特許第6384910号(P6384910)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6384910レジスト膜付きマスクブランクおよびその製造方法ならびに転写用マスクの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6384910
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】レジスト膜付きマスクブランクおよびその製造方法ならびに転写用マスクの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/20 20120101AFI20180827BHJP
   G03F 7/038 20060101ALI20180827BHJP
   G03F 7/095 20060101ALI20180827BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20180827BHJP
   G03F 7/11 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   G03F1/20
   G03F7/038 601
   G03F7/095
   G03F7/004 503A
   G03F7/11 503
【請求項の数】10
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-164855(P2014-164855)
(22)【出願日】2014年8月13日
(65)【公開番号】特開2016-40589(P2016-40589A)
(43)【公開日】2016年3月24日
【審査請求日】2017年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(74)【代理人】
【識別番号】100090136
【弁理士】
【氏名又は名称】油井 透
(74)【代理人】
【識別番号】100105256
【弁理士】
【氏名又は名称】清野 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100161034
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 知洋
(74)【代理人】
【識別番号】100187632
【弁理士】
【氏名又は名称】橘高 英郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156834
【弁理士】
【氏名又は名称】橋村 一誠
(72)【発明者】
【氏名】福井 亨
【審査官】 田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−325382(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/044741(WO,A1)
【文献】 特開2001−264983(JP,A)
【文献】 特開2010−215608(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/084516(WO,A1)
【文献】 特開平07−086127(JP,A)
【文献】 特開2004−045513(JP,A)
【文献】 特開2006−023699(JP,A)
【文献】 特開2006−287236(JP,A)
【文献】 特開平07−086119(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC H01L 21/027、
G03F 1/00−1/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜を有する基板と、前記薄膜の主表面に形成されたネガ型のレジスト膜とを備えるレジスト膜付きマスクブランクであって、
前記レジスト膜において、前記レジスト膜が前記薄膜と接する部分に、前記レジスト膜の他の領域に比べて光酸発生剤の濃度が高い光酸発生剤濃厚領域が形成されていることを特徴とするレジスト膜付きマスクブランク。
【請求項2】
前記レジスト膜は複数の層により構成されており、複数の層のうち前記レジスト膜が前記薄膜と接する層は、光酸発生剤が濃厚な濃厚層であることを特徴とする請求項1に記載のレジスト膜付きマスクブランク。
【請求項3】
前記濃厚層から見て前記レジスト膜の最表面側には、前記濃厚層に比べて光酸発生剤が希薄な希薄層が形成されており、
前記希薄層と前記濃厚層との間に、前記希薄層の濃度と前記濃厚層の濃度との間の濃度を有する中間領域が形成されていることを特徴とする請求項2に記載のレジスト膜付きマスクブランク。
【請求項4】
前記濃厚層における光酸発生剤はトリフルオロメチルを含有しないものであることを特徴とする請求項2または3に記載のレジスト膜付きマスクブランク。
【請求項5】
前記レジスト膜の膜厚が10〜300nmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のレジスト膜付きマスクブランク。
【請求項6】
レジスト膜付きマスクブランクの製造方法であって、
薄膜を有する基板を準備する基板準備工程と、
前記薄膜の主表面にネガ型のレジスト膜を形成するレジスト膜形成工程と、
を有し、
前記レジスト膜形成工程は、
前記薄膜の主表面に光酸発生剤が濃厚な溶液を塗布してベークを行い、光酸発生剤が濃厚な濃厚層を形成する濃厚層形成工程と、
前記濃厚層の主表面にレジスト液を塗布してベークを行い、前記濃厚層に比べて光酸発生剤が希薄な希薄層を形成する希薄層形成工程と、
を有することを特徴とする、レジスト膜付きマスクブランクの製造方法。
【請求項7】
前記濃厚層形成工程において使用する溶液に含まれる光酸発生剤はトリフルオロメチルを含有しないことを特徴とする請求項に記載のレジスト膜付きマスクブランクの製造方法。
【請求項8】
前記レジスト膜の膜厚を10〜300nmとすることを特徴とする請求項6または7に記載のレジスト膜付きマスクブランクの製造方法。
【請求項9】
請求項1からのいずれかに記載のレジスト膜付きマスクブランクを用い、マスクブランクのうち少なくとも薄膜に対して凹凸パターンを形成するパターン形成工程と、
を有する、転写用マスクの製造方法。
【請求項10】
請求項1からのいずれかに記載のレジスト膜付きマスクブランクを用いて転写用マスクを製造する方法であり、
前記レジスト膜にパターンを形成するレジストパターン形成工程を有しており、
レジストパターン形成工程は、レジスト膜を電子線描画する工程と現像工程が含まれており、
前記現像工程で用いる現像液は有機溶媒現像液であることを特徴とする、転写用マスクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト膜付きマスクブランクおよびその製造方法ならびに転写用マスクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ネガ型の化学増幅型レジストを使用してレジスト膜を形成し、当該レジスト膜からレジストパターンを形成する技術は、微細なパターンが形成可能であることから注目されている。
【0003】
ネガ型の化学増幅型レジストの仕組みとしては、簡単に言うと以下の通りである。まず、レジスト液の中に光酸発生剤(Photo Acid Generator:PAG)を含有させておく。それと共に、光架橋なり光重合反応が生じ得る化合物を含有させておく。当該レジスト液を塗布しこれをベークして膜化した後、露光を行うことになる。露光が行われた箇所においては、光酸発生剤により酸が発生する。この酸が、光架橋や光重合反応を進行ないし促進させることになる。こうして、露光部分が硬化する。そして、レジスト膜に対して現像を行うことにより非露光部分は除去され、露光部分のみが残り、レジストパターンが形成される。以降、ネガ型の化学増幅型レジストのことを略して「ネガレジスト」とも言う。
【0004】
微細なパターンが形成可能である一方で、ネガレジストを用いる場合、パターンの根元に細りが生じたり、アンダーカットが生じたりすることがある。
その理由としては、種々考えられるが、理由の一つとしては、レジスト膜の最表面から露光を行うと、レジスト膜の奥底に向かうにつれて露光光が減衰し、露光量が少なくなる。そうなると、レジスト膜と接する薄膜の近傍部分(レジスト膜の奥底部分、以降「パターンの根元」という)においては十分な露光が行われないことになる。その結果、パターンの根元に細りが生じたり、アンダーカットが生じたりする。
また、仮にレジスト膜の奥底部分で十分な露光が行われていたとしても、現像処理や、レジストパターンをマスクとした薄膜に対するエッチングの際に、パターンの根元に細りが生じたり、アンダーカットが生じたりするおそれがある。
【0005】
別の理由としては、レジスト膜の下に設けられる薄膜が、レジストパターンの形成に悪影響を与えるというケースも挙げられる。
例えば特許文献1の[0008]に記載の内容であるが、例えばクロム(Cr)系の薄膜の上にレジスト膜が形成されている場合には、Crの影響により光酸発生剤から発生した酸が失活する。その結果、レジスト膜におけるCr系薄膜(以降、単に「Cr膜」と称する。)と接する部分は酸が少なくなり、ひいては光重合の度合いが小さくなる。そうなると、レジストパターンにおいて上記のような細りやアンダーカットが生じやすくなる。
上記の問題点を解消すべく、特許文献1においては、レジスト膜と接触する薄膜はクロムを含まないようにする処置が施されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−123426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の手法ならば確かにCrの影響を排除することは可能なのだが、別の言い方をすると、レジスト膜の下に設ける薄膜として使用できる物質に制限が加えられることになり、マスクブランクを設計する際の自由度を大きく奪われることになる。
【0008】
本発明の目的は、マスクブランクを設計する際の自由度を高く維持しつつ、良好なレジストパターンを形成可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するための手法をシンプルに考えるのならば、レジスト膜における薄膜近傍領域における酸の濃度を高くしてやればよい。しかしながら、当該領域の酸の濃度をピンポイントに高くする手法は見出されていない。そのため、レジスト膜内全体の酸の濃度を高くするために、酸を発生させる光酸発生剤の濃度を高くするという手法が考えられる。
【0010】
しかしながら、単に光酸発生剤の濃度をレジスト膜内全体で高くすると、今度は解像度の低下という問題に直面する。光酸発生剤の濃度が高いと、レジスト膜の非露光部分においても前方散乱や後方散乱等の散乱光により酸が発生してしまい、非露光部分であるにもかかわらずレジスト膜が硬化してしまうおそれが出てくる。
【0011】
しかも、本発明者が調べたところ、薄膜を構成する元素の種類によって細りやアンダーカットが生じたり生じなかったりすることが判明した。マスクブランクの薄膜を構成する元素の自由度を上げるためにも、この原因を究明する必要があると本発明者は考えた。
【0012】
本発明者による鋭意検討の結果、Crを薄膜としたマスクブランクの場合、レジスト膜におけるCr膜近傍領域の光酸発生剤の濃度が約半分まで低下していることが判明した。特許文献1に示すようにCrにより酸濃度が低下することは以前より知られていたけれども、光酸発生剤の濃度がCr膜近傍領域だと約半分になっていることは、本発明者の鋭意研究により見出された事実である。しかもこの傾向は、薄膜を構成する元素によって大きく相違する。例えば、TaやSiOを薄膜とした場合は上記の傾向はほとんどない。
【0013】
この新たな知見に基づき、本発明者は、薄膜を構成する元素の種類にかかわらず、ネガレジストを使用した上で良好なレジストパターンを形成するための手法について鋭意検討を行った。その結果、マスクブランクに設けられるレジスト膜において、薄膜と接するように光酸発生剤が濃厚な領域を形成しておくという手法を想到した。こうすることにより、Crを薄膜とする場合だと、レジストパターンの根元における光酸発生剤の濃度の低下を補うことができる。また、TaやSiOを薄膜とする場合だと、レジストパターンの根元において光酸発生剤の濃度を高くすることにより、レジストパターンの根元を堅固なものとすることができる。
この知見に基づいて成された本発明の構成は、以下の通りである。
【0014】
<構成1>
本発明の第1の構成は、レジスト膜付きマスクブランクである。
本構成は、薄膜を有する基板と、薄膜の主表面に形成されたネガ型のレジスト膜とを備える。
そして、レジスト膜において、レジスト膜が薄膜と接する部分に、レジスト膜の他の領域に比べて光酸発生剤の濃度が高い光酸発生剤濃厚領域が形成されている。
本構成によれば、仮に薄膜により光酸発生剤の濃度が低下したとしても、光酸発生剤濃厚領域によりその低下分を補うことができる。一方、薄膜により光酸発生剤の濃度が低下しない場合であっても、レジストパターンの根元を堅固なものにすることが可能となる。その結果、レジストパターンの膨潤を抑制することができる。なお、レジストパターンの根元に裾野が形成された(すなわち根元の方が太い形状となる)状態であったとしても、現像処理や薄膜に対するエッチングにおいてレジストパターンの根元が裾引きされ、結局のところ薄膜に対して垂直にレジストパターンが形成されることになる。その結果、マスクブランクを設計する際の自由度を高く維持しつつ、良好なレジストパターンを形成可能でとなる。
【0015】
<構成2>
本発明の第2の構成は、第1に記載の構成において、レジスト膜は複数の層により構成されており、複数の層のうちレジスト膜が薄膜と接する層は、光酸発生剤が濃厚な濃厚層である。
上記の光酸発生剤濃厚領域を濃厚層として薄膜の主表面に形成しておくことにより、濃厚層が光酸発生剤の供給源としての役割を発揮でき、構成1で述べた効果を確実に更に増幅させることになる。
【0016】
<構成3>
本発明の第3の構成は、第2に記載の構成において、濃厚層から見てレジスト膜の最表面側には、濃厚層に比べて光酸発生剤が希薄な希薄層が形成されている。
そして、希薄層と濃厚層との間に、希薄層の濃度と濃厚層の濃度との間の濃度を有する中間領域が形成されている。
上記の中間領域を形成することにより、希薄層から濃厚層への光酸発生剤の濃度増加が緩やかになる。その一方、薄膜による光酸発生剤の濃度低下は、薄膜近傍からレジスト膜の最表面にかけて緩やかに行われる。その結果、上記の濃度増加と濃度低下が打ち消し合い、最終的にレジスト膜の厚さ方向において極めて均質なレジストパターンを得ることが可能となる。
【0017】
<構成4>
本発明の第4の構成は、第2または第3に記載の構成であって、濃厚層における光酸発生剤は、アニオンとしてトリフルオロメチルを含有しないものである。
レジスト膜を複数の層により構成する場合、仮に、濃厚層における光酸発生剤がアニオンとしてトリフルオロメチルを有する場合、臨界表面エネルギーが低くなってしまう。そうなると、濃厚層が薄膜の主表面に接着しにくくなるおそれもある。そのため、濃厚層における光酸発生剤は、アニオンとしてトリフルオロメチルを含有しないように設定することにより、濃厚層における薄膜と接する部分の光酸発生剤の濃度を確実に高めることができる。
【0018】
<構成5>
本発明の第5の構成は、レジスト膜付きマスクブランクの製造方法である。
本製造方法は、薄膜を有する基板を準備する基板準備工程と、
薄膜の主表面にネガ型のレジスト膜を形成するレジスト膜形成工程と、
が含まれている。
そして、レジスト膜形成工程は、
薄膜の主表面に光酸発生剤が濃厚な溶液を塗布してベークを行い、光酸発生剤が濃厚な濃厚層を形成する濃厚層形成工程と、
濃厚層の主表面にレジスト液を塗布してベークを行い、濃厚層に比べて光酸発生剤が希薄な希薄層を形成する希薄層形成工程と、
が含まれている。
本構成によれば、構成1および2で述べたのと同様の効果を奏する。
【0019】
<構成6>
本発明の第6の構成は、第5に記載の構成であって、濃厚層形成工程において使用する溶液に含まれる光酸発生剤は、アニオンとしてトリフルオロメチルを含有しない。
本構成によれば、構成4で述べたのと同様の効果を奏する。
【0020】
<構成7>
本発明の第7の構成は、第1から第4のいずれかに記載のレジスト膜付きマスクブランクを用い、マスクブランクのうち少なくとも薄膜に対して凹凸パターンを形成するパターン形成工程と、
を有する、転写用マスクの製造方法である。
本構成によれば、構成1で述べたのと同様の効果を奏する。
【0021】
<構成8>
本発明の第8の構成は、第1から第4のいずれかに記載のレジスト膜付きマスクブランクを用い、前記レジスト膜にパターンを形成するレジストパターン形成工程と、
を有する、転写用マスクの製造方法である。
本レジストパターン形成工程は、レジスト膜を電子線描画する工程と現像工程が含まれており、
前記現像工程は現像液に有機溶媒を用いる有機溶媒現像であることを特徴とする。
ネガ型レジスト膜を有機溶媒現像液によって現像すると、レジストパターンの根元の細りやアンダーカットが生じやすくなるものの、本構成を採用することにより、先述の不具合の発生を抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、マスクブランクを設計する際の自由度を高く維持しつつ、良好なレジストパターンを形成可能な技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本実施形態におけるレジスト膜付きマスクブランクの断面概略図である。
図2】本実施形態におけるレジスト膜付きマスクブランクの製造方法を示す断面概略図である。
図3】本実施形態における転写用マスクの製造方法を示す断面概略図である。
図4】実施例1において、TOF−SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析法)により、レジスト膜付きマスクブランクにおける光酸発生剤A、光酸発生剤Bおよびポリマーの深さ方向の分布を確認した結果を示す図である。
図5】実施例1において、レジストパターンの断面形状の評価をSEM(走査電子顕微鏡)にて観察した結果を示す像である。
図6】実施例2において、ハーフピッチが200nmのときのレジストパターンの断面形状の評価をSEMにて観察した結果を示す像である。
図7】比較例1において、レジストパターンの断面形状の評価をSEM(走査電子顕微鏡)にて観察した結果を示す像である。
図8】比較例2において、ハーフピッチが200nmのときのレジストパターンの断面形状の評価をSEMにて観察した結果を示す像である。
図9】実施例3において、TOF−SIMSにより、レジスト膜付きマスクブランクにおける光酸発生剤A’、光酸発生剤Bおよびポリマーの深さ方向の分布を確認した結果を示す図である。
図10】実施例4において、TOF−SIMSにより、レジスト膜付きマスクブランクにおける光酸発生剤A、光酸発生剤B、レジスト下地層のポリマー(熱硬化性樹脂:BILと表記)および希薄層のポリマー(ネガレジスト)の深さ方向の分布を確認した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本実施形態においては、次の順序で説明を行う。
1.レジスト膜付きマスクブランク
1−A)薄膜付基板
1−B)レジスト膜
1−B−a)濃厚層(光酸発生剤濃厚領域)
1−B−b)希薄層
1−B−c)中間領域
2.マスクブランクの製造方法
2−A)薄膜付基板(マスクブランク)準備工程
2−B)レジスト膜形成工程
2−B−a)濃厚層形成工程
2−B−b)希薄層形成工程
3.転写用マスクの製造方法
3−A)露光工程
3−B)現像工程
3−C)エッチング工程
3−D)その他
なお、以下に記載が無い構成については、公知の構成(例えば本出願人による特開2013−257593号公報)を適宜採用しても構わない。本明細書には、例えば薄膜の構成等特記のない事項に関し、特開2013−257593号公報の内容が記載されているものとする。
【0025】
<1.レジスト膜付きマスクブランク1>
本実施形態におけるレジスト膜付きマスクブランク1について、図1を用いて説明する。図1は、本実施形態におけるレジスト膜付きマスクブランク1の断面概略図である。図1に示すように本実施形態におけるレジスト膜付きマスクブランク1は、基板10の主表面に薄膜11が形成され、薄膜11の上にレジスト膜12が形成されている。以下、各構成について説明する。
【0026】
1−A)薄膜付基板(マスクブランク5)
本実施形態における基板10としては、ガラス基板を用いることができる。透過型マスクの場合、基板10は、ウェハ上にパターンを形成するときの露光光に対して高い透過率を有するガラス材のものが選択される。反射型マスクの場合、露光光のエネルギーに伴う基板10の熱膨張が最小限にできる低熱膨張ガラスが選択される。
具体的には、透過型マスク(例えば、バイナリマスク、位相シフトマスク及びグレートーンマスク)の場合、基板10の材質としては、合成石英ガラス、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス、ボロシリケートガラス、無アルカリガラスなどが挙げられる。詳しい例として、波長193nmのArFエキシマレーザーや波長254nmのKrFエキシマレーザーを露光光として用いる転写型マスクの基板10には、波長300nm以下の光に対して高い透過率を有する合成石英ガラスを好ましく用いることができる。
また、反射型マスクであるEUVマスクの場合、基板10には、露光時の熱による被転写パターンの歪みを抑えるために、約0±1.0×10−7/℃の範囲内、より好ましくは約0±0.3×10−7/℃の範囲内の低熱膨張係数を有するガラス材料であるSiO−TiO系ガラスを好ましく用いることができる。
【0027】
次に、図1に示すように、基板10の主表面に対して薄膜11が形成される。基板10の主表面であってレジスト膜12の下に形成される薄膜11を構成する元素は、マスクブランク5から製造される転写用マスクの用途に応じて選択される。ただ、薄膜11がCr膜の場合には、酸がCr膜によって失活する。それに加え、本発明者が見出した現象であるところの、光酸発生剤の濃度が半減する。そのため、酸の源となる光酸発生剤が薄膜11近傍で濃厚であると、光酸発生剤の低減分を補うことが可能となり、ひいては酸の失活分を補える。つまり、薄膜11がCr膜である場合、レジストパターンの根元の細りやアンダーカットが生じやすくなるものの、本実施形態の構成を採用することにより、上記の不具合の発生を抑制することが可能となる。ただ、もちろん、本発明の課題とするところは薄膜11の選択の自由度を高く維持することにあるので、本発明は薄膜11がCr膜である場合に限定されるものではない。むしろ薄膜11をTa膜やSiO膜としたときにおいても、以下の顕著な効果を奏する。すなわち、レジストパターンの根元を堅固なものにすることが可能となる。その結果、レジストパターンの膨潤を抑制することができる。なお、レジストパターンの根元に裾野が形成された(すなわち根元の方が太い形状となる)状態であったとしても、現像処理や薄膜11に対するエッチングにおいてレジストパターンの根元が裾引きされ、結局のところ薄膜11に対して垂直にレジストパターンが形成されることになる。その結果、マスクブランク5を設計する際の自由度を高く維持しつつ、良好なレジストパターンを形成可能となる。
薄膜11の具体的な構成を列挙するならば、以下の(1)〜(5)が挙げられる。
【0028】
(1)バイナリマスクの薄膜11
バイナリマスクブランクを作製する場合、露光波長の光に対して透光性を有する基板10上に、遮光膜111を有する薄膜11が形成される。
この遮光膜111は、クロム、タンタル、ルテニウム、タングステン、チタン、ハフニウム、モリブデン、ニッケル、バナジウム、ジルコニウム、ニオブ、パラジウム、ロジウム等の遷移金属単体あるいはその化合物を含む材料からなる。例えば、クロムや、クロムに酸素、窒素、炭素などの元素から選ばれる1種以上の元素を添加したクロム化合物で構成した遮光膜111が挙げられる。また、例えば、タンタルに、酸素、窒素、ホウ素などの元素から選ばれる1種以上の元素を添加したタンタル化合物で構成した遮光膜111が挙げられる。
また、薄膜11は、遮光膜111の構造が、遮光層と主表面反射防止層の2層構造や、さらに遮光層と基板10との間に裏面反射防止層を加えた3層構造としたものなどがある。また、遮光膜111の膜厚方向における組成が連続的又は段階的に異なる組成傾斜膜としてもよい。
また、遮光膜111上にエッチングマスク膜を有する薄膜11の構成としてもよい。このエッチングマスク膜は、遷移金属シリサイドを含む遮光膜111のエッチングに対してエッチング選択性を有する(エッチング耐性を有する)特にクロムや、クロムに酸素、窒素、炭素などの元素を添加したクロム化合物からなる材料で構成することが好ましい。このとき、エッチングマスク膜に反射防止機能を持たせることにより、遮光膜111上にエッチングマスク膜を残した状態で転写用マスクを作製してもよい。
【0029】
(2)他の構成を有するバイナリマスクの薄膜11
また、バイナリマスクの薄膜11の他の例としては、遷移金属及びケイ素(遷移金属シリサイド、特にモリブデンシリサイドを含む)の化合物を含む材料からなる遮光膜111を有する構成も挙げることができる。
この遮光膜111は、遷移金属及びケイ素の化合物を含む材料からなり、これらの遷移金属及びケイ素と、酸素及び/又は窒素を主たる構成要素とする材料が挙げられる。また、遮光膜111は、遷移金属と、酸素、窒素及び/又はホウ素を主たる構成要素とする材料が挙げられる。遷移金属には、モリブデン、タンタル、タングステン、チタン、ハフニウム、ニッケル、バナジウム、ジルコニウム、ニオブ、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、クロム等が適用可能である。
特に、遮光膜111をモリブデンシリサイドの化合物で形成する場合であって、遮光層(MoSi等)と主表面反射防止層(MoSiON等)の2層構造や、さらに遮光層と基板10との間に裏面反射防止層(MoSiON等)を加えた3層構造がある。
また、遮光膜111の膜厚方向における組成が連続的又は段階的に異なる組成傾斜膜としてもよい。
【0030】
(3)ハーフトーン型位相シフトマスクの薄膜11
ハーフトーン型位相シフトマスクを作製する場合、転写時に使用する露光光の波長に対して透光性を有する基板10上に遷移金属及びケイ素(遷移金属シリサイド、特にモリブデンシリサイドを含む)の化合物を含む材料からなる光半透過膜110を有する薄膜11が形成される。
薄膜11に含まれる光半透過膜110は、実質的に露光に寄与しない強度の光(例えば、露光波長に対して1%〜30%)を透過させるものであって、所定の位相差(例えば180度)を有するものである。なお、ハーフトーン型位相シフトマスクは、この光半透過膜110をパターニングした光半透過部と、光半透過膜110が形成されていない実質的に露光に寄与する強度の光を透過させる光透過部とによって、光半透過部を透過して光の位相が光透過部を透過した光の位相に対して実質的に反転した関係になるようにすることによって、光半透過部と光透過部との境界部近傍を通過し回折現象によって互いに相手の領域に回り込んだ光が互いに打ち消しあうようにし、境界部における光強度をほぼゼロとし境界部のコントラスト即ち解像度を向上させるものである。
この光半透過膜110は、例えば遷移金属及びケイ素(遷移金属シリサイドを含む)の化合物を含む材料からなり、これらの遷移金属及びケイ素と、酸素及び/又は窒素を主たる構成要素とする材料が挙げられる。遷移金属には、モリブデン、タンタル、タングステン、チタン、ハフニウム、ニッケル、バナジウム、ジルコニウム、ニオブ、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、クロム等が適用可能である。
また、光半透過膜110上に遮光膜111を有する形態の場合、上記光半透過膜110の材料が遷移金属及びケイ素を含むので、遮光膜111の材料としては、光半透過膜110に対してエッチング選択性を有する(エッチング耐性を有する)特にクロムや、クロムに酸素、窒素、炭素などの元素を添加したクロム化合物で構成することが好ましい。
【0031】
(4)多階調マスクの薄膜11
多階調マスクの薄膜11は、1以上の半透過膜と遮光膜111との積層構造である。
半透過膜の材料については、ハーフトーン型位相シフトマスクブランクの光半透過膜110と同様の元素のほか、クロム、タンタル、チタン、アルミニウムなどの金属単体や合金あるいはそれらの化合物を含む材料も含まれる。
各元素の組成比や膜厚は、露光光に対して所定の透過率となるように調整される。遮光膜111の材料についてもバイナリマスクブランク5の遮光膜111が適用可能であるが、半透過膜との積層構造で、所定の遮光性能(光学濃度)となるように、遮光膜111の材料の組成や膜厚は調整される。
【0032】
(5)反射型マスクの薄膜11
反射型マスクの薄膜11は、基板10上に露光光を反射する多層反射膜が形成され、多層反射膜上に露光光を吸収する吸収体膜がパターン状に形成された構造を有する。露光機(パターン転写装置)に搭載された反射型マスクに入射した光(EUV光)は、吸収体膜のある部分では吸収され、吸収体膜のない部分では多層反射膜により反射された光像が反射光学系を通して半導体基板上に転写される。
多層反射膜は、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層して形成される。多層反射膜の例としては、Mo膜とSi膜を交互に40周期程度積層したMo/Si周期積層膜、Ru/Si周期多層膜、Mo/Be周期多層膜、Mo化合物/Si化合物周期多層膜、Si/Nb周期多層膜、Si/Mo/Ru周期多層膜、Si/Mo/Ru/Mo周期多層膜、Si/Ru/Mo/Ru周期多層膜などがある。露光波長により、材質を適宜選択することができる。
また、吸収体膜は、露光光である例えばEUV光を吸収する機能を有するもので、例えばタンタル(Ta)単体又はTaを主成分とする材料を好ましく用いることができる。このような吸収体膜の結晶状態は、平滑性、平坦性の点から、アモルファス状又は微結晶の構造を有しているものが好ましい。
【0033】
1−B)レジスト膜12
次に、図1に示すように、マスクブランク5の薄膜11の上に、レジスト膜12を形成する。本実施形態におけるレジスト膜12は複数の層により構成されている。
【0034】
なお、本実施形態におけるレジスト膜12は、ネガ型の化学増幅型レジスト(ネガレジスト)および光酸発生剤を含有する膜である。但し、レジスト膜12を構成する各層すべてにおいてネガレジストが含まれている必要はない。例えば、後述する実施例3に示すように、ネガレジストではなく単なる熱硬化性樹脂に光酸発生剤を濃厚に含有させたものをレジスト下地層12a(いわゆる濃厚層12aであり光酸発生剤濃厚領域)として薄膜11の主表面に設け、その上にネガレジストを塗布およびベークしても構わない。つまり、本実施形態においては、薄膜11と接する部分に設けられる層であってレジスト膜12における下地となるレジスト下地層12aも含んだ上で「レジスト膜12」と称する。
以下、レジスト膜12を構成する各層(領域)について説明する。なお、各層(領域)を構成する具体的な化合物や分量については、本項目の最後にまとめて列挙する。
【0035】
1−B−a)濃厚層12a(光酸発生剤濃厚領域)
本実施形態においては、レジスト膜12を構成する複数の層のうちレジスト膜12が薄膜11と接する層は、光酸発生剤が濃厚な濃厚層12aとする。なお、濃厚層12aは光酸発生剤濃厚領域でもある。
【0036】
本明細書における「光酸発生剤濃厚領域」は、「レジスト膜の他の領域に比べて光酸発生剤の濃度が高い領域」を意味する。さらに言うと、「レジスト膜の他の領域」とは、レジスト膜12において光酸発生剤濃厚領域以外の領域のことを言う。つまり、「他の領域に比べて光酸発生剤の濃度が高い領域」とは、レジスト膜12において光酸発生剤濃厚領域以外の領域全体から見たときの光酸発生剤の濃度よりも、光酸発生剤濃厚領域全体から見たときの光酸発生剤の濃度の方が高いことを意味する。言い方を変えると、仮に、レジスト膜12内において、濃厚層12aとは別に、最表面近傍に光酸発生剤の濃度が高い層を薄く設けたとしても、濃厚層12aより上の領域全体から見たときの光酸発生剤の濃度は、濃厚層12a全体から見たときの光酸発生剤の濃度に比べて相変わらず低いままであり、この場合においても本発明の技術的範囲に属する。
【0037】
なお、先にも例示したが、濃厚層12aはネガレジストを原料とせずともよい。例えば、ネガレジストを用いずに光酸発生剤を高濃度に溶解可能な溶剤を使用しても構わない。この場合、光酸発生剤を高濃度に溶解させた溶剤を薄膜11に塗布かつベークし、濃厚層12aを薄膜11上に形成する。もちろん、ネガレジストを原料としても構わないが、後述の希薄層12bで用いるネガレジストと同種であってもよいし異種であってもよい。
【0038】
なお、濃厚層12aにおける光酸発生剤は、アニオンとしてトリフルオロメチルを含有しないことが好ましい。先にも述べたが、レジスト膜12を複数の層により構成する場合、仮に、濃厚層12aにおける光酸発生剤がアニオンとしてトリフルオロメチルを有する場合、臨界表面エネルギーが低くなってしまう。そうなると、濃厚層12aが薄膜11の主表面に接着しにくくなるおそれもある。そのため、濃厚層12aにおける光酸発生剤はトリフルオロメチルを含有しないように設定することにより、濃厚層12aにおける薄膜11と接する部分の光酸発生剤の濃度を確実に高めることができる。
【0039】
1−B−b)希薄層12b
濃厚層12aから見てレジスト膜12の最表面側には、濃厚層12aに比べて光酸発生剤が希薄な希薄層12bが形成されている。好ましくは、レジスト膜12の最表面に希薄層12bが形成されている。本実施形態の希薄層12bは、ネガレジストを原料としつつ、光酸発生剤を含有するものである。なお、ここで言う「希薄」というのは、あくまで濃厚層12aに比べて光酸発生剤の濃度が相対的に低いことを指すものであり、レジスト膜12の解像度を低下させる程度の絶対的な濃度の低さを意味するものではない。
【0040】
1−B−c)中間領域12c
本実施形態においては、希薄層12bと濃厚層12aとの間に、希薄層12bの濃度と濃厚層12aの濃度との間の濃度を有する中間領域12cが形成されている。先にも述べたが、上記の中間領域12cを形成することにより、希薄層12bから濃厚層12aへの光酸発生剤の濃度増加が緩やかになる。その一方、薄膜11による光酸発生剤の濃度低下は、薄膜11近傍からレジスト膜12の最表面にかけて緩やかに行われる。その結果、上記の濃度増加と濃度低下が打ち消し合い、最終的にレジスト膜12の厚さ方向において極めて均質なレジストパターンを得ることが可能となる。
なお、上記の中間領域12cは、希薄層12bの形成段階において既に存在していた濃厚層12aと希薄層12bの原料とが混じり合うことにより形成されるものであっても構わないし、希薄層12bや濃厚層12aとは別に第三の層からなるものであっても構わない。
【0041】
なお、本実施形態においてはレジスト膜12が複数の層により構成されている例を挙げたが、レジスト膜12が一つの層により形成されていても構わない。その場合、一つの層の中で、光酸発生剤の濃度に濃淡をつける必要がある。この濃淡の付け方としては、例えば、極性を有する少量の光酸発生剤と、極性を有さない光酸発生剤とを併用することが挙げられる。この場合、ネガレジストを塗布すると、極性を有する少量の光酸発生剤が主表面側に集中することになる。そうなると、極性を有さない光酸発生剤は、自ずと、薄膜側に追いやられることになる。そうなると相対的に薄膜11近傍へと極性を有さない光酸発生剤が多量に集まることになる。
このような例以外であっても、適宜、光酸発生剤の種類の数や種類そのもの、ベークの際の温度、ネガレジストに混合させる物質やその量等を調整することにより、単一の層からなるレジスト膜12において、薄膜11近傍に光酸発生剤濃厚領域を形成しても構わない。
【0042】
以上の内容がレジスト膜12を構成する各層の内容である。以下、各層(領域)を構成する具体的な化合物や分量を列挙する。本明細書においては「〜」は所定数値以上かつ所定数値以下を意味する。また、以下に列挙する化合物は単独で用いても構わないし、各化合物を組み合わせたものを用いても構わない。
【0043】
(ネガレジスト)
本実施形態におけるネガレジストとしては公知のものを用いても構わない。例えば、特開2014−106299号公報に記載のネガ型の化学増幅型レジストを使用しても構わない。
【0044】
(架橋剤)
架橋剤としては、アルコキシメチルグリコールウリル類、アルコキシメチルメラミン類を挙げることができ、具体的には、テトラメトキシメチルグリコールウリル、1,3−ビスメトキシメチル−4,5−ビスメトキシエチレンウレア、ビスメトキシメチルウレア、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサエトキシメチルメラミン等を挙げることができる。
なお、架橋剤の分量としては、ネガレジストにおいてポリマー100質量部に対して0.5〜5質量部を含有させるのが好ましい。この範囲ならば、ネガレジストとしての機能を十分に発揮させられる一方、非露光部まで硬化させることによる解像度の減少を食い止められる。
【0045】
(光酸発生剤)
光酸発生剤としては、ジアゾニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩等のオニウム塩、有機ハロゲン化合物、o−ニトロベンジル型保護基を有する光酸発生剤、イミノスルホネート化合物、ジスルホン化合物、ジアゾケトスルホン酸、ジアゾジスルホン化合物、オキシムスルホネート化合物等を挙げることができる。
なお、光酸発生剤の分量としては、ポリマー100質量部に対して2〜20質量部(好ましくは5〜15質量部)を含有させるのが好ましい。この範囲ならば、ネガレジストとしての機能を十分に発揮させられる一方、非露光部まで硬化させることによる解像度の現象を食い止められる。
【0046】
(塩基性化合物)
塩基性化合物としては、第一級、第二級、第三級の脂肪族アミン類、混成アミン類、芳香族アミン類、複素環アミン類、カルボキシル基を有する含窒素化合物、スルホニル基を有する含窒素化合物、水酸基を有する含窒素化合物、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、アルコール性含窒素化合物、アミド類、イミド類、カーバメート類、アンモニウム塩類等を挙げることができる。
特に好ましく配合される塩基性化合物としては、トリス(2−(メトキシメトキシ)エチル)アミン、トリス(2−(メトキシメトキシ)エチル)アミン N−オキシド、モルホリン誘導体、イミダゾール誘導体などが挙げられる。
なお、塩基性化合物の分量としては、ポリマー100質量部に対して0.01〜5質量部(好ましくは0.05〜3質量部)を含有させるのが好ましい。この範囲ならば、ネガレジストとしての機能を十分に発揮させられる一方、非露光部まで硬化させることによる解像度の現象を食い止められる。
【0047】
(溶剤)
本実施形態における溶剤は、先に挙げたレジスト下地層12aの形成にも用いることができるし、ネガレジストを構成するものとしても使用可能である。
本実施形態における溶剤としては、高分子化合物、酸発生剤、その他の添加剤等が溶解可能な有機溶剤であって、例えば、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン等のケトン類、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME、別名1−メトキシ−2−プロパノール)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、β−メトキシイソ酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA、別名1−メトキシ−2−アセトキシプロパン)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸エチル、酢酸イソアミル、乳酸エチル、酢酸ブチル、酢酸tert−ブチル、プロピオン酸tert−ブチル、プロピレングリコールモノtert−ブチルエーテルアセテート、酢酸シクロヘキシル等のエステル類、3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類、そのほか、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、トルエン、キシレン等を挙げることができる。
なお、濃厚層12aを形成する際の溶剤としては、上記の化合物の中でも、光酸発生剤の溶解性が最も優れている乳酸エチルやプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどを用いるのが好ましい。これらの溶剤を用いることにより、レジスト層中に酸発生剤が析出(偏析)するのを抑制することができる。
なお、本実施形態における溶剤の使用量は、全ポリマー100質量部に対して1,000〜10,000質量部が好ましく、特に2,000〜9,700質量部が好適である。このような濃度に調整することにより、回転塗布法を用い、膜厚が10〜300nmのレジスト膜12を安定して平坦度よく得ることができる。
【0048】
以上が本実施形態におけるレジスト膜付きマスクブランク1の主な構成である。なお、上記の構成を有するのならば、その他の公知の層(膜)をマスクブランク5に設けても構わない。例えば、レジスト膜12の主表面に対して保護膜を設けても構わない。
【0049】
<2.マスクブランク5の製造方法>
次に、本実施形態におけるレジスト膜付きマスクブランク1の製造方法について、図2を用いて説明する。図2は、本実施形態におけるレジスト膜付きマスクブランク1の製造方法を示す断面概略図である。なお、以下の工程の内容は、<1.レジスト膜付きマスクブランク1>にて説明した内容と重複する部分もある。そのため、以下に記載が無い内容については、<1.レジスト膜付きマスクブランク1>にて説明した通りである。
【0050】
なお、本実施形態では、以下の2−A)薄膜付基板準備工程において、基板10を用意しその基板10の上に薄膜11を成膜する例を示すが、あらかじめ薄膜11が形成されているマスクブランク5を用意して、その上にレジスト膜12を形成する形態も、本発明の形態に含まれる。
【0051】
2−A)薄膜付基板(マスクブランク5)準備工程
まず、基板10を準備する。次に、基板10の主表面に対し、薄膜11を形成する。具体的な構成や準備の手法は、公知の手法を用いても構わない。なお、本実施形態においては、石英ガラスからなる基板10の上に光半透過膜110および遮光膜111を設けたものをマスクブランク5として用いた場合について述べる。
【0052】
2−B)レジスト膜形成工程
本工程においては、薄膜11の主表面に対し、化学増幅型レジスト(ネガレジスト)によりレジスト膜12を形成する。その際に、濃厚層12aおよび希薄層12bを形成する。そして、希薄層12bを形成する際に、濃厚層12aと希薄層12bとが混在した中間領域12cを形成する。
【0053】
2−B−a)濃厚層形成工程
本工程においては、薄膜11の主表面に光酸発生剤が濃厚な溶液を塗布してベークを行い、光酸発生剤が濃厚な濃厚層12aを形成する。具体的な手法は、公知の手法を用いても構わない。一例として挙げるとすれば、薄膜11の主表面にHMDS処理を施した後、ネガ型のレジスト液をスピンコートにより薄膜11の主表面に塗布し、ベーク処理を行う。こうして、薄膜11を覆うように濃厚層12aを形成する。
【0054】
2−B−b)希薄層形成工程
本工程においては、濃厚層12aの主表面にレジスト液を塗布してベークを行い、濃厚層12aに比べて光酸発生剤が希薄な希薄層12bを形成する。具体的な手法は、濃厚層形成工程と同様で構わない。
ただ、本実施形態においては、濃厚層12aの主表面に、希薄層12bの原料となるレジスト液を塗布してベークを行う際に、後述の実施例(図4)が示すように、希薄層12b(ないしその原料)と濃厚層12aとの間でミキシング(混合)が生じる。その結果、ミキシングが起こった部分が中間領域12cとなる。
【0055】
以上により、本実施形態におけるレジスト膜付きマスクブランク1が作製される。もちろん、レジスト膜付きマスクブランク1の作製に必要な洗浄・乾燥工程等を適宜行っても構わない。
【0056】
<3.転写用マスクの製造方法>
次に、本実施形態における転写用マスク50の製造方法について、図3を用いて説明する。
【0057】
3−A)露光工程
次に、マスクブランク上に形成されたレジスト膜12に対し、所定の形状の露光(電子線描画)を行う。具体的な露光の手法については、公知の手法を用いても構わない。
【0058】
3−B)現像工程
次に、現像工程により、レジストパターン12′を形成する。なお、パターニングされた構成に関しては符号に「′」を付与する。
現像液には、水系現像液や有機溶媒現像液を使用することができる。
水系現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機アルカリ化合物の水溶液、又は、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等の四級アンモニウムヒドロキシドをはじめとする有機アルカリ性物質の水溶液が挙げられる。
有機溶媒現像液としては、エステル類、エーテル類、ケトン類、アルコール類等が挙げられ、レジストの組成に合わせて適宜選択して使用することができる。具体的な成分の例としては、乳酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)が挙げられる。
なお、有機溶媒現像液を使用した現像方法は、現像液の浸透性が高いことから、レジストパターン断面の根元に細りやアンダーカットといった不具合が生じやすいが、本発明によれば、濃厚層12′a部分(根元部分)の重合度が高いので、現像液の過度な浸透がなく、前述の不具合が効果的に抑制される。
【0059】
3−C)エッチング工程
以上の工程を経て、レジストパターンを形成することが可能となる。レジストパターン12′を利用して、レジストパターン12′下の薄膜11に対して所定のパターンを形成する。現像工程によって、所定のレジストパターン12′が形成されたレジスト膜12をマスクとして薄膜11をエッチングする。エッチングにより、薄膜11′に所定の転写パターンを形成する。
【0060】
なお、エッチングの手法は、公知の手法を用いて構わない。好ましい例としては、薄膜11をエッチングする工程においては反応性ガスをエッチャントとしたドライエッチングである。本形態のレジストパターンを利用すれば、反応性ガスに等方性のエッチングガスが含まれていても、精度のよい転写パターンを形成することができる。
【0061】
また、薄膜11の表層の組成にクロムが含まれ、その一方で反応性ガスは少なくとも酸素と塩素を含む混合ガスとするエッチング方法のものにも好ましく適用することができる。
【0062】
3−D)その他
そして、レジストパターンを除去し、洗浄などのその他の処理を適宜行うことにより、本実施形態における転写用マスク50は製造される。これらの手法は、公知のものを用いればよい。
【実施例】
【0063】
次に実施例を示し、本発明について具体的に説明する。もちろん本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特記のない事項は特開2013−257593号公報に記載の内容を採用する。
なお、実施例1においては、濃厚層12aとして、光酸発生剤を濃厚にした溶剤を薄膜11に塗布およびベークしたものを用いた。その際、光酸発生剤は、希薄層12bのネガレジストに対して溶解しやすいものを選択した。つまり、中間領域12cが形成されやすい設定とした。
実施例2においては、実施例1とは逆に、光酸発生剤は、希薄層12bのネガレジストに対して溶解しにくいものを選択した。つまり、中間領域12cが形成されにくい設定とした。
実施例3においては、濃厚層12aとして、熱硬化性樹脂に光酸発生剤を加えたものを膜化したものを用いた。つまり、レジスト下地層12aを濃厚層12aとして形成した。
【0064】
<実施例1>
(試料の作製)
2−A)薄膜付基板(マスクブランク5)準備工程
主表面の寸法が約152mm×約152mmで、厚さが約6.25mmの合成石英ガラスからなる透光性を有する基板10(以下、透光性基板10ともいう)を準備した。
【0065】
まず、透光性基板10上に光半透過膜110を成膜した。
合成石英ガラスからなる基板10上に、枚葉式スパッタ装置を用いて、スパッタターゲットにモリブデン(Mo)とシリコン(Si)との混合ターゲット(モル%比 Mo:Si=10:90)を用い、アルゴン(Ar)、窒素(N)およびヘリウム(He)の混合ガス(流量比 Ar:N:He=5:49:46,圧力=0.3Pa)をスパッタリングガスとして反応性スパッタリング(DCスパッタリング:DC電力3.0kW)により、MoSiN膜(下層)を膜厚69nmで成膜した。
次いで、上記MoSiN膜が形成された基板10に対して、加熱炉を用いて、大気中で加熱温度を450℃、加熱時間を1時間として、加熱処理を行った。なお、このMoSiN膜は、ArFエキシマレーザーにおいて、透過率は6.16%、位相差が184.4度となっていた。
【0066】
次に、光半透過膜110上に3層構造の遮光膜111を成膜した。
枚葉式DCスパッタ装置で、クロム(Cr)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)、二酸化炭素(CO)、窒素(N)およびヘリウム(He)の混合ガス(流量比 Ar:CO:N:He=20:35:10:30,圧力=0.2Pa)をスパッタリングガスとして反応性スパッタリング(DCスパッタリング:DC電力1.7kW)により、CrOCN膜を膜厚30nmで成膜した(第一遮光膜111a)。
その上に、同じクロム(Cr)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)および窒素(N)の混合ガス(流量比 Ar:N=25:75,圧力=0.1Pa)をスパッタリングガスとし、反応性スパッタリング(DCスパッタリング:DC電力1.7kW)により、CrN膜を4nmの厚さで成膜した(第二遮光膜111b)。
その上に、同じクロム(Cr)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)、二酸化炭素(CO)、窒素(N)およびヘリウム(He)の混合ガス(流量比 Ar:CO:N:He=20:35:5:30,圧力=0.2Pa)をスパッタリングガスとして反応性スパッタリング(DCスパッタリング:DC電力1.7kW)により、をクロムリッチなCrOCN膜を膜厚14nmで成膜した(第三遮光膜111c)。
以上の手順により、位相シフト膜側からCrOCNからなる最下層、CrNからなる下層、CrOCNからなる上層の3層構造からなるクロム系材料の遮光膜111を合計膜厚48nmで形成した。
以上の手順により、薄膜付基板を得た。なお、光半透過膜110と遮光膜111とを合わせたときの光学濃度を3.0(λ=193nm)とした。また、露光光の波長(λ=193nm)に対する遮光膜111の表面反射率は20%であった。
【0067】
2−B)レジスト膜形成工程
2−B−a)濃厚層形成工程
融点が102℃〜103℃の4−メチルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホナート(光酸発生剤)(和光純薬社製 WPAG−469)のPGMEA(1−メトキシ−2−アセトキシプロパン)に対する含有量を5%としたPGMEA溶液を薄膜11表面にスピンコート法により塗布し、その後、190℃でベーク処理を60秒行い、厚さ10nmの濃厚層12aを形成した。なお、本工程において用いられた光酸発生剤を光酸発生剤Aと称する。
【0068】
2−B−b)希薄層形成工程
まず、ポリスチレン系樹脂誘導体(感光性樹脂)、架橋剤、及び、ジフェニルー2,4,6−トリメチルフェニルスルフォニウム p−トルエンスルフォネート(光酸発生剤)(和光純薬社製 WPAG−467)をPGMEAに混合してレジスト組成液を調合した。この時、光酸発生剤と感光性樹脂質量比は、光酸発生剤:感光性樹脂=10:100とした。このようにして調合したレジスト組成液を濃厚層12a上にスピンコート法で塗布後、130℃で600秒間加熱することで、厚さ150nmの希薄層12bを形成した。。なお、本工程において用いられた光酸発生剤を光酸発生剤Bと称する。
以上の手法を用いて、本実施例におけるレジスト膜付きマスクブランク1を作製した。
【0069】
(測定)
TOF−SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析法)により、レジスト膜付きマスクブランク1における光酸発生剤A、光酸発生剤Bおよびポリマーの深さ方向の分布を確認した。結果を図4に示す。図4に示すように、レジスト膜12の最表面から深さ方向で見ると、深さ125nm付近から濃厚層12a(図中だとPAG層。以降同様。)に係る光酸発生剤Aとレジスト組成物が相溶した領域(いわゆる中間領域、図中だとPAGリッチ層。以降同様。)が発現した。その領域はベースポリマーm/z強度が低下していることから、その領域は光酸発生剤の濃度が他の領域よりも高くなることが確認された。
【0070】
(評価)
その後、レジスト膜12にエリオニクス社製の電子線描画装置を用いてパターンを描画した。なお、パターンとしては例えば、レジストパターンの凸部(ライン)の幅が200nm、ラインとスペースの比が1:1となるように露光した。描画後に130℃で600秒間加熱した。
続いて現像を行った。現像は、5mL/秒で現像液(THAM:テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド)を基板10に供給して行った。
その後、高速回転で60秒間の乾燥回転を行い、自然乾燥させた。なお、レジストパターンの除去以降の工程は行わなかった。
こうして得た試料に対し、レジストパターンの断面形状の評価をSEMにて行った。その結果を示すのが図5である。図5はライン&スペースの大きさに応じた像である。図5を見ると、本実施例の場合、パターン形状が薄膜11側に向けてわずかに広がる形状で形成することができ、ラインの幅が60nm以下のパターンでも倒れが生じることがなかった。
【0071】
<実施例2>
本実施例は、現像工程で、現像液としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート(PGMEA)を使用したことを除けば、実施例1と同様に試料を作製した。
【0072】
(評価)
本実施例では、ハーフピッチが200nmのレジストパターンの断面形状をSEMにて観察し、その形状を評価した。図6は、そのSEM像である。図6を見ると、本実施例の場合、パターン形状が薄膜11側に向けてわずかに広がる形状で形成することができた。なお、本実施例の場合も、ラインの幅が60nm以下のパターンでも倒れが生じることがなかった。
【0073】
<比較例1>
本比較例においては、濃厚層形成工程を行わなかったことを除けば、実施例1と同様に試料を作製した。
【0074】
(評価)
実施例1と同様に、レジストパターンの断面形状の評価をSEMにて行った。その結果を示すのが図7である。図7はライン&スペースの大きさに応じたSEM像である。図7を見ると、本比較例の場合、細りやアンダーカットが過度に生じており、ラインの幅が60nm以下の場合だとパターンの倒れが生じた。
【0075】
<比較例2>
本比較例においては、濃厚層形成工程を行わなかったことを除けば、実施例2と同様に試料を作製した。
【0076】
(評価)
実施例2と同様に、ハーフピッチが200nmのレジストパターンの断面形状をSEMにて観察し、その形状を評価した。図8は、そのSEM像である。図8は、レジストパターンのハーフピッチが200nmのときのSEM像である。図8を見ると、本実施例の場合、パターン形状が薄膜11側に向けてわずかに細くなる形状になっていた。また、レジストパターンの根元部分には、アンダーカットが生じていることが分かった。また、ハーフピッチが80nm以下のパターンでは、倒れが生じていた。
【0077】
<実施例3>
本実施例においては、濃厚層形成工程を以下のように行ったことを除けば、実施例1と同様に試料を作製した。
【0078】
融点が122℃のビス(p−トルエンスルフォニル)ジアゾメタン(光酸発生剤A’)(和光純薬社製 WPAG−199)を5質量%酢酸エチル溶液に調整して薄膜11の主表面にスピンコート法により塗布し、その後、190℃でベーク処理を60秒行い、5nmの濃厚層12aを形成した。次いで、実施例1と同様の希薄層12bを100nmの厚さで形成した。
【0079】
(測定)
TOF−SIMSにより、レジスト膜付きマスクブランク1における光酸発生剤A’、光酸発生剤Bおよびポリマーの深さ方向の分布を確認した。結果を図9に示す。図9に示すように、レジスト膜12の最表面から深さ方向で見ると、深さ90nm付近からさらに5nm深いところまで、濃厚層12aに係る光酸発生剤A’とレジスト組成物が相溶した領域が発現した。なお、そこからさらに5nm深いところが濃厚層12aであるが、この領域においては光酸発生剤の濃度が他の領域よりも高くなることが確認された。
【0080】
(評価)
その後、実施例1と同様に、レジスト膜12にパターンを描画し、現像を行った。
こうして得た試料に対し、レジストパターンの断面形状の評価をSEMにて行った。その結果、本実施例の場合、パターン形状が薄膜11側に向けてわずかに広がる形状で形成することができ、ラインの幅が60nm以下のパターンでも倒れが生じることがなかった。
【0081】
<実施例4>
本実施例においては、濃厚層形成工程を以下のように行ったことを除けば、実施例1と同様に試料を作製した。
【0082】
実施例1で用いた光酸発生剤A(和光純薬社製 WPAG−469)を用いつつ、ベースポリマーとしてノボラック系ポリマー(熱硬化性樹脂)、溶剤としてPGME、PGMEAの混合溶媒を合わせたものを薄膜11の主表面にスピンコート法により塗布した。なお、光酸発生剤Aの量はベースポリマー100質量部に対して25質量部とした。その後、190℃でベーク処理を60秒行い、30nmの濃厚層12a(レジスト下地層12a)を形成した。次いで、実施例1と同様の希薄層12bを100nmの厚さで形成した。
【0083】
(測定)
TOF−SIMSにより、レジスト膜付きマスクブランク1における光酸発生剤A、光酸発生剤B、レジスト下地層12aのポリマー(熱硬化性樹脂:BILと表記)および希薄層12bのポリマー(ネガレジスト)の深さ方向の分布を確認した。結果を図10に示す。図10に示すように、レジスト膜12の最表面から深さ方向で見ると、深さ100nm付近からさらに30nm深いところ(すなわちレジスト下地層12aの部分)においては、光酸発生剤の濃度が他の領域よりも高くなることが確認された。なお、レジスト下地層12aにおける主表面側部分においては、光酸発生剤Aとレジスト組成物が相溶した領域が発現した。
【0084】
(評価)
その後、実施例1と同様に、レジスト膜12にパターンを描画し、現像を行った。
こうして得た試料に対し、レジストパターンの断面形状の評価をSEMにて行った。その結果、本実施例の場合、パターン形状が薄膜11側に向けてわずかに広がる形状で形成することができ、ラインの幅が60nm以下のパターンでも倒れが生じることがなかった。
【符号の説明】
【0085】
1………レジスト膜付きマスクブランク
5………マスクブランク
10……基板
11……薄膜
110…光半透過膜
111…遮光膜
111a…第一遮光膜
111b…第二遮光膜
111c…第三遮光膜
12……レジスト膜
12a…濃厚層(レジスト下地層)
12b…希薄層
12c…中間領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10