(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のシステムは、信号機そのものを制御するため、歩行者の歩行状態や歩行者数などによっては、歩行者や自動車の交通が円滑に行われなくなり、交通が麻痺するおそれがある。つまり、歩行者が横断歩道を渡り終えるのを待って、車両用信号機を青信号にするため、例えば、歩行者が多い場合や複数の歩行者が異なる横断歩道を渡っている場合などに、車両用信号機が長時間青信号にならない事態が生じ、交通が麻痺するおそれがある。
【0006】
そこでこの発明は、信号機そのものを制御することなく、歩きスマホによる交通事故を効果的に防止可能な歩行者交通事故防止システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、携帯端末を使用している歩行者の交通事故を防止するための歩行者交通事故防止システムであって、
横断歩道の信号機に、該信号機が赤信号状態であるかを含む信号情報を周囲に送信する信号情報送信手段を備え、
前記携帯端末に、
前記信号情報を受信する信号情報受信手段と、
前記歩行者の位置を取得する位置取得手段と、
前記歩行者の歩行方向を取得する方向取得手段と、
信号機の位置を含む地図情報を記憶する地図情報記憶手段と、
前記信号情報と前記歩行者の位置と前記歩行者の歩行方向と前記地図情報とに基づいて、前記歩行者が赤信号状態の横断歩道に進入する直前か否かを判定する判定手段と、
前記判定手段によって前記横断歩道に進入する直前と判定された場合に、警報を発する警報手段と、
前記歩行者の歩行速度を測定する速度測定手段と、
を備
え、
前記判定手段は、前記信号情報と前記歩行者の位置と前記歩行者の歩行方向と前記地図情報と前記歩行速度とに基づいて、前記歩行者がこのまま歩行を続けると赤信号状態の横断歩道に進入するか否かを判定し、
前記警報手段は、前記判定手段によって前記横断歩道に進入すると判定された場合に、警報を発する、ことを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、信号機が赤信号状態であるかを含む信号情報が周囲に送信され、歩行者がこの信号機の周囲に近づくと、携帯端末の信号情報受信手段によって信号情報が受信される。そして、携帯端末の判定手段によって、歩行者が赤信号状態の横断歩道に進入する直前であると判定されると、警報手段によって警報が発せられる。
また、携帯端末の速度測定手段によって歩行者の歩行速度が測定され、判定手段によって、歩行者がこのまま歩行を続けると赤信号状態の横断歩道に進入すると判定されると、警報手段によって警報が発せられる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の歩行者交通事故防止システムにおいて、
前記速度測定手段は、所定時間での移動距離を該所定時間で除算することで前記歩行速度を測定し、このような歩行速度の測定を定期的に行い最新の測定結果を保持する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、歩行者が赤信号状態の横断歩道に進入する直前になると、携帯端末から警報が発せられるため、歩きスマホによる交通事故を効果的に防止することが可能となる。また、信号機そのものを制御しないため、交通が麻痺することがなく、しかも、信号機から信号情報を周囲に送信するだけであるため、構成が簡易で、容易に適用・構成することが可能である。
また、歩行者がこのまま歩行を続けると赤信号状態の横断歩道に進入すると判定・予測される場合、進入する直前になる前に(事前に)携帯端末から警報が発せられるため、歩きスマホによる交通事故をより効果的に防止することが可能となる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、
歩行者がこのまま歩行を続けると赤信号状態の横断歩道に進入するか否かを、実測された歩行者の歩行速度に基づいて判定するため、歩行速度に個人差があっても、個々の歩行者の歩行速度に応じた適正な判定を行うことが可能となる。しかも、最新の測定結果・歩行速度に基づいて判定するため、横断歩道周辺での歩行速度に基づいて適正に判定を行うことが可能となる。この結果、交通事故をより効果的に防止することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0015】
図1は、この発明の実施の形態に係る歩行者交通事故防止システム1を示す概略構成図である。この歩行者交通事故防止システム1は、携帯端末2を使用している歩行者Mの交通事故を防止するためのシステムであり、各横断歩道Hの歩行者用信号機(信号機)101に信号送信器(信号情報送信手段)3が配設されている。
【0016】
信号送信器3は、この歩行者用信号機101が赤信号状態であるかを含む信号情報を周囲に送信する装置である。すなわち、赤点灯中か、青点灯中か、あるいは青点滅中かなどの信号状態を、歩行者用信号機101から検出・取得して、歩行者用信号機101の識別情報とともに、信号情報として周囲に送信する。
【0017】
ここで、信号状態を歩行者用信号機101から検出・取得する手法は、どのようなものであってもよいが、例えば、歩行者用信号機101を制御する制御回路から取得したり、歩行者用信号機101を撮影して画像解析処理によって取得したりしてもよい。また、信号情報を送信する周囲の範囲は、後述するようにして携帯端末2で信号情報を受信して判定や警報を行うことで、交通事故を防止可能なように設定されている。つまり、歩行者Mが赤点灯中の横断歩道Hに進入する前に、歩行者Mに注意を喚起できるように、送信範囲・送信方向が設定されている。また、信号情報は、所定の周波数の無線通信(IP通信を含む)で送信され、常時リアルタイムに送信されるようになっている。
【0018】
携帯端末2は、この実施の形態では、スマートフォン(多機能携帯電話)で構成され、主として、
図2に示すように、通信部(信号情報受信手段)21と、位置取得部(位置取得手段)22と、方向取得部(方向取得手段)23と、地図情報記憶部(地図情報記憶手段)24と、速度測定部(速度測定手段)25と、判定部(判定手段)26と、警報部(警報手段)27と、これらを制御などする中央処理部28とを備えている。
【0019】
通信部21は、外部と無線通信するための通信インターフェイスであり、信号送信器3からの信号情報を受信可能となっている。
【0020】
位置取得部22は、携帯端末2の現在位置を演算・取得することで、携帯端末2を携帯している歩行者Mの現在位置を取得するものである。具体的に、この実施の形態では、GPS(Global Positioning System)受信機で構成され、複数のGPS衛星から電波を受信し、受信した電波に基づいて現在の位置情報、つまり緯度、経緯を演算するものである。
【0021】
方向取得部23は、携帯端末2の向き・方位を演算・取得することで、歩行者Mの歩行方向を取得するものである。具体的に、この実施の形態では、ジャイロセンサで構成され、ジャイロセンサで角速度を検出して方位・方向を演算するものである。
【0022】
地図情報記憶部24は、各歩行者用信号機101の位置を含む地図情報を記憶するメモリである。すなわち、各地域における地図情報を記憶するメモリであり、地図情報には、少なくとも各横断歩道Hの位置や各歩行者用信号機101の位置と識別情報とが含まれている。ここで、必要に応じて各地域の地図情報を順次地図情報記憶部24にダウンロード・記憶してもよいし、全地域の地図情報を地図情報記憶部24に記憶しておいてもよい。または、地図情報記憶部24の代りにインターネットを介してGIS(Geographic Information System)を利用してもよい。この実施形態では、地図情報記憶部24を利用する。
【0023】
速度測定部25は、携帯端末2の移動速度を演算・測定することで、歩行者Mの歩行速度を測定するものである。具体的に、この実施の形態では、所定時間の間に位置取得部22で取得された現在位置の変化(所定時間での移動距離)を、所定時間で除算して、単位時間当たりの歩行距離、つまり歩行速度を測定する。このような歩行速度の測定は、定期的に行われ、常に最新の測定結果が保持・記憶されるようになっている。
【0024】
判定部26は、信号情報と歩行者Mの位置と歩行者Mの歩行方向と地図情報とに基づいて、歩行者Mが赤信号状態の横断歩道Hに進入する直前か否かを判定するとともに、信号情報と歩行者Mの位置と歩行者Mの歩行方向と地図情報と歩行速度とに基づいて、歩行者Mがこのまま歩行を続けると赤信号状態の横断歩道Hに進入するか否かを判定するプログラム・タスクである。
【0025】
まず、第1の判定として、通信部21で受信した信号送信器3からの信号情報と、位置取得部22で取得された歩行者Mの現在位置と、方向取得部23で取得された歩行者Mの歩行方向と、地図情報記憶部24に記憶された地図情報と、速度測定部25で測定された歩行者Mの歩行速度とに基づいて、歩行者Mがこのまま歩行を続けると赤信号状態の横断歩道Hに進入するか否かを判定する。
【0026】
すなわち、歩行者用信号機101の信号送信器3から信号情報を受信した場合に、まず、この歩行者用信号機101の方向に歩行者Mが進んでいるか否かを、地図情報(歩行者用信号機101の位置)と歩行者Mの現在位置と歩行方向とに基づいて判定する。そして、歩行者用信号機101の方向に歩行者Mが進んでいると判定した場合には、歩行者Mの現在位置からこの歩行者用信号機101の横断歩道Hの手前まで歩行者Mが進むのに要する時間を、地図情報と歩行者Mの現在位置と歩行速度とに基づいて算出する。次に、算出した時間だけ経過した時点で、この歩行者用信号機101が赤信号状態であるか否かを信号情報に基づいて判定する。
【0027】
例えば、信号送信器3から青点滅中の信号情報を受信し、歩行者Mが横断歩道Hの手前まで進んだ時点で、歩行者用信号機101が赤信号状態に変わると算出される場合には、歩行者Mがこのまま歩行を続けると赤信号状態の横断歩道Hに進入する、と判定する。一方、信号送信器3から赤点灯中の信号情報を受信し、歩行者Mが横断歩道Hの手前まで進んだ時点で、歩行者用信号機101が青信号状態に変わると算出される場合には、赤信号状態の横断歩道Hに進入しない、と判定し、歩行者用信号機101が赤信号状態のままと算出される場合には、赤信号状態の横断歩道Hに進入する、と判定する。
【0028】
第2の判定として、通信部21で受信した信号送信器3からの信号情報と、位置取得部22で取得された歩行者Mの現在位置と、方向取得部23で取得された歩行者Mの歩行方向と、地図情報記憶部24に記憶された地図情報とに基づいて、歩行者Mが赤信号状態の横断歩道Hに進入する直前か否かを判定する。
【0029】
すなわち、赤信号状態であることの信号情報を歩行者用信号機101の信号送信器3から受信した場合に、この歩行者用信号機101の横断歩道Hの手前に歩行者Mがいるか否かを、歩行者Mの現在位置と地図情報とに基づいて判定する。次に、横断歩道Hの手前に歩行者Mがいる場合に、この横断歩道Hの横断方向に歩行者Mが進もうとしているか否かを、歩行者Mの歩行方向と地図情報とに基づいて判定する。そして、この横断歩道Hの横断方向に歩行者Mが進もうとしている場合に、歩行者Mが赤信号状態の横断歩道Hに進入する直前である、と判定する。
【0030】
警報部27は、判定部26によって、上記のような横断歩道に進入すると判定された場合と、上記のような横断歩道に進入する直前と判定された場合に、警報を発するものである。この警報部27は、ディスプレイとスピーカとバイブレータとで構成され、これの単独や組み合わせにより警報を発するようになっている。
【0031】
具体的に、この実施の形態では、判定部26の第1の判定によって、歩行者Mがこのまま歩行を続けると赤信号状態の横断歩道Hに進入すると判定された場合に、
図3に示すように、ポップアップによってディスプレイに「危険」を表示するとともに、注意喚起する音声メッセージを出力する。また、判定部26の第2の判定によって、歩行者Mが赤信号状態の横断歩道Hに進入する直前であると判定された場合には、
図3に示すポップアップと音声メッセージとに加えて、バイブレーションを発生させるとともに、ディスプレイの背景をフラッシュさせる。これにより、歩行者Mに対してより強く注意を喚起するものである。
【0032】
このような通信部21と、位置取得部22と、方向取得部23と、地図情報記憶部24と、速度測定部25と、判定部26と、警報部27と、中央処理部28は、1つの歩行者交通事故防止アプリケーションに含まれ、この歩行者交通事故防止アプリケーションを起動するとすべての構成21〜28が起動されるようになっている。
【0033】
次に、このような構成の歩行者交通事故防止システム1の作用について説明する。
【0034】
まず、歩行者交通事故防止アプリケーションを起動し、この状態で歩行者Mが携帯端末2を携帯して歩行すると、位置取得部22によって歩行者Mの現在位置が逐次取得され、方向取得部23によって歩行者Mの歩行方向が逐次取得され、さらに、速度測定部25によって歩行者Mの歩行速度が逐次測定される。一方、各歩行者用信号機101の信号送信器3から常時リアルタイムに信号情報が周囲に送信され、歩行者Mが歩行者用信号機101(横断歩道H)に近づくと、携帯端末2の通信部21によって信号情報が受信される。
【0035】
続いて、判定部26で上記のようにして、歩行者Mがこのまま歩行を続けると赤信号状態の横断歩道Hに進入するか否かが判定される。そして、赤信号状態の横断歩道Hに進入すると判定されると、警報部27によってポップアップされるとともに音声メッセージが出力される。一方、青信号状態の横断歩道Hに進入すると判定されると、警報は出力されない。その後、歩行を進めて信号情報を受信すると、判定部26で上記のようにして、歩行者Mが赤信号状態の横断歩道Hに進入する直前であるか否かが判定される。そして、直前であると判定されると、警報部27によってポップアップされるとともに音声メッセージが出力され、さらに、バイブレーションが発生され、ディスプレイの背景がフラッシュされる。一方、青信号状態の横断歩道Hに進入する直前であると判定されると、警報は出力されない。
【0036】
このようにして、歩行者Mが歩行者用信号機101に近づく度に、判定部26による判定と警報部27による警報とが行われるものである。
【0037】
このように、本歩行者交通事故防止システム1によれば、歩行者Mが赤信号状態の横断歩道Hに進入する直前になると、携帯端末2から警報が発せられるため、歩きスマホによる交通事故を効果的に防止することが可能となる。さらに、歩行者Mがこのまま歩行を続けると赤信号状態の横断歩道Hに進入すると判定・予測される場合、横断歩道Hに進入する直前になる前に(事前に)携帯端末2から警報が発せられるため、歩きスマホによる交通事故をより効果的に防止することが可能となる。しかも、歩行者Mが赤信号状態の横断歩道Hに進入する直前である場合には、ポップアップと音声メッセージとに加えて、バイブレーションと背景フラッシュとが発生するため、歩行者Mに対してより強く注意を喚起して、交通事故をより効果的に防止することが可能となる。
【0038】
また、歩行者Mがこのまま歩行を続けると赤信号状態の横断歩道Hに進入するか否かを、実測された歩行者Mの歩行速度に基づいて判定するため、歩行速度に個人差があっても、個々の歩行者Mの歩行速度に応じた適正な判定を行うことが可能となる。しかも、最新の測定結果・歩行速度に基づいて判定するため、横断歩道H周辺での歩行速度に基づいて適正に判定を行うことが可能となる。この結果、交通事故をより効果的に防止することが可能となる。
【0039】
一方、歩行者用信号機101そのものを制御しないため、交通が麻痺することがなく、しかも、歩行者用信号機101から信号情報を周囲に送信するだけであるため、構成が簡易で、容易に適用・構成することが可能である。
【0040】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、歩行者Mがこのまま歩行を続けると赤信号状態の横断歩道Hに進入する場合に、ポップアップと音声メッセージとで警報し、歩行者Mが赤信号状態の横断歩道Hに進入する直前である場合に、ポップアップと音声メッセージとに加えてバイブレーションと背景フラッシュとで警報しているが、その他の組み合わせや警報手段で警報してもよい。
【0041】
また、横断歩道Hを渡る途中で歩行者用信号機101が赤信号に変わった場合、あるいは、赤信号に変わると予測される場合に、警報を発する場合もこの発明に含まれる。すなわち、第1に、判定部26において、信号情報と歩行者Mの位置と地図情報とに基づいて、歩行者Mが赤信号状態の横断歩道Hを渡っている途中であるか否かを判定し、渡っている途中であると判定した場合に、警報部27によって警報を発する。第2に、判定部26において、信号情報と歩行者Mの位置と歩行者Mの歩行方向と地図情報と歩行速度とに基づいて、歩行者Mがこのまま歩行を続けると横断歩道Hを渡る途中で歩行者用信号機101が赤信号状態に変わるか否かを判定し、変わると判定した場合に、警報部27によって警報を発する。
【0042】
一方、歩行者Mは、自足で歩行・走行している人に限らず、車椅子などに乗って移動・歩行している人も含まれる。また、携帯端末2がスマートフォンの場合について説明したが、タブレット端末などであってもよい。