(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ウエハレベルCSP技術により作製される撮像装置は小型であるため、内視鏡の細径化に大きく寄与している。
【0003】
ウエハレベルCSP型の撮像装置の製造方法では、最初に、半導体ウエハに、複数の受光部と、それぞれの受光部と接続された複数の外部電極が形成される。半導体ウエハの受光面にガラスウエハが接着されて接合ウエハが作製される。接合ウエハの受光面と対向する対向面側から外部電極に到達するビアが形成される。接合ウエハの切断により得られた撮像装置の受光面はカバーガラスで覆われているが、ビアの底面に露出している外部電極を介して受光部と電気信号を送受信することができる。
【0004】
日本国特開2014−75764号公報には、貫通トレンチの傾斜している壁面に、それぞれが受光面の外部電極と接続されている複数の電極パッドが列設されている撮像素子が開示されている。複数の電極パッドのそれぞれは、バンプを介して配線板の端部に列設された複数の接合電極と接合されている。配線板のもう一方の端部には信号ケーブルが接合されている。
【0005】
小型の撮像装置の電極パッドの配設間隔(配設ピッチ)は非常に狭い。このため、撮像素子の電極パッドと配線板の接合電極とを半田接合するときに、半田バンプの大きさが大きいと、溶融した半田が広がってしまい、隣り合うバンプ同士が短絡してしまうおそれがあった。このため、配設ピッチに応じた小さな(高さの低い)半田バンプを配設する必要がある。一方、配線板と信号ケーブルとは、接合信頼性を担保するには、大きな半田バンプを介して接合する必要がある。
【0006】
すなわち、信号ケーブルとの接合と撮像素子との接合とで、適切な半田バンプの大きさが異なるための、両者の接合信頼性を両立することは容易ではなかった。
【0007】
なお、特開2009−016623号公報には、対向面側から受光面に達する溝(幅広のビア)を形成することで、溝の底面に複数の外部電極を露出した撮像装置が開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。尚、図面は模式的なものであり、各部材の厚みと幅との関係、それぞれの部材の厚みの比率、電極パッドの数、配列ピットなどは現実のものとは異なる。また、図面の相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。さらに、一部の構成、例えば、シリコン基板の表面の酸化シリコン層および配線等は図示を省略している。
【0015】
図1から
図3に示すように、撮像装置1は、シリコン基板からなる撮像素子10と、配線板40と、信号ケーブル50と、を具備する。略矩形の撮像素子10の受光部11が形成された受光面10SAの端部には、受光部11と配線(不図示)を介して電気的に接続されている複数の外部電極12が列設されている。
【0016】
撮像素子10の受光面10SAの全面は接着層20を介して透明部材であるカバーガラス30に覆われている。
【0017】
撮像素子10の対向面10SB側には、ともに受光面10SAに対して鋭角に傾斜している傾斜面10SSおよび傾斜面10STを壁面とする溝10Tがある。溝10Tの底面には外部電極12の裏面が露出している。すなわち、溝10Tはシリコン基板を貫通している幅広のビアである。
【0018】
そして、傾斜面10SSには、それぞれが外部電極12と、配線13Lを介して電気的に接続された複数の電極パッド13が列設されている。このため、電極パッド13は、受光部11と電気的に接続されている。なお、配線13Lの延設部が電極パッド13であってもよい。
【0019】
一方、平板状の配線板40の基体41の第1の主面40SAには、第1の端部40S1に複数の第1の接合電極44が列設されており、第1の端部と対向している第2の端部40S2に複数の第2の接合電極46が列設されている。第1の接合電極44は第1の半田バンプ54を介して電極パッド13と接合されている。一方、第2の接合電極46は第2の半田バンプ56を介して信号ケーブル50の導線51と接合されている。第1の接合電極44と第2の接合電極46とは配線(不図示)を介して電気的に接続されている。
【0020】
接合信頼性を高めるため、第1の接合電極44と電極パッド13との接合箇所は封止樹脂57で封止されている。
【0021】
第1の接合電極44の配設ピッチは、第2の接合電極46の配設ピッチよりも狭い。また、第1の半田バンプ54の高さH54は、第2の半田バンプ56の高さH54よりも低い。例えば、第1の半田バンプ54は、高さH54が10μmなのに対して、第2の半田バンプ56は、高さH56が50μmである。
【0022】
配線板40の第1の主面40SAの第1の端部40S1には、複数の第1の半田バンプ54を取り囲んでいる第1の保護膜42が配設されている。一方、第1の端部40S1と対向する第2の端部40S2には、複数の第2の半田バンプ56を取り囲んでいる第2の保護膜43が配設されている。すなわち、第1の保護膜42には複数の開口42Hがあり、第2の保護膜43には複数の開口43Hがある。
【0023】
第2の保護膜43の厚さD43は、第1の保護膜42の厚さD42よりも厚い。例えば、第1の保護膜42は厚さD42が1.0μmであるのに対して、第2の保護膜43は厚さD43が30μmである。
【0024】
撮像装置1は、第1の半田バンプ54の高さH54と第2の半田バンプ56の高さH56とが大きく異なっている。しかし、第1の半田バンプ54、第2の半田バンプ56は、それぞれの高さに応じた厚さの第1の保護膜42、第2の保護膜43に取り囲まれている。このため、溶融しても半田が周囲に広がることはなく、かつ、確実に両者を接合できる、すなわち、撮像装置1は接合箇所の信頼性が高い。
【0025】
<製造方法>
次に撮像装置1の製造方法を説明する。なお、カバーガラス30が接着された撮像素子10は、接合ウエハの切断により作製されるが、以下は個々の撮像素子として説明する。
【0026】
図4Aに示すように、シリコン基板(撮像素子)10の受光面10SAに公知の半導体製造技術を用いて受光部11と、受光部11と配線(不図示)で接続された複数の外部電極12と、が形成される。外部電極12は、銅またはアルミニウム等の金属導体からなる。受光面10SAに接着層20を介してカバーガラス30(ガラスウエハ)が接着される。接着層20は例えば透明の紫外線硬化型樹脂からなる。そして、シリコン基板10の受光面10SAと対抗する対向面10SBに、例えば、フォトレジストからなるエッチングマスク19が配設される。エッチングマスク19には、エッチング領域、すなわち、外部電極12の直上に略矩形の開口がある。
【0027】
図4Bに示すように、シリコン基板10が対向面10SB側から、例えば、KOHまたはTMAH等のアルカリ溶液を用いたウエットエッチング処理され、溝10Tが形成される。溝10Tはシリコン基板10を貫通している幅広のビアである。
【0028】
異方性エッチングにより形成された溝10Tの壁面は、受光面10SAに対して鋭角の傾斜面10SS、10STとなる。そして、溝10Tの底面には複数の外部電極12の裏面が露出している。なお、溝10Tの製造方法等については、出願人が特開2009−016623号公報に詳細に開示している。
【0029】
図4Cに示すように、傾斜面10SSに電極パッド13が配設される。電極パッド13は、溝10Tの底面から傾斜面10SSまで延設された配線13Lにより、外部電極12と電気的に接続されている。
【0030】
なお、
図5に示すように、溝10Tに替えて、切り欠き部10Cを形成してもよい。切り欠き10Cは、ドライエッチング、物理的エッチングまたは機械的な研削等によって形成してもよい。切り欠き部10Cのある撮像素子を有する変形例の撮像装置は、撮像装置1よりも小径である。
【0031】
一方、配線板40は、
図3で示したように、例えばポリイミドを基体41とするフレキシブル配線板である。基体41としては、ガラスエポキシ樹脂等からなる非可撓性基板であってもよい。しかし、後述するように、撮像素子10の投影面内に収容するためには、可撓性基板であることが好ましい。
【0032】
第1の保護膜42の厚さは、小型の撮像装置1の第1の接合電極44の配設ピッチ、言い替えれば、第1の半田バンプ54の高さH54に応じた厚さ、例えば0.1μm以上、3.0μm以下であることが好ましい。上記範囲の薄い膜厚であっても、隣り合う第1の半田バンプ54の短絡を防止するために、第1の保護膜42は、撥半田材料からなることが好ましい。撥半田材料は半田濡れ性が悪い、いわゆる「半田をはじく」材料であり、もちろん、耐熱温度が半田接合温度より高い材料である。
【0033】
第1の保護膜42には、半田に対する接触角θが45度以上、好ましくは60度以上の撥半田材料を用いることができる。第1の保護膜42の半田に対する接触角θが前記範囲以上であれば、半田が広がることを防止できる。接触角θは大きいほど好ましく上限は180度であってもよい。
【0034】
撥半田材料として、酸化シリコン、フッ化マグネシウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化シリコン、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化カルシウム、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、またはテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等を用いることができる。
【0035】
撥半田材料としては、成膜およびパターニングが容易な、酸化シリコンまたは窒化シリコンが特に好ましい。撥半田材料はスパッタ法、蒸着法またはCVD法により成膜される。なお、第1の保護膜42の開口42Hおよび第1の端部40S1以外の領域は、例えば、第1の主面40SAの全面に第1の保護膜42を配設後に、エッチング等により除去される。
【0036】
なお、半田濡れ性は、試験面に半田20mgを溶かし、溶融した半田の試験面に対する接触角θを測定することで評価できる。接合部材23の配線板の基体41であるポリイミドに対する接触角θは30度未満であったのに対して、酸化シリコンに対する接触角θは70度以上であった。
【0037】
一方、第2の保護膜43は、厚さが第2の半田バンプ56の高さH56に応じて、例えば5μm以上、100μm以下であることが好ましい。上記範囲の厚さの第2の保護膜43は、エポキシ樹脂等からなるソルダレジストを印刷法またはインクジェット法等により配設することが好ましい。なお、樹脂からなる第2の保護膜43は可撓性に優れているため、厚くても配線板40の可撓性を損なうことはない。
【0038】
第2の保護膜43を印刷法で配設する場合には、第2の保護膜43の開口43Hは、印刷スクリーンの設計時に考慮される。
【0039】
配線板40に第1の半田バンプ54および第2の半田バンプ56が配設される。第1の半田バンプ54と第2の半田バンプ56とは、例えば、SnAgCu合金、SnZnAl合金等の鉛フリー半田からなり、両者の組成は同じでも良いし異なっていてもよい。例えば、第1の半田バンプ54、56は、半田ペーストを接合電極44、46の上に印刷してもよいし、めっき法により配設してもよい。なお、撮像素子10の電極パッド13に第1の半田バンプ54を配設してもよい。
【0040】
図2等に示すように、配線板40の第1の接合電極44と撮像素子10の電極パッド13とが第1の半田バンプ54を介して接合される。すなわち、配線板40の第1の端部40S1は、撮像素子10の受光面10SAに対して撮像素子10の傾斜面10SSと同じように鋭角に傾斜した角度で固定される。第1の半田バンプ54は高さH54に応じた厚さの第1の保護膜42で取り囲まれている。このため第1の半田バンプ54は溶融しても周囲に広がることはなく、かつ、配線板40の第1の接合電極44と撮像素子10の電極パッド13とを接合する。
【0041】
封止樹脂57が接合箇所に充填され硬化処理される。封止樹脂57は、例えば、未硬化状態では液体の熱硬化型のエポキシ樹脂である。
【0042】
次に、配線板40の第2の接合電極46に信号ケーブル50の導線51が第2の半田バンプ56を介して接合される。第2の半田バンプ56は高さH56に応じた厚さの第2の保護膜43で取り囲まれている。このため、第2の半田バンプ56は溶融しても周囲に広がることはなく、かつ、配線板40の第2の接合電極46と信号ケーブル50の導線51とを接合する。
【0043】
なお、信号ケーブル50が接合された配線板40が撮像素子10に接合されてもよい。また、仮固定された、撮像素子10、配線板40および信号ケーブル50が、同時にリフロー処理により接合されてもよい。
【0044】
以上の説明のように、撮像装置1は接合箇所の信頼性が高い。特に、第1保護膜42は、ソルダレジストからなる第2保護膜43と比較すると非常に薄いが、撥半田材料からなるため、溶融した半田が周囲に広がって短絡が発生することがない。
【0045】
なお、撮像装置1は、撮像素子10よりも後方側(カバーガラスと反対側)に位置する配線板40は、撮像素子10を厚み方向から平面視すると、撮像素子10に重なる領域、すなわち撮像素子10の投影面内に全体が位置している。特に、配線板40が可撓性の場合には、配線板40の長さが長くても湾曲変形することにより撮像素子10の投影面内に全体を配置することができる。撮像装置1は、配線板40が撮像素子10の外形よりも外側にはみ出していないため、細径である。
【0046】
<第2実施形態>
次に第2実施形態の撮像装置1Aおよび第2実施形態の変形例の撮像装置1Bについて説明する。なお、撮像装置1A、1Bは、撮像装置1と類似しているため、同じ機能の構成要素には同じ符号を付し説明は省略する。
【0047】
図6に示すように、撮像装置1Aでは、第1の保護膜42Aが配線板40の第1の主面40SAの第1の端部40S1だけでなく、全体を覆っている。第1の保護膜42Aには、第1の半田バンプ54に対応した開口42H1だけでなく、第2の半田バンプ56に対応した開口42H3がある。すなわち、第1の保護膜42Aは、第1の半田バンプ54および第2の半田バンプ56を取り囲んでいる。
【0048】
撮像装置1Aは、第2の半田バンプ56は、第2の保護膜43の開口43H3だけでなく第1の保護膜42の開口42H3を介して導線51と接合されている。
【0049】
一方、
図7に示すように、変形例の撮像装置1Bでは、第1の保護膜42Bが配線板40の第1の主面40SAの第1の端部40S1だけでなく、全体を覆っている。一方、第2の保護膜43Bは、配線板40の第1の主面40SAの第1の端部40S1を除く領域を覆っている。
【0050】
撮像装置1Aおよび撮像装置1Bは、撮像装置1の効果を有する。さらに撮像装置1Aは、第2の半田バンプ56が第1の保護膜42Aにも取り囲まれているため、撮像装置1よりも信頼性が高い。
また撮像装置1Bは、第1の保護膜42Aが第1の端部40S1を除いて第2の保護膜43Bで覆われているため、配線板40が大きく変形しても、ひび割れ等が発生しやすい第1の保護膜42Aが可撓性の厚い第2の保護膜43Bで覆われているため、撮像装置1Aよりも更に信頼性が高い。
【0051】
<第3実施形態>
次に第3実施形態の撮像装置1Cについて説明する。なお、撮像装置1Cは、撮像装置1、1A、1Bと類似しており、同様の効果を有するため、同じ機能の構成要素には同じ符号を付し説明は省略する。
【0052】
図8および
図9に示すように、撮像装置1Cの配線板40Cの第1の主面40SAには、電子部品60が実装されている。すなわち、配線板40Cの第1の主面40SAに複数の第3の接合電極45が配設されており、電子部品60が複数の第3の接合電極45のそれぞれと、第3の半田バンプ55を介して接合されている。そして、第1の保護膜42Cおよび第2の保護膜43Cが複数の第3の半田バンプ55を取り囲んでいる、すなわち、第1の保護膜42Cには開口42H2があり、第2の保護膜43Cには開口43H2がある。
【0053】
第3の接合電極45の位置は、チップコンデンサ、チップインダクタ等の電子部品60の接合部の位置に応じて設計される。また。ひとつの電子部品60の接合部の数が3以上であってもよい。さらに、配線板40Cには、1個の電子部品60しか実装されていないが、複数の電子部品60が実装されていてもよい。また、第2の主面20SBにも電子部品60が実装されていてもよい。
【0054】
撮像装置1Cは、電子部品60が実装されている配線板40Cが、撮像素子10の外形よりも外側にはみ出していないため、細径である。
【0055】
<第4実施形態>
次に第3実施形態の内視鏡2について説明する。なお、内視鏡2は、すでに説明した撮像装置1、1A〜1Cを挿入部3の先端部3Aに具備する。このため、撮像装置1等の説明は省略する。
【0056】
図10に示すように、内視鏡2を含む内視鏡システム9は、内視鏡2と、プロセッサ5Aと、光源装置5Bと、モニタ5Cと、を具備する。内視鏡2は、挿入部3を被検体の体腔内に挿入することによって、被検体の体内画像を撮像し撮像信号を出力する。すなわち、内視鏡2は挿入部3の先端部に、撮像装置1、1A〜1Fのいずれかを具備する。
【0057】
内視鏡2の挿入部3の基端側には、内視鏡2を操作する各種ボタン類が設けられた操作部4が配設されている。操作部4には、被検体の体腔内に、生体鉗子、電気メスおよび検査プローブ等の処置具を挿入するチャンネルの処置具挿入口4Aがある。
【0058】
挿入部3は、撮像装置1が配設されている先端部3Aと、先端部3Aの基端側に連設された湾曲自在な湾曲部3Bと、この湾曲部3Bの基端側に連設された可撓管部3Cとによって構成される。湾曲部3Bは、操作部4の操作によって湾曲する。
【0059】
操作部4の基端部側に配設されたユニバーサルコード4Bには、先端部3Aの撮像装置1と接続された信号ケーブル50が挿通している。
【0060】
ユニバーサルコード4Bは、コネクタ4Cを介してプロセッサ5Aおよび光源装置5Bに接続される。プロセッサ5Aは内視鏡システム9の全体を制御するとともに、撮像装置1が出力する撮像信号に信号処理を行い画像信号として出力する。モニタ5Cは、プロセッサ5Aが出力する画像信号を表示する。
【0061】
光源装置5Bは、例えば、白色LEDを有する。光源装置5Bが出射する白色光は、ユニバーサルコード4Bを挿通するライトガイド(不図示)を介して先端部3Aの照明光学系3D(
図2B参照)に導光され、被写体を照明する。
【0062】
内視鏡2は、挿入部3の先端部3Aに信頼性の高い撮像装置1、1A〜1Cを具備するため、信頼性が高い。
【0063】
本発明は上述した実施形態、または変形例等に限定されるものではなく、本発明の要旨を変えない範囲において、種々の変更、改変、組み合わせ等ができる。