(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
コイルと、前記コイルが配置される磁性コアと、前記コイルと前記磁性コアとの組合体を内部に収納するケースと、前記ケース内に充填されて前記組合体の少なくとも一部を封止する封止樹脂部とを備えるリアクトルであって、
前記ケースの前記組合体が載置される側を下側とするとき、
前記ケースに取り付けられると共に、前記磁性コアのうち前記コイルから露出する外側コア部の上方に重複するように配置されて、前記封止樹脂部と共に前記組合体の前記ケースからの脱落を防止する支持部を備え、
前記封止樹脂部は、前記外側コア部の上面と前記支持部の下面との間の全域に亘って介在されており、
前記外側コア部と前記支持部とは直接接触しておらず、前記外側コア部の上面と前記支持部の下面との間の間隔が、0.1mm以上2.0mm以下であり、
前記支持部の全体が前記封止樹脂部に埋設されているリアクトル。
【発明を実施するための形態】
【0010】
《本発明の実施形態の説明》
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
【0011】
(1)本発明の一態様に係るリアクトルは、コイルと、コイルが配置される磁性コアと、コイルと磁性コアとの組合体を内部に収納するケースと、ケース内に充填されて組合体の少なくとも一部を封止する封止樹脂部とを備える。ケースの組合体が載置される側を下側とする。このリアクトルは、ケースに取り付けられると共に、磁性コアのうちコイルから露出する外側コア部の上面に重複するように配置されて、封止樹脂部と共に組合体のケースからの脱落を防止する支持部を備える。封止樹脂部は、外側コア部の上面と支持部の下面との間に介在されており、外側コア部と支持部とは直接接触していない。
【0012】
上記の構成によれば、組合体をケースにしっかり固定できる。封止樹脂部で組合体の少なくとも一部を封止している上に、支持部により外側コア部との間の封止樹脂部を介して外側コア部を下面に固定できるからである。
【0013】
また、上記の構成によれば、コアの損傷を抑制できる。外側コア部の上面と支持部の下面との間に封止樹脂部を介在させることで、支持部を外側コア部の上面に接触させてその上面を下側へ押圧する場合に比較して、リアクトルの動作時の振動による外側コア部への応力の付加を緩和できるからである。
【0014】
更に、上記の構成によれば、ケースの振動を抑制できるため、騒音を抑制できる。外側コア部の上面と支持部の下面との間に封止樹脂部を介在させることで、支持部を外側コア部の上面に接触させてその上面を下側へ押圧する場合に比較して、支持部が磁性コアの振動のケースへの伝達経路になり難いからである。
【0015】
(2)上記リアクトルの一形態として、封止樹脂部のショアA硬さは、20以上90以下であることが挙げられる。
【0016】
ショアA硬さを20以上とすることで、組合体をケースにしっかり固定し易く、組合体のケースからの脱落を抑制し易い。ショアA硬さを90以下とすることで、磁性コアの振動のケースへの伝達を抑制し易い。
【0017】
(3)上記リアクトルの一形態として、支持部の少なくとも一部が、前記封止樹脂部に埋設されていることが挙げられる。
【0018】
一部が埋設されていれば、全部が埋設される場合に比較して、封止樹脂部の量を低減できてリアクトルを軽量化できる。全部が埋設されていれば、一部が埋設されている場合に比較して、支持部を外部環境から保護しやすい。
【0019】
(4)上記リアクトルの一形態として、外側コア部の上面と支持部の下面との間の間隔が、0.1mm以上2.0mm以下であることが挙げられる。
【0020】
上記間隔を0.1mm以上とすることで、封止樹脂部の構成樹脂を隙間なく速やかに充填させ易い。その上、支持部を介した外側コア部の振動のケースへの伝達の抑制に効果的である。上記間隔を2.0mm以下とすることで、リアクトルの小型化に寄与する。上記間隔が広すぎると、リアクトルの高さが高くなり、樹脂の充填量が多くなり、リアクトルの大型化、重量化を招く。
【0021】
《本発明の実施形態の詳細》
本発明の実施形態の詳細を、以下に図面を参照しつつ説明する。
【0022】
《実施形態1》
〔リアクトルの全体構成〕
図1〜4を参照して、実施形態1のリアクトル1Aを説明する。リアクトル1Aは、コイル2と、コイル2が配置される磁性コア3と、コイル2と磁性コア3との組合体10Aを内部に収納するケース4と、ケース4内に充填されて組合体10Aの少なくとも一部を封止する封止樹脂部6とを備える。リアクトル1Aの主たる特徴とするところは、封止樹脂部6と共に組合体10Aのケース4からの脱落を防止する支持部5を備え、磁性コア3のうちコイル2から露出する外側コア部と支持部5との間に封止樹脂部6を介在している点にある。以下、リアクトル1Aの主たる特徴部分及び関連する部分の構成、並びに主要な効果を順に説明し、その後、各構成を詳細に説明し、最後にリアクトル1Aの製造方法を説明する。ここでは、ケース4の組合体10Aが載置される側(設置側)を下側、その反対側(対向側)を上側とする。図中の同一符号は同一名称物を示す。
【0023】
〔主たる特徴部分及び関連する部分の構成〕
[コイル]
コイル2は、接合部の無い1本の連続する巻線2wを螺旋状に巻回してなる一対の巻回部2a,2bと、巻線2wの一部から形成されて両巻回部2a,2bを連結する連結部2rとを備える(
図1,3,4)。巻線2wは、平角線の導体(銅など)と、この導体の外周を覆う絶縁被覆(ポリアミドイミドなど)とを備える被覆平角線(所謂エナメル線)である。巻回部2a,2bは、この被覆平角線をエッジワイズ巻きしたエッジワイズコイルである。各巻回部2a,2bは、互いに同一の巻数の中空の筒状体であり、各巻回部2a,2bの端面形状は、矩形枠の角部を丸めた形状としている。各巻回部2a,2bの配置は、各軸方向が平行するように横並び(並列)した状態としている。
【0024】
連結部2rは、コイル2の軸方向一端側(
図1,3,4紙面右側)の上側で、巻線2wの一部をU字状に屈曲して構成している。各巻回部2a,2bを形成する巻線2wの両端部2eは、連結部2r側と反対側の上側でターン形成部分からコイル2の上方へ引き延ばされている。両端部2eは、その先端の絶縁被覆が剥されて露出した導体に端子部材(図示略)が接続される。コイル2は、この端子部材を介してコイル2に電力供給を行なう電源などの外部装置(図示略)が接続される。
【0025】
[磁性コア]
磁性コア3は、巻回部2a,2bから露出する外側コア部と、巻回部2a,2bの内側に配置される内側コア部とを備える。磁性コア3は、複数のコア片を組み合わせて構成される。ここでは、磁性コア3は、
図4に示すように、複数の角柱状コア片31mと、一対のU字状コア片32mと、各コア片間に介在される複数のギャップ部分31gとで構成される。角柱状コア片31mは、その全体が巻回部2a,2b内に配置される。U字状コア片32mは、巻回部2a,2bの内側に配置される部分と、巻回部2a,2bの外に配置(露出)される部分との両方を有する。U字状コア片32mは、U字の開口部が向かい合うように配置され、角柱状コア片31mとギャップ部分31gとの積層物が、U字状コア片32m,32m間に横並び(並列)に配置される。この配置によって、磁性コア3は環状に組み付けられ、コイル2を励磁したときに閉磁路を形成する。
【0026】
この磁性コア3では、このU字状コア片32mのうち巻回部2a,2bの外に配置される部分を外側コア部といい、複数の角柱状コア片31mと複数のギャップ部分31gとU字状コア片32mのうち巻回部2a,2b内に配置される部分とを内側コア部という。ここでは、外側コア部は、実質的にU字状コア片32mの基部321で構成され、内側コア部は、実質的に角柱状コア片31mとギャップ部分31gとU字状コア片32mの突出部322とで構成される(いずれも後述)。
【0027】
[ケース]
ケース4は、コイル2と磁性コア3との組合体10Aを内部に収納する(
図1,2,3)。ケース4は、組合体10Aを収納することで、組合体10Aの外部環境(粉塵や腐食など)からの保護や機械的保護を図ることができる。ケース4は、組合体10Aが載置される底板部41と、組合体10Aの周囲を囲む側壁部42とを備える。底板部41は、平板状であり、その下面を冷却ベースなどの設置対象(図示略)に設置する。側壁部42は、底板部41の周縁に立設される略矩形枠状である。底板部41と側壁部42とは、一体に成形されている。
【0028】
側壁部42の高さは、支持部5を固定するための取付面43u(後述)よりも高くする。支持部5と外側コア部(基部321)の上面との隙間に封止樹脂部6を介在させるため、取付面43uよりも側壁部42の高さを高くすることで、封止樹脂部6がケース4の外に溢れることなく上記隙間に封止樹脂部6を介在させ易い。ここでは、側壁部42の高さは、取付面43uよりも高くて、コイル2の上面よりも少し高くしている。
【0029】
側壁部42の内周面の4つの角部には、支持部5を取り付けるための取付台43を備える。取付台43は、ケース4内の各角部を埋めるように形成された柱状に構成されている。取付台43の上面は、平面で構成され、支持部5を取り付ける取付面43uとなる。取付面43uには、支持部5を固定するためのボルト53が挿通される挿通孔43hが形成されている。
【0030】
取付面43u(取付台43)の位置(高さ)は、ここでは外側コア部(基部321)の上面よりも高くしている。後述するように支持部5の形状を平板状としているため、組合体10Aをケース4に収納して支持部5を取付台43に取り付けた際、外側コア部の上面と支持部5の下面との間に封止樹脂部6を介在させられる隙間を形成できる(
図2)。
図2では、ボルト53は省略して示している。取付面43uの位置は、外側コア部の上面と略面一とすることや、その上面よりも低くすることもできる。詳しくは後述するが支持部5の形状を適宜選択すれば、取付面43uの位置に関わらず、外側コア部の上面と支持部5の下面との間に上記隙間を形成できるためである。
【0031】
取付面43u(取付台43)の位置(高さ)は、支持部5の形状にもよるが、支持部5を取り付けた際、支持部5の下面と外側コア部の上面との間の間隔d(
図2)が、0.1mm以上2.0mm以下となるように適宜選択することが好ましい。上記間隔dを0.1mm以上とすることで、封止樹脂部6の構成樹脂を隙間なく速やかに充填させ易い。その上、支持部5を介した外側コア部の振動のケース4への伝達の抑制に効果的である。上記間隔dを2.0mm以下とすることで、リアクトル1Aの小型化に寄与する。上記間隔が広すぎると、リアクトル1Aの高さが高くなり、封止樹脂部6の充填量が多くなり、リアクトル1Aの大型化、重量化を招く。上記間隔dは、取付台43の高さや支持部5の形状により適宜調整できる。上記間隔dは、支持部5の下面と外側コア部の上面との間の最も狭い箇所を言う。上記間隔dは、0.3mm以上1.0mm以下がより好ましい。
【0032】
取付台43の内周面は、組合体10Aの輪郭形状(外側コア部の外周面と各巻回部2a,2bの端面)に沿っている(
図3)。
【0033】
底板部41と側壁部42とで囲まれる内部空間は、組合体10Aの収納空間に利用される。上記内部空間の大きさは、組合体10Aを収納した際、組合体10Aの側面との間に封止樹脂部6の構成樹脂が充填される隙間が形成される程度である(
図2)。即ち、封止樹脂部6の構成樹脂を充填・硬化すれば、ケース4の側壁部42の内周面と封止樹脂部6との間には実質的に隙間が形成されない(
図1,2)。
【0034】
ケース4の材質は、アルミニウムやその合金、マグネシウムやその合金、銅やその合金、銀やその合金、鉄やオーステナイト系ステンレス鋼などの金属が好適である。これらの金属は熱伝導率が比較的高いので、その全体を放熱経路に利用でき、組合体10Aに発生した熱を設置対象(例えば、冷却ベース)に効率良く放熱でき、リアクトル1Aの放熱性を高められる。底板部41への組合体10Aの固定は、例えば、後述する樹脂層9(
図3)により行える。
【0035】
[支持部]
支持部5は、外側コア部(基部321)の上面との間の固化された封止樹脂部6を介して外側コア部(基部321)の上面を支持する。それにより、封止樹脂部6と共に組合体10Aのケース4からの脱落を防止する。
【0036】
支持部5は、ケース4(取付台43)に取り付けられる固定部51と、外側コア部(基部321)の上面に重複する重複領域を有する重複部52とを備える。固定部51は、長手方向の両端側に設けられ、重複部52は、長手方向の略中央に設けられている。固定部51には、支持部5を取付台43に固定するためのボルト53などの締結部材が挿通される挿通孔51hが形成されている(
図3)。コイル2の連結部2r側における支持部5の重複部52は、連結部2rと干渉しないように外側コア部の上面に重複している。
【0037】
支持部5の形状は、固定部51と重複部52とが取付面43uと略平行で屈曲部のない平板で構成している。支持部5を平板で構成することで、組合体10Aをケース4に収納して支持部5の固定部51を取付台43に取り付けた際、外側コア部(基部321)の上面と支持部5の重複部52の下面との間に封止樹脂部6を介在させられる所定の間隔dの隙間を形成できる。上述したように、取付面43u(取付台43)の位置(高さ)を外側コア部の上面よりも高くしているためである。ここでは、支持部5の上面は、巻回部2a、2bの上面よりも下側に位置している。
【0038】
例えば、取付面43uの位置が外側コア部(基部321)の上面よりも十分に高い場合、支持部5の形状は、重複部52が固定部51に比べて低くなるように段差状に折り曲げた凹型の平板で構成することもできる。また、外側コア部の上面と略面一の場合やその上面よりも低い場合には、支持部5の形状を、例えば、重複部52が固定部51に比べて高くなるように段差状に折り曲げた凸型の平板で構成するとよい。
【0039】
支持部5の材質は、ケース4と同様の金属とすることができる。支持部5と外側コア部との間に介在される封止樹脂部6により両者を絶縁できるためである。そのため、支持部5の重複部52に絶縁性の樹脂被覆を設ける必要がない。支持部5を金属で構成すれば、支持部5の固定部51を金属製のケース4へ強固に固定できるため、組合体10Aのケース4からの脱落を抑制し易い。
【0040】
[封止樹脂]
封止樹脂部6は、ケース4内に充填され、ケース4内に収納された組合体10Aを封止する(
図1,2)。この封止樹脂部6により、支持部5と共に組合体10Aのケース4からの脱落を防止できる。また、組合体10Aの電気的・機械的保護、外部環境からの保護、コイル2に通電したときに発生する磁性コア3の振動、及びこの振動に起因する騒音の低減などを図り易い。
【0041】
封止樹脂部6は、外側コア部(基部321)の上面と支持部5の下面との間に介在する(
図2)。封止樹脂部6が外側コア部と支持部5との間に介在することで、支持部5と外側コア部とは直接接触しない。そのため、磁性コア3の振動に伴う外側コア部への応力の付加を低減し易い上に、支持部5を介した磁性コア3の振動のケース4への伝達を抑制し易い。ここでは、封止樹脂部6は、外側コア部の上面と支持部5の下面との間の全域に亘って介在している。
【0042】
封止樹脂部6の形成領域は、底板部41の上面から少なくとも支持部5の下面に至るまでの領域とすることが挙げられる。そうすれば、外側コア部(基部321)の上面と支持部5の下面との間に封止樹脂部6を介在させられる。即ち、封止樹脂部6の上面は、少なくとも支持部5の下面に接触する高さに位置する。外側コア部の上面と支持部5の下面との間に封止樹脂部6を介在させるには、封止樹脂部6の作製過程でその構成材料をケース4内に充填する際、封止樹脂部6の上面が、少なくとも支持部5の下面に接触する高さに至るまで充填を行う。
【0043】
封止樹脂部6の形成領域は、支持部5の一部が埋設される(一部が露出する)高さに至るまでの領域としてもよいし、支持部5の全体が埋設される高さに至るまでの領域としてもよい。即ち、封止樹脂部6の上面は、支持部5の下面と上面との間に位置していてもよいし、支持部5の上面よりも上方に位置していてもよい。支持部5の一部が埋設される高さとする場合は、支持部5の全体が埋設される高さとする場合に比べて封止樹脂部6の量を減らせて軽量化できる。支持部5の全体が埋設される高さとする場合は、支持部5の一部が埋設される高さとする場合に比較して支持部5を外部環境から保護し易い。この封止樹脂部6の上面は、封止樹脂部6の硬化後の表面であって、ケース4内に未硬化の封止樹脂部6の構成樹脂を充填した際に液面であった面に相当する。
【0044】
ここでは、封止樹脂部6の形成領域は底板部41の上面から支持部5の全体を埋設する高さに至る領域であり、巻線2wの両端部2eと巻回部2a,2bの上面及び連結部2rの上面とを除くその他の全域に亘る領域である(
図1,2)。詳しくは後述するように、封止樹脂部6は、外側コア部(基部321)の下面と底板部41との間にも介在している(
図2)。これは、後述するように、基部321の下面は、コイル2の下面よりも高い位置にあるからである。
【0045】
封止樹脂部6の構成樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などの絶縁性樹脂が挙げられる。これらの樹脂の中でも、特に柔らかい樹脂が好ましい。封止樹脂部6を柔らかい樹脂で構成することで、磁性コア3の振動のケース4への伝達を抑制し易い。具体的には、封止樹脂部6のショアA硬さは20以上90以下とすることが好ましい。このショアA硬さは、「プラスチックのデュロメータ硬さ試験方法 JIS K 7215(1986)」に準拠した値である。ショアA硬さを20以上とすることで、組合体10Aをケース4にしっかり固定し易く、組合体10Aのケース4からの脱落を抑制し易い。ショアA硬さを90以下とすることで、磁性コア3の振動のケース4への伝達を抑制し易い。このショアA硬さは、30以上70以下が特に好ましい。封止樹脂部6の構成樹脂は、更に、絶縁性や放熱性に優れるフィラーを含有すると、絶縁性や放熱性(熱伝導性)を高められる。なお、柔らかい樹脂で構成される領域は外側コア部の上面と支持部5との間の領域のみとし、それ以外の領域はこの領域よりも硬い樹脂で構成してもよい。
【0046】
〔リアクトルの主たる特徴部分における作用効果〕
リアクトル1Aによれば、支持部5と封止樹脂部6により組合体10Aのケース4からの脱落を防止でき、封止樹脂部6が外側コア部の上面と支持部5の下面との間に介在していることで、外側コアの損傷、ケース4の振動、及び騒音を抑制できる。
【0047】
〔その他の特徴部分を含む各構成の説明〕
[磁性コア]
磁性コア3は、上述したように複数の角柱状コア片31mと、一対のU字状コア片32mと、各コア片間に介在される複数のギャップ部分31gとで構成される(
図4)。角柱状コア片31mの形状は、巻回部2a,2bの内周形状に合わせた形状であることが好ましい。ここでは、角柱状コア片31mの形状は直方体状であり、その角部は巻回部2a,2bの内周面の角部に沿って丸められている。角柱状コア片31mの個数は、適宜選択できる。
【0048】
一対のU字状コア片32m,32mは、同一の形状である。U字状コア片32mは、巻回部2a,2b外に配置されて巻回部2a,2b間に跨るように配置される直方体状の基部321と、この基部321から突出して巻回部2a,2b内にそれぞれ配置される一対の突出部322とを有する。基部321と一対の突出部322,322とは一体に成形された一体物である。
【0049】
一対の突出部322,322の端面は、角柱状コア片31mの端面とほぼ同じ形状及び大きさであり、その大きさ及び突出長さは、コイル2に応じた所定の磁路断面積を有するように適宜選択できる。一対の突出部322,322の形状は、巻回部2a,2bの形状に合わせた形状であることが好ましく、ここでは、角部が実質的に巻回部2a,2bの内周面の角部に沿って丸められている。
【0050】
基部321の上面は、突出部322及び角柱状コア片31mの上面と略面一である。基部321の下面は、角柱状コア片31mの下面よりも下側に突出しているが、コイル2の下面よりも高い位置にある。即ち、組合体10Aの設置面は、実質的にコイル2の下面で構成されていて、基部321の下面と底板部41との間には、封止樹脂部6が介在されている(
図2)。このようにコイル2が底板部41に接触していることで放熱性を確保しつつ、基部321の下面と底板部41との間に封止樹脂部6が介在していることで、基部321を介したケース4への振動の伝達を抑制できて騒音を低減できる。
【0051】
両コア片31m,32mの材質は、軟磁性材料を30体積%以上、更に50体積%超含むことが挙げられる。具体的には、鉄や鉄合金(Fe−Si合金、Fe−Ni合金など)といった軟磁性金属粉末や更に絶縁被覆を備える被覆粉末などを圧縮成形した圧粉成形体、軟磁性粉末と樹脂とを含み樹脂が固化(硬化)している複合材料(成形硬化体)などが利用できる。この例では、両コア片31m,32mは圧粉成形体で構成している。
【0052】
ギャップ部分31gの形状は、隣り合うコア片(31mと31m、31mと32m)間に形成される隙間に沿った形状であり、例えば、平面視した(コイル軸方向から見た)際、長方形状の平板とすることが挙げられる。ギャップ部分31gの形状や個数は適宜選択できる。ギャップ部分31gの材質は、角柱状コア片31m,U字状コア片32mよりも比透磁率が低い材料が挙げられ、例えば、アルミナなどの非磁性材などを用いることができる。また、ギャップ部分31gは封止樹脂部6の構成樹脂で封止樹脂部6と一連に形成してもよい。
【0053】
[介在部材]
リアクトル1Aは、コイル2と磁性コア3との間に介在される介在部材8(
図1,3,4)を備える形態とすることができる。介在部材8は、コイル2と磁性コア3との間の電気的絶縁性を高める。
【0054】
介在部材8は、例えば、コイル2の巻回部2a,2bの軸方向に分割される一対の分割片80を組み合わせて形成される。各分割片80は、巻回部2a,2bの端面とU字状コア片32m(基部321)の内端面との間に介在される端面介在部81と、巻回部2a,2bと複数の角柱状コア片31mを含む内側コア部との間の少なくとも一部に介在される内側介在部82とを備えるものが挙げられる(
図4)。端面介在部81と内側介在部82とは、一連に形成されている。
【0055】
(端面介在部)
端面介在部81は、巻回部2a,2b(コイル2)の端面と外側コア部(基部321)との間を絶縁する。端面介在部81は、各内側コア部がそれぞれ挿通可能な一対の開口部(貫通孔)を有するB字状の平板部材で構成される。端面介在部81のコイル側面は、各巻回部2a、2bの上端面を除く端面(両側端面と下端面)と接触している(
図3)。即ち、端面介在部81はコイル2の上端面と接触せず、コイル2の上端面は端面介在部81から露出されている。
【0056】
(内側介在部)
内側介在部82は、巻回部2a,2b(コイル2)の内周面と内側コア部との間を絶縁する。内側介在部82は、巻回部2a,2bにおける丸められた角部に沿って配置される複数の湾曲した板片から構成される。内側介在部82を板片などとすることで、製造時、封止樹脂部6の構成材料である未固化の樹脂材料を充填し易い。内側介在部82の端部はそれぞれ、係合するように形成されている。
【0057】
(仕切部)
各分割片80は、巻回部2a,2b同士の絶縁を確保する仕切部83を備える。仕切部83は、端面介在部81における内側介在部82間で巻回部2a,2b間に介在するように設けられる。仕切部83は、端面介在部81に一連に形成されている。
【0058】
(材質)
介在部材8の構成樹脂は、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、液晶ポリマー(LCP)、ポリアミド(PA)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂などの熱可塑性樹脂が挙げられる。ここでは、PPS樹脂を用いている。
【0059】
[樹脂層]
樹脂層9は、コイル2の下面、及び磁性コア3の下面の少なくとも一方に接するように設けられるとすることが挙げられる(
図3)。樹脂層9を備えることで、ケース4の底板部41に組合体10Aを強固に固定でき、コイル2の動きの規制、放熱性の向上、底板部41への固定の安定性などを図ることができる。ここでは、樹脂層9の大きさは、コイル2の下面全面に介在される程度としている。樹脂層9の構成材料は、絶縁性樹脂、特にセラミックスフィラーなどを含有して放熱性に優れるもの(例えば、熱伝導率は、0.1W/m・K以上、更に1W/m・K以上、特に2W/m・K以上)が好ましい。具体的な樹脂は、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステルなどの熱硬化性樹脂や、PPS樹脂、LCPなどの熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0060】
〔リアクトルの製造方法〕
リアクトル1Aは、例えば、以下の準備工程と、配置工程と、充填工程とを備えるリアクトルの製造方法によって製造できる。準備工程では、コイル2と磁性コア3とを組み合わせた組合体10Aと、ケース4と、支持部5及びボルト53と、封止樹脂部6の構成樹脂と、樹脂層9とを準備する。配置工程では、ケース4の底板部41の上面に樹脂層9を形成し、その樹脂層9の上に組合体10Aを載置する。続いて、支持部5をケース4の取付台43の取付面43uに載置し、ボルト53で固定することで基部321に重複させる。充填工程では、封止樹脂部6の構成樹脂をケース4内に所定の高さまで充填し、硬化(固化)させる。そうして、基部321の上面と支持部5の下面との間に封止樹脂部6が介在されて、基部321と支持部5とが非接触なリアクトル1Aを製造できる。
【0061】
この製造方法によれば、ケース4の取付台43の高さや支持部5の形状を適宜選択して予め外側コア部の上面と支持部5の下面との間に所定の間隔dの隙間を形成しておくことで、封止樹脂部6の構成樹脂をケース4内に充填すれば、外側コア部の上面と支持部5との間に封止樹脂部6が介在されたリアクトル1Aを製造できる。
【0062】
本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。例えば、磁性コアの複数のコア片の組み合わせをU−U型コア、L−L(J−J)型コアなどと呼ばれる形態とすることができる。また、巻回部が一つのみであるコイルと、E−E型コアやE−I型コアなどと呼ばれる磁性コアとを備えるリアクトルとすることができる。