(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る超音波溶着装置の好ましい実施形態について、
図1〜
図6を参照して説明する。
【0012】
本発明の第一実施形態に係る超音波溶着装置1は、
図1、2及び4に示すように、回転テーブル2、受け型3、及びホーン4を備えている。
【0013】
回転テーブル2は、回転体の一例であり、所定の軸Oを中心に水平方向に回転可能に形成され、モータなどの駆動手段からの動力を受けて回転する。また、駆動手段がCPUを備えるコンピュータによりオンオフ制御されることで、回転と停止を繰り返す間欠回転を行うことができる。
【0014】
受け型3は、ネジ、ボルトなどの螺着手段を介して回転テーブル2に取り付け可能に構成され、その上面に環状につながる連続凸部31を備えている。本実施形態の連続凸部31は、例えば、円状につながる連続凸部として形成されている。
連続凸部31は、全周に亘って、例えば、5〜10mmなどの幅を有する平坦面を上面に備えており、被溶着体5がこの平坦面とホーン4との間で挟圧されるとともに超音波振動を受けることで、
図3に示すように、平坦面と同じ形状の溶着部50が形成されることになる。
また、連続凸部31の高さ(受け型3上面から連続凸部31平坦面までの距離)は、被溶着体5の厚みに応じて任意に設定することができる。
【0015】
また、受け型3は、被溶着体を保持する保持手段として、複数の針状体32を備えている。
針状体32は、受け型3の上面において鉛直方向に向けて突設され、被溶着体5を所定の目合いを有する合成繊維(熱可塑性)からなる布状体としたときには、被溶着体5を受け型3に対して押し付けることにより、針状体32が被溶着体5を突き通して保持する保持状態となる。また、この保持状態の被溶着体5を受け型3から離間するように上方に持ち上げることにより、被溶着体5は針状体32から脱抜される。
【0016】
ホーン4は、超音波振動を被溶着体5に伝達する装置である。
ホーン4は、所定の発振器と接続されることで縦振動を発生する振動子(不図示)と接合されており、被溶着体5に対向する対向面41を放射面として超音波振動を被溶着体5に伝達する。
対向面41は、
図2に示すように、連続凸部31のすべてと重ならず一部と重なる大きさを有し、本実施形態では、ホーン4の汎用性を高めるため、矩形形状(長方形)に形成されている。
また、ホーン4は、所定のプレス装置に連結され、連続凸部31(受け型3)に対して進退動作を行うように構成されている。このホーン4の進退動作を行う方向は、軸Oに対して平行な方向(軸に沿う方向)となっている。
【0017】
対向面41と連続凸部31の重なる範囲すなわち溶着範囲Sは、円弧形状を有している。溶着範囲Sは、連続凸部31の内側線31a、連続凸部31の外側線31b、及び対向面41の外形線41aで区画される領域であり、一回の超音波溶着により、この溶着範囲Sに対応する溶着部が被溶着体5に形成されることになる。
【0018】
このように溶着範囲Sは円弧形状を有しているため、
図3に示すような一つながりの環状の溶着部50を形成するためには、複数回の超音波溶着を行う必要がある。また、このような複数回の超音波溶着を行うにあたり、溶着部が不連続となり溶着部間に非溶着部が形成されないようにするためには、溶着部の重複する範囲すなわち、オーバーラップ溶着部51を設ける必要がある。
そこで、このようなオーバーラップ溶着部51を設けるために、軸Oを中心とする溶着範囲Sに対応する角度よりも小さい回転角での間欠回転を回転テーブル2に行わせる。
【0019】
本実施形態では、対向面41の形状が連続凸部31と同じ曲率を有していないことから、溶着範囲Sに対応する角度は、内側線31aと外形線41aとで定まる角度Bから、外側線31bと外形線41aとで定まる角度Cまでの範囲の角度となる。
回転テーブル2の間欠回転を、角度Cよりも小さく、角度Bより大きく設定することもできるが、この場合、溶着部間に微小な非溶着部が形成されることになり、好ましくない。
そこで、溶着部間に非溶着部が形成されないようにするためには、溶着範囲Sに対応する角度のうち最も小さい角度Bを基準角度とし、回転テーブル2の間欠回転角度を、この角度Bよりも小さく設定する必要がある。
溶着範囲Sに対応する角度Bを、例えば110°と特定したときには、回転テーブル2の間欠回転角度Aを角度Bよりも小さい、例えば90°に決定することができる。
【0020】
回転角度規制手段は、回転テーブル2の間欠回転角を角度Aに規制する。
回転角度規制手段は、例えば、回転テーブル2を回転させるモータを制御するコンピュータとすることができる。
モータは、エンコーダを備えるサーボモータ、又はステッピングモータなどの回転角を制御可能なモータが好ましく、コンピュータは、このようなモータを制御することで、回転テーブル2に角度Aの間欠回転と停止とを交互に繰り返す動作を行わせる。
また、このコンピュータは、同時にホーン4に進退動作を行わせるプレス装置を制御する。
具体的には、モータの間欠回転中は、ホーン4を連続凸部31から後退(離間)させ、モータの停止中にホーン4を連続凸部31に進出(接近)させるようにプレス装置を制御する。
進出時は、ホーン4と連続凸部31との間で被溶着体5を、例えば、2200N(0.45Pa)の力で約0.7秒間、挟圧することが好ましい。
なお、回転角度規制手段は、上記に限らず、角度Aごとにラッチするラッチ機構などを採用することもできる。
【0021】
以上のような構成を備える超音波溶着装置1において、連続凸部31を覆うように被溶着体5(布状体)を少なくとも2枚を重ねた状態又は1枚を折って重ねた状態で受け型3に載置する。そして、
図2の実線に示す位置において、ホーン4に紙面垂直方向に沿って進退動作を行わせるとともに(ホーン4は回転しない)、回転テーブル2に回転角度Aを90°とする間欠回転を行わせ、回転テーブル2を一回転させる。
そうすると、合計4回の間欠溶着が行われ(二点鎖線参照)、
図3に示すように、4つのオーバーラップ溶着部51を備えるとともに、途切れることなく環状につながる溶着部50の形成された被溶着体5が製造されることになる。
このような被溶着体5は、溶着部50の周縁に沿って切断することにより、例えば、加湿器に内蔵される円形の吸水性フィルターなどに利用できる。
【0022】
このオーバーラップ溶着部51は、角度Aをさらに小さくすることで、その範囲を広げることもできる。
また、オーバーラップ溶着部51の数を、以下のように増加させることもできる。
【0023】
図4は、被溶着体5に8つのオーバーラップ溶着部51を形成するときの、ホーン4の配置と回転角Aの関係を示す間欠溶着工程の模式図である。
この例では、オーバーラップ溶着部51の数を増加させるために、ホーン4の位置及び回転角Aを
図2から変更してある。
具体的には、ホーン4を軸Oと直交する方向に移動可能に構成するとともに、ホーン4を
図2からP方向、すなわち、軸Oから離間する方向に移動させてある。
このように、ホーン4を軸Oと直交する方向に移動可能に構成することにより、ホーン4自体を取り換えることなく、溶着範囲Sを拡縮することができ、ホーン4を軸Oに近づけることで溶着範囲Sが広がり、ホーン4を軸Oから遠ざけることで溶着範囲Sが狭まることになる。
【0024】
図4に示す例では、
図2に示す例に比べてホーン4を軸Oから遠ざけてあり、これにより、溶着範囲Sが狭くなるようにしてある。
この溶着範囲Sから、これに対応する角度B(基準角度)を例えば50°と特定することができ、また、回転テーブル2の間欠回転角Aを角度Bよりも小さい、例えば45°に決定することができる。
これにより、回転テーブル2を一回転させると、合計8回の間欠溶着が行われ(二点鎖線参照)、8つのオーバーラップ溶着部51を備えるとともに、途切れることなく環状につながる溶着部50の形成された被溶着体5が製造されることになる。
このようにオーバーラップ溶着部51の数を増加させることにより、溶着強度を増加させることができる。また、オーバーラップ溶着部51の数の増加は、オーバーラップ溶着部51の範囲の拡大よりも、被溶着体5が受ける負担(熱やけ、熱硬化など)が少ないと考えられる。
【0025】
図5は、本発明の第二実施形態に係る超音波溶着装置1を示す斜視図である。
この超音波溶着装置1は、回転体として、回転テーブルに代えて回転ドラム2を備え、ホーン4の進退動作の方向が軸Oと直交する方向となっている点で、第一実施形態に係る超音波溶着装置と相違する。
また、受け型3及び連続凸部31は、回転ドラム2の周面に設けられ、連続凸部31の表面は曲面として形成されている。これに応じてホーン4の対向面41は、連続凸部31の曲面と同じ曲率を有する矩形状の曲面で形成してある。被溶着体5(布状体)は、針状体32を介して、少なくとも2枚を重ねた状態又は1枚を折って重ねた状態で回転ドラム2の周面に巻き付けるように取り付けることができる。
【0026】
このような超音波溶着装置1においても、溶着範囲Sは対向面41と連続凸部31の一部が重なる大きさを有するため、環状の溶着部50を形成するためには、複数回の超音波溶着を行う必要がある。
そこで、軸Oを中心とする溶着範囲Sに対応する角度よりも小さい回転角での間欠回転を回転ドラム2に行わせ、これに同期させてホーン4を軸Oと直交する方向に進退動作させる。これにより、オーバーラップ溶着部51を備えるとともに、途切れることなく環状につながる溶着部50の形成された筒状の被溶着体5が製造されることになる。
このような被溶着体5は、例えば、袋、網などに利用できる。
【0027】
以上の説明したような間欠溶着工程は、
図6に示すような手順(超音波溶着方法)により実現することができる。
まず、ホーンの対向面と連続凸部の重なり範囲に対応する角度を特定する(S1)。
この角度に範囲があるときには、最も小さい角度を基準角度として特定する。
次いで、回転体の回転角度Aを、上記で特定した角度よりも小さい角度に設定する(S2:回転角度規制工程)。
続いて、超音波溶着を行う溶着回数を設定する。溶着回数は、360°を回転角度Aで除した商に決定する(S3)。この商は整数が好ましいことから、この商が整数となるように、回転角度Aの値を選定する。また、商が整数にならないときには、繰り上げた値を溶着回数とする。この場合、回転体は一回転以上回転することになるものの、非溶着部の発生を避けることができる。
次に、連続凸部31を覆うように被溶着体5(布状体)を少なくとも2枚を重ねた状態又は1枚を折って重ねた状態で受け型3に載置する。そして、ホーン4を受け型3に対して進出(接近)させるとともに、ホーン4と連続凸部31との間で被溶着体5を挟圧しながら超音波を発振する(S4:溶着工程)。これにより被溶着体5に溶着範囲Sを有する溶着部が形成される。
次いで、ホーン4を受け型3から後退(離間)させながら、回転体を回転角度Aだけ回転させる(S5:間欠回転工程及び回転角度規制工程)。その後、溶着回数が設定された回数に達したか否かを判定し、達しないと判定したときには(S6−No)、S4及びS5の動作を繰り返し行う(間欠回転工程、回転角度規制工程及び溶着工程)。
溶着回数が設定された回数に達したと判定したときには(S6−Yes)、溶着工程を終了する。
このような間欠溶着工程(超音波溶着方法)を実行することにより、途切れることなく環状につながる溶着部50の形成された被溶着体5を製造することができる。
【0028】
以上説明したように、本実施形態の超音波溶着装置1及び超音波溶着方法によれば、間欠回転時における回転体の回転角度を、ホーンの対向面と連続凸部が重なる範囲に対応する角度よりも小さい角度に規制するので、複数回行われるそれぞれの超音波溶着、すなわち挟圧工程ごとに、被溶着体に重複溶着されるオーバーラップ溶着部が形成されることから、溶着部が不連続となることなく、途切れずにつながる環状の溶着部を形成することができる。
【0029】
以上、本発明の超音波溶着装置及び超音波溶着方法の好ましい実施形態について説明したが、本発明に係る超音波溶着装置及び超音波溶着方法は上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることはいうまでもない。
【0030】
例えば、回転体と受け型は一体でもよく、別体でもよい。
また、回転体の駆動手段は手動でもよく、手動で回転と停止を繰り返せばよい。回転体を手動により間欠回転させるときの回転角度規制手段は、回転体と連動して回転するとともに間欠回転角度Aごとに溝を有する歯車と、先端がバネ等により溝に向けて付勢される爪部材とを備え、回転体が角度Aの回転を行うごとに、爪部材の先端が歯車の溝に係止されるラッチ機構(ラチェット機構)を採用することもできる。
【0031】
また、ホーン4を軸Oと直交する方向に移動可能とする構成は、特に限定されないが、ホーン4の取り付け位置を変更できる構成(例えば、ホーン4を固定するネジ等を緩めてホーン4を異なる位置に固定するなど)、軸Oと直交する方向に延びるガイド棒を設けるとともに、このガイド棒に案内されながらホーン4を移動させるなど、様々な方法から適宜選択することができる。
【0032】
また、第一本実施形態では、連続凸部の形状を円としたが、楕円、四角、ひし形、星型、などの環状につながる形状ならば、任意の形状を採用することができる。
また、環状には、途切れることなく全周がつながるものだけでなく、一部のみが途切れているものも含むとすることができ(連続凸部の一部も途切れる)、このような構成により、第一本実施形態の超音波溶着装置により、U字状につながる溶着部を有する被溶着体5、すなわち袋体を製造することもできる。
また、本実施形態では、被溶着体を布状体としたが、これに限定させず、熱可塑性のプラスチック及びプラスチックシートなどでもよい。