(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6384909
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】歯科用インプラントドリル
(51)【国際特許分類】
A61C 8/00 20060101AFI20180827BHJP
A61C 1/08 20060101ALI20180827BHJP
A61C 3/02 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
A61C8/00 Z
A61C1/08 Z
A61C3/02 Z
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-154170(P2014-154170)
(22)【出願日】2014年7月29日
(65)【公開番号】特開2016-30090(P2016-30090A)
(43)【公開日】2016年3月7日
【審査請求日】2017年6月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】390011143
【氏名又は名称】株式会社松風
(72)【発明者】
【氏名】西澤 正祥
(72)【発明者】
【氏名】堀 弘二
【審査官】
立花 啓
(56)【参考文献】
【文献】
特表2004−508877(JP,A)
【文献】
特表2009−532169(JP,A)
【文献】
特開2003−310640(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 1/08
A61C 3/02
A61C 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科用インプラントを顎骨内に埋入するために顎骨に形成される下孔(3)を拡大する中心軸(AX)をもつ柱状の歯科用インプラントドリル(DRL)であって、柱状の一端は、駆動装置に装着するシャンク部(1)であり、柱状の他端は顎骨に穿孔する穿孔部(2)であり、前記穿孔部(2)は、先端に切刃を有さない先端面(21)と、前記先端面(21)に連続して、前記シャンク部(1)の方向に延びる前記中心軸(AX)に対して鋭角となる第一角度(α)及び第一切刃(221)を有する第一テーパ面(22)と、前記第一テーパ面(22)に連続して、前記シャンク部(1)の方向に延びる前記中心軸(AX)に対して鋭角となる第二角度(β)及び第二切刃(231)を有する第二テーパ面(23)と、前記第二テーパ面(23)に連続して、前記シャンク部(1)の方向に延びるボディ面(24)とを備えることを特徴とする歯科用インプラントドリル。
【請求項2】
前記穿孔部(2)は、
第一直径(d1)となる前記先端面(21)と前記第一テーパ面(22)が隣接する第一移行部(25)と、
第二直径(d2)となる前記第一テーパ面(22)と前記第二テーパ面(23)が隣接する第二移行部(26)と、
第三直径(d3)となる前記第二テーパ面(23)と前記ボディ面(24)が隣接する第三移行部(27)とを有し、
前記下孔(3)の下孔直径(B)に対して、
1.0mm≦(d1)<(d2)<(B)<(d3)の範囲で設定されることを特徴とする請求項1に記載の歯科用インプラントドリル。
【請求項3】
前記第三直径(d3)は、前記下孔直径(B)に対して、(B)+0.2mm≦(d3)≦(B)+1.0mmの範囲で設定されることを特徴とする請求項2に記載の歯科用インプラントドリル。
【請求項4】
前記歯科用インプラントドリル(DRL)は、前記第二直径(d2)及び前記第三直径(d3)が異なる、少なくとも2つ以上の複数種類から構成されることを特徴とする請求項2か3のいずれかに記載の歯科用インプラントドリル。
【請求項5】
前記第一移行部(25)から前記第二移行部(26)までの前記中心軸(AX)に平行な長さ(h1)は、0.1mm≦(h1)≦0.6mmの範囲で設定されるとともに、前記第一角度(α)は、55°≦(α)≦65°の範囲で設定されることを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載の歯科用インプラントドリル。
【請求項6】
前記歯科用インプラントドリル(DRL)は、前記下孔直径(B)となる前記下孔(3)を形成する下孔形成ドリル(DRLF)と、前記下孔形成ドリル(DRLF)に取り付け可能な、前記下孔形成ドリル(DRLF)の穿孔深さを強制的に規制するドリルストッパー(DRLS)と組み合わせて使用することを特徴とする請求項2から5のいずれかに記載の歯科用インプラントドリル。
【請求項7】
前記先端面(21)は、前記中心軸(AX)に対して垂直となる平面であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の歯科用インプラントドリル。
【請求項8】
前記第二角度(β)は、10°≦(β)≦20°の範囲で設定されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の歯科用インプラントドリル。
【請求項9】
前記ボディ面(24)は、前記シャンク部(1)の方向に向かって先細り形状を成し、前記中心軸(AX)に対するボディ面角度(θ)は、0°<(θ)≦0.5°の範囲で設定されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の歯科用インプラントドリル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顎骨に歯科用インプラントを埋入するために顎骨に形成される下孔を拡大するための歯科用インプラントドリルに関する。
【背景技術】
【0002】
歯科用インプラント治療は、ウ蝕や歯周病、又は外傷などによって失われた歯の欠損部位に対して行われる歯科治療の一つである。
【0003】
通常、歯科用インプラントは生体親和性に優れた純チタン又はチタン合金製であり、これを歯根の代替として歯の欠損部位に埋入、人工歯根として機能させ、歯科用インプラント上部に支台となるアバットメントを装着し、そこへ各種補綴装置を固定することで、口腔機能を回復させる。
【0004】
歯科用インプラントは一般的にスクリュ形状を有している。よって顎骨内への埋入方法は、駆動装置に装着したドリル等の切削工具を使って、歯の欠損部位の顎骨に埋入孔を形成し、そこに歯科用インプラントを挿入し、スクリュ形状を利用して骨に固定するのが一般的である。
【0005】
また、歯科用インプラントは、患者毎に異なる顎骨の幅や高さに対応するため、外径サイズや長さの異なる複数の種類が準備されている。そのため、埋入孔も各歯科用インプラントの外径サイズや長さに合わせたものを形成する必要がある。
【0006】
埋入孔の形成における注意事項としては、最初から大きい直径のドリルで穿孔すると、ドリルと顎骨との接触面積が大きくなり、回転による摩擦熱が増加し、顎骨が壊死するリスクが増大する。
【0007】
それを避けるために、埋入孔は、まず直径の小さいドリルで埋入する歯科用インプラントの長さに合わせた深さまで下孔の形成を行い、続いて下孔の直径よりも少し大きい直径のドリルで同じ深さまで穿孔し、これを繰り返すことで、埋入する歯科用インプラントの外径サイズに合わせた直径まで徐々に拡大させて形成する必要がある。
【0008】
加えて、埋入する歯科用インプラントに適した深さ以上に穿孔してしまった場合、神経組織や血管を損傷させ、重大な事故に直結することがある。そのため、穿孔深さの制御に関しては、施術の際も細心の注意が払われる。
【0009】
特許文献1には、ドリル表面に先端からの距離を示すラインなどの目印を付与し、この目印を目視で確認しながら深さを制御して穿孔する技術が記載されている。
【0010】
しかしながら、術者が誤って必要以上の力をドリルに与えてしまった場合は、それを強制的に規制する手段がなく、意図した深さ以上に穿孔してしまうことがあり、十分な制御とは言えなかった。
【0011】
特許文献2には、ストッパーをドリルに装着することにより、穿孔深さを強制的に規制する手段が記載されている。
【0012】
しかしながら、先述のとおり、埋入孔の形成は徐々に拡大することが必須であるため、穿孔作業は複数回必要になる。そのため、全てのドリルにストッパーを装着しなければならず、着脱作業の煩雑性を招くという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第4420423号公報
【特許文献2】特開2013−66665号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、ドリルにストッパーを装着せずとも、誤って意図した深さ以上に穿孔してしまうリスクを低減させる機能を持った下孔を拡大するための歯科用インプラントドリルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
鋭意研究の結果、歯科用インプラントを顎骨内に埋入するために顎骨に形成される下孔(3)を拡大する中心軸(AX)をもつ柱状の歯科用インプラントドリル(DRL)であって、柱状の一端は、駆動装置に装着するシャンク部(1)であり、柱状の他端は顎骨に穿孔する穿孔部(2)であり、前記穿孔部(2)は、先端に切刃を有さない先端面(21)と、前記先端面(21)に連続して、前記シャンク部(1)の方向に延びる前記中心軸(AX)に対して鋭角となる第一角度(α)及び第一切刃(221)を有する第一テーパ面(22)と、前記第一テーパ面(22)に連続して、前記シャンク部(1)の方向に延びる前記中心軸(AX)に対して鋭角となる第二角度(β)及び第二切刃(231)を有する第二テーパ面(23)と、前記第二テーパ面(23)に連続して、前記シャンク部(1)の方向に延びるボディ面(24)とを備えることを特徴とする歯科用インプラントドリルにより、上記課題が解決できることを解明したのである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の歯科用インプラントドリル(DRL)は、穿孔部(2)が下孔先端(32)に当接した際、切刃を有さない先端面(21)により、穿孔抵抗が有意に増大する。これにより、術者が誤って必要以上の力をかけてしまった場合でも、下孔(3)の深さ以上に穿孔してしまうリスクが低減される。
加えて、穿孔抵抗が有意に増大することから、術者はドリル先端が下孔先端(32)に到達したことを把握することができ、穿孔作業を完了させる指標となる。
【0017】
更には、あらゆる公知の技術を用いて顎骨に必要な深さの下孔(3)を形成しさえすれば、以降の径の拡大は、本発明の歯科用インプラントドリル(DRL)のみで深さの制御が可能となる。よって、ストッパー等の装着が不要となり、施術を簡素化させることが可能となる。
【0018】
上記の効果は、歯科用インプラントドリル(DRL)の穿孔部の長さに関わらず得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の歯科用インプラントドリル(DRL)の好適な実施形態の一つの正面図である。
【
図2】本発明の歯科用インプラントドリル(DRL)の好適な実施形態の一つの穿孔部先端の拡大図である。
【
図3】本発明の歯科用インプラントドリル(DRL)の好適な実施形態の一つの平面図である。
【
図4】本発明の歯科用インプラントドリル(DRL)の好適な実施形態の一つの斜視図である。
【
図5】本発明の歯科用インプラントドリル(DRL)を下孔に挿入したときの正面図である。
【
図6】本発明の歯科用インプラントドリル(DRL)が下孔先端に到達したときの正面拡大図である。
【
図7】本発明の歯科用インプラントドリル(DRL)のバックテーパを説明するための穿孔部の正面拡大図である。
【
図8】本発明の歯科用インプラントドリル(DRL)が複数準備されたときの第一ドリル及び第二ドリルの好適な実施形態の一つの正面図である。
【
図9】本発明の歯科用インプラントドリル(DRL)の第二ドリルの好適な実施形態の一つの穿孔部先端の拡大図である。
【
図10】本発明の歯科用インプラントドリル(DRL)の第二ドリルの好適な実施形態の一つの穿孔部先端の平面図である。
【
図11】本発明の歯科用インプラントドリル(DRL)の第一ドリルで形成された拡大孔の正面図である。
【
図12】本発明の歯科用インプラントドリル(DRL)の第二ドリルで拡大孔を更に拡大するときの正面図である。
【
図13】本発明の歯科用インプラントドリル(DRL)の第二ドリルが拡大孔先端に到達したときの正面拡大図である。
【
図14】本発明の歯科用インプラントドリル(DRL)と組み合わせ使用する下孔形成ドリル(DRLF)とドリルストッパー(DRLS)の好適な実施形態の一つの正面図である。
【
図15】
図11に示す下孔形成ドリル(DRLF)にドリルストッパー(DRLS)を装着したときの好適な実施形態の一つの正面図である。
【符号の説明】
【0020】
歯科用インプラントドリル(DRL)
シャンク部(1)
穿孔部(2)
先端面(21)
第一テーパ面(22)
第一切刃(221)
第二テーパ面(23)
第二切刃(231)
ボディ面(24)
第一移行部(25)
第二移行部(26)
第三移行部(27)
溝(28)
中心軸(AX)
第一直径(d1)
第二直径(d2)
第三直径(d3)
ボディ面角度(θ)
第一角度(α)
第二角度(β)
下孔(3)
下孔辺縁エッジ(31)
下孔先端(32)
下孔側面(33)
下孔直径(B)
下孔先端角度(γ)
拡大孔(4)
拡大孔辺縁エッジ(41)
拡大孔先端(42)
拡大孔側面(43)
拡大孔テーパ面(44)
下孔残り面(45)
下孔形成ドリル(DRLF)
ドリルストッパー(DRLS)
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は以下に示す各図に示されていない任意の構成要素を備え得る。
また、本発明の歯科用インプラントドリル(DRL)には、埋入孔に歯科用インプラントのスクリュ形状を付与するタップドリルは含まない。これは、タップドリルは予め形成された埋入孔の側面に、歯科用インプラントのスクリュ形状に適した形状を形成するための工具であって、実際の施術においては、ドリルの穿孔に比べて非常に低速で行われるため、穿孔深さの制御は容易であり、誤って意図した深さ以上に穿孔してしまうリスクは極めて低いためである。
【0022】
本発明の歯科用インプラントドリル(DRL)は、駆動装置に装着する柱状のシャンク部(1)と、顎骨に穿孔する柱状の穿孔部(2)とから成る。(
図1〜
図4)
【0023】
シャンク部(1)は、日本工業規格 JIS T 5504−1:2001 歯科用回転器具―軸―第一部:金属製に記載のいずれかの軸形状を有し、装着する駆動装置の仕様に合わせたサイズ及び形状を有することができる。
【0024】
穿孔部(2)は、先端に切刃を有さない先端面(21)と、前記先端面(21)に連続して、前記シャンク部(1)の方向に延びる前記中心軸(AX)に対して鋭角となる第一角度(α)及び第一切刃(221)を有する第一テーパ面(22)と、前記第一テーパ面(22)に連続して、前記シャンク部(1)の方向に延びる前記中心軸(AX)に対して鋭角となる第二角度(β)及び第二切刃(231)を有する第二テーパ面(23)と、前記第二テーパ面(23)に連続して、前記シャンク部(1)の方向に延びるボディ面(24)とを備える。
【0025】
また、穿孔部(2)は、先端面(21)からシャンク部(1)に向けて溝(28)が具備されている。
溝(28)は、穿孔によって切除される骨片を、シャンク部(1)の方向に効率良く排出させるため、中心軸(AX)を中心軸とした螺旋形状であることが好ましく、その数は3つであることが好ましいが、2つ又は4つのいずれかであってもよい。
加えて、溝(28)の中心軸(AX)方向の長さは、埋入する歯科用インプラントに必要な埋入孔の深さ以上の長さであることが好ましい。これにより、必要な埋入孔の深さまで穿孔した際、溝(28)からより効率よく骨片を排出させることができる。
【0026】
第一テーパ面(22)は、溝(28)に沿って第一切刃(221)を有し、第二テーパ面(23)は、溝(27)に沿って第二切刃(231)を有する。
穿孔する際、効率よく全ての溝から均等に骨片が排出されるように、第一切刃(221)及び第二切刃(231)は、溝(28)の数と等しいことが好ましい。
【0027】
また、穿孔部(2)は、
第一直径(d1)となる先端面(21)と第一テーパ面(22)が隣接する第一移行部(25)と、
第二直径(d2)となる第一テーパ面(22)と第二テーパ面(23)が隣接する第二移行部(26)と、
第三直径(d3)となる第二テーパ面(23)とボディ面(24)が隣接する第三移行部(27)とを有する。
下孔(3)の下孔直径(B)に対して、
1.0mm≦(d1)<(d2)<(B)<(d3)の範囲で設定されることが好ましい。
これにより、穿孔部(2)を下孔(3)に挿入したとき、第二切刃(231)を持つ第二テーパ面(23)が、下孔入口の辺縁エッジ(31)に当接する。
下孔先端(32)に向けて穿孔を開始すると、下孔側面(33)は、第二切刃(231)によって切除され、第三移行部(27)の直径(d3)に拡大される。(
図5)
【0028】
穿孔が進むと、やがて第一移行部(25)が下孔先端(32)に当接する。(
図6)
このとき、先端面(21)は切刃がないので、穿孔抵抗が有意に増大する。
これにより、術者が誤って必要以上の力をかけてしまった場合でも、下孔(3)の深さ以上に穿孔してしまうリスクが低減される効果を得ることが可能となる。
また、穿孔抵抗が有意に増大することから、術者は本発明の歯科用インプラントドリル(DRL)が下孔先端(32)に到達したことを把握することができるため、穿孔作業を完了させる指標となる。
【0029】
また、第一直径(d1)は、1.0mm≦(d1)とすることにより、第一移行部(24)が下孔先端(32)に当接した際、穿孔抵抗が増大する効果が適切に発揮される。
【0030】
図5及び
図6では、先端が先細り形状を成す切削工具によって形成された下孔(3)の一例が示されている。
このとき、下孔先端(32)の中心軸(AX)に対する下孔先端角度(γ)が、第一テーパ面(22)の中心軸(AX)に対する第一角度(α)よりも小さい場合、第一移行部(25)が、下孔先端(32)に当接するまでに、第一テーパ面(22)の第一切刃(221)によって、下孔先端(32)が切除される。
しかし、この場合でも、切刃のない先端面(21)がいずれ必ず下孔先端(32)に当接するため、穿孔抵抗が増大する効果を同様に得ることができる。
これは、下孔先端(32)の形状が平面であってもラウンド形状であっても、全て同様である。
即ち、本発明の歯科用インプラントドリル(DRL)においては、下孔先端(32)の形状によらず、上記効果を同様に得ることができる。
なお、先端面(21)は、中心軸(AX)に対して垂直となる平面であることがより好ましい。これにより、いかなる下孔先端(32)形状においても、上記効果が適切に発揮される。
【0031】
先述のとおり、下孔(3)は徐々に拡大する必要がある。即ち、第三直径(d3)は、下孔直径(B)に対して、(B)+0.2mm≦(d3)≦(B)+1.0mmの範囲で設定されることが好ましい。
これにより、穿孔時に下孔側面(33)と第二テーパ面(23)が接触することにより発生する摩擦熱を抑制することができ、骨が壊死するリスクを低減することができる。
【0032】
また、第二テーパ面(24)の中心軸(AX)に対する第二角度(β)は、10°≦(β)≦20°の範囲で設定されることが好ましい。
これにより、本発明の歯科用インプラントドリル(DRL)を下孔(3)に挿入する際、第二テーパ面(23)が、下孔側面(33)に対してガイドの役割を果たし、穿孔時の軸フレが抑制さるため、スムーズに穿孔を開始することが可能となる。
【0033】
また、ボディ面(24)は、シャンク部(1)の方向に向かってバックテーパと呼ばれる先細り形状を成し、前記中心軸(AX)に対するボディ面角度(θ)は、0°<(θ)≦0.5°の範囲で設定されることが好ましい。(
図7)
これにより、本発明の歯科用インプラントドリル(DRL)を下孔(3)に穿孔する際、ボディ面(24)と下孔側面(33)との不要な接触が避けられ、余計な摩擦熱の発生を抑制することができる。
なお、
図7は、説明の便宜上、溝(28)の図示を省略し、ボディ面角度(θ)も、先述の好適な設定範囲外で示されている。
【0034】
本発明の歯科用インプラントドリル(DRL)は、外径サイズの異なる複数の歯科用インプラントの埋入孔が形成できるよう、複数準備されていることが好ましい。
以下に、本発明の歯科用インプラントドリル(DRL)が複数準備されたとき、これを用いて埋入孔を形成する好適な実施形態の一つについて説明する。
説明の便宜上、下孔(3)の拡大に用いるものを「第一ドリル」、第一ドリルで形成した拡大孔(4)を更に拡大するために用いるものを「第二ドリル」と区別して記載する。(
図8)
なお、第二ドリルは、これまでの本発明の歯科用インプラントドリル(DRL)、即ち第一ドリルと好適な実施形態は同様であるが、説明の便宜上、各構成要素の符号に(a)を付記して区別する。(
図9、10)
但し、第二ドリルの構成要素に関する記載は、第二ドリルに限定されるものではなく、本発明の歯科用インプラントドリル(DRL)全てに適応可能である。
【0035】
第一ドリルで形成された拡大孔(4)は、拡大孔先端(42)と、拡大孔側面(43)と、拡大孔テーパ面(44)と、下孔残り面(45)とを有する。(
図11)
拡大孔側面(43)は、第一ドリルの第二テーパ面(23)により拡大され、その直径は、第三移行部(27)の第三直径(d3)と等しい。
拡大孔テーパ面(44)は、第一ドリルが下孔先端(32)に当接したとき、第二テーパ面(23)によって形成される面であり、第一ドリルの第二角度(β)と等しい。
下孔残り面(45)は、第一ドリルが1.0mm≦(d1)<(d2)<(B)<(d3)であることにより、下孔側面(32)が取り残された面であり、下孔直径(B)と等しい。
【0036】
ここで、第二ドリルは、拡大孔(4)を第二ドリルに対する下孔(3)として扱うことにより、容易に説明が可能である。
即ち、第二ドリルの穿孔部(2a)において、第一直径(d1a)、第二直径(d2a)及び第三直径(d3a)は、
拡大孔(4)の拡大孔直径(d3)に対して、
1.0mm≦(d1a)<(d2a)<(d3)<(d3a)の範囲で設定することにより、第一ドリルで下孔(3)に穿孔したときの効果を、第二ドリルで拡大孔(4)に挿入したときも同様に得ることが可能となる。
加えて、(d1)≦(d1a)、(d2)<(d2a)及び(d3)<(d3a)とすることがより好ましい。
【0037】
但し、拡大孔(4)には、上記のとおり、下孔(3)には無い、第一ドリルの第二テーパ面(23)により形成される拡大孔テーパ面(44)及び下孔残り面(45)がある。
しかしながら、第二ドリルは、第一ドリルと同様に、シャンク部(1a)の方向に延びる中心軸(AXa)に対して鋭角となる第一角度(αa)及び第一切刃(221a)を有する第一テーパ面(22a)と、第一テーパ面(22a)に連続して、シャンク部(1a)の方向に延びる前記中心軸(AXa)に対して鋭角となる第二角度(βa)及び第二切刃(231a)を有する第二テーパ面(23a)とを有することができるため、第二移行部(26a)が、拡大孔テーパ面(44)に到達すると、第一切刃(221a)と第二切刃(231a)により、拡大孔テーパ面(44)及び下孔残り面(45)は切除されるため、そのまま穿孔を継続することが可能である。(
図12)
【0038】
このとき、拡大孔テーパ面(44)を効率良く切除するため、
先端面(21a)から第二移行部(26a)までの中心軸(AXa)に平行な長さ(h1a)は、0.1mm≦(h1a)≦0.6mmの範囲で設定されるとともに、第一テーパ面(22a)の中心軸(AXa)に対する第一角度(αa)は、55°≦(αa)≦65°の範囲から設定されることが好ましい。
上記構成は、本発明の歯科用インプラントドリル(DRL)全てに適応可能である。
【0039】
そして、第二ドリルの先端面(21a)が拡大孔先端(42)に到達すると、第一移行部(25a)が拡大孔先端(42)に当接する。(
図13)
このとき、先端面(21a)には第一ドリルと同様切刃がないため、穿孔抵抗が有意に増大する。即ち、第一ドリルが下孔先端(32)に到達した際と同様の効果を得ることができる。
【0040】
また、第二ドリルで形成した拡大孔(4)を更に拡大する第三ドリルを準備する必要がある場合は、第二ドリルで形成した拡大孔(4)を第三ドリルの下孔(3)として扱い、且つこれまでの説明における好適な実施形態とすることで、第三ドリルにも第一ドリル及び第二ドリルと同様の効果を得ることができる。
【0041】
よって、本発明の歯科用インプラントドリル(DRL)を、任意の歯科用インプラントと組合せて使用する場合は、各ドリルの第三移行部(27)の直径を、埋入する歯科用インプラントに適した埋入孔の直径と合わせることにより、埋入する歯科用インプラントに合った歯科用インプラントキットとして用いることが可能となる。
【0042】
本発明の歯科用インプラントドリル(DRL)を含む、任意の歯科用インプラントを埋入するための歯科用インプラントドリルキットを準備する場合、下孔直径(B)となる下孔(3)を形成する下孔形成ドリル(DRLF)と、下孔形成ドリル(DRLF)に取り付け可能な、下孔形成ドリル(DRLF)の穿孔深さを強制的に規制するドリルストッパー(DRLS)と組み合わせることが好ましい。
これにより、必要最小限の製品数及び作業で歯科用インプラントの埋入孔を適切且つ簡便に形成することが可能となる。(
図14)
【0043】
下孔形成ドリル(DRLF)及びドリルストッパー(DRLS)の好適な実施形態の一つとしては、ドリルストッパー(DRLS)は、工具等を用いずに手作業で下孔形成ドリル(DRLF)と着脱可能であることが好ましい。(
図15)
【0044】
加えて、ドリルストッパー(DRLS)を装着して下孔形成ドリル(DRLF)で形成される下孔(3)の深さは、歯科用インプラントの埋入に必要な長さと合わせることが好ましい。従って、例えば埋入する歯科用インプラントの長さが複数種類あれば、それに合わせてドリルストッパー(DRLS)も同種類準備することが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の歯科用インプラントドリル(DRL)により、歯科用インプラントを顎骨に埋入するための埋入孔の形成において、より安全に且つ作業を簡素化して施術を行うことが可能となる。また、歯科用インプラントの任意の外径サイズに適宜合わせることができ、応用範囲も広い。
従って、本発明は、歯科用インプラント治療の分野において、幅広く利用することができる。