に移動した時に前記第2係止孔の下縁部に係止する第2スリット部を備えたことを特徴とする空冷式電気機器。
【請求項2】
請求項1に記載した空冷式電気機器における前記エアフィルタの着脱方法において、
前記フィルタカバーの内側に保持された前記エアフィルタを前記筐体に取り付ける際には、
前記第1係止片を前記第1係止孔に挿入し、前記突起部近傍を支点として前記フィルタカバーを前記筺体側に回動させて前記第2係止片を前記第2係止孔に挿入した後、前記フィルタカバーを前記筺体に押し付けながら下方に移動させ、前記第1スリット部及び前記第2スリット部を前記第1係止孔及び前記第2係止孔の下縁部にそれぞれ係合させることにより、前記エアフィルタを前記筺体に取り付け、
前記エアフィルタを前記筐体から取り外す際には、
前記フィルタカバーを前記筐体に沿って上方へ移動させて前記第2係止片と前記第2係止孔との係止を解除した後、前記突起部近傍を支点として前記フィルタカバーを前記筺体から離れる方向に回動させることにより、前記フィルタカバーから前記エアフィルタを取り外すことを特徴とする、空冷式電気機器におけるエアフィルタの着脱方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアフィルタを備えた空冷式電気機器、及び、この空冷式電気機器におけるエアフィルタの着脱方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インバータやコンバータ等の半導体電力変換装置は、筺体内部に収納された半導体ユニットが電力変換を行っており、この半導体ユニットを構成するスイッチング素子等のオン・オフ動作は発熱を伴うため、適切な方法で装置を冷却する必要がある。
従来から用いられている半導体電力変換装置の一般的な冷却方式は空冷方式であり、例えば、筺体正面の扉に吸気孔を配置すると共に天井部に排気用ファンを配置し、外気を筺体内部に流通させることにより、半導体ユニットを冷却している。この場合、筺体内部の絶縁性能を保つ必要があることから、外部から粉塵等が侵入して耐圧が低下しないように、粉塵等を捕集するためのエアフィルタを吸気孔に配置することが行われている。
【0003】
図5は、空冷方式による従来の半導体電力変換装置の扉の正面図である。
図5において、扉101には多数の吸気孔102が形成されている。103は、吸気孔102の前方(紙面手前)に取り付けられるフィルタカバーであり、このフィルタカバー103の内側にエアフィルタ104が配置されている。
なお、フィルタカバー103は、その内側にエアフィルタ104を配置した状態で、上下4箇所をネジ105にて扉101に螺着することにより固定される。
【0004】
また、
図6,
図7は、特許文献1に記載された配電盤のエアフィルタ取付構造を示している。
図6において、筺体111には開口部112が形成され、その前面に開閉可能な蓋113が配置されていると共に、蓋113の吸気孔(図示せず)と前記開口部112との間に位置するようにエアフィルタ114が収納されている。蓋113にはつまみネジ115が取り付けられており、
図7に示すように、つまみネジ115と一体的に回転する係止片116が筺体111側の枠体117に係止することで蓋113が閉状態となり(
図6における実線の状態)、つまみネジ115を90度回転させて係止片116と枠体117との係止を解除することで蓋113が開状態となる(
図6における仮想線の状態)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−93728号公報(段落[0013]、
図3,
図5等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図5〜
図7に示した従来技術では、エアフィルタの交換や清掃を行う際に次のような問題がある。
まず、
図5の従来技術では、エアフィルタ104を着脱するために、4箇所のネジ105を緩め、あるいは締めることによってフィルタカバー103を着脱しなくてはならず、ネジ105を緩める作業や締める作業に多くの時間と労力を必要としていた。特に、
図5のようにエアフィルタ104が複数箇所に配置される場合には、作業時間や労力の負担が一層大きくなる。
【0007】
一方、
図6,
図7の従来技術では、1個のつまみネジ115の操作によって蓋113の開閉を行うことが可能である。しかし、
図6から明らかなように、蓋113を開けてエアフィルタ114を着脱するためには、筺体111の開口部112の前方に、単なる空気流路よりも十分に広い作業空間を確保しなくてはならないため、筺体111の設置場所に制約を受ける場合があった。
【0008】
更に、何れの従来技術においても、フィルタカバー103や蓋113の他に、ネジ105やつまみネジ115、係止片116等の部品が必要であり、これら各種の部品がコスト高の原因となっていた。
【0009】
そこで、本発明の解決課題は、交換や清掃のためのエアフィルタの着脱作業を容易にし、しかもコストの低減を可能にした空冷式電気機器、及び、この空冷式電気機器におけるエアフィルタの着脱方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1に係る空冷式電気機器は、電気機器の内部を冷却する空気を、エアフィルタを介して、前記電気機器の筺体に形成された吸気孔から前記筺体の内部に吸入する空冷式電気機器であって、前記エアフィルタが、前記筺体の外側に着脱可能に取り付けられたフィルタカバーによって保持される空冷式電気機器において、
前記エアフィルタを内側に保持してなる前記フィルタカバーの前記筺体側の端部に、複数の係止片を突設し、
前記係止片を前記筺体に形成された複数の係止孔にそれぞれ係止させて前記エアフィルタを前記筺体に取り付け、前記係止片と前記係止孔との係止を解除して前記エアフィルタを前記筺体から取り外し可能
であると共に、
前記複数の係止片は、前記フィルタカバーの背面下端部に設けられた第1係止片と、前記フィルタカバーの背面上端部に設けられた第2係止片と、を有し、
前記複数の係止孔は、前記第1係止片が挿入されて係止する第1係止孔と、前記第2係止片が挿入されて係止する第2係止孔と、を有し、
前記第1係止片は、前記筺体の下方に向けて開放されて前記フィルタカバーが下方に移動した時に前記第1係止孔の下縁部に係止する第1スリット部と、前記第1係止孔の下縁部に係止して前記フィルタカバーの回動時に支点として機能する突起部と、を備え、
前記第2係止片は、前記筺体の下方に向けて開放されて前記フィルタカバーが下方に移動した時に前記第2係止孔の下縁部に係止する第2スリット部を備えたものである。
【0011】
請求項2に係る
エアフィルタの着脱方法は、請求項1に記載した空冷式電気機器
における前記エアフィルタの着脱方法において、
前記
フィルタカバーの内側に保持された前記エアフィルタを前記筐体に取り付ける際には、
前記第1係止片を前記第1係止孔に挿入し、前記突起部近傍を支点として前記フィルタカバーを前記筺体側に回動させて前記第2係止片を前記第2係止孔に挿入した後、前記フィルタカバーを前記筺体に押し付けながら下方に移動させ、前記第1スリット部及び前記第2スリット部を前記第1係止孔及び前記第2係止孔の下縁部にそれぞれ係合させることにより、前記エアフィルタを前記筺体に取り付け、
前記エアフィルタを前記筐体から取り外す際には、
前記フィルタカバーを前記筐体に沿って上方へ移動させて前記第2係止片と前記第2係止孔との係止を解除した後、前記突起部近傍を支点として前記フィルタカバーを前記筺体から離れる方向に回動させることにより、前記フィルタカバーから前記エアフィルタを取り外すものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明において、フィルタカバーの上下端部に設けた係止片を筺体側の係止孔にそれぞれ係止させれば、フィルタカバーに保持されたエアフィルタを筐体に取り付けることができ、また、エアフィルタを筐体から取り外す際には、フィルタカバーの上端部の係止片の係止を解除し、下端部の係止孔近傍を支点としてフィルタカバーの上端部を筐体から離す方向に回動させることにより、エアフィルタを取り外すことができる。
すなわち、従来技術のようにネジを用いてフィルタカバーを着脱する必要がないため、エアフィルタの着脱が容易になり、作業時間や労力の大幅な削減が可能である。また、フィルタカバー及び筐体に若干の加工を施すだけで良く、部品数が増加することもないため、エアフィルタの着脱構造を低コストにて実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係るフィルタユニットの外観図である。
【
図2】
図1のフィルタユニットが取り付けられる半導体電力変換装置の扉の正面図である。
【
図3】
図1のフィルタユニットを扉に取り付ける手順の説明図である。
【
図4】
図1のフィルタユニットが取り付けられた半導体電力変換装置の扉の正面図である。
【
図5】空冷方式による従来の半導体電力変換装置の扉の正面図である。
【
図6】特許文献1に記載された従来技術の主要部の断面図である。
【
図7】(a)は特許文献1に記載された従来技術の主要部の側面図、(b)は(a)のX−X断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
まず、
図1はこの実施形態に係るフィルタユニット10の外観を示すもので、
図1(a)は正面図、
図1(b)は右側面図である。このフィルタユニット10は、空冷式電気機器の一例である半導体電力変換装置の扉に対して着脱可能となっている。
【0016】
図1(a),(b)において、11は枠状のフィルタカバーであり、その背面内側には1枚のエアフィルタ12が収納されている。14は、フィルタカバー11の前面の桟である。なお、フィルタカバー11に対するエアフィルタ12の取り付け構造は特に限定されず、フィルタユニット10を、半導体電力変換装置の筐体としての扉20(
図2を参照)から取り外した状態でエアフィルタ12を着脱可能であればよい。
フィルタカバー11の背面下端部の両側2箇所には、半導体電力変換装置の扉20に形成された第1係止孔21a,21bにそれぞれ係止する第1係止片13a,13bが突設され、フィルタカバー11の背面上端部の両側2箇所には、扉20に形成された第2係止孔21c,21dにそれぞれ係止する第2係止片13c,13dが突設されている。
【0017】
図1(b)に拡大して示すように、フィルタカバー11の背面下端部に配置される第1係止片13a,13bは、扉20側の第1係止孔21a,21bに挿入可能な係止部131と、第1係止孔21a,21bの下縁部に係合する第1スリット部132と、前記下縁部に当接した状態でフィルタユニット10の回動を可能にするための突起部133と、を備えている。
また、フィルタカバー11の背面上端部に配置される第2係止片13c,13dは、扉20側の第2係止孔21c,21dに挿入可能な係止部134と、第2係止孔21c,21dの下縁部に係合する第2スリット部135と、を備えている。
【0018】
図2は、フィルタユニット10が取り付けられる半導体電力変換装置の扉20の正面図である。
図2において、扉20には、全体としてフィルタユニット10の外形にほぼ適合する大きさとなるように、複数の吸気孔22が形成されている。なお、
図2では、2つのフィルタユニット10を扉20の上下にそれぞれ取り付けるようになっており、上部の吸気孔22群の前面に一つのフィルタユニット10が取り付けられ、下部の吸気孔22群の前面に一つのフィルタユニット10が取り付けられる。
【0019】
また、フィルタカバー11の背面下部の係止片13a,13bに対応する位置にある吸気孔22の両側には、係止片13a,13bを挿入可能な係止孔21a,21bがそれぞれ形成され、フィルタカバー11の背面上部の係止片13c,13dに対応する位置にある吸気孔22の両側には、係止片13c,13dを挿入可能な係止孔21c,21dがそれぞれ形成されている。
【0020】
次に、フィルタユニット10を扉20に取り付ける際の手順を、
図3に基づいて説明する。
図3(a)に示すように、エアフィルタ12が収納されたフィルタカバー11の第1係止片13a,13bの先端を、突起部133が扉20の第1係止孔21a,21bの下縁部をまたぐように第1係止孔21a,21bに挿入する。この状態で、突起部133近傍を支点としてフィルタカバー11の上部を回動させ、
図3(b),(c)に示すように第2係止片13c,13dを扉20の第2係止孔21c,21dに挿入する。
【0021】
次いで、
図3(c),(d)に示すように、フィルタカバー11の全体を扉20方向へ押し付けてフィルタカバー11の全体を下方へ移動させることで、第1スリット部132,第2スリット部135を第1係止孔21a,21b及び第2係止孔21c,21dの下縁部にそれぞれ係合させ、フィルタユニット10を扉20に装着する。
フィルタユニット10を扉20から取り外す場合には、上記と逆の手順に従えば良い。
フィルタカバー11に対するエアフィルタ12の着脱は、フィルタユニット10を扉20から完全に取り外した状態、または、フィルタユニット10の上部を十分に回動させた状態で行うことができる。
なお、
図4は、2つのフィルタユニット10を扉20の上下にそれぞれ取り付けた状態の正面図である。
【0022】
本実施形態によれば、フィルタカバー11の下端部の第1係止片13a,13bを扉20の第1係止孔21a,21bに引っ掛けた状態でフィルタカバー11の上部を回動させる動作、及び、フィルタカバー11を扉20に押し付けた状態でフィルタカバー11を押し下げまたは押し上げる動作により、フィルタユニット10を扉20に対して着脱することができる。
なお、フィルタユニット10を着脱する対象物が扉20に限定されないことは言うまでもなく、空冷式電気機器の筺体を構成する部材であれば良い。
【0023】
以上説明したように、本実施形態においては、従来技術のように筺体にフィルタカバーをネジ止めする必要がなく、フィルタカバーやエアフィルタの着脱に伴う時間や労力を削減できると共に、取付用ネジ等の部品が不要であることから、コストの低減にも寄与することができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、インバータやコンバータ等の半導体電力変換装置のほか、各種電源装置や配電盤、モータを内蔵した駆動装置など、様々な空冷式電気機器に利用することができる。
【符号の説明】
【0025】
10:フィルタユニット
11:フィルタカバー
12:エアフィルタ
13a,13b:第1係止片
13c,13d:第2係止片
131,134:係止部
132:第1スリット部
133:突起部
135:第2スリット部
14:桟
20:扉
21a,21b:第1係止孔
21c,21d:第2係止孔