特許第6384908号(P6384908)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6384908
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】吹付工法及び目地材
(51)【国際特許分類】
   E02D 17/20 20060101AFI20180827BHJP
【FI】
   E02D17/20 104B
【請求項の数】2
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-137500(P2014-137500)
(22)【出願日】2014年7月3日
(65)【公開番号】特開2016-14287(P2016-14287A)
(43)【公開日】2016年1月28日
【審査請求日】2017年4月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】390036504
【氏名又は名称】日特建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000431
【氏名又は名称】特許業務法人高橋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】窪 塚 大 輔
【審査官】 佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−291331(JP,A)
【文献】 特開昭57−187428(JP,A)
【文献】 特開平07−158073(JP,A)
【文献】 特開平07−300967(JP,A)
【文献】 特開2012−026228(JP,A)
【文献】 米国特許第05584600(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 17/20
E02B 3/04− 3/14
E04B 1/62− 1/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地山(G)の法面に所定間隔で目地材(100)を配置し、該法面に吹付材(M)を吹き付ける吹付工法において、法面に垂直な縦方向に延在する第1の部分(101)と該第1の部分(101)の直角方向である横方向に延在する第2の部分(102)を有し且つ断面形状がT字状である目地材を法面に配置し、前記第2の部分(102)に設けた複数の貫通孔(104)にピン状部材(103)を挿入し、目地材(100)を地山(G)固定し、吹付材(M)所定の厚さに吹き付けた吹付層を形成することを特徴とする吹付工法。
【請求項2】
地山(G)の法面に吹付材(M)を吹き付ける吹付工法に用いるために所定間隔で該法面に配置する目地材において、法面に垂直な縦方向に延在する第1の部分(101)、該第1の部分(101)の下部に設けた該第1の部分(101)の直角方向である法面に沿う横方向に延在する第2の部分(102)を有し、断面形状がT字状であり、前記第2の部分(102)には法面に固定するためのピン状部材(103)を挿入可能な複数の貫通孔(104)が形成されていることを特徴とする目地材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吹付工法とそれに用いられる目地材に関する。
【背景技術】
【0002】
法面の安定化のため、法面表面に、例えばコンクリート或いはモルタルの様な吹付材を吹き付ける吹付工法は良く知られている。吹付工法では、吹付材を吹き付ける作業に先立って、図23図24で示すように、法面に所定間隔で目地材200を配置している。
ここで、吹き付けられた吹付材は温度収縮するため、法面の予想しない箇所に「ひび割れ」が生じてしまう恐れがある。目地材を配置すれば、吹付材が温度収縮すると目地材を設けた箇所には隙間が生じるが、目地材を設けた箇所以外には隙間や「ひび割れ」は生じ難い。すなわち、目地材を配置することにより、法面中の他の部分(目地材を配置していない部分)に「ひび割れ」が発生することを抑制することが出来る。
【0003】
法面に目地材を配置するには、図25で示すように目地材200に沿って鉄筋201を配置し、目地材200を鉄筋201に固定し、鉄筋201を地山Gに挿入することにより、目地材200を地山Gに固定している。ここで、符号Lは、吹付材Mを吹き付けることにより形成された吹付層である。
しかし、図25で示すように、吹付材Mが温度収縮して目地材200を設けた箇所に隙間Sが生じると、当該隙間Sから雨水Rが地山Gに浸透し、地山Gの風化を促進してしまうという問題が存在する。そして、雨水Rが地山Gに浸透すると地山Gが脆くなり、目地材200を設けた箇所の隙間Sから(地山Gの)土砂が流出してしまい(風化)、法面が不安定になり、目地材200の部分が劣化してしまう。
そして最終的には、雨水Rが浸入した地山部分の土砂が流出して、目地材200の部分に空洞(いわゆる「巣」)ができてしまう。
【0004】
また、図23図25の目地材200を鉄筋201に固定するためには、目地材200に多数の貫通孔(図示せず)を穿孔して、当該多数の貫通孔の各々に結束線202(いわゆる「針金」)を通して、目地材200と鉄筋201を結束して、一体化する必要がある。
目地材に多数の貫通孔を穿孔して、多数の貫通孔の各々に結束線を通し、目地材と鉄筋を結束して一体化する作業は、煩雑且つ困難な作業であり、特に法面では多大な労力を必要とする。
目地材を使用する吹付工法に関する従来技術は、図23図25で示すもの以外にも存在する(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。しかし、上述した問題点を解消することは企図していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−101106号公報
【特許文献2】特開2006−104902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、吹付材の温度収縮により目地材の箇所に形成された隙間から雨水が浸入し、地山部分の土砂が流出して法面が不安定になることを防止することができ、しかも、目地材を容易に設置することが出来る吹付工法と、それに用いられる目地材の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の吹付工法によれば、地山(G)の法面に所定間隔で目地材(100)を配置し、該法面に吹付材(M)を吹き付ける吹付工法において、法面に垂直な縦方向に延在する第1の部分(101)と該第1の部分(101)の直角方向である横方向に延在する第2の部分(102)を有し且つ断面形状がT字状である目地材を法面に配置し、前記第2の部分(102)に設けた複数の貫通孔(104)にピン状部材(103)を挿入し、目地材(100)を地山(G)固定し、吹付材(M)所定の厚さに吹き付けた吹付層を形成するようになっている。
【0008】
また、本発明の目地材によれば、地山(G)の法面に吹付材(M)を吹き付ける吹付工法に用いるために所定間隔で該法面に配置する目地材において、法面に垂直な縦方向に延在する第1の部分(101)、該第1の部分(101)の下部に設けた該第1の部分(101)の直角方向である法面に沿う横方向に延在する第2の部分(102)を有し、断面形状がT字状であり、前記第2の部分(102)には法面に固定するためのピン状部材(103)を挿入可能な複数の貫通孔(104)が形成されている。
【0009】
本発明の実施に際して、複数部分(例えば上下2つの部分)に分割され且つ内部に貫通孔が形成されている円筒部(4:スライドカラー)と、ナット(5:長ナット)と、半径方向外方に延在する部分と延在しない部分を有するワッシャ(6:花弁ワッシャ)と、ワッシャ(6)を貫通してナット(5:長ナット)の上方領域の雌ネジ(51)に螺合する第1のボルト(7:上側ボルト)と、円筒部(4:スライドカラー)を貫通してナット(5:長ナット)の下方領域の雌ネジ(52)に螺合する第2のボルト(8:下側ボルト)を有する補修・補強用ボルト(3:せん断ボルト)を使用することも可能である。
【0010】
そして補修・補強用ボルト(3:せん断ボルト)を使用する場合は、地山(G)に補修・補強用ボルト(3)の円筒部(4)を埋設するべき層(1:既存コンクリート層)が被覆されており、当該埋設するべき層(1)に上述した補修・補強用ボルト(3:せん断ボルト)を挿入するための挿入孔(10)を穿孔する工程と、
穿孔された挿入孔(10)内に補修・補強用ボルト(3)の円筒部(4)側を挿入する工程と、
第1のボルト(7:上側ボルト)を電動工具(20)で回転する工程と、
(新規吹付層(2)を構成する)吹付材料を吹き付ける工程を有するのが好ましい。
ここで、前記電動工具(20)で回転する工程は、
第1のボルト(7:上側ボルト)の雄ネジ(71)とナット(5:長ナット)の上側領域における雌ネジ(51:上側の雌ネジ)を螺合する工程と、
第2のボルト(8:下側ボルト)の雄ネジ(81)とナット(5)の下側領域における雌ネジ(52:下側の雌ネジ)を螺合する工程と、
円筒部(4:スライドカラー)をナット(5)と第2のボルト(8)のボルトヘッド(82)により軸線方向に圧縮して、半径方向外方に移動する工程と、
半径方向外方に延在する部分と延在しない部分を有するワッシャ(6:花弁ワッシャ)を、第1のボルト(7)のボルトヘッド(72)とナット(5)の上端部により挟み込む工程、
を有しているのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
上述の構成を具備する本発明によれば、目地材(100)は、縦方向に延在する部分(101)と、横方向に延在する部分(102)を有する断面形状(T字状断面形状)を有している。横方向に延在する部分(102)が存在するので、目地材(100)下方の領域の地山(G)は横方向に延在する部分(102)で被覆されており、目地材(100)を設けた箇所に形成された隙間(S)が地山(G)に連通することが防止される。
そのため、吹付材(M)が温度収縮して目地材(100)を設けた箇所に隙間(S)が生じても、隙間(S)と地山(G)は連通しておらず、隙間(S)から浸入した雨水は横方向に延在する部分(102)で遮断され、地山(G)には到達しない。そのため、地山(G)における目地材(100)を配置した領域に雨水(R)が浸透することが防止され、当該領域(地山における目地材を配置した領域)は脆くなってしまうことも防止される。
そのため、目地材(100)の位置に形成された隙間(S)から土砂が流出せず(風化せず)、法面が安定した状態が保たれる。そして、土砂が流出しないので、地山における目地材(100)を設けた領域の下方が空洞化してしまうことも防止される。
【0012】
ここで、縦方向に延在する部分(101)と横方向に延在する部分(102)は法面の傾斜方向と平行に延在している。
そのため、目地材(100)を設けた箇所の隙間(S)内の雨水(図1のR)は、(図1における矢印で示すように)法面下方に向って流れ、目地材(100)に形成された隙間(S)に滞留することはない。そのため、目地材(100)下方の領域に浸透してしまうことが防止される。
【0013】
本発明において、目地材(100)を法面に配置するには、横方向に延在する部分(102)に固定ピン(103)を貫通すれば良い。従来の目地材のように、鉄筋を沿わせて、貫通孔を穿孔し、貫通孔を通って針金で目地材と結束する必要はない。
そのため、「目地材に貫通孔を穿孔して、貫通孔に結束線を通して目地材と鉄筋を結束し一体化する」という煩雑な作業が不要となる。
また、固定ピン(103)による固定は、吹付材(M)を法面に吹き付ける作業を行っている間のみ、目地材(100)を地山(G)に保持(仮留め)出来れば足りる。本発明によれば、吹付材(M)が目地材(100)における横方向に延在する部分(102)を押圧するので、目地材(100)は吹付材(M)により地山(G)に固定されるからである。
そのため、目地材(100)を地山(G)に保持するに際しては、少数の固定ピン(103)を用いれば良く、目地材(100)を地山(G)に設置する作業の労力が軽減される。
【0014】
ここで、上述した補強用ボルト(3:せん断ボルト)を使用した場合には、前記ナット(長ナット:5)が存在するので、電動工具(20)で第1のボルト(上側ボルト:7)のボルトヘッド(72)を回転して、前記ワッシャ(花弁ワッシャ:6)を貫通する第1のボルト(7)と前記ナット(5)上側領域とを螺合し、前記円筒部(スライドカラー:4)を貫通する第2のボルト(下側ボルト:8)と前記ナット(5)下側領域と螺合しても、前記ワッシャ(6)を貫通する第1のボルト(7)の下端と、前記円筒部(4)を貫通する第2のボルト(8)の上端とは当接せず、前記ワッシャ(6)は、それを貫通する第1のボルト(7)のボルトヘッド(72)と前記ナット(5)の上端部によって強固に挟まれる。そのため、電動工具(20)で第1のボルト(7)のボルトヘッド(72)を回転すれば、前記ワッシャ(6)は前記ナット(5)の上端部において確実に位置することになる。
したがって、前記ワッシャ(6)が所望の鉛直方向位置となる様に、前記ナット(5)の長さ(電動工具20で締め付けた際における長ナット5の上端部の鉛直方向位置)を設定すれば、前記ワッシャ(6)は前記ナット(5)上端部の鉛直方向位置(所望の鉛直方向位置)において確実且つ正確に保持される。
そのため、前記ワッシャ(6)を所望の鉛直方向位置にしつつ、電動工具(20)で第1のボルト(7)のボルトヘッド(72)を回転して、本発明に係る補修・補強用ボルト(3:せん断ボルト)を一気に締め付けることが出来る。
【0015】
また上述した補強用ボルト(3:せん断ボルト)を使用した場合には、電動工具(20)で第1のボルト(7)のボルトヘッド(72)を回転すれば、第1のボルト(7)の雄ネジ(71)と前記ナット(5)の雌ネジ(51:上側の雌ネジ)が螺合し、且つ、第2のボルト(8)の雄ネジ(81)と前記ナット(5)の雌ネジ(52:下側の雌ネジ)が螺合する。
その結果、円筒部(4)を貫通する第2のボルト(8)と前記ナット(5)の下側領域とが強固に螺合され、円筒部(4)を貫通する第2のボルト(8)が圧縮されて円筒部(4)を構成する部分(41、42)が半径方向外側に移動(半径方向に拡径)するので、本発明に係る補修・補強用ボルト(3)を確実に既設コンクリート層(1)に固定することが出来る。
【0016】
また、前記ワッシャ(6)を貫通する第1のボルト(7)と前記ナット(5)の上側の領域とが強固に螺合されると、前記ワッシャ(6)が前記ナット(5)の上端の位置に当接した状態で(第1のボルトのボルトヘッド72とナット5の上端に挟まれた状態で)、強固に固定される。
さらに、第1のボルト(7)のボルトヘッド(72)と前記ナット(5)の上端部で前記ワッシャ(6)を強固に挟み込むため、前記ワッシャ(6)の取付強度が確保される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態で用いられる目地材を示す斜視図である。
図2図1の目地材を用いて第1実施形態を施工した場合における目地材近傍の状態を示す説明図である。
図3】第1実施形態を施工する手順を説明するための工程図である。
図4図3に続く工程を示す工程図である。
図5図4に続く工程を示す工程図である。
図6】本発明の第2実施形態で用いられるせん断ボルトの使用状態を示す正面図である。
図7図6で示すせん断ボルトを分解して示す分解図である。
図8図7のせん断ボルトを施工前の状態に組み立てて示す説明図である。
図9図6図7図8で示すせん断ボルトを用いた補修・補強工法の挿入孔削孔工程を示す工程図である。
図10】挿入孔にせん断ボルトを挿入する工程を示す工程図である。
図11】既存コンクリート層内のスライドカラーが半径方向に拡径した状態を示す工程図である。
図12図10で示す状態において、上側ボルトのボルトヘッドを電動工具で締め付ける工程を示す工程図である。
図13】電動工具で締め付けて、上側ボルトと下側ボルトと長ナットが螺合している状態を示す工程図である。
図14】電動工具で締め付けた際に下側ボルトとスライドカラーに作用する力の方向を示す説明図である。
図15】電動工具で締め付けることにより、既存コンクリート層でスライドカラーが半径方向に拡径した状態を示す説明図である。
図16】第2実施形態を施工する現場を説明する説明図である。
図17】第2実施形態において、既存コンクリート層にせん断ボルトを埋設する挿入孔を削孔した状態を示す工程図である。
図18】挿入孔にせん断ボルトを挿入し、既存コンクリート層に固着した状態を示す工程図である。
図19】せん断ボルトを固着した既存コンクリート層に、目地材を保持した状態を示す工程図である。
図20図19におけるA−A断面図である。
図21】せん断ボルトを固着し且つ目地材を保持した既存コンクリート層に吹付材を吹き付ける工程を示す工程図である。
図22図21に続く工程を示す工程図である。
図23】従来技術に係る目地材を法面に配置した状態を示す正面図である。
図24図23の法面の断面図である。
図25】従来技術の問題点を示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
先ず図1図5を参照して、本発明の第1実施形態を説明する。
第1実施形態を説明するに際して、最初に図1図2を参照して、本発明の実施形態で使用される目地材について説明する。
第1実施形態で使用される目地材は、目地材を示す斜視図である図1において、全体を符号100で示されている。目地材100は、地山Gの法面の傾斜方向と平行に延在している。
目地材100の断面形状はT字状であり、縦方向(矢印V方向:法面に垂直な方向)に延在する部分101と、横方向(矢印H方向:法面に平行な方向)に延在する部分102を有している。
【0019】
縦方向に延在する部材101の高さ(垂直方向高さ)は、吹付材M(コンクリート或いはモルタル)の層(吹付層Lの厚さ)と概略等しい。横方向に延在する部分102には貫通孔104が、適宜個数、形成されており、貫通孔104には、目地材100を地山Gに固定する固定ピン103(図2参照)が挿入可能である。
図1では、固定ピン103の図示は省略している。目地材100が固定ピン103により地山Gに固定されている状態は、図2に明示されている。
【0020】
図1の目地材100を用いて施工した後、吹付材M(コンクリート或いはモルタル)が温度収縮した状態が、図2で示されている。
図2において、新たに吹き付けられた吹付材M(コンクリート或いはモルタル)の温度収縮により、目地材100(縦方向に延在する部材101)と層吹付層Lの間に隙間Sが形成されている。
しかし、前記隙間Sは地山Gには連通してはおらず、隙間Sの下方と地山Gとの間には、目地材100の横方向に延在する部材102が介在している。換言すれば、目地材100下方の領域の地山Gは、目地材100における横方向に延在する部分102によって被覆されているので、隙間Sは地山Gに連通してはいない。
【0021】
次に図3図5を参照して、図1図2の目地材100を用いて施工する手順について説明する。
最初に図3で示すように、地山Gの法面に目地材100を設置する。すなわち、吹付工法を施工する対象領域において、断面T字型の目地材100(縦方向に延在する部材101及び横方向に延在する部分102を有する目地材)が地山Gの法面の傾斜方向と平行に延在する様に、当該目地材100を地山Gの法面に設置する。
図3では示されていないが、吹付工法を施工する領域内では、複数の目地材100が、概略平行で且つ概略等間隔となるよう設置されている。
【0022】
次に、地山Gの法面に設置された目地材100を、固定ピン103により地山Gに保持する(仮留する)。
固定ピン103は、目地材100の横方向に延在する部分102に設けられた貫通孔104(図示せず)を通して地山Gに挿入される。これにより、目地材100が地山Gに保持(仮留)される。
【0023】
図4で示す工程では、目地材100が設置、保持された地山Gに対し、吹付材M(例えば、コンクリート或いはモルタル等)を吹き付ける。
吹付材Mの吹き付けは、公知技術を用いて行われる。すなわち、図4で示すようにノズル105を用いて、吹付工法を施工する領域全体に、吹付材Mの層(吹付層)が所定の厚さになる様に、吹付材Mを吹き付ける。
【0024】
図5は、吹付材M(コンクリート或いはモルタル等)の吹き付けが完了した状態を示している。
図5で示す断面では、地山Gの上部に新たに吹付材Mの層(吹付層)Lが形成されている。そして、吹付層Lに埋没するように、目地材100が地山Gに保持されている。
ここで目地材100は固定ピン103で地山Gに保持されていると共に、横方向に延在する部分102が吹付材Mの層Lで覆われているため、吹付層Lの重量(吹付材Mの重量)によって地山Gに固定される。
図5では、吹付層Lの厚さ寸法は、目地材100の垂直方向の高さ(縦方向に延在する部分101の垂直方向の高さ)と概略等しくなっている。
【0025】
図示の第1実施形態によれば、新たに吹き付けられた吹付材の層(吹付層)Lにおいて、目地材100を設けた箇所の隙間Sから浸入した雨水Rは、図1の矢印で示すように、法面の傾斜に沿って地山Gの下方に向って流れ、隙間S中に滞留してしまうことはない。
また、横方向に延在する部分102で遮断されているため隙間Sは地山Gに連通していないので、雨水Rは地山Gには到達しない。そのため、地山Gにおける目地材100を配置した領域に雨水Rが浸透することが防止され、当該領域(地山における目地材を配置した領域)が脆くなってしまうことはない。
そして、目地材100の位置に形成された隙間Sから土砂が流出せず(風化せず)、法面が安定した状態が保たれる。さらに、土砂が流出しないので、地山Gにおける目地材100を設けた領域の下方が、図25で示すように空洞化してしまうことはない。
【0026】
また、図示の第1実施形態によれば、目地材100を法面に配置するには、横方向に延在する部分102に固定ピン103を貫通して固定すれば良い。従来の目地材のように、目地材に多数の貫通孔を穿孔し、目地材に鉄筋を沿わせ、目地材の多数の貫通孔毎に針金を通して鉄筋と目地材を結束する必要はない。
そのため、目地材に多数の貫通孔を穿孔して、多数の貫通孔毎に結束線(針金)を通して目地材と鉄筋を結束し一体化する作業(煩雑で多大な労力を必要とする作業)が不要となる。
さらに、吹付層Lにおける吹付材Mが目地材100における横方向に延在する部分102を押圧するので、目地材100は吹付材Mにより地山Gに固定される。そのため、固定ピン103による固定は、吹付材Mを法面に吹き付ける作業を行っている間のみ、目地材100を地山Gに保持(仮留め)出来れば足りる。そのため、目地材100を地山Gに保持するに際しては、少数の固定ピン103を用いれば良く、目地材100を地山Gに設置する作業の労力、コストが軽減される。
【0027】
次に、図6図21を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。
第2実施形態を説明するのに先立って、図6図15を参照して、第2実施形態で用いられるせん断ボルト3について説明する。
図6において、全体を符号3で示すせん断ボルト3は、既存コンクリート層1に固定されており、且つ、新規吹付層2(例えば、新規コンクリート層)に埋設されている。
図6図7で示すように、せん断ボルト3(補修・補強用ボルト)は、スライドカラー4、長ナット5、花弁ワッシャ6、上側ボルト7、下側ボルト8、第2のワッシャ9を有している。
花弁ワッシャ6は、半径方向外方に延在する部分と延在しない部分とを有しており、板金等からプレス成形により製造される部品である。
【0028】
スライドカラー4は全体が円筒形状に構成されており、その長手方向中心軸に対して傾斜した境界面43により、2つの部分41及び42に分割されている。そしてスライドカラー4の内部には貫通孔が形成されている。
図6では、スライドカラー4が軸方向(図6では上下方向)に締め付けられて軸方向圧縮力を受け、当該圧縮力により部分41及び42が境界面43に沿って相互に移動(スライド)して、半径方向(図6では左右方向)に拡径した状態を示している。
スライドカラー4に軸方向圧縮力が作用する以前の状態、すなわちスライドカラー4が半径方向に拡径する以前の状態は、図7及び図8に示される。
【0029】
スライドカラー4の内部の貫通孔の内径は、下部ボルト8の外径よりも大きな寸法となっている。スライドカラー4が締め付けられ軸方向に圧縮力を受けた際に2つの部分41及び42が境界面43に沿って相互に移動(スライド)しても下部ボルト8と干渉せず、必要な半径方向への拡径寸法を確保出来る様にするためである。
換言すれば、スライドカラー4の内部貫通孔内径寸法は、下部ボルト8の外径寸法に対して、スライドカラー4に軸方向圧縮力が作用して境界面43に沿ってスライドした際に、部分41、42が下部ボルト8と干渉しない程度に大きく設定されている。
【0030】
上側ボルト7は花弁ワッシャ6を貫通し、上側ボルト7の雄ネジ71は長ナット5の上側領域に形成された雌ネジ51に螺合する。
上部ボルト7のボルトヘッド72と長ナット5の間に花弁ワッシャ6を介装することにより、上部ボルト7のボルトヘッド72を締め付けることにより、花弁ワッシャ6は上部ボル7と長ナット5により挟み付けられ、以って、花弁ワッシャ6は長ナット5の上端部の位置に強固に保持される。
【0031】
図6において、下側ボルト8のボルトヘッド82は、図面下方に位置している。
長ナット5とスライドカラー4の間には、ワッシャ9(第2のワッシャ)が介装されている。図示はされていないが、ワッシャ9は省略することも可能である。
ワッシャ9は、上側ワッシャ91と下側ワッシャ92から構成されており、いわゆる「ダブルワッシャ」となっている。ただし、ワッシャ9をダブルワッシャとせず、単一のワッシャで構成することも可能である(図示せず)。
【0032】
下側ボルト8は、スライドカラー4と第2のワッシャ9を貫通しており、下側ボルト8の雄ネジ81は長ナット5の下側領域に形成された雌ネジ52に螺合している。
下部ボルト8のボルトヘッド82と長ナット5の間にスライドカラー4と第2のワッシャ9を挟み込み、ボルトヘッド82を締め付けると、下側ボルト8の雄ネジ81は長ナット5の下側領域に形成された雌ネジ52に螺合しているので、スライドカラー4が図6の上下方向(スライドカラー4の長手方向)に圧縮され、上述した様に半径方向に拡径して、せん断ボルト3が確実に既設コンクリート層1に固定される。
【0033】
長ナット5の長さ(軸線方向寸法:図6では上下方向寸法)は、図6で示すように、上側ボルト7と長ナット5上側領域とを完全に螺合し、下側ボルト8と長ナット5下側領域とが完全に螺合した際に、上側ボルト7の下端と、下側ボルト8の上端とが当接しない様に設定される。
それと共に、長ナット5の長さ(軸線方向寸法:図6では上下方向寸法)は、上側ボルト7と長ナット5上側領域とを完全に螺合し、下側ボルト8と長ナット5下側領域とが完全に螺合して、花弁ワッシャ6が上部ボル7と長ナット5により挟み付けられて長ナット5の上端部の位置に強固に保持された際に、既存コンクリート層1から花弁ワッシャ6までの距離が所定距離となる様に設定されている。
ここで、既存コンクリート層1から花弁ワッシャ6までの所定距離は、既存コンクリート層1に吹き付けられる新規吹付層2の厚さ寸法の30〜70%の範囲に設定されている。
【0034】
また、せん断ボルト3は、その下半分(スライドカラー4及び下部ボルト8の下方部分)が既存コンクリート層1に埋設されており、上半分(花弁ワッシャ6、上部ボルト7、長ナット5、ワッシャ9、下部ボルト8の上方部分)が新規吹付層2に埋設されている。
せん断ボルト3が既存コンクリート層1に埋設されている部分(下半分:スライドカラー4及び下部ボルト8の下方部分)では、上述した様にスライドカラー4が半径方向に拡径しているので、せん断ボルト3は既存コンクリート層1に強固に固定されている。
【0035】
一方、せん断ボルト3が新規吹付層2に埋設されている部分(上半分:花弁ワッシャ6、上部ボルト7、長ナット5、ワッシャ9、下部ボルト8の上方部分)においては、花弁ワッシャ6により、せん断ボルト3は新規吹付層2に定着される。換言すれば、花弁ワッシャ6は、せん断ボルト3を新規吹付層2に定着させる機能を発揮する。
そのため、花弁ワッシャ6の鉛直方向位置(長ナット5の上端位置)は、新規吹付層2の厚さによって、適宜設定される。そして、花弁ワッシャ6の鉛直方向位置(既存コンクリート層1表面からの高さ位置)は、上述の通り、既存コンクリート層1表面から、新規吹付層2の厚さの30〜70%の範囲内にあるのが好適である。
花弁ワッシャ6の位置が既存コンクリート層1表面に近過ぎる場合(既存コンクリート表面1からの距離が新規吹付層2の厚さの30%未満の場合)と、花弁ワッシャ6の位置が既存コンクリート層1表面から遠過ぎる場合(既存コンクリート表面1からの距離が新規吹付層2の厚さの70%よりも大きい場合)は、何れも、花弁ワッシャ6によってせん断ボルト3を新規吹付層2に定着する作用が発揮されなくないことが、発明者の実験によって確認されている。
【0036】
前述の通り、花弁ワッシャ6を貫通するボルト(上側ボルト7)のボルトヘッド72と、長ナット5の上端部の間に、花弁ワッシャ6が強固に挟み込まれており、そのため、花弁ワッシャ6の取付強度が確保される。
それに加えて図示の実施形態では、花弁ワッシャ6は単一の金属板をプレス成形等の加工により製造されており、溶接部分を有していない。溶接部分は強度が劣るので、図示の実施形態で用いられる花弁ワッシャ6は、ナットに花弁(半径方向外方に延在する部分)を溶接した花弁ナット(従来技術で使用されるナット)に比較して、その強度が高い。
【0037】
図6図7において、花弁ワッシャ6を貫通する上側ボルト7のボルトヘッド72の形状は通常の六角形であるが、電動工具のソケット部の構成その他の条件に対応して、六角形以外の形状にすることが可能である。例えば上側ボルト7のボルトヘッド72の形状を、外径が円形で中央に六角レンチで回転可能な穴(いわゆる盲穴)が形成されているタイプにすることが可能である。
長ナット5についても、その断面形状は六角形に限定されるものではない。雌ネジが形成されていれば、長ナット5の断面形状については特に限定要件は存在しない。
【0038】
図6図7で説明したせん断ボルトを使用すれば、電動工具20を回転させて上側ボルト7を締め付けると、上側ボルト7は長ナット5の上側領域と螺合して花弁ワッシャ6を締め付け、下側ボルト8は長ナット5の下側領域と螺合してスライドカラー4を締め付け、それぞれ軸方向の圧縮力を与える。その際に、上側ボルト7の下端と下側ボルト8の上端とは当接することはなく、干渉してしまうことはない。
花弁ワッシャ6は、上側ボルト7のボルトヘッド72と長ナット5の上端部により挟み込まれ、長ナット5の上端部の位置に強固に固定される。したがって、長ナット5の長さ(長ナット5の上端部の鉛直方向位置)を花弁ワッシャ6の鉛直方向位置が所望の位置となる様に(既設コンクリート層からの距離が所定の距離になる様に)設定すれば、花弁ワッシャ6は新規吹付層2の厚さ寸法に対応して、所望の鉛直方向位置となり、せん断ポルト3を新規吹付層2に定着する作用効果を確実に奏することが出来る。
【0039】
同時に、スライドカラー4には軸方向の圧縮力が作用するので、部分41及び42が境界面43に沿って相互に移動(スライド)して、半径方向に拡径し、以って、せん断ボルト3は既存コンクリート層1に強固に固定される。
このように、図示の実施形態では電動工具20で上側ボルト7のボルトヘッド72を回転して一気に締め付けてせん断ボルト3を固定することが出来ると共に、花弁ワッシャ6を所望の鉛直方向位置にして、せん断ボルト3を新規吹付層2に定着することが出来る。
そして、花弁ワッシャ6は長ナット5上端と上側ボルト7のボルトヘッド72により強固に挟み付けられて固定されるので、吹付の際等に作業者の足に触れて回動し、外れてしまうことが防止される。
また、花弁ワッシャ6は単一の金属板をプレス成形等の加工を行うことで製造することができるので、半径方向外方に延在する部材をナットに溶接する必要がなく、強度が劣る溶接部分を設ける必要がない。
【0040】
次に、図8以下を参照して、図6図7を参照して説明したせん断ボルト3を用いてコンクリート構造物の補修・補強を行なう態様を説明する。
図9は、せん断ボルト3を用いたコンクリート構造物の補修・補強工法の挿入孔削孔工程を示す工程図である。図9で示す工程では、既存コンクリート層1に、せん断ボルト3の下半分(スライドカラー4を設けた箇所とその下側で、具体的にはスライドカラー4及び下部ボルト8の下方部分)を埋設するための挿入孔10を穿孔する。
【0041】
ここで、挿入孔10の深さ(図9の軸方向寸法H)は、せん断ボルト3の下半分(スライドカラーを設けた箇所とその下側)の寸法と正確に等しくする必要はない。図10で示すように、挿入孔10にせん断ボルト3を挿入する際、ダブルワッシャ9の下側ワッシャ92が既存コンクリート層1の表面101と当接して、それ以上、せん断ボルト3が既存コンクリート層1に穿孔した挿入孔10に入り込まないからである。
なお、挿入孔10の深さHを、せん断ボルト3の下半分(スライドカラー4を設けた箇所とその下側)の寸法と等しくして、上側ワッシャ91及び下側ワッシャ92を省略することも可能である。
挿入孔10の内径Dは、せん断ボルト3のスライドカラー4の拡径前の外径寸法よりも大きく、且つ、施工時におけるスライドカラー4の拡径時に、既存コンクリート層1に食い込み、強固に固定される寸法に設定されている。
【0042】
図10は、挿入孔10にせん断ボルト3を挿入する工程を示している。
図10で示す工程に先立って、図8で示すように、せん断ボルト3を組み立てた状態にする。図8の状態では、上側ボルト7は花弁ワッシャ6を貫通しており、その雄ネジ71と長ナット5の雌ネジ(上側の雌ネジ51)とが一部分のみ螺合している。そして、下側ボルト8はスライドカラー4を貫通しており、その雄ネジ81と長ナット5の雌ネジ(下側の雌ネジ52)は一部分のみが螺合している。なお、図8で示す状態では、せん断ボルト3は軸方向に締め付けられておらず、スライドカラー4には軸方向圧縮力は作用せず、拡径していない。
【0043】
図10の工程では、図8で示す状態のせん断ボルト3の下半分(スライドカラー4、下部ボルト8の下方部分)を既存コンクリート層1に穿孔された挿入孔10内に挿入する。
せん断ボルト3は、ダブルワッシャ9の下側ワッシャ92が既存コンクリート層1の表面101と当接するまで、挿入孔10内に挿入される。ここでワッシャ9の下側ワッシャ92が既存コンクリート層1の表面と当接すると、せん断ボルト3がそれ以上挿入孔10に挿入されない様に構成されている。
【0044】
図10で示す工程の状態では、上側ボルト7の雄ネジ71と長ナット5の雌ネジ(上側の雌ネジ51)とは完全には螺合しておらず、一部分のみが螺合した状態である。そして、下側ボルト8の雄ネジ81と長ナット5の雌ネジ(下側の雌ネジ52)も完全には螺合しておらず、一部分のみが螺合している。
スライドカラー4には軸方向の圧縮力は作用しておらず、境界面43に沿って部分41、42はスライドしておらず、半径方向に拡径してはいない。すなわちスライドカラー4は円筒形状を保持している。
【0045】
図10の状態において、上側ボルトのボルトヘッド72を電動工具20(図12)のレンチ部21(図12)で締め付けることにより、図11で示すように、既存コンクリート層1内のせん断ボルト3のスライドカラー4が半径方向に拡径する。
図11において、せん断ボルト3が既存コンクリート層1に埋設されている部分(下半分)において、スライドカラー4が半径方向に拡径しており、以って、せん断ボルト3の下半分は既存コンクリート層1に強固に取り付けられる。
また、上側ボルト7のボルトヘッド72と、長ナット5の上端部の間に、花弁ワッシャ6が強固に挟み込まれている。
【0046】
図12図15をも参照して、せん断ボルト3の上側ボルト7(花弁ワッシャを貫通するボルト)のボルトヘッド72を、電動工具20で回転する際の詳細について説明する。
図12は、せん断ボルト3を電動工具20で締め付ける状態を示す工程図である。
図12において、挿入孔10に挿入されたせん断ボルト3の上側ボルト7のボルトヘッド72に電動工具20のレンチ部21を係合する。そして、電動工具20を駆動してボルトヘッド72を回転させ、せん断ボルト3を締め付ける。
【0047】
電動工具20を駆動してボルトヘッド72を回転させると、図13で示すように、上側ボルト7の雄ネジ71と長ナット5の雌ネジ(上側の雌ネジ51)とが完全に螺合する。それと共に、スライドカラー4を貫通する下側ボルト8の雄ネジ81と長ナット5の雌ネジ(下側の雌ネジ52)とが完全に螺合する。
上側ボルト7の雄ネジ71と長ナット5の雌ネジ(上側の雌ネジ51)とが完全に螺合することにより、花弁ワッシャ6が上側ボルト7のボルトヘッド72と長ナット5の上端部により、強固に挟み付けられる。
ここで、図示の実施形態では長ナット5が存在するので、上側ボルト7と長ナット5の上側領域51が十分に螺合し、且つ下側ボルト8と長ナット5の下側領域52とが十分に螺合しても、上側ボルト7の下端と下側ボルト8の上端とは当接せず、長ナット5内に隙間δが存在する。
【0048】
図13で示す状態で、上側ボルト7に電動工具20の回転力がさらに付加されると、図14で示すように、下側ボルト8と十分に螺合した長ナット5と下側ボルト8のボルトヘッド82により、スライドカラー4を下側ボルト8の軸線方向圧縮力Fが作用する。そのため、スライドカラー4は、その2つの部分41及び42が境界面43で相互に移動し(スライドし)、図14の左右方向(半径方向外方)に移動する。すなわち、半径方向に拡径する。
より詳細には、図14において、軸方向圧縮力Fが作用したスライドカラー4の2つの部分41及び42は、境界面43に作用する剪断力の水平方向分力(押圧力)Fを受ける。その押圧力Fにより、スライドカラー4の2つの部分41及び42は、摩擦抵抗や各種抵抗に打ち勝って境界面43で相互にスライド移動し半径方向外方に拡径する。その結果、スライドカラー4は既存コンクリート層1を強固に押圧し、或いは既存コンクリート層1に食い込む(図11参照)ので、せん断ボルト3が既存コンクリート層1に強固に取り付けられる。
【0049】
図15を参照して、スライドカラー4が半径方向に拡径した状態を説明する。
図15は、スライドカラー4の2つの部分41及び42が境界面43で相互にスライド移動し、半径方向に拡径した最終的な状態を示している。
図15において、符号t1は上側ボルト7の呼び長さ(首下長さ)、符号t2は下側ボルト8の呼び長さ(首下長さとした時、上側ボルト7のボルトヘッド72下端部から下側ボルト8のボルトヘッド82下端部までの長さLは、
L=t1+t2+δ
ここでδは、上述の通り、長ナット5内で生じる上側ボルト7の下端と下側ボルト8の上端の間の隙間であり、 δ>0 に設定することで、せん断ボルト3によりを最大限に締め付けて、上側ボルト7と長ナット5の上側領域が十分に螺合し、且つ下側ボルト8と長ナット5の下側領域とが十分に螺合しても、上側ボルト7の下端と下側ボルト8の上端とは当接せず、干渉しない。
【0050】
図15の状態で花弁ワッシャ6は上側ボルト7のボルトヘッド72と長ナット5の上端部とにおいて強固に挟まれるため、長ナット5の上端部の位置から軸方向(鉛直方向)には移動しない。そのため、花弁ワッシャ6をせん断ボルト3の軸方向での所定の位置(長ナット5の上端部)に留めた状態で、上側ボルト7と長ナット5の上側領域と、下側ボルト8と長ナット5の下側領域を、それぞれの雄雌ネジを螺合させ、一気に締め付けることが出来る。
電動工具で上側ボルト7のボルトヘッド72を締め付けた後(図11図15)、吹付作業を行う。
【0051】
図6図14で説明したせん断ボルトを用いた場合には、上側ボルト7を電動工具20で回転することにより、
上側ボルト7の雄ネジ71と、長ナット5の上側領域における雌ネジ51とを螺合する工程、
下側ボルト8の雄ネジ81と、長ナット5の下側領域における雌ネジ52とを螺合する工程、
スライドカラー4を長ナット5と下側ボルト8のボルトヘッド82により軸線方向に圧縮して、半径方向に拡径せしめる工程、
上側ボルト7の雄ネジ71と長ナット5上側領域における雌ネジ51とを増し締めし、下側ボルト8の雄ネジ81と長ナット5下側領域の雌ネジ52とを増し締めする工程、
上側ボルト7のボルトヘッド72と長ナット5の上端部とにより花弁ワッシャ6を強固に挟み込む工程、
の五つの工程が実行される。
係る五つの工程により、せん断ボルト3が既設コンクリート層1に強固に固定され、花弁ワッシャ6が所定位置(長ボルト5の上端の位置)に強固に固定される。
【0052】
そして、図11で示す状態で吹き付けを行えば、図6で示すように、花弁ワッシャ6により、せん断ボルト3は新規吹付層2に定着される。換言すれば、花弁ワッシャ6は、せん断ボルト3を新規吹付層2に定着させる機能を発揮する。
【0053】
本発明の第2実施形態では、図6図15で説明したせん断ボルト3を用いた補修・補強工法を施工するに際して、図1図5で説明した目地材を適用している。
本発明の第2実施形態について、図16図21を参照して説明する。
図16図21で示す第2実施形態では、地山Gに吹付材を直接吹き付けるのではなくて、既存コンクリート層1に新たな吹付材M(例えばコンクリート材)を吹き付けて既存コンクリート層1上に新規吹付層2(例えば新規コンクリート吹付層)を形成している。また、第1実施形態で用いた固定ピン103に代わって、せん断ボルト3を用いている。
【0054】
第2実施形態を施工する現場を示す図16において、地山Gの表面には既存コンクリート層1が形成されている。第2実施形態では、前記既存コンクリート層1の表面に新たな吹付材Mを吹き付けるに際して、図1図5で説明した目地材100と、せん断ボルト3(3A)を用いる。
【0055】
図17で示す工程では、既存コンクリート層1にせん断ボルト3(図17では図示せず)を埋設する挿入孔10を削孔している。挿入孔10の深さH及び内径Dは、図9を参照して説明した通りである。また、挿入孔10は、新たな吹付材Mを吹き付けるに際して、補強・補修に必要な個数のせん断ボルト3を埋設するのに必要な個数を、ほぼ等間隔にて形成される。
第2実施形態では、既存コンクリート層1の表面にはT字状断面の目地材100(図示せず)を設置(保持)するに際して、第1実施形態で用いた固定ピン103に代えて、せん断ボルト3Aを用いる。そのため、既存コンクリート層1には、目地材100を既存コンクリート層1に保持するためのせん断ボルト3Aを埋設する挿入孔10も、併せて設ける。
【0056】
図18で示す工程では、挿入孔10(図示せず)にせん断ボルト3を挿入し、既存コンクリート層1に固着する。せん断ボルト3を既存コンクリート層1に固着する工程の詳細は、図6図15に基づき前述した通りである。すなわち、せん断ボルト3を組み立てた状態(図8参照)で、挿入孔10に挿入する(図10参照)。そして上側ボルト7のボルトヘッド72を電動工具20(図12参照)で締め付けることにより、図11で示すように、既存コンクリート層1内のせん断ボルト3のスライドカラー4が半径方向に拡径して、既存コンクリート層1に固着される。
図18においても、せん断ボルト3が既存コンクリート層1に埋設されている部分では、スライドカラー4が半径方向に拡径しており、以って、せん断ボルト3は既存コンクリート層1に強固に取り付けられる。また、上側ボルト7のボルトヘッド72と、長ナット5の上端部の間に、花弁ワッシャ6が強固に挟み込まれている。上述した様に、花弁ワッシャ6は、新規吹付層2と一体化して、新規吹付層2が既存コンクリート層1から剥離しない様にする作用効果を奏する。
【0057】
図19で示す工程では、せん断ボルト3を固着した既存コンクリート層1に、目地材100を保持する。図19の工程では、目地材100の横方向に延在する部分102上に配置されたせん断ボルトを用いて、既存コンクリート層1に目地材100を設置、保持している。
図19の工程では、先ず、断面T字型の目地材100を、縦方向に延在する部材101及び横方向に延在する部分102が既存コンクリート層1の法面の傾斜方向と平行に延在する様に設置する。図19では示されていないが、吹付工を施工する領域内で、適宜な数の目地材100が、ほぼ平行で且つほぼ等間隔となるように設置されている。
【0058】
次に、せん断ボルト3Aにより、目地材100を既存コンクリート層1に保持する。すなわち、目地材100の横方向に延在する部分102に設けられた図示しない貫通孔104を通して、せん断ボルト3Aを既存コンクリート層1に挿入し、せん断ボルト3の上側ボルトのボルトヘッド72を締め付けて、既存コンクリート層1に保持する(固着する)。
なお図19において、既存コンクリート層1に固着したせん断ボルト3と、目地材100の横方向に延在する部分102上に配置されたせん断ボルト3Aとは、相互の間隔がほぼ均等である。
【0059】
第2実施形態ではせん断ボルト3を使用しているため、既存コンクリート層1に対して新規吹付層2は剥離すること無く、強固に一体化される。
なお、前記の目地材100保持用のせん断ボルト3Aを、せん断ボルト3とは異なるサイズにすることも可能である。
さらに、第2実施形態においても、目地材100の保持のために、図2図5で示す固定ピン103を使用することも可能である。
【0060】
図19におけるA−A断面を示す図20で示すように、目地材100は断面形状がT字状であり、縦方向(矢印V方向)に延在する部分101と、横方向(矢印H方向)に延在する部分102を有している。そこで縦方向に延在する部材101の垂直方向の高さは、新規に吹き付けられるコンクリート層2の厚さとほぼ等しい。
図21は、既存コンクリート層1に、新規吹付材Mを吹き付け、新規吹付層2形成する工程を示す。
第2実施形態においても、吹付材Mを吹き付けるに際しては、公知技術(例えばノズル105)を用いて行うことが出来る。吹付材Mを吹き付ける工程では、新規吹付層2が予め決定された所定の厚さになるまで、吹付工の施工領域全体に均等に吹付材Mを吹き付ける。
【0061】
図22は、吹付材M(例えば新規コンクリート材)の吹き付けが完了した状態を示していおり、図21におけるB−B断面を示している。
新規吹付材Mを吹き付けることにより、既存コンクリート層1の上部に新規吹付層2が形成される。図22で示すように、せん断ボルト3により既存コンクリート層1に固着された目地材100は新規吹付層2に埋没している。ここで、新規吹付層2の厚さと目地材100の縦方向に延在する部分101の垂直方向の高さとは概略等しい。
【0062】
図示の第2実施形態においても、温度収縮により目地材100の縦方向に延在する部材101と新規に吹き付けられた新規コンクリート層2の間に隙間Sが生じても、目地材100を設けた箇所の隙間Sに浸入した雨水は、前記隙間Sに滞留することはなく、法面下方に向って流れる(図1図2参照)。そして、隙間Sは目地材100の横方向に延在する部分102で遮断されるので、既存コンクリート層1には連通しておらず、の隙間Sに浸入した雨水は既存コンクリート層1には浸透しない。その結果、既存コンクリート層1が脆くなることが防止され、既存コンクリート層1下方の地山の土砂が流出して空洞化することが防止される。
【0063】
また、せん断ボルト3を用いているため、既存コンクリート層1から新規コンクリート層2が剥離してしまうことが防止される。
さらに、目地材100を既存コンクリート層1に保持(固着)するために、せん断ボルト3を使用することが出来るので、目地材100を保持する部材によって、新規コンクリート層2を補強することができる。
【0064】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。
【符号の説明】
【0065】
1・・・既存コンクリート層
2・・・新規吹付層(新規コンクリート層)
3・・・補修・補強用ボルト(せん断ボルト)
4・・・円筒部(スライドカラー)
5・・・ナット(長ナット)
6・・・ワッシャ(花弁ワッシャ)
7・・・第1のボルト(上側ボルト)
8・・・第2のボルト(下側ボルト)
9・・・第2のワッシャ
10・・・挿入孔
100・・・目地材
101・・・目地材の縦方向(法面に垂直な方向)に延在する部分
102・・・目地材の横方向(法面に沿って水平な方向)に延在する部分
103・・・固定ピン
104・・・貫通孔
105・・・ノズル
200・・・目地材
201・・・鉄筋
202・・・結束線
G・・・地山
R・・・雨水
・・・吹付材の層(新たに吹き付けられたコンクリート或いはモルタルの層)
M・・・吹付材
S・・・隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
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