特許第6384938号(P6384938)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6384938
(24)【登録日】2018年8月17日
(45)【発行日】2018年9月5日
(54)【発明の名称】皮革複合部材
(51)【国際特許分類】
   B32B 9/02 20060101AFI20180827BHJP
   B32B 5/24 20060101ALI20180827BHJP
   B68F 1/00 20060101ALI20180827BHJP
   C14C 11/00 20060101ALI20180827BHJP
   G08B 13/22 20060101ALI20180827BHJP
【FI】
   B32B9/02
   B32B5/24
   B68F1/00 A
   C14C11/00
   G08B13/22
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-193253(P2017-193253)
(22)【出願日】2017年10月3日
【審査請求日】2017年10月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512233363
【氏名又は名称】創造技術株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】514109732
【氏名又は名称】坂本 明男
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 圭一
(72)【発明者】
【氏名】坂本 明男
【審査官】 弘實 由美子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/112404(WO,A1)
【文献】 特表2009−505852(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/061592(WO,A1)
【文献】 実公昭41−006951(JP,Y1)
【文献】 特開2015−131922(JP,A)
【文献】 特開2017−185665(JP,A)
【文献】 特開昭62−181138(JP,A)
【文献】 特開平01−166795(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B68F 1/00− 3/04
C14B 1/00−99/00
C14C 1/00−99/00
D06N 1/00− 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体的に薄くて柔軟性を有する皮革複合部材であって、
皮革からなり、薄くて柔軟性を有する第1基材と、
前記第1基材に積層され、薄くて柔軟性を有する補強材と、
前記補強材に積層され、皮革からなり、薄くて柔軟性を有する第2基材と、を備え、
前記第1基材および前記第2基材は接着剤により前記補強材に接着し、
前記補強材は、多数の強化繊維が一方向または複数方向を向いて配された強化繊維シートを有し、
前記強化繊維シートは、前記接着剤を内部全体に浸透させることができる程度の樹脂浸透性を有し、
前記強化繊維シートの内部全体に前記接着剤が含浸していることを特徴とする皮革複合部材。
【請求項2】
全体的に薄くて柔軟性を有する皮革複合部材であって、
皮革からなり、薄くて柔軟性を有する第1基材と、
前記第1基材に積層され、薄くて柔軟性を有する補強材と、
前記補強材に積層され、皮革からなり、薄くて柔軟性を有する第2基材と、
前記第1基材または前記第2基材と前記補強材との間に積層され、薄くて柔軟性を有する通信デバイスと、を備え、
前記通信デバイスは、シート状のIC(Integrated Circuit)タグからなり、
前記第1基材および前記第2基材は接着剤により前記補強材に接着し、
前記補強材は、多数の強化繊維が一方向または複数方向を向いて配された強化繊維シートを有し、
前記強化繊維シートは、前記接着剤を内部全体に浸透させることができる程度の樹脂浸透性を有し、
前記強化繊維シートの内部全体に前記接着剤が含浸していることを特徴とする皮革複合部材。
【請求項3】
請求項1または2に記載の皮革複合部材であって、
前記強化繊維シートの目付量は、15〜260g/mであり、
前記強化繊維シートの厚さは、0.03〜0.4mmであることを特徴とする皮革複合部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトやバンドなどに用いられる皮革複合部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ベルトやバンドなどの皮革複合部材が開示されている(特許文献1参照)。特許文献1に記載の皮革部材では、伸縮性を高めるために、表材と裏材との間に、天然ゴムや炭酸カルシウムを含み、伸縮性の高い芯材を挟持し、接着剤で貼り付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3188048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の皮革複合部材は、伸縮性が高いため、使用しているうちに、全体的に伸びて変形するおそれがある。それに伴って、ベルトの留め金具などを通す孔が伸びてしまうおそれもある。さらに、近年では情報技術の発展に伴い、物品を単品管理するために、皮革複合部材の情報通信性の向上に対する要求が高まっている。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものである。すなわち、その課題とするところは、引張強度性や情報通信性の高い皮革複合部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決を目的としてなされた本発明に係る皮革複合部材の一形態は、
全体的に薄くて柔軟性を有する皮革複合部材であって、
皮革からなり、薄くて柔軟性を有する第1基材と、
前記第1基材に積層され、薄くて柔軟性を有する補強材と、
前記補強材に積層され、皮革からなり、薄くて柔軟性を有する第2基材と、を備え、
前記第1基材および前記第2基材は接着剤により前記補強材に接着し、
前記補強材は、多数の強化繊維が一方向または複数方向を向いて配された強化繊維シートを有し、
前記強化繊維シートは、前記接着剤を内部全体に浸透させることができる程度の樹脂浸透性を有し、
前記強化繊維シートの内部全体に前記接着剤が含浸していることを特徴とする。
また、上記課題の解決を目的としてなされた本発明に係る皮革複合部材の一形態は、
全体的に薄くて柔軟性を有する皮革複合部材であって、
皮革からなり、薄くて柔軟性を有する第1基材と、
前記第1基材に積層され、薄くて柔軟性を有する補強材と、
前記補強材に積層され、皮革からなり、薄くて柔軟性を有する第2基材と、
前記第1基材または前記第2基材と前記補強材との間に積層され、薄くて柔軟性を有する通信デバイスと、を備え、
前記通信デバイスは、シート状のIC(Integrated Circuit)タグからなり、
前記第1基材および前記第2基材は接着剤により前記補強材に接着し、
前記補強材は、多数の強化繊維が一方向または複数方向を向いて配された強化繊維シートを有し、
前記強化繊維シートは、前記接着剤を内部全体に浸透させることができる程度の樹脂浸透性を有し、
前記強化繊維シートの内部全体に前記接着剤が含浸していることを特徴とする
また、上記課題の解決を目的としてなされた本発明に係る皮革複合部材の一形態は、
前記強化繊維シートの目付量は、15〜260g/mであり、
前記強化繊維シートの厚さは、0.03〜0.4mmであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る皮革複合部材によれば、引張強度を高めることができる。また、本発明に係る皮革複合部材によれば、情報通信性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】(A)は本発明の第1実施形態に係る皮革複合部材が服用のベルトに用いられている様子を示す斜視図、(B)は皮革複合部材のA1−A1断面図、(C)は皮革複合部材のA2−A2断面図の中で長さ方向の中央辺りの断面図である。
図2】(A)は本発明の第2実施形態に係る皮革複合部材が服用のベルトに用いられている様子を示す斜視図、(B)は皮革複合部材のB1−B1断面図、(C)は皮革複合部材のB2−B2断面図の中で通信デバイスが設けられている付近の断面図である。
図3】(A)は本発明の第3実施形態に係る皮革複合部材が服用のベルトに用いられている様子を示す斜視図、(B)は皮革複合部材のC1−C1断面図、(C)は皮革複合部材のC2−C2断面図の中で通信デバイスが設けられている付近の断面図である。
図4】(A)は図1のベルト本体の元となる皮革シートの斜視図、(B)は皮革シートのD1−D1断面図の中で幅方向の中央辺りの断面図、(C)は皮革シートのD2−D2断面図の中で長さ方向の中央辺りの断面図である。
図5】(A)は図1(B)の変更例、(B)は図1(C)の変更例である。
図6】(A)は図2(B)の変更例、(B)は図2(C)の変更例である。
図7】(A)は図3(B)の変更例、(B)は図3(C)の変更例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
最初に、本発明の第1実施形態に係る皮革複合部材が、服用のベルト1に適用される例について説明する。図1(A)に示すように、ベルト1は、薄く且つ細長い帯状のベルト本体10と、ベルト本体10の一方側の端部に取り付けられた留め金具11と、を有する。また、ベルト1の留め金具11と反対側の端部には留め金具11を通す複数の孔10aが形成されている。さらに、留め金具11が挿通した孔10aから先のベルト本体10を通すためのリング状部材10bが留め金具11に隣接している。リング状部材10bは後述する第1基材12と同一の皮革からなり、リング状に成形されている。
【0010】
図1(B)および図1(C)に示すように、ベルト本体10は、装着時に外側に露出する第1基材12と、装着時に身体側に隠れる第2基材13と、第1基材12と第2基材13との間で積層されている補強材14と、を有する。ベルト本体10は、その軸方向に沿って何重にも巻取可能な柔軟性を有している。また、ベルト本体10の全体的な形状は特に限定されないが、例えば、ベルト本体10は幅が30mm、長さが1000mmに成形されている。
【0011】
第1基材12、および第2基材13は、主に天然皮革や人造皮革などの皮革からなる。天然皮革には、牛、豚、ダチョウ、カンガルー、および羊などの様々な種類がある。一方、人造皮革には、合成皮革や人工皮革がある。第1基材12、および第2基材13は、主材料として皮革を含んでいれば、その材料は同一であっても異なっていても良い。
【0012】
また、第1基材12、および第2基材13の平面視形状は同一であり、これらの平面視形状が実質的にはベルト本体10の平面視形状となる。さらに、第1基材12、および第2基材13の厚さは限定されないが、全体的に柔軟性を有することが可能な程度に薄ければよい。なお、第1実施形態では、第1基材12の厚さが2mmであり、第2基材13の厚さが1mmである。なお、第1基材12、および第2基材13の厚さは同一であっても異なっていても良い。
【0013】
補強材14は、主にベルト本体10を構成する皮革複合部材の引張強度の補強効果をもたらしている。補強材14は、ベルト本体10の軸方向に沿って配列された多数の強化繊維からなる強化繊維シートで構成されている。第1実施形態では、補強材14を構成する強化繊維はPAN系炭素繊維である。そして、炭素繊維で構成される炭素繊維シートは、複数の断面円形状などの炭素繊維束(炭素繊維原糸)が開繊によって全体的に非常に薄く略均一に広げられ、扁平状に加工されてなる。
【0014】
補強材14の平面視形状はベルト本体10の基体をなす第1基材12、および第2基材13の平面視形状と同一である。また、補強材14の厚さは約0.07mmである。さらに、補強材14である炭素繊維シートの目付量は40g/mであり、補強材14を構成する炭素繊維の弾性率は230GPaであり、引張強度は4900MPaである。
【0015】
炭素繊維シートからなる補強材14は接着剤15によって第1基材12、および第2基材13に接着されている。接着剤15は、酢酸ビニル樹脂系エマルジョン形接着剤で構成されている。接着剤15の弾性率は、0.01GPaであり、補強材14を構成する炭素繊維の弾性率よりも低い。
【0016】
接着剤15が含浸される前の補強材14には、接着剤15を十分に含浸させるための十分な空隙部が形成されている。言い換えると、補強材14は、接着剤15を内部全体に容易に且つ十分に含浸(浸透)させることができる程度の樹脂浸透性を有している。
【0017】
したがって、ベルト本体10として製造されたときの補強材14の内部には接着剤15が十分に含浸している。すなわち、接着剤15が、補強材14の内部を通って第1基材12から第2基材13に架け渡されている。そのため、接着剤15によって補強材14と第1基材12、および第2基材13が接着すると共に、第1基材12、第2基材13、ならび補強材14が強固に一体化されている。
【0018】
なお、接着剤15の樹脂浸透性については、刷毛やローラーなどの道具を用いて強化繊維シート14aの内部全体に接着剤15を容易に且つ十分に浸透させるのではなく、補強材14の上側から接着剤15を垂らした後、接着剤15が、自重で自然と補強材14の内部全体に染み込むように、容易に且つ十分に浸透することができる程度の樹脂浸透性を有することが好ましい。
【0019】
また、補強材14に含浸されている接着剤15は、第1基材12と補強材14との界面全体、および第2基材13と補強材14との界面全体にも浸透されており、接着剤15によって、第1基材12と第2基材13と補強材14とが接着され、一体的に結合されている。さらには、第1基材12、および第2基材13が、一般的には多孔質性を有する皮革で構成されているので、接着剤15は、確実に補強材14に浸透するとともに、毛細管現象によって第1基材12、および第2基材13に浸透する。
【0020】
なお、第1基材12と第2基材13の周縁部が糸10cで縫い合わされており、第1基材12と第2基材13との剥離が防止されている。ここで、糸10cや糸10cを縫い合わせる間隔などは適宜に設定される。
【0021】
このように、ベルト本体10の第1基材12と第2基材13との間に、ベルト本体10の長手方向に沿って配列された多数の炭素繊維を含む補強材14が積層されて接着剤15によって接着されているので、ベルト本体10の引張強度が補強される。そのため、ベルト1の皮革の風合いを残して意匠性を高めつつ、ベルト本体10が長手方向に沿って伸びる経年変化を抑えることができる。さらに、補強材14は非常に薄く且つ柔軟性を有するので、ベルト1のベルトとしての機能および意匠性に支障を来すことを防ぐこともできる。
【0022】
また、ベルト本体10の積層方向に沿って第1基材12から第2基材13にかけて補強材14の内部を接着剤15が連続的に充填されているので、補強材14を構成する炭素繊維シートの強度機能を確実に発揮させると共に、補強材14でのせん断破壊を防止することができる。
【0023】
なお、補強材14の厚さは0.07mmであり、目付量は40g/mであるが、この値に限定されず、適宜に設定することができる。ここで、接着剤15の含浸効率を向上させるためには、補強材14の厚さが薄いことが望ましいが、補強材14の引張強度に対する補強効果を発揮しつつ、補強材14に柔軟性を持たせるために、また、接着剤15を補強材14に十分に含浸させるために、補強材14の厚さが0.03〜0.4mmであり、目付量が15〜260g/mであることが望ましい。さらには、補強材14の厚さが0.05〜0.2mmであり、目付量が30〜130g/mであることがより望ましい。
【0024】
また、接着剤15の弾性率も0.01GPaに限られず、補強材14より低い範囲で適宜に設定することができる。しかしながら、ベルト本体10の全体的な柔軟性を低下させないために、接着剤15の弾性率は2GPa以下であることが望ましい。さらに、接着剤15の弾性率は0.2GPa以下であることが望ましい。さらに、接着剤15の弾性率は0.02GPa以下であることが望ましい。
【0025】
また、接着剤15を構成する材料は、補強材14を構成する炭素繊維の弾性率よりも低い弾性率の材料であれば、酢酸ビニル樹脂系エマルジョン形接着剤に限られず、皮革用として一般に使用される接着剤などでもよい。また、接着剤15を構成する材料は、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレア樹脂などの常温硬化性樹脂および熱硬化性樹脂やポリエチレン、ポリアミド樹脂などの熱可塑性樹脂でもよい。
【0026】
また、補強材14の幅および厚さ、ならびに補強材14に含まれる炭素繊維の数は、補強対象に必要な引張強度、すなわち皮革複合部材の用途などに応じて適宜に設定することができる。さらに、補強材14を構成する炭素繊維の引張強度も特に限定されず、補強対象の引張強度などに応じて適宜に設定することができる。加えて、補強材14を構成する炭素繊維の弾性率も特に限定されないが、用途に応じた柔軟性を確保できる範囲で設定されることが望ましい。
【0027】
さらに、補強材14を構成する炭素繊維の種別はPAN系炭素繊維に限られず、ピッチ系炭素繊維であってもよい。加えて、補強材14を炭素繊維でなく、ガラス繊維、またはアラミド繊維などの少なくとも第1基材12、および第2基材13よりも引張強度が高く且つ柔軟性を有する他の強化繊維で構成させても良い。また、補強材14を構成する強化繊維は、1種類であっても複数種類であっても良い。
【0028】
なお、ベルト本体10は、第1基材12または第2基材13の一方に接着剤15を塗布してその上に補強材14を乗せて接着剤15を補強材14の内部に含浸させ、さらにその上から接着剤15を塗布して接着剤15を補強材14の内部に含浸させてから第1基材12または第2基材13の他方を乗せて構成させても良い。すなわち、ベルト本体10を製造する過程で補強材14に接着剤15を含浸させるようにしても良い。
【0029】
あるいは、ベルト本体10は、補強材14に接着剤15を含浸して硬化させたテープ状の柔らかい炭素繊維強化プラスチックを予め製造しておき、そのテープ状の柔らかい炭素繊維強化プラスチックの両表面と第1基材12および第2基材13とを接着剤15で接着させて構成しても良い。すなわち、ベルト本体10を製造する前に、予め補強材14に接着剤15を含浸させるようにしても良い。
【0030】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る皮革複合部材が、服用のベルト2に適用される例について説明する。図2(A)に示すように、ベルト2は、薄い帯状のベルト本体20と、ベルト本体20の一方側に端部に取り付けられた留め金具21と、を有する。ベルト2は、外観については、ベルト1と同一である。すなわち、ベルト2は、内部構造についてベルト1と相違する。なお、ベルト2には、ベルト1と同様に、孔20a、およびリング状部材20bが設けられている。
【0031】
図2(B)および図2(C)に示すように、ベルト本体20は、装着時に外側に露出する第1基材22と、装着時に身体側に隠れる第2基材23と、第1基材22と第2基材23との間で積層されている通信デバイス26と、を有する。ベルト本体20の柔軟性などの機械的特性、および形状は、ベルト本体10と同一または略同一である。また、第1基材22、および第2基材23は、第1実施形態の第1基材12、および第2基材13と同一であるので、第1基材22、および第2基材23の説明は省略する。
【0032】
通信デバイス26は、非常に薄く且つ柔軟性を有するシールタイプのIC(Integrated Circuit)タグで構成されている。通信デバイス26には、そのベルト2を識別する情報などの所定の情報を書き込むことが可能であり、書き込まれている情報を所定のリーダーで読み取ることが可能である。
【0033】
なお、通信デバイス26を構成するICタグの種類は特に制限されず、電池が入っており自ら情報を発信可能な「アクティブタグ」、電池が入っておらずアンテナから届いた電波を電力に変えて動作可能な「パッシブタグ」、および電池が入っているが自ら電波を発信できない「セミパッシブタグ」など適宜に設定可能である。
【0034】
通信デバイス26の平面視形状はベルト本体20の内部に収まり、第1基材22、および第2基材23からはみ出さない範囲であれば適宜に設定可能である。例えば、通信デバイス26は、直径が20mmである円形状に成形されている。
【0035】
また、通信デバイス26の配置についても、通信デバイス26がベルト本体20の内部に収まり、第1基材22、および第2基材23からはみ出さない範囲であれば、その形状に応じて適宜に設定可能である。例えば、通信デバイス26は、平面視でベルト本体20の留め金具21の付近において幅方向の中央に配置されている。
【0036】
さらに、通信デバイス26の厚さについても、ベルト2がベルトとしての機能および意匠性に支障を来さない範囲で適宜に設定可能である。例えば、通信デバイス26の厚さは、0.01〜0.5mmである。
【0037】
なお、第1基材22と第2基材23の周縁部が糸20cで縫い合わされており、第1基材22と第2基材23との剥離が防止されている。ここで、糸20cや糸20cを縫い合わせる間隔などは適宜に設定される。
【0038】
このように、ベルト本体20の第1基材22と第2基材23との間に、ICタグで構成される通信デバイス26が積層されているので、ベルト2の皮革の風合いを残して意匠性を高めつつ、ベルト2に情報通信機能を付加することができる。その結果、ベルト2の品質管理、および生産管理を図ると共に、盗難防止などのアウターサービスを提供することができる。さらに、通信デバイス26は非常に薄く且つ柔軟性を有するので、ベルト2のベルトとしての機能および意匠性に支障を来すことを防ぐことができる。なお、通信デバイス26は、第1基材22および第2基材23の何れか一方、または双方に接着されていても接着されていなくても良い。接着される場合は、通信デバイス26がシールタイプであり、通信デバイス26の裏面に予め接着層を形成させておき、接着層で第1基材22および第2基材23の何れか一方に接着させるようにしても良い。また、通信デバイス26がシールタイプではないが、通信デバイス26を所定の接着剤によって第1基材22および第2基材23の何れか一方、または双方に接着させても良い。
【0039】
また、通信デバイス26を複数、ベルト本体20に内蔵することも可能である。この場合、通信デバイス26を構成するICタグの種類・形状は全て同一であっても、一部または全て異なっても良い。
【0040】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る皮革複合部材が、服用のベルト3に適用される例について説明する。図3(A)に示すように、ベルト3は、薄い帯状のベルト本体30と、ベルト本体30の一方側に端部に取り付けられた留め金具31と、を有する。ベルト3は、外観については、ベルト1、2と同一である。すなわち、ベルト3は、内部構造についてベルト1、2と相違する。なお、ベルト3には、ベルト1、2と同様に、孔30a、およびリング状部材30bが設けられている。
【0041】
図3(B)および図3(C)に示すように、ベルト本体30は、装着時に外側に露出する第1基材32と、装着時に身体側に隠れる第2基材33と、第1基材32と第2基材33との間で積層されている補強材34、および通信デバイス36と、を有する。ベルト本体30の柔軟性などの機械的特性、および形状は、ベルト本体10、20と同一またはほとんど同一である。
【0042】
また、第1基材32、および第2基材33は、第1実施形態の第1基材12、および第2基材13と同一であるので、第1基材32、および第2基材33の説明は省略する。さらに、補強材34は第1実施形態の補強材14と同一であり、通信デバイス36は第2実施形態の通信デバイス26と同一であるので、補強材34、および通信デバイス36の単体の説明は省略する。
【0043】
ベルト本体30の内部においては、第2基材33に補強材34が積層され、補強材34に通信デバイス36が積層され、通信デバイス36に第1基材32が積層されている。そして、第1実施形態と同様に、第1実施形態の接着剤15と同一材料からなる接着剤35が、補強材34の内部に十分に含浸している。すなわち、通信デバイス36が配置されている範囲を除いて、接着剤35が、補強材34の内部を通って第1基材32から第2基材33に架け渡されている。そのため、接着剤35によって補強材34と第1基材32、および第2基材33が接着すると共に、第1基材32、第2基材33、ならび補強材34が強固に一体化されている。
【0044】
このように、ベルト本体30は、ベルト本体10とベルト本体20とが組み合わされたような内部構造であるといえる。なお、通信デバイス36の平面視形状は補強材34の平面視形状に比べて非常に小さいので、実質的には補強材34に第1基材32が積層されているともいえる。また、通信デバイス36の第1基材32、および第2基材33に対する位置は、第1実施形態と同一である。
【0045】
なお、第1基材32と第2基材33の周縁部が糸30cで縫い合わされており、第1基材32と第2基材33との剥離が防止されている。ここで、糸30cや糸30cを縫い合わせる間隔などは適宜に設定される。
【0046】
以上のように、ベルト本体30の第1基材32と第2基材33との間に、ベルト本体30の長手方向に沿って配列された多数の炭素繊維を含む補強材34が積層されて接着剤35によって接着されていると共に、ICタグで構成される通信デバイス36が積層されているので、皮革の風合いを残してベルト3の意匠性を高めつつ、ベルト本体30の引張強度を補強してベルト本体30が長手方向に沿って伸びる経年変化を抑え、さらにはベルト3に情報通信機能を付加することができる。さらに、補強材34および通信デバイス36は非常に薄く且つ柔軟性を有するので、ベルト3のベルトとしての機能および意匠性に支障を来すことを防ぐことができる。
【0047】
また、ベルト本体30は、補強材34を構成する炭素繊維シートの上から接着剤35を塗布してさらに接着剤35を炭素繊維シートの内部に含浸させた後に通信デバイス36を接着剤35の上に乗せ、その上から第1基材32または第2基材33の他方を乗せるようにして構成させても良い。
【0048】
あるいは、ベルト本体30は、補強材34と接着剤35からなるテープ状で柔軟性を有する炭素繊維強化プラスチックを予め製造しておき、その炭素繊維強化プラスチックに通信デバイス36を積層させて、その一体化した炭素繊維強化プラスチックおよび通信デバイス36の両表面と第1基材32および第2基材33とを接着剤35などの所定の接着剤で接着させて構成しても良い。最終的に、補強材34が、第1基材32、および第2基材33としっかりと接着されていれば良い。
【0049】
また、通信デバイス36は、補強材34と第1基材32との間に積層されているが、補強材34と第2基材33との間で積層されても良い。さらに、通信デバイス36を複数、ベルト本体30に内蔵することも可能である。この場合、通信デバイス36を構成するICタグの種類・形状は全て同一であっても、一部または全て異なっても良い。
【0050】
さらに、複数の通信デバイス36の全てを補強材34と第1基材32との間、または補強材34と第2基材33との間の何れかに積層しても良い。また、一部の通信デバイス36を補強材34と第1基材32との間に積層し、残りの通信デバイス36を補強材34と第2基材33との間に積層しても良い。
【0051】
(その他の実施形態)
第1実施形態〜第3実施形態では、本発明の皮革複合部材を服用のベルトに適用した例を説明したが、服用のベルトに限られず、時計用のバンド、鞄用のベルトや鞄の本体、財布、名刺入れ、手帳カバー、などの主に個人が生活の中で使用可能な道具に本発明の皮革複合部材を適用可能である。
【0052】
また、第1実施形態〜第3実施形態では、本発明の皮革複合部材は帯状に形成されていたが、その形状は帯状に限定されず、幅広のシート状など他の形状であっても良い。皮革複合部材の形状がシート状である場合、皮革複合部材をソファーや椅子などの家具、あるいは車用シートの表面材に適用することもできる。また、大きなシート状の皮革複合部材をベルトやバンドなどの元となる生地に適用することもできる。
【0053】
例えば、シート状の皮革複合部材である皮革シート40がベルト本体10の元となる生地である場合は、図4(A)乃至図4(C)に示すように、皮革シート40を、ベルト本体10と同様に、第1基材42と第2基材43の間に補強材44が積層され、接着剤45によって第1基材42、および第2基材43と補強材44が接着されると共に、第1基材42、第2基材43、および補強材44が強固に一体化される構成とすることができる。
【0054】
皮革シート40は、長さと幅がベルト本体10よりも数倍大きく、ベルト本体10のように糸10cで縫い合わされておらず、孔10aが形成されていない点でベルト本体10と異なるが、皮革シート40を構成する第1基材42、第2基材43、補強材44、および接着剤45の材料や接着態様などの構造はベルト本体10と同一である。
【0055】
なお、皮革シート40は、ベルト本体10の元となる生地であるので、例えば、図4(A)に示す一点鎖線の箇所を切断することで、皮革シート40からベルト本体10を生成することができる。
【0056】
さらに、第1実施形態および第3実施形態では、補強材14、34を構成する多数の炭素繊維は1方向にのみ配列されているが、これに直交する1方向や左右対称に45度で交差する2方向に配列された多数の炭素繊維を補強材14、34に加えることもできる。すなわち、補強材14、34を構成する多数の強化繊維の配向方向を複数にすることができる。
【0057】
また、第1実施形態〜第3実施形態では、ベルト本体10、20、30の基体部分は、表側の第1基材12、22、32と裏側の第2基材13、23、33で構成されていたが、表側と裏側が区別されないように構成することもできる。これは、本発明の皮革複合部材が適用される対象、すなわち皮革複合部材の用途によって適宜に設定される。
【0058】
さらに、第1実施形態〜第3実施形態では、第1基材12、22、32、および第2基材13、23、33は、単一の材料で構成されているが、例えば、第1基材12、22、32の表層には装飾用の薄い皮革部材が貼り付けられるなど、積層構造で構成されていても良い。第1基材12、22、32、および第2基材13、23、33の本体部として皮革が用いられていれば良い。
【0059】
また、第1実施形態および第3実施形態では、補強材14、34が第1基材12、32、および第2基材13、33と平面視同一形状に成形されている。しかし、補強材14、34と第1基材12、32、および第2基材13、33の形状に関する関係はこれに限られない。例えば、補強材14、34の幅を第1基材12、32、および第2基材13、33の幅より狭くする、または/および補強材14、34の長さを第1基材12、32、および第2基材13、33の長さより短くするなど、平面視で補強材14、34が第1基材12、32、および第2基材13、33に収まる範囲で補強材14、34の形状を適宜に変更しても良い。
【0060】
また、第1実施形態および第3実施形態では、補強材14、34を構成する炭素繊維シートは開繊され、空隙部を有しているが、この炭素繊維シート全体に占める空隙部の割合は、補強材14、34を第1基体12、32および第2基体13、33と接着させるための接着剤の物性などに応じて適宜に変更しても良い。例えば、用いる接着剤の粘度が高くなるにつれて炭素繊維シートの空隙部の割合を大きくするようにしても良い。また、炭素繊維シートが有する空隙部は開繊以外の方法によって形成されるようにしても良い。
【0061】
さらに、第1実施形態および第3実施形態では、接着剤15、35が補強材14、34に完全に含浸しているが、補強材14、34の内部に接着剤15、35が含浸していない部分があり、空隙部が形成されていても良い。この場合、硬化した接着剤15、35が、補強材14、34の内部で少なくとも幅方向に対して部分的にでも、ベルト本体10、30の積層方向、すなわち厚さ方向に連続して形成され、第1基材12、32と第2基材13、33に架け渡されていることが望ましい。補強材14、34を構成する炭素繊維シートの引張強度機能の低下を抑えると共に、補強材14、34のせん断破壊を防止するためである。
【0062】
しかし、補強材14、34を構成する強化繊維の種類と皮革複合部材を適用する対象に求められる引張強度との兼ね合いであるが、接着剤15、35がベルト本体10、30の積層方向に連続して形成されていなくても良い。これは、補強材14、34の引張強度機能は低下するが、例えば、補強材14、34が炭素繊維で構成されていると、炭素繊維の引張強度は極めて高いので、接着剤15、35が補強材14、34の中心部分まで含浸していなくても、接着剤15、35によって第1基材12、32および第2基材13、33と補強材14、34と接着され、補強材14、34の一部と第1基材12、32および第2基材13、33のそれぞれが一体化されていれば、必要な引張強度を確保することができるからである。
【0063】
また、補強材14、34には、炭素繊維束を開繊によって形成されるような大きな空隙部が形成されていなくて良い。例えば、大きな空隙部は形成されていないが補強材14、34が非常に薄くて柔軟性を有し、接着剤15、35によって第1基材12、32および第2基材13、33のそれぞれと接着されていれば良い。
【0064】
また、本発明の皮革複合部材を、車用シート用の表面材等のように、片側からしか見られないものに用いる場合、第2基材を省略しても良い。例えば、用途は異なるが第1実施形態〜第3実施形態のベルト本体10、20、30を例にすると、図5図7に示すように、図1図3のベルト本体10、20、30に含まれていた第2基材13、23、33を省くことができる。
【符号の説明】
【0065】
1、2、3…ベルト
10、20、30…ベルト本体
10a、20a、30a…孔
10b、20b、30b…リング状部材
11、21、31…留め金具
12、22、32…第1基材
13、23、33…第2基材
14、34…補強材
15、35…接着剤
26、36…通信デバイス
40…皮革シート
42…第1基材
43…第2基材
44…補強材
45…接着剤
【要約】
【課題】引張強度性や情報通信性の高い皮革複合部材を提供することである。
【解決手段】皮革からなり、薄くて柔軟性を有する第1基材12と、第1基材12に積層され、薄くて柔軟性を有する補強材14と、補強材14に積層され、皮革からなり、薄くて柔軟性を有する第2基材13と、を備える。補強材14は、多数の強化繊維が一方向または複数方向を向いて配された強化繊維シートを有し、第1基材12および第2基材13は接着剤15により補強材14に接着している。
【選択図】図1
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図7