【文献】
J. Photochem. Photobiol. B: Biol,2000年,55(1),27-36
【文献】
J. Photochem. Photobiol. B: Biol,2000年,54(2-3),136-144
【文献】
J. Photochem. Photobiol. B: Biol,2002年,68(1),15-22
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0018】
本発明のがん細胞阻害薬、特に、特にがん細胞の中でも、がん幹細胞に選択的に取り込まれることにより阻害するがん幹細胞阻害薬、がん幹細胞検出用プローブを例示するものであり、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0019】
がん細胞阻害薬
がん細胞阻害薬とは、がん細胞の増殖、分裂、転移、機能を抑制したり、がん細胞を殺傷する機能を有する組成物をいう。また、本発明の化合物は、その発光を測定することにより、がん細胞の検出及び観察が可能である。
本発明の化合物は、一般式(1)で表される化合物を含むことを特徴とする。
【0020】
一般式(1)で表される化合物について
【化4】
一般式(1)中、R
1、R
2は、各々独立して、アルキル基、カルボキシアルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アルキルカルボニルオキシアルキル基を表し、R
3〜R
10は、各々独立して、水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アルコキシスルホニル基、N−アルキルスルファモイル基、アルキルオキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基を表し、R
3とR
4、R
5とR
6、R
7とR
8及びR
9とR
10はそれぞれ独立に環化してベンゼン環を形成しても良く、
X
1−は陰イオン性基を表し、
Y
1は
*1,
*2,
*5を含む基で、Y
1は以下のいずれかを表し、
*1−S−
*5−
*2(化合物1から12,29,39,42に例示される)
*1−O−
*5−
*2(化合物13から19,23,28,33,38,41,44,56,57に例示される)
*1−C(−R
11,−R
12)−
*5−
*2(化合物20から22,24から27,30から32,37,40,43,49から55,58に例示される)
*1−
*5−CH=CH−
*2(化合物34から36,45から48に例示される)
ただし、R
11、R
12は各々独立して、アルキル基を表し、R
11とR
12は互いに結合して、環を形成してもよく、
Y
2は
*3,
*4,
*6を含む基で、Y
2は以下のいずれかを表し、
*4=
*6−S−
*3(化合物1から12,29,34,39,42に例示される)
*4=
*6−O−
*3(化合物13から19,23,28,33,35,38,41,44,56,57に例示される)
*4=
*6−C(−R
51,−R
52)−
*3(化合物20から22,24から27,30から32,36,37,40,43,49から55,58に例示される)
*4=
*6−CH=CH−
*3(化合物45,47,48に例示される)
*4=CH−CH=
*6−
*3(化合物46に例示される)
ただし、R
51、R
52は各々独立して、アルキル基を表し、R
51とR
52は互いに結合して、環を形成してもよく、
Aから
*5、
*6で示される炭素原子までを含む基は一般式(2)または、(3)で示され、
【化5】
【化6】
一般式(2)中、R
13〜R
15は、各々独立して、水素原子、アルキル基、アリール基を表し、nは0〜2の数字を表し、
一般式(3)中、R
16は、水素原子、フェニル基、チオール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子を表し、
R
17、
18は、各々独立して、水素原子、アルキル基、アルキルオキシカルボニル基を表す。
【0021】
前記一般式(1)中のR
1、R
2におけるアルキル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
【0022】
前記一般式(1)中のR
1、R
2におけるカルボキシアルキル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、カルボキシプロピル基等が挙げられる。
【0023】
前記一般式(1)中のR
1、R
2におけるアルコキシカルボニルアルキル基としては、特に限定されるものではないが、メトキシカルボニルメチル基、メトキシカルボニルエチル基、エトキシカルボニルエチル基、ブトキシカルボニルエチル基、メトキシカルボニルプロピル基などが挙げられ、
アルキルカルボニルオキシアルキル基としては、特に限定されるものではないが、メチルカルボニルオキシメチル基、エチルカルボニルオキシメチル基、エチルカルボニルオキシエチル基、エチルカルボニルオキシブチル基、プロピルカルボニルオキシメチル基等が挙げられる。
【0024】
前記一般式(1)中のR
3〜R
10におけるアルキル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
【0025】
前記一般式(1)中のR
3〜R
10におけるアリール基としては、特に限定されるものではないが、例えば、フェニル基、2−ブロモフェニル基、3−ブロモフェニル基、4−ブロモフェニル基、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、2−チオメチルフェニル基、3−チオメチルフェニル基、4−チオメチルフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0026】
前記一般式(1)中のR
3〜R
10におけるアルコキシ基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
【0027】
前記一般式(1)中のR
3〜R
10におけるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子等が挙げられる。
【0028】
前記一般式(1)中のR
3〜R
10におけるアルコキシスルホニル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メトキシスルホニル基、エトキシスルホニル基等が挙げられる。
【0029】
前記一般式(1)中のR
3〜R
10におけるN−アルキルスルファモイル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、N−メチルスルファモイル基、N−エチルスルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N,N−ジエチルスルファモイル基等が挙げられる。
【0030】
前記一般式(1)中のR
3〜R
10におけるアルキルオキシカルボニル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、プロピルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0031】
前記一般式(1)中のR
3〜R
10におけるN−アルキルカルバモイル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、N−メチルカルバモイル基、N−エチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジエチルカルバモイル基挙げられる。
【0032】
前記一般式(1)中のR
3〜R
10として好ましくは、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、フェニル基またはアルコキシ基の場合であり、より好ましくは水素原子、またはフェニル基の場合である。
【0033】
前記一般式(1)中のX
1−における陰イオン性基としては、特に限定されるものではないが、例えば、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、メタンスルホン酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン等が挙げられる。
【0034】
前記一般式(1)中のY
1、Y
2のR
11、R
12、R
51、R
52、におけるアルキル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。R
11とR
12は同じであることが好ましいが、異なっていてもよい。また、R
51とR
52は同じであることが好ましいが、異なっていてもよい。
【0035】
前記一般式(1)中のR
11とR
12またはR
51とR
52、は互いに結合して脂肪族環を形成してもよく、その例として、シクロヘキサン環、シクロペンタン環を挙げることができる。
【0036】
前記一般式(2)中のR
13〜R
15におけるアルキル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
【0037】
前記一般式(2)中のR
13〜R
15におけるアリール基としては、特に限定されるものではないが、例えば、フェニル基、2−ブロモフェニル基、3−ブロモフェニル基、4−ブロモフェニル基、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、2−チオメチルフェニル基、3−チオメチルフェニル基、4−チオメチルフェニル基等が挙げられる。
【0038】
前記一般式(3)中のR
16におけるチオール基としては、例えば、メタンチオール基、ブタンチオール基、ベンゼンチオール基等が挙げられ、また、R
16のチオール基はフェニルチオ基であってもよい。
【0039】
前記一般式(3)中のR
16におけるアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
【0040】
前記一般式(3)中のR
16におけるアリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、置換基を有していても良いフェノキシ基が挙げられる。
【0041】
前記一般式(3)中のR
16におけるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子等が挙げられる。
【0042】
前記一般式(3)中のR
17、R
18におけるアルキル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
【0043】
前記一般式(3)中のR
17、R
18におけるアルキルオキシカルボニル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、プロピルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0044】
一般式(4)で表される化合物について
本発明の化合物の好ましい一例として、一般式(4)で表わされる化合物をあげることができる。
【化7】
一般式(4)中、R
19、R
20は、各々独立して、アルキル基、カルボキシアルキル基、アルキルカルボニルオキシアルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基を表し、R
21〜R
28は、各々独立して、水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アルコキシスルホニル基、N−アルキルスルファモイル基、アルキルオキシカルボニル基、N−アルキルカルバモイル基を表す。R
21とR
22、R
23とR
24、R
25とR
26及びR
27とR
28はそれぞれ独立に環化してベンゼン環を形成しても良く、
R
29〜R
31は、各々独立して、水素原子、アルキル基、アリール基を表し、mは0〜2の数字を表す。
X
2−は陰イオン性基を表し、
Y
3、Y
4は酸素原子、硫黄原子、アルキレン基を表し、アルキレン基は置換基を有してよく、その場合の置換基はアルキル基であり、置換基が複数ある場合には、置換基どうしが結合して、脂肪族環を形成してもよい。
【0045】
前記一般式(4)中のR
19、R
20におけるアルキル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基が挙げられる。
【0046】
前記一般式(4)中のR
19、R
20におけるカルボキシアルキル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、カルボキシプロピル等が挙げられる。
【0047】
前記一般式(4)中のR
19、R
20におけるアルコキシカルボニルアルキル基としては、特に限定されるものではないが、メトキシカルボニルメチル基、メトキシカルボニルエチル基、エトキシカルボニルエチル基、ブトキシカルボニルエチル基、メトキシカルボニルプロピル基などが挙げられる。
【0048】
アルキルカルボニルオキシアルキル基としては、特に限定されるものではないが、メチルカルボニルオキシメチル基、エチルカルボニルオキシメチル基、エチルカルボニルオキシエチル基、エチルカルボニルオキシブチル基、プロピルカルボニルオキシメチル基等が挙げられる。
【0049】
前記一般式(4)中のR
21〜R
28におけるアルキル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
【0050】
前記一般式(4)中のR
21〜R
28におけるアリール基としては、特に限定されるものではないが、例えば、フェニル基、2−ブロモフェニル基、3−ブロモフェニル基、4−ブロモフェニル基、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、2−チオメチルフェニル基、3−チオメチルフェニル基、4−チオメチルフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0051】
前記一般式(4)中のR
21〜R
28におけるアルコキシ基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
【0052】
前記一般式(4)中のR
21〜R
28におけるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子等が挙げられる。
【0053】
前記一般式(4)中のR
21〜R
28におけるアルコキシスルホニル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メトキシスルホニル基、エトキシスルホニル基等が挙げられる。
【0054】
前記一般式(4)中のR
21〜R
28におけるN−アルキルスルファモイル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、N−メチルスルファモイル基、N−エチルスルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N,N−ジエチルスルファモイル基等が挙げられる。
【0055】
前記一般式(4)中のR
21〜R
28におけるアルキルオキシカルボニル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、プロピルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0056】
前記一般式(4)中のR
21〜R
28におけるN−アルキルカルバモイル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、N−メチルカルバモイル基、N−エチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジエチルカルバモイル基等が挙げられる。
【0057】
前記一般式(4)中のR
21〜R
28として好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、フェニル基またはアルコキシ基の場合であり、より好ましくは水素原子、またはフェニル基の場合である。
【0058】
前記一般式(4)中のR
29〜R
31におけるアルキル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
【0059】
前記一般式(4)中のR
29〜R
31におけるアリール基としては、特に限定されるものではないが、例えば、フェニル基、2−ブロモフェニル基、3−ブロモフェニル基、4−ブロモフェニル基、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、2−チオメチルフェニル基、3−チオメチルフェニル基、4−チオメチルフェニル基等が挙げられる。
【0060】
前記一般式(4)中のX
2−における陰イオン性基としては、特に限定されるものではないが、例えば、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、メタンスルホン酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン等が挙げられる。
前記一般式(4)中のY
3、Y
4は、それぞれ独立して、酸素原子、硫黄原子、アルキレン基を表し、アルキレン基は置換基を有してよく、その場合の置換基はアルキル基であり、置換基が複数ある場合には、置換基同士が結合して、脂肪族環を形成してもよい。
【0061】
ここでのアルキレン基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、2−エチルヘキシレン基等が挙げられる。形成される脂肪族環としては、特に限定されるものではないが、シクロヘキサン環、シクロペンタン環を挙げることができる。
【0062】
本発明における一般式(4)で表わされる化合物は、多くが市販されており、入手可能である。また、公知の方法(例えば、非特許文献3)と同様の方法で合成することができる。
【0064】
上記の、化合物(A)〜(D)中のR
19〜R
31、X
2−、Y
3、及びY
4は、一般式(4)における化合物(A)〜(D)中のR
19〜R
31、X
2−、Y
3、及びY
4の場合と同義である。また、化合物(A)中のRはメチル基、エチル基等のアルキル基を表す。
【0065】
即ち、一般式(4)中、mが0を表す化合物は、化合物(A)、化合物(C)、化合物(D)をカップリングさせて得られる。一般式(4)中mが0〜2を表す化合物は、化合物(B)、化合物(C)、化合物(D)をカップリングさせて得られる。
【0066】
具体的なカップリング方法としては、特に制限はないが、例えば、下記に示すがmが0を表す時の化合物(A)を用いる方法を一態様として挙げる。
【0067】
カップリング工程の化合物(C)の使用量は、化合物(A)1モルに対し、0.1〜1.2倍モル、好ましくは0.5〜1.1倍モル、より好ましくは0.8〜1.0倍モルである。
【0068】
カップリング工程の化合物(D)の使用量は、化合物(A)1モルに対し、0.1〜2倍モル、好ましくは0.5〜1.5倍モル、より好ましくは0.8〜1.2倍モルである。
【0069】
化合物(C)と化合物(D)は同一でも異なるものでも制限はされないが、製法上の観点から同一の化合物であることがこのましい。化合物(C)と化合物(D)は同一である場合の使用量は、化合物(A)1モルに対し、0.1〜3倍モル、好ましくは0.5〜2倍モル、より好ましくは0.8〜1.5倍モルである。
【0070】
カップリング工程は無溶媒で行うことも可能であるが、溶媒の存在下で行うことが好ましい。溶媒としては、反応に関与しないものであれば特に限定されるものではないが、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クロロベンゼン、メシチレン等の芳香族系溶媒、ジイソプロピルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、ブチルアルコール、ジエチレングリコール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、水、酢酸等があげられる。好ましくは、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、ブチルアルコール、ジエチレングリコール等のアルコール系溶媒、水、酢酸等であり、より好ましくはエタノール、iso−プロピルアルコール、ジエチレングリコール、酢酸等である。また、2種以上の溶媒を混合して用いることができ、混合使用の際の混合比は任意に定めることができる。
【0071】
カップリング工程における反応溶媒の使用量は、化合物(A)に対し、0.1〜1000倍重量の範囲で用いられ、好ましくは0.5〜500倍重量、より好ましくは1.0〜150倍重量である。
【0072】
カップリング工程は、−80〜250℃の温度範囲で行われ、好ましくは−20〜200℃、より好ましくは10〜170℃である。通常、反応は24時間以内に完結する。
【0073】
カップリング工程では、必要に応じて酸、または、塩基の添加を行うと反応が速やかに進行する。用いる酸は特に制限されないが、例えば、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸;p−トルエンスルホン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸、無水酢酸等の有機酸;アンバーライト(ローム・アンド・ハース株式会社)、アンバーリスト(ローム・アンド・ハース株式会社)等の強酸性イオン交換樹脂;ギ酸アンモニウム、及び酢酸アンモニウム等の無機酸塩等があげられる。より好ましくは、ギ酸アンモニウム、または酢酸アンモニウム等の無機酸塩であり、より好ましくは、酢酸アンモニウムである。酸の使用量は、化合物(A)1モルに対し、0.001〜50倍モル、好ましくは0.01〜10倍モル、より好ましくは0.1〜5倍モルである。
【0074】
カップリング工程において用いる塩基としては、具体的には、カリウムtert−ブトキシド、ナトリウムtert−ブトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等の金属アルコキシド;ピペリジン、ピリジン、2−メチルピリジン、ジメチルアミノピリジン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルエチルアミン、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、1、8−ジアザビシクロ[5、4、0]ウンデカ−7−エン(以下、DBUと略記する)、酢酸アンモニウム等の有機塩基;n−ブチルリチウム、tert−ブチルマグネシウムクロリド等の有機塩基;水素化ホウ素ナトリウム、金属ナトリウム、水素化ナトリウム、炭酸ナトリウム等の無機塩基等が用いられる。好ましくは、カリウムtert−ブトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ピペリジン、ジメチルアミノピリジン、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム等であり、より好ましくは、ナトリウムメトキシド、ピペリジン、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム等が挙げられる。上記塩基の使用量は、化合物(A)1モルに対し、0.1〜20倍モル、好ましくは0.5〜8倍モル、より好ましくは1.0〜4倍モルである。
【0075】
反応終了後、水で希釈するか、あるいは、塩酸等による酸析を行うことによって一般式(4)で表わされる化合物を得ることができる。
【0076】
得られた化合物は、通常の有機化合物の単離・精製方法により単離・精製することができる。例えば、反応液を塩酸等で酸性にして、酸析することによって得られる固体をろ別し、水酸化ナトリウム等で中和し、濃縮すれば、粗成物が得られる。更に、粗成物をアセトン、メタノール等を用いた再結晶、シリカゲルを用いたカラム精製等により精製する。これらの方法は、単独または2つ以上組み合わせて精製を行うことにより高純度に精製することが可能である。
【0077】
一般式(5)で表される化合物について
本発明の化合物の好ましい一例として、一般式(5)で表わされる化合物をあげることができる
【化9】
一般式(5)中、R
34、R
35は、各々独立して、アルキル基、カルボキシアルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基を表し、R
36〜R
43は、各々独立して、水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アルコキシスルホニル基、N−アルキルスルファモイル基、アルキルオキシカルボニル基、N−アルキルカルバモイル基を表す。R
36とR
37、R
38とR
39、R
40とR
41及びR
42とR
43はそれぞれ独立に環化してベンゼン環を形成しても良い。
R
44は、水素原子、フェニル基、チオール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子を表し、R
45、R
46は、各々独立して、水素原子、アルキル基、アルキルカルボニルオキシ基を表す。
X
3−は陰イオン性基を表し、
Y
5、Y
6は酸素原子、硫黄原子、アルキレン基を表し、アルキレン基は置換基を有してよく、その場合の置換基はアルキル基であり、置換基同士が結合して、脂肪族環を形成してもよい。
【0078】
前記一般式(5)中のR
34、R
35におけるアルキル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基が挙げられる。
【0079】
前記一般式(5)中のR
34、R
35におけるカルボキシアルキル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、カルボキシプロピル基等基等が挙げられる。
【0080】
前記一般式(5)中のR
34、R
35におけるアルコキシカルボニルアルキル基としては、特に限定されるものではないが、メトキシカルボニルメチル基、メトキシカルボニルエチル基、エトキシカルボニルエチル基、ブトキシカルボニルエチル基、メトキシカルボニルプロピル基などが挙げられ、
前記一般式(5)中のR
36〜R
43におけるアルキル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
【0081】
前記一般式(5)中のR
36〜R
43におけるアリール基としては、特に限定されるものではないが、例えば、フェニル基、2−ブロモフェニル基、3−ブロモフェニル基、4−ブロモフェニル基、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、2−チオメチルフェニル基、3−チオメチルフェニル基、4−チオメチルフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0082】
前記一般式(5)中のR
36〜R
43におけるアルコキシ基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
【0083】
前記一般式(5)中のR
36〜R
43におけるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子等が挙げられる。
【0084】
前記一般式(5)中のR
36〜R
43におけるアルコキシスルホニル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、スルホン酸メチルエステル基、スルホン酸エチルエステル基等が挙げられる。
【0085】
前記一般式(5)中のR
36〜R
43におけるアルキルスルファモイル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、スルホン酸モノメチルアミド基、スルホン酸モノエチルアミド基、スルホン酸ジメチルアミド基、スルホン酸ジエチルアミド基等が挙げられる。
【0086】
前記一般式(5)中のR
36〜R
43におけるアルキルカルボニルオキシアルキル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチルカルボニルオキシメチル基、エチルカルボニルオキシメチル基、エチルカルボニルオキシエチル基、エチルカルボニルオキシブチル基、プロピルカルボニルオキシメチル基等が挙げられる。
【0087】
前記一般式(5)中のR
36〜R
43におけるN−アルキルカルバモイル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、N−メチルカルバモイル基、N−エチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジエチルカルバモイル基等が挙げられる。
【0088】
前記一般式(5)中のR
36〜R
43として好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、フェニル基またはアルコキシ基の場合であり、より好ましくは水素原子、またはフェニル基の場合である。
【0089】
前記一般式(5)中のR
44におけるチオール基としては、例えば、メルカプトメチル基、メルカプトブチル基、メルカプトフェニル基等が挙げられ、また、R
44のチオール基はフェニルチオ基であってもよい。
【0090】
前記一般式(5)中のR
44におけるアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
【0091】
前記一般式(5)中のR
44におけるアリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、置換基を有していても良いフェノキシ基が挙げられる。
【0092】
前記一般式(5)中のR
44におけるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子等が挙げられる。
【0093】
前記一般式(5)中のR
45、R
46におけるアルキル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基が挙げられる。
【0094】
前記一般式(5)中のR
45、R
46におけるアルキルオキシカルボニル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、プロピルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0095】
前記一般式(5)中のX
3−における陰イオン性基としては、特に限定されるものではないが、例えば、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、メタンスルホン酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン等が挙げられる。
【0096】
前記一般式(5)中のY
5、Y
6のアルキレン基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、2−エチレンヘキシル基等が挙げられる。アルキレン基の置換基としてのアルキル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。
【0097】
本発明における一般式(5)で表わされる化合物は、多くが市販されており、容易に入手可能である。また、公知の方法(例えば、非特許文献4)により同様の方法で容易に合成することができる。
【0099】
化合物(E)〜(G)中のR
35〜R
44、及びX
3−、Y
5、Y
6は、一般式(5)における化合物(E)〜(G)中のR
35〜R
44、及びX
3−、Y
5、Y
6と同義である。
【0100】
即ち、化合物(E)〜(G)をカップリングさせて、一般式(5)の化合物を得ることができる。具体的なカップリング方法としては、特に制限はないが、例えば、下記に示す方法が一態様として挙げられる。
【0101】
カップリング工程の化合物(F)の使用量は、化合物(E)1モルに対し、0.1〜1.2倍モル、好ましくは0.5〜1.1倍モル、より好ましくは0.8〜1.0倍モルである。
【0102】
カップリング工程の化合物(G)の使用量は、化合物(E)1モルに対し、0.1〜2倍モル、好ましくは0.5〜1.5倍モル、より好ましくは0.8〜1.2倍モルである。
【0103】
化合物(F)と化合物(G)は同一でも異なるものでも制限はされないが、製法上の観点から同一の化合物であることがこのましい。化合物(F)と化合物(G)は同一である場合の使用量は、化合物(E)1モルに対し、0.1〜3倍モル、好ましくは0.5〜2倍モル、より好ましくは0.8〜1.5倍モルである。
【0104】
カップリング工程は無溶媒で行うことも可能であるが、溶媒の存在下で行うことが好ましい。溶媒としては、反応に関与しないものであれば特に限定されるものではないが、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クロロベンゼンメシチレン等の芳香族系溶媒、ジイソプロピルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、ブチルアルコール、ジエチレングリコール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、水、酢酸等があげられる。好ましくは、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、ブチルアルコール、ジエチレングリコール等のアルコール系溶媒、水、酢酸等であり、より好ましくはエタノール、iso−プロピルアルコール、ジエチレングリコール、酢酸等である。また、2種以上の溶媒を混合して用いることができ、混合使用の際の混合比は任意に定めることができる。
【0105】
カップリング工程における反応溶媒の使用量は、化合物(E)に対し、0.1〜1000倍重量の範囲で用いられ、好ましくは0.5〜500倍重量、より好ましくは1.0〜150倍重量である。
【0106】
カップリング工程における反応温度は、−80〜250℃の範囲で行われ、好ましくは−20〜200℃、より好ましくは10〜170℃である。通常反応は24時間以内に完結する。
【0107】
カップリング工程では、必要に応じて酸、または、塩基の添加を行うと反応が速やかに進行する。用いる酸は特に制限されないが、例えば、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸;p−トルエンスルホン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸、無水酢酸等の有機酸;アンバーライト(ローム・アンド・ハース株式会社)、アンバーリスト(ローム・アンド・ハース株式会社)等の強酸性イオン交換樹脂;ギ酸アンモニウム、または酢酸アンモニウム等の無機酸塩等があげられる。より好ましくは、ギ酸アンモニウム、または酢酸アンモニウム等の無機酸塩であり、より好ましくは、酢酸アンモニウムである。酸の使用量は、化合物(E)1モルに対し、0.001〜50倍モル、好ましくは0.01〜10倍モル、より好ましくは0.1〜5倍モルである。
【0108】
カップリング工程において用いる塩基としては、具体的には、カリウムtert−ブトキシド、ナトリウムtert−ブトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等の金属アルコキシド;ピペリジン、ピリジン、2−メチルピリジン、ジメチルアミノピリジン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルエチルアミン、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、1、8−ジアザビシクロ[5、4、0]ウンデカ−7−エン(以下、DBUと略記する)、酢酸アンモニウム等の有機塩基;n−ブチルリチウム、tert−ブチルマグネシウムクロリド等の有機塩基;水素化ホウ素ナトリウム、金属ナトリウム、水素化ナトリウム、炭酸ナトリウム等の無機塩基等が用いられる。好ましくは、カリウムtert−ブトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ピペリジン、ジメチルアミノピリジン、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム等であり、より好ましくは、ナトリウムメトキシド、ピペリジン、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム等が挙げられる。上記塩基の使用量は、化合物(E)1モルに対し、0.1〜20倍モル、好ましくは0.5〜8倍モル、より好ましくは1.0〜4倍モルである。
【0109】
反応終了後、水で希釈するか、あるいは、塩酸等による酸析を行うことによって一般式(5)で表わされる化合物を得ることができる。
【0110】
得られた化合物は、通常の有機化合物の単離・精製方法を用いることができる。例えば、反応液を塩酸等で酸性にして、酸析することによって固体をろ別し、水酸化ナトリウム等で中和し、濃縮すれば、粗成物が得られる。更に、粗成物をアセトン、メタノール等を用いた再結晶、シリカゲルを用いたカラム精製等により精製する。これらの方法は、単独または2つ以上組み合わせて精製を行うことにより高純度で得ることが可能である。
【0111】
一般式(6)で表される化合物について
また、本発明の化合物の好ましい一例として、一般式(6)で表わされる化合物をあげることができる。
【化11】
一般式(6)中、R
49、R
50は、各々独立して、アルキル基、カルボキシアルキル基、アルキルカルボニルオキシアルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基を表す。
X
4−は陰イオン性基を表す。
【0112】
前記一般式(6)中のR
49、R
50におけるアルキル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基が挙げられる。
【0113】
前記一般式(6)中のR
49、R
50におけるカルボキシアルキル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、カルボキシプロピル等が挙げられる。
【0114】
前記一般式(6)中のR
49、R
50における
アルコキシカルボニルアルキル基としては、特に限定されるものではないが、メトキシカルボニルメチル基、メトキシカルボニルエチル基、エトキシカルボニルエチル基、ブトキシカルボニルエチル基、メトキシカルボニルプロピル基などが挙げられ、
アルキルカルボニルオキシアルキル基としては、特に限定されるものではないが、メチルカルボニルオキシメチル基、エチルカルボニルオキシメチル基、エチルカルボニルオキシエチル基、エチルカルボニルオキシブチル基、プロピルカルボニルオキシメチル基等が挙げられる。
【0115】
前記一般式(6)中のX
4−における陰イオン性基としては、特に限定されるものではないが、例えば、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、メタンスルホン酸イオン等が挙げられる。
【0116】
本発明における一般式(6)で表わされる化合物は、多くが市販されており、容易に入手可能である。また、公知の方法(例えば、非特許文献5)により同様の方法で容易に合成することができる。
【0118】
化合物(H)〜(J)中のR
49、R
50、及びX
4−は、一般式(6)における化合物(H)〜(J)中のR
49、R
50、及びX
4−と同義である。
【0119】
即ち、化合物(H)〜(J)をカップリングさせて、一般式(6)の化合物を得ることができる。具体的なカップリング方法としては、特に制限はないが、例えば、下記に示す方法が一態様として挙げられる。
【0120】
カップリング工程の化合物(I)の使用量は、化合物(H)1モルに対し、0.1〜1.2倍モル、好ましくは0.5〜1.1倍モル、より好ましくは0.8〜1.0倍モルである。
【0121】
カップリング工程の化合物(J)の使用量は、化合物(H)1モルに対し、0.1〜2倍モル、好ましくは0.5〜1.5倍モル、より好ましくは0.8〜1.2倍モルである。
【0122】
化合物(I)と化合物(J)は同一でも異なるものでも制限はされないが、製法上の観点から同一の化合物であることがこのましい。化合物(I)と化合物(J)は同一である場合の使用量は、化合物(H)1モルに対し、0.1〜3倍モル、好ましくは0.5〜2倍モル、より好ましくは0.8〜1.5倍モルである。
【0123】
カップリング工程は無溶媒で行うことも可能であるが、溶媒の存在下で行うことが好ましい。溶媒としては、反応に関与しないものであれば特に限定されるものではないが、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クロロベンゼンメシチレン等の芳香族系溶媒、ジイソプロピルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、ブチルアルコール、ジエチレングリコール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、水、酢酸等があげられる。好ましくは、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、ブチルアルコール、ジエチレングリコール等のアルコール系溶媒、水、酢酸等であり、より好ましくはエタノール、iso−プロピルアルコール、ジエチレングリコール、酢酸等である。また、2種以上の溶媒を混合して用いることができ、混合使用の際の混合比は任意に定めることができる。
【0124】
カップリング工程における反応溶媒の使用量は、化合物(H)に対し、0.1〜1000倍重量の範囲で用いられ、好ましくは0.5〜500倍重量、より好ましくは1.0〜150倍重量である。
【0125】
カップリング工程における反応温度は、−80〜250℃の範囲で行われ、好ましくは−20〜200℃、より好ましくは10〜170℃である。通常反応は24時間以内に完結する。
【0126】
カップリング工程では、必要に応じて酸、または、塩基の添加を行うと反応が速やかに進行する。用いる酸は特に制限されないが、例えば、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸;p−トルエンスルホン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸、無水酢酸等の有機酸;アンバーライト(ローム・アンド・ハース株式会社)、アンバーリスト(ローム・アンド・ハース株式会社)等の強酸性イオン交換樹脂;ギ酸アンモニウム、または酢酸アンモニウム等の無機酸塩等があげられる。より好ましくは、ギ酸アンモニウム、または酢酸アンモニウム等の無機酸塩であり、より好ましくは、酢酸アンモニウムである。酸の使用量は、化合物(H)1モルに対し、0.001〜50倍モル、好ましくは0.01〜10倍モル、より好ましくは0.1〜5倍モルである。
【0127】
カップリング工程において用いる塩基としては、具体的には、カリウムtert−ブトキシド、ナトリウムtert−ブトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等の金属アルコキシド;ピペリジン、ピリジン、2−メチルピリジン、ジメチルアミノピリジン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルエチルアミン、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、1、8−ジアザビシクロ[5、4、0]ウンデカ−7−エン(以下、DBUと略記する)、酢酸アンモニウム等の有機塩基;n−ブチルリチウム、tert−ブチルマグネシウムクロリド等の有機塩基;水素化ホウ素ナトリウム、金属ナトリウム、水素化ナトリウム、炭酸ナトリウム等の無機塩基等が用いられる。好ましくは、カリウムtert−ブトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ピペリジン、ジメチルアミノピリジン、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム等であり、より好ましくは、ナトリウムメトキシド、ピペリジン、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム等が挙げられる。上記塩基の使用量は、化合物(H)1モルに対し、0.1〜20倍モル、好ましくは0.5〜8倍モル、より好ましくは1.0〜4倍モルである。
【0128】
反応終了後、水で希釈するか、あるいは、塩酸等による酸析を行うことによって一般式(6)で表わされる化合物を得ることができる。
【0129】
得られた化合物は、通常の有機化合物の単離・精製方法を用いることができる。例えば、反応液を塩酸等で酸性にして、酸析することによって固体をろ別し、水酸化ナトリウム等で中和し、濃縮すれば、粗成物が得られる。更に、粗成物をアセトン、メタノール等を用いた再結晶、シリカゲルを用いたカラム精製等により精製する。これらの方法は、単独または2つ以上組み合わせて精製を行うことにより高純度で得ることが可能である。
【0130】
以下に、本発明の化合物の好ましい具体例として化合物(1)から(60)を示す。本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0137】
本発明の化合物は、好ましくは、波長350〜800nmの励起光の照射により発光する。
【0138】
本発明の化合物は、がん細胞に選択的に取り込まれることにより、がん細胞の増殖抑制、分裂抑制、転移抑制、機能阻害、殺細胞することを特徴とする。また、本発明の化合物の発光を測定することにより、がん細胞の検出及び観察が可能である。
【0139】
本発明の化合物は、単独、または、2種以上を組み合わせて、がんの阻害に用いることもできる。また、公知の抗がん薬と併用して用いても良い。
【0140】
本発明において、がん細胞の中でも、特にがん幹細胞に選択的に効果を示す。
【0141】
がん幹細胞
本明細書中、がん幹細胞(Cancer Stem Cell)とは、幹細胞の性質を持ったがん細胞である。幹細胞とは、自己複製能と様々な細胞に分化できる多分化能の2つの機能を持つ細胞を意味する。
【0142】
適応可能ながん
本発明の化合物により阻害されるがんは、特に限定はされない。例えば、乳がん、脳腫瘍、胃がん、前立腺がん、膵臓がん、肺がん、大腸がん、小腸がん、結腸がん、直腸がん、食道がん、十二指腸がん、舌がん、咽頭がん、肝臓がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、腎臓がん、胆管がん、卵巣がん、膀胱がん、皮膚がん、血管がん、唾液腺がん、甲状腺がん、副甲状腺がん、鼻腔がん、副鼻腔がん、陰茎がん、小児固形がん、悪性リンパ腫、悪性黒色腫、網膜肉腫、精巣腫瘍、骨髄腫、肉腫、血管線維腫、白血病等が挙げられ、好ましくは、膵臓がん、前立腺がん、白血病などである。特に、適応可能ながんに、がん幹細胞が含有され、または、がん幹細胞に起源するものが含まれていても良い。
【0143】
被験体
本発明の化合物の、がんを抑制効果を確認する試験に用いる被験体としては、特に限定されるわけではないが、例えば、脊椎動物としては、トラフグ、クサフグ、ミドリフグ、メダカ、ゼブラフィッシュ等の硬骨魚類、アフリカツメガエル等の両性類、ニワトリ、ウズラ等の鳥類、ヒト、サル、チンパンジー、ウシ、ウマ、ブタ、イヌ、ネコ、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ等の哺乳動物、ラット、マウス、ハムスター等の小動物、ヤギ、ブタ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ等の大動物、サル、チンパンジー、ヒト等が挙げられる。好ましくは、ヒト、マウス、ラット、イヌ、ネコ等である。
【0144】
本発明の化合物を医薬品として使用する場合には、その投与経路によって様々な剤型を選択することができる。例えば、液体、シロップ、細粒、顆粒、錠剤、カプセル剤、貼付薬、リポソーム等のドラッグデリバリーシステム(DDS)等の形態で使用することができる。
【0145】
本発明の化合物の投与法は、限定されることはないが、経口、または、非経口で行うことが出来る。例えば、生体に暴露(液体等)、経口投与、静脈または動脈等の血管内投与、経口内投与、舌下投与、直腸内投与、腹腔内投与、皮膚投与、皮下投与、皮内投与、膀胱内投与、気管(気管支)投与、眼内投与、鼻内投与、耳内等への注入、噴霧、塗布等を行うことが可能である。
【0146】
本発明の化合物には、必要に応じて薬理学的、または、製剤学的に許容する添加物を含んでいても良い。例えば、保湿剤、表面張力調整剤、増粘剤、pH調整剤、pH緩衝剤、防腐剤、抗菌剤、甘味剤、香料、溶解剤、溶解補助剤、コーティング剤、結合剤等である。
【0147】
本発明の化合物の投与量は、治療または予防の目的、被検体の性別、年齢、体重、投与ルート、疾患等などの条件によって適宜決定される。
【0148】
移植モデル動物
一般に、転移性のがんに関して挙動追跡することは、培養細胞では困難とされている。そのため、本発明では、転移性のがんに関して挙動追跡するために、特に、移植モデル動物を好適に用いる。
【0149】
本発明に用いられる適応可能ながん細胞の移植モデル動物として、特に限定されるわけではないが、例えば、脊椎動物としては、トラフグ、クサフグ、ミドリフグ、メダカ、ゼブラフィッシュ等の硬骨魚類、アフリカツメガエル等の両性類、ニワトリ、ウズラ等の鳥類、ヒト、サル、チンパンジー、ウシ、ウマ、ブタ、イヌ、ネコ、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ等の哺乳動物、ラット、マウス、ハムスター等の小動物、ヤギ、ブタ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ等の大動物、サル、チンパンジー等が挙げられる。好ましくは、マウス、ラット、イヌ、ネコ等である。
【0150】
これらの中で免疫不全のマウス、ラット等が初期検討として一般的に用いられることが多いが、検討を行う際の期間(通常最短3〜6カ月)、クリーンルーム等で環境を保持し続ける必要がある。さらに、この期間中、管理するための人件費も膨大にかかる。
【0151】
そのため、これらの生物試料の中でも、ゼブラフィッシュを用いることがコスト面、スピード面(通常最短1週間)で特に好ましい。ゼブラフィッシュは、米国及び英国では、近年、既にマウス及びラットに続く第3のモデル動物として認知されており、人と比較して全ゲノム配列が80%の相同性を持ち、遺伝子数もほぼ同じであり、さらに主要臓器・組織の発生・構造も良く似ていることが解明されてきている。各パーツ(心臓、肝臓、腎臓、消化管等の臓器・器官)が受精卵から分化して形成されていく過程が透明な体を通して観察できるため、非侵襲的に生体内部の観察が可能なゼブラフィッシュをモデル動物としてスクリーニングに用いることは特に好ましい。
【0152】
また、ゼブラフィッシュは1回の産卵で約200個以上の受精卵が得られるため同じ遺伝的背景持ったゼブラフィッシュが得られ、スクリーニングには好都合であるという利点がある。
【0153】
本発明の化合物を投与する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、がん細胞阻害薬が適当な界面活性剤との複合体または、エマルジョンの形で飼育水中に懸濁すれば良い。また、餌や食べ物に混ぜて、経口投与しても良く、注射等により非経口投与しても良い。
【0154】
がん幹細胞検出プローブ
本発明の化合物は、選択的ながん幹細胞の検出に用いること可能であるためがん幹細胞検出プローブとして好適に用いることができる。すなわち、本発明はがん細胞検出用プローブを含む。
【0155】
本発明の化合物は、がん細胞の中でも、特に、がん幹細胞に取り込まれる割合が大きいため、選択的にがん幹細胞を検出することが可能である。本発明のがん幹細胞の検出及び挙動の確認は、In Vitro、Ex Vivo、または In Vivoのいずれでも実施することが可能である。
【0156】
本発明の化合物を用いた検出方法は、がん幹細胞に影響を与えなければ特に限定されるものではないが、生物試料の状態及び変化を画像として捉える方法である。例えば、がん幹細胞に可視光、近赤外光や赤外光を照射してカメラやCCD等で観察する可視光観察、近赤外光観察、赤外光観察、若しくはレーザー顕微鏡観察、蛍光内視鏡等のように生物試料に対して励起光光源から励起光を照射して発光している生物試料の蛍光を観察する蛍光観察、蛍光顕微鏡観察、蛍光内視鏡観察、共焦点蛍光顕微鏡観察、多光子励起蛍光顕微鏡観察、若しくは狭帯域光観察、共光干渉断層画像観察(OCT)、または軟エックス線顕微鏡による観察等が挙げられる。特に、蛍光による観察が好ましい。
【0157】
本発明の化合物を励起するための光の波長は、前記一般式(1)で表される化合物によって異なり、本発明のがん細胞検出用プローブが効率よく蛍光を発すればよく、特に限定されるものではない。
【0158】
励起光の波長は、好ましくは200〜1010nm、さらに好ましくは400〜900nm、より好ましくは、480〜800nmである。また、近赤外領域の光を用いる場合は、好ましくは600〜1000nmで、より好ましくは、さらには、生体透過性に優れている680〜900nmの波長が好ましく用いられる。
【0159】
本発明の化合物を励起するために用いられる励起光源としては特に限定されるものではないが、各種レーザー光源を用いることができる。これらのレーザー光源としては、例えば、色素レーザー光源、半導体レーザー光源、イオンレーザー光源、ファイバーレーザー光源、ハロゲンランプ、キセノンランプ、またはタングステンランプ等が挙げられる。また、各種光学フィルターを用いて、好ましい励起波長を得たり、蛍光のみを検出したりすることができる。
【0160】
このように生物個体に励起光を照射することにより、がん幹細胞の内部において本発明の化合物を発光させた状態でがん幹細胞を撮像すれば発光部位を容易に検出することができる。また、可視光を照射して得られた明視野画像と励起光を照射して得られた蛍光画像を画像処理手段で組み合わせることで、より詳細にがん幹細胞を観察することもできる。また、共焦点顕微鏡を用いれば、光学的な切片画像を取得することができるため、好ましい。さらに、多光子励起蛍光顕微鏡は、高い深部到達性と空間解像力を持つため、組織内部の観察に好ましく用いられる。
【0161】
[実施例]
以下に実施例を挙げて、本発明をより詳細に説明するが、これらの実施例は、本発明のより一層の深い理解のために示される具体例であって、本発明は、これらの具体例に何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0162】
本発明の化合物の製造例を示す。
【0163】
化合物(1)の製造
【化19】
窒素雰囲気下、化合物(A1)0.61g(2.0mmol)の無水酢酸10mLの溶液に化合物(B1)0.20g(1.0mmol)、無水酢酸ナトリウム0.16g(2.0mmol)を添加して、100℃で1時間撹拌した。反応終了後、冷却させながら、ゆっくり飽和食塩水100mLを滴下して室温まで冷却した。さらに、ジクロロメタン50mLで2回抽出した。無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、有機層を減圧下で濃縮した。残さをシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、精製物をジエチルエーテルから再結晶して、化合物(1)0.29g(収率59%)を得た。目的物であることは、
1H核磁気共鳴分光分析(ECA−400、日本電子(株)製)、LC/TOF MS(LC/MSD TOF、Agilent Technologies社製)によって確認した。
【0164】
化合物(40)の製造
【化20】
窒素雰囲気下、化合物(A2)0.48g(2.2mmol)の無水酢酸10mLの溶液に化合物(B2)0.32g(1.0mmol)、無水酢酸ナトリウム0.25g(3.0mmol)を添加して、100℃で1時間撹拌した。反応終了後、冷却しながら、ゆっくり飽和食塩水100mLを滴下して室温まで冷却した。さらに、ジクロロメタン50mLで2回抽出した。無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、有機層を減圧下で濃縮した。残さをシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、ジエチルエーテルから再結晶して、化合物(40)0.38g(収率54%)を得た。目的物であることは、
1H核磁気共鳴分光分析(ECA−400、日本電子(株)製)、LC/TOF MS(LC/MSD TOF、Agilent Technologies社製)によって確認した。
【0165】
化合物(46)の製造
【化21】
窒素雰囲気下、化合物(A3)0.90g(3.0mmol)の無水酢酸15mLの溶液に化合物(B3)0.29g(1.5mmol)、無水酢酸ナトリウム0.29g(3.5mmol)を添加して、100℃で1.5時間撹拌した。反応終了後、冷却させながら、ゆっくり飽和食塩水100mLを滴下して室温まで冷却した。さらに、ジクロロメタン50mLで2回抽出した。無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、有機層を減圧下で濃縮した。残さをシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、ジエチルエーテルから再結晶して、化合物(46)0.46g(収率64%)を得た。目的物であることは、
1H核磁気共鳴分光分析(ECA−400、日本電子(株)製)、LC/TOF MS(LC/MSD TOF、Agilent Technologies社製)によって確認した。
【0166】
さらに、市販品を購入し、または、上記製造例の何れかに準じた方法で製造し、表1に示す32種類の化合物を得た。これらの化合物の構造は、前記と同様に分析装置で確認した。
【実施例2】
【0167】
化合物の蛍光特性の測定
下記表1における化合物を、5μMのDMSO溶液を調製し、日立ハイテク社製FL4500蛍光分光測定機で励起波長及び蛍光波長を測定した。
【0168】
【表1】
【実施例3】
【0169】
膵臓がん細胞に対するがん細胞の阻害(増殖抑制)作用の確認
【0170】
実験例1
ヒト膵臓がん細胞、KLM−1をRPMI1640培地に10%FBSを加えた培地で37℃、5%CO
2環境下で前培養した。その後、96−ウェルプレートの各ウェルに4,000個ずつ播種し、更に、24時間培養した。次に、化合物(1)を最終濃度10μg/mLになるように培地に添加し、37℃、5%CO
2環境下、24時間培養した。培養した細胞をCellTiter−Glo Luminescent Cell Viability Assay(プロメガ社製)を用いて、生存細胞数を解析した。基準として、上記操作法にて化合物(1)を培地に添加する代わりに、0.1%のジメチルスルホキシド溶液(以下、DMSOと略する)を添加した培地で培養された細胞数を100として用いた。
【0171】
実験例2〜23
実験例1において化合物(1)を表2で表わされる他の化合物に変更した以外は、実験例1と同様な操作を行い、生存細胞数を解析した。
【0172】
比較例1〜4
実験例1において、化合物(1)を比較化合物1〜4に変更した以外は、実験例1と同様な操作を行い、生存細胞数を解析した。
【化22】
【0173】
実験例1〜23、比較例1〜4の生存細胞数の解析し増殖率を求めた結果を表2に示す。
膵臓がん細胞(KLM−1)に対するがん細胞の阻害(増殖抑制)評価は以下の基準に基づいた。なお本実施例の増殖率とは、培養後の生存細胞数が、培養開始時の細胞数値に占める割合をパーセンテージで示したものである。
A:がん細胞増殖率が20%未満(がん細胞の阻害(増殖抑制)効果が非常に高い)
B:がん細胞増殖率が20%以上50%未満(がん細胞の阻害(増殖抑制)効果が高い)
C:がん細胞増殖率が50%以上(がん細胞の阻害(増殖抑制)効果が低い)
【0174】
【表2】
【0175】
表2から明らかなように、本発明の化合物は比較化合物に比べて、膵臓がん細胞(KLM−1)に対するがん細胞の阻害(増殖抑制)効果が高い。
【実施例4】
【0176】
前立腺がん細胞に対するがん細胞の阻害(増殖抑制)作用の観察
【0177】
実験例24
前立腺がん細胞、PC−3をRPMI1640培地に10%FBSを加えた培地で37℃、5%CO
2環境下、前培養した。その後、96−ウェルプレートの各ウェルに4,000個ずつ播種し、更に、24時間培養した。次に、化合物(1)を最終濃度10μg/mlになるように培地に添加し、37℃、5%CO
2環境下、24時間培養した。培養した細胞をCell Titer−Glo Luminescent Cell Viability Assay(プロメガ社製)を用いて、生存細胞数を解析した。基準として、上記操作法にて化合物(1)を培地に添加する代わりに、0.1%のジメチルスルホキシド溶液(以下、DMSOと略する)を投与したものを100とした。
【0178】
実験例25〜36
実験例24において化合物(1)の代わりに、表2で表わされるその他の化合物に変更した以外は、実験例24と同様な操作を行い、生存細胞数を解析した。
【0179】
比較例5〜8
実験例24において、化合物(1)の代わりに、比較化合物1〜4に変更した以外は、実験例24と同様な操作を行い、生存細胞数を解析し、増殖率を求めた。
【0180】
本実施例の増殖率とは、培養後の生存細胞数が、培養開始時の細胞数値に占める割合をパーセンテージで示したものである。結果を表3に示す。評価基準は上記実験と同様である。がん細胞増殖率が100%の数値を超えているものは、増殖していることを表す。
【0181】
前立腺がん細胞(PC−3)に対するがん細胞の阻害(増殖抑制)評価は以下の基準に基づいた。
A:がん細胞増殖率が20%未満(がん細胞の阻害(増殖抑制)効果が非常に高い)
B:がん細胞増殖率が20%以上50%未満(がん細胞の阻害(増殖抑制)効果が高い)
C:がん細胞増殖率が50%以上(がん細胞の阻害(増殖抑制)効果が低い)
【0182】
【表3】
【0183】
表3から明らかなように、本発明の化合物は比較化合物に比べて、前立腺がん細胞(PC−3)に対するがん細胞の阻害(増殖抑制)効果が高い。
【実施例5】
【0184】
慢性骨髄性白血病細胞に対するがん幹細胞の選択的阻害作用の確認
【0185】
実験例37
ヒト慢性骨髄性白血病細胞、K562をRPMI1640培地に10%FBSを加えた培地で37℃、5%CO
2環境下で前培養した。更に、がん幹細胞マーカーとしてのALDEFLUOR試薬(ベリタス社製)とFACSAriaフローサイトメトリー(日本ベクトンディッキンソン社製)を用いて、80%以上のがん幹細胞を含む分画を抽出した。次に、化合物(16)を最終濃度0.05μg/mlになるように培地に添加し、37℃、5%CO
2環境下で24時間培養した。培養した細胞をCellTiter−Glo Luminescent Cell Viability Assay(プロメガ社製)を用いて、生存細胞数を解析した。基準として、上記操作法にて化合物(1)を培地に添加する代わりに、0.1%のジメチルスルホキシド溶液(以下、DMSOと略する)を投与したものを0.1として用いた。なお、この後、ALDEFLUOR試薬で陽性の分画(がん幹細胞と判断される)をALDH(+)、ALDEFLUOR試薬で陰性の分画(がん幹細胞でないと判断される)をALDH(―)と示す場合がある。
【0186】
実験例38〜70
実験例37において、化合物(16)の代わりに、表3に示すその他の化合物及び最終濃度量に変更した以外は、実験例37と同様の操作で実施し、それぞれの生存細胞数を解析した。
【0187】
比較例9〜16
実験例37において、化合物(16)の代わりに、表3に示す一般的な抗がん剤であるImatinib(NOVARTIS社製)、比較化合物及び最終濃度量に変更した以外は、実験例37と同様の操作で実施し、それぞれの生存細胞数を解析した。
【0188】
実験例37〜70、比較例9〜16の結果を表4にまとめる。なお、がん幹細胞の増殖抑制効果は以下の基準に基づいて評価した。なお本実施例での増殖率とは、培養後の生存細胞数を、培養開始時の細胞数で除した値である。
A:ALDH(+)の増殖率が0.5未満 (がん幹細胞に対して増殖抑制効果が非常に高い)
B:ALDH(+)の増殖率が0.5以上0.95未満(がん幹細胞に対して増殖抑制効果が高い)
C:ALDH(+)の増殖率が0.95以上(がん幹細胞に増殖抑制効果がない)
また、がん幹細胞とがん細胞を比較し、がん幹細胞の優位性評価を以下の基準に基づいて評価した。
A:ALDH(+)の増殖率/ALDH(−)の増殖率の値が0.8未満
(がん幹細胞に対して選択的阻害効果が非常に高い)
B:ALDH(+)の増殖率/ALDH(−)の増殖率の値が0.8以上0.95未満(がん幹細胞に対して選択的阻害効果が高い)
C:ALDH(+)の増殖率/ALDH(−)の増殖率の値が0.95以上
(がん幹細胞に選択的阻害効果がない)
【0189】
【表4】
【0190】
なお、比較例14〜16の場合、ALDH(+)は、ほぼ1に近いので、抑制効果が全くないことを示している。一方、ALDH(−)で1以上の数値は、がん細胞が増加していることを示している。
【0191】
表4から明らかなように、本発明の化合物は、がん幹細胞に対して選択的に阻害効果が認められる。即ち、一般的な抗がん剤であるImatinibを用いた場合は、通常がん細胞に対して阻害効果があり、また、比較化合物を用いた場合は、阻害効果は認められなかった。
【実施例6】
【0192】
慢性骨髄性白血病細胞に対するがん幹細胞選択的染色の確認
【0193】
実験例71〜73
各実験例39、42、45において、24時間培養した細胞をHoechest33342(同仁化学研究所製)で核染色し、AXIOVERT200M倒立型蛍光顕微鏡(カールツァイス社製)を用いて、蛍光画像を撮影した。それぞれの化合物で、ALDH(+)の細胞が染色された割合と、ALDH(−)の細胞が染色された割合をそれぞれパーセンテージで示した値を表5に示す。
【0194】
【表5】
【0195】
表5から明らかなように、本発明の化合物は、通常のがん細胞(ALDH(−)よりもがん幹細胞(ALDH(+))を選択的に染色することがわかる。
【実施例7】
【0196】
がん幹細胞移植動物における阻害作用の確認
【0197】
実験例74
ヒト慢性骨髄性白血病細胞に蛍光タンパク質Kusabira−Orangeを恒常発現させた細胞株K562−KOrから、がん幹細胞マーカーとしてのALDEFLUOR試薬(ベリタス社製)とFACSAriaフローサイトメトリー(日本ベクトンディッキンソン社製)を用いて、80%以上のがん幹細胞を含む分画(ALDH(+))を抽出した。ALDH(+)と通常のがん細胞ALDH(−)をそれぞれ、ゼブラフィッシュ稚魚(MieKomachi系統、受精後2日齢)に移植し、32℃環境で飼育した。また、移植24時間後、化合物(16)を最終濃度0.5μMになるよう飼育水に添加し、2日間、32℃環境で飼育した。
ゼブラフィッシュ稚魚に移植された細胞を、MZ16F蛍光実体顕微鏡(ライカマイクロシステムズ社製)を用いて24時間後の蛍光画像を撮影し、蛍光強度を数値化した。
基準として、上記操作法にて化合物(16)を培地に添加する代わりに、0.1%のDMSO溶液を投与したものの蛍光強度を用いた。
【0198】
比較例17
実験例74において、化合物(16)の代わりに、Imatinibに変更した以外は、実験例74と同様の操作で蛍光画像を撮影し、蛍光強度を数値化した。
【0199】
実験例74及び比較例17のゼブラフィッシュ稚魚に移植されたALDH(+)/ALDH(−)細胞の阻害率を表6に示す。ここで阻害率は、試験物質を添加したときの蛍光強度をF1、基準物質(DMSO)を添加したときの蛍光強度をF0として、100×(1−F1/F0)のように求めた。
【0200】
【表6】
【0201】
表6より明らかなように、化合物またはImatinibのいずれも投与しなかった群と比較して腫瘍サイズ(蛍光領域)が小さいことが認められた。特に本発明の化合物を投与した群では、がん幹細胞(ALDH(+))を移植したモデル動物においてより優位に腫瘍サイズを小さく抑える効果が認められた。
【実施例8】
【0202】
がん細胞の転移巣(移植腫瘍部から300〜450μm領域)におけるがん転移抑制効果の確認
【0203】
実験例75
KLM1細胞に蛍光タンパク質Kusabira−Orangeを恒常発現させた細胞株K562−KOrからALDEFLUOR試薬(ベリタス社製)とFACSAriaフローサイトメトリー(日本ベクトンディッキンソン社製)を用いて、80%以上のがん幹細胞を含む分画(ALDH(+))を抽出した。得られたKLM1−KOr細胞をゼブラフィッシュ稚魚(MieKomachi系統、受精後2日齢)に移植し、32℃環境で飼育した。また、移植24時間後、化合物(26)(745μmol/KgBW)を卵黄嚢内に投与した。
72時間後、ゼブラフィッシュ稚魚に移植された細胞を、MZ16F蛍光実体顕微鏡(ライカマイクロシステムズ社製)を用いて、移植腫瘍部から300〜450μm領域の蛍光画像を撮影し、蛍光強度を数値化した。
基準として、上記操作法にて化合物(26)を用いる代わりに、0.1%のDMSO溶液を添加した培地で培養された細胞の蛍光強度を用いた。
【0204】
[比較例18、19]
実験例75において、化合物(26)を用いる代わりに、Imatinib、Dasatinibに変更した以外は、実験例26と同様の操作で蛍光画像を撮影した。
実験例75及び比較例18、19のゼブラフィッシュ稚魚に移植されたがん細胞の転移巣(移植腫瘍部から300〜450μm領域)のがん細胞の阻害率を表6に示す。
ここで阻害率は、試験物質を添加したときの蛍光強度をF1、基準物質(DMSO)を添加したときの蛍光強度をF0として、100×(1−F1/F0)のように求めた。
【0205】
がん幹細胞の転移巣(移植腫瘍から300-450μm領域)の増殖抑制効果は以下の基準に基づいて評価した
A:阻害率の値が70以上
(がん幹細胞の転移巣(移植腫瘍から300-450μm領域)に対して増殖抑制効果が非常に高い)
B:阻害率の値が50以上70未満
(がん幹細胞の転移巣(移植腫瘍から300-450μm領域)に対して増殖抑制効果が高い)
C:阻害率の値が50未満
(がん幹細胞の転移巣(移植腫瘍から300-450μm領域)に増殖抑制効果が低い)
【0206】
【表7】
【0207】
表7より、明らかなように、本発明のがん幹細胞阻害薬は比較した公知の抗がん剤よりも、転移抑制効果があることが認められた。