(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6384857
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】吹き返し防止部付き集塵袋
(51)【国際特許分類】
B01D 46/02 20060101AFI20180827BHJP
A47L 9/14 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
B01D46/02 Z
A47L9/14 Z
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-145134(P2014-145134)
(22)【出願日】2014年7月15日
(65)【公開番号】特開2016-19951(P2016-19951A)
(43)【公開日】2016年2月4日
【審査請求日】2017年6月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】503171913
【氏名又は名称】サコス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000142919
【氏名又は名称】株式会社呉英製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100082658
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 儀一郎
(72)【発明者】
【氏名】原 甲太
(72)【発明者】
【氏名】小谷 三典
【審査官】
目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−176225(JP,A)
【文献】
実開平04−033915(JP,U)
【文献】
特開2005−287711(JP,A)
【文献】
特開昭61−045718(JP,A)
【文献】
特開2000−237516(JP,A)
【文献】
米国特許第5607735(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D39/00−39/20
B01D46/00−46/54
A47L9/10−9/19
B08B15/00−17/06
B65G69/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風機の排気口に取り付けられる筒状をなす取り付け部と、前記送風機により吸引された粉塵を集塵すると共に送風された風は通過させるべく送風方向に所定の長さを備えた円筒状に膨出する膨出集塵部と、を備え、前記取り付け部の径はφ330mmで、前記膨出集塵部の長手方向の長さが3mの集塵袋において、
膨出集塵部は、送風方向の長さが前記の集塵袋における膨出集塵部の長さの半分長とされ、かつ膨出する径が前記の集塵袋における膨出集塵部の径の倍径となるよう構成されて、取り付け部の径はφ330mmで、前記膨出集塵部の長手方向の長さが3mの前記の集塵袋と同等の内部表面積を有するものとし、
前記筒状をなす取り付け部の外周からは、前記膨出集塵部の外周に向かって張り出す様連結された肩口部が形成され、かつ前記筒状をなす取り付け部の、前記送風機の排気口に取り付けられる端部の反対側である他端部からは前記膨出集塵部の内部において、送風方向に向かって筒状に延出する吹き返し防止筒が設けられた、
ことを特徴とする吹き返し防止部付き集塵袋。
【請求項2】
前記肩口部は、筒状をなす取り付け部の外周から膨出集塵部の外周に向かって集塵袋の内径が徐々に広がり、斜めにカットされた形状になる様形成された、
ことを特徴とする請求項1記載の吹き返し防止部付き集塵袋。
【請求項3】
前記集塵袋は、2ミクロンの大きさの粉塵を捕集できる程度に目が細かい通気シートを使用したものである、
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載の吹き返し防止部付き集塵袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集塵した粉塵の吹き返し防止部を有する集塵袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築現場、土木現場等において、ハツリ工事やサンダー掛け等、切削・切断・研磨作業時には必ず粉塵が発生する。そして、この粉塵を集塵するため、例えば送風機の排気口側に集塵袋を固定して、前記の粉塵を集塵する、いわゆる集塵装置が存在する。
【0003】
ここで、従来、例えば、2ミクロン程度の粉塵等に対して、70%程度の粉塵捕集率を得るには、集塵袋につき比較的通気性シートの目が細かいものを使用しなければならない。そして、この場合、送風機から送り込まれる風が前記通気性シートからスムーズに抜ける様構成するためには、前記送風機が略φ300程度の場合は集塵袋の直径を例えばφ330程度とすると、全長を3m以上としなければならなかった。
【0004】
ところで、一直線上に3m以上のスペースを確保できない前記建築現場あるいは土木現場においては、前記3m以上の長さを必要とする集塵袋の使用はきわめて難しい。
そして、集塵袋の全長を短くしたものも存在するが、全長を短くした場合には、通気性シートの目を粗くしなければならず、そのため粉塵捕集率が低くなってしまう。
【0005】
ここで、粉塵捕集率を下げずに集塵袋の全長を半分の例えば、1.5m程度にするためには、前記集塵袋の直径を倍の太さ(例えばφ660程度)にして表面積を同等にする必要がある。
【0006】
しかしながら、送風機の送風口の径と、該送風口に取り付けられる集塵袋の径が異なることで、集塵袋の長手方向の後端部に吹き付けられた送風機の風が集塵袋内部を回り込み、集塵袋が目詰まりを起こす前に逆流し、送風機の吸い込み口より粉塵が漏れ出ることもあり、この現象により集塵量の低下をもたらすものとなっていた。
【0007】
また、従来より各種の集塵袋も提案されているが、いずれの集塵袋も一直線上に例えば3mのスペースを確保できない建築現場あるいは土木現場においてスムーズに、かつ確実に集塵できる集塵袋の提案ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−138332号公報
【特許文献2】特許第3916893号公報
【特許文献3】特許第3955070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明による集塵袋は、前記従来の課題を解消するために創案されたものであり、一直線上に例えば3mのスペースを確保できない建築現場あるいは土木現場においてもスムーズに、かつ確実に集塵できる集塵袋を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の吹き返し防止部付き集塵袋は、
送風機の排気口に取り付けられる筒状をなす取り付け部と、前記送風機により吸引された粉塵を集塵すると共に送風された風は通過させるべく送風方向に所定の長さを備えた円筒状に膨出する膨出集塵部と、を備え、前記取り付け部の径は
φ330mmで、前記膨出集塵部の長手方向の長さが
3mの集塵袋において、
膨出集塵部は、送風方向の長さが前記の集塵袋における膨出集塵部の長さの半分長とされ、かつ膨出する径が前記の集塵袋における膨出集塵部の径の倍径となるよう構成されて、取り付け部の径は
φ330mmで、前記膨出集塵部の長手方向の長さが
3mの前記の集塵袋と同等の内部表面積を有するものとし、
前記筒状をなす取り付け部の外周からは、前記膨出集塵部の外周に向かって張り出す様連結された肩口部が形成され、かつ前記筒状をなす取り付け部の、前記送風機の排気口に取り付けられる端部の反対側である他端部からは前記膨出集塵部の内部において、送風方向に向かって筒状に延出する吹き返し防止筒が設けられた、
ことを特徴とし、
または、
前記肩口部は、筒状をなす取り付け部の外周から膨出集塵部の外周に向かって集塵袋の内径が徐々に広がり、斜めにカットされた形状になる様形成された、
ことを特徴とし、
または、
前記集塵袋は、2ミクロンの大きさの粉塵を捕集できる程度に目が細かい通気シートを使用したものである、
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明による集塵袋であれば、一直線上に例えば3mのスペースを確保できない建築現場あるいは土木現場においてスムーズに、かつ確実に、すなわち、粉塵捕集率を下げずに確実に集塵することができるとの優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の集塵袋の構成を説明する説明図(1)である。
【
図2】本発明の集塵袋の構成を説明する説明図(2)である。
【
図3】本発明の集塵袋の構成を説明する説明図(3)である。
【
図4】本発明の集塵袋の構成を説明する説明図(4)である。
【
図5】本発明の集塵袋の構成を説明する説明図(5)である。
【
図6】本発明の集塵袋の構成を説明する説明図(6)である。
【
図7】本発明の集塵袋の構成を説明する説明図(7)である。
【
図8】従来の集塵袋の構成を説明する説明図である。
【
図9】集塵袋を使用して集塵した結果を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を図に示す実施例に基づいて説明する。
【0014】
図において、符号1は送風機を示す。そして、この送風機1の排気口2には集塵袋3が取り付けられる。
【0015】
しかして、この集塵袋3は、例えば、2ミクロン程度の大きさの粉塵等に対して、約70%程度の粉塵捕集率が得られる比較的通気性シートの目が細かい部材で、例えばポリエステルなどの合成樹脂などが使用される。
【0016】
また、この集塵袋3は、前記送風機1の排気口2に取り付けられる取り付け部4と、前記送風機1により吸引された粉塵を集塵すると共に送風された風は内部を通過させるべく送風方向に所定の長さを備えた略円筒状に膨出する膨出集塵部5とを備えて構成される。
【0017】
ここで、従来の集塵袋(
図8)は、送風機1の排気口2に取り付けられる取り付け部4の径は略φ330程度で、しかも膨出集塵部5の長手方向の長さは3m以上を必要としていたのは既に述べたとおりである。
【0018】
しかしながら、一直線上に3mほどのスペースを確保できない前記建築現場あるいは土木現場は数多く存在しており、そのため本件発明が創案されるに至った。
【0019】
しかして、本発明の膨出集塵部5は、長手方向、すなわち送風方向の長さが、従来の略半分の長さに設定される。そして、該膨出集塵部5が膨出したときの径は、従来の集塵袋の径の略2倍の径となるように構成してある。これにより、膨出集塵部5の内部の表面積を従来の集塵袋と略同等のものとすることが出来、略同等の粉塵捕集率を得ることが出来る。
【0020】
ここで、本発明の集塵袋3の取り付け部4から膨出集塵部5に向かっては、該取り付け部4の外周から膨出集塵部5の外周に向かって外側に張り出す様連結された肩口部6が形成されている。
【0021】
また、前記取り付け部4の他端部からは前記膨出集塵部5の内部に、送風方向、すなわち長手方向に向かって延出する吹き返し防止筒7が設けられている。
【0022】
この膨出集塵部5の内部に突設されて張り出す吹き返し防止筒7の長さについては何ら限定されないが、通常200mmから400mm程度の長さが好ましいものとされる。
【0023】
ここで、該肩口部6の形状を
図5乃至
図7に示す。
図5に示す実施例では、取り付け部4の先端から膨出集塵部5の後端までの長さを1450mmにして形成してあるが、その中で取り付け部4の長さは50mmと短く、また、膨出集塵部5の長さは1400mmと長くしてある。そして、膨出集塵部5の内部に設けられた吹き返し防止筒7の長さは前記取り付け部4の他端部から270mmの長さで送風方向へ向かって延出するよう形成されている。
【0024】
次に、
図6に示す実施例では、取り付け部4の先端から膨出集塵部5の後端までの長さを1500mmにして形成してあるが、その中で取り付け部4の長さは100mmとし、また、膨出集塵部5の長さは1400mmとしてある。そして、膨出集塵部5の内部に設けられた吹き返し防止筒7の長さは前記取り付け部4の他端部から220mmの長さで送風方向へ向かって延出するよう形成される。
さらに、
図7に示す実施例では、取り付け部4の先端から膨出集塵部5の後端までの長さを1480mmにして形成してあるが、その中で取り付け部4の長さは50mmとし、肩口部6の形成については、取り付け部4の他端部外周から膨出集塵部5の一端側外周に向かって上り勾配を有するよう斜めに張り出す様連結して形成してある。
【0025】
そして、肩口部6の一端から他端までの長さは230mmとして形成し、もって、肩口部6の他端からの膨出集塵部5の後端までの長さは1200mm、肩口部6の一端から膨出集塵部5の後端までの長さは1430mmとされている。
【0026】
そして、膨出集塵部5の内部に設けられた吹き返し防止筒7の長さは前記取り付け部4の他端部から270mmの長さで送風方向へ向かって延出するよう形成される。
【0027】
以上において、従来のφ330,長さ3mの集塵袋を使用した場合と前記
図5乃至
図7に示す本件発明による集塵袋を使用した場合につき、簡単な集塵試験を行ったところ、
図9に示すような結果を得ることが出来た。ここで、集塵量とは送風機による集塵作業から、集塵袋の中で送風の吹き返しが発生するまでの間に、集塵袋内に溜まった粉塵、ここではセメントの量を計測したものである。
【0028】
しかして、従来版(
図8)では、74.1g、
図5の集塵袋では73.1g、
図6の集塵袋では92.2g、
図7の集塵袋では98.1gの捕捉した粉塵の量が確認された。
【0029】
この結果から、本件発明の集塵袋では、送風の吹き返しが起こるまでに、全長の長さが従来の略半分程度にもかかわらず、従来の集塵袋とほぼ同様かそれ以上の集塵量を得ることが出来たのである。
【0030】
ところで、
図5乃至
図7に示す集塵袋は、例えば、
図5乃至
図7に図示されている形での型紙を一対用意し、それを接続することで簡単に作成することが出来る。尚、内部に設けられる吹き返し防止筒7は取り付け部4内で縫い合わすなどされて接続されるものとなる。
【0031】
そして、上記のように作成された集塵袋は
図1に示す様に、集塵作業が行われると、断面略楕円形状に幅方向に広がって膨出する。従って、狭い現場においては通路を塞いでしまうとの懸念がある。そこで、かかる場合には、
図2乃至
図4に示す如く縦方向に広がるようにセットすれば通路の妨げにはならない。
【0032】
しかし、
図5,
図6に示す集塵袋であると、
図4から理解されるように、肩口部6が潰れてしまう。しかし、
図7に示す集塵袋では、肩口部6が斜めにカットされて形成されているため、肩口部6が潰れることがなく、きわめて効率のよい集塵作業が行えるものとなる。
【符号の説明】
【0033】
1 送風機
2 排気口
3 集塵袋
4 取り付け部
5 膨出集塵部
6 肩口部
7 吹き返し防止筒