(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
引き戸を所定の位置でロックしてそれ以上開かないようにする一方、ロックを解除することで前記引き戸を前記所定の位置よりもさらに開けるようにするセーフティーストッパーを備えた引き戸装置であって、
前記セーフティーストッパーは、
建屋側部材に取り付けられたブロック体と、
前記引き戸に取り付けられ、戸開時に前記ブロック体に当接することによってロックされ、前記ロックを解除するレバーを有するストッパー装置とで構成され、
ロックを解除する前記レバーの操作部が、前記ストッパー装置の引き戸閉方向における端部から表出しており、
前記ストッパー装置には、前記引き戸の板厚方向に延びる回動軸が設けられ、前記レバーには、前記回動軸を挟んで前記操作部の反対側に、前記引き戸を開方向へ移動させるときに前記ブロック体と当接する当接部が形成されており、
前記引き戸の上面或いは下面に開閉方向へ延びる溝部を形成し、前記溝部内の戸先側に前記ストッパー装置を取り付け、前記溝部の戸先側端面の開口から前記ロックを解除する前記レバーの操作部を表出させたことを特徴とする引き戸装置。
引き戸を所定の位置でロックしてそれ以上開かないようにする一方、ロックを解除することで前記引き戸を前記所定の位置よりもさらに開けるようにするセーフティーストッパーであって、
建屋側部材に取り付けられるブロック体と、
前記引き戸に取り付けられ、前記ブロック体に当接することによってロックされ、前記ロックを解除するレバーを有するストッパー装置とを備え、
ロックを解除する前記レバーの操作部が、前記ストッパー装置の引き戸閉方向における端部から表出しており、
前記ストッパー装置には、前記引き戸の板厚方向に延びる回動軸が設けられ、前記レバーには、前記回動軸を挟んで前記操作部の反対側に、前記引き戸を開方向へ移動させるときに前記ブロック体と当接する当接部が形成されていることを特徴とするセーフティーストッパー。
前記レバーには、前記回動軸と前記当接部との間に設けられ、前記引き戸を閉方向へ移動させるときに前記ブロック体と接触しながら前記レバーを回動させる傾斜部が形成されていることを特徴とする請求項3に記載のセーフティーストッパー。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態に係る引き戸装置Hおよびこれに用いるセーフティーストッパーSについて、図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る引き戸装置HにセーフティーストッパーSを取り付けた状態を上側から見たものであり、(A)は、引き戸を閉じた状態(セーフティーストッパーSが機能(作動)する前の態様)、(B)は、セーフティーストッパーを機能させ、引き戸先端が少しだけ突出している状態、(C)は、セーフティーストッパーの機能(作動)を解除させ、引き戸が完全に開ききった状態を示している。また、
図2(A)は、
図1(A)の状態を戸先側の斜め上から見た斜視図であり、(B)は、
図1(B)の状態を戸先側の斜め上側から見た斜視図である。
なお、本実施の形態では、引き戸1を開いたときに引き戸1が戸袋2内に収納されるタイプの引き戸装置HにセーフティーストッパーSを取り付けたものについて説明する。
【0018】
また、以下の説明で使用する方向で、戸開側とは、引き戸1を開く方向(
図1の紙面右側)をいい、戸閉側とは、引き戸1を閉じる方向(
図1の紙面左側)をいう。また、上側、下側とは、
図2の紙面上下方向をいう。さらに、表側とは、
図2の手前側を正面とし、この正面から引き戸1を見た側をいい、裏側とは、表側の反対側をいう。また、幅方向とは、引き戸1の板厚方向であって、表面側(或いは裏面側)から裏面側(或いは表面側)に向かう方向をいうものとする。
【0019】
セーフティーストッパーSは、
図1および
図2に示すように、ブロック体10と、ストッパー装置20とで構成されている。引き戸1の下側には、ブロック体10が取り付けられている。このブロック体10は、後述する取付ねじ21(
図8(A)参照)によって床面5上に固定する態様で取り付けられている。また、床面5には、引き戸の開閉方向に沿って下側レールを取り付け、この下側レールにブロック体10を取り付けるようにしてもよい。なお、本明細書では、上述した「床面5」または「下側レール」を総称して、「建屋側部材」と記載する。
【0020】
一方、引き戸1の下面には、
図2(A)および
図2(B)に示すように、開閉方向に沿って溝部1bが形成されている。この溝部1bは、引き戸1の戸先側1aから戸尻側まで連続して形成されており、戸先側1aの先端面にはこの溝部1bの開口1cが形成されている。ストッパー装置20は、この溝部1b内であって、引き戸1の戸先側1aの先端部分に収容される態様で取り付けられている。
【0021】
なお、引き戸1の上側には、案内ローラ(図示せず)が取り付けられている。この案内ローラは、引き戸1を吊り下げる態様で取り付けられており、案内ローラが上側レール上を開閉方向に沿って自由に転動することによって、引き戸1が開閉方向にスムーズに移動できるようになっている。
【0022】
このセーフティーストッパーSは、ブロック体10と、ストッパー装置20とが協働することによって機能する。まずは、この機能について簡単に説明する。
図1(A)および
図2(A)に示すように、引き戸1が閉じた状態では、ブロック体10とストッパー装置20とは離れており、セーフティーストッパーSは機能(作動)していない。この状態から、引き戸1を開くと、
図1(B)および
図2(B)に示すように、ブロック体10とストッパー装置20とが当接し、引き戸1がL2の長さだけ突出した状態でこれ以上開かないようになる(開口がL1の長さまで開いた状態)。この状態でストッパー装置20を操作して当接を解除(ロックを解除)することにより、
図1(C)に示すように、引き戸1を閉じた状態へ移動させることなく引き戸1をさらに開く(開口がL3の長さまで開いた状態)ことができるようになる。なお、セーフティーストッパーSの詳細な作用・動作の説明は、ブロック体10、ストッパー装置20の構造を説明した後に行う。
【0023】
図3は、ブロック体10の斜視図である。また、
図4(A)はブロック体の平面図、
図4(B)はその正面図である。
ブロック体10は、平板状の座部11と、この座部11の上面から上方向に突出する突部12とを備え、これらが樹脂材料によって一体に成形されている。座部11は、上側から見て略矩形状に形成されており、その幅方向の中央部に突部12が開閉方向に沿って延びている。この突部12の幅方向の厚みは、上述した引き戸1の溝部1bの幅方向の長さよりも小さく形成されており、引き戸1を開閉移動させたとしても突部12が溝部1bの内壁部に干渉しないようになっている。また、この突部12の突出長さは、溝部1bの深さよりも小さく形成されており、突部12bが溝部1b内の上面と干渉しないようになっている。
【0024】
また、この突部12は、引き戸1に前後方向(引き戸1の板厚方向)への力が作用したときに、この突部12と溝部1bの内壁とが干渉して引き戸1が前後方向に外れないようにする振れ止めとしても機能する。
なお、上述した溝部1bの上下方向における溝部の深さは、詳細は後述するストッパー装置20が収容される部分(深い部分)と、突部12が干渉しないようにする部分(浅い部分)とでそれぞれ異なる寸法で形成してある。なお、深い部分に合わせて、同じ深さで形成することもできる。
【0025】
また、座部11には、突部12の幅方向の両側に皿穴13がそれぞれ設けられている。ブロック体10は、この皿穴13に取付ねじ(図示せず)を通して締結することによって床面5に固定される。
【0026】
突部12には、
図4(B)に示すように、戸閉側に位置し、座部11の上面から上方に起立する態様で略垂直に延びる当接面12cが形成されている。この当接面12cには、引き戸1を戸開側に移動させる際に、詳細は後述するレバー40の当接部44が当接するようになる。
【0027】
また、突部12には、当接面12cの上端部から戸開方向へ略水平に延びる頂部水平面12dと、頂部水平面12dの戸閉方向の終端部から座部11に向かって斜めに傾斜する傾斜面12bが形成されている。これらの頂部水平面12dおよび傾斜面12bには、引き戸1を戸閉側に移動させる際に、詳細は後述するレバー40の接触面43aが接触するようになる(詳細は後述する)。
【0028】
頂部水平面12dには、傾斜ざぐり穴12aが形成されている。この傾斜ざぐり穴12aは、上面から戸閉方向下側に向けて斜めに形成されており、座部11の下面まで連通している。
図2(A)及び
図2(B)に示すように、ブロック体10を取り付ける際に、ブロック体10の両側が戸袋2の壁部によって囲われるような場合には、上述した皿穴13に取付ねじを通して垂直に締め付けることができない。そのため、取付ねじを戸袋2の戸開側の外側から斜め下方向に締め付けられるように、傾斜ざぐり穴12aを設けている。この傾斜ざぐり穴12aに取付ねじを挿通して締結すると、取付ねじの頭部はざぐり穴の内部に入り込み、頂部水平面12dよりも上側に突出しないようになる(
図8(A)参照)。
【0029】
さらに、突部12には、軽量化および樹脂材料をできるだけ少なくするために、複数の肉盗み14a、14b、14cが設けられている。
【0030】
図5は、ストッパー装置20の斜視図、
図6はその分解斜視図である。また、
図7(A)はストッパー装置の平面図、
図7(B)は
図7(A)で示すX−X断面図、
図7(C)は
図7(B)で示すY方向から見た側面図である。
【0031】
ストッパー装置20は、このストッパー装置20の外側部分を構成する外側ケース30と、この外側ケース30の内部に組み付けられるレバー40と、このレバー40の動きを案内する案内ピン60と、レバー40を外側ケース30に対して回動させるための回動中心となる回動軸70とで構成されている。
【0032】
外側ケース30は、下側が開口する断面コ字形状に形成されており、幅方向の側部に位置する2つの縦壁部31、31と、これらの縦壁部31、31の上端を幅方向に繋ぐ上面部32とで構成されている。また、外側ケース30の戸開側および戸閉側の端面は、開口している。さらに、上面部32の戸開側の端部は、縦壁部31の端部よりも戸開側へ延びる延出部33が形成されている。
【0033】
2つの縦壁部31、31には、それぞれを幅方向に貫通する態様で案内ピン誘導長穴31a、回動軸取付穴31bが形成されている。また、上面部32には、上下方向に貫通する取付穴32aが形成されている。同様に、延出部33には、上下方向に貫通する取付穴33aが形成されている。これらの取付穴32a、33aには取付ねじ21(
図8(A)参照)がそれぞれ挿通され、これらの取付ねじ21を締結することによってストッパー装置20が引き戸1の溝部1b内の上面に取り付けられる。なお、延出部33は、レバー40を外側ケース30内に組み付けた状態で、レバー40と上下方向に干渉しないで(レバー40よりも開方向側の位置で)取付ねじ21を下側から取付穴33aに挿通できるように形成されている。
【0034】
レバー40は、
図5および
図6に示すように、外側ケース30の下側開口から組み付けられ、詳細は後述する案内ピン60および回動軸70を介して外側ケース30に対して回動自在に取り付けられる。レバー40は、樹脂材料の成形品であり、レバー40の幅寸法は、外側ケース30の縦壁部31の内幅寸法と同等かそれよりも若干小さめに形成されている。
【0035】
レバー40は、
図6および
図7(B)に示すように、紙面の正面から見て左側(戸閉側)に位置する操作部41と、この操作部41から戸開側に延びる連結部42と、この連結部42の終端部から戸開方向の下側に斜めに延びる傾斜部43と、この傾斜部43の終端部に形成された当接部44とで構成されている。レバー40は、これらの部分が樹脂成形によって一体に形成されている。
【0036】
操作部41は、利用者がレバー40を戸開側に向かって押し込む(押圧する)ように操作するためのものであり、その押圧する部分には、突起41aおよび凹み41bが設けられている。これらの突起41aおよび凹み41bは、なだらか曲面で連続しており、この操作部41を指で押し込むときの方向が横からであっても斜め上側からであっても押し易く、かつ、レバー40がスムーズに回動する方向に力が向かうようにしている。この操作部41の先端部分(突起41aおよび凹み41bの部分)は、
図5および
図7(A)、
図7(B)に示すように、レバー40を外側ケース30内に組み付けた状態で、外側ケース30の縦壁部31の戸閉側縁部31dよりも閉方向外側に表出するようになっている。
【0037】
連結部42には、上下方向に連通する取付長穴42aが形成されている。この取付長穴42aは、レバー40を外側ケース30内に組み付けた状態で、上述した取付ねじ21(
図8(A)参照)を取付穴32aに下側から取り付けられるようにするための逃げのようなものである。また、連結部42の終端部には、レバー40の幅方向に貫通する回動軸取付穴42bが形成されている。
【0038】
傾斜部43は、
図6および
図7(B)に示すように、回動軸取付穴42bから略直線状に延びており、その下面に略平面状をなす接触面43aが形成されている。この接触面43aは、引き戸1の開閉動作時に上述したブロック体10の頂部水平面12dおよび傾斜面12bと接触・摺動するようになる(
図10(B)参照)。また、傾斜部43には、中央部よりも少し戸閉側に、幅方向に貫通する案内ピン取付穴43bが形成されている。
【0039】
この傾斜部43の傾斜角度は、操作部41を押し込んだときに、傾斜部43の戸開側の終端部(当接部44)が、ブロック体10の頂部水平面12dの上側まで完全に移動するように決定されている(
図9(A)、
図9(B)参照)。
【0040】
当接部44は、操作部41を押し込んでいない状態で、略垂直に起立する平面状に形成されている。また、当接部44は、
図5および
図7(B)に示すように、外側ケース30内にレバー40が組み付けられた状態で、外側ケース30の縦壁部31の戸開側縁部31cよりも開方向外側に位置するように形成されている。これにより、当接部44は、セーフティーストッパーSの機能時(ブロック体10の当接面12cとの当接時)に当接面12cと平面同士で面で当接するようになる(
図8(B)参照)。
【0041】
また、当接部44の幅方向の両側には、幅方向に向けて突出する側方突部44aがそれぞれ形成されている。この側方突部44aは、
図7(C)に示すように、縦壁部31の内側面よりも幅方向に突出しているが、縦壁部31の外側面よりも突出しないようになっている。これにより、側方突部44aは、縦壁部31の戸開側縁部31cとは回動方向で干渉するが、ストッパー装置20が溝部1b内に組み付けられた状態で、溝部1bの内壁とは干渉しないようになっている。
【0042】
さらに、レバー40には、軽量化および樹脂材料をできるだけ少なくするために、複数の肉盗み51、52、53、54、55、56、57が形成されている。また、構造上の強度をより大きくするために、補強リブ58、59を設ける工夫もなされている。
【0043】
また、レバー40は、
図7(B)に示す回動軸取付穴42bを挟んで、開閉方向における戸開側の部分(傾斜部43、当接部44)の重量が、戸閉側の部分(操作部41、連結部42)の重量よりも重くなるように形成されている。これにより、詳細は後述する回動軸70を回動軸取付穴31b、42bに挿通させてレバー40が自由に回動できるようにすると、レバー40が
図7(B)における時計回りのモーメント力で回転するようになる。この自重による回転力は、当接部44の側方突部44aが縦壁部31の戸開側縁部31cと当接することによって受けられる。これにより、レバー40の組み付け時における位置が規制される。
【0044】
さらに、レバー40は、回動軸取付穴42bから操作部41までの長さよりも、回動軸取付穴42bから当接部44までの長さを大きくしている。これにより、操作部41を押し込むときの押し込み長さ(押し込み量)に対し、当接部44が回動して移動する長さ(回動量)を大きく確保できるようになる。その結果、わずかな押し込み量でブロック体10と当接部44との当接を解除することができる。
【0045】
案内ピン60は、外側ケース30内にレバー40を組み付け、案内ピン誘導長穴31aと案内ピン取付穴43bとが幅方向に連通するように調整した後に、外側ケース30の外側から挿入される。案内ピン60は、その挿入後、先端部をかしめることによって外側ケース30に取り付けられる。なお、レバー40の側部から、案内ピン60に相当する案内突起(図示せず)を突出させ、この案内突起でレバー40の回動を案内するようにしてもよい。この構造であれば、レバー40の樹脂成形時に案内突起を一体に成型することによって、案内ピン60自体の部品点数を削減することができる。
【0046】
回動軸70は、案内ピン60と同様に、回動軸取付穴31b、42bが幅方向に連通するように調整した後に、外側ケース30の外側から挿入される。回動軸70は、その挿入後、先端部をかしめることによって外側ケース30に取り付けられる。
【0047】
上述したストッパー装置20を引き戸1の溝部1b内であって、その戸先側1aに取り付けた状態では、引き戸1の表側および裏側からストッパー装置20の操作部41以外の部分が見えないようになる(
図2(A)および
図2(B)参照)。また、ストッパー装置20の操作部41が、引き戸1の溝部1bの戸先側1aの端面の開口1cから表出するようになる(
図2参照)。さらには、ブロック体10についても、戸袋2の内方に取り付けられているので、引き戸1の表側および裏側からブロック体10が見えないようになる(
図2参照)。そのため、引き戸1の意匠性が損なわれることがない。
【0048】
なお、本明細書で使用する「表出」とは、外側から見える程度の意味であり、開口から突出している状態、面一の状態、或いは表面よりも奥まった状態のいずれもが含まれるものである。
【0049】
また、レバー40の操作部41の先端部分は、ストッパー装置20を溝部1b内に組み付けた状態で、引き戸1の溝部1bの戸先側1a端面の開口1cから少しだけ突出するように構成されている。この操作部41の突出長さは、ストッパー装置20を取り付けるときに任意に調整することができる。これにより、利用者が操作部41を押し込む操作を容易に行うことができる。また、利用者の両手が塞がっているときには、突出する操作部41を足で押し込むようにすることで操作することもできる。なお、当然に、操作部41の先端部分が戸先側1a端面の開口1cと面一に、或いは、突出しないように調整して取り付けることもできる。
【0050】
次に、本発明の実施の形態に係るセーフティーストッパーSの機能(作動)・動作について、
図8〜
図10を用いて説明する。
図8(A)はセーフティーストッパーSが機能する前の状態、
図8(B)はレバー40がブロック体10に当接した状態を示している。
図9(A)は操作部41を押圧してブロック体10との当接状態を解除した状態、
図9(B)は
図9(A)の状態から引き戸1をさらに開いた状態を示している。さらに、
図10(A)は
図9(B)の状態から操作部41の押圧力を解除した状態、(B)は
図10(A)の状態から引き戸1を閉じた状態を示している。
【0051】
セーフティーストッパーSが機能する前は、
図8(A)に示すように、引き戸1の戸先側1aがブロック体10よりも戸閉側に位置し、ストッパー装置20がブロック体10に対し離れた位置にある。この状態において、引き戸1は、引き戸1を閉じた状態からセーフティーストッパーSが機能するまでの長さ(
図1で示すL1の長さ)を開閉方向に自由に移動することができる。
【0052】
引き戸1が
図8(A)の状態から所定の位置(引き戸の取手を持つ人の指が戸袋等に挟まれる手前側の位置)に移動すると、
図8(B)に示すように、ブロック体10の当接面12cとストッパー装置20のレバー40の当接部44とが面で当接する。これにより、セーフティーストッパーSが機能することになる。この状態では、引き戸1の戸先部1aが戸袋2の開口部2aから長さL2だけ突出した位置で停止し、引き戸1がこれ以上開かないようになる。
【0053】
当接部44が当接面12cに当接するときの力は、互いの平面で接触することによって、大きな力が局所的に作用しないようになる。また、この力は、回動軸70と案内ピン60とで受けることになる。或いは、レバー40の上面部分を外側カバー30の上側の内面に接触させて、この接触部分でも力が受けられるようにしてもよい。
【0054】
例えば、出入り口から車いすなどを搬入出させるような場合には、より大きな出入り口(開口)を確保する必要がある。そのため、この引き戸1をさらに大きく開ききることができるようにしている。
図9(A)に示すように、引き戸1の戸先部1aが長さL2だけ突出した状態のままで、溝部1bの戸先側1aから表出している操作部41を戸開方向へ押し込む(押圧力Fを作用させる)と、レバー40は、回動軸70を中心に反時計回りの方向R1に回動する。これにより、当接部44がブロック体10の上側に移動し、ブロック体10の当接面12cと当接部44との当接(ロック)が解除される。反時計回りの方向R1への回動は、案内ピン60が案内ピン誘導長穴31aによって案内されながら移動するので、よりスムーズに回動する。このように、本実施の形態に係るセーフティーストッパーSは、従来技術のようにロックを解除するために引き戸1を閉じた状態まで移動させることなく、戸先側1aが長さL2だけ突出した状態のままで、ロックを解除することができる。
【0055】
なお、上述した引き戸1の戸先側1aの突出長さL2(および、開口長さL1)は、開閉方向におけるブロック体10の取付位置を調整することによって任意に変更することができる。これにより、引き戸1の種類や構造などに合わせて、最適な突出長さL2を得ることができる。
【0056】
図9(B)に示すように、当接が解除された状態では、引き戸1を戸開側へ移動させることができる。また、
図10(A)に示すように、当接部44が当接面12cよりも戸開側へ移動したときに押圧力Fを解除すると、レバー40は、傾斜部43の自重によって回動軸70を中心に時計回りの方向R2に回動する。この状態で引き戸1を戸開側に押し込めば、引き戸1を完全に開いた状態まで開ききることができる。
【0057】
一方、
図10(A)の状態から引き戸1を再び戸閉側に移動させると、
図10(B)に示すように、レバー40の傾斜部43の接触面43aがブロック体10の傾斜面12bと接触する。この状態から引き戸1をさらに閉じると、接触面43aの傾斜によってレバー40の傾斜部43が押し上げられてレバー40が反時計回りに回動する。すなわち、操作部41を押し込む操作をすることなく、引き戸1を閉じるだけでレバー40が反時計回りに回動する。そして、傾斜部43がブロック体10を閉方向に乗り越えると、傾斜部43が自重で下がり、レバー40が時計回りに回動する。これにより、
図8(A)の状態に戻ることになる。
【0058】
本発明の実施の形態に係る引き戸装置Hによれば、セーフティーストッパーSが、建屋側部材に取り付けられたブロック体10と、引き戸1の下側に取り付けられ、戸開時にブロック体10に当接することによってロックされ、ロックを解除するレバー40を有するストッパー装置20とで構成されているので、ブロック体10とストッパー装置20の取り付け位置を開閉方向において任意に決定することができる。これにより、ストッパー装置20を引き戸1の戸先側1aに配置することを可能にした。また、ストッパー装置20を引き戸1の戸先側1aに配置することで、ロックを解除する操作を戸先側1aで行えるようになる。そのため、引き戸1aがロックされた位置(利用者の指が挟まれる位置よりも手前側の位置)でロックを解除することができるので、従来技術のようにわざわざ引き戸1を閉じた状態まで移動させる必要がない。また、ロックを解除した後に引き戸1を完全に開ききるまでの距離L2が短いので、その間に利用者の指が戸袋に挟まれるおそれが少なくなる。
【0059】
また、引き戸1の下面に開閉方向へ延びる溝部1bを形成し、溝部1b内の戸先側1aに前記ストッパー装置20を取り付け、溝部1bの戸先側1a端面の開口1cからロックを解除するレバー40の操作部41を表出させているので、引き戸1の表面側および裏面側からストッパー装置20の操作部41以外の部分が見えないようにすることができる。そのため、引き戸1全体としての意匠性が損なわれることがない。
【0060】
さらに、操作部41が溝部1bの戸先側1a端面の開口1cから表出しているので、利用者はこの操作部41を押し込むだけでロックを解除することができ、ロック解除操作を容易に行うことができる。
【0061】
一方、本発明の実施の形態に係るセーフティーストッパーSによれば、引き戸1の床面5側に取り付けられるブロック体10と、引き戸1側に取り付けられ、ブロック体10に当接することによってロックされ、ロックを解除するレバー40を有するストッパー装置20とを備え、ロックを解除するレバー40の操作部41が、ストッパー装置20の戸閉側縁部31d(引き戸閉方向における端部)から表出しているので、ストッパー装置を引き戸1の戸先側に取り付けることで、引き戸1の戸先側1aからこの操作部41を操作することができる。そのため、ロックを解除する操作を戸先側1aで行えるようになり、引き戸1がロックされた位置(利用者の指が挟まれる位置よりも手前側の位置)でロックを解除することができるので、わざわざ引き戸1を閉じた状態まで移動させる必要がない。
【0062】
また、ストッパー装置20には、引き戸1の板厚方向に延びる回動軸70が設けられ、レバー40には、回動軸70を挟んで操作部41の反対側に、引き戸1を開方向へ移動させるときにブロック体10と当接する当接部44が形成されているので、操作部41を戸開方向へ押し込むことによって、回動軸70を中心にレバー40を回動させることができる。これにより、操作部41と反対側に位置する当接部44をこの回動方向に移動させて当接(ロック)を解除することができる。その結果、ロックを解除するための操作部を引き戸1の表面側または裏面側に設けずに構成することができる。
また、当接部44側の重量を操作部41側の重量よりも重くすることで、レバー40に対して回動軸70を中心とする時計回りのモーメント力を与えることができる。
【0063】
さらに、レバー40には、回動軸70と当接部44との間に設けられ、引き戸1を閉方向へ移動させるときにブロック体10と接触しながらレバー40を回動させる傾斜部43が形成されているので、引き戸1を閉じるときにブロック体10とストッパー装置20とがロックされずに引き戸1を閉じることができる。
【0064】
以上、本発明の実施の形態に係るセーフティーストッパーSについて述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
【0065】
例えば、本実施の形態におけるレバー40は、樹脂材料を一体成形したものを用いているが、鋼板をプレス加工した鋼製のレバー140を用いることもできる。
図11は、ストッパー装置の斜視図であって、本発明の実施形態における
図5に対応するものである。また、
図12は、
図6に対応するものである。さらに、
図13は、鋼製のレバー140を使用したセーフティーストッパーS1を引き戸装置H1に使用したものであって、
図9(A)に対応するものである。なお、セーフティーストッパーS1の動作および機能は、上述したセーフティーストッパーSと同じであるため、詳細な説明は省略する。また図中において、本実施形態で使用する部材と同一の部材については、同一の符号を付すことによってその詳細な説明を省略する。
【0066】
ストッパー装置120は、
図11および
図12に示すように、鋼板を折り曲げて形成した外側ケース130と、鋼板をプレス加工して形成したレバー140と、レバー140を外側ケース130に対して回動させるための回動軸70とで構成されている。
【0067】
外側ケース130は、樹脂で形成された外側ケース30を鋼板で同じ形状に作成したものであり、同じように取付穴32a、33a、回動軸取付穴31bが設けられている。ただし、外側ケース30の案内ピン誘導長穴31aは設けられていない(案内ピン60は使用しない)。
【0068】
レバー140は、樹脂製のレバー40と同様に、紙面の正面から見て左側(戸閉側)に位置する操作部141と、この操作部141から戸開側に延びる連結部142と、この連結部142の終端部から戸開方向の下側に斜めに延びる傾斜部143と、この傾斜部143の終端部に形成された当接部144とで構成されている。これらの各部は、1枚の鋼板から一体に作られている。なお、製作のし易さを考慮して、各部を別体で構成し、それぞれを溶接等でつなぎ合わせるようにしてもよい。
【0069】
操作部141および連結部142は、
図12に示すように、鋼板を左右から突き合わせる態様で折り曲げることによって形成されている。これにより、穴加工を後工程で行わないで取付長穴142a(レバー40の取付長穴42aに相当)を形成することができる。また、連結部142の終端部には回動軸取付穴142bが形成されている、この回動軸取付穴142bは、折り曲げ加工前にプレス加工で打ち抜いた穴をそのまま使用したものである。傾斜部143および当接部144は、鋼板をそのまま折り曲げて製作したものである。
【0070】
このように鋼製のストッパー装置120を用いたセーフティーストッパーS1では、金属製であることから、耐摩耗性、耐衝撃性に優れている。例えば、当接部144とブロック体10とが当接する際の力や衝撃には、金属製のレバー140の方が高い強度を有する。そのため、誘導ピン60および誘導ピン案内長穴31aを設けなくともストッパー装置120に十分な強度を持たせることができる。また、誘導ピン60がなくても、レバー140をスムーズに回動させることができる。
【0071】
また、本実施形態では、引き戸装置Hの引き戸1の下側にセーフティーストッパーSを設けているが、引き戸1の上側に設けることもできる。
図14は、セーフティーストッパーS2を引き戸201の上側に設けた引き戸装置H2を示す概要図である。なお、図中において、本実施形態で使用する部材と同一の部材については、同一の符号を付すことによって詳細な説明を省略する。
【0072】
ブロック体10は、引き戸201の上側の天井面205に取付ねじ21(
図8(A)参照)を介して取り付けられている。なお、天井面205には、引き戸201の開閉方向に沿って上側レールを取り付け、この上側レールにブロック体10を取り付けるようにしてもよい。なお、本明細書では、上述した「天井面205」または「上側レール」を総称して、「建屋側部材」と記載する。
また、引き戸201の上面には、開閉方向に沿って連続する溝部201b(溝部1bを上下逆にしたもの)が形成されており、ストッパー装置220は、引き戸201の上側であって戸先側201aの先端部分に収容される態様で取り付けられている。なお、引き戸201の下側には、案内ローラ(図示せず)が取り付けられており、案内ローラが下側レール(図示せず)上を開閉方向に沿って自由に転動することによって、引き戸1が開閉方向に移動するようになっている。
【0073】
このストッパー装置220は、本実施形態で記載したストッパー装置20を上下逆にして取り付けたものであり、さらに、レバー40の傾斜部43が自重で下がらないようにするために、傾斜部43を上側に付勢する押圧ばね206が追加で取付けられている。この押圧ばね206の一端は外側ケース30の内面の下側に支持されており、他端はレバー40の傾斜部43の下面で支持されている。なお、押圧ばね206の代わりに、回動軸70にトーションばね(図示せず)を設け、このトーションばねでレバー40を上側に付勢するようにしてもよい。
【0074】
このようなストッパー装置220の構成であっても、引き戸201を戸開側に移動させたときに、レバー40の当接部44がブロック体10の当接面12cに当接し、引き戸1がそれ以上開かないようにすることができる。また、当接した状態のまま操作部41を押圧することで、押圧ばね206の付勢力に抗して当接部44を下側に下げることができるので、当接部44と当接面12cとの当接を解除することができる。また、操作部41の押圧力を解除することで、レバー40の傾斜部43が押圧ばね206の付勢力で上側に回動するので、当接部44を再びブロック体10と当接可能な状態(元の状態)まで戻すことができる。
【0075】
このような引き戸装置H2では、セーフティーストッパーS2を引き戸201の上側に構成することで、小さな子供などがいたずらで操作部41を押し込むことを防止することができる。また、利用者の足や荷物が操作部41に当たって押し込んでしまうような誤動作を防止することができる。そのため、より信頼性の高い引き戸装置H2を提供することができる。
【0076】
さらに、本実施の形態に係るセーフティーストッパーSは、引き戸1を開いたときに引き戸1が戸袋2内に収容される態様の引き戸装置Hに取り付けているが、これに限定されるものではない。例えば、
図15(A)〜
図15(C)に示すように、2枚の引き戸1、300を板厚方向に並べた引き戸装置H3にセーフティーストッパーSを適用することもできる。なお、図中において、本実施形態で使用する部材と同一の部材については、同一の符号を付すことによって詳細な説明を省略する。
【0077】
セーフティーストッパーSおよび引き戸1は、本実施形態で説明したもの同一のものであり、2枚の引き戸1、300のうちの一方の引き戸1に取り付けられている。この引き戸1は、
図15(B)に示すように、戸先側1aが長さL2だけ突出した位置よりもそれ以上に開かないようにできる。また、本実施の形態に記載した操作と同様の操作を行うことにより、引き戸1が長さL2だけ突出した状態のままロックを解除し、引き戸1を完全に開ききるようにすることができる(
図15(C)参照)。
【0078】
特に、この2枚の引き戸1、300で構成した引き戸装置H3では、引き戸1の表面側の全体が利用者から常に見えてしまうことになる。そのため、引き戸1の表面側からストッパー装置20およびブロック体10が見えないようにしたセーフティーストッパーSは、従来技術と比較して、引き戸1の意匠性を損なうことがなく有用である。
【0079】
なお、当然に、引き戸1側にセーフティーストッパーSを取り付ける以外の構造であってもよい。例えば、引き戸300側にセーフティーストッパーS取り付けることもできるし、引き戸1、300の両方に取り付けることもできる。さらには、上述した変形例で記載したセーフティーストッパーS2を引き戸1(300)の上側に設けることもできる。
【0080】
また、本発明の引き戸装置H、H1、H2、H3には、引き戸1、201の閉じ際(或いは開き際)に引き戸を強制的に閉じさせる(或いは開かせる)ためのクローザーを併用して設置することもできる。これにより、必要に応じて引き戸1、201を戸袋等に確実に収容することができるようになる。
【0081】
さらにまた、本実施の形態では、「ロックした状態」、「ロック状態」として、当接部44とブロック体10の当接面12cとが当接している(突き当たっている)状態を説明しているが、これに限定されるものではない。例えば、当接部44とブロック体10とが互いに係合爪或いは係合爪と係合穴によって係合(係止)され、引き戸1、201が所定の位置よりも開けないようにする構造や状態も、本明細書でいう「ロック状態」に含まれる。また、レバーの回動によって係合爪或いは係合穴との係合(係止)が解除され、引き戸1、201がさらに開ききれるようになる構造や状態を、ロックが解除された状態ということができる。