【実施例1】
【0046】
図1は実施例1のシュレッダーダスト(ASR又はSR)の処理方法の基本形態を示す作業フロー図である。
実施例1のシュレッダーダストの処理方法は、廃自動車、廃家電製品、廃オフィス家具等の廃棄物を破砕した後に、それらの破砕物から金属、非鉄金属などの有価物を選別した後の通常は産業廃棄物となる有機系残渣(非金属屑)を有用物に変えるものである。
<シュレッダーダストの処理方法の主処理ライン>
実施例1のシュレッダーダストの処理方法は、次の各処理工程を有する。主に破砕工程(S1)と、一次集塵工程(S2)と、鉄分分離回収工程(S3)と、非鉄分分離回収工程(S4)と、金属分分離回収工程(S5)と、風力選別工程(S6)と、破細工程(S7)と、二次集塵工程(S8)と、銅の分離を主目的とするが、燃料化の為の主原料となる「綿状ダスト」と「粒状ダスト」を分離する工程(S11)とを有する処理方法である。
【0047】
この処理方法は、主に第一次、第二次と第三次の各処理工程によりなる処理方法である。この処理方法はシリアルに複数回破砕処理し、シュレッダーダストの粒径を徐々に小さくし、その破砕物から金属、非鉄金属などの有価物を分離した後、更に金属屑を回収し、残りの残渣を産業用の有用物質に加工する処理方法である。
第一次の処理工程としては、
(1)第一次の破砕を行う工程(破砕工程(S1))、
(2)第一次の破砕物から綿状ダストを分離・回収する工程(一次集塵工程(S2))、
(3)第一次の破砕物から金属を分離回収する工程(鉄分分離回収工程(S3)、非鉄分分離回収工程(S4)、金属分分離回収工程(S5))と
(4)第一次の破砕物から綿状ダストを分離・回収する工程(風力選別工程(S6))がある。
第二次の処理工程としては、
(5)第二次の破砕(破細)を行う工程(破細工程(S7))、
(6)第二次の破砕物から綿状ダストを分離・回収する工程(二次集塵工程(S8)と攪拌工程(S9))がある。
第三次の処理工程として、
(7)第三次の破砕(粉砕)を行う工程(粉砕工程(S10))、
(8)第三次の破砕物(粉砕物)から綿状ダストと粒状ダストを分離・回収する工程(綿状ダスト・粒状ダスト分離工程(S11))、
(9)第三次の破砕物(粉砕物)から金属を分離する工程(毛線分離回収工程(S12)、二次金属分分離回収工程(S13)、毛線分離回収工程(S31)、アルミ選別工程(S32))がある。
更に、後述するような、残りの残渣を産業用の有用物質に加工する処理方法から成る。
(10)綿状ダストを固化、炭化、密封して燃料化する工程、
(11)粒状ダストを固化、脱塩、炭化・密封して燃料化する工程、がある。
【0048】
破砕工程(S1)は、廃自動車、廃家電製品、廃オフィス家具等の廃棄物を破砕する処理工程である。この破砕工程(S1)では、後述する破砕機(10)を用いて廃自動車、廃家電製品、廃オフィス家具等の廃棄物を破砕する。破砕物(シュレッダーダスト)の粒径は25mm以下にする。このとき生じた軽量な「綿状ダスト」は吸引回収する。実施例1の処理方法では破砕物について、例えば破砕物(シュレッダーダスト)をスクリュウコンベアのようなコンベアを用いて次工程へ搬送する。破砕物でも軽量な「綿状ダスト」については、例えばパイプを用いた空気搬送により次工程へ搬送することにより、工場内の浮遊ダストをできるだけ少なくする。
【0049】
破砕工程(S1)で処理した破砕物は、次に一次集塵工程(S2)を通して主に「綿状ダスト」を吸塵処理する。この一次集塵工程(S2)では、破砕工程(S1)における破砕物について、例えば振動式ジグザグ管路付集塵装置(20)を用いて浮遊する「綿状ダスト」と「綿状ダスト」より重い破砕物(粒状ダスト)に分離する。重量比で数%の「綿状ダスト」が分離された破砕物は次工程に搬送する。この一次、二次とは同様な処理工程について、その処理の順番を意味する。以下同様である。
【0050】
一次集塵工程(S2)で処理した破砕物は、次に鉄分分離回収工程(S3)で処理する。この鉄分分離回収工程(S3)では例えば吊下げ磁選機付振動コンベア(30)(
図6参照)を用いて一次集塵工程(S2)における破砕物について、鉄分を分離、回収する。更に、マグネットドラムA(40)(
図6参照)を用いて一次集塵工程(S2)における破砕物について、鉄分を分離、回収する。鉄分が分離された破砕物は次工程に搬送する。
【0051】
鉄分分離回収工程(S3)で処理した破砕物は、次に非鉄分分離回収工程(S4)で処理する。この非鉄分分離回収工程(S4)では破砕工程(S1)における鉄分を分離した破砕物について、非鉄分と更に鉄分を分離、回収する。このとき生じた軽量な「綿状ダスト」は吸引回収する。非鉄分が分離された破砕物は次工程に搬送する。
【0052】
非鉄分分離回収工程(S4)で処理した破砕物は、次に一次金属分離回収工程(S5)で処理する。この一次金属分離回収工程(S5)では例えば後述する金属探知機付選別機(エアジェット方式)(60)(
図6参照)を用いて、主に自動非鉄分離機で金属として認知するも、分離できないステンレスやワイヤーハーネスを選別回収する。ステンレスやワイヤーハーネスが選別、回収された破砕物は次工程に搬送する。ステンレスを分離する目的は、破細工程(S7)の破細機の刃を刃欠けや早期摩耗から守る為である。
【0053】
一次金属分離回収工程(S5)で処理した破砕物は、次に風力選別工程(S6)で処理する。この風力選別工程(S6)では例えば後述するV字型風力選別装置(70)(
図6参照)を用いて、浮遊せずに「綿状ダスト」よりも重い為に沈降する破砕物(粒状ダスト)と浮遊する「綿状ダスト」に分離しながら回収する。「綿状ダスト」がある程度分離された破砕物は次工程に搬送する。
【0054】
風力選別工程(S6)で処理した破砕物は、次に破細工程(S7)で処理する。この破細工程(S7)では、風力選別工程(S6)により沈降分離した破砕物について、所定の大きさに破細させる。破砕後の粒径は8mm以下にした。所定の大きさに破細させた破砕物は次工程に搬送する。
【0055】
破細工程(S7)で処理した破砕物は、次に二次集塵工程(S8)で処理する。この二次集塵工程(S8)では例えば上述した振動式ジグザグ管路付き集塵装置(20)を用いて、破細工程(S7)により破細された破砕物について、「綿状ダスト」と「粒状ダスト」とに分離する破砕工程(S1)における破砕物について、その重量のあるものと浮遊する綿ダストとを分離し、「綿状ダスト」を分離、回収する。「綿状ダスト」が重量比で数%分離された破砕物は次工程に搬送する。「綿状ダスト」の比重は、「粒状ダスト」の1/5以下であるので、体積では「粒状ダスト」の5倍の量を吸塵していることになる。
【0056】
二次集塵工程(S8)で処理した破砕物は、次に攪拌工程(S9)で処理する。この攪拌工程(S9)では例えば定量供給機(90)(
図6参照)を用いて二次集塵工程(S8)において塊を形成した破砕物(粒状ダスト)を解すと共に、定量供給機(90)内に投入された時や撹拌により発生する「綿状ダスト」を浮遊させる。その際に浮遊する綿状ダストを分離し、「綿状ダスト」の何%かを分離、回収する。分散された破細物(粒状ダストリッチ材料)は次工程に搬送する。なお、攪拌工程(S9)は、破細物(粒状ダストリッチ材料)を一定の量で均等に排出するので定量供給工程とも称する。
【0057】
攪拌工程(S9)で処理した破砕物は、次に粉砕工程(S10)で処理する。この粉砕工程(S10)では例えばターボミルを用いて攪拌工程(S9)において分散された破砕物(粒状ダスト)を粉砕すると共に、発生する「綿状ダスト」を浮遊させる。粉砕された破砕物(粒状ダスト)は次工程に搬送する。
【0058】
粉砕工程(S10)の次は「綿状ダスト」と「粒状ダスト」とに分離する綿状ダスト・粒状ダスト分離工程(S11)である。この綿状ダスト・粒状ダスト分離工程(S11)では例えば後述する大型のエアテーブル(120)(
図6参照)を用いて上記各処理工程において分離できなかった残りの「綿状ダスト」を分離回収すると共に、「粒状ダスト」を銅分と分離させながら回収する。「綿状ダスト」と銅分が分離された破砕物は次工程に搬送する。
【0059】
綿状ダスト・粒状ダスト分離工程(S11)で処理した破砕物は、次に毛線分離回収工程(S12)で処理する。この毛線分離回収工程(S12)では、毛線分離用円形振動ふるい器(130)(
図6参照)を用いて「粒状ダスト」の中に多く残っている毛線(Hairy Copper)と称される直径0.5mm以下の細い銅線を分離回収する。毛線が分離された破砕物は次工程に搬送する。
【0060】
毛線分離回収工程(S12)で処理した破砕物は、次に二次金属分分離回収工程(S13)で処理する。この二次金属分分離回収工程(S13)では、マグネットドラムB(140)を用いて、銅線から磁性体(主に直径5mm以下の細かな鉄片やステンレスSUS304)を分離しながら回収する。この処理により、シュレッダーダストの主処理ラインの作業が終了する。
【0061】
破砕工程(S1)、一次集塵工程(S2)、非鉄分分離回収工程(S4)、風力選別工程(S6)、そして、二次集塵工程(S8)及び綿状ダスト・粒状ダスト分離工程(S11)において分離・回収した「綿状ダスト」は、後述する「綿状ダスト」処理工程(S21)により処理する。この「綿状ダスト」は主に気泡にアルミの粉塵を含む(表1参照)多孔性ポリウレタン樹脂である。
【0062】
また、綿状ダスト・粒状ダスト分離工程(S11)において分離・回収した「綿状ダスト」は、後述する、毛線分離回収工程(S31)、アルミ選別工程(S32)及び「粒状ダスト」処理工程(S33)により処理する。この「粒状ダスト」は、主にゴム、木材、重量のある硬質プラスチック、塩ビを含むケーブル被覆材などである。
【0063】
<「綿状ダスト」と「粒状ダスト」>
「綿状ダスト」は、表
1の金属元素分析表に示されるように、アルミの含有率が高い材料である。次に含有率が高いのは鉄である。逆に、銅の含有率は非常に少ない。即ち、ポリエチレンや金属元素の中でもアルミや鉄の含有率が高い「綿状ダスト」は、そのままでも高炉や電炉の還元剤(脱酸材)として非常に適した性状を持っていることになる。この金属元素分析は、分析専門の会社が蛍光X線分析装置を使用した定性分析方法により測定した結果である。
【0064】
【表1】
【0065】
「粒状ダスト」は、ポリウレタン、プラスチックなどよりも重い、ゴム、木片屑、シート材、電線の被覆材、塩ビ、アルミなどにより構成される材料である。可燃性塩素を発生させる塩ビを除去又は塩ビの構成成分の中の塩素分を気化させた後で、高周波又は都市ガス燃焼からの熱源を利用した炭化装置を使用して炭又は微粉炭を製造して利用する。炭や微粉炭は、火力発電所や自治体の焼却炉で使用されている石炭や微粉炭の代替燃料や高炉や電炉用の還元剤として、またはガス化改質炉の原料としても使用できる。
【0066】
<シュレッダーダストの処理方法の「綿状ダスト」処理ライン>
図2は実施例1のシュレッダーダストの処理方法における「綿状ダスト」の処理ラインを示す作業フロー図であり、(a)は民生業務用の燃料化処理ライン、(b)は産業用燃料化処理ライン、(c)はコークス製造処理ライン、(d)は消泡材生成処理ラインである。
図3は実施例1のシュレッダーダストの処理方法における「綿状ダスト」の処理ラインを示す作業フロー図であり、(e)は消泡材生成処理ライン、(f)は再生部品原料生成処理ラインである。
破砕工程(S1)、一次集塵工程(S2)、非鉄分分離回収工程(S4)、風力選別工程(S6)、二次集塵工程(S8)及び綿状ダスト・粒状ダスト分離工程(S11)により分離した「綿状ダスト」は回収され、次の各処理工程で処理される。
【0067】
<(a)燃料化処理ラインの構成 民生業務用>
図2(a)で示すように、民生業務用の燃料化処理ラインは、塩素中和剤混合工程(S211)と固化工程(S212)を有する。塩素中和剤混合工程(S211)は、消石灰(水酸化カルシウム)、ハイポ(チオ硫酸ナトリウム)などを用いて綿状ダスト中の塩素を中和する処理工程である。固化工程(S212)は固形燃料として取扱いが容易になるように、ペレタイザー、豆炭製造装置などを用いて綿状ダストを固形化する処理工程である。
これらの処理工程により生成した「綿状ダスト」のペレットや豆炭は、民生用や業務用の暖炉やアウトドアの燃料として使用できる。燃料がなく樹木を燃料にする為に砂漠化しているアフリカ諸国などへODAの援助物資として使用できる。
【0068】
<(b)燃料化処理ラインの構成 産業用>
図2(b)に示すように、産業用の燃料化処理ラインは、ブリケットプレス工程(S213)と密封工程(S214)とを有する。ブリケットプレス工程(S213)は、破砕工程(S1)、一次集塵工程(S2)、非鉄分分離回収工程(S4)、風力選別工程(S6)。二次集塵工程(S8)、撹拌工程(S9)、綿状ダスト・粒状ダスト分離工程(S11)により分離、回収した「綿状ダスト」を、高圧縮して所定の大きさにする処理工程である。密封工程(S214)は、ブリケットプレス工程(S213)により固化されたブリケット状態の「綿状ダスト」を、密封する処理工程である。この密封工程(S214)では、真空密封する真空密封工程とすることも可能である。これらの処理工程により生成した「綿状ダスト」のブリケットは、燃料として用いることができる。石炭の代替品、高炉、電炉用還元剤としても利用できる。
【0069】
<(c)コークス製造処理ライン>
図2(c)に示すように、コークス製造処理ラインは、製紙会社から大量に廃棄される、製紙の際に、セルロースを利用した後の不要副産物であるリグニン(木質素)と「綿状ダスト」を混合するリグニン混合工程(S215)、ブリケットプレス工程(S213)、炭化工程(S216)、そして脱塩工程(S217)及び密封工程(S214)を有する。
リグニン(木質素)を混合した「綿状ダスト」から高炉やキューポラ(溶融炉)で使用されるコークスの代用品を製造する処理ラインである。
【0070】
<(d)転炉用消泡材生成処理ライン>
図2(d)に示すように、転炉用消泡材生成処理ラインは、鉄粉・ミルスケールや粘土・スラグ、砂やASR由来などのガラス、土砂、陶器等の有機・無機物を混合する有機・無機物混合工程(S218)、ブリケットプレス工程(S213)と密封工程(S214)を有する。破砕工程(S1)、非鉄分分離回収工程(S4)、一次集塵装置(S2),風力選別工程(S6)、二次集塵工程(S8)、撹拌工程(S9)、綿状ダスト・粒状ダスト分離工程(S11)により分離、回収した「綿状ダスト」に、鉄粉、ミルスケール、粘土、砂やASR由来などのガラス、土砂などを混合する処理工程である。この有機・無機物混合工程(S218)は、鉄粉、粘土、砂、スラグ、ASR由来などの土砂、ガラス、陶器等の無機物を混合して嵩比重を上げるための処理工程である。ブリケットプレス工程(S213)は、「綿状ダスト」を、高圧縮して所定の大きさにする処理工程である。密封工程(S214)は、ブリケットプレス工程(S213)により固化されたブリケット状態の「綿状ダスト」を、人工ケーシングに密封する処理工程である。これらの処理工程により生成した「綿状ダスト」のブリケットは、転炉用消泡材として利用できる。
嵩比重を上げたり、密封したりする為には、内部を真空にはできないけれども、人工ケーシングの代わりに鉄のパイプや缶詰の中に「綿状ダスト」を詰め込んでから両端を閉める方法もある。このような密封方法は、密封容器自身が嵩比重を上げる効果を生むので、その他の混ぜ物の量が少なくて済む、もしくは不要となるという利点を生む。
【0071】
<(e)転炉用消泡材生成処理ライン>
図3(e)に示すように、消泡材生成処理ラインは、ブリケットプレス工程(S213)、鉄棒挿入工程(S219)と密封工程(S214)を有する。ブリケットプレス工程(S213)は、破砕工程(S1)、一次集塵工程(S2)、非鉄分分離回収工程(S4)、風力選別工程(S6)、二次集塵工程(S8)、撹拌工程(S9)、綿状ダスト・粒状ダスト分離工程(S11)により分離、回収した「綿状ダスト」を、高圧縮して所定の大きさにする処理工程である。鉄棒挿入工程(S219)は、ブリケットプレス工程(S213)により固化されたブリケット状態の「綿状ダスト」の中心に長手方向の穴をブリケットプレス工程(S213)の中で開け、その穴の中に市販の軟鉄の棒を挿入する処理工程である。密封工程(S214)は、ブリケットプレス工程(S213)により固化されたブリケット状態の「綿状ダスト」を、密封する処理工程である。これらの処理工程により生成した「綿状ダスト」のブリケットは、嵩比重も1.8から2程度に上げることが可能であるので、転炉用消泡材として用いることができる。
人工ケーシングによる密閉処理の代わりに、パイプや缶詰の中に軟鉄棒を挿入した綿状ダストを詰めて両端を閉じても良い。その密封方法により生まれる利点は前項の通り。
【0072】
<(f)再生部品原料生成処理ライン>
図3(f)に示すように、再生部品原料生成処理ラインは、微粉砕工程(S2110)と分粒・分級工程(S2111)とを有する。微粉砕工程(S2110)は、綿状ダスト・粒状ダスト分離工程(S11)により分離、回収した「綿状ダスト」を、微粉砕する処理工程である。分粒・分級工程(S2111)は、微粉砕工程(S2110)で微粉砕された「綿状ダスト」を数段階の大きさに分粒、分級する処理工程である。これらの処理工程により生成した「綿状ダスト」のブリケットは、平らに伸ばした後で、表面に熱を掛けて真空断熱材、梱包材、クッション材などの再品材を作ることができる。
【0073】
<「粒状ダスト」処理(a)ライン、石炭製造処理ライン>
図4は実施例1のシュレッダーダストの処理方法における「粒状ダスト」の処理ラインの(a)石炭製造処理ラインを示す作業フロー図である。
図5は実施例1のシュレッダーダストの処理方法における「粒状ダスト」の処理ラインの(b)コークス製造処理ラインを示す作業フロー図である。
綿状ダスト・粒状ダスト分離工程(S11)により分離した、「綿状ダスト」に比較して重量のある破砕物の「粒状ダスト」は回収され、次の各処理工程で処理される。「粒状ダスト」処理ラインは、光学式色選別工程(S311)、アルミ・塩ビ分離工程(S312)、ブリケットプレス工程(S313)、炭化工程(S314)、脱塩工程(S315)と密封工程(S316)を有する。
【0074】
光学式色選別工程(S311)は、綿状ダスト・粒状ダスト分離工程(S11)により分離、回収した「粒状ダスト」からアルミを選別する処理工程である。近赤外線センサー使用のアルミ・塩ビ分離工程(S312)(
図25、
図26参照)は、近赤外線センサーを利用した選別装置により6mm以下の細かな粒体になった塩ビを分離する装置である。ブリケットプレス工程(S313)は、「粒状ダスト」を、高圧縮して所定の大きさにする処理工程である。炭化工程(S314)は炭化して燃料として利用しやすくする処理工程である。密封工程(S316)は、ブリケットプレス工程(S313)により固化されたブリケット状態の「粒状ダスト」を、密封する処理工程である。密封工程(S316)により、石炭の代替品としての燃料として利用できる。更にコークスの代替品としての高炉、電炉用還元剤として利用できる。この密封工程(S316)では、真空密封する真空密封工程とすることも可能である。これで処理作業は終了する。
【0075】
この脱塩工程(S315)は、近赤外線センサーで塩ビが取り切れないで「粒状ダスト」の中に残留していた場合に炭化工程(S314)の途中で発生する塩素ガスを除去する。ナトリウム液使用の脱塩装置の場合は塩素と結合した塩(NaCl)を工業用塩として利用できる。これで処理作業は終了する。
【0076】
<「粒状ダスト」処理(b)ライン、コークス製造処理ライン>
図5(b)のコークス製造処理ラインは、重量のある破砕物の「粒状ダスト」からコークスを製造するラインである。この製造ラインは、還元剤としてのコークスの製造を除いて、アルミ・塩ビ分離工程(S312)とブリケットプレス工程(S313)の間に、「リグニン混合工程(S317)」を追加しただけで、上述の石炭製造ラインと異なる要素はない。リグニン混合工程(S317)は、製紙会社から大量に廃棄される産業廃棄物であり、製紙の際に、セルロースを利用した後の不要副産物であるリグニン(木質素)と「綿状ダスト」を混合する処理工程である。
【0077】
本発明のシュレッダーダストの処理方法では、従来より処理能力アップを拒んでいた最大要因であった「綿状ダスト」の集塵装置の数や集塵能力を増やすことにより、結果的に綿状ダスト・粒状ダスト分離工程(S11)(エアテーブル)に搬送される「綿状ダスト」の量を15〜25%減らすことや、破砕機をターボミルに変更することにより設置面積や設備費用を、ほぼ同程度に保ちながら、プラント全体の処理能力を、これまでの4倍に高めることができる。その他の効果としては、「綿状ダスト」にはポリウレタン、プラスチックなどの軽量有機系可燃物が多く含まれているので、大量に必要とされている石炭の代替品としてまた、高炉や電炉用の還元剤や転炉用の消泡材として利用することができる様になるなど、需要の大きな民生用や産業用の新しい燃料資源を創り出せることである。ゴムやプラスチックや木片屑を多く含む「粒状ダスト」も脱塩や炭化処理をすることで「綿状ダスト」以上の利用法(炭、微粉炭、コークス製造等)が生まれる。尚、この方法でシュレッダーダストを処理すると、それらの中に含まれる無機系ガラスや土砂や陶器類は、ターボミルにより粉砕され、粉体となってポリウレタンの気泡の中に入り込む。最終的には製鋼過程の副産物として産出されるスラグとなる。スラグは、既にコンクリートの骨材などに利用されているので、
実際にはガラス、土砂、陶器などは埋立処分が必要な残渣とはならない。
この様な処理法により、無機系残渣を埋立処分場まで運送する運送費用や車両購入費用、そして埋立処分費用が不要になるので、大きな経費削減効果が生まれる。その上、許認可の分野においても、土砂、ガラス屑を取り扱う業者としての免許を別途取得する必要がないというメリットも生まれる。
【実施例2】
【0078】
<シュレッダーダストの処理装置の構成>
図6は実施例2のシュレッダーダストの処理装置の基本形態を示すブロック図である。
シュレッダーダストの処理装置の基本形態について説明する。
実施例2のシュレッダーダストの処理装置は次の各装置、設備により構成される。主に破砕機(10)、振動式ジグザグ管路付集塵装置(20)、吊下げ磁選機付振動コンベア(30)、マグネットドラムA(40)、自動非鉄分離機(50)、金属探知機付選別機(60)(エアジェット方式)、V字型風力選別装置(70)、破細機(80)、振動式ジグザグ管路付集塵装置(20)と定量供給機(90)から成る処理装置である。上述の装置は、この順番で配置されている。
【0079】
更に、定量供給機(90)の次に、大型ターボミル(100)、サイクロン(110)、大型エアテーブル(120)の順番に配置されている。大型エアテーブル(120)の次に、銅分が含まれるものは、毛線分離用振動ふるい器(130)、マグネットドラムB(140)(小ネオジウム系)の順番に配置されている。一方、大型エアテーブル(120)の次に、粉砕物(粒状ダスト)が含まれるものは、毛線分離用振動ふるい器(130)、アルミ選別用エアテーブル(150)の順番に配置されている。
【0080】
一方、破砕機(10)、振動式ジグザグ管路付集塵装置(20)、自動非鉄分離機(50)、V字型風力選別装置(70)、破細機(80)、定量供給機(90)、サイクロン(110)、大型エアテーブル(120)から分離回収された「綿状ダスト」は、例えばバグフィルター付集塵装置(160)により回収する。その後、後述する「綿状ダスト」処理ラインの各処理装置で処理される。
【0081】
<破砕機の構成>
図7は破砕機の回転刃と固定刃の概略構成図を示し、(a)は正面図であり、(b)は回転刃とホルダーの拡大図である。
破砕機(10)は、上述した破砕工程(S1)に用いる処理装置であり、廃棄物を所定の大きさに破砕する装置である。図示例の破砕機(10)は、一軸のローター(101)に回転刃(102)を取り付け、本体側(103)に固定刃(104)を取り付けたものである。この回転刃(102)と固定刃(104)との間に廃棄物を挟み、破砕する。図示するように、四角形の大きな刃の半分の三角形状部分を使用するというようになっている。この回転刃は、厚みが25mmあるので15mmの厚さになるまで2〜3mmづつ複数回の再研磨が可能である。破砕に使用するのは、四角形の半分の△部だけであるので、研磨までの寿命も対角側の▽部を使用してからということになる。つまり、一枚の刃の寿命は、厚みや二辺の長さや材質が同じであるとしても、三角形刃の二倍あることになる。
シュレッダーダスト、特にASRや廃オフィス家具の椅子からのSRなどは、金属片と同時に柔らかでスプリングバックのあるポリウレタンやプラスチックなどが金属と共に多く含まれている嵩高材料なので生産量をなかなか上げられない材料であるという特徴を持つ。
【0082】
破砕機(10)の回転刃(102)の長辺の角は90度になり、回転刃(102)と固定刃(104)の各三角状の部分が噛み合うように配置し、材料を切断又はせん断する。この破砕機(10)の回転刃(102)は、刃の切断面の角度は刃欠けを起こしにくい90度であるものの、下向き三角形状をしてローター(101)のホルダーに取り付けられているので、固定刃(104)はこの三角形状の刃先を複数並べたものであり、この並んだ三角形状の刃先の間に材料を押し付けるようにして切断する。
【0083】
本発明の破砕機(10)は、各回転刃(102)はローター(101)の長手方向に直線状に取り付けるのではなく、そのローター(101)の長手方向に弓状に並べた。ローター(101)の回転方向の両端の回転刃(102)が、先ず直線状の各固定刃(104)に噛合し、破砕物が逃げないようにして、次にローター(101)の中央部分の回転刃(102)が直線状の各固定刃(104)に噛合するようになっている。
【0084】
この破砕機(10)による切断方法は、ポリウレタン、プラスチックのような柔らかでスプリングバックする材料でも、鋭角な回転刃(102)の先端が柔らかな材料でも逃がさずに巻き込むので効率良く切断することができる。また、従来のように回転刃の各刃先が直線状に並び、同じく固定刃の各刃先が直線状に並らんだもので、平行に噛み合う従来の破砕機に比較して、本発明の回転刃(102)と固定刃(104)の噛み合わせる構成が異なることにより、一度の切断で従前の破砕機よりも細かく破砕できるという利点がある。尚、投入材料の破砕効率は、下部格子の穴の大きさ(25mm径)だけでなく刃の形状や大きさに大きく影響される。本発明で使用する刃の形状は、できるだけ細かく破砕する為に80×80×25mmである。
【0085】
本発明の破砕機(10)の回転刃(102)は、
図7(b)に示すように、ローター(101)に取り付けた、逆L字形状のホルダー(105)に直方体の四辺の二辺を固定できるので、刃の固定や交換はボルト(106)が1本のみで行える。このような構成により、刃替えの作業は著しく容易になるだけでなく、刃の位置替えや交換にかかる時間を大幅に短縮することができる。従来の破砕機では、回転するローター(101)の上に作業者が載って刃の交換作業を行っていたが、本発明で使用されている破砕機(10)の場合には、作業者はハウジングを開放したら現れるプラットフォームに立って、ローター(101)を手で回転しながら刃の交換を迅速かつ安全に行なうことができるという利点がある。これは、設置後のメンテナンスの際に威力を発する。
【0086】
ASRを含むSRにはステンや合金鋼などの固い金属片が多く入っているので、刃先が容易に欠けない(所謂、飛ばない)様に90度である方が良い。交換頻度の高い回転刃や固定刃の交換が容易であるということは、破砕機の保守管理にとって非常に重要な要素である。
【0087】
<振動式ジグザグ管路付き集塵装置の構成>
図8は振動式ジグザグ管路付集塵装置を示す概略構成断面図である。
振動式ジグザグ管路付き集塵装置、振動型集塵装置(20)は、上述した綿状ダスト・粒状ダスト分離工程(S11)に用いる装置である。振動式ジグザグ管路付集塵装置、振動型集塵装置(20)は、破砕機(10)により粉砕された破砕物を供給する供給口(201)と、この供給口(201)の上方に向けて配置された吸引管路(202)と、この吸引管路(202)の途中に、「綿状ダスト」以外の破砕物を蹴落とす目的で付けられた回転羽根等の邪魔部材(203)と、供給口(201)の下方に向けて配置された管路に複数の折れ曲がり個所を有するジグザグ管路(204)と、この装置全体を振動させる振動発生手段(205)となる振動発生用ダンパーと、を有する装置である。
【0088】
振動式ジグザグ管路付き集塵装置、振動型集塵装置(20)は、供給口(201)から供給された破砕物のうち軽量な「綿状ダスト」は吸引管路(202)に吸引されて集塵機へ吸引される。反対に、緩やかな上昇気流に乗り上方に上がって行った「綿状ダスト」よりも、少し重い破砕物は邪魔部材(203)により下に落とされて他の重量ダストと共にジグザグ管路(204)の下部に沈降して重量ダストはコンベア(206)で次工程に搬送される。
【0089】
ジグザグ管路(204)は、振動発生用ダンパー(205)により上下、左右に微振動する。この振動式ジグザグ管路付集塵装置、振動型集塵装置(20)は、ポリウレタンに絡まったワイヤーハーネスをできるだけ取り去り、他の重量ダストをジグザグ管路(204)の下方に落下させながら、次の工程に送り、ASRやSRの量を減らすボリウムリダクション(量的軽減)の効果がある。またジグザグ管路本体(204)と、その上部の吸引管路(202)とは、ゴム製で伸縮性のある“じゃばら”型の連結具(208)で結合されている。これは、ジグザグ管路(204)の振動が上部の固定された部位に伝わらない様にする為である。
【0090】
ポリウレタン、プラスチックなどで構成される「綿状ダスト」は、ジグザグ管路(204)内を落下しながら、ジグザグ管路(204)内の壁へ衝突し、ジグザグ管路(204)自体の微振動により被覆銅線(ワイヤーハーネス)や細かな重量物はポリウレタンから外れ軽量になる。軽量になったポリウレタンは吸引管路(202)から集塵装置に吸引される。
【0091】
ジグザグ管路(204)の上部に位置する吸引管路(202)と接続する部位には、十字型の風車型の邪魔部材(203)を取り付け、下から上がってくる「綿状ダスト」に刺さっている塩ビの被覆の付いた銅線や毛線を叩き落とし、塩ビや銅が集塵機へ行かないようにする機能がある。
集塵装置に繋がる吸引管路(202)には、風量調整弁(ダンパー)(207)(
図6参照)を取り付け、ワイヤーハーネスが絡んでいるポリウレタンが集塵装置に吸われない様にダクト外部から風量=吸引能力を手動で調整できるような構造になっている。
【0092】
更に、ジグザグ管路(204)の底から超音波を落下するASRに向けて照射するように構成することも可能である(図示せず)。ポリウレタンに刺さっているワイヤーハーネスが剥離しやすくなる様にジグザグ管路を落下する落下物に向けて、ジグザグ管路(204)の下部、もしくは側面から超音波を一次破砕されたASRに向かって照射するように構成することも可能である。
【0093】
振動式ジグザグ管路付き集塵装置(20)の次に吊下げ磁選機付振動コンベア(30)を配置する。この吊下げ磁選機付振動コンベア(30)では、破砕物は振動しながら次のマグネットドラムA(40)に搬送される。吊下げ磁選機付振動コンベア(30)上には吊下げ磁選機が設けられており、この吊下げ磁選機で破砕物(シュレッダーダスト)から鉄分が分離される。
【0094】
マグネットドラムA(40)では、残りの破砕物は、更に磁力により鉄分が分離される。次に、破砕物は自動非鉄分離機(50)に搬送される。
【0095】
<自動非鉄分離機の構成>
図9は自動非鉄分離機を示す概略構成図である。
自動非鉄分離機(50)は、図示するようにネオジム系の同極磁石を使用した40ポールの自動非鉄分離機である。この自動非鉄分離機(50)の性能は、N極(501)とS極(502)を順番に円周上に並べた分離機である。非鉄分離機は、同極磁石の数が増えれば増える程選別能力は上がると同時に、細かな非鉄でも分離できるようになる。分離可能サイズは、従来の24ポールで5mm径までであった、図示例の40ポールでは1mm前後の非鉄屑まで分離可能である。
自動非鉄分離機(50)では、非鉄金属をできるだけ多く分離することと、次の処理措置でステンレスを分離することにより、破細機(80)やターボミル(100)の刃欠けや摩耗をかなりの程度減らす効果が生まれる。
【0096】
<金属探知機付選別装置の構成>
図10は金属探知機付選別装置のエアジェット噴出装置を示す拡大概略構成図であり、(a)は本発明のエアジェット噴出装置、(b)は比較のための従来のエアジェット噴出装置である。
金属探知機付選別装置(60)は、金属探知機とエアジェット噴出装置を組み合わせた装置である。このエアジェット噴出装置(60)はパイプ(601)にノズル(602)を従来のものに比較してノズル同士の距離を12.5mmと従来の半分の距離に短くした。図示するように、従来の選別装置の横に並んだエアジェトのノズル(602)の幅は25mmであったが、本発明のエアジェット噴出装置(60)は、12.5mm幅である。本発明の金属探知機付選別装置(60)によれば、より細かに金属を取り去ることができるので、それ以降の破細機やターボミルなどの高速破砕機の負荷や刃の摩耗速度を減らす効果がある。
【0097】
<V字型風力選別装置の構成>
図11はV字型風力選別装置を示す概略構成断面図である。
金属探知機付選別装置の次にV字型風力選別装置(70)を配置する。このV字型風力選別装置(70)は、下方から上方に向けて気流が流れる管路本体(701)と、この管路本体(701)の途中に分岐された分岐管(702)を有する。この分岐管(702)の上方をロータバルブの回転により開閉する投入口(703)から破砕物は投入される。この投入口(703)と分岐管(702)の間に、管路本体(701)の気密性を維持するように取り付けられた大型のロータリーバルブ(704)を有する。このロータリーバルブ(704)即ち回転羽根は破砕物を管路本体(701)内に巻き込む際に、V字型風力選別装置(70)内の気圧が下がらない様にしながら落とし込む役割を担う。分岐管(702)の下部より吹き上がる風力を利用して、シュレッダーダストの中のポリウレタン、プラスチックなどの軽い材料を分離することができる。このV字型風力選別装置(70)により、次工程に流れるポリウレタンやプラスチックなどの嵩高材料の量を15〜25%減らすことができるので、次工程以降のターボミルやエアテーブルに掛かる負荷をかなり減らす効果がある。
【0098】
V字型風力選別装置(70)の管路本体(701)の下部には、重量のある破砕物(粒状ダスト)を沈降させ、排出させる下部排出口(705)を有する。管路本体(701)の上部には、「綿状ダスト」を排出させる上部排出口(706)を有する。
【0099】
V字型風力選別装置(70)は、管路本体(701)の上部排出口(706)から「綿状ダスト」を吸引することにより、投入口(703)から投入された破砕物のうち軽量な「綿状ダスト」は管路本体(701)の分岐管(702)から上方部排出口(706)に吸い上げられる。一方、重量のある破砕物は気流に抗して沈降し、管路本体(701)の下部排出口(705)に落下する。
【0100】
V字型風力選別装置(70)は、投入口(703)に破砕物を投入する際に、ロータリーバルブ(704)が管路内の気密性を維持しているので、管路本体(701)内に乱気流が発生することがなく、「綿状ダスト」は管路本体(701)の上部に、破砕物(粒状ダスト)は管路本体(701)の下部に円滑に分離され、それぞれ次の処理装置に移動させることができる。
【0101】
<破細機の構成>
このV字型風力選別装置(70)の次に破細機(80)を配置する。この破細機(80)では、破砕機(10)で25mm以下に破砕された材料から金属類を取り除いた後の材料を、更に8mm以下に破砕する為の機械装置である。
【0102】
このV字型風力選別装置(70)、破細機(80)の次に、上述した振動式ジグザグ管路付き集塵装置(20)を配置する。この振動式ジグザグ管路付き集塵装置(20)では、破細物中の「綿状ダスト」と、その他の「綿状ダスト」よりも重いダストや材料を分離する。
【0103】
<定量供給機の構成>
図12は定量供給機を示す概略構成断面図である。
V字型風力選別装置(70)、破細機(80)の次に、撹拌工程(S9)に用いる定量供給機(90)を配置する。この定量供給機(90)は、水平に回転する高速攪拌羽根(901a)と、この高速攪拌羽根(901a)の下部に同じく水平に回転する低速攪拌羽根(901b)を有する円筒形状の円筒本体(902)を有する処理装置である。高速攪拌羽根(901a)は例えばチェーンなどの羽根からなり、主に綿状ダストとこれより重いダストを攪拌する機能を有する。低速攪拌羽根(901b)は主に重いダストを排出する機能を有する。
円筒本体(902)には、この円筒本体(902)の周囲かつ上部に設けられた、破砕物を投入する投入口(903)と、この円筒本体(902)の上部に上方へ向けて開口する、破細物のうち軽量な「綿状ダスト」を排出する上部排出口(904)と、円筒本体(902)の周囲かつ下部に設けられた、分離された「綿状ダスト」より重い破細物を排出する下部排出口(905)と、を有する処理装置である。更に、投入口(903)と上部排出口(904)との間に、「綿状ダスト」よりも重いダストが上部排出口(904)から吸引されない様にする仕切り板(906)が設けられている。
【0104】
この定量供給機(90)では、投入口(903)に破細物が投入されると、上部の高速攪拌羽根(901a)で破細物が攪拌される。重量の軽い「綿状ダスト」は浮遊し、上部排出口(904)から吸引すると、円筒本体(902)の周囲に開けた小さな穴の空気口(907)から吸引された空気と共に「綿状ダスト」は上部排出口(904)に吸引排出される。一方、重量のある破砕物(粒状ダスト)は浮遊することなく、下部の低速攪拌羽根(901b)の回転により下部排出口(905)に排出され、それぞれ次の処理装置に移動させることができる。
この定量供給機(90)は、ジグザグ管路付集塵装置(20)同様に、後ラインへ行く「綿状ダスト」の量を減らすための処理装置である。
【0105】
<ターボミルの構成>
図13はターボミルの内部を示す概略構成断面図である。
定量供給機(90)の次に、粉砕工程(S10)に用いるターボミル(100)を配置する。これは従来の破細機をターボミルに変更することにより、1時間当たりの処理能力/台を、これまでの1.5トン/時間の2倍に相当する3トン/時間に大幅に増加させることができる。このターボミルを二基設置すれば、1時間の処理量は6トンとなるので、1日7時間稼働した場合の処理量は42トン/日となる。すると、一カ月(25日)に1,000トンを処理できることになる。モーター馬力は、従来の破砕機が160kW/基、本発明のターボミル(100)が132kW(83%)と左程変わらないが、処理量には2倍の差があるので1kgの破砕・粉砕処理に掛かる電気量は1/2.5に下がる。このターボミル(100)は、CO
2削減効果がある。
【0106】
従来では6mm以下にする為に使用していた破細機を、高速回転のターボミルに変更し処理能力を2倍に上げた。回転刃は先行特許のものより小ぶりになるが、金属屑などにより刃先が飛んだり、早期摩耗が発生したりしない様に先行特許と同じ刃先が90度の角度の羊羹の形をした直方体のものを使用する。シュレッダーダストの粉砕は、その回転刃(1001)とターボミル(100)の本体内部の内壁の凹凸(1002)の摩擦により行われる。 粉砕の粒度は、回転刃とターボミルの内壁の凹凸の間隔(クリアランス)を調整することにより行う。従来の破砕機(330回転/分)と、当該ターボミル(1,500回転/分)との生産能力の差異は、車に例えるなら普通車とターボエンジンを搭載したF1のレースカー程の差異がある。このタイプのターボミル(粉砕機)を、シュレッダーダストの粉砕へ使用するのは本発明の発明者が世界で初めてのことである。
【0107】
<サイクロンの構成>
図14はサイクロンを示す概略構成断面図である。
ターボミル(100)の次に、「綿状ダスト」を更に回収するためにサイクロン(110)を配置する。このサイクロン(110)は、図示するような構成のものを用いた。これにより重量のある破砕物は下方に沈降し、浮遊する「綿状ダスト」は上部に回収されメイン集塵機(160)へ送られる。このサイクロン(110)は、本発明の処理装置の中で「綿状ダスト」を他の集塵装置同様に、エアテーブル(120)の負荷を減らす為にできるだけ多く除去する役割を担っている。サイクロンの下部に取り付けてあるロータリーバルブは、「綿状ダスト」よりも重量の重い銅、アルミ、鉄等の金属屑やその他の「粒状ダスト」がサイクロン下部から排出される際に、サイクロンの内部に外気が入り込んで、吸塵能力を落とさぬようにする為の装置である。
【0108】
<大型のエアテーブルの構成>
図15はエアテーブルを示す概略構成断面図である。
サイクロン(110)の次に、銅、アルミ、鉄や上述した綿状ダスト・粒状ダスト分離工程(S11)に用いる大型のエアテーブル(120)を配置する。この大型のエアテーブル(120)では各処理装置において分離できなかった「綿状ダスト」を分離回収すると共に、「粒状ダスト」も同時に分離回収する。上部に吸引口(1201)とその近傍に粉砕物投入口(1202)を有する、台形状のフード(1203)と、このフード(1203)の下方に多数に噴射口(1204)を開けたエアテーブル(1205)を傾斜した状態で配置し、このエアテーブル(1205)の噴射口(1204)から上方へ空気を噴射させながらエアテーブル(1205)を振動させる。このエアテーブル(1205)面に粉砕物を落下させると、重量のある銅は傾斜したエアテーブル(1205)の傾斜上側に、銅より軽い「粒状ダスト」は傾斜したエアテーブル(1205)の傾斜下側に移動させることができる。浮遊する「綿状ダスト」は吸引口(1201)から吸引されメイン集塵機(160)に回収される。
【0109】
<毛線分離用円形振動ふるい器の構成>
図16は毛線分離用円形振動ふるい器を示す一部切り欠いた概略構成図である。
大型のエアテーブル(120)の次に、上述した毛線分離回収工程(S12,S31)に用いる毛線分離用円形振動ふるい器(130)を配置する。毛線分離用円形振動ふるい器(130)は、「粒状ダスト」の中にはまだ細い銅線(毛線:Hairy Copper)が多く残っているので、その毛線を他の「粒状ダスト」から分離する装置である。
【0110】
この毛線分離用円形振動ふるい器(130)は、漏斗形状のふるい器本体(1301)の上部投入口(1302)から下方へ連続する円筒部(1303)の途中に1種類の細かな目の金網(1304a)の下に金属板(1304b)が張られている。この金網(1304a)と金属板(1304b)の間に複数のステンレス製の球形振動子(1305)が自由に跳ねられる状態で挟まれている。金網(1304a)のメッシュ穴の径を変えて、銅の太線と毛線、または「粒状ダスト」と毛線とに分離し、ふるい器本体(1302)の側面排出口(1306)及び側面排出口(1307)から排出する。尚、金網のメッシュの大きさを変えて複数枚又は複層になるように取り付けて、毛線の太さを更に分けることも可能である。振動発生装置は、ふるい器本体(1301)内部に設置されている。
【0111】
このふるい器本体(1301)の振動に合わせて振動子(1305)が金網(1304a),金属板(1304b)の間で上下に激しく跳ねることにより、金網(1304a)のメッシュの穴に目詰まりが起こらないようになっている。
【0112】
<ネオジム系マグネットドラムの構成>
図17はネオジム系マグネットドラムを示す概略構成図であり、(a)は正面図、(b)は断面図である。
毛線分離用円形振動ふるい器(130)の次に、ネオジム系マグネットドラム(140)を配置する。銅の太線に混入する鉄片は、薄く延ばされた形状をしているものの銅の直径より少し大きい(米粒の半分位の大きさ)ので、通常の磁力のマグネットドラムでは取り切ることができない。そこで、このネオジム系マグネットドラム(140)は、円筒状のロール本体(1401)の長手方向に4カ所にネオジム系マグネット(1402)を張り付け、このネオジム系マグネット(1402)の間にロール本体(1401)の長手方向に4カ所に突状(1403)を形成したものである。銅の太線に混入している鉄片をドラムに吸着させたまま、マグネットドラム(140)の下に巻込みやすい構成になっている。鉄片をマグネットドラム(140)の下方向に巻込むことにより、銅はマグネットドラム(140)の前方へ、鉄片はマグネットドラム(140)の下のベルトコンベア(図示せず)に落とすことができる。
【0113】
<「綿状ダスト」処理ラインの処理装置の構成>
図18は「綿状ダスト」の処理ラインの処理装置の基本形態を示すブロック図であり、(a)は民生業務用の燃料化処理ラインであり、(b)は産業用の燃料化処理ラインであり、(c)はコークス製造処理ラインである。
図19は「綿状ダスト」の処理ラインの処理装置の基本形態を示すブロック図であり、(d)は消泡材生成処理ライン、(e)は消泡材生成処理ライン、(f)は再生部品原料生成処理ラインである。
図20は産業用の燃料化処理ラインで使用されるブリケットプレス機を示す概略構成図である。
図18(a)に示すように、民生業務用燃料化処理ラインに使用される処理装置は、「綿状ダスト」と脱塩剤と混合する混合機(210)と小さく固化するペレタイザー(220)とから成る。
【0114】
民生業務用は、塩素を中和する目的で消石灰やハイポを「綿状ダスト」に混合し、家庭用の暖房器具やアウトドアでの燃料に使用できる様に親指ほどの大きさに固化する。強い粘着性バインダー(結束剤)を「綿状ダスト」に混合することにより、固化装置として、ペレタイザー(220)の他に豆炭製造機を使用することも可能である。
【0115】
図18(b)が示すように、産業用燃料化処理ラインはブリケットプレス機(230)と密封装置(240)とから成る。必要とされる量が民生業務用とは比較にならないほど多い産業用は、自ずと固化用のブリケットプレス機(230)は大型になる。材質に変化が起こらない様に、また荷扱いがしやすい様に固化された材料を密封する。産業用ブリケットプレス機(230)と密封装置(240)は、
図20に示すような順番で配置されている。ブリケットプレス機(230)は、上述した処理装置により分離、回収した「綿状ダスト」を、回転するフライホイールの力を圧縮力に変えて材料を叩く様にして所定の大きさに固化する処理装置である。密封装置(240)は、ブリケットプレス機(230)により固化された「綿状ダスト」を人工ケーシングや鉄パイプ、空缶などに密封する処理装置である。この密封装置(240)で、人工ケーシングを使用する場合には、ブリケットプレス機(230)の材料圧縮力を利用する形で、「綿状ダスト」を人工ケーシングの中にきつく詰めた後に真空密封する機能を追加することも可能である。これにより生成した「綿状ダスト」の密封ブリケット製品は、石炭の代替品として、または高炉、電炉用還元剤として利用できる。
【0116】
<ブリケットプレス機の構成>
図21は産業用の燃料化処理ラインで使用されるブリケットプレス機を示す概略構成図である。
「綿状ダスト」固形化に使用するブリケットプレス機(230)は、
図21に示すようにメカ式ブリケットプレスと称され、油圧モーターを使用せずに、電気モーター(2301)で回転するフライホイール(2302)の力を利用してハンマーを材料に高速で打付ける様にして圧縮・固化する処理装置である。このメカ式ブリケットプレス機(230)を使用する理由は、電気モーター(2301)の電気エネルギー消費量が、油圧式スクリュウ圧縮型ブリケットプレス機の約1/3と安価であるからである。CO
2排出量も油圧式スクリュウ圧縮型ブリケットプレスよりも、同程度に低いことになる。その上、油圧式スクリュウ圧縮型ブリケットプレスの場合には、スクリュウなどの摩耗部品や油圧部品の交換やメンテナンスに費用が嵩むという欠点もある。
【0117】
ブリケットプレス機(230)は、通常は、廃木材や製紙スラッジまたは硬質廃プラなどの有機系材料を燃料用に固化する目的で使用される機械装置である。本発明では、この機械装置を破砕/破細/粉砕されていてもスプリングバック(戻り力)の強いポリウレタン、プラスチックなどの綿状ダストの固化に使用している。その為、最終ブリケット製品の嵩比重が低いという欠点は避けられない。その欠点を補足する為に、次の密封装置(240)を用いて、ブリケットプレス機(230)で固化した「綿状ダスト」を型崩れしない様に円筒形の人工ケーシング(通常、サラミやハムの外皮に使用される)に挿入して空気を抜いたあと両端をアルミ線で閉じたパック型(又は、真空パック型)にする。
【0118】
<密封装置の構成>
密封装置(240)は、
図20に示すようにブリケットプレス機(230)で圧縮した「綿状ダスト」の型崩れを防ぐ役割も担っている。密封装置(240)では、搬送パイプの途中で所定の径(例えば、直径70〜85mmほど)の人工ケーシングの中に固形化した同ダストをブリケットプレス機の材料搬送力を利用して挿入した後に、そのケーシングの両側をアルミの留め金できつく絞める。密封装置(240)の真空パックと自動留金クリッピング装置(通称クリッパー)によって「綿状ダスト」は更に圧縮・固化されるので、製鋼メーカーが要求する強度基準である5mの高さから落としても欠けたり飛び散ったりすることはない。
【0119】
同時に、真空パック故にケーシングの中は無酸素状態となるので、在庫中に自然発火する危険性は極めて低くなるというメリットも生まれる。人工ケーシングの代わりに薄いパイプや空き缶などの鉄製品を人工ケーシングとして使用することも可能である。真空度は低くなるが、嵩比重を上げたり、圧縮製品の強度を強くしたりする効果がある。
【0120】
<「綿状ダスト」(c)コークス製造処理ラインの処理装置の構成>
コークス製造処理ラインの処理装置は、
図18(c)に示すように、「綿状ダスト」とリグニンを混合する混合機(210)、ブリケットプレス機(230)、炭化装置(250)、脱塩装置(260)、及び密封装置(240)から成るコークス製造ラインである。
【0121】
<「綿状ダスト」(d)転炉用消泡材処理ラインの処理装置の構成>
消泡材生成処理ラインは、
図19(d)に示すように、主に鉄粉、粘土、砂、スラグ、ASR由来などの土砂、ガラス、陶器等の無機物とASRなどのシュレッダーダストを嵩比重が1.8〜2.0になる様に調整しながら混合する無機物混合機(270)、ブリケットプレス機(230)と密封装置(240)から成る処理装置である。この順番に配置されている。この無機物混合機(270)は、鉄粉、粘土、砂、スラグ、ASR由来等の土砂、ガラス、陶器等の無機物を混合して嵩比重を上げるための処理装置である。ブリケットプレス機(230)は、上述した処理装置により分離、回収した「綿状ダスト」を、高圧縮して所定の大きさにする処理装置である。密封装置(240)は、ブリケットプレス機(230)により固化されたブリケット状態の「綿状ダスト」を、密封する処理工程である。これにより生成した「綿状ダスト」のブリケットは、上述の添加物により嵩比重が2以上になる為に転炉用消泡材として利用できる。
【0122】
<「綿状ダスト」(e)転炉用消泡材処理ラインの処理装置の構成>
2番目の消泡材生成処理ラインの処理装置は、
図19(e)に示すように、ブリケットプレス機(230)と密封装置(240)、から成る処理装置である。この処理ラインでは、ブリケットプレス機(230)で所定の大きさの円筒形に固化した「綿状ダスト」の嵩比重を1.8から2に上げる為に、長手方向に向かって固化した製品の中心に鉄棒を挿入する。これにより生成した「綿状ダスト」のブリケットは転炉用消泡材として用いることができる。尚、鉄棒を挿入する穴は、本発明で使用するブリケットプレス機(230)により自動成型することができる。
【0123】
ここでブリケット状態(固化状態)の「綿状ダスト」に市販の鉄棒を切断したものを挿入する理由は、上述の通り嵩比重を上げるためである。なお、ここで使用する鉄棒は、ショットブラスから発生する鉄粉や電炉や高炉から排出される性状や成分が一定しない鉄粉とは異なる。例えば、直径10
〜20mm、長さ50
〜200mmのJIS規格に沿って製造された規格品の軟鋼を用いる。このようにJIS規格に基づいて製造された鉄棒を消泡材の比重を高める材料として使用した場合には、「綿状ダスト」の最終成分がより明確になるために、生成した最終ブリケット製品の品質も、製鋼メーカーはある程度計算できるという利点がある。
【0124】
また、このようにして生成したブリケット製品は鉄棒の場合には、産業廃棄物には望めない安定した価格で必要な量だけ希望時に確保できる。最終製品の比重の制御も、簡単かつ正確に行える。ケーシングの中から空気を抜き去るので、本発明の消泡材の場合には、ケーシングの内部が真空状態に近い状態である。貯蔵していても発熱反応により火災を起こす心配がない。なお、固形化された「綿状ダスト」の中に挿入される鉄棒の太さや長さは、必要に応じて変更できる。
【0125】
転炉用消泡材に必要な一番目の要素は、高カロリーである。「綿状ダスト」のカロリー数は、前述の通り凡そ7,000キロカロリー/kg前後である。次に消泡材に必要な要素は、1.8以上の嵩比重である。「綿状ダスト」は、ダイオキシン発生原因となる可燃性塩素分も0.5%以下(同0.34から0.71%)、銅分の含有量も0.5%以下と既に低いが、排気の急速冷却後に脱塩装置(260)やナトリウム水を通すことにより、更に可燃性塩素分を低くする(0
.3%以下:RPF A品相当)ことができる。
【0126】
現在、有効利用されずに焼却・埋立処理されている産業廃棄物は、ポリウレタン屑を、本発明の投入材料と共に本発明の破砕・選別・吸塵処理工程を通すことにより、「綿状ダスト」の最終的な品質の劣化を伴わないで可燃性塩素分を0.3%以下に下げることができる。
【0127】
<「綿状ダスト」(f)再生部品原料生成処理ラインの処理装置の構成>
再生部品原料生成処理ラインは、
図19(f)に示すように、主に微粉砕機(280)と分粒装置、分級装置(290)から成る処理設備である。この順番に配置されている。この微粉砕機(280)は、「綿状ダスト」を微粉砕する処理装置である。分粒装置及び分級装置(290)は、微粉砕機(280)で微粉砕された「綿状ダスト」を数段階の大きさに分粒、分級する処理装置である。これにより生成した「綿状ダスト」は、真空断熱材、梱包材、クッション材、再生部品材として利用できる。
【0128】
<「粒状ダスト」の処理装置の構成>
図22は「粒状ダスト」処理ラインの処理装置の基本形態の(a)石炭製造処理ラインを示すブロック図である。
図23は「粒状ダスト」処理ラインの処理装置の基本形態の(b)コークス製造処理ラインを示すブロック図である。
図24は各処理装置の一配置例を示す側面図である。
<「粒状ダスト」(a)石炭製造処理ラインの処理装置の構成>
(a)石炭製造処理ラインの処理装置は、
図22(a)に示すように、主に巡回式光学色選別装置(310)、近赤外線センサー選別装置(320)、ブリケットプレス機(330)、炭化装置(340)、脱塩装置(350)と密封装置(360)から成る処理装置である。
図24に示すように、この順番に配置されている。巡回式光学色選別装置(310)は、「粒状ダスト」からアルミを選別する処理装置である。ブリケットプレス機(330)は、上述した処理装置により分離、回収した「粒状ダスト」を、圧縮して所定の大きさにする処理装置である。炭化装置(340)は、「粒状ダスト」を炭化して燃料として利用しやすくする処理装置である。
但し、巡回式光学色選別装置(310)でアルミ屑を取り除いた後で、近赤外線センサーを使用したエアジェット使用の近赤外線センサー選別装置(320)を通して塩ビを取り除いた「粒状ダスト」は塩素分を含まない、もしくは塩素分がごく僅かになるので、「綿状ダスト」の集積場に搬送して、綿状ダストと混合して各種燃料に加工することもできる。
【0129】
密封装置(360)により、石炭の代替品としての燃料として利用できる。更に高炉、電炉用の還元剤として利用することもできる。この密封装置(360)では、真空密封する真空密封装置とすることも可能である。これで処理作業は終了する。
【0130】
また、炭化装置(340)により処理された「粒状ダスト」は、塩素を含むときは脱塩装置(350)により除去し、ナトリウム液使用の場合は工業用塩として利用できる。
【0131】
<材料巡回回路付光学色選別装置の構成>
図25は材料巡回回路付光学色選別装置の概略を示す側面図である。
図26は材料巡回回路付光学式色選別装置の概略を示す平面図である。
図示するように材料巡回回路付光学色選別装置(巡回式光学色選別装置)(310)は、アルミ屑を回収するための処理装置である。エアテーブル(120)からは、集塵機で吸うことのできないポリウレタンよりも重量のあるゴム、木屑、硬質プラスチック、銅線の被覆材(塩ビ)やアルミといった「粒状ダスト」が排出される。その中に含まれているアルミ屑を回収するために、特定色の材料をエアジェット噴射により吹き飛ばす光学式色選別装置(310)を用いた。同じロットの「粒状ダスト」を三回巡回させる機能をこの装置は有するので、5mmアンダーと細かい粒度でも取り漏れは非常に少ない。
【0132】
<近赤外線センサー選別装置の構成>
図25、
図26は、前記の材料巡回回路付光学式色選別装置(巡回式光学色選別装置)(310)だけでなく、近赤外線センサーを使用した塩ビを分離する近赤外線センサー選別装置(320)の側面図と正面図を示している。両機で異なるのは、光学式センサーを使用しているか、近赤外線センサーを使用しているかの違いだけである。この装置で塩ビを「粒状ダスト」の中からエアジェットのノズルからの高圧エア噴射により、
図25が示す様に前記のアルミ屑同様に吹き飛ばすことにより分離する。
【0133】
<炭化装置の構成>
シュレッダーダスト(ASRの場合には廃自動車の総重量の20%前後)の中の「粒状ダスト」に含まれる塩ビを原因とした可燃性塩素を抜き出し、炭化させる為に高周波発生装置や都市ガスを利用した炭化装置(340)を使用する。「粒状ダスト」の構成材料は、木屑、ゴム、硬質プラスチック、布屑、塩ビ、その他の電線被覆材、シート材である。このダスト中には、高温下では可燃性塩素を発生させる塩ビが、10〜12%ほど含まれている。当然ながら、このままでは焼却用の燃料や、消泡材のバインダーには使用できない。それ故、固形化ラインに炭化装置(340)を用いる。
【0134】
炭化装置(340)は、炭化の熱源高周波発生装置又は都市ガスを使用する。この炭化装置(340)を使用して、ブリケットプレス機(330)で固形化された材料を搬送用パイプの途中で蒸し焼きにしながら炭化させる。炭化した「粒状ダスト」は、半透明のケーシングに挿入して真空パックした後に、火力発電所や自治体の焼却炉用の石炭や微粉炭の代替燃料、または高炉や電炉用の還元剤として利用できる。
なお、炭化装置(340)は、「綿状ダスト」を炭や微粉炭に加工したい場合に使用するものであることは云うまでもない。
【0135】
<可燃性塩素ガスの脱塩装置>
脱塩装置(350)は、「粒状ダスト」に含まれる塩ビを原因とした可燃性塩素を除去する処理装置である。高周波や都市ガスからの熱により熱せられた搬送用パイプの中からは、「粒状ダスト」に含まれる塩ビを原因として可燃性塩素が発生する。そこで、炭化個所から進行方向に向かって20cmほど離れた個所の搬送用パイプに穴を空けて、その個所に可燃性塩素や水蒸気などのガスを逃がす為のパイプを接続する。その後、ガスは、そのガス排出用パイプを通って脱塩装置(350)、またはナトリウム液の浸されたコンテナの中に誘導され、コンテナの中で可燃性塩素はナトリウムと結合して工業塩となりコンテナの底に溜まる。残りの蒸気やガスは、そのまま外部に排出される。
【0136】
<「粒状ダスト」(b)コークス製造処理ラインの処理装置の構成>
(b)コークス製造処理ラインの処理装置は、
図23(b)に示すように、製造ラインは、還元剤としてのコークスの製造を除いて、塩ビを分離する近赤外線センサー選別装置(320)とブリケットプレス機(330)の間に、リグニンの混合機(370)を追加した処理装置である。上述の石炭製造ラインと異なる要素はない。
【0137】
本発明のシュレッダーダストの処理装置では、金属スクラップ業界以外で使用されているものや、独自に考案した「綿状ダスト」集塵用装置を破砕・選別ラインの大型エアテーブル(120)の前に新たに6ヵ所加えることにより、プラント全体の処理能力を高めている。特に、「綿状ダスト」や「粒状ダスト」を、ブリケットプレス機(230,330)で固化した後に、嵩比重を出来るだけ上げる為や冷却の為に20
〜30m長ほどのパイプの中を通す。その後、そのパイプの途中で、特殊な人工ケーシング内にブリケットマシンの材料を押す力を利用しながら挿入して炭化装置(250,340)で炭化させた後に密封装置(240,360)により密封し、又は真空密封して、良質な火力発電所用の燃料や転炉用の消泡材、そして高炉や電炉用の還元剤やコークスを製造することができる。両ダスト共に可燃性である上にガソリンやオイルを含んでいるので、密封することで発火や材質の劣化をふせぐ効果もある。
【0138】
民生用燃料の場合は、僅かに「綿状ダスト」の中に残る可燃性塩素分を中和する為に消石灰(水酸化カルシウム)やハイポ(チオ硫酸ナトリウム)などを加えた後にペレタイザーに入れて親指ほどの大きさに固化すると、家庭内や業務用薪ストーブやアウトドアでの燃料として利用することができる。
【0139】
<処理対象物(被覆銅線の破砕・選別処理)>
本発明のシュレッダーダストの処理方法、処理装置は廃自動車、廃家電製品、廃オフィス家具等の中に、ASRの含有物である紙や鉄、銅、アルミやゴム、塩ビやその他のプラスチック材を通電材や絶縁材や被覆材そして補強材として使用している被覆銅線の破砕・選別処理用のプラントとしてもそのまま使用できる。プラントの構成は、上記した各図に示す通りであり、燃料化工程は
図2以降の各図に示す通りである。
【0140】
例えば東京都では電柱の新規取替えはできなくなった。これからは否応なしに東京だけでなく全国的に電線の地中化は進む。現在電柱に支えられながら使用されている電線は全て取り外した後で廃棄処分されることになる。屋外用の硬い被覆に覆われた廃ケーブルは必然的に、かつ大量にリサイクル市場に流れだす。2018年3月から被覆銅線は中国へ輸出できなくなったので国内処理しなくてはならない。その様な事態になった場合でも、本発明の処理機械装置を組み合わせたプラントがあると問題なく大量に処理できる。
そこで、本発明のシュレッダーダストの処理方法、処理装置ではこのように大量に廃棄される被覆銅線の処理に大きく貢献する技術である。
【0141】
<処理対象物(ミルスケールの固形化処理)>
電炉の圧延工程で表面から剥がれ落ちる鉄分を含んだ屑は、ミルスケールと呼ばれている。本発明でも、上述したように、
図2(d)の還元剤・消泡材製造ラインにおける嵩比重増加用の添加物として記載してある。このミルスケールの中には、発火性の強い酸化鉄(FeO)が約70%含まれている。現在は鉄分を磁石で分離して、高炉の還元鉄・焼結鋼となり銑鉄と同等の原料として、また錆止めの材料として使用されている。本発明で使用しているブリケットプレス機(230)と密封装置(240)を使用すると、酸化鉄が空気中の酸素と触れ合うことが無くなるので、自然発火の可能性を著しく低下させることができる。現在、高炉や電炉メーカー、そしてスクラップ業者が固形化する試みをしているものの、良い結果がでていない。本発明の真空密閉方式を使わずに、「綿状ダスト」をバインダー(結合剤)として高い圧力をかけて固形化する方法も良い結果がでていない。
【0142】
しかし、選別された酸化鉄の場合には、本発明で使用している人工ケーシングに直接挿入して、真空密封により固形化する方が経済的であるだけでなく合理的である。ミルスケールは、そのままでも高炉用還元剤として使用できる。そこで、本発明のブリケットプレス機(230)と密封装置(240)を用いて、ミルスケールを人工ケーシングに押し込みながら挿入し、縦軸に材料挿入用のスクリュウコンベア、横軸にスクリュウコンベアにより押し込まれながら落ちてくるミルスケールを人工ケーシングに挿入する役割だけを持つプッシャーを組み合わせた簡単なものでも代用できる。
【0143】
尚、さらさらしたミルスケール(酸化鉄)を人工ケーシングや空缶に重力を利用して落とし込み密閉する場合には、スクリュウコンベアやプッシャーは必要ない。人工ケーシングの場合には、ミルスケール充填後にクリッパーで密封する。空缶の場合には蓋を閉めるだけで還元剤やその他の製鋼副資材となる。
【0144】
なお、本発明は、従来では単なる廃棄物であった「綿状ダスト」や「粒状ダスト」を再資源として利用できるようにすると共に、その処理能力を高めることができれば、上述した発明の実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更できることは勿論である。