特許第6384916号(P6384916)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6384916
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】ガスタービン設備
(51)【国際特許分類】
   F02C 3/34 20060101AFI20180827BHJP
   F02C 3/30 20060101ALI20180827BHJP
   F02C 7/08 20060101ALI20180827BHJP
   F23R 3/00 20060101ALI20180827BHJP
   F02C 3/28 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   F02C3/34
   F02C3/30 D
   F02C7/08 B
   F23R3/00 B
   F02C3/28
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-201927(P2014-201927)
(22)【出願日】2014年9月30日
(65)【公開番号】特開2016-70221(P2016-70221A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年3月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩井 保憲
(72)【発明者】
【氏名】中村 恭明
(72)【発明者】
【氏名】伊東 正雄
(72)【発明者】
【氏名】森澤 優一
【審査官】 高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/071166(WO,A1)
【文献】 特開2014−148934(JP,A)
【文献】 特開2000−130757(JP,A)
【文献】 特開平11−264542(JP,A)
【文献】 特開2013−224366(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 3/28
F02C 3/30
F02C 3/34
F02C 7/08
F23R 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料と酸化剤を燃焼させる燃焼器と、
前記燃焼器に取り付けられた燃料ノズルと、
前記燃焼器から排出された燃焼ガスによって回動するタービンと、
前記タービンから排出された前記燃焼ガスを冷却する熱交換器と、
冷却された前記燃焼ガスの一部を、前記酸化剤を供給する酸化剤供給管に導く第1の燃焼ガス供給管と、
前記酸化剤および前記燃焼ガスからなる混合ガスを加熱するために前記熱交換器を通して前記燃料ノズルに導く混合ガス供給管と、
冷却された前記燃焼ガスの他の一部を加熱するために前記熱交換器を通して前記燃焼器に導く第2の燃焼ガス供給管と、
冷却された前記燃焼ガスのさらに他の一部を加熱するために前記熱交換器を通して前記燃料ノズルに導く第3の燃焼ガス供給管と、
冷却された前記燃焼ガスの残部を外部に排出する排出管と
を具備し、
前記燃料ノズルが、
燃料を前記燃焼器内に噴射する燃料流路と、
前記燃料流路の外周に形成され、前記燃焼ガスを前記燃焼器内に噴射する燃焼ガス流路と、
前記燃焼ガス流路の外周に形成され、前記混合ガスを前記燃焼器内に噴射する混合ガス流路と
を備え、
前記燃焼器内における前記燃焼ガス流路の端部の下流軸方向に、酸化剤と燃料が反応する反応帯が形成されることを特徴とするガスタービン設備。
【請求項2】
前記燃料が、炭化水素ガス、液体燃料または石炭ガス化ガスであり、前記酸化剤が、酸素であることを特徴とする請求項1記載のガスタービン設備。
【請求項3】
前記熱交換器の直後に配置され、前記タービンから排出され前記熱交換器を通過した前記燃焼ガスから水蒸気を除去する水蒸気除去器をさらに具備することを特徴とする請求項1または2記載のガスタービン設備。
【請求項4】
前記水蒸気除去器を通過した燃焼ガスが二酸化炭素であることを特徴とする請求項3記載のガスタービン設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ガスタービン設備に関する。
【背景技術】
【0002】
発電プラントの高効率化は、二酸化炭素の削減や省資源などの要求から進められている。具体的には、ガスタービンや蒸気タービンの作動流体の高温化、コンバインドサイクル化などが積極的に進められている。また、二酸化炭素の回収技術についても、研究開発が進められている。
【0003】
図5は、燃焼器210において生成した二酸化炭素の一部を作動流体として循環させる、従来のガスタービン設備200の系統図である。
【0004】
図5に示すように、燃焼器210から排出された燃焼ガスは、タービン211に導かれ、タービン211を回動させる。そして、タービン211の回動によって発電機212を駆動する。
【0005】
タービン211から排出された燃焼ガスは、熱交換器213を通過することによって冷却される。熱交換器213を通過した燃焼ガスは、さらに熱交換器214を通過する。燃焼ガスは、この熱交換器214を通過することで、燃焼ガス中に含まれる水蒸気が除去され、ドライの二酸化炭素となる。ここで、水蒸気は、熱交換器213を通過することで、凝縮して水となる。水は、例えば配管230を通り外部に排出される。
【0006】
二酸化炭素は、圧縮機215によって昇圧され、超臨界流体となる。昇圧された二酸化炭素の一部は、配管231から分岐された配管232に流入する。そして、配管232に流入した二酸化炭素は、流量調整弁240によって流量が調整され、酸化剤を供給する配管233内に導かれる。配管233には、酸化剤として、空気分離装置(図示しない)によって大気から分離された酸素が流れる。配管233には、酸化剤を昇圧する圧縮機216、酸化剤の流量を調整する流量調整弁241が介在している。
【0007】
酸化剤および二酸化炭素からなる混合ガスは、配管234内を流れ、熱交換器213を通過して燃料ノズル217に導かれる。なお、混合ガスは、熱交換器213において、タービン211から排出された燃焼ガスからの熱量を得て加熱される。
【0008】
一方、圧縮機215によって昇圧された二酸化炭素の他の一部は、配管231を流量調整弁243によって流量が調整され、熱交換器213を通して燃焼器210に導かれる。配管231を流れる二酸化炭素は、熱交換器213において、タービン211から排出された燃焼ガスからの熱量を得て加熱される。燃焼器210に導かれた二酸化炭素は、例えば、燃焼器ライナの冷却や、希釈孔などから燃焼器ライナ内の燃焼領域の下流側に導入される。この二酸化炭素は、燃焼によって生成された燃焼ガスとともにタービン211を回動するため、作動流体として機能する。
【0009】
一方、圧縮機215によって昇圧された二酸化炭素の残部は、配管231から分岐した配管236に流入し、外部に排出される。
【0010】
燃料は、流量調節弁242によって流量が調節され、燃料ノズル217に供給される。そして、燃料は、燃料ノズル217に導かれた混合ガスとともに燃料ノズル217から燃焼領域に導入される。例えば、燃料ノズル217の中央から燃料を噴射し、燃料の外周から混合ガスを噴射する。燃焼領域において、燃料および酸素は、反応(燃焼)する。燃料が酸素と燃焼すると、燃焼ガスとして二酸化炭素と水蒸気が生成する。燃料および酸素の流量は、それぞれが完全に混合した状態において量論混合比(理論混合比)となるように調整されている。
【0011】
燃焼器210で生成した燃焼ガスは、タービン211に導入される。このように、燃焼器210で生成した二酸化炭素の一部は、系統内を循環する。
【0012】
上記した従来のガスタービン設備200において、燃料として、炭化水素ガス燃料や液体燃料が使用されているが、現在これらの燃料以外にも、例えば、石炭ガス化ガス燃料を使用することも検討されている。
【0013】
石炭ガス化ガス燃料は、石炭から生成される。石炭は、埋蔵量が多く、調達が容易であるとともに安価である。しかしながら、燃料として石炭ガス化ガスを使用した場合、炭化水素ガス燃料や液体燃料を使用した場合に比べて二酸化炭素の排出量が増加する。そこで、二酸化炭素の排出量を抑制することができれば、ガスタービン設備200における燃料として石炭ガス化ガス燃料を使用することは有益である。
【0014】
石炭ガス化ガス燃料は、石炭ガス化炉において石炭をガス化したものである。ガス化炉が定常運転状態となるためには、所定の時間を要する。そのため、ガスタービン設備とともに石炭ガス化炉を始動する場合には、始動時において、ガスタービン設備に必要な石炭ガス化ガスの流量を得ることはできない。
【0015】
そのため、燃料として石炭ガス化ガスを使用する場合、実際のガスタービン設備においては、まず、液体燃料または炭化水素系ガス燃料を用いて、ガスタービンを起動する。そして、ガス化炉が定常運転状態となった後に、燃料を石炭ガス化ガスに切り替える
【0016】
ここで、図6は、従来のガスタービン設備200の燃焼器210内における燃料と酸素の濃度分布を模式的に示した図である。なお、図6では、燃料ノズル217の中心より左側の濃度分布を示している。濃度分布は、中心より右側においても、中心より左側と同じである。図6に示された濃度分布は、数値解析によって得られた結果である。
【0017】
図6に示すように、従来の燃料ノズル217は、燃料流路290と、混合ガス流路291とを備える。これらの各流路は、円筒状の壁部300、301によって区画されている。
【0018】
燃料流路290は、燃料ノズル217の中央に設けられている。この燃料流路290には、配管235を介して燃料が導入される。そして、燃料流路290の燃焼器210側の端部から燃料を燃焼器210内に噴射する。
【0019】
混合ガス流路291は、燃料流路290の外周に形成された、例えば、環状の流路である。この混合ガス流路291には、配管234を介して混合ガスが導入される。そして、混合ガス流路291の燃焼器210側の端部から混合ガスを燃焼器210内に噴射する。
【0020】
反応帯280において、拡散してきた酸素および燃料が混合し反応する。そのため、図6に示すように、反応帯280で酸素濃度および燃料濃度が減少する。
【0021】
図7は、混合ガスにおける酸素の質量割合を変化させたときの、当量比に対する最大燃焼ガス温度を示す図である。図7において、最大燃焼ガス温度とは、断熱火炎温度である。図8は、混合ガスにおける酸素の質量割合を変化させたときの、当量比に対する一酸化炭素の濃度を示す図である。図8において、一酸化炭素の濃度、すなわち縦軸は対数で示されている。これらの一酸化炭素の濃度は、各条件の断熱火炎温度における平衡組成値である。また、図7および図8における当量比は、燃料と酸素が均一に混合したと想定したときの当量比である。
【0022】
図7および図8には、燃料として石炭ガス化ガスを使用した際の結果が示されている。なお、酸素濃度が40%の場合においては、燃料として天然ガスを使用したときの結果も示している。ここで、酸素濃度とは、混合ガス全体の質量に対する、混合ガスに含まれる酸素の質量の割合である。
【0023】
図7に示すように、最大燃焼ガス温度は、酸素の割合が大きくなるに伴い高くなる。また、石炭ガス化ガスと天然ガスの結果を比較した場合、酸素の割合が同じであるにもかかわらず、最大燃焼ガス温度は、石炭ガス化ガスの方が高い。これは石炭ガス化ガス中に水素や一酸化炭素が含まれているためである。
【0024】
図8に示すように、一酸化炭素の濃度は、酸素の割合が大きくなるに伴い高くなる。これは、図7で示したように酸素の割合が大きくなるに伴って火炎温度が高くなるために生じる。すなわち、一酸化炭素の増加は、火炎温度が高くなることで、二酸化炭素の熱解離が促進され、一酸化炭素の平衡組成値が増加するために生じる。
【0025】
また、石炭ガス化ガスと天然ガスの結果を比較した場合、酸素の割合が同じであるにもかかわらず、一酸化炭素の濃度は、石炭ガス化ガスの方が高い。図8に示すように、例えば、当量比1において、天然ガスを使用した場合には、一酸化炭素の濃度は、CO許容値以下となるが、石炭ガス化ガスを使用した場合には、一酸化炭素の濃度は、CO許容値を超える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】特許第3658497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
上記したように、従来のガスタービン設備200において、燃料として、石炭ガス化ガス燃料を使用した場合、火炎温度が高くなり、一酸化炭素の排出濃度が高くなる。そこで、火炎温度を低下させるため、混合ガスにおける酸素の割合を減少させることが考えられる。しかしながら、混合ガスにおける酸素の割合を減少させると、燃焼不安定状態が生じやすくなるという問題点がある。
【0028】
本発明が解決しようとする課題は、燃焼不安定状態を抑制しながら、一酸化炭素の排出濃度を低減することができるガスタービン設備を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0029】
実施形態のガスタービン設備は、燃料と酸化剤を燃焼させる燃焼器と、前記燃焼器に取り付けられた燃料ノズルと、前記燃焼器から排出された燃焼ガスによって回動するタービンと、前記タービンから排出された前記燃焼ガスを冷却する熱交換器と、冷却された前記燃焼ガスの一部を、前記酸化剤を供給する酸化剤供給管に導く第1の燃焼ガス供給管と、前記酸化剤および前記燃焼ガスからなる混合ガスを加熱するために前記熱交換器を通して前記燃料ノズルに導く混合ガス供給管と、冷却された前記燃焼ガスの他の一部を加熱するために前記熱交換器を通して前記燃焼器に導く第2の燃焼ガス供給管と、冷却された前記燃焼ガスのさらに他の一部を加熱するために前記熱交換器を通して前記燃料ノズルに導く第3の燃焼ガス供給管と、冷却された前記燃焼ガスの残部を外部に排出する排出管とを備える。
【0030】
そして、前記燃料ノズルが、燃料を前記燃焼器内に噴射する燃料流路と、前記燃料流路の外周に形成され、前記燃焼ガスを前記燃焼器内に噴射する燃焼ガス流路と、前記燃焼ガス流路の外周に形成され、前記混合ガスを前記燃焼器内に噴射する混合ガス流路とを備え、前記燃焼器内における前記燃焼ガス流路の端部の下流軸方向に、酸化剤と燃料が反応する反応帯が形成される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】実施の形態のガスタービン設備の系統図である。
図2】実施の形態のガスタービン設備における燃料ノズルの縦断面を模式的に示した図である。
図3】実施の形態のガスタービン設備の燃焼器内における燃料と酸素の濃度分布を模式的に示した図である。
図4】従来のガスタービン設備の燃焼器内における燃料と酸素の濃度分布を模式的に示した図である。
図5】燃焼器において生成した二酸化炭素の一部を作動流体として循環させる、従来のガスタービン設備の系統図である。
図6】従来のガスタービン設備の燃焼器内における燃料と酸素の濃度分布を模式的に示した図である。
図7】混合ガスにおける酸素の質量割合を変化させたときの、当量比に対する最大燃焼ガス温度を示す図である。
図8】混合ガスにおける酸素の質量割合を変化させたときの、当量比に対する一酸化炭素の濃度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0033】
図1は、実施の形態のガスタービン設備10の系統図である。図1に示すように、ガスタービン設備10は、燃料と酸化剤を燃焼させる燃焼器20と、燃焼器20に取り付けられた燃料ノズル21と、燃焼器20から排出された燃焼ガスによって回動するタービン22とを備えている。タービン22には、例えば、発電機23が連結されている。
【0034】
また、ガスタービン設備10は、タービン22から排出された燃焼ガスを冷却する熱交換器24を備えている。燃焼ガスから得られた熱量は、燃焼器20や燃料ノズル21に供給される、後述する混合ガスや二酸化炭素に与えられる。
【0035】
なお、ここでいう、燃焼器20から排出される燃焼ガスは、燃料と酸化剤とによって生成された燃焼生成物と、燃焼器20に供給されて燃焼生成物とともに燃焼器20から排出される、後述する燃焼ガス(二酸化炭素)とを含んだものである。
【0036】
図1に示すように、燃焼器20から排出された燃焼ガスは、タービン22に導かれ、タービン22を回動させる。そして、タービン22の回動によって発電機23を駆動する。
【0037】
タービン22から排出された燃焼ガスは、熱交換器24を通過することによって冷却される。熱交換器24を通過した燃焼ガスは、配管40を通り、さらに熱交換器25を通過する。燃焼ガスは、この熱交換器25を通過することで、さらに冷却され、燃焼ガス中に含まれる水蒸気が除去され、ドライの燃焼ガスとなる。
【0038】
ここで、燃料ノズル21に供給される燃料としては、例えば、天然ガス、メタンなどの炭化水素ガス、灯油などの液体燃料、石炭ガス化ガスなどが使用される。ガスタービン設備10の燃焼器20においては、例えば、燃料および酸素の流量は、量論混合比(当量比1)になるように調整されている。この場合、水蒸気が除去された燃焼ガスの成分は、ほぼ二酸化炭素である。そこで、以下、熱交換器25を通過して水蒸気が除去された燃焼ガスを二酸化炭素と呼ぶ。この二酸化炭素には、例えば、微量の一酸化炭素や酸素が混在する場合も含まれる。
【0039】
なお、燃焼ガス中の水蒸気は、熱交換器25を通過することで、凝縮して水となる。水は、例えば配管41を通り外部に排出される。なお、熱交換器25は、水蒸気を除去する水蒸気除去器として機能する。
【0040】
配管40には、熱交換器25の下流側に圧縮機26が介在している。配管40を流れる二酸化炭素は、圧縮機26によって昇圧され、超臨界流体となる。
【0041】
超臨界流体となった二酸化炭素の一部は、配管40から分岐された配管42に流入する。そして、配管42に流入した二酸化炭素は、配管42に介在する流量調整弁50によって流量が調整され、酸化剤を供給する配管43内に導かれる。
【0042】
配管43には、酸化剤として、空気分離装置(図示しない)によって大気から分離された酸素が流れる。配管43には、圧縮機27および流量調整弁51が介在している。配管43を流れる酸化剤は、圧縮機27によって超臨界流体まで昇圧され、流量調整弁51によって流量が調整される。なお、配管42は、第1の燃焼ガス供給管として、配管43は、酸化剤供給管として機能する。
【0043】
酸化剤および二酸化炭素からなる混合ガスは、配管42と配管43との連結部から燃料ノズル21に向かって設けられた配管44内を流れる。そして、混合ガスは、配管44を通り、熱交換器24を通過し燃料ノズル21に導かれる。なお、配管44は、混合ガス供給管として機能する。混合ガスは、熱交換器24において、タービン22から排出された燃焼ガスからの熱量を得て加熱される。
【0044】
一方、超臨界流体となった二酸化炭素の他の一部は、配管40に介在する流量調整弁52によって流量が調整され、熱交換器24を通過する。この際、二酸化炭素は、熱交換器24においてタービン22から排出された燃焼ガスからの熱量を得て加熱される。
【0045】
熱交換器24を通過後、配管40を流れる二酸化炭素の一部は、配管40から分岐する配管45を通り燃料ノズル21に導かれる。一方、その残部の二酸化炭素は、燃焼器20に導かれる。燃焼器20に導かれる二酸化炭素の流量と、燃料ノズル21に導かれる二酸化炭素の流量は、例えば、配管45にオリフィスなどを備えることで調整される。また、オリフィスの代わりに配管45に流量調整弁を備えてもよい。
【0046】
ここで、燃焼器20に導かれた二酸化炭素は、例えば、燃焼器ライナの冷却や、希釈孔などから燃焼器ライナ内の燃焼領域の下流側に導入される。この二酸化炭素は、燃焼によって生成された燃焼ガスとともにタービン22を回動するため、作動流体として機能する。
【0047】
なお、燃焼器20に二酸化炭素を導く配管40は、第2の燃焼ガス供給管として機能し、燃料ノズル21に二酸化炭素を導く配管45は、第3の燃焼ガス供給管として機能する。
【0048】
また、超臨界流体となった二酸化炭素の残部は、配管40から分岐する配管46に導かれる。そして、配管46に導かれた二酸化炭素は、外部に排出される。ここで、配管46から排出される二酸化炭素量は、燃焼器20において燃料と酸素が反応することで生成された二酸化炭素量に相当する。なお、配管46は、排出管として機能する。外部に排出された二酸化炭素は、例えば、石油採掘現場で採用されているEOR(Enhanced Oil Recovery)に利用することができる。
【0049】
燃料は、配管47または配管48を通り燃料ノズル21に供給される。配管47、配管48には、燃料の流量を調整する流量調整弁53、54がそれぞれ介在している。配管47には、ガスタービン設備10の起動時に用いられる、例えば、炭化水素ガスや液体燃料などが導入される。一方、配管48には、石炭をガス化するガス化炉が、例えば定常運転状態となった後に用いられる、石炭ガス化ガスなどが導入される。
【0050】
ここで、ガスタービン設備10が稼働しているときには、少なくともいずれか一方の配管47、48を介して燃料ノズル21に燃料が導入されている。例えば、ガスタービン設備10の起動時には、配管47を介して燃料ノズル21に燃料が導入され、ガス化炉が定常運転状態となった後には、配管47を流れる燃料を絞りつつ、配管48を流れる燃料を増加させる。そして、配管47を流れる燃料を遮断し、配管48からすべての燃料を燃料ノズル21に導入する。
【0051】
燃料ノズル21に導入された燃料は、前述した配管45によって導かれた二酸化炭素および配管44よって導かれた混合ガスとともに燃焼器20内に噴射される。そして、燃焼器20内で、混合ガスの酸化剤と燃料とが燃焼反応を生じ、燃焼ガスを生成する。
【0052】
燃焼器20で生成した燃焼ガスは、タービン22に導入される。このように、燃焼器20で生成した二酸化炭素の一部は、系統内を循環する。
【0053】
次に、燃料ノズル21の構成について、図2を参照して説明する。
【0054】
図2は、実施の形態のガスタービン設備10における燃料ノズル21の縦断面を模式的に示した図である。図2に示すように、燃料ノズル21は、燃焼器20(燃焼器ライナ)の上流側の端部に取り付けられている。燃料ノズル21は、燃料流路60と、二酸化炭素流路61と、混合ガス流路62とを備える。これらの各流路は、円筒状の壁部70、71、72によって区画されている。なお、二酸化炭素流路61は、燃焼ガス流路として機能する。
【0055】
燃料流路60は、燃料ノズル21の中央に設けられている。この燃料流路60には、配管47、48を介して燃料が導入される。そして、燃料流路60の燃焼器20側の端部から燃料を燃焼器20内に噴射する。
【0056】
二酸化炭素流路61は、燃料流路60の外周に形成された、例えば、環状の流路である。この二酸化炭素流路61には、配管45を介して二酸化炭素が導入される。そして、二酸化炭素流路61の燃焼器20側の端部から二酸化炭素を燃焼器20内に噴射する。
【0057】
混合ガス流路62は、二酸化炭素流路61の外周に形成された、例えば、環状の流路である。この混合ガス流路62には、配管44を介して混合ガスが導入される。そして、混合ガス流路62の燃焼器20側の端部から混合ガスを燃焼器20内に噴射する。
【0058】
このような構成の燃料ノズル21では、中央から燃料、燃料の外周から二酸化炭素、二酸化炭素の外周から混合ガスが燃焼器20内に噴射される。
【0059】
次に、燃料ノズル21から噴射された混合ガスの酸素および燃料における燃焼器20内での濃度分布について説明する。
【0060】
図3は、実施の形態のガスタービン設備10の燃焼器20内における燃料と酸素の濃度分布を模式的に示した図である。
【0061】
ここで、比較のため、従来のガスタービン設備の燃焼器内における燃料と酸素の濃度分布を模式的に示した図を図4に示す。ここで、図4に示した燃料ノズルは、図6に示した燃料ノズル217と同様の構成である。すなわち、燃料ノズル217の中央に設けられた燃料流路290から燃料を燃焼器210内に噴射する。また、燃料流路290の外周に形成された混合ガス流路291から混合ガスを燃焼器210内に噴射する。そして、各流路は、円筒状の壁部300、301によって区画されている。
【0062】
図4において、混合ガス流路291に供給される混合ガスは、燃料ノズル21の混合ガス流路62に供給される混合ガスに、燃料ノズル21の二酸化炭素流路61に供給される二酸化炭素を混ぜ合わせたものとしている。そのため、図4に示すように、混合ガス流路291から噴射される混合ガスの酸素濃度は、燃料ノズル21の混合ガス流路62から噴射される混合ガスの酸素濃度よりも低くなっている。
【0063】
なお、図3および図4では、燃料ノズル21の中心より左側の濃度分布を示している。濃度分布は、中心より右側においても、中心より左側と同じである。また、比較のため、図3および図4における縦軸の濃度のスケールを同じにしている。図3および図4に示された濃度分布は、数値解析によって得られた結果である。
【0064】
ここでは、図3図4および図6を参照して、燃焼器内における酸素および燃料の濃度分布について説明する。なお、図6の燃料ノズル217の混合ガス流路291に供給される混合ガスの酸素濃度は、図3の燃料ノズル21の混合ガス流路62に供給される混合ガスの酸素濃度と同じである。また、図3図4および図6に示された燃料ノズルにおいて供給される燃料は同じであり、燃料の流量も同じである。
【0065】
図3に示すように、燃料流路60から燃料が、二酸化炭素流路61から二酸化炭素が、混合ガス流路62から混合ガスが、それぞれ燃焼器内に軸方向に噴射される。反応帯80において、拡散してきた酸素および燃料が混合し反応(燃焼)する。そのため、反応帯80で酸素濃度および燃料濃度が減少する。なお、図示していないが、反応帯80において燃焼生成物である二酸化炭素の濃度は増加する。
【0066】
まず、図3に示した反応帯80の濃度分布と、図6に示した反応帯280の濃度分布とを比較する。図3の燃料ノズル21においては、二酸化炭素流路61から二酸化炭素を噴射しているため、反応帯80における酸素濃度が低い。そのため、火炎温度は、反応帯80の方が反応帯280よりも低くなる。そのため、反応帯80においては、二酸化炭素が熱解離することによる一酸化炭素の増加を抑制できる。
【0067】
次に、図3に示した反応帯80の濃度分布と、図4に示した反応帯280の濃度分布とを比較する。図4に示した燃料ノズル217の混合ガス流路291には、前述したように、ほぼ均一に混合された、酸素濃度が低い混合ガスが導入される。そのため、酸素濃度は、図3および図4に示すように、反応帯280の方が反応帯80よりもかなり低くなる。これによって、反応帯280における火炎温度が低下し、燃焼の不安定が生じるものと考えられる。
【0068】
これに対して、図3に示した燃料ノズル21では、混合ガスに、さらに二酸化炭素を混合せずに、別個に二酸化炭素流路61から二酸化炭素を噴射している。そのため、図3に示すように、反応帯80においては、反応帯280よりも酸素濃度が高い領域が存在する。すなわち、反応帯80において、反応帯280に比べて、火炎温度が高い領域が存在する。そのため、反応帯80の方が反応帯280よりも燃焼の安定化が図れる。
【0069】
例えば、燃料を炭化水素ガスから石炭ガス化ガスに切り替えたときには、火炎温度の上昇を抑止するために、反応帯における酸素濃度を下げる必要がある。この場合において、図3に示した燃料ノズル21を使用することで、反応帯80において酸素濃度の高い部分を維持しつつ、全体として酸素濃度を低減することができる。
【0070】
このように、実施の形態における燃料ノズル21を備えることで、燃焼不安定状態を抑制しながら、一酸化炭素の排出濃度を低減することができる。
【0071】
実施の形態のガスタービン設備10では、流量調整弁50や流量調整弁51によって混合ガスの酸素濃度を調整することができる。また、配管45に備えられるオリフィスなどの流量調整部を調整することで、燃料ノズル21の二酸化炭素流路61に供給される二酸化炭素の流量を調整することができる。これらによって、例えば、燃料が切り替わったときにおいても、燃料に応じて、混合ガスの酸素濃度および燃料ノズル21の二酸化炭素流路61に供給される二酸化炭素の流量を適宜調整することができる。そのため、燃料が切り替わったときにおいても、燃焼不安定状態を抑制しながら、一酸化炭素の排出濃度を低減することができる。
【0072】
上記したように、実施の形態のガスタービン設備10によれば、酸化剤と二酸化炭素からなる混合ガス、および二酸化炭素をそれぞれ別個に燃料ノズル21に供給し、燃料、二酸化炭素、混合ガスをそれぞれ別個に燃焼器20内に噴射することで、燃焼不安定状態を抑制しながら、二酸化炭素の熱解離によって生成する一酸化炭素の生成量を抑制することができる。
【0073】
以上説明した実施形態によれば、燃焼不安定状態を抑制しながら、一酸化炭素の排出濃度を低減することが可能となる。
【0074】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0075】
10…ガスタービン設備、20…燃焼器、21…燃料ノズル、22…タービン、23…発電機、24,25…熱交換器、26,27…圧縮機、40,41,42,43,44,45,46,47,48…配管、50,51,52,53…流量調整弁、60…燃料流路、61…二酸化炭素流路、62…混合ガス流路、70,71,72…壁部、80…反応帯。
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8