(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6384932
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】水素・酸素混合ガス製造装置
(51)【国際特許分類】
C25B 9/00 20060101AFI20180827BHJP
【FI】
C25B9/00 A
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-90870(P2017-90870)
(22)【出願日】2017年4月28日
【審査請求日】2018年2月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518060125
【氏名又は名称】澤田 久司
(74)【代理人】
【識別番号】100178939
【弁理士】
【氏名又は名称】本堂 裕司
(72)【発明者】
【氏名】澤田 久司
【審査官】
坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2007/049507(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 1/06,9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
追加の電解質を要しない水と、
前記水中において0.8〜1.5mmの間隔に維持された陽極と陰極各1枚以上の電極と、
前記電極間にパルス電流を印加する電流印加装置と、
を備える水素・酸素混合ガス製造装置
【請求項2】
前記電極の間隔が1.0〜1.2mmである請求項1に記載された水素・酸素混合ガス製造装置
【請求項3】
前記水が、純水、水道水、雨水、地下水、湧水、河川水、湖水、海水から選ばれる請求項1〜2に記載された水素・酸素混合ガス製造装置
【請求項4】
前記電極が、前記間隔において陽極と陰極が交互に積層された3枚以上の積層体からなる電極である請求項1〜3に記載された水素・酸素混合ガス製造装置
【請求項5】
前記電極の材料が、金、白金、カーボンから選ばれる請求項1〜4に記載された水素・酸素混合ガス製造装置
【請求項6】
前記パルス電流の電圧が6〜24Vである請求項1〜5に記載された水素・酸素混合ガス製造装置
【請求項7】
前記パルス電流の周波数が、20kHz〜1GHzである請求項1〜6に記載された水素・酸素混合ガス製造装置
【請求項8】
さらに水中の電極に物理的振動を与える振動装置を備える請求項1〜7に記載された水素・酸素混合ガス製造装置
【請求項9】
さらに発生したガスを捕集して排出する気体排出装置を備える請求項1〜8に記載された水素・酸素混合ガス製造装置
【請求項10】
さらに発生したガスを水に溶解した状態で排出する、水の流入部と流出部を有する液体排出装置を備える請求項1〜8に記載された水素・酸素混合ガス製造装置
【請求項11】
さらに前記液体排出装置の排出先に、紫外線照射部を有するオゾン化装置を備える請求項10に記載された水素・酸素混合ガス製造装置
【請求項12】
請求項1〜11に記載された水素・酸素混合ガス製造装置を用いた、水素・酸素混合ガス供給方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気分解とは異なる原理で水を分解し、水素・酸素混合ガスを製造する装置に関し、同ガスを気体として取り出すことに加え、水に溶解した状態で取り出すことにより、健康用途に用いられる水素水としての利用、さらには水素水シャワーとしての利用が出来る技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水を特定の条件下において電気分解することにより水素および酸素からなる気体を発生させ、このガスの特殊な特性に着目した応用方法が検討されている。これらのガスの名称としては、HHOガス、ブラウンガス、酸水素ガス、水酸素ガス、OHMASA−GASなどと呼称されることが多い。
【0003】
しかしながらこれらのガスの製造方法には不明解な部分も多く、製造条件や製造結果のデータに乏しいことが多いため、同一のガスを示すのか否かが明らかでない場合が多い。
【0004】
したがって本明細書中においては、本発明の方法(電気共鳴分解システム:Electrical Vibrancy Decomposition System)によって製造されるガスをEVDガスと定義し、他の呼称で示されるガスと同一か否かに関係なく本明細書中で一義なものとして取り使う。
【0005】
特許文献1では、熱硬化性樹脂とカーボンナノチューブから作成した電極を使用して電気分解しているが、特殊な電極であるため、大型で大量の電極を用意するのは難しい。特許文献2では、1mm〜5mmの電極間隔を有し、振動攪拌を行うことで水素−酸素ガスの発生を促しているが、電解質を必要としている点で、あくまでも従来の電気分解に関する技術である。特許文献3では、電解に際し酸素分子、水素分子、水分子に対して共振を起こすことにより気体の発生効率を向上させることが記載されているが、この技術もあくまでも通常の電気分解に関する技術である。
【0006】
この様に、これらの従来技術では、水素・酸素混合ガスを通常の電気分解で製造しているため、電解質を必要とする。さらに用いる電圧が100V以上の高電圧であるため、利用するには商用電源が必要である。またこれらの従来技術では、時間当たり実用に耐えうる量の水素・酸素混合ガスが得られたと言う具体的データは明かではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献2】特開2016−37662号公報
【0008】
【特許文献3】特許第4599387号公報
【0009】
【特許文献3】再公表WO95/06144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の水素・酸素混合ガス製造技術では、水には電解質を必要とし、装置には高電圧を必要とし、製造速度が遅いと言う問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、追加の電解質を要しない水と、前記水中において0.8〜1.5mmの間隔に維持された陽極と陰極各1枚以上の電極と、前記電極間にパルス電流を印加する電流印加装置と、を備える水素・酸素混合ガス製造装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、わずか数平方センチメートルの電極数枚からなる小型のモジュールを用いて、純水から1ml/分のEVDガスを製造することが出来た。この高い製造速度により、単にEVDガスの大量生産が可能であることにとどまらず、水に溶解させれば大量の水素水が製造出来、さらに水素水の流水を用いれば十分な水素濃度および量の水素水シャワーが現実のものとなった。
【0013】
これは現在市販されている水素水製造装置が、500mlの静止した水を、ppmまたはppbオーダーの水素水にするのに数分を要することと比較して、桁違いの速度である。
【0014】
また用いる水も、追加の電解質を必要としないため、人工水、天然水問わずほとんどの場合そのまま利用することが出来る。海水であればさらに生成速度が増大するため、より効果が高い。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は本発明のEVDシステムの基本構成を示す図である。
【
図2】
図2は5枚の電極を積層した場合を示す図である。
【
図3】
図3は実施例3、4で用いたEVDガス生成を利用した水素・酸素混合ガスの製造モジュールである。
【
図4】
図4は上記モジュールの神奈川県産業技術センターにおける測定風景である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の技術的特徴を具体的に記載するが、これらは単なる数値限定を目的とするものではなく、本発明の技術的特徴を実現することが最大の目的である。数値限定にとらわれず、技術的特徴を実現出来るのならば、具体的に記載した数値以外であっても本発明の技術的特徴に属するものである。
【0017】
電極は、最低一対の陽極と陰極とからなり、その間隔は0.8〜1.5mmが好ましく、1.0mm〜1.2mmがより好ましく、1.0mmが特に好ましい。
【0018】
反応に用いる追加の電解質を要しない水については、純水、水道水、雨水、地下水、湧水、河川水、湖水、海水等容易に入手出来るいずれの水も用いることが出来る。不純物が発生、蓄積せず装置の腐食も少ない点で純水が好ましく、EVDガスの製造速度の点で海水が好ましい。
なお、「追加の電解質を要しない」とは、電解質の追加をしなくても本発明のEVDガス製造に用いることができると言う意味であり、場合によって電解質を追加することを排除するものではない。
【0019】
本発明の驚くべき点の一つとしては、通常海水を電気分解した場合水素と塩素が発生するものであるが、本発明で発生するEVDガスは水素と酸素の混合気体であり、水素・酸素混合ガスを生成する目的で海水を用いることが出来る点は従来技術からは想像出来るものではない。したがって本発明に海水を用いる場合についても、淡水化などを必要とせず、入手容易な海水そのものを利用出来る点で極めて有利である。なお、海水を2倍程度濃縮した場合には、塩素が発生することから、水素・酸素混合ガスの生成を目的とする以上、2倍以上濃縮した海水を利用することは好ましくない。
【0020】
本発明の驚くべき点のもう一つとして、通常の電気分解であれば電流を流すために電解質を必要とするのに対し、本発明においては純水を用いてもEVDガスが発生する点は従来技術からは想像出来るものではない。したがって本発明は電気分解と異なり、必ずしも電解質を必要としないから、コスト的に有利なだけでなく、装置の腐食等の恐れも少ない。
【0021】
電極の材質は通常電気分解の電極に用いられるものが使用可能であるが、電極の劣化の点を考慮すると、イオン化しにくいものが好ましい。金および白金は入手コストが高いものの、反応に対する効率が良好な点で好ましい。カーボンは電気抵抗が高く効率は低いものの、低コストで大量に入手可能である点で好ましい。
【0022】
電極は、面積が小さければ小型のモジュールに内蔵可能であり、面積が大きければEVDガス製造プラントが実現出来るように、スケーラブルである。通常は平面の電極を用いることが好ましいが、間隔が一定に維持出来るのならば、曲面等によって構成することも出来る。
【0023】
電極の面積を増大させる別の方法として、3枚以上の電極の積層体を用いることも出来る。陽極と陰極が交互に積層され、それぞれの電極間で反応が起こるため、面積の大きな電極を用いる代わりとなり得る上に、小型のモジュールに収まる点で好ましい。
【0024】
必要とする発生量が少なければ、電極を収めた小型のモジュール1基で運用可能であるが、大量のEVDガス製造に当たっては複数のモジュールを同時使用することも出来る。この方法はモジュール単位でのスケーラビリティーを持ち、積層と同様に、面積の大きな電極を用いる代わりとなり得る有効な手段である。
さらにモジュール単位で交換可能であるため、故障の際、該当モジュ−ルの交換のみで対処出来る点で効率的である。
【0025】
印加されるパルス電流は、一定の電圧の直流を一定の周波数でスイッチングすることにより得られる。
前記電圧は、6〜24Vが簡易に用いられるが、中でも太陽電池パネルや充電池において対応製品の多い12Vを用いると、EVDガス製造モジュール周りの機器の調達が安価かつ容易である。この様に本発明に必要な電圧は商用電源を用いた従来技術に比べて低いため、必要とする電源および電気回路が簡易に実現出来る。
【0026】
前記周波数は、広く20kHz〜1GHzであるが、実際に用いるのは唯一固有の周波数を選ぶことだけが目的ではない。本発明においてパルス電流を流す目的は、水分子中の酸素原子を共鳴させて水を分解させることが目的であり、例え低い周波数のパルス電流であっても、酸素原子と共鳴するのであれば、その周波数は本発明の目的を実現する周波数である。周波数は水質、電極の材質、電極の間隔、電極の面積、電圧等により最適値が変動することが考えられるが、これらは詳細設計の段階で適宜最適な周波数を選択すれば良い。周波数が最適値であれば有利なことは当然としても、酸素原子と共鳴しEVDガス発生を導ける最適値以外の周波数であっても、本発明の技術的特徴の一部をなすことに変わりはない。特に低い周波数でEVDガスを製造出来る周波数は、回路設計および消費エネルギーの点から有利である。
【0027】
反応時の温度については、温度が高い方が反応速度が速いことは一般的に理解出来ることであるが、加熱のための装置もエネルギーも必要としない室温または外気温での反応は、消費エネルギーの減少と装置全体の簡略化の点で優位である。もちろん加熱に関する装置を用いて反応速度を上げることも本発明の技術範囲である。またガス製造過程において少しずつではあるが、電極周りの水が発熱することも興味深い。
【0028】
一方、電極付近の水に物理的振動を与えることによって、発生効率が飛躍的に向上することも驚くべきとこである。振動の発生方法は小型の振動素子によって簡易に達成出来る。物理的振動の周波数は、パルス電流の周波数と必ずしも同一である必要はなく、その場合でも十分ガスの発生量は増大される。しかし物理的振動の周波数とパルス電流の周波数が共鳴関係にある時、相乗効果を発揮し、水が沸騰したかの様な大量のガスが発生する。
【0029】
発生したEVDガスを製造装置から気体状で排出すれば、水素と適量の酸素が共存した燃焼エネルギー源として有用である。
【0030】
そしてEVDガスの保存はとても簡易であり、身近なペットボトルであってもその保存には十分に使用出来る。EVDガスは水素と酸素が水で隔てられた微小な気泡の集団として存在していると思われ、上記気泡の集団はペットボトルでも十分遮断され、漏れずに保存が出来る。
さらに気泡の集団であるため、圧力を掛けることで体積が小さくなる点も保存に優位に働く。同一の体積の容器であっても、圧力を上げて保存することで、より大量のEVDガスが保存出来る。
加えて、液体水素および液体酸素の様に温度管理の負担や、気体状水素および気体状酸素の様にショックによる爆発の恐れもない。
【0031】
この様に保存が容易なEVDガスの特性を活かして、システム全体のバッファーとしてEVDガスの保存を活用することが出来る。例えば太陽光発電の電力を利用し、EVDガスを発生させ、EVDガスを燃料とするエンジンによって発電機を駆動する発電システムの場合、EVDガス製造装置とエンジンの間にEVDガス保存装置を設けることによって、電力の保存より効率良くエネルギーの保存が出来る。昼間特に晴天時にEVDガスを製造し、夜間または電力の大量需要時に発電することにより、自然エネルギーの持つ供給不安定の問題と、需要変動への対応を、EVDガスの保存特性により解決することが出来るのである。
【0032】
一方、発生したEVDガスを製造装置から水に溶解した液体状で排出すれば、健康目的に注目が集まっている水素水として大量に製造ことが出来る。その水素水を流水として利用すれば、人体に健康をもたらす水素水シャワーをふんだんに浴びることが出来る。
【0033】
また水素に加え酸素も含有することから、上記水素水は殺菌作用も持ち合わせる。加えて水素水中の酸素に特定の紫外線を照射すればオゾン水が製造出来、さらに強力な殺菌効果を有する水が安価で大量に製造可能である。
【実施例1】
【0034】
20mm×85mmのステンレス電極を、以下の間隔で陰極と陽極を交互に7枚積層した電極(最外極は陰極)を用い、水中で12Vの直流パルス電流を印加した。用いたパルス電流の周波数は400kHz〜8MHz程度の間で、泡の生成する速度が最大になるように調整した。用いる水質については、純水、水道水、海水を用い、電極に生じる泡の量を比較した。さらに水道水使用時にはイオン化傾向による電極の劣化(溶液中への溶出)を観察した。
【0035】
実験によって、以下のような表現によって表現されるマイクロバブル等の気体が電極より連続的に発生することが確認された。
【0036】
【表1】
【実施例2】
【0037】
純水を用い、電極の枚数を5枚、7枚、9枚にして電極の総面積を変えた以外は実施例1と同様に行った。
【0038】
【表2】
【0039】
上記実施例1および2の結果から、用いる水質、電極の面積に関わらず、ガスの発生量が大きい電極の間隔は0.8mm〜1.5mmであり、最も好ましいのは1.0mmであった。
【実施例3】
【0040】
図3に示したモジュール内に、15mm×75mmのステンレス電極7枚(陰極と陽極を交互に7枚積層した電極)を1.0mm間隔で積層し、人工海水中で12V、1.0A、8kHz程度のパルス電流を印加した。発生した気体の成分分析を神奈川県産業技術センターのガスクロマトグラフィーで測定した結果を以下に示す。
【0041】
発生した気体のうち酸素と窒素(体積%)は、
酸素: 9%
窒素: 1%
であった。
ガスクロマトグラフの面積(%)の生データによると、発生した気体の上位3種は水素、酸素、窒素であり、有意な量の塩素は確認されなかった。
【0042】
したがって、通電により水素と塩素が発生する通常の電気分解と、本発明のEVDシステムとは、異なる原理で気体が発生していることが確認された。
また気体の発生量は、水が沸騰したときの様に極めて大量に発生した。これは海水を用いると、極めて高効率でEVDガスが製造出来ることを示す。
【0043】
なお、この試験では実施例1と同様、ステンレスの電極を使用したため、通電に従って赤茶色の不純物が沈殿、蓄積して行ったことから、生成した酸素の多くが酸化鉄の製造によって消費されたものと推測される。このことから使用する電極の材料は、通電によって水中に溶出しないために、イオン化しにくい材料を用いることが望ましいことが理解された。
【実施例4】
【0044】
図3に示したモジュール内に、15mm×75mmのカーボン電極7枚(陰極と陽極を交互に7枚積層した電極)を1.0mm間隔で積層し、純水中で12V、1.0A、8kHz程度のパルス電流を印加した。気体の発生量および成分分析を神奈川県産業技術センターで測定した結果を以下に示す。
【0045】
気体の発生量は単位時間あたり1ml/分であり、発生した気体のうち水素と酸素(体積%)は、
水素: 60%
酸素: 6%
であった。
【0046】
したがって、純水中では電通しないため気体が発生しない通常の電気分解と、本発明のEVDシステムとは、異なる原理で気体が発生していることが確認された。
また気体の発生量は、市販の水素水製造装置と比較しても格段に製造速度が速い。加えて上記実施例1の結果、純水よりEVDガスの発生効率が高いと確認された水道水を用いると、流水に溶解して使用した場合、シャワーとして使用した場合の時間当たりの水量を考慮しても、実用的な濃度を持つ水素水シャワーが実現出来ることを示す。
【実施例5】
【0047】
生成したEVDガスを500mlのペットボトルに入れて一週間放置した。上記ペットボトルは落下等の衝撃を与えても爆発などの危険はなかった。一週間後中のガスに火を付けたが、一瞬で燃え、極めて簡易な方法でかつ安全に貯蔵出来ることが確認出来た。
【産業上の利用可能性】
【0048】
EVDガスを大量に製造する目的において、家庭用の小型のものからプラントレベルの大規模のものまでスケーラブルであることは、その使用場所、使用規模、用途範囲が広い点で有利である。
【0049】
EVDガスの利用方法としては、熱源として燃焼させても生成するのは水のみであるため非常にクリーンであり、内燃機関、蒸気機関、ガスタービン等に用いれば動力が発生し、移動体の推進力やポンプ等の動力としても利用出来る。
【0050】
EVDガス中には水素と適量の酸素が共存するために、通常外からの酸素供給にのみ依存する従来の水素ガス単体の燃焼や化石燃料の燃焼と異なり、過度の高熱になることがなく、エンジンに使った場合でも高熱による負担が少ないため故障率を下げることが出来る。
【0051】
上記動力で発電機を駆動すれば、遠くから送電することなくその場で電力が供給可能になる。多数の小さな発電所を設置すれば、大発電所および送電設備を建設するよりコストを大幅に抑えることが出来る。さらに分散化により、故障に対するリスク分散も可能である。
【0052】
また、必要とするのは比較的小電力の駆動回路をまかなうだけの電力と水だけであるため、太陽電池等の自然エネルギーと、地球上の大半を占める海水を利用することによって、世界の離島や航行中の船舶でも利用可能である。従来外からのエネルギー補給に頼らざるを得なかった場所においても、独立してエネルギーの自給自足が可能となる。
【0053】
上記の様に本発明の製造装置は、必要とする電力はわずかで、太陽電池等で十分駆動可能であり、雨水、地下水、湧水、河川水、湖水、海水をそのまま利用可能であるため、自然水が補給出来、太陽が降り注ぐ地球上のほとんどの場所に設置が可能である。
無論水道インフラの整った地域であれば、生活水の一部を使用して本発明を容易に実施することが出来る。その場合電力インフラを使用しても構わないが、太陽光を初めとする自然エネルギーを使用することも出来る。
【0054】
また、蒸気を発生させ動力等の第一の目的に使用した後も、ある程度の温度を保った純水として利用可能であるため、温水シャワー、寒冷地の融雪設備、蒸留水の製造等の生活に有益な第二の目的に供することが出来る。
【0055】
本発明は、
〔請求項1〕
追加の電解質を要しない水と、
前記水中において0.8〜1.5mmの間隔に維持された陽極と陰極各1枚以上の電極と、
前記電極間にパルス電流を印加する電流印加装置と、
を備える水素・酸素混合ガス製造装置
〔請求項2〕
前記電極の間隔が1.0〜1.2mmである請求項1に記載された水素・酸素混合ガス製造装置
〔請求項3〕
前記水が、純水、水道水、雨水、地下水、湧水、河川水、湖水、海水から選ばれる請求項1〜2に記載された水素・酸素混合ガス製造装置
〔請求項4〕
前記電極が、前記間隔において陽極と陰極が交互に積層された3枚以上の積層体からなる電極である請求項1〜3に記載された水素・酸素混合ガス製造装置
〔請求項5〕
前記電極の材料が、金、白金、カーボンから選ばれる請求項1〜4に記載された水素・酸素混合ガス製造装置
〔請求項6〕
前記パルス電流の電圧が6〜24Vである請求項1〜5に記載された水素・酸素混合ガス製造装置
〔請求項7〕
前記パルス電流の周波数が、20kHz〜1GHzである請求項1〜6に記載された水素・酸素混合ガス製造装置
〔請求項8〕
さらに水中の電極に物理的振動を与える振動装置を備える請求項1〜7に記載された水素・酸素混合ガス製造装置
〔請求項9〕
さらに発生したガスを捕集して排出する気体排出装置を備える請求項1〜8に記載された水素・酸素混合ガス製造装置
〔請求項10〕
さらに発生したガスを水に溶解した状態で排出する、水の流入部と流出部を有する液体排出装置を備える請求項1〜8に記載された水素・酸素混合ガス製造装置
〔請求項11〕
さらに前記液体排出装置の排出先に、紫外線照射部を有するオゾン化装置を備える請求項10に記載された水素・酸素混合ガス製造装置
〔請求項12〕
請求項1〜11に記載された水素・酸素混合ガス製造装置を用いた、水素・酸素混合ガス供給方法
である。
【符号の説明】
【0056】
a 電流印加装置
b 水
c 電極
【要約】
【課題】従来の水素・酸素混合ガス製造技術では、水には電解質を必要とし、装置には高電圧を必要とし、製造速度が遅いと言う問題があった。
【解決手段】追加の電解質を要しない水と、前記水中において一定間隔に維持された電極と、前記電極間にパルス電流を印加する電流印加装置と、を備える水素・酸素混合ガス製造装置を発明した。これにより、純水や海水からであっても十分な速度で水素・酸素混合ガスを製造することが出来た。この水素・酸素混合ガスは燃焼エネルギー源等としてそのまま利用する以外にも、水に溶解させて水素水、殺菌水等として利用することが出来、水素水をシャワーとして大量に浴びることが出来る水素水シャワーが現実のものとなった。
【選択図】
図1