特許第6384850号(P6384850)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6384850導電性粉末、その製造方法、及び積層セラミックキャパシタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6384850
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】導電性粉末、その製造方法、及び積層セラミックキャパシタ
(51)【国際特許分類】
   H01B 5/00 20060101AFI20180827BHJP
   H01G 4/12 20060101ALI20180827BHJP
   H01G 4/30 20060101ALI20180827BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20180827BHJP
   B22F 1/02 20060101ALI20180827BHJP
   B22F 1/00 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   H01B5/00 C
   H01G4/12 090
   H01G4/30 311D
   H01B13/00 501Z
   B22F1/02 A
   B22F1/00 K
   B22F1/00 M
   B22F1/00 L
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-266663(P2013-266663)
(22)【出願日】2013年12月25日
(65)【公開番号】特開2015-79728(P2015-79728A)
(43)【公開日】2015年4月23日
【審査請求日】2016年9月5日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0124129
(32)【優先日】2013年10月17日
(33)【優先権主張国】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(72)【発明者】
【氏名】イ・キョン・リョル
(72)【発明者】
【氏名】キム・ジン・ウ
(72)【発明者】
【氏名】キム・ジョン・リョル
(72)【発明者】
【氏名】ドン・ヒョン・ソン
(72)【発明者】
【氏名】キム・ソン・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】チェ・ハン・キュ
(72)【発明者】
【氏名】ペ・デ・ウン
【審査官】 松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−045617(JP,A)
【文献】 特開2009−266716(JP,A)
【文献】 特開2013−139599(JP,A)
【文献】 特開2004−002923(JP,A)
【文献】 特開2004−247632(JP,A)
【文献】 特開2004−269315(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0188657(US,A1)
【文献】 特開平08−007644(JP,A)
【文献】 特開2011−168873(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0110608(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 5/00
H01B 1/22
B22F 1/00
B22F 1/02
H01B 13/00
H01G 4/12
H01G 4/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粉末と、
前記金属粉末の表面に形成され、バリウム、マンガン、マグネシウム、ジスプロシウム、バナジウム、及びイットリウムのうち一つ以上を含む添加剤コーティング層と、
を含み、
前記金属粉末の平均粒径をR、前記添加剤コーティング層の厚さをDとしたときに、D/Rが0.13〜0.35を満た
前記添加剤コーティング層が、金属石けんを含むコーティング層から有機物を除去して金属成分のみを残して形成されたものである、導電性粉末。
【請求項2】
前記金属粉末の平均粒径は100nm以下である、請求項1に記載の導電性粉末。
【請求項3】
前記金属粉末は、銀、金、銅、ニッケル、コバルト、白金、パラジウム、及びこれらの合金からなる群から選択される一つ以上を含む、請求項1に記載の導電性粉末。
【請求項4】
第1金属により金属粉末を準備する段階と、
前記金属粉末と第2金属を含む金属石けんとを混合してスラリーを製造する段階と、
前記スラリーを濃縮乾燥して、前記金属粉末の表面にコーティング層を形成する段階と、
前記コーティング層に含まれた有機物を除去して、金属成分のみを残すことで前記金属粉末の表面に添加剤コーティング層を形成する段階と、
を含み、
前記添加コーティングバリウム、マンガン、マグネシウム、ジスプロシウム、バナジウム、及びイットリウムのうち一つ以上を含み、
前記金属粉末の平均粒径をR、前記添加剤コーティング層の厚さをDとしたときに、D/Rが0.13〜0.35を満たす、導電性粉末の製造方法。
【請求項5】
前記金属粉末の平均粒径は100nm以下である、請求項に記載の導電性粉末の製造方法。
【請求項6】
前記金属粉末は、銀、金、銅、ニッケル、コバルト、白金、パラジウム、及びこれらの合金からなる群から選択される一つ以上を含む、請求項に記載の導電性粉末の製造方法。
【請求項7】
前記添加剤コーティング層を形成する段階は、前記コーティング層を熱処理して前記コーティング層に含まれた有機物を除去することにより行われる、請求項に記載の導電性粉末の製造方法。
【請求項8】
誘電体層を含むセラミック本体と、
前記セラミック本体内で前記誘電体層を挟んで互いに対向するように配置され、導電性粉末を含む第1及び第2内部電極と、
前記第1及び第2内部電極とそれぞれ電気的に連結される第1及び第2外部電極と、
を含み、
前記導電性粉末は、金属粉末と、前記金属粉末の表面に形成され、バリウム、マンガン、マグネシウム、ジスプロシウム、バナジウム、及びイットリウムのうち一つ以上を含む添加剤コーティング層と、を含み、
前記金属粉末の平均粒径をR、前記添加剤コーティング層の厚さをDとしたときに、D/Rが0.13〜0.35を満た
前記添加剤コーティング層が、金属石けんを含むコーティング層から有機物を除去して金属成分のみを残して形成されたものである、積層セラミックキャパシタ。
【請求項9】
前記金属粉末の平均粒径は100nm以下である、請求項に記載の積層セラミックキャパシタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性粉末、その製造方法、及び積層セラミックキャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、キャパシタ、インダクタ、圧電素子、バリスタ、またはサーミスタなどのセラミック材料を用いる電子部品は、セラミック材料からなるセラミック素体と、セラミック素体の内部に形成された内部電極と、上記内部電極と接続されるようにセラミック素体の表面に設けられた外部電極と、を備える。
【0003】
上記内部電極は、通常、導電性粉末を含むペーストを用いて製造されるが、厚さが薄いながらも優れた性能を有する内部電極を開発するために、内部電極の製造に用いられる導電性粉末の性能を向上させるための研究が行われている。
【0004】
内部電極の収縮を制御するためには、導電性粉末の表面に酸化層を形成したり、微粒の誘電体粉末を添加剤として含ませたりして、導電性粉末の焼成及び粒成長を抑制させることができる。しかし、この場合、電極の連結度及び有効電極面積が減少して、誘電容量が減少するという問題がある。
【0005】
したがって、内部電極の収縮を効率的に制御することができる導電性粉末の必要性が増大している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、導電性粉末、その製造方法、及び積層セラミックキャパシタを提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態によると、金属粉末と、上記金属粉末の表面に形成され、上記金属粉末の平均粒径をRとしたときに、0.02R〜0.35Rの厚さを有する添加剤コーティング層と、を含む導電性粉末が提供される。
【0008】
上記金属粉末の平均粒径は100nm以下であることができる。
【0009】
上記金属粉末は、銀、金、銅、ニッケル、コバルト、白金、パラジウム、及びこれらの合金からなる群から選択される一つ以上を含むことができる。
【0010】
上記添加剤コーティング層は、バリウム、マンガン、マグネシウム、ジスプロシウム、バナジウム、及びイットリウムのうち一つ以上を含むことができる。
【0011】
上記添加剤コーティング層は非晶質金属を含むことができる。
【0012】
本発明の他の形態によると、金属粉末を準備する段階と、上記金属粉末と金属石けんとを混合してスラリーを製造する段階と、上記スラリーを濃縮乾燥して、上記金属粉末の表面に金属石けんコーティング層を形成する段階と、上記金属石けんコーティング層の有機物を除去して、上記金属粉末の表面に添加剤コーティング層を形成する段階と、を含む導電性粉末の製造方法が提供される。
【0013】
上記金属粉末の平均粒径は100nm以下であることができる。
【0014】
上記金属粉末の平均粒径をRとしたときに、上記添加剤コーティング層の厚さは0.02R〜0.35Rであることができる。
【0015】
上記金属粉末は、銀、金、銅、ニッケル、コバルト、白金、パラジウム、及びこれらの合金からなる群から選択される一つ以上を含むことができる。
【0016】
上記添加剤コーティング層は、バリウム、マンガン、マグネシウム、ジスプロシウム、バナジウム、及びイットリウムのうち一つ以上を含むことができる。
【0017】
上記添加剤コーティング層は非晶質金属を含むことができる。
【0018】
上記添加剤コーティング層を形成する段階は、上記金属石けんコーティング層を熱処理して上記金属石けんコーティング層に含まれた有機物を除去することにより行われることができる。
【0019】
本発明のさらに他の形態によると、誘電体層を含むセラミック本体と、上記セラミック本体内で上記誘電体層を挟んで互いに対向するように配置され、導電性粉末を含む第1及び第2内部電極と、上記第1及び第2内部電極とそれぞれ電気的に連結される第1及び第2外部電極と、を含み、上記導電性粉末は、金属粉末と、上記金属粉末の表面に形成され、上記金属粉末の平均粒径をRとしたときに、0.02R〜0.35Rの厚さを有する添加剤コーティング層と、を含む積層セラミックキャパシタが提供される。
【0020】
上記金属粉末の平均粒径は100nm以下であることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一形態によると、効率的な収縮制御が可能な導電性粉末、その製造方法、及び積層セラミックキャパシタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態による導電性粉末の製造方法を示すフローチャートである。
図2】本発明の一実施形態による導電性粉末を示す走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
図3】本発明の一実施形態による導電性粉末を概略的に示した概略図である。
図4】本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタを示す斜視図である。
図5図4のA-A’線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下では、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために誇張されることがある。
【0024】
以下、図面を参照して本発明を詳細に説明する。
【0025】
図1は本発明の一実施形態による導電性粉末の製造方法を示すフローチャートである。
【0026】
本発明の一実施形態によると、図1に図示されたように、金属粉末を準備する段階(S1)と、上記金属粉末と金属石けんとを混合してスラリーを製造する段階(S2)と、上記スラリーを濃縮乾燥して、金属粉末の表面に金属石けんコーティング層を形成する段階(S3)と、上記金属石けんコーティング層の有機物を除去して、金属粉末の表面に添加剤コーティング層を形成する段階(S4)と、を含む導電性粉末の製造方法が提供される。
【0027】
上記金属粉末は、銀(Ag)、金(Au)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、及びこれらの合金からなる群から選択される一つ以上を含む粉末またはこれらの混合粉末であることができるが、これに限定されるものではない。
【0028】
電子部品を小型化するとともに、優れた特性を具現するためには、上記金属粉末の粒度分布を均一にする必要があり、上記金属粉末の粒度分布の均一化のために、金属粉末の微粉砕過程を経ることができる。
【0029】
上記金属粉末の微粉砕過程は、均質機(Homogenizer)を利用して行われることができる。均質機の回転により乱気流が発生すると、金属粉末に含まれた小さい粒子は上昇し、粗大粒子は重力によって沈降することになる。乱気流により上昇した小さい粒子は打撃されず、沈降した粗大粒子は選択的に打撃されて微粉砕される。
【0030】
均質機を利用する場合は、粒子のサイズを考慮せずにランダムに打撃して微粉砕するボールミル(またはビーズミル)方式を利用する場合と異なり、所定レベル以下の小さい粒子は打撃されないため、粒子の損傷を最小化することができる。また、ボールミル(またはビーズミル)方式の場合は、これ以上粉砕できない微粒子まで打撃されて、必要以上に小さに粒子が形成されるため、粒度分布が不均一である。しかし、均質機を利用する場合は、所定レベル以下の小さい粒子は上昇してこれ以上微粉砕されず、沈降した粒子のみが微粉砕されるため、粒度分布が均一であり、また、均質機の回転数を調節することで、所望のレベルの平均粒径を有する金属粉末を得ることができる。
【0031】
上記金属粉末の平均粒径は、適用される電子部品のサイズに応じて調節されることができる。本発明の一実施形態によると、上記金属粉末の平均粒径は、積層セラミックキャパシタの内部電極に用いられて内部電極を薄層化するために、100nm以下である。
【0032】
次に、上記金属粉末と金属石けんとを混合してスラリーを製造することができる。上記スラリーは、粘度を調節するための溶剤をさらに含むことができ、所望の特性を具現するために他の添加剤をさらに含んでもよい。
【0033】
上記金属石けんは、有機酸の金属塩を意味する。即ち、有機酸の水素が金属に置換された形態である。置換される金属は、具現しようとする誘電体粉末の物性に応じて適宜選択されることができる。また、有機酸に置換される金属は、積層セラミックキャパシタの内部電極の添加剤として機能する金属であることができるが、これに限定されず、バリウム(Ba)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、ジスプロシウム(Dy)、バナジウム(V)、及びイットリウム(Y)のうち一つ以上を含むことができる。
【0034】
上記有機酸としては、脂肪酸、樹脂酸、ナフテン酸、カルボン酸、オクチル酸などが挙げられ、内部電極の添加剤として機能する金属と金属石けんを形成することができるものであれば特に制限されない。
【0035】
次に、上記スラリーを120〜150℃で8時間以上濃縮乾燥して、上記金属石けんを上記金属粉末にコーティングすることができる。金属石けんを用いる場合は、従来の添加剤のコーティング方法とは異なり、100nmレベルの微粒金属粉末にも添加剤をコーティングすることができ、従来の方法に比べ、コーティング層が金属粒子を覆う面積を増加させ、薄くて均一なコーティングを行うことができる。
【0036】
次に、金属石けんがコーティングされたチタン酸バリウム系微粒子を熱処理することで、金属石けんコーティング層に含まれた有機物を除去する。上記熱処理は350〜400℃で4時間以上行われる。これにより、金属石けんコーティング層に含まれた有機成分を熱分解して除去し、金属成分のみを残すことができる。即ち、上記熱処理により、金属石けんコーティング層から添加剤コーティング層を形成することができる。上記熱処理により、金属石けんコーティング層は非晶質金属コーティング層となり、上記添加剤コーティング層は非晶質金属コーティング層となることができる。
【0037】
上記添加剤コーティング層は、上記金属石けんに含まれた金属を含むことができ、上述したように、バリウム(Ba)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、ジスプロシウム(Dy)、バナジウム(V)、及びイットリウム(Y)のうち一つ以上を含むことができる。
【0038】
金属粉末の平均粒径をRとしたときに、上記添加剤コーティング層は0.02R〜0.35Rの厚さに形成されることができる。
【0039】
さらに、本発明の一実施形態による導電性粉末の製造方法によると、原子単位で添加剤をコーティングすることができるため、添加剤コーティング層の厚さを容易に制御することができ、非常に薄いコーティング層を形成することができる。また、導電性粉末のサイズが非常に小さい微粒の場合にも、コーティング層を効果的に形成することができる。
【0040】
図2は本発明の一実施形態による導電性粉末を示す走査型電子顕微鏡(SEM)写真であり、図3は本発明の一実施形態による導電性粉末を概略的に示した概略図である。
【0041】
図3に図示されたように、本発明の一実施形態により製造された導電性粉末は、金属粉末10と、上記金属粉末の表面に形成された添加剤コーティング層20と、を含むことができる。
【0042】
以下では、上述の導電性粉末の製造方法と重複する詳細な説明は省略する。
【0043】
上記金属粉末10の平均粒径Rは100nm以下であり、上記金属粉末の平均粒径をRとしたときに、上記添加剤コーティング層20の厚さDは0.02R〜0.35Rであることができる。
【0044】
上記添加剤コーティング層の厚さが0.02R未満の場合には、添加剤コーティング層を形成していない場合に比べ収縮開始温度の上昇が小さく、上記添加剤コーティング層の厚さが0.35Rを超過する場合には、収縮率が過度に増加して積層セラミック電子部品の内部電極に適用することが困難であるという問題がある。
【0045】
上記金属粉末は、銀、金、銅、ニッケル、コバルト、白金、パラジウム、及びこれらの合金からなる群から選択される一つ以上を含むことができ、上記添加剤コーティング層は、バリウム、マンガン、マグネシウム、ジスプロシウム、バナジウム、及びイットリウムのうち一つ以上を含むことができる。
【0046】
また、上記添加剤コーティング層は非晶質金属を含むことができる。
【0047】
図4は本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタを示す斜視図であり、図5図4のA-A’線に沿う断面図である。
【0048】
図4及び図5を参照すると、本実施形態による積層セラミックキャパシタ100は、セラミック本体110と、第1及び第2外部電極131、132と、を含むことができる。
【0049】
上記セラミック本体110の形状は特に制限されず、図示されたように、上記セラミック本体110は六面体形状からなることができる。セラミック本体110は、チップ焼成時のセラミック粉末の焼成収縮により完全な直線からなることはできないが、実質的には六面体形状を有することができる。
【0050】
上記セラミック本体は、複数の誘電体層111と、誘電体層111上に形成された第1及び第2内部電極121、122と、を含み、第1及び第2内部電極が形成された複数の誘電体層が積層されて形成されることができる。また、第1及び第2内部電極は、一つの誘電体層111を挟んで互いに対向するように配置されることができる。
【0051】
上記誘電体層は、誘電体の主成分として高誘電率を有するセラミック粉末を含むことができるが、これに限定されず、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)系またはチタン酸ストロンチウム(SrTiO)系粉末を含むことができる。
【0052】
本発明の一実施形態によると、第1及び第2内部電極121、122は、導電性粉末を含む導電性ペーストで形成されることができる。上記導電性粉末は、金属粉末と、上記金属粉末の表面に形成された添加剤コーティング層と、を含むことができる。
【0053】
本実施形態の内部電極に含まれた導電性粉末についての詳細な説明は、上述した本発明の一実施形態による導電性粉末についての説明と重複するため、その詳細な説明は省略する。
【0054】
上記導電性粉末は100nm以下の平均粒径を有することができ、これにより、積層セラミックキャパシタの内部電極の薄層化が可能となる。
【0055】
また、上記導電性粉末に含まれた添加剤コーティング層は、内部電極の添加剤として用いられる金属を含むことができ、金属石けんを用いて形成されることができる。
【0056】
上記添加剤コーティング層は非晶質金属を含むことができ、バリウム、マンガン、マグネシウム、ジスプロシウム、バナジウム、及びイットリウムのうち一つ以上を含むことができる。
【0057】
上記金属粉末の平均粒径をRとしたときに、上記添加剤コーティング層は0.02R〜0.35Rの厚さを有することができる。上記添加剤コーティング層の厚さが0.02R未満の導電性粉末を用いて積層セラミックキャパシタの内部電極を形成する場合には、内部電極ペーストの収縮開始温度の上昇が小さいため、内部電極と誘電体層との収縮開始温度の差を減少させる効果が小さくて焼成の際にクラックが多く発生するという問題があり、上記添加剤コーティング層の厚さが0.35Rを超過する導電性粉末を用いて積層セラミックキャパシタを形成する場合には、内部電極の収縮率が誘電体層の収縮率より大きくなるため、焼成過程でクラックが発生するという問題がある。
【0058】
また、特に制限されず、誘電体層を形成するセラミックグリーンシート上にスクリーン印刷法またはグラビア印刷法などの印刷法により、導電性ペーストを用いて内部電極を印刷することができる。内部電極が印刷されたセラミックグリーンシートを交互に積層して焼成することで、セラミック本体110を形成することができる。
【0059】
次に、上記第1及び第2内部電極121、122とそれぞれ電気的に連結されるように第1及び第2外部電極131、132を形成することができる。
【0060】
上記のように、本発明の一実施形態による導電性粉末を用いて内部電極を形成すると、クラックの発生頻度が低い積層セラミックキャパシタを提供することができる。
【0061】
さらに、本発明の一実施形態によると、内部電極に別の誘電物質(共材)が添加剤として含まれなくても、内部電極の収縮を効率的に制御することができる。これにより、誘電物質などの添加剤による誘電体層の組成変化を抑制して、誘電特性を改善することができる。
【0062】
[実験例]
下記表1は、積層セラミックキャパシタの内部電極を形成するための導電性粉末に含まれた金属粉末の平均粒径Rと添加剤コーティング層の厚さDとの比(D/R)による内部電極の収縮開始温度の変化、内部電極と誘電体層との収縮率の差、及びクラック発生有無を示した実験結果である。
【0063】
本実験例では、金属粉末としてはニッケル粉末を用い、添加剤コーティング層は、バナジウム(V)を含有する金属石けんであるオクチル酸バナジウムを用いて製造した。収縮開始温度の変化については、実験例の導電性粉末を用いた場合の収縮開始温度(Ts)と、添加剤コーティング層が形成されていない導電性粉末を用いた場合の収縮開始温度(T1)との差(Ts−T1)を測定して示した。収縮開始温度については、TMA分析の際に収縮率が3%に達する温度を測定した。
【0064】
また、収縮率の差については、1200℃の焼成過程で内部電極の長さ方向の収縮率(内部電極の長さの変化量/初期の内部電極の長さ)と、誘電体層の長さ方向の収縮率(誘電体層の長さの変化量/初期の誘電体層の長さ)との差(内部電極の収縮率−誘電体層の収縮率)を測定して示した。
【0065】
【表1】
OK:クラック発生率10000ppm以下
NG:クラック発生率10000ppm超
【0066】
上記表1を参照すると、金属粉末に対する添加剤コーティング層の厚さの比(D/R)が0.02未満の場合には、内部電極の収縮開始温度の変化が小さいため焼成の際にセラミック本体に垂直クラックが発生し、0.35を超過する場合には、内部電極の収縮が過度に抑制されて、誘電体層の収縮率より内部電極の収縮率が小さくなるため、カバー部とアクティブ部との間で剥離またはクラックが発生する問題があることが分かる。
【0067】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有する者には明らかである。
【符号の説明】
【0068】
10 金属粉末
20 添加剤コーティング層
100 積層セラミックキャパシタ
110 セラミック本体
111 誘電体層
121、122 第1及び第2内部電極
131、132 第1及び第2外部電極
図1
図2
図3
図4
図5