特許第6384823号(P6384823)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6384823
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】シリンジ用の保護カバー
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/178 20060101AFI20180827BHJP
   A61M 5/00 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   A61M5/178
   A61M5/00 514
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-272451(P2013-272451)
(22)【出願日】2013年12月27日
(65)【公開番号】特開2015-123360(P2015-123360A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2016年7月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100076598
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 一豊
(72)【発明者】
【氏名】坂本 智
(72)【発明者】
【氏名】桑原 知仁
【審査官】 鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】 特表平5−505953(JP,A)
【文献】 特開2007−125205(JP,A)
【文献】 特開2006−239048(JP,A)
【文献】 特開平8−10328(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/178
A61M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容液が充填される胴部(4)の先端に縮径状の肩部(3)を介して細径状の口筒部(2)が一体に形成されシリンジ(1)の先端に装着されたノズル(7)、及び前記ノズル(7)の外側を覆うキャップ(8)を有して構成されるシリンジ用の保護カバーであって、
少なくとも前記肩部(3)よりも一端側に位置する口筒部(2)と前記肩部(3)よりも他端側に位置する前記胴部(4)の2以上の箇所において、前記ノズル(7)又は前記キャップ(8)で前記シリンジ(1)を受ける受け部を有し、前記ノズル(7)は内容液を注出する孔(7c)を備えると共に前記受け部のうち少なくとも1箇所の受け部で受ける構成としたことを特徴とするシリンジ用の保護カバー。
【請求項2】
ノズル(7)が、胴部(4)を受けるノズル基部(7e)と、該ノズル基部(7e)の先端側のノズル段部(7d)を介して口筒部(2)を受けるノズル胴部(7b)とを有する構成とした請求項1記載のシリンジ用の保護カバー。
【請求項3】
キャップ(8)が、シリンジ(1)の先端に装着されたノズル(7)の全体を覆う構成とした請求項1記載のシリンジ用の保護カバー。
【請求項4】
キャップ(8)が、胴部(4)とノズル(7)を受ける筒状部(8B)を有し、前記ノズル(7)が口筒部(2)を受けるノズル胴部(7b)を有する構成とした請求項1又は3記載のシリンジ用の保護カバー。
【請求項5】
ノズル(7)の基端に凸部(7f)を形成し、キャップ(8)の筒状部(8B)が前記凸部(7f)を受ける構成とした請求項4記載のシリンジ用の保護カバー。
【請求項6】
口筒部(2)及び胴部(4)を受ける保護カバーの内周面に、周方向に等間隔を有して配置された3ヶ以上の当接部をそれぞれ形成した請求項1乃至5のいずれか一項に記載のシリンジ用の保護カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸送時や落下時の衝撃による破損を防止するシリンジ用の保護カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
シリンジは、その先端に細径状の口筒部を一体に備える構成が一般的である。
【0003】
しかし、例えばシリンジがガラス製の場合、輸送時や落下の際に大きな衝撃がこの口筒部に加わると、口筒部の根本部分(胴部から縮径して口筒部に至る肩部分)に亀裂が生じ、あるいは口筒部が折損するという問題がある。
【0004】
従来、この種の問題を解決する手段としては、例えば以下の特許文献1では、口筒部に保護キャップを装着することにより、亀裂や折損が生じることを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−206201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1では、キャップ7が、シリンジ側の口筒部のみを外装するように装着される構成である。このため、キャップ7に大きな衝撃が加わった場合、その衝撃による応力がキャップ7を介してシリンジ側の口筒部と胴部との連結部分、すなわち胴部から口筒部に縮径する部分である肩部近傍に集中やすい。その結果、肩部近傍の亀裂や口筒部の折損を効果的に防止し難いという問題がある。
【0007】
本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく、輸送時や落下時の衝撃を受けたときに発生しやすいシリンジ肩部の亀裂や口筒部の折損を、従来に比較してより効果的に防止できるようにしたシリンジ用の保護カバーを創出することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段のうち、本発明の主たる構成は、
内容液が充填される胴部の先端に縮径状の肩部を介して細径状の口筒部が一体に形成されシリンジの先端に装着されたノズル、及びノズルの外側を覆うキャップを有して構成されるシリンジ用の保護カバーであって、少なくとも肩部よりも一端側に位置する口筒部と肩部よりも他端側に位置する胴部の2以上の箇所において、ノズル又はキャップでシリンジを受ける受け部を有し、ノズルは内容液を注出する孔を備えると共に受け部のうち少なくとも1箇所の受け部で受ける構成としたことを特徴とする、と云うものである。
【0009】
上記構成では、ノズルや及びキャップにより構成される保護カバーが、シリンジの肩部を挟んで軸方向にて前後する一方の口筒部と他方の胴部の2以上の箇所を受けて装着するようになるので、何らかの衝撃が、シリンジ先端に装着されているノズルやキャップに作用したとしてもその衝撃による応力がシリンジの肩部に集中することを防止する。
【0010】
また本発明の他の構成は、上記主たる構成に、ノズルが、胴部を受けるノズル基部と、このノズル基部の先端側のノズル段部を介して口筒部を受けるノズル胴部とを有する構成を加えたものである。
【0011】
上記構成では、ノズルが保護カバーとして機能するので、輸送時や落下時の衝撃がノズルやキャップに作用したとしてもその衝撃による応力がシリンジの肩部に集中することを防止する。
【0012】
また本発明の他の構成は、上記主たる構成に、キャップが、シリンジの先端に装着されたノズルの全体を覆う構成を加えたものである。
【0013】
上記構成では、キャップがシリンジ先端を全体的に覆う保護カバーとして機能するので、輸送時や落下時の衝撃が、キャップに作用したとしてもその衝撃による応力がシリンジの肩部に集中することを防止する。
【0014】
また本発明の他の構成は、上記請求項1又は3記載の構成に、キャップが、胴部とノズルを受ける筒状部を有し、ノズルが口筒部を受けるノズル胴部を有する構成を加えたものである。
【0015】
上記構成では、肩部を挟んで軸方向に前後する位置に複数の受け部を設けることを達成し得る。
【0016】
また本発明の他の構成は、上記構成に、ノズルの基端に凸部を形成し、キャップの筒状部が凸部を受ける構成を加えたものである。
【0017】
上記構成では、キャップが、シリンジの胴部を直接受ける第1受け部と、ノズルを介してシリンジの口筒部を間接的に受ける第2受け部に加え、キャップとノズルとの間に複数の受け部(第3受け部と第4受け部)を配置することができるため、特に肩部よりも先端側の受け状態が安定され、保護カバーとしての機能向上を達成し得る。
【0018】
また本発明の他の構成は、上記いずれかの構成に、口筒部及び胴部を受ける保護カバーの内周面に、周方向に等間隔を有して配置された3ヶ以上の当接部をそれぞれ形成した構成を加えたものである。
【0019】
上記構成では、シリンジをバランスよく保持することが可能となり、中心軸に対して略垂直方向から加わる衝撃に対して効果的に対抗し得る。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
【0021】
カバー部材を構成するキャップとノズルが、あるいはカバー部材を構成するキャップが、シリンジ先端部を外部から覆って安定的に保護することが可能であるため、シリンジ輸送時や落下時の衝撃による応力が、シリンジの肩部に集中的に作用することがなくなる。よって、シリンジ肩部の亀裂、口筒部の折損をより効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1実施例として保護カバーを装着した状態を示すシリンジの半断面図である。
図2】第1実施例の主要部分を示す図1の拡大図である。
図3】本発明の第2実施例として保護カバーを装着した状態を示すシリンジの半断面図である。
図4】第2実施例の主要部分を示す図1の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0024】
本発明の保護カバーが保護するシリンジ1は内容液が充填される円筒状の胴部(バレル)4を有し、その先端(図1では上端)には縮径状の肩部3を介して一体に成形された細径状の口筒部2を有し、他端は開放端であり周囲には鍔部(フィンガーグリップ)5が一体に形成されている。そして、胴部4の内側には先端にガスケット(図示せず)を備えて軸方向に沿って進退移動するプランジャ6が設けられており、このプランジャ6を先端方向に押し込むことにより内容液を口筒部2の先端から注出することが可能となっている。
【0025】
なお、シリンジ1は主として透明なガラス製であるが、口筒部2に衝撃が加わった場合にその根本に亀裂や破損が発生する可能性がある限り、例えばポリ塩化ビニルのような硬質な合成樹脂製のシリンジも含まれる。
【0026】
先ず、図1及び図2を参照に第1実施例について説明する。
第1実施例に示すシリンジ用の保護カバーは、ノズル7とキャップ8を有して構成される。ノズル7は射出成形された合成樹脂製であり、基端側にシリンジ1の胴部4の先端に外装されるノズル基部7eを有し、先端側に口筒部2の周囲に外装されるノズル胴部7b及びノズル頭部7aを有しており、ノズル胴部7bとノズル基部7eとは段差状のノズル段部7dを介して一体に形成されている。ノズル頭部7aの先端には中心軸Oに沿って貫通する小孔7cが形成されており、シリンジ1内の内容液は口筒部2及びノズル7の小孔7cを通じて外部に注出されることになる。なお、ノズル段部7dの内周面には口筒部2に密着可能な断面凸形状からなるシール部7gを周設することにより、液漏れ防止が図られている。
【0027】
キャップ8は軟質で弾性変形可能な材料、例えばシリコンゴム又は天然ゴムからなる部材であり、蓋部8Aと略円筒状の筒状部8Bとが一体に形成されたものである。そして、キャップ8は、筒状部8Bがノズル胴部7bを径方向から圧接する状態でノズル頭部7aに装着され、かつ小孔7cが蓋部8Aによって被嵌されている。なお、キャップ8はノズル頭部7aに対して着脱自在である。
【0028】
図2に示すように、第1実施例では、肩部3よりも基端側の第1受け部P1でノズル7側のノズル基部7eがシリンジ1側の胴部4を受ける状態に設定され、かつ先端側の第2受け部P2でノズル7側のノズル胴部7bがシリンジ1側の口筒部2を受ける状態に設定される。
【0029】
つまり、中心軸Oに沿う方向で且つ肩部3を挟んで前後する位置において、ノズル7はシリンジ1の口筒部2だけでなく胴部4をも受けることでシリンジ1の先端を全体的に保護している。このため、何らかの衝撃が保護カバーを構成するノズル7やキャップ8に作用したとしても、その衝撃は分散されて肩部3に応力が集中して作用することがなく、シリンジ1の肩部3近傍の破損、つまりは輸送時や落下の際の肩部3の亀裂や口筒部2の折損をより効果的に防止することが可能である。
【0030】
また第1受け部P1及び第2受け部P2の構成については、保護カバーを構成するノズル7のノズル基部7eの内周面及びノズル胴部7bの内周面の3ヶ以上の箇所に、例えば中心軸Oに沿って軸方向に延びる凸リブ、あるいは半球状の凸部からなる当接部を周方向に均等な間隔を空けてそれぞれ配置する構成が好ましい(図示せず)。この構成では、肩部3を挟んで中心軸Oに沿って前後する胴部4側(第1受け部P1)及び口筒部2側(第2受け部P2)において、それぞれ3点以上でシリンジ1をバランスよく保持することが可能となる。これにより、中心軸Oに対して略垂直方向から加わる衝撃に対抗することが可能となるので、さらに肩部3の亀裂や口筒部2の折損をより効果的に防止することができる。
【0031】
次に、図3及び図4を参照に第2実施例について説明する。
【0032】
なお、第1実施例と同一の部材については同一の符号を付して説明する。
【0033】
第2実施例に示すシリンジ用の保護カバーは、口筒部2を外装するノズル7と、このノズル7を含むシリンジ1の先端を全体的に覆うキャップ8を有して構成される。
【0034】
ノズル7は射出成形された合成樹脂製であり、口筒部2の周囲に外装されるノズル胴部7bを有しており、ノズル7の基端(ノズル胴部7bの端部)側の外周面には断面凸形状からなる凸部7fが周設され、内周面には口筒部2に密着して液漏れを防止する断面凸形状のシール部7gが周設されている。またノズル頭部7aの先端には、上記同様に中心軸Oに沿って貫通する小孔7cが形成されている。
【0035】
キャップ8も上記同様弾性変形可能な例えばシリコンゴム製又は天然ゴム製であり、軸方向に延びる長円筒状の筒状部8Bと、この筒状部8Bの先端に設けられた蓋部8Aとを有して構成されている。図4に示すように、筒状部8Bは開放端側に最も内径寸法の大きい装着端部8a、この装着端部8aよりも先端側に位置し、かつ装着端部8aよりも内径寸法の小さい第1縮径部8b、及びこの第1縮径部8bよりもさらに先端側に位置し、かつ第1縮径部8bよりもさらに内径寸法の小さい第2縮径部8cを有して構成されている。
【0036】
キャップ8は、筒状部8Bの装着端部8aが胴部4を径方向から圧接する状態でシリンジ1の先端に装着されており、この状態でノズル7の小孔7cが蓋部8Aによって被嵌されている。なお、第2実施例においては、キャップ8はノズル7が装着されたシリンジ1に対して着脱自在である。
【0037】
図4に示すように、第2実施例では、肩部3よりも基端側の第1受け部P1でキャップ8側の装着端部8aがシリンジ1側の胴部4を受ける状態に設定され、かつ肩部3よりも先端側の第2受け部P2でノズル7側のノズル胴部7bがシリンジ1側の口筒部2を受ける状態に設定される。さらに肩部3よりも先端側の第3受け部P3でキャップ8側の第1縮径部8bがノズル7側の凸部7fを、さらに先端側の第4受け部P4でキャップ8側の第2縮径部8cがノズル7側のノズル胴部7bの先端部をそれぞれ受ける状態に設定される。
【0038】
つまり、第2実施例では、中心軸Oに沿う方向で且つ肩部3を挟んで前後する複数の位置(第1受け部P1乃至第4受け部P4)において、キャップ8がシリンジ1の胴部4を直接受けて保護するだけでなく、ノズル7を介して口筒部2を間接的に受けることでシリンジ1の先端を全体的に保護している。
【0039】
このため、輸送時や落下時の衝撃がシリンジ1の先端、特には保護カバーを構成するキャップ8に作用したとしても、その衝撃は分散されてシリンジ1の肩部3に応力が集中することがなく、シリンジ1の肩部3近傍の破損、つまりは肩部3の亀裂や口筒部2の折損を従来に比較してより効果的に防止することが可能である。
【0040】
また第1受け部P1及び第2受け部P2の構成については、保護カバーを構成するキャップ8の装着端部8aの内周面及びノズル胴部7bの内周面の3ヶ以上の箇所に、例えば中心軸Oに沿って軸方向に延びる凸リブ、あるいは半球状の凸部などからなる当接部を周方向に均等な間隔を空けてそれぞれ配置する構成が好ましい(図示せず)。この構成では、肩部3を挟んで中心軸Oに沿って前後する胴部4側(第1受け部P1)及び口筒部2側(第2受け部P2)において、それぞれ3点以上でシリンジ1をバランスよく保持することが可能となる。これにより、中心軸Oに対して略垂直方向から加わる衝撃に対抗することが可能となるので、さらに肩部3の亀裂や口筒部2の折損をより効果的に防止することができる。
【0041】
以上、実施例に沿って本発明の構成とその作用効果について説明したが、本発明の実施の形態は上記実施例に限定されるものではない。
【0042】
例えば、上記各実施例では口筒部2にノズル7が単体で装着される構成を示して説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、ノズル7の先端にニードル(注射針)を備える構成であっても良い。
【0043】
また上記第2実施例では、凸部7fをノズル7の基端に周状に形成した例を示して説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、凸部7fを周方向に間欠状に形成する構成であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、衝撃を受けると破損しやすいガラス製若しくは硬質樹脂製のシリンジの分野における用途展開をさらに広い領域で図ることができる。
【符号の説明】
【0045】
1 : シリンジ
2 : 口筒部
3 : 肩部
4 : 胴部
5 : 鍔部
6 : プランジャ
7 : ノズル
7a : ノズル頭部
7b : ノズル胴部
7c : 小孔
7d : ノズル段部
7e : ノズル基部
7f : 凸部
7g : シール部
8 : キャップ
8A : 蓋部
8B : 筒状部
8a : 装着端部
8b : 第1縮径部
8c : 第2縮径部
P1 : 第1受け部
P2 : 第2受け部
P3 : 第3受け部
P4 : 第4受け部
図1
図2
図3
図4