(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記水中空間の水がすき間を通じて外部の空間に流出するときにこのすき間に作用する水圧、または、外部の空間の水がすき間を通じて前記水中空間に流入するときにこのすき間に作用する水圧を単位面積当たりの水の重量で表した場合に、単位面積当たりで前記水圧の0.4倍以上の乾燥重量に相当する重量の前記ベントナイト・ペレットを水中に投入することを特徴とする請求項1に記載の水中空間の遮水方法。
粒径の異なる2種類以上の前記ベントナイト・ペレットを交互に投入して層状に堆積させること、または、交互に投入して層状に堆積させることを複数回繰り返すことを特徴とする請求項1に記載の水中空間の遮水方法。
前記水中空間を満たしている水の塩化ナトリウム濃度が44mg/L以上1000mg/L以下となるように、前記ベントナイト・ペレットを水中に投入する前に前記水中空間の水質を調整しておくことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の方法。
前記水中空間を満たしている水の電解質濃度が1.5mEq/L以上34mEq/L以下となるように、前記ベントナイト・ペレットを水中に投入する前に前記水中空間の水質を調整しておくことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1-1】
図1−1は、呼び径1mmのベントナイト・ペレットの写真図である。
【
図1-2】
図1−2は、呼び径20mmのベントナイト・ペレットの写真図である。
【
図2-1】
図2−1は、呼び径4mmのベントナイト・ペレットの水中投下充てん実験を示す写真図(水中に投入時)である。
【
図2-2】
図2−2は、呼び径4mmのベントナイト・ペレットの水中投下充てん実験を示す写真図(底部に沈降堆積時)である。
【
図2-3】
図2−3は、呼び径4mmのベントナイト・ペレットの水中投下充てん実験を示す写真図(吸水膨張シール発揮時)である。
【
図3-1】
図3−1は、ベントナイト・ペレットを大気中でメスシリンダーに堆積させた実験を示す写真図である。
【
図3-2】
図3−2は、ベントナイト・ペレットを水中でメスシリンダーに堆積させた実験を示す写真図である。
【
図4】
図4は、水で飽和したベントナイトの透水係数と有効粘土密度との関係を示す図である。
【
図5-1】
図5−1は、本発明に係る水中空間の遮水方法の実施の形態1の工程1を示す側面断面図である。
【
図5-2】
図5−2は、本発明に係る水中空間の遮水方法の実施の形態1の工程2を示す側面断面図である。
【
図5-3】
図5−3は、本発明に係る水中空間の遮水方法の実施の形態1の工程3を示す側面断面図である。
【
図5-4】
図5−4は、本発明に係る水中空間の遮水方法の実施の形態1の変形例を示す側面断面図である。
【
図6】
図6は、本発明に係る水中空間の遮水方法の実施の形態1の他の変形例を示す側面断面図である。
【
図7】
図7は、本発明に係る水中空間の遮水方法の実施の形態1の他の変形例を示す側面断面図である。
【
図8】
図8は、沈降堆積後の経過時間と堆積密度の関係を示す図である。
【
図9-1】
図9−1は、本発明に係る水中空間の遮水方法の実施の形態2の工程1を示す側面断面図である。
【
図9-2】
図9−2は、本発明に係る水中空間の遮水方法の実施の形態2の工程2を示す側面断面図である。
【
図9-3】
図9−3は、本発明に係る水中空間の遮水方法の実施の形態2の工程3を示す側面断面図である。
【
図10-1】
図10−1は、本発明に係る水中空間の遮水方法の実施の形態3の工程1を示す側面図であり、(1)は外観図、(2)は断面図である。
【
図10-2】
図10−2は、本発明に係る水中空間の遮水方法の実施の形態3の工程2を示す側面断面図である。
【
図10-3】
図10−3は、本発明に係る水中空間の遮水方法の実施の形態3の工程3を示す側面断面図である。
【
図10-4】
図10−4は、本発明に係る水中空間の遮水方法の実施の形態3の工程4を示す側面断面図である。
【
図11-1】
図11−1は、本発明に係る水中空間の遮水方法の実施の形態3の変形例の工程1を示す側面断面図である。
【
図11-2】
図11−2は、本発明に係る水中空間の遮水方法の実施の形態3の変形例の工程2を示す側面断面図である。
【
図12-1】
図12−1は、本発明に係る水中空間への遮蔽材または遮水材の設置方法の実施の形態4の工程1を示す側面断面図である。
【
図12-2】
図12−2は、本発明に係る水中空間への遮蔽材または遮水材の設置方法の実施の形態4の工程2を示す側面断面図である。
【
図12-3】
図12−3は、本発明に係る水中空間への遮蔽材または遮水材の設置方法の実施の形態4の工程3を示す側面断面図である。
【
図12-4】
図12−4は、本発明に係る水中空間への遮蔽材または遮水材の設置方法の実施の形態4の工程4を示す側面断面図である。
【
図13】
図13は、従来の施設建屋内部の部屋空間に貯留した汚染水がひび割れ等のすき間から外部に漏出する例を示す側面断面図である。
【
図14】
図14は、従来の水路に貯留した汚染水がひび割れ等のすき間から外部に漏出する例を示す側面断面図である。
【
図15】
図15は、従来の施設と外部とを連絡する配管が破損して漏出経路となる例を示す側面断面図である。
【
図16】
図16は、漏水孔を有する円筒型水槽における遮水状況観察実験の写真図であり、(1)はペレットの投入状況、(2)は遮水完了時の状況を示す図である。
【
図17】
図17は、水深に対するペレット充てん率と漏水量低下比の関係を示す図である。
【
図18】
図18は、水質条件およびペレット充てん率の違いによる漏水量低下速度への影響を示す図である。
【
図19】
図19は、固結した高密度ベントナイトを異なる水質の水に浸漬したときの水中崩壊速度の測定例を示す図である。
【
図20】
図20は、ペレットが沈降した直後の堆積密度を示す図である。
【
図21】
図21は、ベントナイトの難透水性に与える乾燥密度と塩分濃度の影響を示す図である。
【
図22-1】
図22−1は、乾燥している4mmペレット10gに水質の異なる水を200mL注水した後のペレットの水膨張の観測写真図であり、注水後30分経過した時点の写真図である。
【
図22-2】
図22−2は、乾燥している4mmペレット10gに水質の異なる水を200mL注水した後のペレットの水膨張の観測写真図であり、注水後80日経過した時点の写真図である。
【
図23】
図23は、電解質濃度とペレット充てん率の異なる実験における遮水の可否のプロットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明に係る水中空間の遮水方法および水中空間への遮蔽材または遮水材の設置方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0027】
[ベントナイト・ペレット]
まず、本実施の形態で用いるベントナイト・ペレットについて説明する。このベントナイト・ペレットは、ベントナイトを高密度に概球状に成形したものであり、例えば商品名「クレイパール(登録商標)」として市販されているものを用いることができる。ベントナイト・ペレットの製造方法については、下記の参考文献1、2に記載されているとおりである。すなわち、粉体ベントナイトに加水して塑性状態にし、小口径の孔から押し出すことで乾燥密度1.6g/cm
3相当の円柱状の湿潤ベントナイトを作る。これを丸めて概球状に成形してから、ゆっくりと乾燥することで乾燥収縮し、高密度のベントナイト・ペレットを作成することができる。
図1−1および
図1−2に示す写真は、それぞれ呼び径1mmペレットおよび呼び径20mmペレットの写真である。製作例については下記の参考文献3に表1の例が示されている。なお、従来のベントナイト・ペレットは放射性廃棄物の埋設処分施設のすき間充てん材料として使われており、大気中においてすき間空間に充てんすることが実施されていた。
【0028】
また、大気中におけるベントナイト・ペレットの充てん性を向上させる工夫として、下記の参考文献4がある。一方、水中空間にベントナイト・ペレットを充てんして遮水材を構築するという技術は無かった。
【0029】
[参考文献1] 特許第5339185号公報
[参考文献2] 特開2011−242289号公報
[参考文献3] 中島均、斉藤亮、石井卓、「高密度で真球度が高いベントナイトペレットの製造方法」、日本原子力学会2013年春の大会、A19、p.19、2013年
[参考文献4] 特願2013−133327号明細書(出願公開前)
【0031】
[ベントナイト・ペレットの水中投下充てん]
つづいて、上記のベントナイト・ペレットを水中空間にて充てん材料として利用可能なことを実験結果に基づいて説明する。
【0032】
(水中投下沈降性)
図2−1〜
図2−3は水を満たしたメスシリンダーを使ってベントナイト・ペレット(呼び径4mm)を投入して充てんする実験例である。時間の経過に伴って
図2−1、
図2−2、
図2−3の順に推移する。ベントナイト・ペレットは密度が2g/cm
3程度なので速やかに水中を沈降する。
【0033】
ベントナイト・ペレットは、底部に堆積してから周囲の水を吸水して膨張する。ベントナイトは膨潤性の高い粘土鉱物であるモンモリロナイトを多く含有しているので、膨張を妨げない条件下において体積は2倍以上に膨らむ。実際には
図2−3に示すように周囲のペレットとの間隙空間を塞ぐような膨張シール性を発揮する。
【0034】
(水中沈降充てん密度)
図3−1、
図3−2は、水中投入したベントナイト・ペレットが沈降して充てんした直後の充てん密度を確認する目的で行った実験の写真である。表2に示すベントナイト・ペレットを使って実験した結果を表3に示す。ベントナイト・ペレットの粒子密度は約2g/cm
3である。ベントナイト・ペレットを大気中において堆積させた充てん密度(
図3−1)に比べて、水中において堆積させた充てん密度(
図3−2)は小さいが、止水性を発揮するには十分な密度に充てんすることができる。
【0037】
(充てんしたベントナイトの透水係数)
図4は、水で飽和した状態のベントナイトの透水係数を測定した結果を乾燥密度との関係で示したグラフである。多くの測定例を集約してあるため値にばらつきはあるものの、有効粘土密度(前述のベントナイト乾燥密度に相当)が0.4g/cm
3以上であるならば、透水係数は1×10
−10(m/s)よりも小さいので、十分な止水性を発揮する。なお、この
図4は、下記の参考文献5の記載に基づいている。
【0038】
[参考文献5] 土木学会エネルギー委員会、低レベル放射性廃棄物の余裕処分に関する研究小委員会、「余裕深度処分における地下施設の設計、品質管理および検査の考え方」、土木学会、平成21年7月
【0039】
[実施の形態1]
次に、本発明の実施の形態1について説明する。
本実施の形態1は、水中空間を遮水する方法であって、水中空間の水底部に通じる水面から、ベントナイトを高密度に概球状に成形したベントナイト・ペレットを水中に投入し、投入したベントナイト・ペレットを水底部に沈降堆積させ、その後にベントナイト・ペレットを吸水膨張させて、堆積したベントナイト・ペレットによる充てん空間を難透水性にすることにより、水中空間を遮水するものである。
【0040】
本実施の形態1の水中空間の遮水方法を
図5−1〜
図5−4に示す。
図5−1〜
図5−4は
図13に示したような汚染水Wの滞留と漏水が生じている場合の実施例である。
図5−1に示すように、施設建屋1内部の部屋空間2に汚染水Wが貯留し、地震や爆発等の衝撃によって建屋躯体壁3にひび割れ等のすき間4が発生して、施設外部に汚染水Wが漏出しているものとする。これに対し、ベントナイト・ペレットPをベントナイト・ペレット投入管10を介して水面WL上部から投入すると、
図5−2に示すように、ベントナイト・ペレットPは汚染水Wの中を沈降して底部12(水底部)に堆積する。この時点で、滞留していた汚染水Wの漏出は次第に減少する。
【0041】
最終的には、
図5−3に示すように汚染水Wの中の空間S(水中空間)をベントナイト・ペレットPで充てんすることができる。その後、ベントナイト・ペレットPは周囲の水Wを吸水して、前述の
図2−3に示すように周囲のペレットPとの間隙空間を塞ぐような膨張シール性を発揮する。この時点で膨張シール性を発揮したベントナイト・ペレットPは均質な密度分布に次第に近づいていく。水中で充てんしたベントナイト・ペレットPの充てん密度は、前述の表3に示すように乾燥密度に換算して0.54〜0.76g/cm
3となる。より大きな粒径のベントナイト・ペレットPを投入するならば、より大きな充てん密度にすることができる。また、粒径の異なるベントナイト・ペレットPを混合させてから投入することで、より大きな充てん密度にすることも可能である。この場合、例えば粒径20mmのベントナイト・ペレットと粒径1mmのベントナイト・ペレットとを50:50の割合で混合した混合材を投入することで、より大きな充てん密度にすることができる。
【0042】
ベントナイトの透水係数は
図4に示すような測定例があり、この図における有効粘土密度は充てん後のベントナイト・ペレットPの充てん密度を乾燥密度で表示した値と同じであるから、乾燥密度0.54〜0.76g/cm
3の遮水材の透水係数は1×10
−10〜1×10
−12m/sを呈することになり、水中空間Sにおいて十分な遮水性を発揮する。
【0043】
ベントナイト・ペレットPの投入作業は短時間で可能なので、長時間作業を要する他の止水処理または遮水方法に比べて作業員の危険度(例えば放射線被ばく量や有害気体の吸引リスク)は小さい。なお、
図5−4に示すように、建屋躯体壁3に開口部3aを設けるとともに、この開口部3aにベントナイト・ペレット投入管10を挿入配置し、施設外からベントナイト・ペレットPを水中に投入する方法を採用するならば、作業員の危険度(例えば放射線被ばく量)をより小さくすることができる。
【0044】
したがって、本実施の形態1によれば、水中空間Sをより確実に遮水でき、かつ、遮水処理に係る作業を短時間で実施することができる。
【0045】
また、
図14および
図15に示したような従来の事例についても、上記の方法と同様の手順で水中空間を遮水することが可能である。より具体的には、
図6に示すように、導水路あるいは排水路5に汚染水Wが貯留し、導水路あるいは排水路5の躯体に発生したひび割れ等のすき間6から施設外部に汚染水Wが漏出している場合には、上記の方法によってベントナイト・ペレットPを水面WL上部から水中に沈降堆積させる。このとき、導水路あるいは排水路5と水中空間Sとの連通口5aの前面を覆うように堆積させる。その後にベントナイト・ペレットPを吸水膨張させて、堆積したベントナイト・ペレットPによる充てん空間を難透水性にして、水中空間Sにベントナイト・ペレットPからなる遮水材を構築することにより、水中空間Sを遮水することが可能である。
【0046】
また、
図7に示すように、施設と外部とを連絡する管路7(液体搬送配管類、排気管、給気管、給水管、排水管、電気等のケーブル配管など)が破損して漏出経路8となっている場合には、上記の方法によりベントナイト・ペレットPを水面WL上部から水中に沈降堆積させる。このとき、管路7と水中空間Sとの連通口7aを覆うように堆積させる。その後にベントナイト・ペレットPを吸水膨張させて、堆積したベントナイト・ペレットPによる充てん空間を難透水性にして、水中空間Sにベントナイト・ペレットPからなる遮水材を構築することにより、水中空間Sを遮水することが可能である。
【0047】
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2について説明する。
本実施の形態2は、上記の実施の形態1において、沈降堆積させたベントナイト・ペレットの上に、重量材を沈降堆積させることにより、吸水膨張性のベントナイト・ペレットの膨張に伴う密度低下を抑止するものである。
【0048】
図8は、ベントナイト・ペレット水中充てん実験の後において、充てんしたベントナイトが時間の経過とともに吸水膨張して体積増加し、結果として充てん密度が小さくなる傾向を時間経過に伴う密度変化グラフで示したものである。
【0049】
例えば、堆積後30分あるいは60分待機することによって、充てんされたベントナイト・ペレットは吸水膨張によって、表4に示すような密度変化を呈する。200分経過後は
図8に示すように密度変化がほぼ安定する。この時点で吸水膨張は終息し、止水性を発揮すると考えられる。
【0051】
吸水膨張によってベントナイト・ペレットの充てん密度が減じたとしても、ペレットの自重による拘束および周囲に存在している他のペレットの拘束があるため、充てん密度は極端には減じないので、仮に乾燥密度換算で0.4g/cm
3相当に変化したとしても、1×10
−10(m/s)程度の難透水性を発揮するので十分であるが、さらなる遮水性能を維持するためには、
図9−1に示すように、ベントナイト・ペレットPを底部12に堆積させた後で、
図9−2に示すように、砂礫等の粒子材料14(重量材)を水中に投入することで、ベントナイト・ペレットPには粒子材料14による適度な上載荷重が作用することになり、
図9−3に示すように、ペレット間隙を膨張シールした時点で吸水膨張は抑制されるので、密度の減少を小さくできる。結果として、ベントナイト・ペレットPによる遮水材の透水係数をさらに小さく維持できるというメリットが発揮される。
【0052】
[実施の形態3]
次に、本発明の実施の形態3について説明する。
本実施の形態3は、管路の内部に存在している水中空間を遮水する方法であって、管路から分岐する枝配管を水中空間の近傍に設置して、設置した枝配管を通じて網状の袋体を水中空間に挿入し、網状の袋体の開口部から、ベントナイトを高密度に概球状に成形したベントナイト・ペレットを網状の袋体に投入し、その後にベントナイト・ペレットを吸水膨張させて、投入したベントナイト・ペレットによる充てん空間を難透水性にすることにより、水中空間を遮水して管路を閉塞するものである。
【0053】
図10−1は、途中で破断している管路が汚染水Wで満たされていて、かつ、漏水している例を示したものであり、(1)は管路の概略外観図、(2)は断面図である。なお、
図10−1は、図示せぬ漏水欠陥部の上流側の遮水対象部位を示している。
図10−1に示すように、漏水欠陥部の手前側(上流側)の区間において管路16の上面に孔18を開けてから枝配管20を取り付ける。
【0054】
つづいて、
図10−2に示すように、柔軟性を有する網目状の袋22(網状の袋体。例えはポリエチレン製のメッシュ素材で作った袋や繊維で平織りした布製の袋)を、細く畳んだ状態で枝配管20に挿入し、袋22の開口部22aを枝配管20の上端部にはみ出した状態で固定する。このとき、網目状の袋22は管路16の中の水中空間Sに顔を出した状態にしておく。
【0055】
次に、
図10−3に示すように、枝配管20の上端部にはみ出させた袋22の開口部22aからベントナイト・ペレットPを投入し、網目状の袋22を満たしていく。
【0056】
網目状の袋22を満たして膨らんだ袋22が孔18の下の管路16内部を塞ぐ状態にすると、
図10−4に示すように、時間の経過とともにベントナイト・ペレットPは吸水膨張して管路16を完全に塞ぐようになり、難透水性材料になる。
【0057】
したがって、本実施の形態3によれば、管路16の中の水中空間Sをより確実に遮水でき、かつ、遮水処理に係る作業を短時間で実施することができる。
【0058】
ベントナイト・ペレットPを網目状の袋22の中に挿入しにくい場合には、例えば
図11−1に示すように、枝配管20の上端部にはみ出させた袋22の開口部22aの中に注入管24を嵌めることでベントナイト・ペレットPを挿入しやすくできる。ここで、注入管24は鉛直管24aと横管24bとからなるY字型の分岐管で構成されており、鉛直管24aの上端からはベントナイト・ペレットPを投入する。一方、横管24bから水を圧入すると、水はベントナイト・ペレットPと一緒に注入管24を下方向に進入し、網目状の袋22の中に入っていく。
図11−2に示すように、網目状の袋22は水を通過させる一方でベントナイト・ペレットPを通過させないで袋22の内部に留まらせるので、これを繰り返すことによって、
図10−4と同様に、網目状の袋22は次第にベントナイト・ペレットPで満たされて膨らんだ状態にできる。その後は、時間の経過とともにベントナイト・ペレットPは吸水膨張して管路16を完全に閉塞するとともに、難透水性材料になる。
【0059】
なお、管路16内の汚染水Wの流速が大きい場合には、充てんした領域に水みちが発生して、1か所に当該方法で遮水処理しても完全に遮水できない場合も懸念される。その場合には、当該遮水方法を管路16の延長方向の複数箇所で実施することで、管路16内における汚染水Wが流動する量を著しく抑制することができる。
【0060】
[実施の形態4]
次に、本発明の実施の形態4について説明する。
本実施の形態4は、水中空間の水底部に存在している放射性物質からの放射線を遮蔽するための遮蔽材または遮水材を水中空間に設置する方法であって、放射性物質が存在している水底部に通じる水面から、ベントナイトを高密度に概球状に成形したベントナイト・ペレットを水中に投入し、投入したベントナイト・ペレットを水底部に沈降堆積させ、その後にベントナイト・ペレットを吸水膨張させて、堆積したベントナイト・ペレットによる充てん空間を難透水性にするとともに、放射性物質の周囲に充てん空間による高密度領域を形成して遮蔽材または遮水材を構築するものである。
【0061】
図12−1は、原子炉の圧力容器の底が破損して穴が開き、この穴から落下した核燃料(放射性物質)が格納容器の底部(水底部)に堆積している例を示している。格納容器28は水Wで満たされているが、この水Wは核燃料による放射性物質Rによって高濃度に汚染されているとともに、核燃料から発生する放射線も強大であり、人間が近づいて作業することは困難な状態を想定した図である。
【0062】
図12−1および
図12−2に示すように、圧力容器26および格納容器28の各上部にそれぞれ孔26a、28aをあけ、この孔26a、28aを通じて圧力容器26内部および格納容器28内部にベントナイト・ペレット投入管10を挿入し、格納容器28から隔離された作業スペースから、この投入管10を通してベントナイト・ペレットPを水面WLから水中空間S1、S2に投入する。
【0063】
図12−3に示すように、ベントナイト・ペレットPは圧力容器26の底部12aおよび格納容器28の底部12bにある放射性物質Rの周囲に沈降堆積し、水中空間S1、S2を満たす。
【0064】
時間の経過とともに、ベントナイト・ペレットPは吸水膨張して、
図12−4に示すように、格納容器28内部を均質化したベントナイト材料で満たす。このときのベントナイト材料で満たされている空間の密度は水で満たされていた場合に比べて増大するので、遮水性能とともに放射線の遮蔽性能も増大し、その後の原子炉解体作業時の放射線量を低減する効果がある。このように、本実施の形態によれば、放射性物質Rの周囲にベントナイト・ペレットPの充てん空間による高密度領域を形成して、放射性物質Rからの放射線を遮蔽するための遮蔽材または遮水性材料(遮水材)を水中空間S1、S2に設置することができる。
【0065】
したがって、本実施の形態4によれば、水中空間S1、S2をより確実に遮水でき、かつ、遮水処理に係る作業を短時間で行える。また、その後の原子炉解体作業時の放射線量を低減することができる。
【0066】
また、このような方法で水中空間を遮水性材料で充てんする方法では、原子炉解体作業時にリモート作業で当該遮水材を除去しやすいというメリットもある。ベントナイト・ペレットなどのベントナイト系材料を除去する方法については、塩水を噴射してスラリー化して流体として排除する方法が下記の参考文献6、参考文献7あるいは参考文献8および参考文献9、10、11に示されている。
【0067】
[参考文献6] 岩佐健吾、石井卓、他、「廃棄体回収に関わる塩水を利用した緩衝材の分解除去方法の検討」、原子力バックエンド研究、Vol.16、No.1、原子力学会、Dec、2009
[参考文献7] 張 至鎬、他、「塩水を利用した緩衝材除去方法の検討(5)」、原子力学会2009年秋の大会、M15、p.630、原子力学会大会要旨集
[参考文献8] 特許第5131545号公報
[参考文献9] 特開2012−037290号公報
[参考文献10] 特開2012−083268号公報
[参考文献11] 特開2011−083437号公報
【0068】
[実施の形態5]
次に、本発明の実施の形態5について説明する。
本実施の形態5は、上記の実施の形態1〜3において、水中空間の水がすき間を通じて外部の空間に流出するときにこのすき間に作用する水圧、または、外部の空間の水がすき間を通じて水中空間に流入するときにこのすき間に作用する水圧を単位面積当たりの水の重量で表した場合に、単位面積当たりで水圧の0.4倍以上の乾燥重量に相当する重量のベントナイト・ペレットを水中に投入するものである。
【0069】
ベントナイト・ペレットを水面から水中に投入して水中空間に堆積させ、吸水膨張したペレットによって漏水箇所を遮水する条件を明らかにするため、
図16に示すような底部付近の側面に漏水孔(すき間)を有する有底円筒型水槽(内径100mm、水深150mm、300mm、600mmの3種類)に注水を継続させることで漏水する流動場を維持しながら、所定量のベントナイト・ペレット(呼び径1mm、4mm、20mmの3種類)を水面から水中に投入して沈降堆積させた後に、遮水状況を観察する実験を行った。漏水孔の口径は1mm、2mm、4mmの3種類とした。
【0070】
実験結果の一覧を表5に示す。これらの実験ケースでは水質条件として水道水(電解質濃度1.5mEq/L)を使った。浄水場における分析データによれば、水道水の成分は主として塩化ナトリウムであり、Cl濃度は25.1mg/L、Na濃度は19mg/Lである。
【0072】
なお、表5の各枠内の上段の文字は、投入したベントナイト・ペレットの重量(g)を表している。また、中段の文字は、遮水に要した時間(分)と、判定結果を表している(遮水効果が極めて良く遮水に成功した場合は◎、遮水効果が良い場合は○、遮水効果が良くない場合は△、遮水不可の場合は×で表記)。また、下段の文字は、「漏水量の終息値/漏水量の初期値」(=漏水量低下比)を表している。
【0073】
この実験結果をまとめると下記の傾向であった。
(1)ペレットの堆積後の吸水膨張によって遮水に成功する場合と、吸水膨張するものの流水によって浸食されて水みちが形成されて遮水に失敗する場合がある。
(2)効果的なペレット投入条件では数分で遮水できる場合もあるが、24時間(=1440分)を要する場合もある(24時間経過して遮水できなかった実験ケースは遮水不可と判定した。)。
(3)吸水膨張したベントナイト・ゲルがペレット相互のすき間を埋めることによって遮水できる。
(4)遮水に失敗する場合には、漏水に伴う水流でペレット相互のすき間を埋めつつあるベントナイト・ゲルが流失することで、明確な水みちが形成されていた。
(5)下半領域の吸水膨張したペレットに水みちが発生していても、上半領域のペレットの吸水膨張が進展したときに遮水に成功する場合もある。したがって、堆積厚さは大きいほうが望ましい。
(6)水深が大きくなるにつれて、遮水を成功させるために多量のペレットを必要とする。
(7)実験ケースのほとんどは水槽から漏水孔を経由して外に漏出する条件であったが、逆向きの外側から水槽内部に流入する漏水条件においても遮水に成功した。ただし、遮水するためにはペレット量を若干多く必要とした。
【0074】
図17は、水深に対するペレットの充てん率と漏水量低下比の関係をグラフ化したものである。ここで、ペレットの漏水量低下比とは、遮水効果による漏水量の終息値を初期漏水量で除した値である。また、ペレットの充てん率とは、水面下に水没した領域の水の重量に対して、投入したペレットの乾燥重量の比率を意味している。例えば、水深300mmの水圧で水底部の漏水孔から漏水している状態において、ペレットを400g投入した場合には、充てん率は下記のように計算されて約0.17となる。
【0075】
水没水量は、1g/cm
3×30cm×5cm×5cm×3.14=2355g
投入ペレット乾燥重量は、400g
充てん率は、400g÷2355g=0.17
【0076】
図17によれば、ペレットの粒径によって、遮水に成功する条件は下記のように異なっている。
【0077】
(1)1mmペレットを投入した場合には、充てん率0.085以上の場合に遮水に成功する。
(2)4mmペレットを投入した場合には、充てん率0.17以上の場合に遮水に成功する。
(3)20mmペレットを投入した場合には、充てん率0.34以上の場合に遮水に成功する。
【0078】
なお、上記の水没水量の値は漏水圧力と読み替えることもできる。この場合の圧力を単位面積当たりの水の重量(以下、漏水水頭圧と称す)で表すと、例えば、水深300mmの水圧で漏水孔から漏水している状態において、ペレットを400g投入した場合には、充てん率は下記のように計算されて、上記の計算と同じく約0.17となる。
【0079】
漏水水頭圧は、0.3m×1000kg/m
3=300kg/m
2
投入ペレット乾燥重量の圧力は、0.4kg÷(0.05m×0.05m×3.14)=50.95kg/m
2
充てん率は、50.95kg/m
2÷300kg/m
2=0.17
【0080】
以上のことを総合すると、すき間の漏水圧力に対して、ペレットの充てん率を0.4以上とすることで、すき間をより確実に遮水できることがわかる。
【0081】
したがって、本実施の形態5によれば、すき間の漏水圧力を単位面積当たりの水の重量で表した場合に、単位面積当たりで漏水圧力の0.4倍以上の乾燥重量に相当する重量のベントナイト・ペレットを水中に投入して、すき間を被覆するようにベントナイト・ペレットを水底部に堆積させることで、水中空間をより確実に遮水することができるという効果を奏する。
【0082】
[実施の形態6]
次に、本発明の実施の形態6について説明する。
本実施の形態6は、上記の実施の形態1〜3において、粒径の異なる2種類以上のベントナイト・ペレットを交互に投入して層状に堆積させること、または、交互に投入して層状に堆積させることを複数回繰り返すものである。
【0083】
表6は、大粒ペレットと小粒ペレットを層状に堆積させた場合の遮水実験に関する実験結果である。この遮水実験は、上記の実施の形態5と同じような装置(
図16を参照)を用いて行っている。すなわち、底部付近の側面に漏水孔(すき間)を有する有底円筒型水槽(内径100mm、水深150mm、300mm、600mmの3種類)に注水を継続させることで漏水する流動場を維持しながら、所定量のベントナイト・ペレットを水面から水中に投入して沈降堆積させた後に、遮水状況を観察した。
【0085】
表6には、20mmペレット(大粒ペレット)を所定量投入してから4mmペレットあるいは1mmペレット(小粒ペレット)を所定量投入した場合の実験結果とともに、比較のために、上記の実施の形態5で示した表5の実験結果の中で、20mmペレットのみを投入した場合の実験結果も示してある。この実験結果の比較から下記のような傾向を読み取ることができる。
【0086】
(1)水深300mmの水圧条件の漏水に対しては、20mmペレットのみを投入した場合には800gの投入で遮水に成功したが、20mmペレットを150g投入してから4mmペレットあるいは1mmペレットを150g投入することでも同等の遮水に成功している。
【0087】
(2)水深600mmの水圧条件の漏水に対しては、20mmペレットのみを投入した場合には1600gの投入で遮水に成功したが、20mmペレットを200g投入してから4mmペレットを200g投入することでも同等の遮水に成功している。
【0088】
この実験結果によれば、明らかに、大粒ペレットと小粒ペレットを層状に堆積させることで遮水に必要なペレット投入量を節減できることがわかる。20mmペレット相互のすき間を小粒ペレットで埋めることによってペレットの吸水膨張シール挙動を効果的にできることに加え、さらに、ペレットの堆積密度を大きくできるので、吸水膨張後の堆積密度が大きくなる結果、難透水性が増大することが、遮水しやすくなる主たる要因である。
【0089】
このような原理で水中空間の遮水を効率的に達成できることから、粒径の異なるペレットを交互に投入して層状に堆積させることを複数回繰り返すことはより効果的である。
【0090】
したがって、本実施の形態6によれば、大粒ペレットと小粒ペレットを層状に堆積させることで遮水に必要なペレット投入量を節減できるという効果を奏する。また、ペレットの堆積密度を大きくできるので、吸水膨張後の堆積密度が大きくなるという効果を奏する。
【0091】
[実施の形態7]
次に、本発明の実施の形態7について説明する。
本実施の形態7は、上記の実施の形態1〜6において、水中空間を満たしている水の塩化ナトリウム濃度が44mg/L以上1000mg/L以下となるように、ベントナイト・ペレットを水中に投入する前に水中空間の水質を調整しておくものである。
【0092】
表7は、上記の実施の形態5と同じような装置(
図16を参照)を用いて行った遮水実験において、水質条件を純水、水道水(塩化ナトリウム濃度が約44mg/L)、0.1wt%塩水(塩化ナトリウム濃度が100mg/L)、0.3wt%塩水(塩化ナトリウム濃度が300mg/L)、1.0wt%塩水(塩化ナトリウム濃度が1000mg/L)、3.0wt%塩水(塩化ナトリウム濃度が3000mg/L)にした場合について、ベントナイト・ペレット投入遮水実験を行った結果の一覧表である。
【0094】
図18は、表7の実験結果から、漏水量低下速度とペレットの充てん率の関係をプロットしたグラフである。漏水量低下速度とは、ペレットを投入する前の単位時間当たり初期漏水量に対する実験終了時の漏水量の比率を経過時間で除した値であり、ペレットの吸水膨張に伴う遮水の進展しやすさの指標となる。ペレットの充てん率とは、上記の実施の形態5で説明したものと同じである(
図17を参照)。実験結果のプロットはばらついているので、水質条件に応じて領域範囲で囲って整理した。
この実験結果の比較から、下記のことがわかる。
【0095】
1)水道水(塩化ナトリウム濃度が約44mg/L)、0.1wt%塩水(塩化ナトリウム濃度が100mg/L)および0.3wt%塩水(塩化ナトリウム濃度が300mg/L)の範囲の水質条件で遮水性能が優れている。
2)1.0wt%塩水(塩化ナトリウム濃度が1000mg/L)の水質条件では遮水性能は小さくなるものの、ペレット投入量を多くすることで遮水に成功している。
3)3.0wt%塩水(塩化ナトリウム濃度が3000mg/L)の水質条件では遮水が困難である。
4)純水の水質条件では遮水が困難である。
【0096】
上記の傾向のうち、1)〜3)の傾向は、塩分濃度が高くなるにつれてベントナイトの有する粘着性が低下するという特性で理解することができる。塩分濃度が3%以上になると高密度に圧縮成形したベントナイトは、
図19に示すように、容易に崩してスラリー化できることが、上記の参考文献6に紹介されている。
【0097】
一方、上記4)の特性はベントナイトの粘着性に対する塩分濃度の影響では説明できない。漏水しつつある水中空間では常に水が流動しているので、ペレットを投入して堆積させた場合の遮水効果は以下に箇条書きした複数の現象の相互影響が絡み合って生じるものであると考えるべきであろう。
【0098】
(1)水中に投入されたベントナイト・ペレットは水中重量と粒径に応じて水中を沈降する。例えば、大粒径ペレットは早い速度で沈降し、小粒径ペレットはゆっくり沈降する。
(2)沈降速度が大きいペレットの堆積直後の密度は沈降速度が小さいペレットに比べて大きくなる。
図20は、遮水実験においてペレットが沈降した直後の堆積密度を示したグラフである。この図に示すように、大粒径のペレットの方が小粒径のペレットよりも初期の堆積密度が大きいことがわかる。
(3)ペレットは吸水膨張して、比較的密度の低いベントナイト・ゲルとなって外表面に成長し、ペレット相互のすき間を埋めていく。
(4)ペレットの内部に水が浸透しなければ、ペレットの吸水膨張は大きくならない。ペレットの表面付近が湿潤化して難透水性を呈するので、次第にペレットの中心部への水の供給は遅くなる(堆積しているペレットの吸水膨張に伴う体積増加は時間の経過とともに次第に遅くなる)。つまり、ペレットの吸水膨張速度は小粒径のペレットの方が大粒径のペレットよりも大きい。
(5)漏水に伴う流動水はペレット相互のすき間を流動し、ペレット相互のすき間を埋めつつあるベントナイト・ゲルを浸食して流失させる現象も並行して生じる。
(6)ペレット相互のすき間をベントナイト・ゲルが埋める現象が流動水による浸食に勝る場合に次第に漏水は抑制されて遮水される。
【0099】
以上の(1)から(6)の現象が相互影響した結果として、遮水できることになる。一方、水の中の塩分(塩化ナトリウム)の濃度は、上記(3)、(4)、(5)の現象に対して、さらに下記の影響を与える。
【0100】
(7)下記の参考文献12にて報告されているが、
図21に示すように、純水条件に比べて人工海水条件では透水係数が10倍〜100倍大きい。したがって、水の塩分濃度が高い場合にはペレットへの水の浸入が速く、吸水膨張は短時間で進展する。
【0101】
[参考文献12] 菊池広人、棚井憲治、他、緩衝材の飽和透水特性−II −海水性地下水が緩衝材の透水性に及ぼす影響−、核燃料サイクル開発機構 東海事業所、JNC TN8430 2003−002、2003年3月
【0102】
図22−1および
図22−2は、200mLメスシリンダーに乾燥している4mmペレットを10g入れておき、その後、水質の異なる水を200mL注水した後のペレットの吸水膨張体積を観測した写真である。メスシリンダーの上端開口には注水直後にシートを被せて塞いである。
図22−1は注水後30分経過した時点の写真であり、純水に比べて、塩水の方が吸水膨張が速く、膨張体積は塩化ナトリウム濃度が大きいほど多くなっている。同図には、ベントナイト粉体を、予め時間をかけて微量づつ3wt%濃度の塩水中に投下して吸水膨張させておいた場合の堆積サンプルを右端に示してある。塩水条件では短時間に右端のサンプルの体積に近づいていることがわかる。
【0103】
一方、
図22−2は注水後80日経過した時点の写真であり、塩化ナトリウム濃度が小さいほど膨張体積が大きく成長している。同図には、ベントナイト粉体を、予め時間をかけて微量づつ3wt%濃度の塩水中に投下して吸水膨張させておいた場合の堆積サンプルを右端に示してある。塩分濃度が低い水質条件では右端の体積よりも大きく吸水膨張していることが明らかである。
【0104】
すなわち、塩化ナトリウム濃度が高いほど初期の吸水膨張速度は大きいが、吸水が終息した時点での体積は小さいことがわかる。
図24には、
図22−1から
図22−2に至るまでの吸水膨張を時間の経過との関係でプロットしたグラフを示した。塩分濃度が高い水質条件では濃度が低い水質条件に比べて、初期には吸水膨張体積が大きいものの、時間の経過とともに、吸水膨張は頭打ちとなり、体積量は濃度が低い水質条件が逆転している。
【0105】
(8)水中に分散したベントナイト粒子は、塩分濃度が高い溶液中では凝集沈殿しやすくなる。一方、吸水膨張してペレットの表面に成長したベントナイト・ゲルの密度は純水中の場合に比べて比較的大きいので流水場において粒子流失は比較的軽微である。逆に、純水中ではペレットの表面から成長するベントナイト・ゲルは遅く拡大するとともに、非常に希薄なゲルとなっているため、流水による粒子流失の影響を受けやすい。
【0106】
(9)上記の参考文献6に報告されているが、
図19に示すように、塩分濃度が高くなると、ベントナイトの粘着性を減じさせて、固結していたベントナイトを崩す効果が大きくなる。したがって、塩分濃度が高くなるとベントナイト・ゲルの流失は大きくなる。
【0107】
上記(7)の特性は(4)の現象に影響し、(8)、(9)の特性は(5)の現象に影響する。これらの現象はある条件では遮水しやすい現象となり、ある条件では水みちが形成されて遮水困難をもたらす現象となる。各々の現象挙動とその速度に影響する特性が相互影響する複合現象であるため、好ましい水質条件は塩化ナトリウム濃度が44mg/L〜1000mg/Lの範囲が好ましい条件範囲となっている。
【0108】
このため、遮水対象となる水中空間の水の水質がこの範囲を下回るあるいは上回る条件の場合には、ペレット投入を実施する前に、事前に当該水中空間の水質を調整しておくことが効果的である。
【0109】
したがって、本実施の形態7によれば、水中空間の水質が最も遮水しやすい条件に調整されるので、水中空間をより確実に遮水することができるという効果を奏する。
【0110】
[実施の形態8]
次に、本発明の実施の形態8について説明する。
本実施の形態8は、上記の実施の形態1〜6において、水中空間を満たしている水の電解質濃度が1.5mEq/L以上34mEq/L以下となるように、ベントナイト・ペレットを水中に投入する前に水中空間の水質を調整しておくものである。
【0111】
上記の実施の形態7では、水質条件として塩化ナトリウム濃度に着目したが、ベントナイトの難透水性や粘着性や吸水性を発揮する主たる構成物質は粘土鉱物のモンモリロナイトであり、それらの特性はモンモリロナイトの結晶構造の多層構造の浸透圧によるものである。したがって、水質は電解質濃度に着眼して整理しておくことがより望ましい。
【0112】
図23は、表7の実験結果を、ペレット充てん比および水の電解質濃度との関係でプロットしたものであり、遮水に成功した実験ケースを○で、遮水不可であった実験ケースを・で示してある。また、このグラフには遮水に成功するしきい線(1.5mEq/Lおよび34mEq/L)を示してある。
【0113】
塩化ナトリウム濃度が44mg/L以上1000mg/L以下に相当する水溶液は、電解質濃度が1.5mEq/L以上34mEq/L以下である。すなわち、水中空間に存在する水にさまざまなイオン物質が溶存していて、電解質濃度が1.5mEq/L以下である場合あるいは34mEq/L以上である場合には、電解質濃度が1.5mEq/L以上34mEq/L以下となるように事前に水中空間の水質を調整しておくことによって、ペレットを投入することによる水中空間の遮水をより確実に実現することができる。
【0114】
したがって、本実施の形態8によれば、水中空間に存在する水にさまざまなイオン物質が溶存していて、電解質濃度が1.5mEq/L以下である場合あるいは34mEq/L以上である場合には、電解質濃度が1.5mEq/L以上34mEq/L以下となるようにペレットを水中に投入する前に水質を調整しておくことによって、ペレットを投入することによる水中空間の遮水をより確実に実現することができる。
【0115】
以上説明したように、本発明に係る水中空間の遮水方法によれば、水中空間を遮水する方法であって、前記水中空間の水底部に通じる水面から、ベントナイトを高密度に概球状に成形したベントナイト・ペレットを水中に投入し、投入した前記ベントナイト・ペレットを前記水底部に沈降堆積させ、その後に前記ベントナイト・ペレットを吸水膨張させて、堆積した前記ベントナイト・ペレットによる充てん空間を難透水性にすることにより、前記水中空間を遮水するので、水中空間をより確実に遮水でき、かつ、遮水処理に係る作業を短時間で行える。
【0116】
また、本発明に係る他の水中空間の遮水方法によれば、沈降堆積させた前記ベントナイト・ペレットの上に、重量材を沈降堆積させることにより、吸水膨張性の前記ベントナイト・ペレットの膨張に伴う密度低下を抑止するので、ベントナイト・ペレットで形成される遮水材の透水係数をより小さく維持することができる。
【0117】
また、本発明に係る他の水中空間の遮水方法によれば、管路の内部に存在している水中空間を遮水する方法であって、前記管路から分岐する枝配管を前記水中空間の近傍に設置して、設置した前記枝配管を通じて網状の袋体を前記水中空間に挿入し、前記網状の袋体の開口部から、ベントナイトを高密度に概球状に成形したベントナイト・ペレットを前記網状の袋体に投入し、その後に前記ベントナイト・ペレットを吸水膨張させて、投入した前記ベントナイト・ペレットによる充てん空間を難透水性にすることにより、前記水中空間を遮水して前記管路を閉塞するので、管路の内部の水中空間をより確実に遮水でき、かつ、遮水処理に係る作業を短時間で行える。
【0118】
また、本発明に係る水中空間への遮蔽材または遮水材の設置方法によれば、水中空間の水底部に存在している放射性物質からの放射線を遮蔽するための遮蔽材または遮水材を前記水中空間に設置する方法であって、前記放射性物質が存在している前記水底部に通じる水面から、ベントナイトを高密度に概球状に成形したベントナイト・ペレットを水中に投入し、投入した前記ベントナイト・ペレットを前記水底部に沈降堆積させ、その後に前記ベントナイト・ペレットを吸水膨張させて、堆積した前記ベントナイト・ペレットによる充てん空間を難透水性にするとともに、前記放射性物質の周囲に前記充てん空間による高密度領域を形成して遮蔽材または遮水材を構築するので、水中空間をより確実に遮水でき、かつ、遮水処理に係る作業を短時間で行える。また、その後の原子炉解体などの作業時の放射線量を低減することができる。さらに、その後の原子炉解体などの作業時に遠隔作業で遮蔽材または遮水材を除去しやすい。
【0119】
また、本発明に係る他の水中空間の遮水方法によれば、前記水中空間の水がすき間を通じて外部の空間に流出するときにこのすき間に作用する水圧、または、外部の空間の水がすき間を通じて前記水中空間に流入するときにこのすき間に作用する水圧を単位面積当たりの水の重量で表した場合に、単位面積当たりで前記水圧の0.4倍以上の乾燥重量に相当する重量の前記ベントナイト・ペレットを水中に投入するので、すき間を被覆するようにベントナイト・ペレットを水底部に堆積させることで、水中空間をより確実に遮水することができる。
【0120】
また、本発明に係る他の水中空間の遮水方法によれば、粒径の異なる2種類以上の前記ベントナイト・ペレットを交互に投入して層状に堆積させること、または、交互に投入して層状に堆積させることを複数回繰り返すので、遮水に必要なベントナイト・ペレットの投入量を節減することができる。また、ベントナイト・ペレットの堆積密度を大きくできるので、吸水膨張後の堆積密度が大きくなる。
【0121】
また、本発明に係る他の方法によれば、前記水中空間を満たしている水の塩化ナトリウム濃度が44mg/L以上1000mg/L以下となるように、前記ベントナイト・ペレットを水中に投入する前に前記水中空間の水質を調整しておくので、水中空間の水質が最も遮水しやすい条件に調整されるので、水中空間をより確実に遮水することができる。
【0122】
また、本発明に係る他の方法によれば、前記水中空間を満たしている水の電解質濃度が1.5mEq/L以上34mEq/L以下となるように、前記ベントナイト・ペレットを水中に投入する前に前記水中空間の水質を調整しておくので、水中空間に存在する水にさまざまなイオン物質が溶存していて、この水の電解質濃度が1.5mEq/L以下である場合あるいは34mEq/L以上である場合には、電解質濃度が1.5mEq/L以上34mEq/L以下となるようにペレットを水中に投入する前に水中空間の水質を調整しておくことによって、ペレットを投入することによる水中空間の遮水をより確実に実現することができる。