(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6384768
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】変位復元対策構造を備えたプレキャストコンクリート製品
(51)【国際特許分類】
E02D 29/02 20060101AFI20180827BHJP
E02D 35/00 20060101ALI20180827BHJP
E02D 27/34 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
E02D29/02 305
E02D35/00
E02D27/34 Z
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-133138(P2017-133138)
(22)【出願日】2017年6月19日
(62)【分割の表示】特願2016-78450(P2016-78450)の分割
【原出願日】2016年3月22日
(65)【公開番号】特開2017-198070(P2017-198070A)
(43)【公開日】2017年11月2日
【審査請求日】2017年7月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】592072920
【氏名又は名称】平成テクノス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】有馬 重治
(72)【発明者】
【氏名】堀内 泰徳
【審査官】
神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−90668(JP,A)
【文献】
特開2001−295261(JP,A)
【文献】
特開2011−84885(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 29/02
E02D 27/34
E02D 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
土木工事で設置されるプレキャストコンクリート製の構造物において、その物体がL型擁壁であり、直立壁部の外側で根入れ高さ寸法以上の所定位置から底盤部の重心を通る横断線(擁壁体の幅方向に延びる線)上よりも直立壁部外側寄りの底面位置に貫通するようにして1または複数箇所に、グラウト注入管挿入用ガイドパイプが設けてあることを特徴とする変位復元対策構造を備えたプレキャストコンクリート製品。
【請求項2】
前記グラウト注入管挿入用ガイドパイプは、L型擁壁体の内面側に設けられる補強リブの内部に組み込まれる構造とされる請求項1に記載の変位復元対策構造を備えたプレキャストコンクリート製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直接基礎上に構築される構造物が地盤の影響を受けて変位する事態に至っても、複雑な復元作業を要することなく、グラウト材の注入工によって復元させることが可能な対策構造を構造物の製作時に簡単容易に組み込んで、不測の事態に対応することができる変位復元対策構造を備えたプレキャストコンクリート製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、土木工事において擁壁体などの構造物は、その構造物を支持するのに十分な支持力を有する基礎として地盤を締め固めるなどして強化し、その後に所定の厚みでいわゆる捨てコンクリートを打設して基礎固めを行い、その上に擁壁体などを構成する構造物を設置して背後を盛土などで埋めて完了するような工事が行われている。
【0003】
しかしながら、構築後に擁壁体などの構造物は、その載荷重や地形の経年変化で地盤の沈降(自沈)あるいは地震などによる地盤の液状化で基礎が沈下変位し、基礎とともに構造物が変位する事態となることがある。このような構造物の変位(変状)を修正して復元するためには、変位した前記構造物の下側にジャッキを配置して持上げる方式や沈下部分に向けてグラウトを注入することで地盤中に固結体を造成し、この固結体に反力を得て注入圧力を利用して基礎部とともに構造物を持上げて復元する方式など種々の変位復元工法が提案され、実用化されている。
【0004】
このような構造物の変位復元は、いずれにしても構造物が変位状態になってから改修する工事であり、この復元工事については、変位状態によるが復元に要する工費が非常に嵩むという問題がある。また、構造物の基礎下にグラウトを注入して復元する場合、コンクリート構造物の基礎部に注入管を設置するためには削孔作業を必要とする。そのために、準備作業としてコンクリート構造物を削孔するには多くの労力を要するほか、補強のための配筋(埋設鉄筋)を交わして削孔できれば良いが、内部が確認できないことから往々にして配筋(埋設鉄筋)を切断する事態になり、構造物の強度低下を招くのみならず削孔時に埋設鉄筋の切断によってドリルを損傷し、作業に影響を及ぼすという問題がある。もっとも、対象となるコンクリート構造物に直接削孔することなく、離れた位置から構造物の基礎下に向かって注入管挿入穴を削孔して注入管を設置する場合もあるが、このような方策では実質的な注入位置までの距離が長くなるので作業性が悪く、またグラウト注入による復元効果が十分に確保できないなどの問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明では、従来技術による問題点を解決するために、主として土木工事で用いられるプレキャストコンクリート製構造物に、予め製作時に設置後の変位に対応できるようにグラウト注入管挿入用ガイドパイプを、補強鉄筋を交わして適所に配置してコンクリート躯体と一体化しておき、復元操作が必要になった場合、削孔せずとも前記グラウト注入管挿入用ガイドパイプを通じて注入管を挿入することで、グラウトの注入操作ができ、構造物の設置位置基礎下で地盤中にてグラウトの注入反力を得て、前記構造物を安定状態に復元する作業が容易に行えるようにしたものを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明による変位復元対策構造を備えたプレキャストコンクリート製品は、
土木工事で設置されるプレキャストコンクリート製の構造物において、その物体がL型擁壁であり、直立壁部の外側で根入れ高さ寸法以上の所定位置から底盤部の重心を通る横断線(擁壁体の幅方向に延びる線)上よりも直立壁部外側寄りの底面位置に貫通するようにして1または複数箇所に、グラウト注入管挿入用ガイドパイプが設けてあることを特徴とするものである。
【0007】
前記発明において、前記グラウト注入管挿入用ガイドパイプは、L型擁壁体の内面側に設けられる補強リブの内部に組み込まれる構造とされるのがよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、L型擁壁を製作する際に、予めグラウト注入管挿入用ガイドパイプを所定の位置に配置してコンクリート製品を製作すれば、現地において設置施工を行った後に、不測の事態で地盤の沈下などで擁壁体に変状(沈降あるいは傾斜など)が生じても、成形された擁壁体に組み込まれているグラウト注入管挿入用ガイドパイプを通じてグラウト注入管を底盤部下の地盤に向けて挿入すれば、速やかにグラウトの注入を行うことができ、地中にグラウトによる固結体を造成して注入反力を得ることにより擁壁体を持上げるなどして復元操作が容易に実施できる。そして、擁壁体(コンクリート成形体)に対する削孔作業を要しないので迅速に目的が達成できるという効果を奏する。また、製作にあたって特別に複雑な手数を要することなく、かつ補強鉄筋などに障害を与えることがないので製品強度を阻害せずパイプの組み込みができ、大幅なコストアップもなく、背面側に補強リブを設ける場合その内部を利用することで合理的に形成できる。
【0009】
また、グラウト注入管挿入用ガイドパイプの配置を、擁壁体の直立壁外側の根上り高さ位置から底盤の重心を通る線上より直立壁外側寄りに組み込んでおくことにより、グラウト注入による復元操作に際し擁壁体を、安定姿勢を保って無理なく復元修正することができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】 本発明に係る変位復元対策構造を備えたL型擁壁体の一実施形態を表す断面図(a)と、ガイドパイプの要部を表す一部断面図(b)である。
【
図2】
図1で示すL型擁壁体の背面側斜視図である。
【
図3】 L型擁壁体の復元操作の態様を模式的に表す図で、(a)はL型擁壁体が変位した状態を表し、(b)は復元する態様を表している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の変位復元対策構造を備えたプレキャストコンクリート製品の具体例としてL型擁壁体の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0012】
この実施形態のコンクリート製L型擁壁体(以下、単に「擁壁体1」という)は、底盤部2と直立壁部3が一体形状にされたものである。この擁壁体1は、所定寸法で形成される直立壁部3の根入れ高さ寸法iよりやや上側位置から底盤部2の適所位置に通じるように傾斜した状態でグラウト注入管挿入用ガイドパイプ10(以下、単に「ガイドパイプ10」という)が組み込まれている。
【0013】
前記ガイドパイプ10は、斜めに配する必要上、直立壁部3と底盤部2との交差する内側に補強リブ4を形成する位置に、前記ガイドパイプ10を配置すれば擁壁体1内に保持され、埋戻される土砂による土圧などの影響を受けることもない。そして、前記ガイドパイプ10は、公知構造のグラウト注入ロッド(グラウト注入管)を挿入できる口径のパイプが使用され、耐食性を考慮してステンレス鋼製パイプ、あるいはポリエチレン・ポリプロピレン・PVC(塩化ビニル)などのプラスチック製パイプを用いる。
【0014】
前記擁壁体1を製作するに際しては、図示省略する成形枠内で、擁壁体1の底盤部2における重心を通る横断線X(擁壁体の幅方向)から、この底盤部2の外側に適宜変位した位置と直立壁部3の底盤下面から根入れ高さ寸法iよりやや上側の位置とを結ぶ傾斜線に合わせてガイドパイプ10を、補強鉄筋5に一部を番線6などで傾斜姿勢に保持させて、コンクリート躯体に埋設されるように配置し、型枠内に周知の手段でコンクリートを注型して擁壁体1を形成する。なお、前記ガイドパイプ10は、成形されるL型擁壁体1の直立壁部3と底盤部2との交差する内側隅部で、前述のように補強リブ4が形成される内部に収めて成形することにより露出することがなく、パイプの変形を防止する構造となり合理的である。
【0015】
そして、前記ガイドパイプ10の上端部11の内側には、ねじ部12が設けられ、このねじ部12に対して着脱可能にキャップ15を取付けておく。なお、ガイドパイプ10の上端部11は、前記直立壁部3の外面より突き出さないように設けることが好ましい。しかし、必要に応じてガイドパイプ10の上端部11が、直立壁部3の外面より外側に支障をきたさない範囲で突き出していてもよい。また、ガイドパイプ10は通常時上端部11にキャップ15を取付けて、ガイドパイプ内に異物の侵入を予防する。図中符号15aは着脱する際の工具掛け突起である。
【0016】
このように構成される擁壁体1は、取り扱う1ブロックに対してグラウト注入管挿入用ガイドパイプ10の配置を、擁壁体1の形状に応じて幅方向に1乃至複数箇所に設けるようにする。複数箇所にガイドパイプ10を設ける場合は、注入するグラウトの拡張範囲を予測して、そのグラウトの拡張半径の2倍を超える程度の間隔で配置するのが望ましい。
【0017】
このように構成されたL型擁壁体1は、擁壁体を据え付けて使用する盛土地盤Gにおいて沈下が発生し、擁壁が吹き出し状態になった場合(
図3(a)参照)、該当する擁壁体1のガイドパイプ10の上端部11から矢印で示すようにグラウト注入管20(
図3(b)参照)を地盤Gまで挿入する。次いで、別途設置したグラウト供給装置から分配弁装置(いずれも図示せず)を介して前記注入管に配管接続し所定時間間隔でグラウトの注入を行うことにより、
図3(b)で示されるように、擁壁体1の底盤部2の下地盤中にグラウトを徐々に注入することで固結体Dを造成し、前述のように、この固結体Dに注入時の反力をとって擁壁体1の傾きを押し戻し・持上げて復元させることができるのである。
【0018】
なお、ガイドパイプ10内にグラウト注入管20を挿入するに先立って、ガイドパイプ10上端から削孔用ドリルを挿入して、擁壁体1の設置位置における捨てコンクリート層Bを突き抜いて前記グラウト注入管20の先端部が地中に挿入容易なように予備作業を行えば、捨てコンクリート層B以下の箇所に無理なくグラウトの注入操作を行うことができる。
【0019】
また、ガイドパイプ10の配置が、擁壁体1の直立壁部3の外側の根上り高さ位置iから底盤部2の重心を通る線X上より直立壁部3の外側寄り位置に貫通して組み込んであるので、底盤部2に作用するグラウトの注入反力が直立壁部3寄りに大きく作用し、安定姿勢を保って無理なく復元修正することができる。もちろん、擁壁体1の傾動変位のみならず沈降状態からの持上げ修正も無理なく復元できる。また、ガイドパイプ10の上端部(注入管挿入口)が根入れ高さiより上側に位置するので、一般的に埋没せず、使用時に問題を生じることもない。
【0020】
このように、本実施形態の擁壁体1によれば、その生産工程で予めガイドパイプ10を躯体内に埋設してコンクリート成形されるので、設置現場においての取り扱いに際して特別な扱いを必要とせず、従来通りの施工が行え、設置後において不測の事態で変位が生じても復元操作に当たり、従来のようにグラウトの注入による復元操作を行うのに、グラウト注入管の挿入のための削孔によって擁壁体自体を傷めることはなく、前述のように、ガイドパイプ10を通じてグラウト注入管20を挿入してグラウトの注入による復元操作を容易にする。したがって、擁壁の復元作業に際して迅速に、かつ合理的に作業でき、コストダウンを図ることができる。併せてPC製品としての付加価値が向上するという効果を奏する。
【0021】
なお、上述のL型擁壁体にガイドパイプを組み込むに際し、補強リブを設けない場合、一部が露出することがあっても設置時に当該部分を養生することで使用可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0022】
1 L型擁壁体
2 底盤部
3 直立壁部
4 補強リブ
5 補強鉄筋
10 グラウト注入管挿入用ガイドパイプ
11 ガイドパイプの上端部
i 根入れ高さ寸法
G 地盤
B 捨てコンクリート層