(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6384722
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】杭基礎構造
(51)【国際特許分類】
E02D 5/30 20060101AFI20180827BHJP
E02D 27/32 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
E02D5/30 A
E02D27/32 Z
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-166323(P2014-166323)
(22)【出願日】2014年8月19日
(65)【公開番号】特開2016-41886(P2016-41886A)
(43)【公開日】2016年3月31日
【審査請求日】2017年5月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 治夫
(72)【発明者】
【氏名】八戸 秀保
(72)【発明者】
【氏名】石橋 正弘
【審査官】
苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第05586838(US,A)
【文献】
特開2008−223379(JP,A)
【文献】
特開2010−265735(JP,A)
【文献】
特開2013−194365(JP,A)
【文献】
特開2009−024350(JP,A)
【文献】
特開2000−328565(JP,A)
【文献】
特開平08−256614(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/22〜 5/80
E02D 27/00〜 27/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持物を接続し、該支持物を支持するための杭基礎構造であって、
木杭と、
上端側の開口を閉塞する接続板部を備えて略筒状に形成された鋼管キャップとを備え、
前記木杭の杭頭側に前記鋼管キャップを被せて設置し、前記鋼管キャップの接続板部に前記支持物を接続して前記支持物を支持するように構成されており、
前記鋼管キャップの長さが、前記木杭の地上に配される部分と、地中の凍結深さ及び腐食の発生が予測される深さの部分と、を被覆するように設定されていることを特徴とする杭基礎構造。
【請求項2】
請求項1に記載の杭基礎構造において、
前記木杭と前記鋼管キャップの間に樹脂材を注入充填して構成されていることを特徴とする杭基礎構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の杭基礎構造において、
前記木杭における前記鋼管キャップが取り付けられる前記杭頭側の部分が、他の下方部分よりも小径に形成されていることを特徴とする杭基礎構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭基礎の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、作用する荷重が比較的小さい構造物、例えば太陽電池アレイを地盤上に設置する際には、太陽電池アレイを所定の傾斜角度で支持するための支持フレーム(支持物)と、支持フレームを安定的に支持するための基礎構造とが必要である。そして、基礎構造としては、地盤が所望の耐力を備えている場合にコンクリートによる直接基礎、軟弱地盤である場合に杭基礎(例えば、特許文献1参照)が多用されている。
【0003】
また、太陽電池アレイを設置するための基礎構造には、太陽電池アレイ、支持フレームの重量などの固定荷重の他に風荷重、積雪荷重、地震荷重など、鉛直荷重だけでなく引抜荷重が作用する。
【0004】
そして、杭基礎を用いる場合には、作用する荷重が比較的小さくて済むため、支持フレームの鋼材を直接ボルト接合で支持杭に連結することが多く、また、引抜荷重を考慮して小口径回転圧入鋼管杭を用いることが多くなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4601525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、杭基礎を用いる場合、泥炭層のように強度が非常に小さく、その層厚が大きくなると、支持層が深くなり大きな杭長が必要になる。また、摩擦杭を採用したとしても、強度が小さいと、やはり杭長を大きくするか、杭径を大きくせざるを得ず、さらに杭本数を増やして1本あたりの作用荷重を低減する必要が生じる。また、摩擦をとるために節付きPHC杭を使用することも考えられるが、杭径が大きくなる上、支持フレームとの確実な接合手法を確立することが求められる。
【0007】
すなわち、泥炭層のように軟弱層厚が大きく、強度が非常に小さい地盤であると、大掛かりで過大な基礎を構築する必要が生じてしまう。このため、作用する荷重が比較的小さい構造物、例えば太陽電池アレイを設置するための基礎構造として、施工性、経済性に優れる杭基礎構造を開発することが強く望まれていた。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑み、施工性、経済性に優れ、軟弱地盤上に、作用する荷重が比較的小さい構造物、例えば太陽電池アレイ等を設置する際に用いて好適な杭基礎構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0010】
本発明の杭基礎構造は、支持物を接続し、該支持物を支持するための杭基礎構造であって、木杭と、上端側の開口を閉塞する接続板部を備えて略筒状に形成された鋼管キャップとを備え、前記木杭の杭頭側に前記鋼管キャップを被せて設置し、前記鋼管キャップの接続板部に前記支持物を接続して前記支持物を支持するように構成されて
おり、前記鋼管キャップの長さが、前記木杭の地上に配される部分と、地中の凍結深さ及び腐食の発生が予測される深さの部分と、を被覆するように設定されていることを特徴とする。
【0012】
さらに、本発明の杭基礎構造においては、前記木杭と前記鋼管キャップの間に樹脂材を注入充填して構成されていることがより望ましい。
また、本発明の杭基礎構造においては、前記木杭における前記鋼管キャップが取り付けられる前記杭頭側の部分が、他の下方部分よりも小径に形成されていることがより望ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の杭基礎構造においては、予め鋼管キャップを被せた木杭を油圧ショベルなどの建設機械を用いて地盤に打設し、鋼管キャップの接続板部に支持物を接続することで、容易に且つ好適に支持物を保持して設置することができる。
【0014】
そして、このように木杭と鋼管キャップを備えて杭基礎構造を構成すると、例えば鋼管杭を用いた場合と比較し、所望の支持耐力を確保しつつ、杭長を大幅に短くでき、且つ大幅に施工コスト(材工)を削減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る杭基礎構造を用いて太陽電池アレイを設置した状態を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る杭基礎構造を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る杭基礎構造を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、
図1から
図3を参照し、本発明の一実施形態に係る杭基礎構造について説明する。なお、本実施形態では、本発明に係る杭基礎構造で支持する支持物が太陽電池アレイやこれを保持するための支持フレームであるものとして説明を行う。
【0017】
すなわち、本実施形態は、
図1に示すように、鋼材を組み付けて形成され、太陽電池アレイ(支持物)1を所定の角度で支持するための支持フレーム(支持物)2を接続し、この支持フレーム2及び太陽電池アレイ1を支持するための杭基礎構造Aに関するものである。
【0018】
言い換えれば、本実施形態は、泥炭地盤等の軟弱層が存在し強度が低い地盤G上に、太陽電池アレイ1のような作用する荷重が比較的小さい構造物(支持物)を設置する際に用いて特に好適な杭基礎構造Aに関するものであり、その適用対象を、必ずしも太陽電池アレイ1や支持フレーム2に限定してなくてもよい。
【0019】
具体的に、本実施形態の杭基礎構造Aは、
図1から
図3に示すように、木杭3が主な構成要素とされている。
【0020】
また、本実施形態では、この木杭3が杭頭3a側の所定の長さ部分に鋼管キャップ4を被せ、杭頭3a側を鋼管杭のようにして構成されている。鋼管キャップ4の長さLは、地上に配される部分と、例えば地中の凍結深さ、腐食の発生が予測される深さの部分とを鋼管キャップ4で被覆できるように設定されている。
【0021】
また、鋼管キャップ4は、円筒状の鋼管本体部4aと鋼管本体部4aの上端側の開口を閉塞するように取り付けられた接続板部4bとを備えて略筒状に形成されている。さらに、メッキ処理など、その表面を防腐処理や超撥水処理して形成されている。
【0022】
さらに、本実施形態では、鋼管キャップ4を取り付ける木杭3の杭頭3a側が他の下方部分よりも小径にして形成されている。そして、鋼管キャップ4及び木杭3の杭頭3a側には、ボルト挿通孔5が貫通形成されており、このボルト挿通孔5に通しボルト6を挿通しナットを締結することで、木杭3に鋼管キャップ4を一体に固定して取り付けることができる。
【0023】
また、鋼管キャップ4の天端を形成する接続板部4bには、例えば内面に雌ネジの螺刻を施した複数の接続孔7が穿設されており、この接続孔7にボルトを螺合させるなどして支持フレーム2の鋼材を接続できるように構成されている。
【0024】
そして、上記のように構成した本実施形態の杭基礎構造Aを設置する際には、鋼管キャップ4を取り付けた状態で(あるいは鋼管キャップ4を外した状態で)、木杭3を、木杭打込み用アタッチメントを取り付けた油圧ショベルなどの建設機械を用いて地盤Gに打設する。
【0025】
また、地盤Gの所定深度まで打設した状態で、鋼管キャップ4の接続板部4b側から杭基礎構造Aの木杭3と鋼管キャップ4の間にエポキシ樹脂などの樹脂材を注入・充填する。
【0026】
これにより、木杭3を用いた場合であっても、鋼管キャップ4によってその腐食を防止し、また凍結融解の影響を防ぐことができる。また、樹脂材を注入することで、木杭3と鋼管キャップ4の隙間をなくすことができ、且つ木杭3の杭頭3a側のさらなる腐食防止を図ることができる。
【0027】
ここで、上記構成からなる本実施形態の杭基礎構造Aと、従来の鋼管杭を泥炭地盤Gに打設し、同一荷重に対する耐力を確認した。この結果、杭径φ139.8mm、板厚3.5mm、杭長7.0mの先端羽根付きの鋼管杭と同等の耐力が、末口径φ16cm、杭長5.6m、鋼管キャップ(直径φ165.2mm、板厚4.5mm、長さ0.8m)付きの本実施形態の杭基礎構造Aで得られることが確認された。
【0028】
したがって、本実施形態の杭基礎構造Aにおいては、木杭3を油圧ショベルなどの建設機械を用いて地盤Gに打設し、鋼管キャップ4の接続板部4bに支持フレームなどの支持物2を接続することで、容易に且つ好適に(安定的に)太陽電池アレイ1を保持して設置することができる。
【0029】
そして、このように木杭3と鋼管キャップ4を備えて杭基礎構造Aを構成すると、鋼管杭を用いた場合と比較し、所望の支持耐力を確保しつつ、杭長を大幅に短くできる。さらに、施工が容易になるとともに安価な木杭3を用いることで大幅に施工コスト(材工)を削減することが可能になる。
【0030】
以上、本発明に係る杭基礎構造の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 太陽電池アレイ(支持物)
2 支持フレーム(支持物)
3 木杭
3a 杭頭
4 鋼管キャップ
4a 鋼管本体部
4b 接続板部
5 ボルト挿通孔
6 通しボルト
7 ボルト孔
A 太陽電池アレイ用杭基礎構造
G 地盤