特許第6384742号(P6384742)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6384742多条均等堅巻製品コイルの一括搬出方法及びその装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6384742
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】多条均等堅巻製品コイルの一括搬出方法及びその装置
(51)【国際特許分類】
   B21C 47/24 20060101AFI20180827BHJP
【FI】
   B21C47/24 C
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-108894(P2017-108894)
(22)【出願日】2017年6月1日
【審査請求日】2017年6月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】303064488
【氏名又は名称】有限会社サンシャイン工業
(73)【特許権者】
【識別番号】517192788
【氏名又は名称】開進工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102761
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 元也
(72)【発明者】
【氏名】向井 晟
【審査官】 坂口 岳志
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−051451(JP,A)
【文献】 特開昭64−018520(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/118822(WO,A1)
【文献】 実開昭51−068834(JP,U)
【文献】 米国特許第05531398(US,A)
【文献】 米国特許第03999665(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21C 45/00−49/00
B65H 18/00−18/28
B65H 19/00−19/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻取軸に設定した多条の開閉巻取板に巻き付けた多条製品コイルの最内周面と、前記開閉巻取板の外周面外径を縮小して形成した該開閉巻取板の外周面との間隙に滑り板を介することにより、該滑り板の表面と前記それぞれの製品コイルの最内周面を一直線状に接しめ、最端部の製品コイルを連続的に押圧して多条製品コイルを水平状に滑らせることにより、それぞれの開閉巻取板から製品コイルのみを一挙に抜き出すことを特徴とする多条均等堅巻製品コイルの一括搬出方法。
【請求項2】
円周下部の直径に対し円周上部の直径を小径にした変形巻取板(10)において、開閉ドラム(21)、(22)の上端部が互いに前記変形巻取板(10)の円周上部の中央で接合し、かつ、前記開閉ドラム(21)、(22)の直径が前記変形巻取板(10)円周下部の直径と同一である左右一対の開閉ドラム(21)、(22)の両下端部を、前記変形巻取板(10)円周上部の直径に対し空隙を以って覆包して前記変形巻取板(10)に支承するとともに、前記接合部の下部に設けた左右切欠き部間の肉厚部にそれぞれの開閉カム(27)、(28)を介在し、前記変形巻取板(10)の円周下部には該直径と同一、かつ、中央部を切欠き部(35)とした弧状バランサー(31)、(32)を前記変形巻取板(10)の表裏に固定して該部の円周幅(肉厚)が前記開閉ドラム(21)、(22)の円周幅(肉厚)と同じくし、さらに、前記変形巻取板(10)の上部中央にカム開閉穴(29)及び下部中央に位置決め穴(36)をそれぞれ穿ち、前記変形巻取板(10)の表裏両面に該変形巻取板(10)より小径の押さえ板(11)、(12)を圧接し、かつ、該変形巻取板(10)と押さえ板(11)、(12)間にフェルト状オーリング(14)及びゴム製オーリング(15)を介して前記変形巻取板(10)を挟持してなる開閉巻取板(42)。
【請求項3】
円周下部の直径に対し、円周上部の直径を小径にした変形巻取板(10)において、開閉ドラム(21)、(22)の上端部が互いに前記変形巻取板(
10)の円周上部の中央で接合し、かつ、前記開閉ドラム(21)、(22)の直径が前記変形巻取板(10)の円周下部の直径と同一である左右一対の開閉ドラム(21)、(22)の両下端部を、前記変形巻取板(10)の円周上部の直径に対し空隙を以って覆包して前記変形巻取板(10)に支承するとともに、前記接合部の下部に設けた左右切欠き部間の肉厚部にそれぞれの開閉カム(27)、(28)を介在し、前記変形巻取板(10)の円周下部には該直径と同一、かつ、中央部を切欠き部(35)とした弧状バランサー(31)、(32)を前記変形巻取板(10)の表裏に固定して該部の円周幅(肉厚)が前記開閉ドラム(21)、(22)の円周幅(肉厚)と同じくし、さらに、前記変形巻取板(10)の上部中央にカム開閉穴(29)及び下部中央に位置決め穴(36)をそれぞれ穿ち、前記変形巻取板(10)の表裏両面に該変形巻取板(10)より小径の押さえ板(11)、(12)を圧接し、かつ、該変形巻取板(10)と押さえ板(11)、(12)間にフェルト状オーリング(14)及びゴム製オーリング(15)を介して前記変形巻取板(10)を挟持してなる開閉巻取板(42)の多数を、ベッド(7)上に設けた駆動装置(8)と連動し、かつ、水平状に突出する巻取軸(9)に設定し、前記開閉巻取板(42)のそれぞれと対向するセパレーターディスク(57)、(58)を具備するオートセパレーター(5)をベッド(7)に固定した垂直支柱(45)のガイド軌(46)に水平設定するとともに、ベッド(7)内に水平設置した油圧シリンダー(59)に固定したプッシャー板(60)を前記開閉巻取板(42)に跨って駆動装置(8)間に介在してなるリコイラー装置(1)の下方に、台車(63)に受台(64)並びに位置決めバー(65)を装備したコイルカー(2)を遊動設定したことを特徴とする多条均等堅巻製品コイルの一括搬出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多条均等堅巻製品コイルの一括搬出方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、広幅材料コイルはスリッターによって所望する細幅に分割され、この分割数に相応し、かつ、巻取軸に設定されたそれぞれの巻取円板に多条製品コイルとして巻き取られる。
【0003】
そして、上記細幅に分割されたそれぞれの材料コイルの肉厚が一定ではなくても、巻取開始から終了までの間は常に一定、かつ、均等の堅さで該多条コイルを同時に巻き取ることができる多条コイル均等竪巻装置が本発明者によって提唱されてきている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2961601号特許公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上に述べた従来の多条コイル均等竪巻装置では、均等の堅さで巻き取られた多条の製品コイルの状態を保全するため、巻取終了後にそれぞれの製品コイルの外周最後端に、一条ずつテープ止めやグリップ止めを施さねばならず、しかも、それぞれの製品コイルは一条ずつナイロンスリング(吊り上げひも)を巻取円板に穿った穴に通したのち、クレーンを介してその都度一条ずつ巻取円板と共に巻取軸から取り外し、かつ、その後に該巻取円板から製品コイルを再びその都度抜き取ることによって適宜に搬出していた。
【0006】
このため、数十条も設定した多条コイルから製品コイルの全てを搬出するには、頗る多大な労力と時間を費やし、かつ、その間の作業工程においては該装置の稼働を停止しておく必要があり、また、次の作業工程に移るには先の巻取円板を多条数に応じてそれぞれを再び巻取軸に設定しなければならず、能率性・コスト性・作業性等において歩留まりが極めて悪く、多重の問題点を有していた。
【0007】
本発明は、このような従来の構成が有していた問題を解決しようとするものであり、巻取軸に設定されている多数の開閉巻取板から、それに相応する多条製品コイルのみを自動的に一括して一挙に取り出しできると同時に、前述のように開閉巻取板はリコイラー装置にそのままの状態で残存し、次の巻取作業が即座にできるようにした多条均等堅巻製品コイルの一括搬出方法及びその装置を実現することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そして、本発明は上記目的を達成するために、巻取軸に設定した多条の開閉巻取板に巻き付けた多条製品コイルの最内周面と、前記開閉巻取板の外周面外径を縮小して形成した該開閉巻取板の外周面との間隙に滑り板を介することにより、該滑り板の表面と前記それぞれの製品コイルの最内周面を一直線状に接しめ、最端部の製品コイルを連続的に押圧して多条製品コイルを水平状に滑らせることにより、それぞれの開閉巻取板から製品コイルのみを一挙に抜き出しできる多条均等堅巻製品コイルの一括搬出方法を提供するにある。
【0009】
そして、前記方法を具体的に実施するために、円周下部の直径に対し円周上部の直径を小径にした変形巻取板において、開閉ドラムの上端部が互いに前記変形巻取板円周上部の中央で接合し、かつ、前記開閉ドラムの直径が前記変形巻取板の円周下部の直径と同一である左右一対の開閉ドラムの両下端部を、前記変形巻取板の円周上部の直径に対し空隙を以って覆包して前記変形巻取板に支承するとともに、前記接合部の下部に設けた左右切欠き部間の内部にそれぞれの開閉カムを介在し、前記変形巻取板の円周下部には該直径と同一、かつ、中央部を切欠き部とした弧状バランサーを前記変形巻取板の表裏に固定して該部の円周幅(肉厚)が前記開閉ドラムの円周幅(肉厚)と同じくし、さらに、前記変形巻取板の上部中央にカム開閉穴及び下部中央に位置決め穴をそれぞれ穿ち、前記変形巻取板の表裏両面に該変形巻取板より小径の押さえ板を圧接し、かつ、該変形巻取板と押さえ板間にフェルト状オーリング及びゴム製オーリングを介して前記変形巻取板を挟持してなる開閉巻取板の多数を、ベッド上に設けた駆動軸と連動し、かつ、水平状に突出する巻取軸に設定し、前記開閉巻取板のそれぞれと対向するオートセパレーターをベッドに設定した垂直支柱のガイド軌に水平設定するとともに、ベッド内に水平設定した油圧シリンダーに固定したプッシャー板を、前記開閉巻取板に跨って駆動装置間に介在してなるリコイラー装置の下方に、台車に受台並びに位置決めバーを装備したコイルカーを遊動設定した多条均等堅巻製品コイルの一括搬出装置を提供するにある。
【0010】
上記の課題解決手段による作用は次のとおりである。
広幅材料コイルを小幅にスリットされた多条材料コイルは、ベルトラッパーにて自動的に案内され、オートセパレーターを用いてそれぞれの開閉巻取板に巻き付けられて多条製品コイルとなる。
【0011】
このようにして、巻き付けが完了すると開閉巻取板の上部外径を縮小させ、コイルカーの受台で前記多条製品コイルを僅かに持ち上げて多条製品コイルの外径に接したのち、油圧プッシャーの押力により開閉巻取板から多条製品コイルのみを同時後退進するコイルカーの受台に一括して一挙に搬出できる。
【0012】
すなわち、オートセパレーターの多条のセパレーターディスクをコイル巻はじめのそれぞれの開閉巻取板に対向するように定位置に設定し、オートラッパーにて多条材料コイルを開閉巻取板に巻き付ける。
【0013】
巻取軸の回転により、多条材料コイルはセパレーターディスクに幅方向を規制されながら整然と開閉巻取板に巻き取られる。
【0014】
所望するコイル厚を得て巻取完了後にコイル外径の後端をテープ止めし、オートセパレーターを垂直軌条に沿って上昇端まで移動する。
【0015】
次に、コイルカーをリコイラー装置の前進端まで進めて固定する。
コイルカーに装備された位置決めバーを、リコイラー本体をゆっくり回転させながら、開閉巻取板における変形巻取板の下部に穿った穴に差し込むと、該位置決めバーが差し込まれた開閉巻取板の回転を中止し、開閉巻取板が押さえ板に対してスリップしてカム開閉穴が確実に開閉巻取板の真上で停止する。
【0016】
この動作を順次連続して行えば、全条数の開閉巻取板の回転は瞬時に停止し、カム開閉穴が一直線状に揃う。
【0017】
このとき、リコイラー装置を停止させて前記カム開閉穴に開閉バーを差し込むことができる。
【0018】
そして、コイルカーの受台を少し持ち上げてコイル外径に接触したところで停止させ、開閉用バーを反時計(左)方向に90度回動させれば多数の左右一対の開閉ドラムの接合部が互いに一斉に縮小し、多条製品コイルの最内周面との間に間断的に連続する間隙が形成される。
【0019】
そして、前記間隙に滑り板を差し込み、油圧プッシャーとコイルカーを同時に作動することにより、それぞれの開閉巻取板から多条製品コイルのみが前記滑り板に沿って一挙にコイルカーの受台に滑り落ち、これらを一括して搬出できる。
【0020】
次に、開閉巻取板について説明する。
開閉巻取板の前記構成によると、左右一対の開閉ドームの両下端部が変形巻取板に支承され、しかも、該変形巻取板の直径に対し、空間を以って覆包しているから、前記一対の開閉ドラムは前記支承部を支点として、前記空間の範囲内において回動できる。
【0021】
したがって、変形巻取板の上部に穿ったカム開閉穴に開閉バーを挿通し、該開閉バーを時計(右)方向に廻すことにより、前記一対の開閉ドラムの下部に設けた開閉カムの爪が長手方向に水平になり、開閉ドラムの左右切欠き部を押圧し、開閉ドラムが支承部を支点として全開となり、開閉巻取板の外径が真円に保たれる。なお、一対の開閉ドラム上部に、変形巻取板を介して開閉遊動ピンを設けることにより、開閉ドラムの過動作防止に役立つ。
【0022】
巻取作業は、前記のように開閉巻取板の外径が真円の状態で行う。この開閉巻取板の内部、すなわち、変形巻取板を中心として、その両面から押さえ板によって挟持されている内部のオーリング等による高荷重・耐摩耗性に優れたスリップ機構と相まっているから、多条材料コイルの圧延による僅かな左右板厚偏差があっても堅く、かつ、均等に巻き取ることができる。
【0023】
つまり、コイルの巻き取りが進むに従って巻取軸に荷重が加わり巻取軸の回転は遅くなるが、材料コイルが薄い場合には押さえ板に対する開閉巻取板のスリップ回転を少なくして早く巻き取って弛みをなくし、材料コイルが厚い場合には押さえ板に対する開閉巻取板のスリップ回転を多くして遅く巻き取ることにより、堅く、かつ、均等に開閉巻取板に巻き取ることができる。
【0024】
したがって、多条材料コイルの僅かな板厚偏差があっても、開閉巻取板がその両側から押圧する押さえ板に対してスリップすることで対処できる。
【0025】
そして、巻き上がった製品コイルの外周端をテープ止めし、開閉巻取板をゆっくり回転させながら、変形巻取板下部中央の位置決め穴がリコイラー本体の真下に位置すると、コイルカーに装備された位置決めバーが前記位置決め穴に自動的に差し込まれ、一番手前の巻取板が停止し、次の開閉巻取板の位置決め穴が真下に位置すると該位置決め穴に位置決めバーが差し込まれる。
【0026】
この動作を製品コイルが巻かれている条数回繰り返すことにより、開閉巻取板の停止状態が一直線状に揃う。
【0027】
したがって、この状態により上部の開閉カムの開閉穴も一直線状に揃うから、該開閉穴に開閉バーを差し込み、その両端から反時計(左)方向に90度廻せば、開閉カムの長手方向の爪が前記開閉ドラムの左右切欠き部から外れて、開閉カムの長手方向の爪が垂直状態となる。
【0028】
このとき、同時に支承部に介在したスプリングの押力により、開閉巻取板の開閉ドラムの接合部が縮小し、製品コイルの上部最内周面と開閉ドラムの上部外径間に弧状の間隙が生ずる。
【0029】
つまり、左右一対の開閉ドラムの接合部は、左開閉ドラムの上部端が凹部を、また、右開閉ドラムの上部端は凸部をそれぞれ形成することにより、開閉カムの長手方向が水平状態にあるときの接合部は、凹部に凸部が僅かに嵌合して開閉巻取板の外径を真円に保ち、また、開閉カムの長手方向が垂直状態になると、左開閉ドラムと右開閉ドラムが互いに内側に縮小するので、凹部に凸部が中央部で奥深くまで嵌合し、開閉巻取板の外径は真円を保全できなくなり、多数の開閉巻取板の上部外径と多条製品コイルの最内周面との間に弧状の間隙が間断的に生ずることになる。
【0030】
この間隙に滑り板を差し込めば、多条製品コイルの上部内周面が滑り板に一直線状に接し、油圧プッシャーの押力に従って多条製品コイルのみが多条開閉巻取板から外れ、これが滑り板に沿って同時に後退進するコイルカーの受台に連続的、かつ、一挙に滑り落ち一括して搬出される。
【発明の効果】
【0031】
本発明の独特の構成によると、開閉巻取板の押さえ板によるスリップ作用と、オートセパレーターのセパレーターディスクがコイルの幅(端面)方向への整然と案内規制することが相まって、圧延による材料コイルの左右板厚偏差があっても堅く、かつ、均等にしかも端面が美麗に巻きあがり、頗る高品質の製品コイルを提供できる。
【0032】
また、開閉巻取板の開閉ドラムを閉じることにより生じた製品コイルの最内面と開閉巻取板の開閉ドラム上部径との間隙に滑り板を差し込むことにより、多条開閉巻取板から多条製品コイルのみが前記滑り板に沿って抵抗なく、製品コイルの最内周面が該滑り板に直接的に接しながら水平方向に円滑に滑り、多条開閉巻取板から多条製品コイルのみを一括して瞬時、かつ、連続して一挙に搬出ができる。
【0033】
そして、このとき多条開閉巻取板は、そっくりそのままリコイラー装置の巻取軸に設定した状態で残存するので、前記多条製品コイルの搬出と同時にリコイラー装置の稼働ができ、次の巻取作業が瞬時、かつ、連続的に行うことができる。
【0034】
要するに、巻取作業に係る労力及び時間を極力効率的に省き、頗る歩留まりが良くコスト安並びに生産性に富み、高品質の製品コイルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明に係る一実施例を示すリコイラー装置の側面図。
図2】本発明に係る一実施例を示すリコイラー装置の説明的側面図。
図3】本発明に係る一実施例を示す装置の概略を示す説明的正面図。
図4】本発明に係る一実施例を示すリコイラー装置の説明的側面図。
図5】本発明に係る一実施例を示すリコイラー装置の説明的正面図。
図6】本発明に係る一実施例を示すリコイラー本体とオートセパレーターを対設した部分的側面図。
図7】本発明に係る一実施例を示す開閉巻取板の真円状正面図。
図8】本発明に係る一実施例を示す開閉巻取板の非真円状正面図。
図9】本発明に係る一実施例を示す開閉巻取板の上半部断面図。
図10】本発明に係る一実施例を示す開閉巻取板におけるB−B断面矢視図。
図11】本発明に係る一実施例を示す開閉巻取板におけるC−C矢視図。
図12】本発明に係る一実施例を示すカム開閉バーの側面図。
図13】本発明に係る一実施例を示すカム開閉バーの平面図。
図14】本発明に係る一実施例を示す位置決めバーの平面図。
図15】本発明に係る一実施例を示す位置決めバーの側面図。
図16】本発明に係る一実施例を示す開閉巻取板におけるA−A断面矢視図。
図17】本発明に係る一実施例を示す滑り板の正面図。
図18】本発明に係る一実施例を示す滑り板の側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明を実施するための具体的な構成を図に基づいて説明する。
【0037】
すなわち、本発明はリコイラー装置1とコイルカー2及び外付のベルトラッパー3から成り、リコイラー装置1は、リコイラー本体4とオートセパレーター5及び油圧プッシャー6の機械的構成から成る。
【0038】
リコイラー本体4は、固定されたベッド7の上面に駆動装置8を設定するとともに、該駆動装置8と連動する巻取軸9を水平状に突出して設ける。
【0039】
前記巻取軸9には変形巻取板10を挿通するとともに、該変形巻取板10の両面に、変形巻取板10より小径の一対の押さえ板11、12を押圧挟持するように巻取軸9に固定する。
【0040】
また、前記変形巻取板10は上部のほぼ240度間においては、下部のほぼ120度間の直径より少しく小径に形成され、下部径による真円に対して切欠き小径部13を呈する。
【0041】
前記一対の押さえ板11、12の上内部と変形巻取板10間には、上からフェルト状オーリング14及びゴム状オーリング15を順次密接して内蔵するとともに、合金輪状基16を変形巻取板10の底部に埋設し、止めねじ17で前記変形巻取板10を一対の押さえ板11、12でサンドイッチ状に締め付けて挟持する。なお、符号18は対軸回転用オーリングであり、符号19、20は押さえ板11、12に対する調整カラー及び基準カラーを示し、該調整カラー19及び基準カラー20で押さえ板11、12を巻取軸9に調整し設定する。
【0042】
前記変形巻取板10は、上部のほぼ240度にわたって、下部のほぼ120度にわたる直径より少しく小径に形成されていて、この間において中心からそれぞれほぼ120度間に左右一対の開閉ドラム21、22を変形巻取板10に空隙を以って覆包してセンターピン23、24にて支承する。
【0043】
この空隙は、開閉ドラム21,22がセンターピン23,24を支点として回動する際に、変形巻取板10の切欠き小径部13に接することなく、円滑に動作する遊びとして必要である。
【0044】
開閉ドラム21、22は逆凹形弧状を呈することが望ましく、前記センターピン23、24にて支承されると、該開閉ドラム21、22は、変形巻取板10のほぼ240度間における円弧と下部ほぼ120度間における変形巻取板10の円弧が同一の直径となり、その外周は真円形を保全する。
【0045】
また、前記一対の開閉ドラム21、22の中央部には切欠き凹部25が設けられ、上面肉厚部の凸部26が前記切欠き凹部25に少しく嵌合することにより真円が保たれ、切欠き凹部25には一対の開閉ドラム21、22の各肉厚部と接する二枚の開閉カム27、28を変形巻取板10に挟んで内設するとともに、該開閉カム27、28及び変形巻取板10を貫通する開閉穴29に開閉バー30を差し込めるように形成される。
【0046】
そして、変形巻取板10の下部ほぼ120度間には、該変形巻取板10の両面に変形巻取板10の円弧と同一、かつ、前記一対の開閉ドラム21、22の幅と肉厚が同一の弧状バランサー31、32をボルト33やビス34によって取り付けて固定する。
【0047】
また、前記弧状バランサー31、32の中央下部には切欠き部35を設け、該切欠き部35に相応する変形巻取板10に穿った位置決め穴36に位置決めバー37を挿通することができる。なお、符号38、39は一対の開閉ドラム21、22と変形巻取板10間に介在する過動作防止ピンであり、符号40、41は一対の開閉ドラム21、22と弧状バランサー31、32間に介在する補助スプリングを示す。
【0048】
以上のように構成した開閉巻取板42は、全周が真円を形成し、かつ、上部240度間の開閉ドラム21、22の肉厚と下部120度間の変形巻取板10の両側に設けた弧状バランサー(31)、(32)の肉厚が一致し、巻取外周面43の幅(肉厚)も一定となる。
【0049】
実施にあたっては、上記開閉巻取板42を巻取軸9にそれぞれの調整カラー19と基準カラー20により設定する。なお、駆動装置8と連動する巻取軸9の端部は、ボルト44にて固定してリコイラー本体4を構成する。
【0050】
そして、オートセパレーター5は、リコイラー装置1のベッド7上に垂直支柱45を固定し、該垂直支柱45にはガイド軌46を設けるとともに、該ガイド軌46にセパレーター本体47を歯合して支承する。
【0051】
また、垂直支柱45の上部には、モーター48並びにスプロケット49をチェーン50にて駆動し、これが前記セパレーター本体47と連動し、該セパレーター本体47が垂直支柱45のガイド軌46に支承されながら該ガイド軌46に従って上下動することができる。
【0052】
セパレーター本体47には、水平状に突出した吊り板51から下端部に投受光用の光電管52、53を設けた足柱54、55を垂下固定するとともに、該足柱54、55間にセパレーター軸56を支承する。このセパレーター軸56には、対面する一対のセパレーターディスク57、58を一定間隔にて多数条に軸着設定してセパレーター本体47を構成する。
【0053】
そして、前記セパレーター軸56をリコイラー本体4における開閉巻取板42に対設することにより、セパレーター軸56における一対のセパレーターディスク57、58間と多数条に設けられた開閉巻取板42とが対設設定することができる。
【0054】
リコイラー装置1を構成する油圧プッシャー6は、ベッド7の下内部に油圧シリンダー59を設け、該油圧シリンダー59の先端部に固定した逆凹状形プッシャー板60を開閉巻取板42の外径と製品コイル61の最内径に従って跨ぐようにして、該開閉巻取板42とベッド7間に介在してリコイラー装置1を構成する。
【0055】
コイルカー2は一端(先部)を開放した台車62に断面V形の受台63を常置し、かつ、垂直枠64の上部に位置決めバー65を水平状に設定し、台車62下に車輪66を設けて軌条67に乗せたものである。なお、車輪66はモーター68の駆動により走行でき、垂直枠64には油圧シリンダー69が内設されて受台63を上下動できる。
【0056】
次に、上記構成の動作を説明する。
本発明を実施するには、オートセパレーター5を下降し、該オートセパレーター5のセパレーター軸56と開閉巻取板42の外周面に僅かな隙間を以って対向するように定位置に設定する。
【0057】
さらに、ベルトラッパー3を移動して開閉巻取板42を覆うように該ベルトラッパー3を外付け具備する。
【0058】
そして、巻取軸9はベッド7上に設置された巻取モーター70によってベルト71を介して連動され、ベルトラッパー3の回動は駆動モーター72により、ベルト73を介してそれぞれのスプロケット74、75、76をしたベルト77によって行われる。
【0059】
一方、小幅にスリットされた多条材料コイル78は、ガイドローラー79、80によって送り出されるとともに、オートセパレーター5の各セパレーターディスク57、58によって幅方向を規制されながら、ベルトラッパー3のベルト77の回動に沿って開閉巻取板42に確実、かつ、自動的に数回巻き取られたら、ベルトラッパー3を移動して開閉巻取板42から外す。
【0060】
巻取モーター70の連続する駆動により、開閉巻取板42の回転に伴ってオートセパレーター軸56が逆回転するが、多条製品コイル61は開閉巻取板42に順次巻き取られる。
【0061】
多条製品コイル61の巻き取りが進むに従って、巻取コイル径(巻取コイル厚)が大きくなると、該巻取コイル径が投受光の作動中の一対の光電管52、53の光を遮断する。
【0062】
このとき、オートセパレーター5のモーター48が駆動し、チェーン50を介してスプロケット49を廻すことにより、オートセパレーター5が垂直支柱45のガイド軌46に従って上昇し、所望する位置まで逃して停止する。
【0063】
上記のように巻取コイル径が大きくなり、セパレーターディスク57、58の長さを逸脱すると、該セパレーターディスク57、58が多条製品コイル61の幅方向を規制できなくなる。
【0064】
したがって、セパレーターディスク57、58の長さの範囲内において巻取コイル径が大きくなると、これが光電管52、53の受光を遮ることになる。
【0065】
この間も巻取作業は連続進行しているので、前記の繰り返しをタイマー等で操作すれば所望するコイル厚の多条製品コイル61をそれぞれの開閉巻取板42に巻き付けることができる。
【0066】
そして、このような一連の巻取作動においては、多条製品コイル61の幅方向は一対のセパレーターディスク57、58間に規制され、かつ、変形巻取板10(開閉巻取板42)を押さえ板11、12の狭圧力により、該押さえ板11、12に対してその内部はフェルト状オーリング14及びゴム製オーリング15によって高荷重・耐摩耗性に優れたトルク調整するスリップ機構となっている。
【0067】
しかも、開閉巻取板42は、上部240度部分の開閉ドラム21、22と下部120度部分の弧状バランサー31、32の重量がバランスしているので、巻取軸9と開閉巻取板42が偏心せず常に安定した回転を供する。
【0068】
したがって、圧延による多条材料コイル78の左右板厚偏差などがあっても、押さえ板11、12に対して変形巻取板10がスリップし、頗る堅く、かつ、前記セパレーターディスク57、58の規制作用等が相まって巻取側面(厚さ面)が美麗な多条製品コイル61を得ることができる。
【0069】
つまり、開閉巻取板42の開閉ドラム21、22は、開閉カム27、28の開閉穴29に開閉バー30を差し込み、これを時計方向の右に廻せば、開閉カム27、28の長手方向の作用で左右一対の開閉ドラム21、22がセンターピン23、24を支点として開いた状態に作動するとともに、過動作防止ピン38、39にて真円が保たれるように予め設定されている。
【0070】
したがって、開閉巻取板42は前記巻取開始から終了時までの間、その外径は真円状を保ち、かつ、その外周面も均一幅を保っているので、前述のとおり開閉巻取板42に巻き取られた多条製品コイル61の外径も均一幅の真円状を保つことになる。
【0071】
このようにして、多条の開閉巻取板42に巻き取られた多条製品コイル61の外周端をテープ止めし、オートセパレーター5を上昇端まで逃したのち、コイルカー2を前進端まで動かして停止設定する。
【0072】
次に、リコイラー本体4をゆっくり廻しながら、コイルカー2の垂直枠64に内設された位置決めバー37を、開閉巻取板42の変形巻取板10に設けた位置決め穴36に差し込むと、該変形巻取板10(開閉巻取板42)の回転が停止し、変形巻取板10と押さえ板11、12間でスリップしはじめ、開閉カム27、28は確実に開閉巻取板42の真上で該開閉カム27、28の長手方向で水平状に停止する。
【0073】
この動作を順次に行うことにより、全条数の変形巻取板10(開閉巻取板42)が瞬時に停止し、このとき開閉カム27、28の開閉穴29が水平方向一直線に揃うから、リコイラー本体4の稼働を停止させ、前記開閉穴29に開閉バー30を差し込み、かつ、開閉穴29の両端から反時計方向の左に廻せば、開閉カム27、28はその長手方向が垂直に90度回動し、左右一対の開閉ドラム21、22との接触が解除されると同時にそれぞれの補助スプリング40、41の押力により、一対の開閉ドラム21、22がセンターピン23、24を支点として互いに内側に回動し、上部支点の過動作防止ピン38、39に拘束されながら、一対の開閉ドラム21、22の凸部26が凹部25の奥深く上面が互いに嵌合する。
【0074】
つまり、かようなことは左右一対の開閉ドラム21、22が変形巻取板10の切欠き小径部13を奥深く覆包する状態になり、その範囲間において開閉巻取板42の外径はセンターピン23、24を支点として互いに内側に回動し縮小する。
【0075】
したがって、所定間の外径が縮小された開閉巻取板42の外周面と、依然として真円を保って巻き取られた多条製品コイル61の最内周面間には、弧状の間隙81が間断的に連続して形成される。
【0076】
この弧状の間隙81に滑り板82を貫通して差し込み、コイルカー2の油圧シリンダー69の操作で、前記V形受台63を僅かに持ち上げて多条製品コイル61の外径がV形受台63に接すると同時に、油圧プッシャー6の押力によりプッシャー板60が多条製品コイル61を連続的に水平状に押圧し、多条の開閉巻取板42から多条製品コイル61のみが前記滑り板81を滑り、同時起動しているコイルカー2の後退移動に従ってV形受台63上に一括して連続的、かつ、一挙に乗置搬出することができる。
【0077】
前記滑り板82は断面弧状の長手板であるが、その表面は開閉巻取板42の真円に沿った弧状面に、また、その裏面は開閉巻取板42が縮小して非真円に沿った弧状面に形成され、従って、その両端部に向かうに従って肉厚が薄くなるよう設計することが望ましい。
【0078】
そして、リコイラー本体4はそのままの状態でリコイラー装置1に残存しているから、多条製品コイル61の搬出と同時にリコイラー装置1の稼働に供することができる。
【符号の説明】
【0079】
1 リコイラー装置
2 コイルカー
3 ベルトラッパー
4 リコイラー本体
5 オートセパレーター
6 油圧プッシャー
7 ベッド
8 駆動装置
9 巻取軸
10 変形巻取板
11 押さえ板
12 押さえ板
13 切欠き小径部
14 フェルト状オーリング
15 ゴム状オーリング
16 合金輪状基
17 止めねじ
18 オーリング
19 調整カラー
20 基準カラー
21 開閉ドラム
22 開閉ドラム
23 センターピン
24 センターピン
25 切欠き凹部
26 凸部
27 開閉カム
28 開閉カム
29 開閉穴
30 開閉バー
31 弧状バランサー
32 弧状バランサー
33 ボルト
34 ビス
35 切欠き部
36 位置決め穴
37 位置決めバー
38 過動作防止ピン
39 過動作防止ピン
40 補助スプリング
41 補助スプリング
42 開閉巻取板
43 巻取外周面
44 ボルト
45 垂直支柱
46 ガイド軌
47 セパレーター本体
48 モーター
49 スプロケット
50 チェーン
51 吊り板
52 光電管
53 光電管
54 足柱
55 足柱
56 セパレーター軸
57 セパレーターディスク
58 セパレーターディスク
59 油圧シリンダー
60 プッシャー板
61 製品コイル
62 台車
63 受台
64 垂直枠
65 位置決めバー
66 車輪
67 軌条
68 モーター
69 油圧シリンダー
70 巻取モーター
71 ベルト
72 駆動モーター
73 ベルト
74 スプロケット
75 スプロケット
76 スプロケット
77 ベルト
78 多条材料コイル
79 ガイドローラー
80 ガイドローラー
81 間隙
82 滑り板
【要約】
【課題】 従来の多条コイル巻取装置においては、数十条の巻取円板から全ての製品コイルを搬出するには、多大な労力と時間を費やし、作業性・生産性に劣り、コスト面においても歩留まりが悪いという問題があった。これは、個々の巻取円板をその都度巻取軸から外したのち、さらに、該巻取円板からその都度製品コイルを抜き出して搬出し、再び全条数の巻取円板を巻取軸に設定しなければならないからである。
【解決手段】 それぞれの開閉巻取板に巻かれた製品コイルの最内周面と、前記開閉巻取板の上面径を縮小して形成した間隙に滑り板を介し、該開閉巻取板から製品コイルのみを一括して一挙に搬出すると同時に、リコイラー装置も瞬時に稼働できる構成にした。これにより、多条均等堅巻製品コイルの搬出が頗る容易になり、しかも、搬出と同時にリコイラー装置の稼働ができるので、生産性も高く、コスト面においても歩留まりが飛躍的に向上した製品コイルを提供できる。
【選択図】 図7
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18