【文献】
平賀康晴 外4名,新しい脛骨前方移動量測定装置の有用性,青森県スポーツ医学研究会誌,青森県スポーツ医学研究会,2013年,第22巻,第27−29頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0011】
本発明に係る実施形態の脛骨移動量測定器は、被測定者の膝蓋骨に対応する部位(膝蓋骨部)に配置される膝側部品と、被測定者の脛骨に対応する部位(脛骨部)に配置される脛側部品と、表示部と、を備える。脛側部品は、膝側部品と互いにスライド可能に接続される。表示部は、スライド時における膝側部品と脛側部品との相対変位量を示す構成とされている。
【0012】
本実施形態の脛骨移動量測定器は、被測定者の脛骨の前方、後方及び側方への動きに応じて脛骨の移動量を測定することができる。脛骨移動量測定器を膝蓋骨の前面に対応する部位(膝蓋骨の前面部)及び脛骨の前面に対応する部位(脛骨の前面部)にあてがって使用した場合は脛骨の前方及び後方への移動量を測定することが可能である。脛骨移動量測定器を膝蓋骨の側面に対応する部位(膝蓋骨の側面部)及び脛骨の側面に対応する部位(脛骨の側面部)にあてがって使用した場合は脛骨の側方への移動量を測定することが可能である。
このように、本実施形態の脛骨移動量測定器は、形態に変更を加えることなく脛骨の前方、後方及び側方への移動量を測定することができる。以下では、説明を簡略化するために、脛骨の前方及び後方の移動量を測定する場合を例に本実施形態に係る脛骨移動量測定器の構成について図面を参照しながら説明する。
【0013】
<構成例>
図1は、本実施形態に係る脛骨移動量測定器1を示す斜視図であり、
図1の矢印A、矢印B及び矢印Cは、それぞれ脛骨の前方、後方及び側方を示している。
図1に示すように、本実施形態の脛骨移動量測定器1は、膝側部品2と脛側部品3を備えている。
図1では、膝側部品2と脛側部品3は矢印A及び矢印Bの方向にスライド可能に接続されている状態を示している。
脛骨移動量測定器1の使用時において、膝側部品2及び脛側部品3は被測定者の脛骨の動きに応じてスライド可能となっている。このスライド時の膝側部品2と脛側部品3の相対変位量が被測定者の脛骨移動量を表す。更に、本実施形態の脛骨移動量測定器1は、スライド時の膝側部品2と脛側部品3の相対変位量を表示する表示部4を備えている。
【0014】
(膝側部品2、脛側部品3)
膝側部品2は、使用時に被測定者の膝蓋骨の前面部にあてがわれる部品であり、脛側部品3は、使用時に被測定者の脛骨の前面部にあてがわれる部品である。脛側部品3は、使用時に被測定者の脛骨近位部の前面に対応する部位(脛骨近位部の前面部)にあてがわれるのが好ましい。
【0015】
膝側部品2及び脛側部品3の形状は特に限定されないが、脛骨移動量をより正確に測定するために、膝側部品2及び脛側部品3のスライド方向が、膝側部品2の膝接触側面2a及び脛側部品3の脛接触面3aに対して略鉛直であることが好ましい。膝側部品2及び脛側部品3の形状として、例えば、立方体状、直方体状、三角柱状、円柱状、H型状、L字状等を挙げることができる。これらの形状のうち、使用時に膝蓋骨部又は脛骨部に安定してあてがうことができる上、小型化・軽量化が可能で持ち運びに好適であることから、L字状が好ましい。
図1に示すように、本実施形態の脛骨移動量測定器1において、膝側部品2は、膝蓋骨の前面部に接する膝側基部21と、脛側部品3に接する膝側接続部22がL字状をなしている。また、脛側部品3は、脛骨の前面部に接する脛側基部31と、膝側部品2に接する脛側接続部32がL字状をなしている。
【0016】
膝側部品2と脛側部品3の接続方法は、スライド可能に接続されていれば特に限定されない。例えば、膝側部品2と脛側部品3の間に配置した部品に膝側部品2と脛側部品3を摺動可能に組み合わせることで、膝側部品2と脛側部品3をスライド可能に接続することができる。また、膝側接続部22にスライド方向に沿って摺動溝23を設け、脛側接続部32にスライド方向に沿って摺動部33を設けて、摺動溝23と摺動部33の摺動を介して膝側部品2と脛側部品3をスライド可能に接続することができる。
図2は、本実施形態に係る脛骨移動量測定器を分解した状態を示す斜視図である。
図2に示すように、摺動溝23はスライド方向に沿って膝側接続部22の一端から他端まで延びていることが好ましい。また、摺動部33はスライド方向に沿って脛側接続部32の一端から他端まで延びていることが好ましい。
【0017】
図3は、
図2に示す膝側部品2及び脛側部品3の一部分を示す平面図である。膝側部品2の膝側接続部22に設けられた摺動溝23の形状は特に限定されないが、摺動溝23の開口部分231の幅D1が、摺動溝23の溝本体側の幅D2よりも狭い形状とすることが好ましい。また、摺動部33の形状も特に限定されないが、摺動部33が、凸部331を備えており、凸部331の幅D3が、開口部分231の幅D1よりも広く、かつ摺動溝23の溝本体側の幅D2よりも狭いことが好ましい。摺動溝23及び摺動部33をこのような形状とすることで、開口部分231から凸部331が抜脱することを防ぐことができる。
【0018】
また、脛骨移動量を正確に測定するために、膝側部品2及び脛側部品3が脛骨の僅かな移動にも応動して滑らかにスライドすることが好ましいことから、凸部331と摺動溝23の摩擦は少ないことが好ましい。そのため、凸部331の凸高さ寸法D4は、摺動溝23の溝本体側の深さ寸法D5よりも小さいことが好ましい。このような構成とすることで、凸部331と摺動溝23の摩擦を低減し、膝側部品2と脛側部品3のスライドをより滑らかにすることができる。
【0019】
また、膝側部品2と脛側部品3は、着脱可能に接続されることが好ましい。このように、膝側部品2と脛側部品3を着脱可能な構成とすることで、使用時以外は脛骨移動量測定器1を分解し、例えば使用する医師が着る白衣等のポケットに入れることができる程度に小型化できるため、持ち運びがより容易となる。
【0020】
膝側部品2と脛側部品3の着脱方法は特に限定されないが、例えば、膝側部品2と脛側部品3との間に配置した部品に穿設して形成した穴に膝側部品2又は脛側部品3を嵌合又は螺合等して接続する構成としてもよい。また、摺動溝23の一端又は両端を膝側接続部22の一端又は両端まで延ばして、摺動溝23の一端又は両端が着脱口232を有する構成を採用することができる。
図2に示す摺動溝23は、摺動溝23の両端が膝側接続部22の両端まで延びており、摺動溝23の両端には着脱口232,232が設けられている。摺動部33を、摺動溝23の上側方向(
図1中の矢印A参照)又は下側方向(
図1中の矢印B参照)の末端まで摺動し、着脱口232から取り外すことで膝側部品2と脛側部品3を分離することができる。また、摺動部33を、摺動溝23の上側又は下側の着脱口232から摺動溝23に挿入して取り付けることで膝側部品2と脛側部品3を接続することができる。
【0021】
また、
図1又は
図2に示すように、膝側基部21は膝接触側面2aの反対側の上面2bに溝部25を備えることができる。溝部25の形状は特に限定されないが、例えば、溝部25の一端が膝側基部21の末端まで延びて膝側基部21の末端で開口部251を備える構成とすることができる。この場合、溝部25の開口部分の幅、溝本体側の幅、溝本体側の深さ寸法は、それぞれ摺動溝23と同程度の幅又は寸法とすることが好ましい。このような構成とすることで、膝側部品2と脛側部品3とを分離した後に、摺動部33を開口部251から溝部25に挿入して膝側部品2と脛側部品3とを重ねて組み合わせ、脛骨移動量測定器1をよりコンパクトで持ち運びに好適な形態とすることができる。
この場合、膝側部品2及び脛側部品3の形状をL字状とすることが好ましい。膝側基部21と脛側接続部32を重ね、且つ、膝側接続部22と脛側基部31とを重ねた形態、即ち2つのL字状部材を重ねた形態とすることができるため、更にコンパクトで持ち運びに好適な形態とすることができる。
【0022】
膝側部品2及び脛側部品3の材質は特に限定されないが、脛骨移動量を正確に測定するために、膝側部品2及び脛側部品3が脛骨の僅かな移動にも応動して滑らかにスライドすることが好ましい。そのため、例えば、摺動部33と摺動溝23のように摺動する部分は摩擦係数が低い材料、例えば金属で形成することが好ましく、また、その他の部分は、持ち運びを容易にするために軽量な樹脂で形成することが好ましい。
【0023】
(表示部4)
表示部4は、脛骨移動量測定器1のスライド時における膝側部品2と脛側部品3との相対変位量を表示するものであり、この相対変移量が被測定者の脛骨移動量を表す。表示部4の構成は特に限定されないが、例えば、第一の表示部41及び/又は第二の表示部42を備える構成を採用することができる。この第一の表示部41及び/又は第二の表示部42は、拡大レンズを備えることもできる。この拡大レンズにより、膝側部品2と脛側部品3とのスライド時の相対変位量を視認しやすくすることができる。また、第一の表示部41及び/又は第二の表示部42は、歯車を備え、膝側部品2と脛側部品3とのスライド時における上記歯車の回動によって、膝側部品2と脛側部品3とのスライド時の相対変位量を示す構成とすることもできる。
【0024】
(第一の表示部41)
第一の表示部41は、
図1に示す矢印Cの方向から、即ち、脛骨移動量測定器1の使用時における脛骨の側方側から、膝側部品2と脛側部品3とのスライド時の相対変位量を視認できるように設けられている。第一の表示部41は、膝側部品2と脛側部品3とのスライド時の相対変位量を表示可能であれば表示方法は特に限定されず、例えば、目盛り等によってアナログ式に表示してもよく、表示パネル等によってデジタル式に表示してもよいが、部品の簡略化や耐久性向上、コストダウンの観点から、アナログ式が好ましい。
【0025】
図1に示す第一の表示部41は、目盛りによって膝側部品2と脛側部品3とのスライド時の相対変位量を表示する場合の一実施形態を示している。
図1に示すように、第一の表示部41は、目盛り部411と測定線412を備えることができる。目盛り部411は膝側接続部22にスライド方向に沿って設けられ、測定線412は脛側接続部32に設けられている。脛骨移動量測定器1の使用時には、測定線412の移動量を目盛り部411に照らし合わせて読み取り、膝側部品2と脛側部品3とのスライド時の相対変位量を測定することで、脛骨移動量を測定する。脛骨移動量はミリ単位で測定できることが望ましいことから、目盛り部411の最小単位は1mm程度とすることが好適である。
【0026】
目盛りを読み取り易くするために、目盛り部411に目盛り幅413を表示してもよい。膝側部品2と脛側部品3は、使用時に
図1の矢印A及び矢印Bの方向にスライドするため、目盛り幅413は、
図1のように、目盛り部411の中央付近をゼロとして矢印A及び矢印Bのそれぞれの方向に向かって数値が大きくなるように表示することが好ましい。このようにすることで、膝側部品2と脛側部品3が矢印A及び矢印Bのどちらの方向にスライドしても、目盛りを読み取り易くなる。
なお、
図1では、目盛り部411は膝側部品2に、測定線412は脛側部品3に設けられているが、逆に、目盛り部411が脛側部品3に、測定線412が膝側部品2に設けられていてもよい。
【0027】
また、図示しないが、第一の表示部41は、目盛り部411、測定線412及び目盛り幅413のうち少なくとも一つを拡大表示する拡大レンズを備えていてもよい。これにより、測定時の目盛りの読み取りを容易に行うことができる。第一の表示部41が拡大レンズを備える場合、その拡大レンズは、後述する第二の表示部42が備える拡大レンズと同様のものを用いることができる。
【0028】
また、第一の表示部41は、図では示さないが、膝側部品2と脛側部品3とのスライド時に回動する歯車を備え、前記歯車の回動によって膝側部品2と脛側部品3とのスライド時の相対変位量を示す構成としてもよい。
【0029】
(第二の表示部42)
第二の表示部42は、
図1に示す矢印Aの方向から、即ち、脛骨移動量測定器1の使用時における脛骨の前方側から、膝側部品2と脛側部品3とのスライド時の相対変移量を視認できるように設けられている。第二の表示部42は、膝側部品2と脛側部品3とのスライド時の相対変移量を表示可能であれば表示方法は特に限定されず、例えば目盛り等によってアナログ式に表示してもよく、表示パネル等によってデジタル式に表示してもよいが、部品の簡略化や耐久性向上、コストダウンの観点から、アナログ式が好ましい。
【0030】
図1に示す第二の表示部42は、目盛りによって膝側部品2と脛側部品3とのスライド時の相対変移量を表示する場合の一実施形態を示している。第二の表示部42は、目盛り線と目盛り値が付された表示部材421と、表示部材421を回動させるための歯車422と、歯車422に歯合するラック423と、ラック423を収容するラック溝424を備えている。表示部材421と歯車422は脛側接続部32に設けられている。ラック423は膝側接続部22の脛側接続部32との接続面に設けられ、スライド方向に沿って膝側接続部22の一端から他端まで延びている。ラック溝424は脛側接続部32の膝側接続部22との接続面に設けられ、スライド方向に沿って脛側接続部32の一端から他端まで延びている。また、ラック溝424は膝側部品2と脛側部品3の接続時にラック423と対応する位置に設けられている。更に、ラック溝424は後述する切欠部を備えており、膝側部品2と脛側部品3の接続時にラック423はラック溝424に収容され、上記切欠部で歯車422とラック423とが歯合する。
【0031】
脛骨移動量測定器1の使用時において、摺動溝23と摺動部33が摺動すると、ラック423に歯合する歯車422が回動し、歯車422の回動に応じて表示部材421も回動して目盛り線が動く。この目盛り線の移動量によって膝側部品2と脛側部品3とのスライド時の相対変移量を測定することができる。
【0032】
第二の表示部42は、
図1に示す矢印Aの方向から、即ち、脛骨移動量測定器1の使用時における脛骨の前方側から、膝側部品2と脛側部品3とのスライド時の相対変位量を表示可能であれば、上述の構成に限定されない。例えば、表示部材421と、歯車422と、ラック溝424が膝側接続部22に設けられ、ラック423が脛側接続部32の膝側接続部22との接続面に設けられていてもよい。
【0033】
表示部材421の形状は特に限定されないが、筒状や円柱状等の外側面が周状の形状が好ましい。表示部材421を外側面が周状の形状とした場合、外側面の周方向に沿って目盛り線と、目盛り値を付すことが好ましい。
【0034】
図4Aは、
図2に示す第二の表示部42を示す平面図である。
図4Aに示すように、表示部材421には、目盛り線4211と目盛り値4212が付されている。また、
図4Bは、
図2に示す第二の表示部42を示す背面図である。
図4Bに示すように、第二の表示部42は、ラック溝424の底面部分で歯車422の収容部分に対応する位置に切欠部425を備えている。膝側部品2と脛側部品3の接続時には、切欠部425で歯車422とラック423とが歯合する。
なお、目盛り線4211は、上記(第一の表示部41)で説明したように、最小単位を1mm程度とすることが好適である。
【0035】
第二の表示部42の構成は、膝側部品2と脛側部品3の相対変移量を表示可能な構成であれば上記に限定されるものではなく、例えば磁力を介して表示部材421を回動可能な構造等を採用してもよい。
【0036】
更に、第二の表示部42は、基準値調節部426と、基準線427を備えることができる。例えば基準値調節部426は、その操作により表示部材421を回動することが可能な構成とされ、測定開始前に、基準値調節部426を操作して表示部材421を回動させ、目盛り値4212のゼロと基準線427とを合わせておくことができる。測定時には、基準線427を指標として表示部材421の目盛りを読み取ることで、目盛りの読み取りを容易に行うことができる。
【0037】
また、第二の表示部42は、表示部材421の目盛り線4211及び目盛り値4212を拡大表示する拡大レンズ428を備えることが好ましい。これにより、簡略な構成を採用しつつ、視認性を向上させて測定時の目盛りの読み取りを容易に行うことができる。
【0038】
拡大レンズ428の形状は、その効果が損なわれない範囲で適宜選択することができる。例えば、
図1に示すように、表示部材421が視認される側、即ち、表示部材421の前面側を覆うように拡大レンズ428を設けてもよい。表示部材421を、筒状や円柱状等の外側面が周状である形状とした場合、拡大レンズ428を、表示部材421の外側面に沿うような曲面からなるレンズとしてもよい。この場合、拡大レンズ428は、一方の面が凸で他方の面が凹であり、レンズ中央部がレンズ周辺部より厚い、凸メニスカスレンズとすることができる。
また、拡大レンズ428の形状として、表示部材421の外側面全体を覆う形状を採用してもよい。例えば、表示部材421を外側面が周状である形状とした場合、拡大レンズ428を円筒状とし、拡大レンズ428の内径を表示部材421の外径よりも大きくして、拡大レンズ428の内側に表示部材421を配置する構成としてもよい。
【0039】
(膝当てパッド5)
脛骨移動量測定器1は、膝側部品2を膝蓋骨の前面部に安定してあてがうため、
図1に示すように膝側部品2に膝当てパッド5を備えていてもよい。膝当てパッド5は、被測定者の膝蓋骨の大きさや脚の長さ等に合わせて測定に適した位置に配置するために、膝側部品2に対する位置を調整可能に設けられることが好ましい。また、膝当てパッド5は、膝側部品2に着脱可能に接続されていることが好ましい。このように着脱可能な構成とすることで、使用時以外は膝当てパッド5を膝側部品2から取り外し、脛骨移動量測定器1をより小型化して持ち運びに好適な形態とすることができる。
【0040】
膝当てパッド5の構成は特に限定されず、例えば、膝側部品2と一体成形してもよく、膝側部品2と別に成形した後に組み合わせてもよいが、上記で説明したように、位置調節や着脱が可能であることが好ましいことから、膝側部品2と別に成形した後に組み合わせる構成が好ましい。膝側部品2と膝当てパッド5の組み合わせ方法は特に限定されないが、例えば、膝当てパッド5に嵌合部品や螺合部品等を設け、膝側基部21に穿設して形成した穴に嵌合又は螺合等により組み合わせる構成としてもよい。
【0041】
図1の膝当てパッド5は取付棒51を備えており、取付棒51と、膝接触側面2aに設けられた取付穴24を嵌合することで着脱可能に組み合わせられている。この場合、膝当てパッド5の位置を調整できるよう、取付穴24は、2以上設けられることが好ましい。膝当てパッド5の構成は上記に限定されるものではなく、例えば、膝当てパッド5に摺動部品を設け、膝側基部21に前記摺動部品が摺動する溝を設けることで膝当てパッド5が摺動する構成としてもよく、また、膝当てパッド5と膝側基部21に磁石を付けたり、膝側基部21に磁石を付けて膝当てパッド5は金属製とする等、磁力で接合する構成としてもよい。
【0042】
膝当てパッド5の材質は特に制限されないが、膝当てパッド5は重い方がその自重によって被測定者の膝蓋骨の前面部に安定して密着するため、膝当てパッド5に重みをもたせるために金属製であることが好ましい。また、膝当てパッド5を被測定者の膝蓋骨の前面部に安定して密着させるため、膝当てパッド5の膝接触面5aに、粘着性を有する素材又は皮膚に対する摩擦力が大きい素材が備えられていてもよい。
【0043】
(固定部材6)
図5は、
図1に示す脛骨移動量測定器1の固定部材装着例を示す斜視図である。脛骨移動量測定時に脛骨移動量測定器1を被測定者の下肢に固定するため、脛骨移動量測定器1は膝側部品2及び/又は脛側部品3に固定部材6を備えていてもよい。固定部材6は特に限定されず、例えば、ベルトや医療用テープ、包帯等の帯状の物品を挙げることができるが、持ち運びが容易で、固定がしやすく、再利用可能であることからベルトが好ましく、伸縮性を有し面ファスナーを備えるベルトがより好ましい。
固定部材6による脛骨移動量測定器1の固定方法は特に限定されないが、脛骨移動量測定器1と被測定者の下肢とを固定部材6で巻回して固定することが好ましい。
【0044】
(装着部7)
脛骨移動量測定器1は、
図1に示すように膝側部品2及び/又は脛側部品3に固定部材6を装着する装着部7を備えていてもよい。装着部7に装着された状態の固定部材6を用いて脛骨移動量測定器1と被測定者の下肢を固定することにより、脛骨移動量測定時に固定部材6と膝側部品2及び/又は脛側部品3とがずれることを防ぎ、固定状態を安定して維持することができる。
図1の脛骨移動量測定器1は、膝側基部21に装着部7を備えており、膝接触側面2aの反対側の上面2bに装着部7が設けられている。
脛骨移動量測定時において、膝側部品2が膝蓋骨の前面部からずれないように、装着部7に装着した固定部材6を、
図5に示すように被測定者の膝関節に巻回して固定することが好ましい。
【0045】
また、固定部材6の位置を膝側部品2及び/又は脛側部品3の固定に適した位置に調整するため、装着部7は、取り付け位置を調整可能に設けられることが好ましい。また、装着部7は、着脱可能に接続されていてもよく、このように装着部7を着脱可能とすることで、装着部7を膝側部品2又は脛側部品3から取り外してから、装着部7に固定部材6を装着することができるため、脛骨移動量測定器1全体を保持したまま固定部材6を装着する必要がなく、固定部材6の装着をより容易に行うことができる。
【0046】
装着部7への固定部材6の装着方法は特に限定されず、例えば、
図1又は
図2に示すように装着孔71を設けて、装着孔71に固定部材6を通してもよい。装着部7の構成は特に限定されず、例えば、膝側部品2又は脛側部品3と一体成形してもよく、膝側部品2又は脛側部品3と別に成形した後に組み合わせてもよいが、上記で説明したように、位置調節や着脱が可能であることが好ましいことから、膝側部品2又は脛側部品3と別に成形した後に組み合わせる構成が好ましい。
【0047】
膝側部品2と装着部7の構成としては、例えば、
図1又は
図2に示すように、膝接触側面2aの反対側の上面2bに設けた溝部25と、装着部7に設けた突起部72とが摺動可能に組み合わせられる構成を採用することができる。溝部25に対して突起部72が摺動することで、装着部7の位置を適宜調節することができる。
また、溝部25の一端が、膝側基部21の末端まで延びて膝側基部21の末端で開口した開口部251を備えてもよい。このような構成とすることで、装着部7を開口部251側に摺動させて溝部25から取り外すことができると共に、突起部72を開口部251から挿入して取り付けることができる。
【0048】
また、上記(膝側部品2、脛側部品3)で説明したように、溝部25の開口部分の幅、溝本体側の幅、溝本体側の深さ寸法は、それぞれ摺動溝23と同程度の幅又は寸法とすることが好ましい。このような構成により、例えば、固定部材6を装着した装着部7を溝部25から取り外し、更に膝側部品2と脛側部品3とを分離した後に、摺動部33を開口部251から溝部25に挿入して膝側部品2と脛側部品3とを重ねて組み合わせることができる。このように膝側部品2と脛側部品3とを重ねてコンパクトな形状とすることで、脛骨移動量測定器1をより持ち運びに好適な形態とすることができる。
【0049】
装着部7の構成は上記に限定されるものではなく、例えば、装着部7に嵌合部品や螺合部品等を設け、膝側基部21に穿設して形成した穴に嵌合又は螺合等することにより接続する構成としてもよい。また、装着部7と膝側基部21に磁石を付けたり、膝側基部21に磁石を付けて装着部7は金属製とする等、磁力で接合する構成としてもよい。なお、脛側部品3と装着部7を組み合わせる場合の構成も特に限定されるものではないが、例えば上記で説明した膝側部品2と装着部7の構成と同様の構成を採用することができる。
【0050】
<動作例>
次に、本実施形態に係る脛骨移動量測定器1の動作について説明する。
図6は、
図1に示す脛骨移動量測定器1の使用例を示す斜視図である。本実施形態の脛骨移動量測定器1を使用して脛骨の前方への移動量を測定する際には、まず、仰向けに寝た被測定者8の膝を20°前後屈曲させて、膝当てパッド5を膝蓋骨の前面部81にあてがい、脛側基部31を脛骨近位部の前面部82にあてがう。測定者9は、被測定者8の大腿骨の部分83を外側から手で把持して押さえ、被測定者8の脹脛と脛骨近位部の前面部82にあてがった脛側基部31を脚の内側から手で掴んで、脛骨を前方へ引き出す。このように脛骨を前方へ引き出すと、脛骨の移動に応動して膝側部品2及び脛側部品3がスライドするため、スライド時の膝側部品2と脛側部品3の相対変位量を表示部4で確認することで、脛骨の前方移動量を測定することができる。脛骨の後方への移動量を測定する場合には、上記方法で脛骨を前方へ引き出す代わりに脛骨を後方へ押すことによって測定することができる。
【0051】
膝前十字靭帯損傷の診断に脛骨移動量測定器1を用いる場合、上述した脛骨の前方移動量を測定する動作を被測定者の左右の脚で行い、健常な脚と受傷した脚の脛骨の前方移動量を比較することによって膝前十字靭帯の損傷を診断することができる。被測定者によって差はあるが、例えば、健常な脚と受傷した脚の脛骨の前方移動量の差が小さい場合、具体的にはその差が1cm未満の場合、膝前十字靭帯の損傷の程度は小さい又は膝前十字靭帯は損傷を受けていないと診断することができる。健常な脚と受傷した脚の脛骨の前方移動量の差が大きい場合、具体的には差が1cm以上の場合、膝前十字靭帯の損傷の程度は大きいと診断することができる。
【0052】
図では示さないが、脛骨の内側方への移動量を測定する場合は、膝当てパッド5を膝関節の内側部分にあてがい、脛側基部31を脛骨の内側面部にあてがって、脛骨を内側方へ移動させることで測定する。脛骨の外側方への移動量を測定する場合は、膝当てパッド5を膝関節の外側部分にあてがい、脛側基部31を脛骨の外側面部にあてがって、脛骨を外側方へ移動させることで測定する。
【0053】
以上詳述した本実施形態の脛骨移動量測定器1によれば、従来の脛骨移動量測定装置のように装置を脚に固定する手間が掛からないため、簡便に脛骨移動量を測定することができる。また、従来の測定装置と比較して、小型で軽量であるため、容易に持ち運ぶことができる。本実施形態の脛骨移動量測定器1は、膝前十字靭帯損傷の診断に好適に用いることができる。